進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第145話 陰謀と再会 その1

第145話 陰謀と再会 その1

 

武蔵の救出の為にギャンランドの追跡を行なっているハガネ、シロガネ、ヒリュウ改の3隻。だがそのブリーフィングルームには重苦しい雰囲気が広がっていた。

 

「くそっ! ラミアの奴が敵のスパイだったとはなッ! それにエキドナの奴だってそうだ、武蔵が気を許しているからって警戒を緩めたのが馬鹿だったぜッ!」

 

記憶喪失である事は間違いないが、その体捌きや立ち振る舞いには訓練された軍人の物が感じられていた。当然警戒するべきという意見もあったが、武蔵が気を許しているのなら大丈夫ではないかと警戒を緩めたのが失敗だったとカチーナは声を荒げる。

 

「……武蔵さんは知らなかったのではないですか? そのエキドナさんがシャドウミラーだと」

 

武蔵が連れ去れ完全に気落ちしているシャインが知らなかったのではないか? と意見するが、それはイングラムによって否定される事になる。

 

「いや、少なくともエキドナがシャドウミラーである事は俺も、武蔵も、カーウァイも、そしてビアン達も認識していた」

 

「ちょっ! ちょっと待ってくれ教官! 知ってたのかよ!?」

 

エキドナがシャドウミラーであると言う事をイングラムは勿論武蔵達も知っていたと告げられ、ブリーフィングルームに動揺が広がる。

 

『イングラム少佐、それはどういうことなのか説明してくれるか?』

 

「ああ、俺達が平行世界の未来で戦っている時に武蔵はエキドナに助けられた。それにあいつは最初こそ与えられた命令だけを遂行する人形のような存在だったが、武蔵と触れ合う内に人間らしさを見せ始めていてな。それを信じてみたかったと言うのもあるが、武蔵が監禁や投獄するのを嫌がったと言うのもある。これはゼンガー達を初めとした上層部は知っている事だがユーリアは知らない話だ」

 

エキドナがシャドウミラーであり、敵組織の人間だと判ればいらない差別を産むかもしれないと危惧したのもあるが、今回の件に居たっては完全に後手であり、そして悪手だった。

 

『イングラム少佐達は彼女が協力してくれると思っていたのですね』

 

「可能性としてな、それに記憶喪失だったのも事実。もっと言えば……記憶を取り戻さないほうがエキドナにとって幸せなのではなかろうかとな」

 

戦争を続ける為の人造人間として作り出されたエキドナだったが、武蔵といる間に恋を知り、穏やかな性格となりつつあった。幼い心に芽生えた心を潰して良いものかとイングラム達が葛藤したのも事実だ。

 

「甘いというかも知れんがな、それでも信じたいと思う事は悪ではない筈だ」

 

ブリーフィングルームに入ってきた金髪の青年を見て、誰だ? という声が広がる中、イルムだけが驚いたように手にしたマグカップを落とした。

 

「カーウァイ大佐……若返ってないか?」

 

「ん? まぁそうだな。イルムガルトも久しぶりだな」

 

ゲシュペンストの開発の際に何度か顔合わせをしていたイルムだけが、その青年がカーウァイ・ラウだと言う事を知っていた。クロガネで再会した時はジックリと見ている時間も無かったが、こうして見るとカーウァイが40台の親父には見えないとイルムは驚きを隠せなかった。

 

「うえ!? マジで!?」

 

「わっか……いや、若返ったって言ってたわよね」

 

「もしかするとカイ少佐達の方が歳なのでは……」

 

「うるさい! 誰が歳だ!」

 

「……まあ確かにカーウァイ大佐よりも俺達の方が年上になったかもしれなんがな、それで何の話をしていたんだ?」

 

格納庫にカーウァイを迎えに行っていたギリアムがキョウスケ達にそう問いかける。

 

「ラミアとエキドナについて話をしていました。その中でイングラム少佐がエキドナがシャドウミラーだと知っていたと言うもので」

 

キョウスケがそう説明するとカイとギリアムは驚いたような顔をし、そしてカーウァイは沈鬱そうな表情を浮かべた。

 

「確かにエキドナはシャドウミラーだった。それでも変わろうとしていた、それを信じたいと思ったんだがな……やはり創造主には逆らえなかったか」

 

エキドナやラミア、Wナンバーズにとってはレモンは創造主だ。その命令には逆らえなかったかとカーウァイが残念そうに呟くと、エキドナの私室を調べていたラーダがブリーフィングルームに入ってきた。

 

「これ……彼女が残した手紙みたいです。机の上に置かれていたんですけど……彼女も相当悩んで、そしてその上で行動したみたいです。

これを見ると私は彼女を責める事はで来ません……」

 

「……読んでも?」

 

「ええ、どうぞ……それが良いと思います」

 

ラーダが差し出した便箋は涙に濡れたのかあちこち滲んでいた、代表してキョウスケがラーダから手紙を受け取り、封の空いている便箋から手紙を取り出した。

 

『許して欲しいとは言わない、同情して欲しいとは言わない。私は裏切った、武蔵の信頼を裏切った。すまない、すまない。それでも私には、私にはレモン様は母なのだ……その信頼を私は裏切れない、あの人の役に立ちたいんだ。それがお前達を、武蔵を裏切る事であったとしても……憎んでくれて構わない、恨んでくれて構わない……どうか……私を許さないで欲しい……人形が、人ではない者が……人の中で生きたいとおこがましくも願ってしまった。思ってしまった……分不相応の思いを抱いた私を許さないで、ごめんなさい、ごめんなさい……』

 

余りにも痛ましい、涙に濡れ、文字はぐしゃぐしゃ、自分が悪いのだと、憎んでくれ、恨んでくれと、許さないでくれと言いつつも謝罪の言葉が綴られているその手紙を読み終え、キョウスケは目を伏せその手紙を折り畳んだ。

 

「……あの人も悩んでいたのですね。自分のあり方に」

 

「……違うんだ。あの人も人間だったんだ……自分を変えようとしてたんだ……」

 

恋をして人になろうとした、でもどうしても人になりきれなかった。いや、人になったからこそ母の願いを無碍に出来なかった。余りにもエキドナは純粋すぎたのだ、助けてくれと、どうすれば良いのかと誰にもいう事が出来ず。己の胸の中に苦しみを抱え続けていた。

 

「……ちっ、胸糞悪ぃ……どうしてどいつもこいつも助けてくれの一言も言えねえんだ! こうなったら首根っこを掴んででも引きずり出してやる。手紙なんかじゃねぇ、自分の言葉で言えってよ……」

 

「カチーナ中尉。ええ、そうですね。その為にもまずは武蔵を助け出す事を考えましょう」

 

カチーナは口調こそ乱暴だが、性根は心優しい女性だ。馬鹿みたいなことをした奴らを叱りつけるという姿にラッセルも同意する。

 

『それでカーウァイ大佐。武蔵の救出についてだが、ビアン博士から何か聞いてないのか?』

 

「それに関してだがビアン達はこの件には参加出来ない」

 

「どういうことだ? ビアンが動かない理由があるのか?」

 

「プランタジネットの前の大統領演説がある。鬼がそこを見逃すと思うか? ブライアン・ミッドクリッドの救出にビアン達は向かっている」

 

武蔵を手中に収めた今、動き出すのに最大の好機。ブライがそれを見逃す訳が無い、武蔵の救出と同じ位ブライアンの生存は重要な要素を持つ。

 

「道中までだがバリソンのグルンガストの反応があった。その周辺を探せばギャンランドの航路の反応も取れるはず。焦るのは分かる、不安なのも判るが……私達には悩んでいる時間も考えている時間もないと言う事は判っているはずだ。そしてこれら全てを同時に解決する必要があるとなれば……答えは1つしかなかろう。ダイテツ・ミナセ中佐」

 

オペレーション・プランタジネットの発令はもう目の前まで来ている。

 

シャドウミラーに拉致された武蔵とゲッターロボの事もあり、救出が急がれる。

 

鬼によるブライアンの暗殺も今のこの時期が最も可能性が高い。

 

どれか1つでも失敗すれば人類は追詰められる事になる。

 

「分断策か、だが百鬼帝国の事を考えれば余り戦力は裂けんぞ?」

 

「ギリアムとラドラとカイを貸してくれば良い。武蔵には薬物や毒物に強い耐性があるし、何よりも武蔵が呼べばゲッターは動き出す。シャドウミラーも悠長に構えている時間はない筈だ」

 

『4人で強襲するつもりか!? 無謀が過ぎるぞ』

 

「案ずる事はない、道中でゼンガー達も拾っていく、教導隊全員でシャドウミラーを叩き武蔵を救出する。ダイテツ中佐達は後詰めで合流してきて欲しい」

 

無謀ではあるが、それ故に予測されない大胆な強襲、そして救出作戦。普通に考えれば失敗のリスクが高いが悠長に構えている時間はない。カーウァイの提案をダイテツは受け入れ、カーウァイ達はそれぞれの機体に乗り込みハガネを後にし、キラーホエールへと乗り込みギャンランドの追跡へ向かう。

 

「熱源多数感知! 識別不明機多数ッ!」

 

「足止めに来たか、各員出撃準備ッ! なんとしても突破するぞ!」

 

それと入れ替わりに感知された無数の正体不明機の熱源反応に応戦するべく、ダイテツ、レフィーナ、リーの出撃命令が下されるのだった……。

 

 

 

 

一方その頃シャドウミラーに拉致された武蔵は放電を繰り返す牢獄の中にいた。常人ならば恐怖し、平然とする事が出来ない環境の中で武蔵は胡坐をかいた状態で目の前のヴィンデルに視線を向けた。

 

「久しぶりだな、武蔵」

 

「どーも、ヴィンデルさん。出来ればこんな風に再会するのは嫌だったんですけどねぇ」

 

牢獄に閉じ込められた状態ではヴィンデルをどうこうする事など出来るわけも無く、通信機も電波妨害で使えず。強靭な肉体を持っている武蔵でもただではすまないと一目で判る牢獄の中に入れられば不貞腐れた態度になるのも当然だ。

 

「そう嫌がってくれるな、私は君の力を高く評価している」

 

「そいつはどーも、でもねえ。永遠の闘争なんて言うヴィンデルさんに言われても嬉しくもねえよ」

 

年上には基本的に敬語を使う武蔵だが、ヴィンデルには敬語では無くタメ口で返事を返す。武蔵にとってヴィンデルは敵だと言う意思表示であった。

 

「これこそが地球を救う方法なのだぞ、何故分からない」

 

「わかんねぇっすね、オイラは戦いなんか嫌いなんですよ。それでも守る為に戦うだけで、好き好んで戦ってるわけじゃねぇ。永遠に戦い続ける地獄みたいな世界はごめんだよ」

 

これ以上話す事はないと言わんばかりに寝転がる武蔵にヴィンデルは溜め息を吐いた。

 

「どうしても私には協力は出来ないと?」

 

「出来ないね。もしもあんた達が永遠の闘争とか言うクソみたいな思想を捨てるなら判るけどな」

 

手をひらひらと振り興味はないと言う態度を取る武蔵にヴィンデルは背中を向ける。

 

「後悔するぞ。自主的に協力すれば良かったとな」

 

「んなもんに協力するならオイラは舌を噛み切って死ぬさ。分かったら消えてくれ、あんたを見てるとむかついてくる」

 

明確な拒絶の言葉を口にした武蔵にヴィンデルは今度こそ背を向けて牢獄を歩き去る。

 

「振られたな。ヴィンデル」

 

「ああ。残念だ、武蔵には自主的に協力して欲しかったがな。仕方あるまい、リマコンを使う事にしよう」

 

リマコンを使うと言うヴィンデルにアクセルは眉を顰める。

 

「お前が説得できるのならばリマコンは使わないが?」

 

「いや、無理だろうな。あいつは俺達の思想に共感する事はないだろうからな」

 

それにそんなもので武蔵を操れるとは思わないがなという言葉をアクセルはグッと飲み込み、ヴィンデルと共に牢屋の前を後にするのだった。培養液の中で眠るエキドナとラミアを調整しているレモンはその顔を悲しそうに歪めていた。それはエキドナの今までの活動記録の確認の為に見ていた映像にあった、記憶を失い幼い少女のように振舞うエキドナにレモンは最初こそ笑みを浮かべていたが、アインストとインベーダーの融合した化け物の精神攻撃によって記憶を取り戻してからのエキドナには痛ましさしか感じなかった。

 

【……ごめんなさい、ごめんなさい……私を許さないで……】

 

震える手でペンを握り、手紙を書くエキドナの目からは留めなく涙が流れ続けている。

 

「……エキドナ……貴女はこんなにも苦しんでいたのね」

 

レモンからの命令と、武蔵への恋慕、そしてハガネで過ごした楽しい日々……それらに板ばさみになり、エキドナは苦しみ、悲しみ、嘆き続け、それでもレモンの命令に従う事を選択した。

 

【痛い、痛い……胸が痛い、こんなにも痛いのか……】

 

胸を押さえ蹲り痛いと涙を流すエキドナ。それは裏切る事に対する己への嫌悪、そして裏切る事による苦しみによって生まれた物だ。W-16ならば感じることの無かった胸の痛み――エキドナはそれに苦しみ、爪が掌に食い込むほどに握り締めていた。

 

【裏切れない、裏切れないんだ。レモン様を……私はレモン様を裏切れないんだ。ラミア、私はお前とは違うんだ……】

 

エキドナはラミアの言葉の中に迷いを感じ、己の意志を貫く事を選んだラミアとは違うと血を吐き出すような苦渋に満ちた声で呟いた。

 

【いらない、こんなのいらないんだ……こんなに苦しいのなら、悲しいのなら心なんか欲しくない……わ、私は、私は人形のままが良かった……】

 

エキドナという人間ではなく、W-16ならばこんなにも苦しむ事は無かったとエキドナは嘆き続ける。

 

「……ごめんなさい、エキドナ。私は貴女をこんなにも苦しめていたのね」

 

培養液の中で眠っていても涙を流し続けるエキドナ。それはエキドナが心を得た証であり、己が許され無い事をしたを悔やみ、後悔し、それでもレモンの為に全てを裏切った。

 

「……エキドナ、早く起きて。私と話をしましょう……私達にはきっと会話が足りなかったのよ」

 

眠り続けるエキドナとラミアを見てレモンはそう呟く、エキドナをW-16と呼んだ自分を恥じ、悲しみ、そして……最後のチャンスを与える為に、W-16として生きるのか、それともエキドナとして生きるのか……自分で選ぶ最後の機会を与える、それが自分に出来る最後の事だとレモンは呟き、調整作業を続けるのだった……。

 

 

 

 

ネビーイームの自室で作業をしていたウェンドロの端末が音を立て自動的に立ち上がる。

 

「随分と無作法だね。ブライ」

 

『それは悪かったね、とは言え私も忙しい身だ。門前払いなどをされないように強硬手段に出ただけだよ』

 

ブライの言葉にウェンドロはやれやれと言う感じで肩を竦め、1度自分の作業を止める。

 

「そう言えばプランタジネットとやらを発令して攻め込んでくるらしいじゃないか」

 

『情報が早いな、その件についての話なのだが……あえてラングレーまでハガネ達を攻め込ませてはくれまいか?』

 

「なんだって? 折角奪還したラングレーを地球人に返せというのかい? 冗談じゃないよ」

 

ラングレー基地に何度も転移を行い自分達の拠点にしたのだから、攻め込ませるなんて冗談じゃないと拒絶するウェンドロにブライはまぁ待てと声を掛ける。

 

『ハガネ達はあくまで軍属だ。これから私は地球連邦の政権を取る』

 

ブライの言葉にウェンドロは楽しそうな笑みを浮かべる。ブライが何を言おうとしているのか察したのだ。

 

「補給もさせないで連戦連戦でラングレーに攻め込ませ、そこを刈り取るって所かい?」

 

『話が早いな、その通りだ。ブライアン・ミッドクリッドを私の手駒に変える。そうすれば私の思うがまま、そうすればハガネ達もこちらで操れる。そろそろな退場して貰いたい頃合なのだよ』

 

L5戦役を戦い抜いたハガネ達はブライからしても目障りな相手だった。それに開発者も多く、その内百鬼獣に対抗出来るPTやAMが開発される可能性がある。そう考えればプランタジネットを隠れ蓑にしてハガネ達の鹵獲に動こうとするのは当然の事だった。

 

「だがゲッターロボがいるんだろう? 猿芝居に付き合うにしても万が一があるからね」

 

『案ずる事はないゲッターロボは既に鹵獲されている。今お前達に攻撃を仕掛けるゲッターロボは存在しない。どうだ? 引き受けてはくれまいか? 当然私達も手駒を送る』

 

ブライの提案にウェンドロは暫し考え込む、ハガネの戦力は確かに驚異的だがゲッターロボがいなければ恐れるほどではない筈だと、それに錬度の低い連邦軍と戦った所でゲッター合金でコーティングをしたグレイターキン達の詳細な戦闘データを取る事が出来ない。自分達が受けるであろう被害、そして得れるであろう利益……その全てを計算しウェンドロは微笑んだ。

 

「良いだろう。引き受けよう、そのかわりしっかりとした手筈を聞きたい」

 

『そう言ってくれると思っていたよ。ではまずだが……』

 

ブライからの作戦立案を聞き、自分達は確かに矢面に立つが条件は全て同じ、そして最も警戒しなければならないゲッターロボが存在しないのならば、仮に参加していたとしてもそれすらも加味した計画を伝えてくるブライにウェンドロは納得したように頷いた。

 

「でもね、ゲッターロボが参加してくる可能性があるって言うのは正直どうかと思うのだけどね。僕達に対するリスクが高すぎる」

 

『それに関してはシャドウミラー次第だから私にはなんとも言えないが……案ずる事はないゲッターロボがもし参加してくれば、私達が戦おう』

 

「ふうん、それを鵜呑みにする事は出来ないけど……良いさ、引き受けよう」

 

いざとなれば転移でメキボス達を回収することも出来るとウェンドロはブライの提案を聞き入れ、ネビーイームで己の機体の最終調整をしているメキボス達を執務室に呼び寄せるのだった……。

 

 

 

沈黙したモニターを見てブライは額を揉み解しながら深く溜め息を吐いた。そんなブライの様子を見て机の上に水晶をおいてダウジングをしていた共行王がからかうように笑う。

 

「ずいぶんと疲れておるのう?」

 

「共行王か、確かに疲れてはいるよ」

 

オペレーション・プランタジネットを利用し一気に勢力を変えようとしているのだ。どれだけ根回しをしても足りず、常に最悪を想定している。その上連邦議会にも顔を出さなければならないとブライ1人では回しきれないほどの仕事を抱えている。

 

「戦力を増やすよりもお前の補佐を出来る鬼を増やすべきではないか?」

 

「悪いがそんな鬼がいるのならば見てみたい物だ」

 

ヒドラー元帥やグラーと言う配下は別の時空のブライには存在していたが、フラスコの世界のブライには補佐役と呼べる鬼は存在していない。その理由はシンプルだ、鬼になった時の衝動でその英知を失ってしまっている者が多すぎるのだ。

 

「優秀な学者、軍師ほど皆愚か者になった。期待するに疲れたのだよ」

 

「はっはっは……そうかそうか、それは大変じゃなあ」

 

にやにやと笑う共行王は苦しんでいるブライを見て楽しんでいる節がある。だがそれでも協力してくれているのでブライは文句を言う事無く、ダウジングの成果を尋ねる。

 

「それでダウジングとやらは効果があったのか?」

 

「戯けめ、今探しておる所じゃ」

 

「口の減らない奴だ。少しは成果を……っと」

 

共行王は地図に丸をつけるとそれをブライへと投げ付け、ブライはそれを指の間で挟んで止める。

 

「ここにダヴィーンの遺産が眠っているのか?」

 

「さあの。それは知らん、妙な力を感じる所に丸をつけただけじゃ、海の方は見に行くが、それ以外は知らんぞ」

 

そう言い残すと共行王はその身体を液状に変えて床に溶けるように消えていった。

 

「……やれやれ、とんだお嬢様だ」

 

口は悪く、人をからかう事を楽しんでいる節があるが、それでも復活させたと言う事に恩義を感じ協力してくれている共行王にブライは思わず苦笑する。

 

「なるほど……これは……面白くなって来たではないか」

 

この世界には様々な物が漂着している。地下に眠る早乙女研究所然り、巴武蔵とゲッターロボ然り、マシーンランドしかり、旧西暦から新西暦から転移した物、そして旧西暦から海に沈み続けたブラックゲッターのように大地の奥深くに眠り続けた遺産。この世界は混迷を極め様々な物が存在している。

 

「流れは私に傾いて来ていると言うべきか」

 

人間には到達不能な火山の奥深くや深海、スペースデブリの中に眠る数多の遺産……。

 

「ふっふっふ、これほど面白い事はない」

 

ゲッター線が人類の為に用意した脅威へと抗う力。それを百鬼帝国で利用し、人類を滅ぼすこれほど面白い事はないとほくそ笑みブライは策略を画策する。その目は爛々と輝き、強烈な野心と闘争本能によってか鋭い犬歯が伸び、こめかみからは牛を思わせる巨大な角が露になる……そこにいるのは連邦議員ブライではなく、百鬼帝国大帝ブライの姿であり、そしてその背後には亡霊のような無数のブライの姿があるのだった……。

 

 

第146話 陰謀と再会 その2へ続く

 

 

 




と言う訳で今回はシナリオデモとなりました。次回はオリジナルシナリオでブライアン救出のビアン達の視点で話を進めたいと思います。
紅の幻想については武蔵の合流後回想という感じで触れたいと思うので飛ばして、楽園からの逃亡者と話を続けて行こうと思います。
それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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