第149話 楽園からの追放者 その2
ソウルゲイン、スレードゲルミルと言ったシャドウミラーの主戦力となる機体が次々と改造を施されているのは、オペレーション・プランタジネットを利用し、百鬼帝国、シャドウミラー、インスペクターの3つの勢力でハガネ、シロガネ、ヒリュウ改、クロガネを鹵獲、あるいは撃墜を狙っての物であると言う事はアクセルにも判っていた。その為に武蔵とゲッターD2をW-16を使って鹵獲させたのだが……ヴィンデルのこの作戦には大きな穴がある。
「……あいつめ、少し馬鹿になったな」
百鬼帝国とインスペクターとシャドウミラーの戦力はイコールではない。シャドウミラーと他の勢力を比べれば数段シャドウミラーの戦力は劣る。ツヴァイザーゲインのシステムXNは優秀だが、転移能力はインスペクターも有しているので絶対的なアドバンテージにはならない、スレードゲルミル等のマシンセルを利用した機体も百鬼帝国では当たり前の技術でこれもまた強みと言う訳ではない。ゲッターD2という突出戦力があってもやっと互角だとアクセルは踏んでいた。
(態々隔離した場所に格納庫を作り、そこに保管するか……その程度の危機感は残っていたか)
武蔵が牢屋を脱出し、ゲッターD2を持ち出すことを恐れ、エルアインスとアシュセイバー、ランドグリーズと非常に強固な防衛網が敷かれている格納庫にゲッターD2は収納されていた。同じ基地内だが、牢屋との距離はかなりあり車は勿論PT等が無ければ脱走したとしても、辿り着く前に武蔵を再び捕えれるようにとヴィンデルが無理を言って作らせた格納庫を見てアクセルは小さく笑った。
(……ヴィンデル。お前は何を見ていたんだ、その程度の障害武蔵は容易く乗り越えるぞ)
インベーダーとアインストと生身で戦う戦闘力を持ち、間抜けと言いつつも頭の回転は段違いに早い武蔵ならばその程度の障害は軽く乗り越えるだろう、それよりもだ。百鬼帝国の力を借りてリマコンを武蔵に施すとヴィンデルは言っていたがリマコンを施された武蔵が本来のパフォーマンスを発揮出来るかどうかというとアクセルは無理だと踏んでいた。その上リマコンを持ち込んでくるのは百鬼帝国であり、こうしてDC戦争時に放棄された連邦も忘れているような基地で部隊を展開しているのはある意味百鬼帝国に余計な事をするなと言う威圧の意味合いも兼ねていた。
『アクセル隊長。何故、ソウルゲインのコックピットで待機しているのだ』
「W-15か、少し考え事だ。これがな、判ったら俺の邪魔をするな」
『了解』
ウォーダンに考え事を中断させられた事に若干イラついたアクセルだが、小さく息を吐き再び目を閉じて半ば瞑想状態に入る。
(……ツヴァイザーゲインを巻き込んで自爆しようとしたW-17……いや、ラミア。お前はきっとレモンの求める領域に辿り着いたのだろう)
Wシリーズは戦争時の兵士としての役割もあるが、レモンの最初の考案では新しい人類として設計されていた事をアクセルは知っている。
だからこそラミアがレモンの求める新人類の領域に辿り着いたとアクセルは感じてた。
(その予兆はあったが……ふっ……何とも言えんな、これがな)
アクセルと唯一引き分けたWシリーズのラミア。その時は人形染みていたが、刃を交える度にラミアは人間性を獲得していた。ヴィンデルからしてみれば不良品だが、レモンからしてみれば紛れも無い最高傑作だろう……そしてその最高傑作になり得たのに、それを捨てた者もいる……エキドナだ。
(Wシリーズに恋や愛を理解する事はやはり出来なかったか)
武蔵との触れ合いで人間性を獲得し、そして恋と愛を理解しようとしていたエキドナだったが、結局レモンの命令を優先し武蔵を裏切った。その癖裏切った事を後悔し、自室に篭もり切っているのは滑稽としか言いようがなかった。他の道もあったのに、W-16としては最善の選択を選び、エキドナは最も愚かな道を選んだのだ。
(Wシリーズが人間なのか、そうではないのかは……これから分かる)
アクセルがソウルゲインのコックピットで待機していた理由――それはラミアが、あるいはエキドナが本当の意味でレモンの求める存在に近づいているのならば動かない訳が無いからだ。ここで動かなければ所詮人形、動けばレモンの求める存在には至ったが、アクセルにとっての敵になる事を示している。シャドウミラーとしては許される物では無いが、百鬼帝国と手を組んでいる段階でヴィンデル自身も迷走していると感じているアクセルはそのどちらでもいいと考えていた。アクセルにとって重要なのはキョウスケと決着をつける事で、その次が永遠の闘争が続く世界だ。
「……来たか」
ギャンランドから警報が鳴り響き、基地の格納庫が内部から破壊され蒼い影が空へと躍り出る。
「……あいつめ。ヴァイサーガを改造すると言っていたが……テスラドライブを搭載したのか」
本来のヴァイサーガに飛行能力は無いが、空を飛び紅いマントを翻す姿を見てアクセルは獰猛な笑みを浮かべた。唯一己と引き分けたWナンバーズであり、そしてレモンの求める存在へと至ろうとしているラミアを見て初めてアクセルはラミアを敵と見定めソウルゲインを起動させた。
「W-17……いや、ラミア。それがお前の選択か?」
『……アクセル隊長……貴方は』
「知らないわけが無かろう。今ならばまだ間に合うぞ?」
言外に再調整を受け再び人形に戻る事も出来るぞとアクセルが問いかける。これで頷くのならば興醒めだったが、ラミアの返答はある意味アクセルの求めていた物だった。
『いいえ、私はもう人形には戻りません。己の意志で、自分の決めた道を進みます。私の戦いを、私が戦うべき戦場を私の意思で決めます』
強い意思の込められたラミアの言葉を聞いてアクセルは小さく笑った。人形、人形と蔑んで来たが、これほどまでの強烈な意思を感じさせるラミアを人形と呼んでいた自分が馬鹿に見えてきたのだ。
「それで、レモン。何か申し開きは?」
『申し開きも何もないわよ? 私は武蔵のリマコンの準備をしていてWシリーズの調整部屋には入ってないわ。多分調整部屋は培養液で今頃大変な事になってるでしょうねぇ……』
どこか他人事のような口調だが、レモンはヴィンデルの命令に従い武蔵のリマコンの準備をしていてラミアの事に関与していない……多少無理があるがそれで押し通すつもりなのだろう。
「逃がすつもりならばこんなタイミングではないな」
『当たり前よ、逃がすつもりならば、こんな間違いなく破壊される状況で飛び出させはしないわよ?』
ソウルゲイン、スレードゲルミル、そして無数の量産型Wシリーズが乗り込んでいる機体が出現している中で脱出はさせないというレモンの言葉は間違い無く正しいだろう。だからこそ、ラミアの逃亡はラミア自身の意思で行なわれたと言う事になる。
『私は自分の道を進むと決めました、そしてWナンバーである己と決別すると決めたのです……アクセル隊長。貴方が私の前に立ち塞がるというのならば……貴方は私の敵だ』
五大剣の鞘を捨て刀身を露にするヴァイサーガ。それは明らかな敵対行動であり、警告のように見えてその実アクセルと戦おうとしているのは明らかだった。
「決別……か。俺も『向こう側』と決別する為にここへ来た。貴様も同じ理由で自分の世界を捨てるつもりか? レモンが悲しむぞ、あいつはあれでお前の事を愛していたからな」
最後通告としてレモンが悲しむと意地悪な事を告げるアクセルだが、ラミアの意思は全く揺らぐことは無く、五大剣をヴァイサーガに構えさせた。
『……そういう事になるのでしょう……ですが、もう決めたのです、アクセル隊長』
「……分かった。行きたければ、俺を倒す事だ。言っておくが俺は裏切り者を許さんぞ」
ソウルゲインのカメラアイが力強く輝き、組んでいた腕を伸ばしその拳を力強く握り締める。ラミアの目にはソウルゲインの背後に巨大なアクセルの姿が見え、凄まじい闘志を放っている姿がまるで現実のように見えていた。
『……了解しました。アクセル隊長を倒し、私は己の道を行きます』
「他の者は手を出すな。 裏切り者のWー17……それを処分するのも隊長の責任だ……相手は俺がする」
ウォーダンや量産型Wナンバーズと共に戦えば決着は容易につく、だがアクセルは1対1で決着をつける事を望んだ。
『1対1で、私との決着……拘っているようですね、隊長』
「フッ……そうだな。俺の性分だ……お前が人形のままならばここまで拘る事はないが……今のお前は最早人形ではない、ならば負けっぱ
なしは俺の性ではない……来い、Wー17……いや、ラミア。貴様をこの俺の拳で貴様を打ち砕く」
『了解です。 命令ではなく自分の道を行く為に……貴方を倒します、アクセル隊長。私の前に立ち塞がるなら撃ち貫くのみ……ッ』
ヴァイサーガのエンジンが唸り声を上げ、その紅いカメラアイがソウルゲインを睨みつける。
「気に入らん物言いだな、こいつが……貴様が影響を受けた連中の予想がつく……となれば、ますます貴様には負けられん……ッ!」
ソウルゲインが地面を砕きながらヴァイサーガへと迫り、ヴァイサーガは空中から急降下し突き立てる様に五大剣を振るう。
「おおおおおおおッ!!!」
『はぁあああああッ!!!』
アクセルとラミアの裂帛の気合が込められた叫びと共に繰り出されたソウルゲインの拳打とヴァイサーガの斬撃がぶつかり合い、凄まじい轟音を周囲に響かせるのだった……。
ソウルゲインと眩い蒼とヴァイサーガの闇を溶かし込んだような濃紺が何度も何度も交錯する。
『どうした、逃げ回っているだけでは俺には勝てんぞッ!!!』
回し蹴りから放たれた三日月状のエネルギー刃の嵐がヴァイサーガへと襲い掛かる。
「くっ! 烈火刃ッ!!」
命中する前に烈火刃を放ちエネルギー刃を相殺する事を選択したラミア。エネルギー刃を相殺する事には成功したが発生した爆煙で一瞬ラミアはソウルゲインの姿を見失った。
『でいやああああッ!!!』
「がっはッ!!!」
煙を突っ切って姿を見せたソウルゲインの飛び膝蹴りがヴァイサーガの胴を捉え、凄まじい衝撃にラミアの肺から強制的に酸素が吐き出され、苦悶に満ちたラミアの悲鳴がコックピットに響き渡る。
『沈めッ!!!』
「……っ! ぐうっ!?」
アクセルの攻撃は止まることを知らず、空中で反転したソウルゲインの踵落しがヴァイサーガの背部へと放たれる。ラミアはなんとかヴァイサーガを駆り、マントで直撃を防いだが威力までは防ぎきれず凄まじい勢いで基地のカタパルトとへ叩き落される。
『青龍鱗ッ!!!』
降下しながら放たれるエネルギーの弾雨。それをヴァイサーガは地面すれすれを飛ぶ事で避けるが、突如ヴァイサーガの動きが何かに縫い止められたように止まる。
「これはッ!? ソウルゲインのッ!?」
『俺から逃げれると思っていたのか?』
青龍鱗に紛れて飛ばされていたソウルゲインの右拳がヴァイサーガの足を掴んでおり、ヴァイサーガをソウルゲインへと一気に引き寄せる。残された左拳を腰ために構えていたソウルゲインの前に無防備に現れたヴァイサーガ目掛けソウルゲインの左拳が突き出される。
『その程度で俺を倒すとよくも言えた物だなッ! ラミアッ!!! 玄武剛撃ッ!! でいやあッ!!!』
高速回転する左拳がヴァイサーガの胸部を捉え、ヴァイサーガはボールのように吹っ飛び背中から海中へと沈み、沈んでいくヴァイサーガのコックピットの中でラミアは改めてアクセル、そしてソウルゲインの強さを実感していた。
(ぐっ……やはりアクセル隊長は強いッ!!)
まともに反撃する隙すら与えない連撃、しかもその一撃一撃がヴァイサーガのフレームと装甲を軋ませるほどに重い、その上ゲッターD2の解析データを元に改造を施されており、その機体性能は向こう側の時よりも遥かに上昇している……それに対してラミアはヴァイサーガを駆るのはこれが初めてであり、その機体性能も存分に行かせている訳ではなかったが……それを言い訳にしていてはラミアはどこにも行けず、ここで生き絶えるだけだ。
「……行くぞ、ヴァイサーガ……」
ラミアの呟きに呼応するようにヴァイサーガのカメラアイが光り輝き、マントを身体に巻きつけ海面に向かって飛翔する。水柱と共に空へと舞い上がったヴァイサーガだが、ソウルゲインは両拳にエネルギーを溜めてヴァイサーガを待ち構えていた。
『そこかッ! 青龍鱗ッ!!』
両手から放たれた凄まじいエネルギー波がヴァイサーガへと迫る。直撃すればヴァイサーガを撃墜するのに十分な威力を秘めたその一撃を見てラミアは小さく笑った。
「貫けッ! 風衝閃ッ!!」
捻りを加えて突き出された五大剣の切っ先から螺旋回転する風の刃が放たれ、青龍鱗と相殺しあって消滅する。
『なにッ!?』
プロトタイプとは言えヴァイサーガに乗っていたアクセルはその見たことの無い攻撃に一瞬動揺した。その隙にヴァイサーガはマントを翻しながらソウルゲインへと肉薄する。
「切り裂きまくっちゃったり……コホン、行くぞッ! アクセル隊長ッ!!」
『俺を相手にふざけているのかッ!!』
異常をいまだ引き起こしている言語機能だが、アクセルはそれを挑発と受け取り激昂する。その瞬間だった、ソウルゲインの視覚が赤一色に染め上げられたのは……。
『なにッ? ぐっ!?』
「武蔵の戦い方は私にとても勉強になったぞ、アクセル隊長ッ!!」
マントの動きで相手を幻惑し、その隙に強烈な一撃を叩き込む……ブリットとの組み手で何度も見た攻撃だが、ラミアはそれをヴァイサーガで再現し、五大剣で切りつけると同時に蹴りを叩き込みソウルゲインを蹴り飛ばす。
『猿真似で俺の首を取れると思うなよッ!!』
「猿真似で翻弄されて恥ずかしくないの~……んんッ? なんだこれは?」
今までの言語機能のエラーとはまた違う言葉が飛び出し困惑するラミアだが、動きは止まる事は無く烈火刃をソウルゲインへと放つと同時に、五大剣を構えてソウルゲインへと切り込んだ。
「レッツ斬りまくりんぐッ!!!」
『貴様本気で壊れたか?』
「ぐっ……私の意志ではないですことですよッ!?(レモン様、私の何を解除したんですかッ!?)」
アクセルの可哀想な者に向ける声とレモンが自分の何を解除したのかと内心泣きながらも、ヴァイサーガを駆る手を緩める事無くソウルゲインへの攻撃を続ける。ソウルゲインは腕を上げ、防御体勢に入り攻撃を防ぎ、いなし反撃する隙を窺いヴァイサーガが大上段に構えた五大剣を振りかぶった瞬間にガードを解除し、ヴァイサーガを迎え撃つ態勢に入る。
『見切ったぞッ!!』
アクセルの狙いはヴァイサーガの武器である五大剣の破壊。硬く握り締められたソウルゲインの右拳が五大剣に当たるという瞬間にヴァイサーガの姿が掻き消えるように消え去った。
『何? ぐっ!? 後ッ……ぐうっ!? 今度は左だ……どうなっているッ!? 何故こんなにもヴァイサーガがいるッ!?』
ソウルゲインを取り囲むように五大剣を構えているヴァイサーガ。それが切り込んでくるのを見てアクセルは当然反撃に出るが、ヴァイサーガの姿は溶けるように消え、明後日の方角から凄まじい衝撃がソウルゲインを襲う。
「光刃閃・幻刃。この幻の刃を見切れるかッ!」
ゲッタービジョンを再現しようとし、不完全ながらも再現したそれはエネルギー反応を撒き散らし、モニターとパイロットの視界を幻惑させる幻の姿。だがそのすべてに熱源があり、容易に見切れぬ影の牢。
『ふっ、面白くなって来たなッ! 俺の前に立ち塞がるのならば全て打ち砕くッ!!』
幻など関係ない、全て打ち砕くと言わんばかりに振るわれるソウルゲインの拳打。しかしヴァイサーガはそれを避け、EG装甲で回復されると判っているが、細かいダメージを蓄積させ突破口を作り出そうと攻撃を続ける。一撃の破壊力の劣るヴァイサーガは手数で、一撃の破壊力に秀でているソウルゲインは致命傷を防ぎ、一撃で仕留めると隙を窺い続ける。一進一退の攻防だが……軍配はEG装甲を持つソウルゲインに上がった……。
「はぁ……はぁ……」
ヴァイサーガを初めて扱う事とアクセルと言う強敵を前にラミアの精神的・肉体的疲労が限界を超えた。目に見えて動きが鈍ったヴァイサーガを見てアクセルはここが勝負所だと一気に前に出た。
『中々頑張ったが、それもここまでだッ!』
玄武剛撃がヴァイサーガの頭部へと放たれようとした時、背後から凄まじい衝撃がソウルゲインを襲い、ソウルゲインは前のめりにたたらを踏み、玄武剛撃がヴァイサーガの頭上を通過し、黒い影がヴァイサーガを抱き上げソウルゲインの前から離脱する。
『よう、随分と楽しそうだな。アクセル、俺も混ぜろよ。つっても俺はラミア側だけどな』
『バリソン……貴様も……いや、W-16も俺達を裏切るという事か……』
ソウルゲインを背後から撃ったのバリソンの駆るゲシュペンスト・MK-Ⅱ改。そしてヴァイサーガを救い上げたのは漆黒のアンジュルグ……アンジュルグ・ノワールだった。
「エキドナ。何故……」
『私も自分の道を決めたんだラミア。それよりもだ、バリソン少尉と時間を稼いでくれ、私は武蔵をゲッターD2の元へ届ける』
「武蔵もいるのか……分かった。厳しいがバリソン少尉とアクセル隊長達を抑えてみせる」
『頼んだぞ、武蔵。行くぞ、しっかり掴まっていてくれ』
『よろしくお願いします! エキドナさんッ!』
『ゲッターを奪わせるなッ! 追えッ!』
翼を広げゲッターD2を解析している格納庫へと向かうアンジュルグ・ノワールを見て、アクセルが追えと指示を出すがその前にヴァイサーガとゲシュペンスト・MK-Ⅱ改が立ち塞がる。
『あれは武蔵のもんだ。武蔵に返すのが道理だろ? 奪わせるななんて言うのは盗人猛々しいって言うんだぜ。アクセル』
「1対1ではなくなったが、私達の決着はまだついていないぞ、アクセル隊長」
『その通りだ。バリソンまで裏切ったのは残念だが……裏切り者を逃がすわけには行かない、ウォーダン』
『承知』
ラミアとバリソンの前にソウルゲインとスレードゲルミルが立ち塞がり、アンジュルグ・ノワールはエルアインス達に追われながらゲッターD2の元へと飛び、ラミア達の戦いはますます激しさを増していくのだった……。
時間は少し遡り武蔵がバリソンとエキドナに救出される前へと遡る……。
「ドンパチが始まったみてえだな。どうなってるんだよ」
牢屋の中にいる武蔵は外の状況が判らないが、牢屋まで響いて来る振動音に戦闘が始まっているのを感じ取ると腕の力だけで飛び起き、剣道の胴を外して牢屋の床の上に置いた。
「やっぱあんた天才だぜ、敷島博士」
金属反応等を一切関知させない上に身体に密着させていても熱を帯びる事無く、そして痛みも無い。スライムのような物質で作り出されたピッキングツールを始めとした脱出の為の道具をてきぱきと組み立てる武蔵の背後で牢屋の扉が開き、武蔵は慌てて胴でツールを隠した。
「武蔵、武蔵! すまない、すまない……許して、許してくれ……」
「エキドナさん……」
放電している柵に手を伸ばそうとし、バリソンに押さえられながらもすまないすまないと涙を流すエキドナの姿を見て、あの行動がエキドナの本心からの物ではないと武蔵は改めて理解した。
「まずは牢屋の電気を止める。話はそれからだ」
「あ、は、はい……分かりました」
バリソンとエキドナが2人でコンソールを操作し、武蔵を閉じ込めていた牢屋の電気が停止し、自動で牢屋の扉が開いた。
「武蔵……ごめんなさい、ごめんなさい……私……私」
「大丈夫ですよ。オイラは気にしてないですから……こんなに泣いちゃって……美人が台無しじゃないですか、エキドナさん」
牢屋の中に転がり込んできてごめんなさいと繰り返し謝罪の言葉を口にするエキドナの涙をハンカチで拭う武蔵だが、その行動にますますエキドナの目から涙が零れ落ちる。
「……裏切った、私は武蔵を裏切った……でも、でも……私はお前を助けたいんだ、何を言ってるって思うかもしれないけど……私はお前を助けたいんだ、武蔵……」
要領を得ない言葉は成人した女性の身体をしていても、その精神が幼い子供であると言う証明であり武蔵は困ったように笑いながら大丈夫だと笑った。
「でもエキドナさんはレモンさんを裏切れなかったんですよね。しょうがないですよ、誰だって家族は大事だ」
少し寂しそうに武蔵は笑う。北海道灼熱地獄作戦で武蔵は両親を失っている。禄に親孝行も出来ず、山篭りをしてくると言って家を飛び出した武蔵には心配そうに自分の名を呼ぶ両親の姿が最後に見た姿となった。だからこそ、武蔵は親であるレモンを裏切れなかったエキドナの気持ちが痛いほどに判っていた。だがエキドナは武蔵のその言葉が自分を責めているように思え、ますます大粒の涙を流す。
「いや、だから大丈夫ですよ、エキドナさんは助けに来てくれたじゃないですか、オイラはそれで……「武蔵ぃッ! ごめん、ごめんなさい……」わわわッ」
武蔵の優しい言葉に感極まったのか抱きついてきたエキドナだが、身長の差などで胸が武蔵の顔の部分に来て柔らかい感触に武蔵が完全にオーバーヒートするのだが、エキドナは謝罪の言葉を口にし武蔵を抱き締める腕の力を緩める事は無く、ますますその力を強めエキドナの胸に顔を埋める事になり、胸の柔らかさとエキドナの匂いを嗅ぎ続けると言う事は余りにも思春期の青年には毒過ぎた……武蔵は数秒で茹で蛸のように耳まで真っ赤になる。だがエキドナは武蔵のそんな様子に気づく事も無くますます腕の力を強め、武蔵の意識が落ちる寸前でバリソンの手を叩く音が牢屋の中に響き渡った。
「武蔵に許して貰えて嬉しいのは分かるが、ラミアが1人でアクセルと戦ってる。俺達も早く機体に乗り込んでラミアの手助けをするぞ、
百鬼帝国が来る前にここを離脱しないとやばい」
「わ、分かりました。武蔵、武蔵? どうかしたのか?」
「え、あ、い、いやなんでもないですよ?」
バリソンの言葉で武蔵を抱き締める腕を緩めたエキドナはこの時初めて武蔵の顔が真っ赤になっている事に気付き、どうかしたのかと尋ねるが勿論武蔵にその理由を説明できるわけが無く、誤魔化すように両手を振る事しか出来ず、エキドナは何かおかしいなと思いながらも、外から響く戦闘音を聞いてその顔を鋭く引き締めた。
「とにかくまずはゲッターロボを取り返すのが最優先だ。格納庫の機体を奪取したら俺はラミアの援護にはいる、エキドナ。お前は武蔵を
ゲッターロボの場所まで届けろ。良いな? まずはお前が先攻して格納庫のロックを外して来い、俺達もすぐに行く」
「了解しました。武蔵、これ……武蔵の武器だ。バリソン少尉、武蔵を宜しくお願いします」
バリソンの指示に頷き駆けていくエキドナ、武蔵もその後を追って動き出そうとしたのだが……。
「良かったな、武蔵。ちょっとした役得みたいな所合ったろ?」
そう言って肩を叩かれた武蔵はエキドナの胸の感触と匂いを思い出し、咄嗟に鼻を手で押さえバリソンはそんな武蔵を見て笑うと走り出し、武蔵は何とも言えない表情を浮かべながらもバリソンの後を追って走り出したのだが、格納庫でエキドナと一緒にアンジュルグ・ノワールに乗れと言われ武蔵は抵抗したのだが、時間が無いとバリソンにアンジュルグ・ノワールのコックピットに蹴り込まれ、再びエキドナの胸に顔を埋める事になり赤面する事になるのだが……戦闘中と言う事ですぐに思考を切り替えたのだがハガネに戻った後にその事を思い出し悶々とする事になるのだが……その事を語る必要はないだろう。
「何とかしてゲッターに取り付く、その後は乗り込めるか、武蔵!?」
「近づいてさえくれれば何とでも出来ますよ! 鬼が来る前になんとか乗り込みたい所です」
「任せてくれ、必ずお前をゲッターの所まで届けるさ」
エルアインスやアシュセイバーの攻撃を舞うように回避するアンジュルグ・ノワールは一直線にゲッターD2の眠る格納庫へと進んでいくのだった……。
第150話 楽園からの追放者 その3へ続く
エキドナは無知なので、追放後は結構スキンシップが激しくなると思われます。しかし無知なので何故武蔵が赤くなっているのか判らないと言う感じになり、ユーリアさんはポンコツなので停止し、シャイン王女はダークサイドに落ちます。つまり今のエキドナさんはエキドナちゃんの要素も加わった最強モードとなりますね。何が最強なのかは分かりませんけどね、それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い