第27話 アイドネウス島の決戦 その4
一時は勝機が見えた恐竜帝国との戦いだが、それは一瞬で消え去り逆にDCもハガネも徐々に恐竜帝国に追い詰められ始めていた……
「化け物か……ッ!?」
クロガネのブリッジで思わずそう叫んだ。ハガネの出航の時に見たトリコロールのPTが、あの巨大なメカザウルスの一部を破壊した。それは恐らく、あのメカザウルスのエネルギーを伝達する部分だったのだろう。それのおかげであのメカザウルスが放とうとしていた広範囲攻撃は失敗し、逆流したエネルギーが暴走しその巨体がアイドネウス島に倒れこむ。その姿を見て、エルザムだけではない、ハガネのブリッジでも、リュウセイや、DCの兵士も同じだった……だが今暴れ回る姿を見ろ、その姿にダメージを受けた様子は微塵も感じられない。
「うおおおおおッ!!!」
「どりゃああああッ!!!」
4本の首が合体し、脚部となったことで今まで以上に暴れ回るメカザウルス……パイロットが言うには、ギガザウルス・ゴール。そのスピードは確かにPTやAMに比べれば、1段も2段も劣る。だが特機として考えればそのスピードは破格だ。しかもあの巨体で動き回れれば、PTやAMは下手に接近した瞬間に破壊されるだろう。
「はははッ! そうだッ! それでこそゲッターロボッ! 我等の怨敵よッ!!!」
「言ってろ! 今日がてめえの命日だぁッ!!!」
あの戦いに割り込むことが出来る物など存在しない、互いに互いを敵としてみなし、互いに互いを倒す事だけを考えている。その戦いは新西暦の人間には余りに血生臭く、そして理解を超えていた
「死ねぇッ! ゲッターロボォッ!!!」
「オープンゲーットッ!!!」
両腕に加えて、尾を交えた3方向からの同時攻撃。命中する寸前にゲッターは自ら爆ぜ、回避など不可能と言うタイミングだったのにも関わらず、その一撃をすり抜けるようにかわして上空へと逃れる。
「私を忘れてもらっては困るなッ!!!」
ゲッターが爆ぜた事で一瞬塞がれたバットの視界、視界が戻った時にはヴァルシオンが両手でディバインアームを持ち、大上段からギガザウルス・ゴールに切りかからんとしていた。だがバットはギガザウルス・ゴールのコックピットで笑みを浮かべていた。
「忘れる物かッ!」
ビアンの駆るヴァルシオンがギガザウルス・ゴールに切りかかり、ゴールの振り上げた爪とぶつかり火花を散らす。
「チェンジッ! ゲッタァァァーッ!! ツゥゥゥッ!!!」
上空から降下してくる勢いのまま、ゲッター2へと合体した武蔵がドリルを翳しゴールへと向かっていく
(……駄目だ。あの戦いに下手に支援を出すと流れが一気に変わる)
武蔵とビアン……いや、ゲッターとヴァルシオンでなければあの形態になったゴールと戦うことは出来ない。
「少佐! 沈没していく巨大建造物から熱源多数確認ッ!」
オペレーターの言葉にエルザムは顔を歪める、ギガザウルスが変形すると同時に何体ものメカザウルスが出撃してきた。だが、まだ恐竜帝国には余力が残っていたのだ。
「各員に告ぐッ! 恐竜帝国拠点より熱源多数ッ! 敵増援と思われる、燃料、弾薬の少ないものは1度帰還せよッ!」
帰還命令を出すと同時に砲撃手に海中からメカザウルスが出現すると同時に、主砲、副砲の照準を合わせと指示を出して艦長席から立ち上がる。
「少佐!? どこへッ!」
「決まっているッ! 私には私の出来る事をするッ!」
あれだけのメカザウルスがゲッターロボとヴァルシオンに攻撃を仕掛ければ、今2対1で均衡している戦況は一気に恐竜帝国にとって有利な方向に向かう。それだけは阻止しなければならないとエルザムがブリッジを出ようとしたその時……ブリッジの扉が外から開いた。そのことに驚き、足を止めるエルザムの目の前には柔らかい笑みを浮かべたシュウの姿があった。
「シラカワ博士……」
「少佐、貴方はこのクロガネを任された。今貴方がするべきことは戦場に出ることではないはず」
「し、しかし!」
「心配ありません、貴方の代わりに私が出ましょう。大多数戦では私とグランゾンの方が優れている」
それに搭乗機を失っている今、何で出撃するつもりなのですか?と問いかけられ、エルザムは唇を噛み締める。ガーリオン・カスタム・トロンベは大破し、ノーマルのガーリオンではエルザムの動きにはついて来れない
「判りましたか? まともに動けない機体で的になりに行く必要は無いと言う事です。ですからここは私に任せてください」
淡々とした口調で告げられるが、それが全て事実であり、エルザムはシュウとグランゾンに出撃を頼む事しか出来ないのだった……
クロガネから出撃した濃紺の特機……特徴的な胸部パーツと見る者に威圧感を与える存在感。重力の魔神グランゾンがこの戦場に現れた。
「シュウッ!!」
一瞬硬直する者が多い中サイバスターだけはグランゾンへと開き直る。そして凄まじい殺気を放ちながらマサキが手にしている剣……ディスカッターの切っ先を向ける。だがシュウはその殺気など取るに足らないと言わんばかりに笑う。
「ククク、随分と苦戦しているようですね。マサキ、手伝ってあげましょうか?」
その圧倒的な上から目線の言葉。お前達だけでは、この状況を切り抜けられないだろうと言わんばかりの言葉に一瞬マサキの頭に血が上りかける……だがマサキは激情に身を任して行動することは無かった。
「変な動きをしてみろ……怪しいと思えば、お前を後ろから斬る」
マサキとシュウにはなんらかの因縁がある、だがマサキはそれよりも今この場を切り抜けることを選んだのだ。
「ククク、それで良いですよ。では行くとしましょうか」
虚空に開いた穴に手を入れ、そこから異形の剣を取り出し構えるグランゾンとその隣でディスカッターを構えるサイバスター……その姿は恐竜帝国と言う未知の存在と戦うハガネのPT隊、そして凄まじい被害を受けながらもまだ戦う事を諦めないDCのAM隊に勇気を与える。
「フッ……懸念は無駄だったか」
グランゾンの登場でマサキが暴走する事を危険視していたイングラム。だがマサキはシュウに怒りを向けつつも、今は共闘する事を選んだ。グランゾンとサイバスターはこの状況ではこの上ない味方となる……
「リュウセイ、まだエネルギーは十分か?」
「大丈夫だ。教官、まだ行けるッ!!」
ビームソードを構えるR-1、その闘志に満ちた姿を見ればまだ戦えるというのは明らかだった
「イルムガルト、そっちはどうだ」
「こっちも問題ないぜ少佐。ただ……ファイナルビームには期待してくれるなよ」
計都羅喉剣を構えるグルンガスト、イルムの告げたファイナルビームに期待するなと言うのはエネルギー切れが近いのだろう。通常戦闘には問題は無いが、エネルギーを使う攻撃を連発する事は出来ないと言う意味がその発言には含まれていた。
「それで構わん、先頭はお前だ。リュウセイ、俺とお前はグルンガストの左右につくぞ」
メカザウルスが上陸する勢いは一向に収まる事を知らない。一撃喰らえばその時点で脱落が決まるR-1とビルトシュバインがバックアップに回るのは当然だ。
「やれやれ、相変わらずきついな」
イングラムの命令が何を意味しているか理解しているイルムは深く溜め息を吐く、今イルム達は孤立している……いやしてしまったと言える。さっきまで共に戦っていたAM隊は壊滅寸前で後退した。ギガザウルス・ゴールに肉薄していたこともあり、ハガネとも距離が開いている。グルンガストでメカザウルスの群れを突破し、そしてハガネの近くまで後退する……口で言うのは容易いが、実行するとなれば恐ろしい難易度を持つその命令に思わずぼやいたイルムだが、イングラムは即座に返事を返した。
「リンならそんな文句は言わないぞ」
イングラムから返された言葉にうめいたイルム。だがイルム自身が一番判っている、この場で先陣を切れるのはグルンガストと己しかいないと
「遅れてメカザウルスに捕まっても知らないからなッ!!」
計都羅喉剣で振り下ろされた爪を切り払い、蹴りを叩き込んで走り出すグルンガストを追って進むビルトシュバインとR-1。アイドネウス島での戦いはまだ始まったばかりと言わんばかりに島中に響き渡るメカザウルスの雄叫び……だがそれはイングラムには戦いを求める叫びには聞こえなかった。メカザウルスの叫び、それは自分達はここにいる、確かに生きていた、存在していたと訴えかけるような叫びに聞えるのだった……
リュウセイ達がハガネへと帰還する為に決死の撤退作戦に出たと同時刻、ハガネもまた窮地に追い込まれていた。ギガザウルス・ゴールの出現と共に放たれたビームの雨、それによって破損したテスラドライブは応急処置すらまだ済んでおらず、海中に沈んでいる。アイドネウス島に上陸しているメカザウルスが大半だが、海中から執拗にハガネに攻撃を繰り出すメカザウルスのミサイル攻撃によってハガネの巨体は徐々に、徐々にだが海中に沈んでいた
「ぐうッ! エネルギーフィールドの展開率はどうなっているッ!?」
「て、展開率50%を切りましたッ! 40%を切るのも時間……うわあッ! じ、時間の……も、問題ですッ!!」
エイタの言葉にダイテツは顔を歪める。一刻も早く海上に浮上しなければハガネの轟沈も時間の問題だ、だがハガネの現段階の戦力は僅か主砲が1門、副砲が4門。対空砲座と対地砲座、そしてミサイルは健在だ。だがメカザウルスを相手にすれば焼け石に水程度の効果しかない……
「シュッツバルト、ゲシュペンストの消耗率が危険域に到達! ビルドラプター、アーマリオンは健在ですが弾薬およびエネルギーが危険
域に入るのも時間の問題ですッ!」
オペレーターから告げられるPT隊の被害状況にダイテツは歯を噛み締める。状況は悪化の一途を辿っている
「ドリルアタックッ!!!」
「ぬおおおおッ!!!」
「ぐうううッ!! まだだ! この程度でこのバットを倒せるなどと思うなぁッ!!」
ギガザウルス・ゴールを足止めしているヴァルシオンとゲッターロボ。あの巨体が暴れだせば、ハガネもクロガネも轟沈する。敵であるビアンと民間人である武蔵が最大戦力と言う状況……それを覆す一手を必死に考えるダイテツ。だが、妙案は浮かんでは来ない。
(緊急用のオーバーブースト……駄目だ。艦首トロニウムバスターキャノン……これも駄目だ)
大気圏離脱用の緊急用のオーバーブーストならば海上に出ることも可能だが、最低限でも浮遊出来るだけの修理が必要だ。そしてトロニウムバスターキャノンはたった1発しか運用できない、浮上出来ないのでは発射の反動でアイドネウス島に激突し、轟沈する危険性が高い
(万事休すか……)
恐竜帝国が脅威と言うことは把握していた、だがそれはダイテツ達の予想を遥かに超えていた。今も、ハガネを何度も苦しめたテンペストのガーリオンが被弾し、煙を上げて落下していく……その姿を見てダイテツは覚悟を決めた。
「大尉、最悪の場合我らはハガネを放棄する。脱出艇の準備を始めろッ!」
「し、しかし! 貴重なスペースノア級を破棄するのですか!?」
「最悪の場合の話をしている! ワシとて放棄するのは本意ではないッ! しかし部下を死なせるわけにはいかんのだッ!」
だがこのまま移動出来ないハガネに拘り、部下を全員死なせるわけには行かないと叫ぶダイテツ。テツヤもまた苦しそうに顔をゆがめ、脱出艇の準備を始めろと艦内放送で叫ぶ
出艇の準備を始めろと艦内放送で叫ぶ
「自動操縦の準備! 最悪の場合、ハガネの機関部をオーバーヒートさせて爆破する!」
それはハガネを放棄してでも恐竜帝国を倒すというダイテツの決断であった……
「ラトゥーニ! ライ! 大丈夫ッ!」
ヒュッケバイン009を駆るアヤはロシュセイバーでバドの首を切り落とし、バドに襲われていた2人に声を掛ける
「無事といいたいですが、流石にこれ以上の戦闘は無理です。大尉……」
最初の一撃で中破していたシュッツバルトでよくここまで奮闘したと言うべきだ。最大の武器であるツインビームカノンを失い、PTとしては機動力を犠牲にして得た防御力もメカザウルス相手では紙にも等しい。それなのに良くここまで戦ったと本来なら言うべきなのだが、敵の波状攻撃が収まらない今戦力が減るのは避けたい事だった。
「ハイパービームライフルを潰されました」
ラトゥーニが苦しそうに告げる。最大の武器を失い、ビルドラプターの戦闘力もガタ落ちだ。
(これ以上は耐えられない)
アヤが駆るヒュッケバイン009だって、エネルギーも弾薬もそろそろ危険域が近い。だが今下がれば、ハガネがメカザウルスの集中攻撃を受けることになる。それが判っているから撤退することが出来ない。
「スクエア・クラスター発射ッ!!」
空中を旋回したアーマリオンの両肩から放たれたミサイルの雨が、メカザウルスの前で炸裂し進撃して来たメカザウルスの足を止める。
「いっけええッ!!!」
ゲシュペンストが足を止めたメカザウルスの顔目掛けて飛び上がり、プラズマステークで殴りかかる。高電圧の一撃はメカザウルスの脳を破壊し、大きな振動を立ててその巨体を滑走路の上に倒れさせる。
「はぁ……はぁ……駄目、今のでエネルギー切れ」
「リオ、僕が殿を勤める。撤退して」
「……ごめん、直ぐ戻るからッ!!!」
上空から降下してきたアーマリオンがゲシュペンストの前で滞空し、ゲシュペンストはアーマリオンに庇われるようにして撤退していく
「ヒュッケバインに搭乗しているパイロットに告げる、射撃軸より離脱せよ、繰り返すヒュッケバインに搭乗しているパイロットに告げる、射撃軸より離脱せよ」
クロガネからの回避勧告にアヤ達は機体を後退させる。それと同時にクロガネから放たれた主砲がメカザウルスを薙ぎ払う、だがそれだけでは終わらない
「DCの底力を見せてくれるッ!! 各員続けッ!!!」
アイドネウス島の格納庫から姿を見せるのはグレーのカラーリングのリオンやガーリオンの数々。だがその腕や脚部はどれも同じ物は無く、プロトタイプであると言う事は明らかだった……
「隊員の思いを無駄にしないで欲しい、今の内にハガネへと後退するがいい」
「……撤退します。私に続いて」
アヤにそう声を掛けて、自らもメカザウルスに突撃していくランドリオンのプロトタイプ。DCと連邦、敵同士だったにも関わらず、それでもアヤ達が撤退する隙を作る為に囮となることを選んだのだ。兵力では勝るDCだが、各機の性能では僅かに劣る。それ故に自ら死を覚悟して囮に出た……アヤは口を開きかけたが、自分に声を掛けた兵士の言葉の裏にこめられた覚悟に撤退する事を決めた。ヒュッケバイン009を先頭に、ハガネへと撤退するPT部隊……
「グオオオオンッ!!!」
だがメカザウルスもここまで疲弊させたのに、むざむざ撤退させるつもりは無いとプロトタイプのガーリオンやリオンを蹴散らし、アヤ達に迫る。
「通すなッ! 撃て撃てッ!!!」
「怯むな! 行けえッ!!!」
仲間がメカザウルスに蹴り飛ばされ、尾で薙ぎ払われ、火炎で焼かれる。それでもDCは一歩引かず、メカザウルスへの攻撃を続ける。確かにDCは戦争を起こした、だがその根底にあるのは地球を護りたいと思う願い。それは死を覚悟しても一歩も引かないという強い決意になり、完全にメカザウルスの足を止めていた。
「仕方ありませんね、無駄死にをさせるのも気分が悪いですしね……グラビトロンカノン……発射ッ!!」
空中でサイバスターと共にメカザウルスと戦っていたグランゾンの胸部が怪しく光り、凄まじい重力の嵐を巻き起こす。滑走路に叩きつけられ、圧死していくメカザウルス、だがそれは小型のメカザウルスだけで、大型のメカザウルスは重力に抗い、前へ進む。だがそれを許さない者がいた……
「いっけえええッ!! サイフラァァァッシュッ!!!」
サイバードへと変形したサイバスターが上空から一気に急降下し、メカザウルスの群れの中心でサイフラッシュを放つ。グラビトロンカノンとサイフラッシュの連続攻撃。如何に強靭な肉体を持つメカザウルスといえど、その連続攻撃には耐え切れず爆発していく……
「グオオオオッ!!!」
だがメカザウルスにも意地がある。たった2機を相手に全滅する恥など受け入れられるかと、滑走路を砕きながら一直線に進む、その巨大な口を開き、一番近いPT……ビルトラプターを噛み砕かんとする
「くっ!!!」
近づけさせまいと無防備な口の中にメガビームライフルやM-950マシンガンの弾雨が叩き込まれる、だがメカザウルスは鮮血を撒き散らしながらも接近をやめない。それは特攻に等しく、怯むことも無くビルトラプターへと突き進む。その牙がビルトラプターを捉えようとした瞬間何かがメカザウルスとビルトラプターの間に割り込んだ。
「ソニックブレイカーセットッ!!! うおおおおおおッ!!!!」
「ギガアアアアッ!!!」
大口を開いたメカザウルスの口の中に自ら飛び込んだのは……ダークブルーのガーリオンだった。牙が突き刺さり火花を散らしながらも、ソニックブレイカーを維持するガーリオン
「くそ……どうして俺は連邦の兵士なんぞを庇って」
忌々しそうに呟くテンペスト、だがコックピットに映るその顔は安堵の色に満ちていた。これが他の連邦の兵士ならば見捨てていただろう、だが……ビルドラプターには自分の娘と同じ年齢の少女が乗っていた。顔も知らない少女のはずなのに、どうしてもテンペストは見捨てることが出来なかった
「ああ……くそ……すまん、アンナ、レイラ……俺は……俺は……」
火花を散らすコックピット、左半身を押し潰され血反吐を吐くテンペスト。苦しい筈なのにテンペストの顔は満足げな笑みを浮かべていた……
「俺は……俺は……お前達の仇を……取れなかった……」
白に染まる視界の中テンペストは爆発に飲まれて行った……庇われたラトゥーニにはガーリオンの近くに居たこともあり、テンペストの呟きが聞えていた。
「……あり……がとう」
聞えていない、それは判っていた。だがラトゥーニはテンペストへの感謝の言葉を告げるのだった……
ギガザウルス・ゴールの尾の一撃がゲッター2を捉える。すさまじい衝撃と共に滑走路に叩き付けられ、武蔵は血反吐を吐く。
「ぐう……やっぱりオイラには扱いきれんぜッ!」
火花を散らすベアー号のコックピットで思わず呟く、苦手と判っていたのにゲッター2にチェンジしたのは理由がある。それはギガザウルス・ゴールの身体に傷をつけるという目的の為だ。どういう理屈は判らないが、ゲッターミサイルの効果が薄く、ゲッタービームも弾かれた。通常よりも強力なゲッター線対策が施されているのは明白で、攻撃を通す為にもギガザウルス・ゴールに傷をつける必要があったのだ
「死ねえッ!! ゲッターロボォッ!!!」
オープンゲットは間に合わない、ペダルを踏み込み転がってギガザウルス・ゴールの振り下ろした爪を回避する。逃げるゲッターの後を追って、ギガザウルス・ゴールの連続踏みつけ攻撃が襲い掛かる
「させるかッ!!!」
ヴァルシオンの巨体がギガザウルス・ゴールにぶつかる。膨大な推進力を伴った体当たりはギガザウルス・ゴールの身体を大きく揺らすが、巨大な爪で離れようとした所を捕まる
「その程度で止められると思うなぁッ!!!」
「ぐおっ!?」
「ビアンさん!?」
ギガザウルス・ゴールの爪がヴァルシオンの胴体に深く食い込み火花を散らす。思わず零れたビアンの苦悶の声に武蔵がその名を叫ぶ。
「心配……無用ッ!!!」
「ぐ、貴様ぁ!」
ゴールの爪が食い込んだまま、ヴァルシオンは強く踏み込みディバインアームをゴールの胴体に突き立てる。深くディバインアームが相手に突き刺さるのと同時に、ゴールの爪も深くヴァルシオンの胴体に食い込む
「悪と呼ばれようが、独裁者と罵られようがッ!! 私の願いは誰にも否定などさせんッ!!」
火花を散らしながらも、ヴァルシオンは両手で握り締めたディバインアームの柄を握り締める手を緩めない。
「私が願うのは! 地球をお前のような者から護ることだッ!!」
「戦争を起こした人間が何を言うッ!」
「ぐおおおッ!!! はははッ! 耳が痛いなッ!! だが千載一遇のこの機会! 逃すわけが無かろうッ!!!」
ゴールの膝蹴りが、尾が容赦なくヴァルシオンを打ち据える。湾曲フィールドを貫き、ヴァルシオンの胴体をへこませ、その身体を容赦なく抉る。火花を散らす機体を見ればコックピットにも凄まじい被害を与えているであろうにヴァルシオンは止まらない
「何をぼんやりしている! 巴武蔵ッ!」
武蔵君ではなく、武蔵と呼び捨てにした。その凄まじい気迫が込められた一喝にベアー号のコックピットで武蔵は背を伸ばす
「正義のスーパーロボットなのだろう! ならば何を為すべきか判っているんじゃないのかッ!」
「オープンゲットッ!!!」
ビアンの叫びに反射的に武蔵はゲッターを分離させ、ゲッター1へと再合体を果たす。だがそれだけには留まらない、あふれ出したゲッター線の輝きがゲッター1を包み込む。
「そうだ! それでいいッ! 己が為すべき事を為すが良いッ!!」
「は、はははッ! 良いぞッ! そうだ! これでこそッ! これでこそだ! 我ら恐竜帝国の最後の戦いに相応しいッ!!!」
これ以上は好きにさせんと言わんばかりに振るわれた尾の一撃。それはヴァルシオンをゲッターの下へと吹き飛ばす
「ごほっ! げほっ! ぐふうっ……ぐぐぐぐ……まだだ! まだ終わってくれるなよ! ゲッターロボ! そしてビアンよッ!!」
何度も咳き込むバット、ギガザウルス・ゴールもまた機体の各所から火花を散らす。その火花は徐々に大きくなり、火花から爆発に変わり一際大きな爆発でその腕が落ちる。だがバットの気迫はますます強くなっていく……残った右腕で身体を支え、4つ這いになったゴールは大きく口を開き、周囲を歪めるほど熱を放ちながら火炎弾を作り出す……その熱でゴール自身がダメージを受け、あちこちが爆発しつつもゴールの目は……いや、バットの目はゲッターロボとヴァルシオンから一瞬たりとも逸らされない
「ゲッタァアアーーーッ!!!」
「これで終わりだ、恐竜帝国ッ!」
ゲッター1の光に呼応するかのようにヴァルシオンの姿もゲッター線の光に包まれる。
「そうだ、これで恐竜帝国は滅ぶ。だが滅ぶとしても、意地がある! 我らの最後は! 宿敵であるゲッターロボにのみ齎される物だぁッ!!!」
ゲッターとヴァルシオンに向かって放たれる火球と無数のビームの雨、それはアイドネウス島を容赦なく破壊し、そして滑走路を溶かしながら2機へと迫る……
「ビィィィームッ!!!!」
「クロスマッシャー発射ぁッ!!!」
ゲッターの腹部から離れたゲッタービームと、ヴァルシオンの手首から放たれた3色……いや、ゲッター線の緑に染められたクロスマッシャー……それも違う、もはやゲッタービームと呼ぶのが相応しい、高密度に圧縮された光線はゲッターロボのゲッタービームと螺旋回転をしながら交じり合い、巨大な光線となる。螺旋回転しながらゴールへと向かう光線は火球を貫き、ゴールへと迫る
「……ここまでか……ははははッ! 満足だ! 我らは戦った、最後の最後まで誇り高く戦った!! はは……はははははッ!! さらばだッ! ゲッターロボ! 巴武蔵ッ!! 恐竜帝国に栄光あれッ!! 散って行った親友達よ! このバットも今逝くぞッ!!! ははは……ははははははッ!!! はーははははははッ!!!! 」
憑き物が落ちたように笑うバットはゲッター線の光に包まれ、消え去る最後の一瞬まで笑い続けて逝った……
「ふう。これで……「いいや、まだだッ!!!」
これで全てが終わったと武蔵が溜め息を吐いた瞬間、ゲッター1の前にディバインアームが突き刺さる。
「恐竜帝国が滅んだ今、共闘は終わりだ。勝負だ、武蔵。そしてゲッターロボッ!!!」
火花を散らし、あちこち破損にも拘らずゲッターロボの前に立ち塞がるヴァルシオン……その姿に武蔵は悲しみに満ちた声でビアンの名を呼ぶのだった……
第28話 アイドネウス島の決戦 その5へ続く
ギガザウルス・ゴールで終わりだと思いましたか? 残念! まだ続きますよ。ゲッターロボ(中破)VSヴァルシオン(大破)となる予定です。ハガネのPT隊は……うん、出ません。武蔵VSビアンで書くつもりなので、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い