進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第140話 2柱の戦神と漆黒の猟犬 その4

第140話 2柱の戦神と漆黒の猟犬 その4

 

メタルビースト・SRX。そして百鬼獣、メカザウルス、インスペクターの混成部隊との戦いを終え、イングラムも合流したのだが……武蔵の時とは違い英雄の帰還とはならなかった。

 

「……」

 

「ヴィレ……ぐふっ!?」

 

R-SWORDから降りてきたイングラムに無言かつ早歩きで近づいて来たヴィレッタのフルスイングの左ビンタが叩き込まれる。

 

「教官ッ!? 隊長もなにをやってってアヤぁッ!?」

 

躊躇い無し、全力フルスイングの凄まじい音にR-1から疲労困憊で降りてきたリュウセイの横をヴィレッタに負けない早歩きで通り過ぎていくアヤの姿にリュウセイが驚きの声を上げる。

 

「イングラム教官」

 

「な、なんだアヤぁ!?」

 

左右の連続の往復ビンタがイングラムの顔を右へ左と弾き続ける。避ける事も防ぐことも出来ない神速の往復ビンタ、しかも無言でそれを続けているのでアヤの迫力が凄まじい事になっている。

 

「うわぉ……凄い事になってるわね」

 

「……まあ武蔵とは状況が違うからな」

 

好き勝手していた訳では無いが、イングラムは合流出来るのにそれをせずに今まで放浪していた訳でアヤやヴィレッタの怒りを買っているのも当然だった。最後に全力で振りかぶった右ビンタが叩き込まれ、イングラムの両頬には鮮やかな赤い椛が咲いた。

 

「ライ、後でリュウセイとSRX計画のラボに来るように」

 

「私と隊長はちょっと用事があるから」

 

「判りました」

 

逆らってはいけない、そして聞いてはいけないと悟ったライはイングラムの処刑を終えて歩き去るヴィレッタとアヤの2人を敬礼で見送った。世の中には逆らってはいけないものがある……ライはそれを知っていたのだ。

 

「よー少佐! 約束通り面借りるぜッ!!」

 

「ごっ!? お、お前少しはてか……「んでこっちはリンの分ッ!!!」

 

容赦のないイルムの拳骨2発にイングラムは格納庫に崩れ落ちる。

 

「クスハ汁だ! クスハ汁もってこいッ! 冷蔵庫に入ってただろ、武蔵とアラドが好きだから!」

 

「しゃあ! 足を押さえろッ! 逃がすなよッ!!」

 

MIAとなっていたイングラムの階級は現在停止処分中なので整備兵達も出て来て、イングラムを拘束する。

 

「歓迎の健康ドリンクだ、飲んでくれよ、少佐」

 

「ま、待て! それぶああッ!?」

 

クスハ汁のボトルを口に突っ込まれたイングラムは大きく1度痙攣し、徐々に抵抗が弱まり最終的に沈黙した。

 

「教官っ!?!?」

 

「イングラムさぁぁんッ!?」

 

ぴくりとも動かなくなったイングラムを見て武蔵とリュウセイの絶叫が響く中、R-GUN・パワードから降りた少女が逃げるように壁伝いに格納庫の出口に向かい、アヤとヴィレッタに連れられて行く姿を注視している者は格納庫には殆どいなかったが、1人だけ……ラトゥーニだけがその姿を見つめていた。

 

「……今のパイロット、どこかで……」

 

見た事が無いはずなのだが、どこかで見ている。その気配をラトゥーニはどこかで感じ、脅えるように、誰にも会いたくないと言う感じで逃げていくその姿をジッと見つめていた。

 

「ラトゥーニ、何をしているのですか? リュウセイにジュースとタオルを持っていくんじゃないんですの?」

 

「シャイン王女、はい、すいません、少し考え事をしてて」

 

「もう、しっかりしてくださいな。武蔵様ー! タオルとジュースを持ってきましたわぁッ!」

 

オイラは様ってキャラじゃないってと言ういつものやり取りをするシャインと武蔵の隣を抜け、ラトゥーニはリュウセイの前に立つ。

 

「これ、タオルとスポーツドリンク」

 

「悪いな、ラトゥーニも出撃していたのに……」

 

「ううん、良いよ。これ、ライディース少尉も」

 

「ああ、ありがとう」

 

ライにもスポーツドリンクとタオルを差し出すラトゥーニだが、リュウセイに渡すときと比べるとやや淡白な反応でライは苦笑しながら、タオルで汗を拭いスポーツドリンクを口にする。

 

「なぁ、ライ。R-GUNのパイロットだけど何処かであった事ないか?」

 

「いや、俺は覚えがないがどうかしたか?」

 

「どこかで会ったような……なんかそんな……ラトゥーニ、どうかしたか?」

 

「ううん、なんでもないよ」

 

なんでもないと言う顔ではなく、明らかに怒り、いや嫉妬の表情を浮かべているラトゥーニとそれに気付いていないリュウセイ。余りにもお子様過ぎるリュウセイとラトゥーニの恋路はまだまだ前途多難のようだった……。

 

 

 

 

 

伊豆基地に回収されたメカザウルス、そして百鬼獣を解析する為に格納庫の中身を1つ丸々取り出した即席解析場にダイテツ、レイカー、そしてレフィーナとリー。そしてショーンとテツヤと伊豆基地のトップと戦艦の艦長と副長の姿があった。

 

「やっぱりかあ、こんな事あるんだな、ラドラ」

 

「ああ、正直俺も驚いている。こいつは確かにメカザウルスだが……メカザウルスであって、メカザウルスではない」

 

ラドラとコウキがオブザーバーで呼ばれている事は知っていたが、武蔵の姿もありダイテツ達は僅かに驚いた表情を浮かべる。

 

「武蔵君、君もこっちに来たのか?」

 

「レイカーさん。いや、すいませんね。勝手に入り込んじゃって、でもどうしても気になる事があったんですよ」

 

念の為に防護服を着込む事が条件になっているので、ややくぐもった声で武蔵が返事を返した。

 

「メカザウルスであって、メカザウルスではないって事ですか?」

 

「なんだ、聞いてたんですか……メタルビースト・SRXと戦ってる時は余裕がなかったんですけど、後で考えるとおかしいなあって思ってラドラに話を聞きにきてたんですよ。こいつら中身が無いそうなんですよ」

 

「「「「中身が無い?」」」」

 

中身が無いという武蔵の言葉にダイテツ達が声を揃えて鸚鵡返しに尋ね返す。

 

「正確には人工知能が搭載されていない、ある程度の自立行動が可能なAIが搭載されていると言う所だな」

 

「すまない。それは同じ意味に聞こえるのだが?」

 

人工知能とAI何が違うのかとリーがラドラに尋ねる。するとラドラは説明の仕方が悪かったなと頭を振った。

 

「メカザウルスは基本的に元になった恐竜の脳をベースに改造した高性能の人工知能を搭載している。それにより、恐竜の凶暴性と兵器としての火器管制能力を得ている。だがこいつらは普通のAIだ、無人機などに使われる精度の低いAIが代わりに使われている。簡単に言うとだな、制御しやすくなった代わりにメカザウルスの強さを失っているといっても良いな。まぁそれでもPTやAM相手には強敵だがな」

 

獣の本能を失い、安定性を増させたメカザウルス。武蔵や、コウキ、ラドラから見れば伊豆基地に出現したメカザウルスは脅威では無いが、キョウスケ達ならば十分に強敵と言えるだろう。

 

「だがラドラ少佐、マグマ原子炉を複数入手出来たのだろう? リバイブの増産も出来るではないか?」

 

「それに関してだが、レイカー司令。こいつらの炉心は破壊されている、どうも機能停止と共に破壊されるように調整されているようだ。コウキ、そっちはどうだ?」

 

「こっちもだな、百鬼獣の炉心は全部停止している。取り出して修理出来れば高性能なエンジンが手にはいると思ったんだがな」

 

メカザウルスと百鬼獣の炉心――そのどちらかを入手出来ればと考えていたコウキとラドラだが、機能を停止していると肩を落とす。

 

「修理は無理なのですかな?」

 

「不可能では無いが時間が掛かる。取り出した5個の炉心を使って1個の炉心になるかどうかだ、それに修理に必要な材料などを考えるとな……」

 

「コストが割りに合わないという事ですか」

 

修理は可能だが複数の炉心の中で使えるパーツだけを選りすぐり、ラドラで修復出来るパーツで繋ぎ合せると言ってもコストが高くなる。

 

「俺も似たようなものだな、どうしてもというのならやらないでもないが……どうする? そこら辺は其方に任せる」

 

修理するか廃棄するか、それはダイテツ達に任せるというコウキとラドラの言葉にレイカーは少し考える素振りを見せる。

 

「修理を頼む。今回の事で思ったが、敵勢力が強すぎる。ゲシュペンスト・MK-Ⅲでは戦力不足となりかねない」

 

新西暦の英知を結集し、拡張性と機体性能の両方を極限まで高めたゲシュペンスト・MK-Ⅲでもアインスト、インベーダー、百鬼帝国と戦うには力不足だ。リバイブやシグに匹敵するパワーを手に出来るマグマ原子炉を見逃すという選択はレイカー達には無かった。

 

「武蔵。君に頼みがあるんだが、良いかね?」

 

「はい? オイラに出来る事で良ければ」

 

「キジマ・アゲハ達をクロガネで保護して貰えないかビアンに聞いてくれないか?」

 

「それはまたなんでですかね?」

 

伊豆基地で保護しているアゲハ達をビアンに保護してくれないかというレイカーの頼みに武蔵は首を傾げる。

 

「ゲッターD2とメタルビースト・SRXとの戦いで伊豆基地は凄まじい被害を受けた。その上プランタジネットの関係で軍の上官がやってくる事になっているが……そこに鬼がいないとは言い切れない」

 

設備が万全ならば保護を続ける事も出来たがそれも難しい。どこに鬼がいるか判らない以上連邦のほかの基地に預ける事もリスクがあり過ぎる。

 

「判りました。1回ビアンさんに連絡を取って見ます」

 

「すまない。私に任せておいてくれと言って情けない事になってしまった」

 

本来ならば伊豆基地で護り続ける事が出来たのだが、人知を超えた戦いに巻き込まれた伊豆基地は基地としての機能の4割を失ってしまっていた。

 

「だがこれでメタルビースト「あの凄い言いにくいですけど、あいつ多分まだ生きてます」なっ!?」

 

伊豆基地の基地機能を失ったが、これでメタルビースト・SRXを倒せたのならばと言おうとしたレイカーだが、武蔵はその言葉を遮りまだ生きていると口にした。

 

「馬鹿な、HTBキャノンの直撃を受けたんだぞ!? 武蔵、お前の考え違いじゃないのか!?」

 

話を聞いていたテツヤが声を荒げ、武蔵の勘違いではないのかと叫ぶ。だがその気持ちも判る、圧倒的な強者であるメタルビースト・SRXがまだ生きていると思いたくないのは誰もが同じだった。

 

「メタルビーストは見てきた中だと、寄生してそれをベースにして自分の身体を構築した物と、取り込んであるデータを元に無機物と有機物を取り込んで発生するのがあるんですけど、前者なら倒したら寄生されたベースが残るんですよ」

 

失われた時代、そして未来で戦って来た武蔵だがその中で残骸が残る者とそうではない個体を見てきた。だからこそ、武蔵はメタルビースト・SRXが生きていると断言した。

 

「つまり破壊された量産型のSRXの残骸が発見されていないという事が生きていると言う証明ということか」

 

「それに敵は転移で出現して来た、倒される寸前に回収された可能性もある」

 

メカザウルス、百鬼獣などが転移で出現して来たのだ。転移によって回収された可能性は極めて高いと言える。

 

「今度出現するまでにもっと戦力を整えておかなければ……」

 

「今度は負ける可能性があると言うことか……」

 

SRXとゲッターD2の組み合わせでやっと互角、今回の戦いの経験を積んだメタルビースト・SRXが出現すれば敗色濃厚となる……今回は何とか退ける事が出来たが状況は悪化の一途を辿っているのだった……。

 

 

 

 

 

SRX計画の地下ラボにあるブリーフィングルームではなんとも言えない微妙な雰囲気が広がっていた。

 

「きょ、教官、大丈夫なのか?」

 

「あ、ああ……大丈夫だ。問題はない」

 

「いえ、とても大丈夫そうには見えないのですが……」

 

死人のような顔色に両頬に椛を咲かせたイングラムはぐったりとした様子で額に氷嚢を当てていた。

 

「今まで好き勝手して来たんだからこれくらいは当然よ」

 

「ちょっとやりすぎた感じもするけど、私はこれで許すつもりよ」

 

底冷えする笑みを浮かべているヴィレッタとアヤにリュウセイ達は怖いなっと内心思っていたが、それよりも問わなければならない事があると、考えを切り替える。

 

「R-GUNのパイロット……前にどこかで会った事があるって俺はずっと思っていた。気のせいか、勘違いだと最初は思ったけど一撃必殺砲を使って確信した。あいつはレビじゃないのか?」

 

 

念動力による共鳴。ジュデッカとの戦いの中で感じたレビの念をリュウセイはしっかりと記憶していた。

 

「リュウセイ、気のせいではないのか?」

 

「いや。余りにも似すぎてるんだ。俺にはあいつがレビにしか思えない……責めたい訳じゃない、だけど知りたいんだ。隊長、アヤ。あいつはR-GUNのパイロットはレビなのか?」

 

念の共鳴でリュウセイは知っている。レビの心の中が冷たく、暗く、冷え切っていた事を……そして彼女もまた被害者であると言う事を考えれば責めるつもりはない、だがどういう事情なのか、信用出来るのか、何故自分達に何も教えてくれなかったのかと説明を求める。

 

「それは」

 

「アヤ。私から説明するわ」

 

口ごもるアヤにヴィレッタが自分から説明すると口にした時、ブリーフィングルームの扉の開く音とマイを伴ったケンゾウがその姿を見せた。

 

「……ひっ」

 

「大丈夫だ。マイ、私の後ろにいれば良い」

 

「う、うん……」

 

イングラムを見て脅える素振りを見せ、ケンゾウの後ろに隠れるマイ。その姿を見て、リュウセイとライの脳裏にある可能性が過ぎった。

 

「もう既に会っていると思うが改めて紹介しよう。SRXチームの新メンバーになるマイ・コバヤシ。 私の娘であり、アヤの妹だ」

 

「……よ、よろしくお願いします……」

 

おずおずと頭を下げる姿は小動物のようであり、脅えが見えていてリュウセイ達の疑惑が確信へと変わる。

 

「マイ……以後、お前は彼らと行動を共にし、ハガネに乗れ。良いな?」

 

「判った……父様」

 

幼子に言い聞かせるようなケンゾウの素振りは15歳ほどの少女への対応ではなく、本当に幼い少女に向けるような態度だった。

 

「ヴィレッタ大尉、マイ、お前達はR-GUNの移送作業を、後は私が引き受けよう」

 

「了解。 行きましょう、マイ」

 

「ああ」

 

リュウセイ達に質問は許さないと言わんばかりにケンゾウはヴィレッタにマイを連れ出すように指示を出し、マイの姿が消えてからケンゾウは改めてリュウセイ達に向き直った。

 

「色々と聞きたい事はあるだろうが黙っていてくれて感謝する」

 

小さく頭を下げるケンゾウの姿にリュウセイは迷いはしたが今までのケンゾウ達のやり取りを見て感じた疑問を問いかけた。

 

「あいつ……もしかして……過去の記憶が無いのか?」

 

マイは姿こそ10代後半だが、どう見てもその精神年齢はもっと幼い、肉体年齢とかみ合わない精神年齢を見れば記憶喪失を疑うのはある意味当然の事だった。

 

「そうだ。 コアから排除される以前の記憶を失っている」

 

「コア……それはもしや?」

 

「ああ、ライ。お前の思うとおりオペレーションSRWで撃墜したホワイトデスクロス……いや、ネビーイームの中枢でもあるジュデッカのコアだ。あれには撃墜された時にパイロットの保護及び再生、修復がプログラミングされている筈だ」

 

額に氷嚢を当てたままでイングラムがジュデッカの機能について詳しく説明する。

 

「随分と詳しいのだな。イングラム少佐」

 

「……操られている間に頭に叩き込まれたんでな。忘れられたくても忘れれる物ではない」

 

本当はもっと複雑な事情があるのだが、それを口にすれば更なる混乱が広がるのでイングラムはそれを口にせずに自嘲気味に小さく笑った。

 

「それでそのコアって奴を何で回収したのですか。普通に考えれば破壊するべきでは?」

 

ジュデッカのコアを回収すると言う事はリスクがある行為にしか思えず、何故回収したのかとライが問いかける。

 

「それに関してなんだけど、アイドネウス島の海に沈んでいるかもしれないゲッターロボの残骸を探している間に私が見つけたの」

 

リュウセイがアルブレードの開発に協力し、ライが新教導隊に参加している間の出来事なのだとアヤが呟いた。

 

「あの時はゲッター線で出来たゲッター1が急に現れ、アヤを導くようにあるポイントに案内した」

 

「ではそこにジュデッカのコアが?」

 

「その通りだ。そこにジュデッカのコアが沈んでおり、周囲のゲッター線反応も非常に強かった。アイドネウス島の数十倍のゲッター線反応が感知されていた」

 

「……無理も無かろう、ジュデッカを撃墜した時の攻撃を考えればな、だがそれで得心がいった。何故レビにならなかったかが判ったぞ」

 

再生されるのならばレビになる筈なのに、マイになった理由が判ったとイングラムが口にするとケンゾウとアヤの視線が同時にイングラムに向けられた。

 

「どういうことなのだ? イングラム少佐」

 

「判っている事があるのなら教えてください、教官」

 

氷嚢を机の上に置き、イングラムは姿勢を正してケンゾウ達に視線を向けた。

 

「ゲッター線は放射線であることが判っているが、人類……正確には地球人にのみ無害と言っても良い、現にコウキやラドラが体調不良を訴えているそうじゃないか、そこは確認しているのか? ケンゾウ博士」

 

「あ、ああ。確かに軽度だが、放射線障害らしきものが確認されている」

 

元百鬼帝国、そして恐竜帝国のコウキとラドラが体調不良を訴えている事から、地球人の姿をしていても何らかの被害が発生するの確実と考えていい筈だとイングラムは自身の考察も交えて話を続ける。

 

「エアロゲイターはゲッター線を欲していたが、恐らく重度の障害を負う事になるだろう。これは恐らくインスペクターも同じだが……余りに高密度のゲッター線はあいつらにとって毒になる。それ故にオペレーションSRWの時の最終局面のゲッター1の攻撃でジュデッカは恐らく深刻なダメージを受けたのだろう」

 

ゲッター線が真ゲッターの形をとり、ストナーサンシャインを撃ち込んだことを考えればジュデッカの受けたダメージは相当深刻だった筈。

 

「周囲にはセプタギンの残骸も発見されている。恐らくだがゲッターとSRXにより深刻なダメージを受け、ジュデッカは自力で再生するだけの能力が無く、セプタギンがジュデッカを回収し、再生していたと言うのが私達の見解だ」

 

「恐らくそれで間違いはないだろう」

 

解析と分析を繰り返し、ケンゾウ達が導き出した答えだが、イングラムもそれが正しいだろうと同意し、ケンゾウは話を続ける。

 

「僅かに回収されたゲッター合金とジュデッカのコアをR-3がゲッター線に導かれ発見し、それが回収され、 私のラボへ持ち込まれたのだ。そしてコアの解析中にコックピットから排出されたマイはレビ・トーラーへ至る前の段階で止まっていたのだ」

 

ジュデッカにはレビを再生、いや復元するプログラムがあったが度重なるダメージとゲッター線の影響でジュデッカに保管されているレビのデータが消失していた。それ故に再生作業は中途半端な所で止まり、そのままでは死に至る寸前でアヤ達が回収する事に成功していた。

 

「前の段階? では……?」

 

「そう……私の妹、マイよ。彼女はレビじゃない」

 

レビになる前にマイとして蘇る事が出来た。だからレビじゃないとアヤは強く断言する。

 

「彼女はマイとしての自我を持っているが、再生される前の記憶は失っているし、精神面も見たとおり幼い少女の物だ」

 

「じゃあ、 ホワイトスターにいた時の事も覚えてねえってのか?」

 

マイ=レビではないと繰り返し言うケンゾウにリュウセイが突っ込んだ質問をする。するとケンゾウもアヤも苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 

「大尉……彼女にはレビ・トーラーの事を?」

 

自分ではない自分の事で、マイを混乱させるだけになる可能性が高いが、ライはアヤ達にレビの事を教えたのか? と問いかけるとアヤは首を左右に振った。

 

「じゃあ、 あいつは何も知らないまま R-GUNに乗ってるのかよッ!? それは幾らなんでも酷すぎるだろッ! それならPTなんかに乗せないで家族として護ってやれば良いじゃないか! 何でまた戦わせるんだッ!」

 

記憶喪失で精神面も幼いというのに何故PTに乗せるのだとリュウセイが声を荒げる。念動力の共鳴で冷え切ったレビの心を感じていただけにリュウセイの怒りは強い物だった。

 

「落ち着け、リュウセイ。アヤとケンゾウ博士も苦渋の決断の筈だ」

 

「でもッ!」

 

「落ち着けと言っている。お前が怒っているように、アヤとケンゾウ博士も苦しみ、悩みぬいた上の決断であると知れ」

 

イングラムにそう言われ、リュウセイは頭に上っていた血が少し下がり、すまねえと謝罪の言葉を口にした。

 

「……大尉、ケンゾウ博士。マイに関してですが我々と行動を共にすれば、 彼女はいずれ事実を知ることになると思いますが……それでもなのですか?」

 

レビ・トーラーと戦っているキョウスケ達は面識こそないが、その雰囲気などは覚えているだろうし、念動力を駆使する姿、そしてアヤの妹と言う事を明らかにすれば誰かが真実に辿り着く、そうなればレビ=マイと言う事を隠し通すことは出来ない。

 

「そう……隠し通すことは出来ないわ。だけど私はレビの事をマイに教えたくないの……きっと苦しむ事になる」

 

「じゃあ、何でだ!?  なんで戦わせる! 何で本当のことを教えずにあいつを戦わせようとするんだッ!? アヤッ! これじゃ、 やってる事はジュデッカやスクールと同じじゃねえかッ!」

 

レビの苦しみも、そしてマイの不安と恐怖もリュウセイは感じ取っていた。だからこそリュウセイは己の事のように怒りを露にする、言葉等ではなく、念動力を通じ、心と心で感じ取ったからこそリュウセイは己の事のように怒っていた。

 

「事実を知らせず、このまま戦わせようってのか?」

 

「その通りだ」

 

「ふざけんなッ! そんなのはもうたくさんだぜッ!!」

 

どこまでも冷静に、そして冷酷に告げるケンゾウにリュウセイは怒りを露にし拳を握り締め振りかぶる。だがその腕をイングラムが掴んでとめた。

 

「教官! 何で止めるんだよ!」

 

「これが1番マイの身が安全なんだ。どこに百鬼帝国がいるか判らない、そんな中ジュデッカから発見された人間がいると知られれば、百鬼帝国は必ず動く」

 

その言葉にリュウセイとライはハッとしたような表情を浮かべた。

 

「そうなればマイは再びレビとされるだろう、そうさせないためにもハガネで守る事が1番安全であり、そしてマイ自身にも己を護る力を身につける必要があるんだ」

 

百鬼帝国はなんとしてもマイの中のレビを呼び戻そうとするだろう。そうさせないためにもハガネやヒリュウの中で守り、そしてマイ自身に己に降り注ぐ不条理と戦う為の力を身につけさせる必要があった。

 

「ハガネやヒリュウ改のクルーにはまだマイがレビかもしれないと言う事を黙っておいてくれ、まだマイにはすべてを受け入れるだけの心の余裕がない、心が砕け精神的に死んでしまうような事は避けたいのだ」

 

もしも今真実を知ればマイはその真実に耐えられない。それ故に今は真実を隠すという決断をしたケンゾウとアヤも苦しみぬいての判断であり、リュウセイとライはその苦しみを悟り、これ以上アヤ達を責める事は出来なかった。

 

「判った協力する。俺は少しだけどあいつの苦しみが判るかもしれないから……話し相手くらいは出来るかもしれない」

 

「俺も協力します、ですが……やはりハガネで保護するに留め、PTに乗せるのは時期尚早ではないかと俺は思います」

 

ケンゾウとアヤの考えも判るが、同意できない部分もある。それでも今はこれが最善なのだと判断しリュウセイとライもマイの真実を話さない事に同意し、地下ラボを後にする。

 

「少佐はどう思いますか?」

 

「俺でも同じ決断をするだろう。それしか彼女を護る術がないからな」

 

マイの存在は連邦にとっても切り札であると同時に爆弾でもある。オペレーションプランタジネットを控え、大きな問題がSRXチームの中に生まれるのだった……。

 

 

第141話 2柱の戦神と漆黒の猟犬 その5へ続く

 

 




次回は引き続きシナリオエンドデモを続けていこうと思います。リョウトとかキョウスケ達の話をしつつ、エキドナを久しぶりにメインで使おうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。


PS

陽電子砲を狙いがちゃをしていたら何時の間にかパックマンのSSRが+5になっていた

このガチャの偏りに恐怖しかありません。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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