進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第150話 楽園からの追放者 その3

第150話 楽園からの追放者 その3

 

基地の司令部でヴィンデルはいらついた様子で眉を細め、レモンを睨みつける。それはエキドナによって武蔵の逃亡を許し、バリソンと共に自分達に反逆しようとしているという事に苛つきを感じていると言うことは明らかだった。

 

「別に私のせいじゃないわよ? 私は武蔵のリマコンの準備をしてたし、別に何もしてないわ」

 

「では何故W-16まで私達を裏切った。出来損ないの兵士ばかりを作りおって!」

 

激昂するヴィンデルにレモンは冷ややかな視線を向けて溜め息を吐いた。

 

「言っておくけどWシリーズの原型は地球を捨てて新しい星に辿り着いた時に人類を繁栄させる為の物なのよ、それを兵器に転用しろと命じたのは貴方で私はそれに従った。初期ロットはともかく、後期ロットのエキドナやラミアは限りなく人間に近いのよ。私達の命令に疑問を抱いたとしてもおかしくはないわ」

 

「それは私の求める兵士ではない!」

 

「だーかーら、量産型と違ってナンバーズはハイエンド個体なのよ。思考機能を元々排除してる量産型とは違うのよ」

 

量産型と付いているが量産型Wナンバーズとナンバーズは隔絶した差がある。簡単に言えばヴィンデルの理想を突き詰めたのが量産型Wシリーズであり、レモンの理想を組み込んでいるのがWシリーズなのだ。

 

「ッ! 出来損ないではないか」

 

「出来損ないじゃないわよ。ちゃんと指示を出していれば問題はないのよ? 自分で考える時間を与えちゃったからね、まぁしょうがないわよ。それにもうすぐ百鬼帝国も来るし、アクセルとウォーダン、それに量産型Wナンバーズの軍勢を相手に3人でどうこうできるとも思えないし、安心して見てましょうよ」

 

レモンの言葉にヴィンデルは歯を噛み締めるが、この程度で怒っていては大願を成し遂げる事は出来ないと考えたのか、それとも百鬼帝国が来れば全て解決すると思っているのか司令席に腰掛けた。

 

「W-17以降のナンバーズを作る事を禁止する。生産するのは量産型だけでいい」

 

「はいはい、分かってるわよ」

 

口にする事は無いが怒りに満ちた目で自分を見つめるヴィンデルにレモンは飄々とした素振りで返事を返し、モニターに視線を向ける。

 

(ここで倒れるのならば貴方達の道はないわ。自分達で決めた道を進むというのならば……この程度の逆境跳ね返して見せなさいな)

 

本当の意味でカーウァイの遺志を継ぎシャドウミラーに残っていたバリソンは永遠の闘争を望んでいない。

 

ラミアは人の善性に触れ、戦争を続ける世界に疑問を抱き平和な世界を作る為に戦う事を決めた。

 

エキドナは武蔵に恋をし、自我を得た。世界ではない、自分が愛した者の為に抗う事を決めた。

 

三者三様の理由だが強大な敵と戦う事に変わりはない、アクセルとウォーダンを相手にして、この場を切り抜けられないのならばラミア達に道はない。自分の意志を通すというのならば力が必要だ。その力を見せてみろと言わんばかりに期待と興味にその瞳を輝かせ、戦場に視線を向けるのだった……。

 

上下左右から迫る弾幕を漆黒の堕天使――アンジュルグ・ノワールは舞うように回避し、ゲッターD2の元を目指して飛び続ける。

 

「オイラは大丈夫ですから反撃してくれても良いですよ、エキドナさん!」

 

コックピットシートの後に座りながらそう声を掛けてくる武蔵にエキドナは少し悩む素振りを見せて空返事を返した。

 

「遠距離武装を積んでいないんだ。この距離では反撃出来ない」

 

「ええッ!? あの弓矢とかは!?」

 

アンジュルグの武装がイリュージョンアローである事を知っている武蔵は、それはどうしたんだとエキドナに問いかける。

 

「あれは予備がないからノワールには搭載されていない、ミラージュソードとシャドウランサー……それが今使えるノワールの武装だ。ッ! 掴まれ武蔵! 派手に動くぞッ!」

 

「え、あ……はいッ!」

 

武蔵の腕が自分の腹部に回され、エキドナは一瞬ドキリとしたが自分で掴まれと言ったので、動揺している場合でもないし、何故ドキリとしたのかも理解出来ないままにアシュセイバーのソードブレイカーの切っ先から雨霰のように放たれるレーザーを回避に出る。

 

「くっ!?」

 

「うわっととッ!?」

 

ゲットマシンにも負けない急反転、急上昇、降下を組み合わせソードブレイカーの弾雨をアンジュルグ・ノワールを駆り必死に避けるエキドナ。翼を大きくはためかせ、急上昇すると同時に腰にマウントしていたミラージュソードを抜き放ち、バックラーを正面に構える。

 

「はっ!」

 

ソードブレイカーの真価はビームとブレードを展開しての突撃だ。ビームの攻撃が終わると同時に突撃して来たソードブレイカーをミラージュソードとバックラーを使い分け切り払い、あるいは盾で殴り飛ばし直撃を回避するアンジュルグ・ノワールだが、コックピットにロックオンを示すアラートが鳴り響き、ゲッターD2が保管されている格納庫に陣取っているランドグリーズが放った多弾頭ミサイル――ファランクスミサイルの雨が降り注いだ。

 

「くっ! やはりランドグリーズを何とかしない事にはッ!!!」

 

誘導性は無いが4機のランドグリーズの放ったファランクスミサイルは十分な脅威であり、アシュセイバーの放ったファイヤダガーで起爆し、あちこちで爆発を繰り返せば流石のエキドナと言えど回避しきれず、アンジュルグ・ノワールの身体が大きく揺れる。

 

「武蔵! 大丈夫か!?」

 

「あいちち、オイラは大丈夫ですよ! それよりエキドナさんは大丈夫なんですか!?」

 

「私も大丈夫だ、心配はないッ!」

 

パイロットシートに腰掛けていない武蔵はモロに爆風の衝撃を受け、エキドナの腹部に回していた手が離れていた。武蔵を心配するエキドナの声に負けない大声で返事を返す。

 

「武蔵、これから荒くなるぞ。今度はもっとしっかり掴まっていてくれ」

 

「は、はいッ!」

 

武蔵の手が再び背後から腹部に回され、何とも言えない高揚感を感じるエキドナだが、それに浸っている時間はない。操縦桿を握り締め、ペダルを小刻みに何度も踏み込む。

 

「アシュセイバーとランドグリーズの包囲網を突破して、格納庫を守っているエルアインスを撃墜する。短時間だがなんとか着陸してみせる、飛び降りて格納庫に走れるか?」

 

安全に武蔵をゲッタのに元に届けるのは無理だと判断し、今の自分に出来る最善策を武蔵へと伝える。

 

「それで大丈夫ですけど……エキドナさんは」

 

「ふっ、私も大丈夫だ、心配するな。むしろお前の方が危険なんだ、格納庫には恐らく量産型Wナンバーズがいるはずだ。戦闘は免れない筈だ」

 

本当なら自分も向かいたい所だが、今のアンジュルグ・ノワールには殲滅するだけの火力が無い、それならばアンジュルグ・ノワールを盾にしてでも武蔵がゲッターに乗り込むまでの時間を稼ごうとエキドナは考えていた。

 

「本当に大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫だ、心配するな、それよりも話は終わりだ。喋っていると舌を噛むぞッ!」

 

心配そうに大丈夫かと繰り返し尋ねてくる武蔵に大丈夫だと笑い、エキドナは包囲網の中に強引にアンジュルグ・ノワールを飛び込ませる。細かい被弾を繰り返しながらも前へ前へと進み続ける、それは自分がどうなっても良いが武蔵だけはと言うエキドナの無垢であると同時にどこまでも歪んだ献身の形なのだった……。

 

 

 

 

 

スレードゲルミルのコックピットでウォーダンは自分の前に立つゲシュペンスト・MK-Ⅱ改へ視線を向けた。この世界に来て知ったフライトユニットを再現した物を装備こそしているが、スレードゲルミルとゲシュペンスト・MK-Ⅱ改の戦力差は火を見るより明らかだった。

 

「バリソン少尉。悪い事は言わない、投降しろ」

 

武装はフライトユニットに装備された4つソードブレイカーと2振りのコールドメタルソード、それと大型のビームキャノンだが、それでもマシンセルを搭載しているスレードゲルミルの回復能力を超える事はない。それを一目で見破ったウォーダンはバリソンに最後通告だと言わんばかりに投降しろと言葉を投げかける。

 

『悪いが俺はもうヴィンデルには着いていけないんでな、俺を止めたかったら……殺すしかねえぞ。ウォーダン』

 

コールドメタルソードを両手に構え臨戦態勢に入るバリソンを見て、ウォーダンは小さく息を吐き、斬艦刀の切っ先をゲシュペンスト・MMK-Ⅱ改へと向ける。

 

「承知した。せめて苦しまぬよう……一太刀にてその命貰い受けるッ!」

 

ウォーダンがそう吼えると同時にスレードゲルミルはゲシュペンスト・MK-Ⅱ改へと突撃し斬艦刀を振るう。命中すればコールドメタルソードごとゲシュペンスト・MK-Ⅱ改を両断する事は容易い……筈だった。

 

『一太刀で俺を殺すんじゃなかったのか?』

 

「……ッ!? なにをしたッ!」

 

横薙ぎの一閃は間違いなく命中した筈だ、だがいまだ健在のゲシュペンスト・MK-Ⅱ改を見てウォーダンは混乱しきっていた、これでコールドメタルソードが砕けていればそれを盾にしたと納得する事も出来る、だがそれも健在であり、全くダメージを受けたように見えないゲシュペンスト・MK-Ⅱ改に完全にウォーダンは混乱していた。

 

『良く見れば避ける事だって、防ぐ事だって出来るさ。俺には突出したもんはないんでね、どこまでも基本に忠実にお前を越えてやるさッ!!』

 

フライトユニットのブースターを全開にして切り込んで来るゲシュペンスト・MK-Ⅱ改。それを迎え撃とうとしたウォーダンだったが、その姿が一瞬で掻き消える。

 

「!?」

 

『格下が格上を倒すには不意打ち、これも戦いの基本だぜ? ウォーダン』

 

「後ッ!? ぐうっ!?」

 

バリソンの行なった事は単純だった、加速しスレードゲルミルが迎撃態勢に入ったのと同時にテスラドライブをカットし、スレードゲルミルの足の間をスライディングの要領ですり抜け両手に持ったコールドメタルソードで×の字にスレードゲルミルの胸部を切り裂いた。

 

「ぬうっ!」

 

『お前は俺と戦った事ないからな。俺の動きをお前は見切れるか? ウォーダン』

 

右手は正眼、左手は逆手と奇妙な構えを取るゲシュペンスト・MK-Ⅱ改、攻め手が全く読めないその構えにウォーダンはマシンセルの回復能力を使い、一撃受けて反撃で仕留めると考えたのだが……。

 

『温いぜ、化け物と俺がどれだけ戦ってきたと思ってやがる!』

 

武蔵達と初めて出会った時こそバリソンは窮地に追い込まれていたが、それは連邦の後先考えない無差別攻撃に巻き込まれたことが大きく影響していた。罠に巻き込まれ部隊は壊滅、バリソン本人は何とか生き延びたが機体はボロボロという有様だった。だがバリソンはインベーダー、アインストと戦い続け最後まで生き残って来たのだ。ジャイアントキリング――それこそがバリソンの最も得意とするものであり、そして生き延びる事にバリソンは特化していた。

 

「ぐあっ!?」

 

『まずは片目貰ったぜッ! 次ッ! 肘ッ!!』

 

正確無比のマニュアル操作で独楽のように回転しながらの斬撃がスレードゲルミルの左目を引き裂きモニターを破壊する、そしてそのままの勢いで左肘にコールドメタルソードを突き立て、ゲシュペンスト・MK-Ⅱ改はスレードゲルミルの胸部を蹴りつけ離脱すると同時にソードブレイカーを射出しメガビームライフルとソードブレイカーのビームを一箇所に集中させ、開幕で×の字に切り裂いた場所を撃ちぬいた。

 

「ぐっぐううっ!?」

 

マシンセルの回復が完全に終わっていない所に立て続けにビームを打ち込まれ、スレードゲルミルの胸部は大爆発を起こし、スレードゲルミルはたたらを踏んで後退する。

 

(……強い、バリソン少尉はここまでの腕前だったか)

 

Wナンバーズとバリソンが共に出撃する事は殆どなかったからこそ、バリソンの腕前を知らなかったウォーダンだったが、こうしてその強さを実感しアクセルと同等の強敵だと認めその神経を研ぎ澄ませ、その闘志を巡らせる。

 

「……もうちょい、油断しててくれても良かったんだけどな……」

 

ゲシュペンスト・MK-Ⅱ改のコックピットの中でバリソンは冷や汗を流す、機体性能とパイロットとしての腕前は悔しいがウォーダンの方が上だ、左のカメラアイと左肘の関節にコールドメタルソードを突き立てたままなのでスレードゲルミルは万全では無いが、マシンセルでそれもそう遠くない内に回復してしまうだろう。

 

「……5分……いや、良い所3分だな……間に合ってくれよ、武蔵」

 

後3分の間に武蔵がゲッターに乗り込んで応援に来てくれなければ自分が死ぬと言う事を確信しているバリソンは冷や汗を流しながらスレードゲルミルとウォーダンと対峙するのだった……。

 

 

 

ヴァイサーガの振るう五大剣の動きは時間が経つに連れて洗練され始めているのをアクセルは感じていた。人間らしさを獲得していたとしてもWナンバーズ特有の学習能力の高さは健在であり、戦い始めた時のぎこちなさは既に消え去っていた。

 

「玄武金剛弾ッ!!!」

 

『風衝閃ッ!!!』

 

ソウルゲインの放った玄武金剛弾とヴァイサーガの放った風衝閃がぶつかり合い凄まじい轟音を周囲に響かせる。

 

『地斬疾空刀ッ!!』

 

「温いッ!!!」

 

地面を走ってくるエネルギーの刃をEG装甲の回復能力に頼り強引に突破し、風衝閃とぶつかり合い自動で戻ってくる事の無い右腕を飛びあがると同時に回収し、エネルギー刃を展開した両足から飛ぶ斬撃をヴァイサーガへと放つ。

 

『くっ!』

 

青龍鱗と異なりエネルギーであると同時に斬撃であるその一撃はヴァイサーガの装甲を焼くと同時に深い切り傷を刻みつける。

 

「おおおおおッ!!!」

 

立て直すまでの僅かな隙をアクセルが見逃す訳が無く、背部のブースターで加速すると同時にヴァイサーガの懐に飛び込み嵐のような打撃を叩き込む。

 

『か……はっ!?』

 

「白虎咬ッ!」

 

アッパーで打ち上げられたヴァイサーガに両手を突き出し、両拳に溜めていたエネルギーを至近距離でヴァイサーガへと叩き込む。凄まじい轟音と共に吹っ飛ぶヴァイサーガに両手足にエネルギーを溜めたまま後を追おうとするソウルゲインだが、空中で反転し烈火刃を放ってきたヴァイサーガに突っ込みの出鼻を挫かれその場に足を止める。

 

『……はぁ……はぁ……まだだッ!!』

 

五大剣を杖代わりにして立ち上がるヴァイサーガだが、その全身からは火花が散っており、蓄積したダメージも相まって関節部から黒煙が上がっている。息切れしているラミアと相まってアクセルはもうヴァイサーガが限界である事を悟っていた。

 

(惜しい事だ。EG装甲さえあればまだ戦えた物を……)

 

ヴァイサーガとソウルゲインはアースゲインの発展機であり兄弟機ではあると同時にツヴァイザーゲインの試作機である。アクセルがソウルゲインを気に入った事でEG装甲などを搭載されその機体性能は常にアップデートされ続けていたが、ヴァイサーガはアクセルが乗らなかったこともあり、開発された段階で止まっている。機体性能に関してはソウルゲインにさえ匹敵するが、継戦能力ではソウルゲインの方が圧倒的に上だった。

 

「最初の元気はもう無いようだな……現実は非情だが……こういう物だ、これがな」

 

自分の意志で前に進むと決めたラミアだが、意志を通すには力が足りなかった。ソウルゲインが拳を握り締めヴァイサーガへトドメを刺さんとゆっくりと歩みを進める。

 

『くっ……』

 

反撃に出ようとするラミアだが、フルパワーで稼動し続けていたツケは大きいのか、ヴァイサーガは立ち上がる事が出来ず地響きを立てて再び片膝を着いて動きを止める。

 

「さらばだラミア」

 

手刀を振り上げ、それをヴァイサーガへと振り下ろそうとしたソウルゲインだったが、基地に鳴り響いた警報にその動きを止めた。

 

「レモン、何事だ!?」

 

『戦闘反応でこっちの居場所を感知されたみたいね。特機の反応が2つとPTの反応が4つ……こっちに近づいてるわ」

 

レモンの報告を聞いて何者かがこの場に現れる前にと再び手刀を振りかぶろうとしたのだが、続く言葉に動きを止めた。

 

『識別コードあり、ゲシュペンスト・タイプS……カーウァイ大佐ね。それと特機の反応とあわせれば……来るのは教導隊みたいよ」

 

教導隊と聞いてアクセルはその動きを止め、ウォーダンへと通信を繋げる。

 

「ウォーダン、1度下がれ、厄介な連中が来る」

 

『……了解』

 

バリソンとラミアが合流する事を許す事になるが、一騎当千の教導隊が、しかもフルメンバーで来るとなればアクセルとて無理に攻める事は出来ず1度後退することを選択せざるを得なかった。

 

『ゲッターの守りは薄くなるけど、アシュセイバーとエルアインスを何機か援護に回すわ。アクセル』

 

アンジュルグ・ノワール1機で包囲網を突破出来ないとレモンは考えたのか、アシュセイバーとエルアインスを3機ずつソウルゲインの直援に回す、それは教導隊の戦力を考えれば当然の事だが、レモンが口にした通りゲッターD2の警護が薄くなり、これを好機と見たアンジュルグ・ノワールが被弾もお構いなしに格納庫へと突撃する姿が見えた。

 

(この悪運の強さ……運はラミア達に向かっているか)

 

無謀にも単騎でゲッターD2を取り返そうとしているエキドナもそうだが、ラミアとバリソンに至っても窮地に追い込まれていた。そのタイミングで援軍が来る……それはまるで運命がラミアに味方しているようにアクセルには思えた。

 

(……ふん、やり遂げたか)

 

アンジュルグ・ノワールが1度着陸し、すぐに飛翔するがソウルゲインのモニターには武蔵が格納庫へと走っていく後姿が見えており、被弾し天使を思わせる姿は見る影も無くボロボロだが、ミラージュソードとバックラーを構え一歩も通さないと言わんばかりの気迫を見せるエキドナを見て、裏切り者ではあるがその闘志はアクセルとて認めざるを得ない物だった。

 

「ヴィンデル、残ってる量産型Wシリーズを出せ、俺とウォーダンだけでは相手を仕切れんぞ」

 

『今出撃させる。百鬼帝国もこっちに向かっている、そう気負う事はないぞ』

 

自分よりも百鬼帝国を頼りにしているようなヴィンデルの言葉に眉を顰めるアクセルだったが、ゲシュペンスト・タイプSを先頭にして、この海域に突入して来た機体を見てアクセルは呆れたような笑みを浮かべた。

 

「グルンガスト参式にカスタムタイプのゲシュペンスト……ふっ……まるでかつての俺達のようだ。これがな……」

 

ゲシュペンスト・タイプSをフラグシップとしていたかつての自分達を連想させる部隊を前にし、アクセルは今度こそ自嘲気味の笑みを浮かべるのだった……。

 

 

 

 

 

バリソンの残したグルンガストの航路反応、そして戦闘の熱源反応を辿ってDC戦争時に廃棄されシャドウミラーの拠点となっている基地に辿り着いたカーウァイ達は戦闘の状況を見て困惑していた。

 

『あれはリュウセイ達が戦ったと言う鎧騎士か』

 

『それにあっちはカスタムタイプのゲシュペンスト……』

 

『スレードゲルミルとウォーダンも居るぞ』

 

ヴァイサーガとゲシュペンスト・MK-Ⅱ改がソウルゲイン、スレードゲルミルと対峙し、アンジュルグ・ノワールがたった1機でゲッターD2を固定している格納庫の前に陣取りエルアインス達と戦う姿を見たラドラは小さく笑った。

 

「何を笑っているんだ? ラドラ」

 

『カーウァイ大佐。見れば分かるだろう、あいつらシャドウミラーとやらを裏切ったんだよ。たった3機で良くやる物だ。俺はあいつらの援護をするぞ』

 

『待てラドラ。それは見掛けだけで罠かも知れんぞ!』

 

ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプGトロンベに乗るエルザムがラドラを静止する。余りにも状況が不明瞭で、罠の可能性も捨て切れないと思うのは当然の事だった。

 

『罠であそこまではしないだろう、俺もラドラに同意する』

 

ランドグリーズの攻撃から格納庫を庇い構えていたバックラーごと腕が千切れ飛んだアンジュルグ・ノワールを見て、カイもラドラの意見に同意した時、広域通信が繋げられた。

 

『カイ少佐、ギリアム少佐、エキドナを、エキドナを助けてくださいッ!』

 

その声は紛れも無くラミアの物で、武蔵がシャドウミラーに攫われた直接的な原因であるエキドナを助けてくれとカイとギリアムへと懇願する。

 

『ラミア、お前生きていたのか!?』

 

『エキドナを助けてくれとは……まさかッ!?』

 

火花を散らしながら立ち上がり、片腕でミラージュソードを握りエルアインスとの戦闘を続けるアンジュルグ・ノワールを見てカイ達はアンジュルグ・ノワールのパイロットがエキドナであると言う事に気付いたのだが、武蔵がシャドウミラーに攫われた直接的な原因であるエキドナとなるとどうしてもその足が鈍る。

 

『武蔵をゲッターの元へ届ける為に1人であの包囲網の中に向かったのです、確かに私達は裏切りました……ですが……エキドナを助けてください、お願いします』

 

助けてくれと繰り返し懇願するラミア。そしてそれをフォローするようにバリソンが口を開いた。

 

『カーウァイ隊長、こいつらはなりは大人だが、中身は善悪もわからねぇ子供だ。自分の行いに後悔して、武蔵を助けた所で償えるなんて都合の良い事は考えちゃいない。まだ何も分かってないんだよ、今から自分で考えようとしてるんだ。チャンスを与えてやってはくれないか』

 

「バリソンか、そこまで言われて動かないほど私達は冷血ではない、カイ、ラドラ。先行しろ、ギリアムとエルザムはカイとラドラのバックアップ、私とゼンガーはアクセル達の足止めを行なう」

 

『助かるぜ、カーウァイ隊長。それとこんなタイミングで言う事じゃないって分かってるが……』

 

「百鬼帝国が向かって来ている事は把握している。武蔵を救出しハガネと合流するぞッ! 気を緩めるなよッ!』

 

『『『『了解ッ!』』』』

 

カーウァイの指示を聞いてを聞いて弾かれたようにゲシュペンスト・シグとリバイブ(K)が格納庫へと向かい、その後をゲシュペンスト・リバイブ(S)とヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプGトロンベが続き、ソウルゲインとスレードゲルミルと戦うには力不足のバリソンの駆るゲシュペンスト・MK-Ⅱ改も壁のように立ち塞がるエルアインス達へと向かう。

 

『ゼンガー・ゾンボルト……嬉しいぞ、お前とまたこうして相見える事が出来たことがなッ!』

 

『ウォーダン・ユミルッ! 我が前に立ち塞がると言うのならば……いや、最早問答無用……』

 

『応ッ! 俺とお前が出会った。ならばやるべき事は1つッ!!!』

 

グルンガスト参式・タイプGの装甲が変形し、フェイスガードが展開されゲッター線で稼動している証である翡翠のオーラへ包まれる。

だがスレードゲルミルも負けておらず、装甲の一部が同じ様に展開され、手にしている斬艦刀にうっすらと翡翠のオーラが現れる。

 

『何ッ!?』

 

『武蔵との戦いで手に入れたゲッター合金それによって。スレードゲルミルは更なる高みへと至ったッ!! いざ、真っ向勝負ッ!!!』

 

スレードゲルミルはゲッター炉心で稼動こそしていないが、ゲッター合金を装甲の一部、そして斬艦刀に使いグルンガスト参式・タイプGには劣るがゲッター線の力を手にしていた。互いに翡翠のオーラに包まれた斬艦刀がぶつかり合い、エネルギーの奔流が基地の設備を破壊する。

 

『ぬううッ!!!』

 

『おおおおッ!!!』

 

目まぐるしく立ち位置を変え、斬艦刀の重さなど関係ないと言わんばかりにスレードゲルミルとグルンガスト参式・タイプGは次々に技を繰り出し、凄まじい剣戟の応酬を続ける。

 

『カーウァイ少将……いや大佐か、イングラムの次はお前が俺の前に立ち塞がるか』

 

「分かっていた筈だろう? アクセル。お前達の道と私達の道は決して重なる事はない」

 

『分かっているさ。それに……俺は偶にあんたを越えたいと思っていた。ここで越えさせてもらうぞッ! カーウァイ・ラウッ!!!』

 

シャドウミラーの創始者にして、アクセル達の隊長だったカーウァイと目の前のカーウァイは違う、そう分かっていてもアクセルはカーウァイを越える事を望み、カーウァイもまたそのアクセルの闘志を受け入れアクセルの前に立ち塞がった。

 

「そう簡単に私を越えれると思うなよ。アクセル」

 

『いいや、越えてみせるッ! そうしなければ俺達はいつまでもお前の幻影に縛られるからなッ!』

 

違うと分かっていてもゲシュペンスト・タイプSとカーウァイはシャドウミラーでは絶対の存在だ。決別すると決めた今、カーウァイを倒さなければ本当の意味で決別する事は出来ないとアクセルはソウルゲインを駆り、一直線にゲシュペンスト・タイプSへとソウルゲインを走らせる。

 

『酷いじゃないか、アクセル隊長。私の事は無視するのか?』

 

『ふっ……いいや、そんなつもりはないぞラミア。お前も、カーウァイも纏めて相手にしてやるさッ!』

 

「驕ったな、アクセル。片手間で取れるほどこの首……安くはないぞッ!!」

 

ゲシュペンスト・タイプSも翡翠のオーラに包まれ、その出力を上げ、その隣にヴァイサーガが並び立つ。その光景を見てアクセルは獰猛に笑い、アクセルの無尽蔵の闘志に呼応するようにソウルゲインもエンジンの出力を上げ唸り声のような音を周囲に響かせ、その唸り声のようなエンジンの音に相応しい獣のような動きでソウルゲインは地面を蹴り、ヴァイサーガとゲシュペンスト・タイプSと向かって行くのだった……。

 

 

 

 

格納庫の外から響く爆発音を聞きながら武蔵は日本刀を片手に握り締め、立ち塞がる量産型Wシリーズと対峙していた。

 

「捕獲する」

 

「殺さず捕獲せよ!」

 

「ええい、人間だかロボだかわかんねえんだよッ!!!」

 

良いも悪いも生者の気配を感じさせない上にわらわらと姿を見せる量産型Wシリーズにいらついた様子で怒鳴りながら武蔵は日本刀を振るう。

 

(峰打ちじゃ効果がねぇ。くそ、胸糞悪い)

 

ただ自分を捕まえろと命令を受けているだけの量産型Wシリーズだ。最初は峰打ちで無力化していたのだが、すぐに起き上がり背後から攻撃してくるので武蔵は致し方なく量産型Wシリーズを切り倒しながらゲッターD2へと走っていた。

 

「時間がねえんだ! 死にたくなかったらオイラのじゃまをするなッ!」

 

格納庫に武蔵を送り届けた段階でアンジュルグ・ノワールは中破していた。しかも武蔵がゲッターに乗り込むまで時間を稼ぐと格納庫の前に陣取り空を飛ぶ気配も無い、エキドナの腕は知っているが遠距離武器も無く空も飛ばなければただの的に過ぎない。

 

「捕獲する」

 

「捕獲する」

 

「くそったれっ! 邪魔すんなぁッ!!」

 

腰に捻じ込んでいたリボルバーを抜き放ち武蔵は引き金を引く、放たれた弾丸はショットガンのように広がり、量産型Wシリーズの身体に穴を空け、砕けたヘルメットから生気を感じさせない男女の顔を見て武蔵は顔を歪めるが、外から響き続ける凄まじい戦闘音に迷ってる時間も後悔している時間も無いと走り出し、数十体の量産型Wナンバーズを切り倒しやっと武蔵はゲッターD2の元へと辿りつく事が出来ていた。だがやはりゲッターD2の状態は武蔵の予想通り最悪の状態でハンガーへと固定されていた。

 

「……クソ、やっぱり完全に機能停止してやがる」

 

ポセイドン号に乗り込んだ武蔵だが、やはり完全に機能停止しているゲッターD2を見て、必死に立ち上げ作業を行なう。その間も外からの量産型Wナンバーズの銃撃音と、外の戦闘音がコックピットまで響いておりそれが余計に武蔵を焦らせる。

 

「起動してくれるだけで良いんだ……頼む頼む……」

 

動いてくれれば何とでもなる。ゲッターチェンジやオープンゲットが使えなくてもダブルトマホーク、いや最悪徒手空拳でも良い。動きさえすれば何とでもなる……そう考える武蔵だがメタルビースト・SRXとの戦いで消耗したゲッター線はいまだ回復しておらず、武蔵の祈りに反してゲッターD2は今だ動く事は無く、武蔵は握り締めた拳をコンソールに叩きつける。

 

「何でだよ、何でだよ兄弟ッ! なんで動いてくれないんだッ!!」

 

その悲痛な叫びにもゲッターD2は応える事無く……沈黙を続ける……だがその身体の奥深くでゲッター線は弱々しく、しかし確かに鼓動を打ち始めているのだった……。

 

 

 

第151話 楽園からの追放者 その4へ続く

 

 




教導隊ほぼフルメンバー参戦でシャドウミラー戦ですが、百鬼帝国が出てくるまではゲッターは稼動しないというイベントですね。

今回の百鬼帝国は新しい兵器を引き下げての参戦になりますが戦闘描写は少しずれる事になるのでそれまで百鬼帝国の新兵器については楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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