進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第138話 2柱の戦神と漆黒の猟犬 その2

第138話 2柱の戦神と漆黒の猟犬 その2

 

伊豆基地内に響き渡る不気味な唸り声と蟲が蠢くような嫌な音が断続的に響き続ける。獣の呼吸はそれを聞く者に精神的な負荷を与え、そして蟲の蠢く音は生理的嫌悪感を呼び起こす。

 

「これがインベーダーか、なるほど化け物だな」

 

鬼であったコウキから見てもインベーダーは化け物と断言出来る醜悪さを持っていた。確かに鬼も化け物と言う一区切りで見れば同類だが、根本的に考えが違う。鬼は支配することを目的にしているが、インベーダーは全てを滅ぼそうとしている。人類に害を成すと言う意味では大差は無いが、存在自体が余りにも異なっていた。

 

【キシャアアアアアーッ!!】

 

「ふんッ!!!」

 

飛びかかって来たインベーダーに斧による横薙ぎの一閃を叩き込む轟破鉄甲鬼だが、インベーダーが両断されたのは一瞬で瞬きの間に修復し、その鋭い牙と爪を轟破鉄甲鬼に突き立てようとする。

 

「遅い。遅すぎるな」

 

インベーダーの頭部を掴み地面に叩きつけると同時に足を振り上げその頭蓋を踏み砕く鉄甲鬼。その手足には翡翠の、ゲッター線の輝きが灯っていた。

 

「なるほどフルパワーでなければこういう使い方も出来るか……ふ、悪くはないな」

 

鉄甲鬼に搭載しているゲッター炉心は決して質の良いものではない。だがある程度の効果を見込めればそれで良い攻撃にゲッター線を乗せることが出来ればインベーダーに有効打撃になるのならば出力を絞り込み、全身に僅かでもゲッター線を纏い続ければ良い。

 

【シャアッ!!!】

 

【キシャアアアーーッ!!】

 

『コウキッ! そっちに行ったぜッ!!』

 

ゲッターD2よりも剛破鉄甲鬼を相手にした方が楽だと感じたのか、何体かのインベーダーがゲッターD2の脇を抜けて鉄甲鬼に迫る。

 

「俺も甘く見られたものだな。この化け物風情がッ!!!」

 

両腕のアタッチメントが変形し複数の銃口を露わにしゲッター合金製の弾を凄まじい勢いで撃ち出しインベーダーを蜂の巣にすると、振りかぶった斧がインベーダーを両断し、溶けるようにインベーダーは消滅する。

 

『目障りだ、くたばれ』

 

【ギ、ギャアアアアアアアーッ!?】

 

高速回転するエネルギークローをインベーダーに突き刺し、目玉ごと肉を抉るゲシュペンスト・シグは相変わらずの残虐な戦い方だが、逆を言えば手加減をした新西暦向けの戦いでは勝てないという事をラドラもコウキも判っているからこそ、恐竜帝国、そして百鬼帝国特有の戦い方をしていると言える。

 

『うおらあッ!!!』

 

ゲッターD2がダブルトマホークを振るうたびにインベーダーが纏めて消し飛び、ゲッター線を求めてインベーダーがゲッターD2に飛びかかり再び消滅させられるというサイクルが出来上がっているが徐々にゲッターD2の一撃を受けても消滅しないインベーダーが出現し始めていた。

 

『想像以上に早いな、だが劣勢に追い込まれていないだけまだましか』

 

【ギャアッ!?】

 

ゲシュペンスト・リバイブ(S)の放ったゲッター合金ライフルによって飛行しているインベーダーが翼を失い降下する。

 

『だがこれはまだ前哨戦だ、ここで梃子摺っていては話にならん』

 

墜落してきたインベーダーにメガ・プラズマステークが突き刺さり、電圧でインベーダーの身体がボロボロに焼け焦げて消滅する。だがカイの言うとおりこれはまだ前哨戦、本番すら始まっていない。

 

『あいつら、不気味だな』

 

『確かにな。だけどよ、リュウセイ達が持ち帰ってきた戦闘データを見れば、この距離でも安全圏じゃねえ。無理に突破するのはリスクがありすぎる。俺達に出来るのは警戒するくらいだ』

 

海の近くに陣取っている30機のエルアインス、ツヴァイ、ドライは3機ワンセットで10小隊存在している。R-2、R-3と同等の能力を持つツヴァイとドライならばあの距離でも攻撃を仕掛けてくる。だがそれをせずに沈黙している事にキョウスケは不気味さを感じ、イルムはインベーダーの特性を持つがゆえに、距離など関係なく襲ってくると考え警戒心を緩める事が出来ずにいた。

 

『とにかく今は雑魚を潰すぜ。キョウスケ、間違ってもクレイモアをぶっぱなすなよ』

 

『判っています。せめて海にまで誘い込まない事には伊豆基地への被害が大きすぎる』

 

『……そういうことじゃ、いや、まぁ良い! とにかく数を減らすぞッ!!』

 

司令部に陣取っているヴァイスリッター改達からの支援は間違いなくその効果を発揮し、ゲッター合金製のライフルを打ち込まれ身体の結合が緩んでいるインベーダーをキョウスケ達は可能な限り一撃で倒し続ける。進化を、適応をさせないための戦術だがフル稼働を続けている動力によってエネルギーの消耗は普段以上に早く戦い始めて数分だが、関節部の焼き付きが少しずつ始まり、コックピットに響く異音にキョウスケ達は少しずつ焦りを抱き始めているのだった……。

 

 

 

 

 

 

ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントと龍虎王は海中から進撃してくるインベーダーを2機で食い止めていた。だがそれは押し付けたわけではない、この2機でなければ海中のインベーダーには対応出来なかったのだ。

 

『雷神よ、来たりて我の敵を討て! 救急如律令ッ!!!』

 

【グギャアアアアアッ!?】

 

【ギャアアアーーッ!?】

 

【シャアアアアアーーッ!?!?】

 

龍虎王の放った雷撃が海面に突き刺さり、海中を進んでいたインベーダーを貫き消滅させる。だが消滅させた倍以上のインベーダーが海中からその顔を見せるのを見て思わずクスハも悲鳴を上げた。

 

『数が多すぎるッ!?』

 

『知恵があるって言うのはこういうことだったのかッ! 何て厄介なんだッ!』

 

1体1体は陸上にいるインベーダーよりも遥かに小型で耐久力も低いが、その数が余りにも多すぎた。ゲッターD2のゲッター線の影響を伊豆基地の海も受けており何かに寄生するという行動はしていないが、数を増やし続けている小型インベーダーは倒しても倒してもきりがなかった。近くに極上の餌が存在しているから海中の生物を喰らってはいないが、勝てないと判断し海中生物を融合した個体が出現する可能性を考えれば、広域攻撃が可能な龍虎王とヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントが海中のインベーダーに当たる必要があった。サイバスターやヴァルシオーネのサイフラッシュやサイコブラスターは海中では十分な効果が出ないと言うのも大きく響いていた。

 

『リョウト君、出力調整完了!いつでもOKよ!』

 

「判った!いっけええええッ!!!」

 

ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントの突き出した両腕から炎が放たれ、海中から顔を出したインベーダーを飲み込み焼き尽くす。

 

「やっぱり単体の時よりも火力が上がってるね」

 

『それは当然だけど冷却時間に気をつけて、次に使えるのは380秒後になるわ』

 

短時間の放射だがその熱量は凄まじく耐熱装備が充実しているヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントであったとしても連打出来ない。リオの言葉を聞きながらリョウトはヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントを海面に向かせる。

 

(相手は獣だけど馬鹿じゃない……多分)

 

少なくとも100匹近いインベーダーは焼き払った。このままやっていては突破出来ないとなればインベーダーは突破する為に戦術を変えてくるはずだとリョウトは勿論、クスハとブリットも考えていた。

 

【【キシャアアアアアーッ!!!】】

 

そしてそれは的中し、凄まじい雄叫びと共に巨大化した2体のインベーダーが海面を割って姿を見せる。

 

『来たな……クスハ! 俺に代わってくれッ!』

 

『う、うん! ブリット君、お願いッ!』

 

龍虎王が虎龍王へと姿を変え、地面を蹴って巨大インベーダーに向かって駆け出す。

 

『リョウト! 俺が右! お前が左側だッ!』

 

「判った! こっちは任せて! リオッ!」

 

『判ってる! 行きましょうリョウト君!』

 

ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントは海面を滑る様に飛行し巨大インベーダーへと突き進む。

 

【シャアアッ!!!】

 

それを見た巨大インベーダーは触手を伸ばしヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントを捕らえようとする。

 

「無駄だよ。それは僕達には届かないッ!」

 

マグマ原子炉の熱、そして特殊な塗装によって熱源を持ったおぼろげな残像を作り出す能力を持っていたヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM。それにタイラントアーマーとAMガンナーが合体する事でその残像を作り出す能力はより昇華されていた。陽炎のような分身から実体を持った分身へと変わったその熱源に巨大インベーダーは欺かれ、触手は残像を貫く。本体にも伸びてくるが、その攻撃に当たるほどリョウトは未熟ではなく、その触手をかわし巨大インベーダーの懐へと飛び込んだ。

 

「念動集中! ガイストナックルッ!!!」

 

紅い念動力を纏ったヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントの拳が巨大インベーダーを殴りつける。本来ならばゲッター線を使わない打撃はインベーダーにとっては脅威ではない、その打撃を基点に取り込もうとしたインベーダーは次の瞬間苦悶の雄叫びを上げた。

 

【ギギャアアアアアアアーッ!?!?】

 

強烈な熱によって肉体が溶かされる、その想像を絶する痛みはインベーダーにとって予想外の痛みだった。

 

『ブレードキック展開OK! やっちゃえリョウト君ッ!!』

 

「うんッ!! せいっ!!!」

 

紅い刃を宿したブレードキックによる回し蹴りがインベーダーの身体に真一文字の傷を刻み付ける。念動力の刃、そして熱はインベーダーにとっても十分なダメージを与えていた。

 

【シャアアアアアーッ!?!?】

 

これ以上ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントを近づけてはいけない、本能でそれを悟り逃げようとするインベーダーだが、そうはさせないとヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントはその触手を掴んで無理やり引き寄せる。

 

「お前は逃がさない、ここでお前を倒すッ! リオッ!!」

 

『マグマ原子炉リミッター解除! 装甲展開完了ッ! いつでも行けるわよッ!!!』

 

ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントの肩、脚部、背部の装甲が展開されマグマ原子炉の熱をオーラのように放出し、紅と金の装甲がその熱によって紅く光り輝きフェイスガードが展開される。

 

「これで極めるッ!!! いっけえええッ!!!」

 

残像を残すガイストナックルの左右の連打はインベーダーのゴムのような肉体を貫き、その熱で目玉を焼き消滅させる。

 

【キシャアアアッ!?】

 

「おおおッ!!!」

 

突如飛び出してきたインベーダーの顔にヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントの右ストレートが叩き込まれインベーダーの頭部は焼かれがら消滅し、胴体にその拳がめり込み一際凄まじい轟音とインベーダーの苦悶の叫び声が周囲に響き渡った。

 

「これでトドメだッ!!!」

 

燃え盛るヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントの膝蹴りは質量で上回るインベーダーを跳ね上げ、そこに勢いをつけたヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントの左回し蹴りが炸裂し、更にその巨体を上空へと蹴り上げる。

 

『うぉりゃああああ――ッ!!!』

 

【キシャアアアアアーッ!?】

 

虎龍王の武器を自在に切り替えての連撃もまたインベーダーを打ち据え、その肉体を抉り取り深いダメージを刻み付けていく。

 

『タイラント……オーバー……ブレイクウウウウウッ!!!!』

 

「いっけえええええええッ!!!!」

 

虎龍王に打ち据えられた巨大インベーダーがドリルで貫かれ、ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントの手にしたレーヴァティンに頭から両断された巨大インベーダーが消滅し、伊豆基地を襲っていたインベーダーは打ち止めとなったが、戦いはまだ終わりではない。

 

【……】

 

【……】

 

【……】

 

スリーマンセルを組んでいるメタルビースト・エルアインス、ツヴァイ、ドライが同時に動き出すが、今までのインベーダーと異なり沈黙を保っている事がより不気味さを煽り、これからが戦いの本番だと誰もが悟るのだった……。

 

 

 

 

 

重々しい音を立ててゲッター合金ライフルの空薬莢が排出され、整備兵が運んできている弾頭をライフルに装填し再びトリガーを引く、絶え間なく凄まじい轟音が響いているが、先ほどのインベーダーと異なりメタルビーストを相手にしているからか、その効果は先ほどまでの劇的な効力を発揮していなかった。

 

「厄介ねえ……上手く防御してくれるわ。さっきまでは命中してたのにね」

 

ピンポイント射撃に秀でているエクセレンでさえも思わずぼやいてしまった。30機いたメタルビーストRシリーズは既にその数を10機にまで減らしているが、残りの10機の存在がかなり厄介だった。最初の個体と異なり、司令部からの狙撃に徐々にだが適応し始め、キョウスケ達が思うように攻め込めなくなって来ていた。

 

『くそ、俺はこういうのは苦手なんだ』

 

『ぼやいている場合じゃないよ、マサキ!』

 

サイバスターで無理やり狙撃しているマサキが苛立った様子で叫びながらも、弾丸を装填し引き金を引く。その隣ではヴァルシオーネがうつ伏せになりスナイパーライフルの照準を合わせ引き金を引いていた。

 

【……】

 

【……】

 

装甲に皹が入り、確実にメタルビースト・エルアインス達にダメージは通っている。それでもだ、それでも決め手には遠く及ばない。それ以上にインベーダーの成長が早い、どうしてもその攻勢を完全に食い止めることが出来ない。しかしそれでも劣勢に追い込まれないのはシャインの力が大きかった。インベーダーの獣その物の動きを予知し、ラトゥーニやラッセル達に指示を飛ばし致命傷には遠く及ばないが、それでも戦う為の、もっと言えばインベーダーに寄生させない為の立ち回りが出来ていた。

 

『ラトゥーニ、もう少し左、いえ、上ですわね。斜め上に……そう、そこですわ』

 

『了解です、シャイン王女。ターゲットロック……ファイヤッ!』

 

シャイン王女がインベーダーに寄生されるのは必ず避けねばならない事態なので、ラトゥーニは今回はフェアリオンではなく、ビルドラプター改で出撃していた。シャインは司令部で予知を駆使しメタルビーストの動きを予測し、それに基づいてエクセレン達はキョウスケ達の援護を続けていたが、徐々にそれも通用しなくなってきている。

 

『効果は出ているのに効いてる気がしない』

 

『そうですわね、それにかなり学習されてしまっているようです』

 

MAPWを持つメタルビースト・エルドライは残り1機となっているが逃げ回り、思うように狙撃も出来ず。

 

【!】

 

【!!!】

 

『Eーフィールド展開ッ!』

 

『防げッ!!』

 

3機残っているエル・ツヴァイはビームコートの複合で護りを固め、残骸を盾にし援護に徹している。

 

『速いッ! それに攻撃が読みきれん!』

 

『くそッ! ちょこまかとッ!!』

 

6機のメタルビースト・エルアインスはチェーンソートンファーを駆使し、メタルビースト・特有の低い姿勢からの恐ろしい瞬発力で切り込み、チェーンソートンファーで装甲を傷つけ、即時離脱。そこにエル・ツヴァイの攻撃が襲ってくるので重装甲のグルンガストやジガンスクード・ドゥロでも堪った物ではない。

 

『そこだッ!』

 

『何時までも好き勝手出来ると思うなよッ!』

 

アルトアイゼン・ギーガがメタルビースト・エルアインスが着地しようとした瞬間に突撃しコックピット部から両断し、それに続くようにゲシュペンスト・リバイブ(S)の狙撃がメタルビースト・エルツヴァイの頭部を撃ち抜き沈黙させる。

 

「おかしい、おかしいぜ、ライ」

 

『ああ。俺もそう思う』

 

『倒せているのに何かおかしな所でもある?』

 

アヤはリュウセイとライの会話の意味が判らず、どういうことなのかと問いかける。

 

「弱い、弱すぎるんだ。俺とライが戦ったメタルビーストよりも全然弱いんだ」

 

『これほどまでに簡単に倒せる相手ではないのです。それに念動力も使ってきていないのです大尉』

 

市街地で戦ったメタルビースト・エルアインスとツヴァイはこんな単純な攻撃はしてこなかった。手足を伸ばし、間合いやリーチを自在に変えてありえない角度からの強襲を主にしていた。それが無いという事にリュウセイとライは違和感を抱いていた。

 

『各員に告げる! 今戦っているメタルビーストは複製の可能性が高いッ!! これ以上学習させない為に速攻で決めろッ!!』

 

リュウセイとライが感じていた違和感をキョウスケ達も感じており、これ以上学習させるなと指示を飛ばしたがそれはほんの少しだけ遅かった。

 

【キッシャアアアアアーッ!!!】

 

海中が爆発したかのような轟音を響かせメタルビースト・エルアインスが姿を現し、その後ろから多数の複眼のついたミサイルの弾雨が続くように放たれ、敵味方など関係ないと言わんばかりの弾雨はリュウセイ達は勿論、僅かに残っているメタルビースト・エルアインス達も飲み込み、伊豆基地に凄まじい爆発の嵐を巻き起こすのだった……。

 

 

 

 

 

リュウセイ達の戦っていたメタルビースト・エルアインス、ツヴァイ、ドライの3機はオリジナルのメタルビースト・エルアインス達の作り出したデッドコピーだった。リュウセイ達と戦わせ、戦闘経験を積んだそれらはオリジナルへとその戦闘経験を転送し十分に戦闘経験を積んだと判断したティスの指示で伊豆基地の海に潜んでいたのが姿を現したのだった。

 

「さてさて、これで十分に戦えると思うけどどうなるかな?」

 

「そ、そうですね……大分捨て駒を使いましたけど、数の不利は十分に引っくり返せるんじゃないでしょうか?」

 

「問題は合体させるタイミングですね。ティス、タイミングを間違えないでよ」

 

「判ってるって、あんまり強くなりすぎてもまた支配が効かなくなるしね。でも弱いままじゃ意味がないし」

 

メタルビースト・SRXはインベーダーの中でもかなり進化した個体と言える。極めて近く、限りなく遠い世界での話になるが、最も進化した個体であり、人語を理解こそしていないがその能力はコーウェンとスティンガーに匹敵するレベルにまで上がっている。

 

「少なくともオリジナルのSRXとは戦わせておきたいね、無人機出しておこうか?」

 

「うん、それも良いかもしれない。このままだとゲッターロボに合体するまえに倒される可能性もあるし」

 

「あ、安全第一だと思います」

 

メタルビースト・エルアインス達はかなりの戦力強化となっているが、それでもバラバラの状態ではゲッターロボに勝てるかと言われると不安が残る。

 

「囲まれて合体出来なくされても困るし、かといってダメージを受けすぎて暴走されても困るから適当な所で引き上げないといけないよね」

 

デュミナスがコントロールしているのでティス達の言う事を聞いているが、ダメージを受けすぎてインベーダーの本能が強くなりすぎても困る。しかしそれでは完全ではないメタルビースト・SRXとなり、デュミナスが態々回収に向かった意味が無く、もっと完全に近づけなければならないが、それはインベーダーの活性化に繋がり支配が難しくなる。強くしなければならないが、強くさせすぎてもならないのだ。

 

「コントロール出来る範囲で強くなって貰ってまた支配しなおさないといけないからね。援軍が来る前に合体させようか? 無人機も数が限られてるし」

 

暗躍している間に回収した百鬼獣やレストジェミラと言ったインスペクターや百鬼帝国の戦力はさほど数があるわけではない。正直戦力として数えるのも難しいが、合体までの時間稼ぎに使うと思えば十分な戦力と考える事が出来る。

 

「わ、私はもう少し後の方が良いと思いますけど……」

 

デスピニスはまだ様子を見ようと後ろ向きな意見を口にする。それは制御が出来なくなることを恐れての事だったが、ラリアーは違っていた。

 

「暴走しすぎる前にオリジナルとゲッターロボと戦わせて帰りましょう。このままだと先に暴走する可能性もあるし」

 

ダメージを受けて暴走する可能性があるのならばゲッターの攻撃を受ければその瞬間にアウトだ。ラリアーは早めに合体させ速いタイミングで撤退しようと意見を口にする。

 

「OK。あたいは合体させるべきだと思うから2ー1で決まりね。ラリアーとデスピニスは無人機のコントロールをよろしく♪ さぁ、あんたの全力をあたい達に見せるんだよインベーダーッ!」

 

ティスの指示を聞いたメタルビースト・エルアインス達は一箇所に集まり、Rシリーズとは異なり、触手を伸ばし互いの身体を貫き、体液を流しながら醜悪な合体のフォーメーションに入る。

 

『いかんッ! 合体させるなッ! 撃墜しろッ!!』

 

『判って……なっ!?』

 

虚空から現れたメカザウルスや百鬼獣、そしてレストジェミラの軍団がキョウスケ達の前に立ち塞がる。

 

『メカザウルスッ!?』

 

『それに百鬼獣ッ!? どうなってやがるんだこれはッ!?』

 

インベーダーに何故メカザウルスと百鬼獣、そしてインスペクターが協力しているのか。そのあり得ない光景に合体の妨害をしようとしたその足が止まった、止まってしまった……。

 

『くそが、させるかよぉッ!!!』

 

フォーメーションを組み合体しようとしているのを見てゲッターD2がダブルトマホークを投げ付ける。

 

『合体を阻止しろ! 主砲てえッ!!』

 

『なんとしてもそれだけは阻止するんだッ!』

 

それだけではない、ハガネやシロガネの主砲に加え司令部のヴァイスリッター改からの射撃も加わる。だがそれはメタルビースト・エルアインス達には届かない。

 

【【【……】】】

 

『な、なんなんだこいつら、生気がまるでねえッ!?』

 

『人形みたいだ、くそッ! 邪魔するなッ!!!』

 

デスピニスとラリアーがコントロールしている百鬼獣とメカザウルスが文字通り肉の壁となりその射撃を受け止め撃墜される。

 

『ダイテツ中佐! OOCのプロテクトの解除をッ!』

 

合体を阻止する事ができないと判断したライは自分達もSRXに合体する為にOOCのプロテクトの解除をダイテツに求める。

 

『アヤ大尉! コードOOCのプロテクトは解除した! SRXへの合体を許可するッ!』

 

『了解! リュウ! ライ、行くわよッ!』

 

『おう!』

 

『了解ッ!!』

 

Rシリーズがフォーメーションを組んで合体態勢に入るが、先に合体姿勢に入っていたメタルビースト・エルアインス達がメタルビースト・SRXへの合体を果たした。

 

【キシャアアアアアーッ!!】

 

勝ち誇ったような雄叫びを上げるメタルビースト・SRXから放たれたどす黒い念動力に当てられ、念動力を持たないものでさえも激しい頭痛を感じていた。

 

『武蔵の絵が下手じゃなくて、そっくりじゃねえかッ!』

 

『何て醜悪な化け物だ』

 

悪魔の翼を思わせる翼には無数のインベーダーの眼が蠢き、左腕は完全にインベーダーに覆われ鋭い爪を持った異形の腕となり、両脚部の爪先も同様だ。

 

【シャアアアアアーッ!!!】

 

メタルビースト・SRXはSRXへの合体を阻止しようとどす黒いドミニオンボールを放つ。それはR-ウィングに変形したR-1、パワードパーツをパージし胸部を展開したR-2、そして腰部に変形しようとしているR-3へと真っ直ぐに迫る。

 

『駄目だ、割り込まれるッ!!』

 

『くっ! フォーメーションを解除するしかッ!』

 

『いえ、このまま行くわッ! 念動フィールドを全開にして耐えて見せるッ!!』

 

『アヤ!? 『大丈夫よ! ここで妨害されたら次はフォーメーションに入れるかどうかも怪しいわ!』 アヤ、判ったぜ! ライッ! 

このまま行くぞッ!』

 

『判った、行くぞッ!!』

 

耐えて合体するという選択をしたリュウセイ達。それならばとキョウスケ達はドミニオンボールへの攻撃を始める。少しでも良い、ドミニオンボールの勢いが弱まればと安全に合体できるかもしれないという期待からだ。そしてその思惑は成功し、僅かにドミニオンボールの勢いは弱まるが依然凄まじい破壊力を秘めたままSRXチームへと迫る。

 

『くそッ! 駄目だ! リュウセイ! ライ! アヤッ!! フォーメーションを解除しろ! 無茶だッ!』

 

グルンガストのイルムからフォーメーションを解除しろという怒声が飛んだ瞬間。伊豆基地に狼の遠吠えが響き渡り、漆黒の影が伊豆基地を内部を駆け抜けていく。

 

『あれは!? まさか……』

 

『このタイミングで合流しに来るとか、いい趣味してるぜ、本当によッ! 遅いぜ! イングラム少佐ッ!!』

 

漆黒の猟犬はケルベロスモードへと変形したR-SWORDだった。イルム達の声にイングラムは返事を返さず、広域通信でリュウセイ達の名を呼んだ。

 

『リュウセイ、ライ、アヤ、そのままフォーメーションを維持しろ。武蔵、R-SWORDを使えッ!』

 

『へ、遅いじゃないですか! イングラムさんッ!!』

 

『これでも急いで来たんだ。文句を言われる謂れは無い、文句を言うならもっと早く連絡するんだな』

 

ゲッターD2へと飛んだ漆黒の猟犬は空中で人型へなり、そこから剣へと変形する。

 

『へいへい、判ってますよ、んじゃま行きますよッ!!! うおりゃあああああッ!!!』

 

R-SWORDを掴んだゲッターD2から裂帛の気合の込められた雄叫びが響き渡り、R-SWORDからゲッター線で出来た三日月状の刃が飛びドミニオンボールを全て両断し爆発させ、その隙にRシリーズがSRXへと合体を果たす。

 

『天下無敵のスーパーロボットォォォォッ!!  ここに見参ッ!!』

 

爆発の煙を突き破りSRXがゲッターD2の隣に着地し、ゲッターD2に握られていたR-SWORDも再びPT形態へ変形しSRXの前に降り立つ。

 

『こちらイングラム・プリスケンだ。これより援護に入る』

 

簡潔に再会を喜ぶわけでもない、どこまでも冷静な声のイングラムの声が広域通信で伊豆基地にいる全員の機体へと届けられるのだった……。

 

 

第139話 2柱の戦神と漆黒の猟犬 その3へ続く

 

 




と言う訳で今回はヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントの戦闘とメタルビースト・SRXとSRXの登場、そしてイングラムの自軍合流イベントをやってみました。次回はSRXとゲッターD2とメタルビースト・SRXとの戦いをメインに書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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