進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第144話 壊れた人形、壊れる事を望んだ人形 その3

第144話 壊れた人形、壊れる事を望んだ人形 その3

 

ツヴァイザーゲインのコックピットの中でヴィンデルは屈辱に身を震わせていた。モニターに映るツヴァイザーゲインのコンディションは撃墜一歩手前を表すレッドアラート。更にerrorの文字が踊り、辛うじてテスラドライブで浮遊している状態だった。

 

「レモン! 貴様、貴様のせいだぞッ! 貴様の人形風情が私を、ツヴァイザーゲインを損傷させるなど許されると思っているのか!」

 

『……言わせて貰うけどね、私の子供達は全てが終わった後に再び人間の繁栄の為に作ったのよ。それを戦争に流用しようとしたのはそっち、後付の闘争プログラムなんてエラーを起して当然でしょう?』

 

レモンの反論に一瞬思考が止まったヴィンデルだが、次の瞬間には再び怒声を上げる。

 

「お前は私からの出資を受けなければ無様に這い蹲っていただろうッ! 何故逆らうッ!」

 

『あら? それは言いがかりよ。私は貴方の命令通りに貴方の望む永遠の闘争を叶えるための駒を作ったでしょう? だけど私の子供達は違うわ。限りなく人に近い、自分で考えるようになったっておかしくないのよ。ま、反逆されるのは想定外だったけどね』

 

激昂するヴィンデルに対してレモンは飄々とした態度を崩さない。

 

『技術的特異点、それにラミアは到達しただけよ。言ったでしょう? 人の形に魂が宿るってね』

 

「ぬっそれは……ちいっ、アクセル、バリソン、W-15。後詰めはお前達に任せる。レモン、離脱するぞ」

 

レモンをスカウトした時、そして量産型ナンバーズが完成した時にレモンから告げられていた言葉を思い出したヴィンデルは舌打ちをする。確かに人造人間であれ、人の形をしているのだから魂は宿る可能性はある。そもそもレモンが研究していたのはアインストとインベーダーによって荒廃した地球を脱出し、そしてそこで地球人と言う種を残す為の研究だった。それを軍事用に転用させたのは紛れも無くヴィンデルであり、己の非を認めざるを得なかったヴィンデルは舌打ちし、アクセル達に後詰めを命じギャンランドへとツヴァイザーゲインを反転させる。

 

『あら、私は良いのかしら?』

 

「……お前がいなければゲッターも武蔵もどうにもならん、今回の件は私の認識不足だ。お前に非はない」

 

『ありがと、じゃ私も帰ろうかしらね。ヴィンデル先に乗りなさいな、少しの間は守ってあげるわ』

 

煙の中を突っ切って姿を見せたヴァイスリッター改を見てレモンは薄く笑いヴィンデルに逃げるように促す。

 

『逃がすと思ってるのかしら!』

 

オクスタンランチャー改から放たれる実弾を反転して回避するヴァイスセイヴァーに向かってコールドメタルブレードを握り締めたビルトビルガーが突貫する。

 

『お前が! お前がッ!!!』

 

『ふふふ、随分と情熱的ね。ぼーや』

 

コールドメタルブレードの斬撃を舞うように回避するヴァイスセイバーの動きは挑発染みていて、ラミアの自爆によって精神状態が不安定なアラド達の怒りを誘う。

 

『てめえはここで撃墜させて貰うぜ!』

 

『お前みたいなの許せないんだよ。私はねッ!!』

 

『マーサ、リューネ! 左右から! 私とアラドで上と下を塞ぐわッ! 絶対逃がさないんだから!』

 

加速力に秀でた機体で取り囲みヴァイスセイヴァーとレモンを鹵獲しようとするエクセレン達。普通に考えれば絶望的な状況だが、レモンは全く同様を見せず、それ所か楽しそうに笑った。

 

『ううん、逃げさせて貰うわよ。今はね』

 

ヴァイリッター改達に指を向けるヴァイスセイヴァー。その手からは何の反応もない、だがヴァイスリッター改、いやサイバスターやヴァルシオーネ達は急速に高度を落とし、システムダウンを起す自分の機体に驚愕の悲鳴を上げた。

 

『えっ!?』

 

『ど、どうなってるんだ!? モニターもテスラドライブも逝かれたのか!?』

 

『てめえ! 何をしやがった。シロ! クロ! 何とか出来ないのか!?』

 

『だ、駄目だ! お、落ちるッ!?』

 

飛行能力を失い、その上機体のシステムまでダウンし、墜落する各々の機体の中から上がる悲鳴にレモンは薄く笑った。

 

『うふふ、早く逃げないと地面に叩きつけられて死んじゃうわよ? ヴァイスセイヴァーのジャマーでね、まぁ魔装機神にも効果があったのは嬉しい誤算よね』

 

ゲッターロボの研究によって急速に発達したレモンの技術。それによって短時間ならばテスラドライブ等のEOTを無力化する技術の開発に成功しており、攻撃も出来ずに落下していくヴァイスリッター改達を救出に動く龍虎王達に視線を向ける。

 

『ブリット君、お願いッ!!』

 

『ああ、虎龍王行くぞッ!!』

 

龍虎王が虎龍王に変形し墜落するサイバスターとヴァルシオーネを受け止め、その上空をヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントが飛び、ビルトビルガーを受け止める。

 

『アラド大丈夫!?』

 

『た、助かりました……危うく死ぬところでした』

 

『やっぱり継続時間に難ありね、まぁ十分に効果はあるだろうけど』

 

次々と救出される機体を見てレモンは継続時間に難ありねと呟き改善案を考え始める。

 

『大丈夫ですか!? エクセレン少尉!』

 

『あ、ありがとーアイビス。危ない所だったわ……』

 

アステリオンに抱きかかえられているヴァイスリッター改を見ながらレモンはヴァイスセイヴァーを反転させる。時間稼ぎは十分、追っ手になりそうな足の早い機体は無力化した。これなら追っ手が来る事も無く無事に逃げ切れるだろうとレモンは考え、そして別れ際に挑発めいた言葉を残した。

 

『それじゃあ、またどこかで会いましょう。エクセレン』

 

『な、なんで私の名前を!? それにどうして私の声に……』

 

『それは何れ分かるわよ……ん? あれはッ!?』

 

アステリオンに抱えられているヴァイスリッター改からノイズが混じりながらもエクセレンの動揺した声がヴァイスセイヴァーに響く、だがレモンはそれに返事を返さずギャンランドへと帰艦する中海中に浮かぶある物を見つけ、その目を輝かせた。それは紛れも無くアンジュルグのコックピットブロックだった、コードATAを使えば脱出装置が起動しない筈なのに、何故か排出されていたそれを見て、レモンはヴァイスセイヴァーを急降下させ、コックピットを回収する。

 

『レモン、何をやっている?  退くぞ!』

 

『……了解よ、すぐに行くわね』

 

アンジュルグのコックピットブロックをヴィンデルから隠すように回収したレモンはヴィンデルから僅かに遅れてギャンランドへと帰艦する。

 

『あいつら、逃げる気かッ!?』

 

『くっ! 逃がさんぞッ!』

 

ギャンランドが反転するのを見てキョウスケ達がその後を追おうとするが、その前にソウルゲイン、スレードゲルミル。そして量産型Wシリーズが乗り込んだシャドウミラーの機体が立ち塞がる。

 

『キョウスケ・ナンブ……ここから先は通さぬ』

 

『イレギュラーはあったが、やる事は変わらん。貴様はここで死ねッ! ベーオウルフッ!!!』

 

『邪魔をするならば、 押し通るまでだ……ッ!』

 

『『各機、攻撃を開始しろッ!!』』

 

カイとアクセルの叫びが同時に木霊し、シャドウミラーの軍勢と伊豆基地の部隊の戦いが幕を開けるのだった……。

ギャンランドの殿を務める為に1人だけ後方に待機しているバリソンは戦況を冷めた目で見つめていた。正直な所バリソンは永遠の闘争など興味は無く、平和な世界に来たのだから今度こそ自分達の世界にならないように戦う事こそが己の世界を捨てたけじめだと思っていた。それ故にヴィンデル達のやり方には賛同しかねていた。

 

(お前は人間になれたんだな、ラミア)

 

ラミアの自爆特攻を見てバリソンは心からそう思っていた。与えられた命令しか出来ないようにされている筈のWナンバーズのラミアが自分の意志を見せ、そしてそれを貫いて見せた。それは紛れも無く人間の証だった、だからこそバリソンは思うのだ。

 

「やっぱ俺はお前らには着いていけねえわ」

 

バリソンは誰に聞かせるわけでも無く決別の言葉を吐き捨てる。確かにヴィンデルとアクセル達のやり方には賛同出来ない、それでもあの世界の僅かな生き残りとして、そして共に戦った仲間としての情もあった。

 

「これが最後の仕事だ、俺はやっぱり永遠の闘争よりも平和な世界の方が良い。その為に俺は……いや俺達は戦ったんだからな」

 

これを最後にしてシャドウミラーと決別する。それを決めたバリソンはヴィンデルに預けられたグルンガストの腕を組ませ、完全に傍観の姿勢に入った。ギャンランドの退路は守る、だが自ら進んで戦うことはない。百鬼、インスペクター、アインスト、インベーダー……地球を襲う数多の敵と戦う事が己の使命であり、地球人同士で戦うつもりはないと言うバリソンの無言の意思表示がそこにあるのだった……。

 

 

 

 

 

一団から離れ戦闘意欲を見せないグルンガストを見てイングラムはあれのパイロットは誰かを見抜いていた。

 

「各機へ、後方で待機しているグルンガストへの攻撃を禁止する」

 

どの道包囲網を抜けなければグルンガストと戦う事は出来ないが、何故イングラムからそんな命令が出たのかという困惑が広がる。

 

『教官、どういうことなんだ。説明してくれ』

 

「あれのパイロットは俺も知ってる男だ。シャドウミラーの中でありながら俺達と同じ心根を持っている、あいつを説得出来れば」

 

『武蔵がどこに連れて行かれたか判るという事ですね!?』

 

「その通りだ。俺達はなんとしても武蔵とゲッターロボを奪還しなければならない」

 

ギャンランドに連れ去られた武蔵をなんとしても奪還しなければ自分達に勝利はないとイングラムは断言する。

 

『少佐よぉ、あいつは説得に応じるのか?』

 

「……後6分だ」

 

『は?』

 

「後6分でカーウァイがこっちに来る。カーウァイならあいつを説得出来る筈だ」

 

『丸投げかよ!?』

 

丸投げとイルムが叫ぶがイングラムはどこまでも淡々と、そして冷静な態度を保っていた。

 

「動けないように弱らせるという手もあるんだが……」

 

『そう思うようには行かないと言う事か』

 

量産型Wナンバーズは自分の命を勘定に入れていないし、味方の命も勘定に入れていない。つまりそれは撃墜されかけている味方の背後から攻撃を仕掛けてきたり、動力炉を破壊し爆発させ広範囲に被害を与えようとしていると言う事だ。

 

「相手は無人機だと思え、躊躇えば死ぬのは俺達だぞ!」

 

ゲシュペンスト・MK-Ⅱのコックピットに躊躇う事無くビームソードを突き立て、蹴りを叩き込み弾き飛ばすR-SWORD。レモンとヴィンデルの会話の中でパイロットが人造人間だと判りクスハ達が躊躇うのは判る。だが殺しに来ている相手に情けを掛ければ死ぬのは自分達だとイングラムは諭すように口にし、ギャンランドの撤退の為の時間稼ぎ、そして自分達に少しでも大きな被害を与えようとする量産型Wナンバーズが乗り込む機体を睨みつけ、躊躇うなと言わんばかりに次々と撃墜する。

 

『イングラムの言う通りだ。躊躇っている時間も迷っている時間もない』

 

『敵機を速やかに撃墜後に敵戦艦の追跡及び、武蔵の救出を行なう! 各員目の前の戦闘に集中するんだ!』

 

ハガネから響くテツヤの指示、ラミアの自爆、武蔵の拉致……そのどれもが衝撃的であり平常心を奪うのに十分な物だった。だが量産型Wナンバーズはそんなことをお構いなしで、むしろ動揺しているのならば好都合と言わんばかりに激しい攻撃を行なってくる。

 

『ふんッ!!!』

 

『思う事はあるがさっさと死ね』

 

ラドラとコウキは躊躇う事無くコックピットへの攻撃を繰り出し、次々とシャドウミラーの機体を撃墜していく。確かにリュウセイ達もシャドウミラーのあり方、そしてその機体に乗り込んでいるあろう戦争を続ける為に作り出された人間に思う事はある。

 

『やるしかない、行くぞ、リュウセイッ!』

 

『……ああ、分かってるッ!』

 

戦わなければ自分達が死んでしまう。今は同情も、迷いも捨て戦うしかないのだと覚悟を決める。だがそれでもインスペクターのバイオロイドと異なり、ラミアと触れ合い、彼女の人間性を見ていたリュウセイ達は今戦っているWナンバーズもラミアのように人間性を獲得するのではという考えがどうしても脳裏を過ぎり、戦力・パイロットの技術共に量産型Wナンバーズよりも優れている筈のリュウセイ達は量産型Wナンバーズ相手に劣勢では無いが、優勢でもない苦しい戦いを強いられる事となるのだった……。

 

 

 

 

包囲網を突破し、ソウルゲインへと肉薄したアルトアイゼン・ギーガとキョウスケを見て、アクセルは量産型Wナンバーズに邪魔をするなと命令を下し、キョウスケとの一騎打ちに身を投じていた。

 

「どうした、ベーオウルフ。精彩に欠けているぞ」

 

『……それはお前でもないのか? アクセル・アルマー』

 

挑発のつもりのそれはそのまま挑発で返された。その言葉に苛立ったように舌打ちし、絶好の反撃の機会だというのにアクセルはソウルゲインを後退させた。

 

『それがお前の答えか、アクセル』

 

「ちっ……確かに俺とて思う事はある」

 

戦いの中で問答をするなど言語道断だと言う事はアクセルとて分かっている。それでもラミアの自爆の様はアクセルにもある程度の衝撃を与えていた。

 

『何故永遠の闘争などを望む。お前ならば他の道とてあっただろうにッ!』

 

「貴様にそれだけは言われたくはないッ!!」

 

互いに精彩を欠いた戦いは決め手に欠け、そしてアクセルの中の燃え上がるような闘志も、キョウスケの中に冷たく燃える闘志さえも消し去っていた。

 

「お前が俺達の世界を滅ぼしたんだッ!」

 

『それは俺ではない俺の筈だ。何時までも過去に縛られてどうするアクセルッ! それはお前のただの八つ当たりだ。お前が味わった悲しみを、苦しみを何故この世界にもばら撒こうとする!』

 

キョウスケの口にした八つ当たりという言葉にアクセルは動きを止めた。その直後に6連装マシンキャノンの銃口がソウルゲインに押し当てられ、凄まじい衝撃がアクセルを襲った。

 

「ぐうっ! 貴様俺を舐めているのか!」

 

あのタイミングでリボルビング・バンカーを使えばソウルゲインは間違いなく致命傷を受けていた。それなのに手加減したかのようなマシンキャノンの攻撃にアクセルは怒りを露にし、アルトアイゼン・ギーガへと殴り掛かる。

 

『それはこちらの台詞だ。アクセルッ!!』

 

玄武剛撃でもない、エネルギーが篭もった打撃でもない。ただの怒りのまま、キョウスケの指摘したとおりの八つ当たりに等しい攻撃だった。そしてそれを見逃すキョウスケではなくカウンターで叩き込まれたリボルビング・バンカーがソウルゲインの胸部へと迫る。

 

「ちいっ!!!」

 

咄嗟に左腕を盾にし直撃を防いだが、リボルビング・バンカーの一撃によって左肘が完全にお釈迦になり、脱力した左腕を右腕で支えソウルゲインは地面を蹴ってアルトアイゼン・ギーガから距離を取った。

 

(くそ、何故俺はここまで動揺している)

 

W-17は人形、その人形が壊れただけなのに何故こうも動揺しているのか、それともキョウスケに八つ当たりと言われたのが図星だったのかと理由を考えるが答えは出ない。

 

「どうした追撃しないのか」

 

『まだ答えを聞いていない、何故お前は悲劇をばら撒く事を選んだ。他の道もあったはずだ』

 

左腕を失ったソウルゲインは仕留める最大の好機だというのに、言葉を投げかけてくるキョウスケに甘い奴だとアクセルは内心吐き捨てる。

 

「お前は知らないんだ。殺してくれ、化け物になりたくないと懇願する仲間を己の手で殺す……その苦しみをな」

 

(そうだ、お前は何も知らないからそんなことを言える。あの悲劇を、あの悪夢を知らないからなッ!)

 

アクセルの脳裏を過ぎるのはアインストとインベーダーが出現したばかりの、そしてアクセルを今もなお苦しめる悪夢の光景だった。

 

【あがああ、ああ……いやだ、嫌だアアアア!!!】

 

【ば、化け物になりたくない。殺せ、殺すんだ! 殺してくれえええええええーギギャァアアアアッ!?】

 

イージス計画にシャドウミラー隊が反対し謹慎処分となった時期にアインストとインベーダーは少数ながら出現し始めていた。全員が蔓に覆われ、血反吐を吐き、素肌が内から弾けて化け物になりながら嫌だ嫌だと繰り返した同期。全身にインベーダーの黄色の複眼が出現し、見る見る間にインベーダーになり、殺してくれと血涙を流しながらインベーダーになった部下。

 

【痛い、痛いイタイイタイイイイイイイッ!!!】

 

【おでのデガアア、ドゴ、ドゴダアアアア!!】

 

【苦しい、アグゼルざん……アグゼルざん……だずげでえええええッ!!!】

 

【化け物なんかなりたくねぇ、殺せ、殺してくれええええッ!!】

 

【あひゃ、なんでなんであだじいぎでるのおおお!? あひゃはややはやははははッ!!】

 

インベーダーに己の機体を食われ、押し潰されながらも身体に寄生され、痛みと自分が化け物になっていく中発狂する仲間達。死にたくないと、殺してくれと叫ぶ声、化け物になる前に自爆する事を選んだが、それでもインベーダーによって再生され、狂ったように笑う声。それは今もなおアクセルを蝕む悪夢である。

 

【はっ……はっ……おえ、うげええッ!!!】

 

まだアクセルは若かった仲間を殺した事に涙を流し、吐き戻し絶望した。どうしてこんな事になったとそればかりを繰り返す。そんな中カーウァイの処刑が決まり、それを阻止する為に動いたがその間にも仲間はインベーダーに、アインストに寄生され、それを殺した。殺して殺して殺して救った。人としての尊厳だけは守ってやりたかった化け物のまま死なせたくなかった。

 

【この原因はイージス計画ね、あれが続けばあの化け物はもっと増えるわ】

 

【なんとしてもイージス計画を阻止し、カーウァイ大佐を救出する】

 

その時はまだ永遠の闘争をヴィンデルは掲げていなかった。化け物の流出を防ぐ為に、そして化け物にさせないためにシャドウミラーは戦った。だが負けた、イージス計画は実行され地獄の門は開かれた。

 

【この化け物出現は全てシャドウミラー隊とカーウァイ大佐によるものです】

 

【あいつらは化け物をこの世界に呼び寄せたのです】

 

そして政府はアインストとインベーダーの出現を全てシャドウミラーのせいにし、アクセル達は追われる身になった。

 

【仇は取る。安心して死ね】

 

【あ、ああ……すまねえな。後は頼むぜ】

 

【ベーオウルフを許すな……あいつのせいだ。全部全部あいつの……】

 

【判っているさ、お前の意志も俺は連れて行こう。必ずやこの手であいつを殺す】

 

時間が経ちアインストとインベーダーが政府のイージス計画による物だと判明したが、その頃にはベーオウルフが台頭しアインスト、インベーダーの地球の奪い合いが始まり、アクセル達……いや人類は逃げるしかなかった。

 

【後は頼むぜ】

 

【ころして……くれてありがとう……】

 

【さよ……なら】

 

【死に、たくな……い、死に……たく、ないよぉ……】

 

皆皆死んだ朝共に食事をし、数時間後には化け物になり殺してくれと血涙を流す仲間を何人も己での手で屠った。最初は吐き戻しもした、だが徐々に心は麻痺し、そしてその悲劇を生んだベーオウルフを殺す。それだけがアクセルの心の支えとなった、自分が殺して来た仲間達の為にも、そうする事でしかアクセルは過去に踏ん切りをつけることは出来なかった。

 

『それは……だが』

 

「悪いが別の俺だ等と言う言葉を聞くつもりはない。ああ、そうだろうな。これは俺の八つ当たりなのだろうな……」

 

本当は別の道もあるだろう、別の選択もあるだろう。だが……アクセルにはこの道しかないのだ。ベーオウルフとキョウスケが違う人間だと判っていても、それを止める事が出来ないのだ。

 

 

「お前だ、お前が原因なんだ! そしてこの世界でもお前はその引き金になる! だから俺は貴様をなんとしても殺すッ!!」

 

『ぐうっ!?』

 

殴る殴る殴る殴る、技も何もないただ怒りに、絶望に、嘆き、何も出来なかった苦しみと悲しみ、時間では解決しない痛みを吐き出すようにアクセルはソウルゲインを駆る。

 

「何故だ! 何故俺の仲間は死なねばならなかった!! 何故何故何故何故何故だッ!!! お前達に俺の何が判るッ!」

 

『そうだ、何も俺達は知らない。だがお前の思想は間違っているッ!!!』

 

「分かっている、分かっているさ!! だがそれでも俺にはもう戦い続ける事しかできないッ!!」

 

アルトアイゼン・ギーガとソウルゲインが何度も拳を交す。ただ闇雲に、怒りを痛みを吐き出すように暴れるソウルゲインとそれを吐き出せようとするキョウスケ。互いの機体が何度も何度もぶつかり合い、そして装甲が凹み火花を散らす。

 

「うおおおおおッ!!! がぁあ嗚呼ああァ! キョウスケ・ナンブウウウウッ!!!」

 

『う、うがあッ!?』

 

怒りに身を任せ、膝蹴りで浮いたアルトアイゼン・ギーガに右拳を叩きつけようとしたソウルゲインだが、ハガネとシロガネの主砲に気付き、地面を蹴り強引に距離を取る。

 

『キョウスケ中尉、大丈夫ですか!?』

 

『キョウスケ、無茶しすぎだぜ』

 

仲間に囲まれているキョウスケと屍を背負った己、余りにも違いすぎる光景が目の前に広がっているのを見てアクセルは小さく息を吐いた。

 

「止めだ、どうせヴィンデルの奴らも撤退した、これ以上は意味がない」

 

滅茶苦茶な操縦をした事でソウルゲインはレッドアラートを灯し、左腕は完全に死んだ。こんな状態では敵討ちは愚か、牙を突き立てることすら出来ずに己が死ぬ、それが分かっているからこそアクセルは構えを解き、ジリジリと海へと後退する。

 

「俺は変わらない、俺は俺の道を貫く。説得など出来ると思うな、俺はお前を殺す。そして俺達のやり方で地球を守る、イージス計画など認めはしない。覚えておけ、あれは冥府への扉だとなッ!!」

 

アクセルはそう言い残し海中へとソウルゲインを飛び込ませ、伊豆基地から離脱する。復讐心もある、怒りもある、だがアクセルを突き動かしているのは仲間の仇を討つという信念……いや、己が殺した仲間への贖罪とも言える心だった。だからこそ復讐を成し遂げずに死ぬわけには行かないと逃げを打つ事が出来た。まだそこまで考えるだけの冷静さがアクセルに残っていた。

 

(……ちっ、俺は何をしているんだ)

 

何故ラミアの死にあそこまで動揺したのか、そして何故イージス計画を止めろと口にしたのか、そして何故こんなにも苛立っているのか、そして何故己の過去をキョウスケにぶちまけたのか……自分でも理解出来ない感情を持て余したままアクセルは伊豆基地を後にするのだった……。

 

 

 

 

斬艦刀の一閃が振るわれ、それを反射的にギリアムとカイは回避する。だがカイもギリアムも違和感を覚えていた。今まで何度もスレードゲルミル、そしてウォーダン・ユミルと戦っているからこそ分かる。

 

「精彩を欠いているな」

 

『ああ、あいつらもラミアの自爆には動揺しているようだな』

 

普段の切れ味がないがそれでもスレードゲルミルとウォーダンは強敵である。斬艦刀のリーチと破壊力、精彩を欠いているとは言え容易に踏み込めば両断されるのは目に見ている。

 

『どうする、カイ少佐、ギリアム少佐、攻め込むか?』

 

イルムからの通信にギリアムとカイの目に迷いが生まれる。量産型Wナンバーズもその姿を減らし、ソウルゲインもキョウスケとの戦いでたった今離脱した。残るは少数のゲシュペンスト・MK-Ⅱ。そしてエルアインスとエルツヴァイ、ランドグリーズとアシュセイバーが3機ずつそしてスレードゲルミルとグルンガストという状況だ。

 

「焦るな、虎の尾を踏む事になる」

 

『仕留め切れるなら倒したい所だが……こちらも戦意が低下している。無理は出来ないぞ』

 

スレードゲルミルは自己修復能力と極めて高い攻撃力を持ち合わせた特機だ。掠めただけでも致命傷になりかねない攻撃力を秘めた相手に今の注意力散漫な状態で勝負を挑むのは危険すぎるとギリアムは焦るなと指示を出す。本音を言えばイングラムの言う通り後方で待機しているグルンガストのパイロットの説得を試みたいが、出撃しているメンバーの精神状態が余りにも良くない。

 

『きゃあッ!?』

 

『クスハ! 大丈夫かッ!?』

 

『う、うん! だ、大丈夫ッ!』

 

気丈に振舞っているがクスハの精神状態は良く無く、それに引かれているのか龍虎王も普段の勇ましさがまるで感じられない。

 

『うあっ!?』

 

『大丈夫か!? 下がれマイッ! ライ! アヤッ! フォローをッ!』

 

『分かっている! リュウセイはR-GUNを連れて下がれッ!』

 

『こっちは私達が引き受けるわッ!』

 

機体のダメージよりもマイの精神が乱れ操縦が乱れているR-GUNをR-1が守りながら後退し、Rー2・パワード、R-3・パワードが出てフォローに入る。

 

『ライ、アヤ、お前達も下がれ。ヴィレッタ』

 

『ええ、分かったわ。2人とも下がりなさい、命令よ』

 

だがイングラムとヴィレッタには2人も精彩を書いているのが丸分かりであり、下がれと命令を下す。

 

『アイビス、お前もだ。下がれ、お前は今は役に立たない』

 

『こ、コウキ博士、で、でも』

 

『下がれと言っているんだ。お前にはまだこの戦場は早過ぎる』

 

今までも有人の機体と戦っているが、量産型Wナンバーズは脱出と言う概念がないので、そのまま殺す事になる。争いを稀有するアイビスには量産型Wナンバーズと戦うには早過ぎるとコウキは離脱しろと命令を下す。

 

『くそっ! こんな胸糞悪い戦いはアードラーの爺以来だぜ!』

 

『……本当だよ。どうしてあんな事が出来るんだ……』

 

誰もが精神的に追詰められている。ラミアを知っているからこその迷いであり、殺人への嫌悪だった。確かに戦争を行なっているのだ、殺す事はある。だが戦争の為だけに生まれ、そして役に立たなければ自爆してでも相手を道連れにして死ぬ量産型Wナンバーズは余りにも歳若い面子には苦しい相手だった。

 

『くそッ! クソクソッ!!』

 

『アラドッ! アラド落ち着いてッ!!!』

 

『くっ! 分かってる! 分かってはいるんだ!!!』

 

『あ……ああ、武蔵、武蔵様が……』

 

『シャイン王女! 落ち着い……きゃっ!?』

 

頭で理解していても感情をコントロールできないアラドを必死にフォローするラトゥーニだが、シャインの精神状態も良くない動きが硬く、反応が鈍いランドグリーズのFソリッドカノンからフェアリオン・タイプGを庇うフェアリオン・タイプSだがバリアを展開しても凄まじい衝撃がラトゥーニを襲い、思わず悲鳴があがる。

 

『ラトゥーニちゃん、貴女は2人を連れて下がりなさい。キョウスケ』

 

『ああ、そうしろ。ここは俺達が食い止めるッ!』

 

ヴァイスリッター改とアルトアイゼン・ギーガに庇われ、フェアリオン・タイプSはタイプGを抱えるようにして司令部へと後退していく。

 

『敵の増援が来ないとは限らん。このままでは不味いぞ』

 

「分かっているが、突破口が見つからない」

 

割り切れるカイ達と割り切れないリュウセイ達。カイ達がフォローしているから押し込まれる事は辛うじて避けているが、状況は決して良くない。アシュセイバーのソードブレイカーを迎撃しつつ必死に頭を回転させるギリアムの耳に緊急警報が鳴り響いた。

 

「ちいっ! やはり援軍かッ!」

 

『いいや、違う。こちらの応援だ』

 

キラーホエールが浮上し、開け放たれたカタパルトからゲシュペンスト・タイプSが姿を見せる。

 

『イングラム、これはどういうことだ。どうなっている』

 

『武蔵がシャドウミラーに連れ去られた。それと色々あってな、士気がガタ落ちだ。詳しくはこの状況を切り抜けてから説明する』

 

『いや、その必要はない。全機撤退せよ、殿は俺が務める』

 

ゲシュペンスト・タイプSとカーウァイの登場で戦況はよりり激化する……と思いきや後方で待機していたグルンガストが撤退命令を出し前に出てくる。

 

『カーウァイ隊長。お久しぶりです』

 

『バリソンか、お前は何している?』

 

『そうですね、見極めるつもりでシャドウミラーにいましたが、まぁ……あれですね。もうあいつらは駄目でしょうね、もう何を言っても止まれないと思いますよ』

 

戦闘をする意志がないのを感じ取ったカーウァイの問いかけにバリソンは苦笑と共に返事を返すと踵を返す。

 

『悪いんですけど、俺はギャンランドがどこに帰るのか知らないです。でも、アースクレイドルには向かわないと思いますよ。それだけです、では俺もこれで』

 

会話をしている間にASRSの準備をしていたのかグルンガストはASRSを展開し、凄まじい勢いで離脱する。向こう側の世界のグルンガストはテスラドライブを搭載しているからこそ出来る撤退であり、あえて飛行する事で途中まで反応を残し探して見せろと言うバリソンの不器用な応援にカーウァイは苦笑する。

 

『各機、帰艦せよ! 我々はこれよりシャドウミラーの追跡を行なう!』

 

『時間がありません、急いで帰艦してください!』

 

リーとレフィーナから帰還命令が出て、出撃していたPTはそれぞれの戦艦へと帰艦する。

 

『カーウァイ隊長はどうするのですか?』

 

『私も同行するが、先にやることがある。先に行け、私はキラーホエールで後を追う』

 

カーウァイはそう言うと伊豆基地に着陸し、その姿を横目にギリアムとカイもハガネへと帰艦し武蔵の救出の為にギャンランドの追跡を始めるのだった……。

 

「久しぶりだな、武蔵」

 

「どーも、ヴィンデルさん。出来ればこんな風に再会するのは嫌だったんですけどねぇ」

 

そのころ武蔵は放電を繰り返す鉄格子越しにヴィンデル達との再会を果たしているのだった……。

 

 

第145話 陰謀と再会 その1へ続く

 

 




この話は戦闘イベントも殆どなく会話もラミアが全てなのでとても難産でした。ラミアの自爆の所で全てを持っていかれてしまい、それ以外の話を上手く作る事が出来ずに無念が残る話となりました。このリベンジは次回の話から挽回して行こうと思いますので、今回の話についてはお許しください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

PS

ダイゼンガーガチャ2週目

雷光切り×2
サマーソルトテイアー
ビームマグナム(MAP)

当りなんだけど、当りなんだけど解せぬ。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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