第139話 2柱の戦神と漆黒の猟犬 その3
SRX計画の地下ラボで戦況を見ていたヴィレッタはモニターに映し出されているメタルビースト・SRXを見てその眉を細めた。
「これがメタルビースト・SRX……なんて醜悪な……」
悪魔のような翼に生物のような手足、全身に蠢く黄色のインベーダーの複眼――全体的なシルエットは確かにSRXに酷似しているが、SRXとは似ても似つかない化け物……それがメタルビースト・SRXだった。
「ケンゾウ博士、オオミヤ博士。R-GUNの調整はまだ時間が掛かりそう? 流石にあの化け物相手に武蔵とリュウセイ達だけじゃ厳しいわ」
「T-LINKシステムの調整が上手く行ってないんです、暫く時間が掛かると思います。一応そのー……イングラム少佐がいますが」
「それは私も判ってるけど、武蔵の言う事が本当なら……あいつは単独でR-GUNとR-SWORDを作り出せる。そうなったら伊豆基地はどうなるの?」
メタルビースト・SRXの戦闘データは武蔵のDコンに纏められた物が保存されていた。その文の癖からそれを作成したのがイングラムという事はヴィレッタにはすぐ判った。だがデータに残されている物を見てその顔が引き攣ったのは記憶に新しい。
1 メタルビースト・SRXは自分のコピーを作る能力に秀でている。
2 再生能力が極めて高く、両腕を切り落とされても数分で自己再生する。
3 R-SWORDとR-GUNを複製する能力を持ち、インベーダーの再生能力と合わせてHTBキャノン、ブレードを無尽蔵に使用できる可能性が極めて高い。
4 一撃で消滅させれるだけの超火力が無ければ戦闘経験をフィードバックし、より強くなる。
5 ほぼリュウセイの乗るSRXと性能が同じであるということ、それに加えてインベーダーの特性が加わればSRXよりも強い。
「T-LINKシステムが不調ならそれをカットしてくれれば良いわ。それでもHTBキャノンは使える筈」
「それは許可出来ない、ヴィレッタ大尉」
「何故ですか、ケンゾウ博士」
T-LINKシステムをOFFにして出撃させてくれというヴィレッタにケンゾウが待ったを掛ける。
「R-GUNにはマイを乗せるからだ」
「馬鹿な! 彼女をいきなり実戦に出すつもりか!?」
「そうだ。ゲッターロボとSRXで駄目ならばツインコンタクトを用いたHTBキャノンしかないと言う事は大尉も判っている筈」
ツインコンタクトなしHTBキャノンの威力は理論上ゲッターD2の腹部ゲッタービームと同等の出力が予想される。そしてそれが決め手にならないという事はノーマルのR-GUNで出撃しても意味がないということはヴィレッタも判っていた。
「残留思念の事はどうするつもり」
「……マイが自ら乗り越える事をワシには祈る事しか出来ん。ここで伊豆基地もハガネもシロガネも失う訳にはいかんのだ」
伊豆基地には連邦の最大戦力が集まっていると言える。メタルビースト・SRXはインベーダーであり、寄生する能力は健在。今伊豆基地にいる戦力がインベーダーに寄生されれば? ハガネやシロガネが寄生されインベーダーに奪われたとしたら? 百鬼帝国、インスペクター、インベーダー、アインストと複数の敵勢力が存在する中でそれは絶対に避けなければならない事だ。
「……それしかないのね」
ヴィレッタは口から搾り出すように一言そう口にすることしか出来なかった。メタルビーストに齎される被害、そして最悪の結果の可能性――それらを考慮すればR-GUN・パワードに乗るべきなのは自分ではなくマイであるという事が判ってしまったからだった……。
伊豆基地でのメタルビースト・SRXとゲッターD2、R-SWORD、SRXとの戦いは3対1という状況でありながら武蔵達が攻めきれず、メタルビースト・SRXが優勢という状況だった。
【キシャアアアアアーッ!!!】
『うおらああッ!!!』
メタルビースト・SRXと武蔵の雄叫びが重なり、鋭い爪とダブルトマホークが凄まじい火花を散らし、ゲッターD2が伊豆基地のカタパルトを削りながら後方へと弾き飛ばされた。
『くそッ! 相変わらず馬鹿力めッ!!! ゲッタァアアビィィイイイムッ!!!』
【シャアッ!!!】
頭部ゲッタービームとメタルビースト・SRXのガウンジェノサイダーがぶつかり合い、互いの威力を完全に相殺する。
『リュウセイ。仕掛けるぞッ!』
「了解ッ!!」
R-SWORDのゲッター線ビームライフルに合せ、念動力の光を宿した両拳を握り締めSRXがメタルビースト・SRXへと突撃する。
「ザインナッコオッ!!!」
ゲッター線ビームライフルを防ぐのに展開された念動フィールドを右拳のストレートで打ち砕き、即座に左のストレートがメタルビースト・SRXの胸部を捉える。だがその直後胸部が開き、巨大なインベーダーの頭部が顔を見せSRXの左拳を噛み砕いてやると言わんばかりにその巨大な顎を開いた。
『リュウセイ! 離脱しろッ!!!』
「あ、あぶねえッ……す、すまねえライ」
ライの一喝に奇跡的に反応出来たリュウセイは辛うじて離脱することに成功し、目の前で凄まじい音を立ててぶつかる牙を見て冷や汗を流した。
『リュウセイ、油断すんな。こいつらに常識は通用しねえ、どっからでも手足を生やしてくるぜ』
『その通りだ。油断するな』
「す、すまねえ。気をつける……それにしても……こいつ強すぎるぜッ!」
武蔵とイングラムの警告に謝罪しながらもリュウセイは苛立った様子でそう叫んだ。ゲッターD2、SRXの2体を主戦力にし、R-SWORDが的確にフォローしていると言うのに攻めきれない、機体のポテンシャルとインベーダーの闘争本能が見事に合致し、全身武器であるSRXをより凶悪な存在へと変えていた。3機で攻めきれないのならば味方を増やせば良い。敵陣の中に切り込んでいるのではなく、伊豆基地で戦っているのだ。それに周りには先ほどまでメタルビースト・エルアインス達と戦っていたキョウスケ達もいる……普通に考えれば大勢で戦うのが1番最善なのだがそれが出来ない理由があった。
『大尉、敵インベーダーの念動フィールドの中和は出来そうですか?』
『かなり厳しいわね……下手をすると私までおかしくなるかもしれない』
『無理に中和しようとするなアヤ。インベーダーの闘争本能に飲み込まれるぞ。俺達だけでこいつを倒す必要がある』
赤黒い念動力の壁――それによってメタルビーストSRXとSRX、ゲッターD2とR-SWORDは完全に孤立させられていた。
それに加えてレストジェミラ、百鬼獣、メカザウルスの壁を突破するのはキョウスケ達でも容易ではない、仮に突破出来たとしても念動力の壁を突破出来なければ後から追いかけてくる百鬼獣やメカザウルスに背後を取られる。前にも進めず、後にも戻れない。そうなればキョウスケ達と言えど撃墜される可能性が高くなる。
『武蔵、フォワードだ。リュウセイはセンター、俺は支援する』
『ういっす。まずはとにかくあいつの再生能力を上回るダメージを叩き込むしかないですね』
『その通りだ、今はまだ自己再生が効いているが、それを上回るダメージを与えれば突破口も見出せるかもしれない。あくまで可能性だがな』
『ほんの僅かでも可能性がありゃ十分ッ!!! 行くぜえッ!!』
ダブルトマホークを手にしたゲッターD2がゲッター線の光に包まれ姿を消す。それはいつも見慣れた超高速機動だが、普段と比べて精彩に欠けていた。
「やっぱりこの念動フィールドのせいかッ!」
『ああ、武蔵だから何とか立ち回れているがオープンゲットも出来ない、ゲッターチェンジも出来ない。ゲッターロボの最大の攻撃パターンが封じられている』
『教官、それはもしや……』
ゲッターの最大の攻撃パターンを封じている念動フィールド……ライは最初は援軍を封じる為の物と考えていたが、それは全く違っていたのだ。最初からメタルビースト・SRXはゲッターロボだけを敵として見定めていた。
『そんな事はどうでもいい。ここでやつを倒さなければならない、それだけを考えろ。それにお前達を甘く見ていると言うのならばあの化け物に見せつけてやれ、偽物のSRXよりもお前達が操るSRXの方が強いとな』
「当たり前だぜ! 教官ッ! 行くぜッ! ライッ! アヤッ!!!」
『ああッ! 行くぞッ!』
『行きましょう! リュウ、ライッ!!』
イングラムの言葉に奮起しリュウセイ達が駆るSRXはメタルビースト・SRXへと向かっていく。その姿を見ながらイングラムはあることを考えていた、それはメタルビースト・SRXが消えた時の事だ。
(あの時俺達はメタルビースト・SRXが消滅したと考えていた、だが今この状況を見ればそれは間違いだった。あの異形……第三勢力なり得るかもしれん)
メタルビースト・SRXと姿を消した異形の事を思い出したイングラムの頭の中でバラバラのピースが1つになろうとしていた。
メタルビーストの割りには頭脳的な立ち回りをしてみせるメタルビースト・SRX。
インスペクターの無人機、そして百鬼獣とメカザウルス……。
それらは明らかに何者かに操られているようにイングラムには感じられていた。
派閥ところか生き物としても違いすぎるものが1つとなって戦っている……それは一瞬だけ姿を現した異形――デュミナスがなんらかの手を引いているのではなかろうか、アインストやインベーダーとは違うがそれでもゲッター線を求める化け物。
(可能性としては十分にありえる。やはりもうこの世界の因果は完全に崩壊しているか)
武蔵を切っ掛けに乱れ始めた因果――その収束によってフラスコの世界は更なる混迷を迎える予兆となろうとしている事を因果律の番人であるイングラムは感じ取っているのだった……。
メタルビースト・SRXを出現させたティス達だが、彼女達にも大きな計算違いがあった。
「んぎぎぎいいーッ! 駄目だこいつ! 全然あたいの言う事を聞かないぃぃいいッ!」
「今手伝います!」
「早くぅぅうううッ!!!」
ティス1人では言う事を聞かせる事は出来ず、ティスとラリアーの2人掛かりでやっとわずかに言う事を聞かせれるという状況だった。
「わ、私も手伝おうか?」
「だ、駄目だってぇ! デスピニスは百鬼獣とかをコントロールしててぇッ!!!」
「くっくうッ! メタルビーストに百鬼獣まで食わせたらそれこそ僕達じゃコントロールできないからぁッ!!」
苦悶の声を上げる2人にデスピニスは手伝おうかと声を掛けたが、メタルビースト・SRXが完全にコントロール不能になる事を恐れたティスとラリアーの2人によって制止される。
「くそおッ! あたい達の言う事を聞けえッ!!!」
『TーLINKソードッ!!!』
【シャアアアアッ!!!】
SRXの拳から伸びた念動力の刃とメタルビースト・SRXの鉤爪がぶつかり合い凄まじい火花を散らす。
『う、うおおおおッ!!!』
【シャアアッ!!!】
『リュウセイ! 頭を下げろッ!!』
装甲の隙間から伸びた触手を見てイングラムが叫びながら指示を出し、SRXの背中を踏み台にしてメタルビースト・SRXの頭上を取る。
『お前達の好きにはさせんッ!!!』
上空から降り注ぐゲッター線ビームライフルの光が鍔迫り合いをしているSRXを取り込もうとしたメタルビースト・SRXの触手を焼き払う。
『うぉらあッ!!!』
【ギガアッ!?】
そこに背後からメタルビースト・SRXの肩を掴んで、無理やり自分の方を向かせたゲッターD2の鉄拳がめり込みメタルビースト・SRXを海まで殴り飛ばし、凄まじい水柱が上がる。
「これで少しは……ってやっぱり駄目かッ!」
「と、闘争本能がどんどん増してます。これ以上のコントロールは無茶かもしれない!」」
エルアインス・ツヴァイ・ドライはメタルビースト・SRXという強烈な個を3つに分割し制御しやすくしていた。だがそれが再び1つになれば完全にコントロールするのは限りなく不可能に近かった。
「あ、あのー1回コントロールを破棄してみたらどうですか?」
それでも何とかコントロールしようとしているとデスピニスがおずおずとそう提案した。
「いやいや、デスピニス。何言ってるのさ、そんなことをしたら暴走するよ」
「あ、あのですね。全部全部言う事を聞かせようとするんじゃなくて……そのーあのですね……ある程度は向こうに任せたらどうでしょう?」
完全にコントロールしようとするから反発する、抵抗する。戦いたいように戦わせ、やり過ぎないようにある程度指示を出すくらいにしたらどうでしょうか? とデスピニスは提案する。
「う、うーん。ラリアーはどう思う?」
「このままだと僕達じゃコントロールしきれません……それも1つの手かもしれません」
手綱を完全に取るのではなく、ある程度はメタルビースト・SRXに任せたほうが制御が安定するかもしれない。誰しも頭ごなしに命令され、自分の意志が何一つ通らないのでは余計に反発する。デスピニスの提案はある意味筋が通っていた、ティスは少し考え込む素振りを見せた後に頷いた。
「もしあたいのコントロールを完全に外れたら2人も手伝ってね?」
不安そうなティスの言葉にラリアーとデスピニスが頷くとティスはメタルビースト・SRXを縛り付けていた枷を解き放った。
【キシャアアアアアッ!!!!】
SRXの特徴的なフェイスパーツの中の黄色の複眼が紅く輝き、メタルビースト・SRXは凄まじいエネルギーを放出させながら凄まじい咆哮を上げる。
『な、なんだ。こいつ急に……』
『いいや、これがこいつの本気だぜ。気をつけろよ、リュウセイ』
全身のインベーダー細胞が隆起し、猫背になったメタルビースト・SRXが不気味な呼吸を繰り返す。それが紛れも無くメタルビースト・SRXの最強の姿であり、己を縛っていた鎖から解き放たれた証でもあるのだった……。
武蔵がそれを防げたのは一重にその類稀なる野生の本能と言ってもいい。なんせ武蔵は柔道の修行の為に大雪山で山篭りをし、恐竜帝国によって猿にされた人間の群れのボスになった経験もあるほどの男だ。殺気などを感じ取る能力は一際秀でている、そんな武蔵でさえもギリギリのタイミングだったと冷や汗を流すほどにメタルビースト・SRXの動きは速かった。
「……っち、こんな事を言うのはなんだけど、キョウスケさん達がいなくて良かったぜ」
オープンゲットもゲッターチェンジも封じている念動フィールドだが、今この時だけは感謝しても良い。武蔵はそう考えていた……何故ならばダブルトマホークが一撃で圧し折られ、ゲッターD2の背後に突き刺さっていたからだ。
『い、今何がッ!?』
『こんなことで動揺するなリュウセイ。来るぞッ!』
何が起きたのか判らないリュウセイにイングラムはそう一喝するとR-SWORDを操り、上空へと舞い上がる。その下を凄まじい速度で伸びて来たメタルビースト・SRXの薙ぎ払いが通過する。
『う、腕を伸ばしてるのかッ!?』
『リュウセイ! 来るぞッ!!』
R-SWORDを捉えることが出来なかったと判断するとメタルビースト・SRXは即座に体を反転させ、その伸縮自在の腕をSRXへと伸ばす。
『ぐっ!? なんて破壊力だっ!?』
一撃で念動フィールドを突き破りSRXの姿が後方に向かって弾き飛ばされる。
【シャアアッ!】
「させるかってんだッ! ブラストキャノンッツ!!!」
追撃に走り出そうとしたメタルビースト・SRXに向かってその手から出現したキャノン砲を放つゲッターD2。だがメタルビースト・SRXはそんなことお構いなしに念動フィールドを展開しSRXへと突撃する。
「させるかって言ってんだよッ!!! リュウセイ! なにしてやがるッ! さっさと立ち上がれッ! 死にてぇのかああ――ッ!!」
殴り飛ばされ動かないでいるSRXに向かって武蔵はそう叫ぶとメタルビースト・SRXの前へ立ち塞がる。
【シャアアッ!!】
「うおらあッ!!」
ザインナックルとゲッターD2の拳が交差する。メタルビースト・SRXの一撃が破壊力を優先した大振りな一撃に対し、ゲッターD2の攻撃はコンパクトに的確にカウンターを狙っての物だった。
「ぐっ!? くそがッ! バトルウィングッ!!」
メタルビースト・SRXの攻撃が1発当たるまでに、2発3発と叩き込んでいたゲッターD2だが腕が交差したその瞬間にその腕を太くしたメタルビースト・SRXによって上空に跳ね上げられ念動フィールド内では自由に飛べない事を承知でバトルウィングを展開する。
【コハアアッ!】
「ちいっ!! リュウセイ!! 相殺してくれッ! 浮いちまったらゲッターじゃ逃げ切れねえッ!!!」
上空という自由に移動できない場所にゲッターが移動したと同時にインベーダー細胞に寄生されたテレキネシスミサイルが乱射される。
『なんとか振り切れッ! リュウセイ! アヤッ!』
『判ってるぜ教官ッ! ガウンジェノサイダーァァアアアアッ!!!』
『テレキネシスミサイル発射ッ!!!』
ゲッターD2を追い回すテレキネシスミサイルの2割がガウンジェノサイダーの光の中に消え、残りの2割はテレキネシスミサイルとぶつかり合い爆発し墜落する。残りの1割はR-SWORDの神技的な射撃によって迎撃され、最後の5割は頭部ゲッタービームによって迎撃される。
「ぐっ!? うおあああああッ!?」
だがテレキネシスに対応すると言う事はメタルビースト・SRXへの対応が一挙動遅れると言う事を意味しており、足に巻きついた触手に左足を砕かれ、そのままゲッターD2は地面に叩き付けられる。
【キシャアアアアアッ!!!】
『む、武蔵ぃッ!!!』
勝利を確信した様子で叫ぶメタルビースト・SRXへ引き寄せられるゲッターD2を見て、思わずリュウセイが武蔵の名を叫ぶ。だが武蔵は冷静に頭部ゲッタービームを駆使し触手を断ち切ると超低空飛行でSRXとR-SWORDの元へと戻る。
「やべえな。強くなってやがる」
『だ、大丈夫なのか武蔵』
左足は砕かれ、ゲッターの装甲にはあちこちが凹んでいる様子を見てライが引き攣った声で大丈夫なのかと問いかける。
「ゲッターの装甲は基本的に張りぼてだから問題はねえ。とは言え……あんまりダメージが重なるとやべえな」
口にはしなかったが武蔵はメタルビースト・SRXがゲッターの装甲の弱点をついた攻撃をして来ている事を感じ取っていた。確かにゲッターの装甲は張りぼてである程度は再生も効く。だが何度も何度も再生を繰り返してはエネルギーを著しく消耗する、ただでさえドラゴンはビームを多用する事でエネルギーの消耗が激しい、自己再生が効くといってもこうも全身を攻撃されていてはその内エネルギーが底をつくのは目に見えていた。
(こいつ……賢くなってやがる)
ゲッターの弱点を見抜き、最も嫌な戦い方をしてきている。目が紅くなってから動きも生き生きしていると武蔵は感じていた。
【シャアアッ!!】
『念動結界ドミニオンボールッ!!!』
鏡合わせのようにメタルビースト・SRXとSRXの放ったドミニオンボールがぶつかり合い爆発を繰り返す。
「ダブルトマホークランサーッ!!!」
斧形態で斬るではなく槍で突くへと攻撃を切り変え、ゲッターD2はメタルビースト・SRXへと切り込む。
(くそ、攻めきれねえッ!)
攻撃パターンを変えてもメタルビースト・SRXは即座に対応する。単独操縦のゲッターD2で戦うにはメタルビースト・SRXはどうしても厄介な相手だった。長引けば長引くほどに武蔵は焦りを感じ、そして焦りはミスを産む。
『武蔵! 前に出すぎだッ!』
「しまっ!?」
イングラムの警告がポセイドン号に響いた瞬間、ゲッターD2の姿はハイフィンガーランチャーの弾雨に飲み込まれ、吹き飛ばされゲッターD2は全身を穴だらけにされ背中から伊豆基地のカタパルトへと叩きつけられるのだった……。
誰もが目の前の光景が信じられなかった。無敵と思われていたゲッターD2が倒れ、火花を散らしている。
「嘘だろ」
誰が口にしたかは判らない、いや全員が口にしていたのかもしれない。ゲッターロボが倒れていると言う光景は誰も我が目を疑う光景だったがバトルウィングを展開し、即座に立ち上がるゲッターロボの姿に安堵の声があちこちから零れる。
「武蔵! 大丈夫かッ!?」
『オイラは大丈夫だ、ちょいとあせっちまった……すまねえ、心配させた』
心配させたと謝る武蔵だが、その声色は硬く、武蔵の焦りがリュウセイ達にも伝わって来た。
『正直に言え武蔵、今の状況はどうなってる』
『エネルギー残量は50%を切りました。回復するって言ってもそう簡単に回復する量じゃないっすね』
メタルビースト・SRXやメタルビースト・R軍団を抑える為に戦い続けていたゲッターロボのエネルギーは想像以上に消費していた。いやもっと言えば新西暦の地球に降り注ぐゲッター線は微量であり、休養を挟めば十分にゲッター線は回復出来た筈だったが、連戦に連戦が続き自然回復では間に合わないほどにゲッターD2はゲッター線を消耗してしまっていた。つまりそれは今までに溜まりに溜まった負積が一気に武蔵とゲッターロボに牙を向いた形になった。
『ゲッタービームは撃てるか?』
『頭のなら5発、腹なら1発って所っすね』
エネルギーの消耗が少ないライガーやポセイドンを使いエネルギーを回復させながら戦えず、ライガーほど機動力が無く、ポセイドンほど防御力が無いドラゴンは逃げを打つ必要があり、それがエネルギーの大量消費の理由だった。
『R-SWORDを使え、ゲッター炉心を同調させれば微弱でもエネルギーが回復する筈だ』
R-SWORDのゲッター炉心とゲッターD2の炉心を同調させれば微量のゲッター線でも回復出来るはずだとイングラムが提案する。
『了解って言いたいんですけどねえ。どうも無理みたいですよッ! リュウセイ! イングラムさん! ゲッターの後にッ!!!』
武蔵はそれを最初は了承しようとしたが、即座にリュウセイ達にゲッターの後に隠れるように叫び見た目だけは完全に修復したゲッターD2をSRXを庇うことが出来る位置へと移動させる。海面を突き破り姿を見せたのはメタルビースト・R-GUNだった。出現した時から海中に潜んでいたメタルビースト・R-GUNは空中でメタルジェノサイダーモードに変形しメタルビースト・SRXの手の中へと収まる。
『ゲッタァアアアアアッ!!!』
【シャアアアアアーッ!!!】
R-GUNとゲッターD2の腹部にエネルギーが集まり、2機を中心に凄まじいエネルギーの奔流が暴れまわる。
『ビィィイイイイムッ!!!』
【シャアアアーーッ!!!!】
フルパワーのゲッタービームとメタルジェノサイダーのぶつかり合いは一瞬だった。これは互いの特性が大きく関係していたとも言える、武蔵のゲッターD2のゲッター線を+とすれば、メタルビースト・SRXのゲッター線は-だ。互いに吸い寄せられ、そして圧倒的なエネルギーの密度の差でゲッタービームとメタルジェノサイダーは互いの狙いを外し、ゲッタービームはメタルジェノサイダーを保持していない左腕と左頭部を消し飛ばし、メタルジェノサイダーはゲッターD2の身体を掠め念動フィールドを突き破り空へ一条の光を残した。ダメージで言えばメタルビースト・SRXの方が上だったが、被害が深刻だったのはゲッターD2の方だった。腹部のゲッタービーム発射口が点滅を繰り返し、ゲッターD2は地響きを立てて膝をついた。
『ちくしょうめッ! エネルギー切れだッ!!』
メタルジェノサイダーを相殺するのにゲッターD2はエネルギーを使いすぎた。再び立ち上がる余力も無く膝をついたままのゲッターD2のカメラアイから光が消えた。
『リュウセイ! この好機を逃すなッ! R-SWORDを使えッ!!』
「ああ、判ったぜ! 教官ッ!!! アヤッ!!」
『判ってるわッ! T-LINKフルコンタクトッ!!!』
「念動結界ドミニオンボールッ!!!」
SRXが突き出した右掌から念動力で出来た無数の光球がメタルビースト・SRXに向かって放たれる。
【キシャアアアーッ!!!】
だがメタルビースト・SRXもただでやられるわけが無い。失った左腕をインベーダーの細胞だけで再生し、SRXの腕とは似てもにつかぬその触手が集まり、辛うじて腕の形となった異形の左手から赤黒いドミニオンボールを放つ。ドミニオンボールが互いにぶつかり合い、凄まじい音と爆発を繰り返す。
『トロニウムエンジンフルドライブッ!』
『リュウ! 少佐ッ!!』
「おうッ! 行くぜ教官、ライ、アヤッ!!!」
ブレードモードに変形したR-SWORDをSRXが掴み頭上へと振り上げると同時にメタルビースト・SRXへと突撃する。
【ゴアアアアアアアアアーッ!!!!】
メタルビースト・R-GUNが中から裂けるようにR-SWORDへと変形し、メタルビースト・SRXはSRXを迎え撃たんとメタルビースト・R-SWORDを振りかぶりSRXへと突撃する。
「超必殺ッ!!! 天上天下ッ!! 念動次元斬ッ!!!!」
【シャアアアアアアアアーーッ!!!!】
互いに相殺しあったドミニオンボールをR-SWORDへと集め、眩いまでに輝く翡翠色の巨大な大剣と赤黒い大剣がぶつかり合う。
「うぉおおおおおッ!!!」
【キッシャアアアアアアアアーーッ!!!】
リュウセイとメタルビースト・SRXの雄叫びが木霊し、凄まじいエネルギー同士のぶつかり合いで発生した嵐が伊豆基地の設備を問答無用で破壊する。
「念動爆砕ッ!!!!」
【ギギャアアアアアア――ッ!!!】
鍔迫り合いに勝利したのはSRX、そしてR-SWORDだった。袈裟切りに切り裂かれたメタルビースト・SRXの下半身と上半身がずれ、その身体がずるりと左右にそれる。
『やったか!?』
『流石にあそこまで切り裂かれたら生きていけねえだろッ!』
念動フィールドが消滅した事で遮断されていた通信が回復し、キョウスケ達の声がリュウセイ達の下へと届く。
『まだだ! 油断すんなッ!! リュウセイッ!!!』
だがそれを一喝で止めたのは武蔵だった。そのまま下半身と上半身が分かれると思ったメタルビースト・SRXはそれぞれから触手を伸ばし強引に身体をつなぎ止める
【ゴガアアアアアアアアーッ!!!】
「う、うわああああああ――ッ!?!?」
メタルビースト・R-SWORDが開き、無理やり作り出されたメタルジェノサイダーモードの銃口から凄まじい光が放たれSRXからリュウセイ達の悲鳴が木霊する。
『リュウセイッ!』
爆発を繰り返すSRXを見てビルトラプター改からラトゥーニのリュウセイの身を案ずる声が広域通信で響く。
「な、なんとか……無事だッ! 教官はッ!?」
『こっちも大丈夫……と言いたいところだが、そうも言えんな……』
R-SWORDが盾になった事、そして無理やり使用したメタルジェノサイダーだった為照射時間が短かった事で撃墜は間逃れたが、それでもSRXとR-SWORDのダメージは深刻なものだった。
【キ……キシャアアアアアッ!!】
メタルビースト・SRXがSRXへの擬態を解除し、巨大な牙と鋭い爪、そして伸縮を繰り返す長い舌を露にし、足を引きずりながらSRXへと迫る。
『SRXを喰うつもりかッ!』
『させるなッ! 攻撃をメタルビースト……何ッ!? こいつらまだ出てくるのかッ!?』
『武蔵! 武蔵! 何とかならないかッ!?』
『出来るならとっくになんとかしてる!! くそッ!』
地響きを立ててメカザウルス、百鬼獣が出現しキョウスケ達の前に立ち塞がり行く手を遮る。SRXの近くに居る武蔵に何とかならないかという通信が繋げられるが帰ってきたのはレバーを必死に動かす音と苛立った様子の武蔵の怒声だった。それだけ武蔵に余裕は無く、そしてゲッターロボも炉心の再起動が出来ない状況に追い込まれていると言う証だった。その時だったメタルビースト・SRXとの戦いの中でボロボロになった伊豆基地の中で奇跡的に無事だったSRX計画の地下ラボからパワードパーツを装備したR-GUNがリフトアップされる。
『アヤ。今助けるッ!』
『!? パイロットは隊長ではないのか!?』
「今の声はッ!? やっぱりあの時のッ!」
『……そうか、やはりこうなるのだな』
R-GUN・パワードから響いた声がヴィレッタの物ではなかった事にリュウセイとライは驚きを隠せなかったが、イングラムだけはそれを知っていた。因果律の番人だからこそわかる事だが、マイそしてレビは必ずR-GUNに乗る……それはどの世界でも定められている1つの結果だった。
『あ、あなた……ッ! ど、どうしてッ!? そ、それより危ないわ! 早く戻るのよッ!』
『アヤは私を守ってくれた……ッ! 今度は私の番だッ!』
危険だと戻れというアヤにマイは強い口調で今度は自分が助けるのだと叫んだ。
『アヤ、あの子の思いは止められない、ならば拒絶するのではない受け入れろ』
『少佐……判りました。あなたの力、借りるわねッ!』
イングラムが促さなくともアヤはマイの力を借りていただろう。だがそれでも迷いがあった、再びマイを戦場に呼び戻して良いのかという躊躇いがあった。だがそれがマイの決意とイングラムの言葉で払拭された。
『リュウ、 HTBキャノンの発射準備をッ!』
「アヤ! これは……いや、後で良いからちゃんと説明してくれよッ!」
『判ってる! でも今は押し問答をしている場合じゃないわッ!』
メタルビースト・SRXは今もなおリュウセイ達に迫っている。今ここでで押し問答をしている時間はない事はリュウセイも判っており、アヤの言葉を受け入れる。
「行くぜ皆ッ!」
『了解した!』
『システムコネクトッ! マイ行くわよッ!!!』
『判ったアヤッ! T-LINKツインコンタクトッ!! メタルジェノサイダーモード機動ッ!』
メタルジェノサイダーモードになったR-GUNと合体したSRXを見て、メタルビースト・SRXも再びメタルジェノサイダーモードに変形したメタルビースト・R-GUNをその手にする。
『トロニウムエンジンフルドライブッ!』
『リュウ! トリガーを預けるわよッ!』
R-1のコックピットの一部が変形しHTBキャノンのトリガーがその姿を現し、リュウセイは両手でそのトリガーを握り締めた。
「おうよッ! くらえ偽物ッ! これが本物の天上天下一撃必殺砲だぁぁあああッ!!!」
【■■■――ッ!!!!】
リュウセイの魂を込めた雄叫びと共に放たれたHTBキャノン……いや、一撃必殺砲はメタルビースト・SRXのメタルジェノサイダーの光を、そしてメタルビースト・SRXまでも飲み込み空間を纏めて焼き払った。光が消えた時にはメタルビースト・SRXも、メタルビースト・R-GUN、そして何度もキョウスケ達の足止めをしていたメカザウルス達の姿もいずこかへと消えていた。
「メタルビースト・SRX及び、百鬼獣、メカザウルスの反応消失を確認」
「……各員に帰還命令を、それと周囲の警戒を怠らないように通達」
了解ですと返事を返すテツヤを見ながらダイテツは艦長席に背中を預け深い溜め息を吐いた。確かにメタルビースト・SRXを退ける事は出来た。だが伊豆基地へのダメージは深刻、その上メタルビースト・SRXの残骸がない事からまだ生存している可能性もある。
(何者かの影が存在するかもしれん……)
現れたばかりのメタルビースト・SRXは明確な知恵を見せていた、そして百鬼獣に消え去った筈のメカザウルスに、インスペクターの無人機まで確認された。それはアインスト、インベーダー、百鬼帝国、インスペクターに続く新たな侵略者の影をダイテツは感じているのだった……。
第140話 2柱の戦神と漆黒の猟犬 その4へ続く
ほかの面子の陰がかなり薄かったですが、今回はメタルビースト・SRXとSRXとゲッターの戦いがメインだったのでご容赦ください。
流石にメタルビースト・SRXにゲシュペンストとかを向かわせるのは無謀を通り越して遠回しの死刑判決だと思ったのでやめたのでご了承願います。ただ今回の戦いを見て更に強化フラグが成立したと思っていただければ幸いです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
PS
陽電子砲復刻ガちゃを一周したのですが、パックマンのSSR3枚、斬艦刀・雷光切り・ヒートショーテルアジテートのSSR5枚という結果でした。
斬艦刀とヒートしょーテルに関してはくるのが遅いですし、パックマンのSSRは3枚もいらないので1枚は陽電子砲が良かったです……。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い