第146話 陰謀と再会 その2
キラーホエールのカーウァイから告げられた言葉は、クロガネのビアン達に激しい衝撃を齎した。それもそのはず、武蔵とゲッターロボがシャドウミラーに鹵獲されたというからだ。しかもそれが記憶を取り戻したエキドナによる物となれば、ビアン達の衝撃は更に大きな物となった。
「……駄目だったのか……」
エキドナがシャドウミラーの構成員ということはビアン達も知っていた、それでも武蔵が信じるエキドナを信じたいと言う気持ちがあった。しかしそれが裏目に出て武蔵がシャドウミラーに攫われたと知り、武蔵の反対を押し切ってでもエキドナは軟禁するべきだったのではないかという考えが脳裏を過ぎる。
「いや、それでよかったのかも知れん。武蔵君の性格を考えれば、裏切られるまでは彼女を庇っただろうからな。その事を後悔するよりもどうやって武蔵君を救出するか、それを考える方が得策だろう」
武蔵は懐に入れた人間に極端に甘い性質がある。そう考えればエキドナを軟禁すればビアン達とは言え、武蔵の反発を受ける可能性があった。過ぎた事を後悔するよりも武蔵をどうやって救出するかを考えるべきだと言うグライエンだが、その足は小刻みに貧乏揺すりを繰り返しており、彼自身も相当な動揺を受けているのは明らかだった。
「しかしプランタジネットを控え確実に百鬼帝国、そしてノイエDCは動きます。ブライアン大統領の救出も急務となるはず」
「バン大佐の言う通りだ。ブライアン大統領まで鬼に成り代わられたら、ハガネ達は戦力の分散を受ける事になるかもしれない」
「だが武蔵の救出を考えれば、割ける戦力はそうはないぞ」
武蔵がリマコンを受ける、ブライアンが鬼に成り代わられる。そのどちらかでも遂行されてしまえば、人類は一気に窮地に追い込まれることになる。更に言えば武蔵の救出と言うのは簡単だが、それはシャドウミラーと事を構える事と同意義であり、アインストとインベーダーと戦ってきたシャドウミラーと戦うにはそれ相応の戦力が必要となる。
『それに関してだが、無理を承知でゼンガーとエルザムをこちらに寄越して欲しい。短時間での強襲、これしか武蔵の救出を成功させる術はない、ハガネからギリアム、ラドラ、カイを連れてきた。教導隊による一点突破、それしかない』
「確かに……私でもそうする」
特機・準特機の戦力が充実しているクロガネだからこそ出来る強襲策。グルンガスト参式・タイプG、ゲッターロボ・トロンベ、ゲシュペンスト・タイプS・Gカスタム。そしてゲシュペンスト・シグ、リバイブが2機の6機はそれでだけで大隊に匹敵する戦力と言っても良いが、転移を有するシャドウミラーを考えれば時間を掛けている余裕は無く、強襲策を強いられる事になる。
「分かった。ゼンガー少佐達にはカーウァイ大佐に合流して貰う。ブライアン大統領の救出は私とバン大佐、そしてスレイの3人で行なう」
ビアンの発言にブリーフィングルームに驚愕の声が広がる。
「ビアン総帥。いくらなんでもそれは危険すぎます」
「リリー中佐、いや、これが最善だ。ブライアン大統領は表向きだけとは言え生存させる必要がある。そうなれば百鬼帝国が切れる戦力はノイエDCのAMになる筈だ」
プランタジネットの演説を利用するという事は、大々的なTVの撮影がある。インスペクターと戦う為に現存の政府のあり方では無理だと言う事をアピールする必要がある。そんな場所に百鬼獣を出現させるは難しい筈だとビアンは説明する。
「しかし建物ごとブライアンを殺す可能性もあるぞ」
「それも承知しているが、そうなれば臨時大統領の擁立、更に選挙になる可能性がある。そうなれば我々は時間を得る事が出来る上に……私の偽物の面の皮を剥がす事も可能だ」
ノイエDCのビアン・ゾルダークが現れたタイミングでクロガネと自分が現れれば、どちらのビアンが本物なのかという疑惑を世論に広げる事が出来る。
「バン大佐はLB隊と先行してブライアン大統領の救出へ、私とスレイ、そしてジャレッドとオーギュストでノイエDCの機体と戦い、バン大佐達はブライアン大統領を救出次第離脱する。これ以外何かアイデアのある者はいるか? なければこの作戦でいく」
余りにも無謀、だが爛々と輝くビアンの双眸を見て、そしてビアンの出した作戦以上を今のクロガネの面子では出来ないというのは覆しようの無い事実であり誰も代替案を出すことが出来ないのだった……。
大統領執務室にブライアンの重苦しい溜め息の音が木霊する。虫の知らせと言う訳では無いが、ブライアンは今日が自分の命運を分ける日というのを無意識に感じ取っていた。
(……ふう、どうした物か)
幾たびも生命の危機に瀕し、その都度奇跡的な豪運で生き延びて来たブライアンだが、流石に今回ばかりは駄目かもしれないというのを感じていた。何故ならば誰も味方がいないのだ、言動や顔は確かに自分の選んだ部下である。だが中身が違うのだ、姿形は同じだが何かが違う……それが鬼による成り代わりによる物であると言う事を初めてブライアンは実感していた。
(これは何とも恐ろしいね)
知っている筈なのに、全く知らない人間になっている……これほど恐ろしい事はないだろう。
「ブライアン大統領。そろそろ演説のお時間です」
「ああ。分かったよ、行こう」
演説ではなく処刑の時間だろうけどねと心の中で呟き、ブライアンは執務室を後にする。ここまで来たらブライアンに出来る事はただ1つ……本物のグライエンが打つ一手に縋るしかないとブライアンは小さく自嘲するように笑い、数多のメデイアの待つ外の会見場へと足を向けるのだった。
「大統領。連邦軍によるラングレー基地の奪還作戦についてはどうお考えですか」
「L5戦役を潜り抜け、地球を守ってくれたハガネ、ヒリュウ改を主軸にすることで必ずや奪還できると僕は考えている」
演説の後の質問の時間だが、その殆どが喧嘩腰とまでは言わないが、ブライアンの足を掬わんとする悪意ある質問が多かった。
(ここまで仕込まれているのか完全に悪手だな)
記者にまで仕込みが混じっていることに気付いたブライアンだが時既に遅し、会見は既に始まっており最早打てる手など殆ど無いと言っても等しい状態であり、正しくまな板の上の鯉と言っても良い状況だった。
「ノイエDCのビアン・ゾルダークに協力要請を出したと聞いておりますが、連邦よりもノイエDCを主軸にした作戦の方が成功率が高いのではありませんか?」
「連邦軍はハガネ、ヒリュウ改、シロガネを除き敗走を続けておりますが、本当に大丈夫だと思っているのですか?」
「ハガネと言いますが、本当は武蔵とゲッターロボ頼りではないのですか」
ビアンの名前を出し、一方的に連邦が悪い、連邦では力不足ではないのかと言う意見が噴出し、静粛にと声を掛けても連邦への不信感で完全に制御不能へと陥る。そしてそこに『クロガネ』が姿を現した。
『こちらはノイエDC総帥、ビアン・ゾルダークだ。グライエン議員の要請によってオペレーション・プランタジネットの協力に参上した』
図ったかのように、いや実際に図っていたのだろう。連邦への不信感を呷り、そこでビアンとクロガネの登場……。
「やはり連邦では駄目じゃないのか?」
「ビアン博士が言うのならばビアン博士とノイエDCを主軸にしたほうが」
「連邦に出来ることなどないのではないのか? ブライアン大統領! ノイエDCを正式な軍隊と認めては如何ですか!」
「連邦軍上層部はハガネとヒリュウ改の足を引っ張っていると聞いておりますが、それに関してはどうお考えですか!」
「月面の連邦軍がいながら敵勢力に征圧されていることに関してどうお考えなのですか!」
喧々囂々。ノイエDCによって明らかにされた連邦の不祥事、そして敗走……今まで押さえ込んでいた連邦上層部の情報隠蔽体質、それがブライアンに一気に牙を剥いた。
「退席しないでください! ご質問にお答えください!」
「大将! どうお考えなのですか!」
「お答えください!」
会見に同席していた上層部が会見場から逃げ出そうとし、それを見た記者によって更なる火種が生まれる。
(不味い……これは不味すぎる)
連邦への不信感、そして政権への不信感はL5戦役以前から溜まり続けていた。それが爆発した事にブライアンは眉を細める、ここで来てしまえばもう止められない。
「ブライアン、ここはビアンを招きいれ会談を行うべきではないだろうか?」
「こうなってしまえばビアンを受け入れるしかないと思うが……」
「確かにそうしかありませんね。仕方ありません、連邦の護衛機を下げましょう」
ここでビアンを迎え入れれば完全に詰みだ。だが招き入れるという選択しか今のブライアンに打てる手が無く、目を閉じて深くブライアンは息を吐いた。
「アルテウル。ビアンに会談の要請を『ふむ、君かね。私を騙る男と言うのは?』……ッ!?」
降参するしかないと会談の要請を出そうとしたブライアンの視界の先にはもう1隻のクロガネの姿があり、L5戦役時に、そしてDCのフラグシップと言っても良い機体……ヴァルシオン、そしてその護衛機であろうゲッターロボに酷似した特機。
『さてと、それで私を騙って何がしたいのかね? 君は何者だね』
クロガネは確かにDCの旗艦だ。だがそれに加えてヴァルシオンまで現れれば、どちらが本物であるかという動揺が会見場に一気に広がるのだった……。
会見場に集まっていた記者達は2隻のクロガネ、そして2人のビアンに驚きを隠せなかった。
「ど、どうなってる!? 何でクロガネが2隻も!?」
「い、いやそもそもなんでビアン博士が2人もいるんだ!?」
「ど、どっちが本物なんだ!!」
「そ、そりゃ、ヴァルシオンがあるほうじゃないのか!? それに最初に現れたほうは何も言ってないぜ」
確かに会見場にはブライの仕込んだ鬼の記者がいる、だがそれは少数であり情報操作、そして雰囲気の操作の為の要員だ。人間の記者と比べればその数は少数で、どちらが本物かという騒動になると少数の鬼ではどうにも出来なかった。
『返事位したらどうかね? 私の名を騙り、DCを再結成し、そして何をするつもりなのかね?』
ビアンの問いかけにビアンに扮している五本鬼は返事を返せない、そもそも五本鬼は極端にイレギュラーに弱い性質がある。本物のビアンの登場を前にして、完全に言葉に詰まっていた。
「どちらが本物かどうかは問題ではない、今は避難をするべきだ。早くシェルターへッ!」
このままでは駄目だと判断したブライの一声でシェルターへの避難が始まる。
『私が本物だ。お前こそ何者かね?』
『ふむ、私の問いかけに自分が本物だと言うかね。では君が本物だとしよう、その上で君に問おう。テスラ研のゲシュペンストあれの開発スタッフを知っているかね?』
『は?』
『おいおい、こんなことも分からないのかね? ではグルンガストの名前の由来を知っているかね?』
『な、何を言っている?』
『何をってお前はビアンなのだろう。ビアン・ゾルダークならば知っていることを問うているのだよ、そうだな。盟友だったマイヤーの妻の誕生日、そしてその好きだった……』
ビアンの問いかけに痺れを切らしたのか、それともこれ以上喋らせては五本鬼が荒を出すと思ったのか、クロガネの主砲がヴァルシオンに直撃し、装甲がボロボロと崩れ落ちる。
「壊れた!? じゃああのヴァルシオンは偽物なのか!?」
「先に現れたのが本物のビアン博士か!?」
崩れ落ちる装甲を見て記者達は口々に声を上げるが、爆煙から飛び出した斧がクロガネのエクスカリバー衝角を切り落とし、周りのAMを巻き込んで崩落する。
『語るに落ちたな。武力行使は最終手段であるべきだ、そしてそんな偽物でビアン・ゾルダークをそしてDCを名乗るとは、全く失笑物だよ』
煙の中から鉤爪の生えた腕が現れ、そこからゆっくりとヴァルシオンを模したオーバーパーツを散らしながら真紅の特機がその姿を露にする。
「ゲ、ゲッターロボ! ゲッターロボだ!?」
「い、いや、でもあれはヴァルシオンだッ!?」
ヴァルシオンとゲッターロボの意匠を持つゲッターロボVはリクセント奪還戦、そしてシュトレーゼマンが地球を脱出しようとした時のみ確認されており、殆どその姿を見られることがなかった。それ故にゲッターロボVを見た記者達は避難している最中だが、驚きの声を上げた。
『先に手を出したのは其方だ。化けの皮を剥がさせて貰おう。ゲッタァァアアアア……ビィィイイイイイムッ!!!!!』
ゲッターロボVの腹部から放たれたゲッタービームがクロガネを飲み込み爆発させる。それはクロガネの偽装装甲を破壊するには十分だったが、核の機体を撃墜するのは威力が少しばかり足りなかった。いや、厳密に言えばあえて出力を落し偽装装甲を破壊する為だけの一撃はビアンの狙い通りにクロガネの偽装装甲だけを破壊した。
『己ッ! 良くもやってくれたなッ!』
『ありがちな三下の台詞をどうもありがとう。私を騙ってくれた礼だ、楽に死ねると思うなよ』
クロガネと対峙するように浮かぶ異形の戦艦、そして感情を剥き出しに叫ぶビアンと、淡々と、しかし内に燃える激しい熱を見せるビアン……どちらが本物であるかと言うのは誰の目から見ても一目瞭然なのだった……。
一方その頃大統領府の地下シェルターへと向かうブライアンと、その警護をしているSPと軍人が唐突に足を止めた。
「ブライアン・ミッドクリッド。疲れただろう、そろそろ休んではどうかな? そう、永久にね」
「……やれやれ、そんな台詞を聞くとは思ってなかったよ。ブライ議員、いやそれともこれも君のシナリオ通りかな?」
地下のシェルターに向かっている人間はブライアン1人であり、彼の周りにいる全てが鬼であり、そしてその中には自分と同じ顔の鬼もいてブライアンは深い溜め息を吐いた。
「なるほど、これが君達の戦略という訳だ」
「敵を崩すのならば内部から、簡単な話だろう?」
「……ウィザードとは全然似てないってずっと思ってたよ。へたくそな演技お疲れ様」
ブライアンの挑発にグライエンに成り代わっている鬼は顔をしかめたが、感情任せになる事はなくすっと身を引いた。その様子を見てブライアンは内心舌打ちをせざるを得なかった。
(駄目か)
なんとしても自分の成り代わられる事だけは避けなければならない。挑発に乗って殺しに来ることを少しだけ期待していたのだが、それを鋼の精神力で押さえ込んだ鬼に正直少しだけブライアンは驚いていた。
「私の側に置く鬼だ。並の鬼と同じと思わないで貰おうか」
「だろうねえ、あのビアンに扮している鬼は随分と程度が低かったしね、仮にも成り代わるのならばもう少し知恵をつけさせておくべきだったんじゃないかな? あれでは余りにもお粗末だ」
ビアンならば知っている事を何も答えられなかった。あれで良く偽物として立てれたねとブライアンが言うと、ブライは首を左右に振った。
「全くだ、あれで1番似ていて優秀だというのだから目も当てられん」
「それはまた随分とお粗末だねぇ。これだけ長く準備していたのに、こんな簡単な事で失敗するんだから」
本物のビアンが現れ、クロガネもどきは破壊された。そして避難している記者によって本物のビアンと偽物のビアンがいると言う話が広がり、ブライの苦労は全て無駄になったと言えるだろう。
「いやいや、そんなことは些細な問題だよ。君に私の配下が成り代わればどうとでもなる、大統領の特殊コードを教え安らかに死ぬか、それとも拷問されて苦しみながら死ぬか、どちらがお好みかな?」
獰猛な、獣のような顔で笑うブライ。どちらを選んでも死ぬということは明らかだったが、ブライアンは肩を竦めて笑った。
「何がおかしいのかな?」
「いや、別に馬鹿にしているわけではないよ。ただそうだな……うん。世の中には僕の知らないことがこんなにあるんだな、と思っただけだよ」
鬼という存在を始めて見て、そして自分と同じ顔の男がいる。常人ならば発狂してもおかしくない状態だが、それでもブライアンは笑った。その異常な状態を受け入れ、しかしそれでも生きる事を諦めない不屈の意志をその目に映して笑っていた。
「この場に及んでまだ諦めないか、その不屈。賞賛に値する、だが貴様は賢すぎたな」
「お褒めに預かり光栄だ。百鬼帝国ブライ大帝」
「……やはり辿り着いていたか。恐ろしい男だよ、お前はな」
「ヒントが沢山あったからね」
僅かなヒントでそこまで辿り着いたブライアンにブライは心底感心していた。恐ろしいほどに優秀な男だと認めざるを得なかった。
「もう1つの選択を与えよう。鬼となり私に仕えれば命は助けよう」
「いや、ごめんだよ。僕は死ぬ時まで人間が良いからね」
「そうか、残念だ。では……機密コードはお前の身体に聞くとしよう」
ブライが片手を上げ、ブライアンを捕らえろと指示を出そうとした瞬間だった。
「ブライアン大統領! 目を閉じて頭を伏せろッ!!」
男の怒声と共に投げ込まれたフラッシュバン。それを見てブライはほくそ笑んだ、人間相手ならばそれは効果的だが、鬼には何の効果も無い。駆けて来る音を聞き、下手人を殺せば良い。そう考えていたブライだが、フラッシュバンから溢れた翡翠の輝きに目と身体を焼かれた。
「うぐあっ!?」
「ぎゃあああああ――ッ!!!」
「あづい! あづいいいいいッ!!!!」
「う、うわああああああ――ッ!!!」
格の高い鬼であるブライやグライエンに扮している鬼でさえ、耐えられない高密度のゲッター線。それは下級鬼に耐えれる物ではなく、全身を焼かれ火達磨になって転がり、必死に消そうとするがゲッター線の炎に燃やし尽くされ下級鬼は炭のようになり息絶える。
「た、大帝……だ、大丈夫ですか!?」
「油断した……まさかこんな物を作れるとは……」
顔が半分溶け、鬼の顔を露にしているグライエンの手を借りながらブライは立ち上がる。だがその全身は酷い火傷を負っており、立っているのはブライとグライエンを除けば2人ほどしかおらず、大統領府に連れてきた配下は殆ど死に絶えていた。
「……やられたな」
ブライアンに扮した鬼は首を切られ絶命しており、ブライアンの姿も無い。ブライアンの話は時間稼ぎであり、それに乗ってしまった段階で失敗だったとブライは頭を振る。
「追っ手を出しますか?」
「この状態で動ける訳がなかろう。仕方ない、我々も撤退だ。大統領府を倒壊させ、それで負傷した事にする」
「……よろしいので?」
「構わん。ほんの少し計画が狂うだけだ。どの道逃亡した段階でブライアンも表舞台には立てない、ブライアンが行方不明となればお前と私がトップだ。連邦議会を掌握する事も容易い」
本当ならばブライアンに成り代わった鬼を使いたいブライであったが、ブライアンがいなくなれば実質的にグライエンとブライが政権を取ったと言っても良い、だから問題はないというブライだが、誰よりもその顔が怒りによって苦渋に歪んでいた。計画が狂い、その上出し抜かれ、ダメージを受けていることに不機嫌になっている事は明らかだった。
「クロガネを逃がすな、なんとしてもここで沈めろ。百鬼獣を出しても構わない」
「了解しました。ではそのように」
ブライアンの逃げる場所はクロガネ以外あり得ない。ならばクロガネを沈めれば万事解決するとまでは言わないが、少なくとも少しの期間をおいて再びブライアンの顔をした鬼を作ればシナリオの修正は効く、ブライはそう考えクロガネを逃がすなと指示を出し、痛む身体に顔を顰めながら地下シェルターへと足を向けるのだった……。
バンに俵抱きにされ運ばれているブライアンは顔を青くさせ、吐く、吐くと繰り返し呟いていた。その呟きを聞いてバンは僅かにスピードを緩める。
「もう少し優しく運んでくれても罰は当たらないと思うんだけど、そこはどう思う?」
「悪いがそんな時間はない。連れ出した段階で、そしてクロガネを持ち出した段階で我々は全滅のリスクを背負っている」
「それは分かるけど……いや、すまない。僕が悪かった」
クロガネもビアンもブライからすれば目障りな存在だ。その両方がここに揃っている事を考えればなんとしても撃墜しようとするだろう。更にその騒乱でブライアンが死ねば正しく一石三鳥だ。百鬼帝国の作戦を完全に瓦解させるにはクロガネ、ビアン、そしてブライアンの3人がなんとしても生き延びてこの場から逃げ果せる必要がある。
「何とかなりそうなのかい?」
「悪いが戦力は殆どない、武蔵が攫われてな。そちらの奪還に戦力を割いているからな」
「攫われた!? 百鬼帝国にか!?」
「いや、違う。説明すると長くなるのだが……とりあえずクロガネについてから説明する」
「大佐! はやくこちらへ!」
待機しているフルアーマー・ガーリオンの一団が急げとバンに声を掛ける。
「いや、連れて行くのはブライアン大統領だけで良い。合図を出せばオーギュスト達が回収に向かってくれる手筈になっている、お前達はなんとしてもクロガネに着艦しろ」
矢継ぎ早に指示を出し、ブライアンをLB隊に引き渡したバンは踵を返して走り出す。
「やはり繰り出してきたか……間に合えッ!」
外から響いて来る百鬼獣の雄叫びと地響き、単独操縦のゲッターロボV、そして熟練不足のジャレッドとオーギュストが操縦するネオゲッター、そしてスレイのカリオン・改では対処出来る相手ではないとバンは焦りを感じながら走る。
「こちらバンだ! ジャレッド! オーギュスト! 回収に来てくれ!」
大統領府地下から出たバンはジャレッド達に回収に来るように頼み、戦況を見つめて顔を顰めた。
「不味い……やはり押されているッ!」
重力を操るゲッターロボVが前線に立っていることで辛うじて完全に劣勢に追い込まれることは避けれているが、AM、そして百鬼獣に完全に退路を断たれている、このままでは本当に轟沈するのは時間の問題なのは明らかであり、包囲網を何とか抜けてバンの回収に来ようとしているネオゲッターを見つめ、機体に乗り込まない事には何も出来ないバンは歯噛みするが、ブライアン救出も必要な事であり、ゼンガー達を除けばバンだけが鬼に匹敵する身体能力を有しており、ビアンに信頼されての起用であると言うことは判っていた。
「早く、早くこっちに来てくれッ!」
だがそれのせいでクロガネが撃墜、あるいはビアンが死んでしまっては何の意味もない。強い焦りを感じながら少しずつだが自分の元へ向かって来ているネオゲッターロボにその視線を向ける。
「急げ、急いでくれ……何もかもが手遅れになる前に……ッ」
連邦にも鬼がいる。鬼に指示を出された連邦軍の援軍がこの場に来る可能性は高く、百鬼獣、ノイエDCに加えて連邦軍にまで攻撃を仕掛けられては今のクロガネの戦力では逃げ切れないのは明白であり、自分達が死ぬのは良いがビアンが死ねば今まで積み上げて来た全てが無駄になる……そうなる前に、なんとしなければ脱出しなければならない、詰みになるまで時間の問題であることに激しい焦りを抱くバンの前のにやっとネオゲッターが辿り着き、その手をバンに向ける。バンはその手に飛び乗り、ネオイーグル号の中にその身を滑り込ませるのだった……。
第147話 陰謀と再会 その3へ続く
次回は戦闘回を書いて行こうと思いますが、クリア条件は規定ターン数が経過する前に敵機を特定数撃墜+クロガネが指定エリアに到達することになりますので、少し地味目の話になるかもしれませんがご容赦ください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い