進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第151話 楽園からの追放者 その4

第151話 楽園からの追放者 その4

 

 

片腕を失い、翼も中ほどから砕け満身創痍の状態でアンジュルグ・ノワールは立ち続け格納庫をたった1機で守り続けていた。

 

「ああああ――ッ!!!」

 

エキドナの口から発せられる言葉は最早獣の咆哮と言ってもいい。いや、ただの獣ではない手負いの、そして最も大事な者を守り続けている執念の獣だ。エキドナの意志に答えるようにアンジュルグ・ノワールのバイザーの下のカメラアイが輝き、足の装甲を砕きながら跳躍したアンジュルグ・ノワールの手にしたミラージュソードが、ランドグリーズの頭部に突き刺さる。

 

「よこ……せええええええッ!!!」

 

ランドグリーズが手にしていたリニアミサイルランチャーをもぎ取り、それを無理やり構えて引き金を引かせる。放たれたミサイルの雨がアシュセイヴァーやエルアインス、エルシュナイデの前で炸裂し、その足を止める。

 

「――っ!?」

 

だがソードブレイカーを止める事は叶わず、背後から放たれたビームがアンジュルグ・ノワールの背中を穿ち、砕けていた翼が今度こそ完全に砕け散った。

 

「ッ――あああああッ!!!」

 

だがそれでもエキドナは止まらない、爆発する寸前のラーズアングリフを盾にすると同時に、エルアインスとアシュセイヴァーのほうへとその背中を蹴り飛ばす。重量の差で右足が砕け、アンジュルグ・ノワールが大きく傾くが今のエキドナにそんな事はどうでも良かった。あの位置に全身武器庫と言えるラーズアングリフがいればいい……それだけで良いのだ。そのために片足を失ったとしても、それはエキドナにとって計算通りの展開なのだから。

 

「うああああッ!!!」

 

振りかぶったミラージュソードを投擲する。それは一直線にラーズアングリフの動力部へと突き進み、貫くと同時に全身の武器を誘爆させ大爆発を引き起こした。

 

「あぐっ! げほっ……はぁ……はぁ……ま、まだまだ……」

 

当然その爆発はアンジュルグ・ノワールをも襲い、ゲッターD2が保管されている格納庫とは違う格納庫へと吹き飛ばされた。背中から叩き付けられたアンジュグ・ノワールのコックピットでエキドナは血を吐くが、まだその目は爛々と輝き、砕けた足も腕もどうでもいいと言わんばかりに同じく爆発によって飛んできていたレーザーブレードの柄を握り、ブースターを使い無理やりに体勢を保持し、エルアインス達を睨みつける。ゲッターD2が起動するかどうかは正直五分五分という事はエキドナにだって判っていた。もっと言えば8-2くらいで起動出来れば御の字というほどにエネルギーを消耗している事を知っている。故に、この戦いの中で絶対に起動する事はない事も、エキドナは理解している。だがゲッターロボの中にいれば、少なくとも武蔵は安全だ。シャドウミラーの機体の総攻撃を受けたとしても、ソウルゲインとスレードゲルミルさえいなければゲッターが破壊される事はない。

 

「……こ、こは……通さない」

 

だがそれも絶対ではない。自分の代わりに武蔵を守る者が来るまでは絶対に倒れない。その不屈の闘志だけでエキドナはアンジュルグ・ノワールを駆り続ける。肉体は既に限界でも、その精神が肉体を凌駕し、アンジュルグ・ノワールを操縦させていた。……だが、それすらも限界を迎えようとしていた。

 

「っ!?」

 

隠れていたエルアインスの放ったレールガンの弾頭が右膝に突き刺さり、仰向けのまま吹っ飛んだアンジュルグ・ノワール。それでもエキドナはすぐに立ち上がらせようとするが、残された左足にもミサイルが着弾し、両足が砕けたアンジュルグ・ノワールはもう立ち上がれない。それでも残された片腕で立ち上がろうとするアンジュルグ・ノワールの前に、2つの影が立った。

 

「ゲシュ……ペンスト?」

 

『良く頑張ったな、ここからは俺達に任せろ』

 

『俺はお前を信用する。良く1人でここまで耐えた、後は任せて寝ていろ』

 

ゲシュペンスト・シグ、ゲシュペンスト・リバイブ(K)から響くカイとラドラの言葉を聞いて、自分の代わりに武蔵を守ってくれる者が来たと理解したエキドナの意識は闇の中へと沈んで行き、アンジュルグ・ノワールのカメラアイからも光が消えるのだった……。

 

 

 

格納庫にもたれかかるようにして機能を停止したアンジュルグ・ノワールを見て、カイとラドラはエキドナを信用する事を決めた。

 

「ここまでボロボロになろうとも戦ったんだ、これは芝居なんかじゃ決してない。文字通り自分の命を賭けて武蔵を守ろうとしたんだ」

 

『ああ。俺にも分かる……こいつはここで死ぬ覚悟をしていた』

 

自分が死んでも武蔵だけは守ろうとした。確かにエキドナが裏切らなければ武蔵がシャドウミラーに攫われることは無かったが、それでもエキドナは武蔵を守ろうとした。それだけでカイとラドラがエキドナを助けるには十分すぎた。

 

「ふんっ!!!」

 

『温い、その程度で俺とカイを抜けると思うなよ』

 

互いにPTを操った白兵戦ではトップクラスの技量を持ち、そして教導隊においては無敵の2トップだったカイとラドラを相手にするには、量産型Wナンバーズでは力不足だった。

 

『ッ!!!』

 

『!!!』

 

圧倒的な力量差を理解出来ない量産型Wナンバーズの駆る2機のアースゲインがゲシュペンスト・シグとリバイブ(K)へと突っ込み、その後をエルアインスとアシュセイバーが続き、ゲッターD2の格納庫を奪還せんと迫る。

 

『ッ!!』

 

ソウルゲインの白虎咬と似た構えで突っ込んで来たアースゲインの掌底がゲシュペンスト・シグ、ゲシュペンスト・リバイブ(K)に当たる寸前に、アースゲインの身体はくの字に折れていた。

 

「遅い、無駄がありすぎるな」

 

中国拳法に似た肩からのかち上げがアースゲインの身体を折り、その身体を宙に打ち上げる。

 

『機体性能は悪くないが、パイロットの腕が悪すぎるな』

 

ゲシュペンスト・シグの前蹴りからの蹴り上げで胸部を破壊されたアースゲインが、両手足を脱力させながら宙に浮かぶ。

 

「ステークセットッ!!」

 

『ステークセットッ!!』

 

ゲシュペンスト・リバイブ(K)の右拳が放電し眩いまでに光り輝き、ゲシュペンスト・シグの左拳が高速回転し、左腕がエネルギーで出来た槍のようになる。

 

「どんな装甲だろうが打ち砕くのみッ!!!」

 

『貴様に耐えれるかな』

 

音を置き去りにする神速の拳打がアースゲインを打ち貫き、アースゲインは胴体を両断され爆発する。

 

『ッ!?』

 

『!?』

 

アースゲインがゲシュペンスト・シグとリバイブ(K)を足止めしている間に突破しようとしていたエルアインス達は一撃でアースゲインが破壊され、その動きを一度止め回り込もうとした……だが量産型Wシリーズの目の前には既に銃弾が迫っていた。

 

『戦場で足を止めるなど、狙ってくれと言っている様な物だぞ』

 

足を止めたのは一瞬だが、その一瞬でエルザムとギリアムに照準を合わせられ、頭部を破壊されたエルアインスとエルシュナイデは膝から崩れ落ち機能を停止する。

 

「どうする、武蔵に声を掛けるか」

 

『いや、止めた方が良いだろう。ゲッター炉心の調整は難しい。下手に声を掛ければ武蔵君が焦る事になる』

 

『俺とカイとエルザムで十分ここは足止め出来る筈だ。バリソンとやらが来れば1人余るはずだが……どうする?』

 

『それなら俺を離脱させてくれ、ハガネとシロガネが来るまで、ヴィンデル達の足を止めさせる良いアイデアがある』

 

「大丈夫なのか? ギリアム」

 

1人でギャンランドを足止めするというギリアムの言葉に、カイが大丈夫なのかと問いかける。

 

『ああ、心配はない。百鬼帝国が迫っている中でこれ以上応援を出されても厄介だ。俺ならシャドウミラーを確実に足止めできる。武蔵とゲッターロボを頼んだぞ』

 

ギリアムはそう言い残すとバリソンと入れ替わりでギャンランドの前へと向かう。ゲシュペンスト・リバイブ(S)のコックピットの中で、ギリアムの何かを決意したかのような表情を浮かべているのだった……

 

 

 

 

 

 

ギャンランドのブリッジから広がる光景に、ヴィンデルは忌まわしそうに眉を細めていた。ラミアとエキドナ――いやW-16、W-17に加えてバリソンの反逆に武蔵の逃亡。そしてシャドウミラーの創始者であるカーウァイに加えて、自分達の世界では故人となっている教導隊が全て敵として立ち塞がる……それは、一種の悪夢のような光景だった。

 

『ちいっ! やはり巧いッ!!』

 

『言った筈だ、そう簡単に私の首を取れると思うなとなッ!!』

 

ソウルゲインとゲシュペンスト・Sの機体サイズで言えばソウルゲインが圧倒的に有利なのだが、機体のサイズなど関係ないと言わんばかりにゲシュペンスト・Sは素早い出入りで、ソウルゲインをスピードで完全に圧倒していた。

 

『風衝閃ッ!!』

 

上空からのヴァイサーガの刺突と共に放たれた風の刃がソウルゲインの突撃の勢いを完全に殺し、そこを待っていたと言わんばかりに強烈なゲシュペンスト・タイプSの攻撃が叩き込まれる。

 

『ぐうっ! だがこの程度ではまだ俺は倒れんぞッ!!』

 

『お前達の妄執……ここで断ち切らせてもらうぞッ!』

 

永遠の闘争を妄執とカーウァイに吐き捨てられ、ヴィンデルは激しい怒りを抱いた。

 

(何故私を否定する。私の願いは間違っていないというのにッ!)

 

平和は穏やかな滅びへの道に他ならない、地球を、人類がより良い方向に進んでいくには永遠に戦い続けるしかない。これがもっとも正しく地球を導く事が出来ると言うのに、何故自分が否定されているのかが、ヴィンデルには理解出来なかった。ヴィンデルの思想も確かに1つの側面から見れば正義であり、正しい事なのかもしれない。向こう側の世界では愚かな政治家に上官――それらによって優秀な……それこそ本当の意味で地球の未来を憂う者達は死に、権力と金を求めて暴走する議員に司令官、バリアによって地球を守り争いのない世界を作るという愚かな行動によって、インベーダーとアインストが溢れヴィンデル達の世界は滅んだ。ならば平和などいらない、常に戦い続けることだけが地球を守る事だとヴィンデルは悟った。そしてカーウァイの死と共に甘い理想を捨て、永遠の闘争を掲げシャドウミラーを再結成したのだ。自分が正しいと何も間違っていないと思っているヴィンデルには、この世界の住人の考えが分からないのだ。

 

『おおおッ!!!』

 

『ぐっ!? 何故、何故だッ! 何故届かないッ!!』

 

グルンガスト参式・タイプGとスレードゲルミル――同じゲッター合金とゲッター炉心を使うはずの特機であるのだが、グルンガスト参式・タイプGがマシンセルの回復能力を持つスレードゲルミルを完全に圧倒していた。

 

『判らないのだな……ウォーダン。俺の刃は牙無き者を守る為に悪を断つ刃ッ! 守るべき者ある限り、俺の斬艦刀を決して砕けんッ!!! チェストォッ!!!』

 

『ぐう……守るべき者だとッ!?』

 

『そうだ。守るべき者だ。お前と俺の腕は互角と言っても良いだろう……だが信念の重さが違うのだッ! ウォーダン・ユミルッ!!』

 

守るべき者の為に悪を断つ剣であるゼンガー・ゾンボルトに対して、破壊を齎すだけのウォーダン・ユミルの剣では余りにもその重さが違う。その重さの差が機体性能を凌駕し、グルンガスト参式・タイプGとゼンガーがスレードゲルミルとウォーダンを凌駕している理由となっていた。だがその理由は、ヴィンデルにとって受け入れられる物ではなかった。

 

「忌々しい、何故理解出来ないのだッ! 私の言葉が何故真実だと判らないのだッ!」

 

ヴィンデルの言葉は確かに正義かもしれない、真実かもしれない、だがそれは向こう側の世界の話だ。こちら側とは何かも違う、だからこそ受け入れられる事も理解される事も無い。だがヴィンデルにはそこが分からない。世界を超えてもなお、ヴィンデルはあの地獄から抜け出せていないから……新たな楽園へ辿り着いても、その精神が地獄にあり続ければ、楽園も地獄にしか見えない。それがヴィンデルが永遠の闘争を続けようとする理由だった。

 

「ヴィンデル、通信が入ってるけどどうする?」

 

自問自答を繰り返すヴィンデルにレモンがそう声を掛けることでヴィンデルは思考の海から引き上げられたが、その瞳は狂気のみを映しており、まともな思考が出来てないのは明らかだった。

 

「……繋げろ、私の思想に共感する者がいたのかもしれない」

 

「了解」

 

永遠の闘争を受け入れる人間なんてこの世界にはいない、とレモンは分かっている。アクセルとてそうだろう。だが同じ世界の生き残りという事でレモンもアクセルもヴィンデルを見捨てられない、下手をすればヴィンデルが人間を捨ててしまうと思っているから……だがレモンとアクセルがいる限り、ヴィンデルの暴走は続く……いや、誰がいたとしてもヴィンデルの暴走は止まらないだろう。自分が立ち上がらなければ、この世界もあの地獄へと至る。そう思いこんでいるヴィンデルは最早立ち止まる事は出来ず、己が地獄を作り出すと言う事にすら気付いていないのだ。

 

『応答せよ、 シャドウミラー隊指揮官……いや、第一強行部隊隊長ヴィンデル・マウザー大佐』

 

レモンによって繋げられた通信の言葉を聞いて、ヴィンデルは驚きに目を見開いた。それはまだカーウァイが生存している時のヴィンデルの役職であり、この世界で役職を知っている人間はアクセルとレモン、そしてバリソンを除けば存在しない筈だったからだ。

 

「お前は何者だ? 何故それを知っている」

 

『ヘリオス……と言えば分かるだろう。ヴィンデル・マウザー』

 

ゲシュペンスト・リバイブ(S)から響いた男の声と名に、ヴィンデルとレモンは驚きに目を見開いた。それはヴィンデル達が捜し求めていた男の名前だったからだ。

 

「ふ、ふふふ……久しぶりだな、ヘリオス……ヘリオス・オリンパス。それがお前の素顔か?」

 

仮面をつけていたので素顔を知らなかったヴィンデルは、初めてヘリオス――いやギリアムの顔を見て笑みを浮かべていた。それは再会を喜ぶ物ではない、必要な物を見つけたと言わんばかりの、人を人とも見ていない響きがあった。

 

『ヴィンデル大佐……再びお前と会う事になるとはな』

 

だがそれはギリアムも同じで、忌むべき者と言わんばかりの嫌悪が込められた声色で返事を返す。

 

「ああ、お前が残したシステムXNのおかげだ。やはり、アギュイエウスの扉はファーストジャンパーであるお前に通じていたようだな? お前がいたからこそ、我々はこの世界に辿り着けた。感謝しているよ、ヘリオス・オリンパス」

 

ギリアムがいたからこそシャドウミラーはこの世界に辿り着けたのだと言うヴィンデルに、ギリアムは眉を顰めた。それは自分の犯していた罪を目の当たりにしたかのような、後悔の色を色濃く映していた。

 

「随分と捜したのよ。貴方、今までどこにいたのかしら?」

 

ギリアムがヘリオスと分かった事で量産型Wシリーズはゲシュペンスト・リバイブ(S)の下に集まり、アクセルとウォーダンも仕切り直りと言わんばかりに後退し、戦況は互いに仕切りなおしとなり、誰もがヴィンデルとギリアムの言葉に耳を傾けていた。

 

『それはお互いさまだ。俺はずっとお前達を探していた、そして今やっと見つけたのだ。俺の許されぬ過去を清算する時がやっと来たのだ』

 

ギリアムの言葉には強い後悔、そしてそれに負けないほどの強い怒りが込められていた。

 

「許されぬ過去? システムXNの事か? 何故だ。あれほど素晴らしい物はないぞヘリオスよ」

 

『ヴィンデル大佐――いや、ヴィンデル。言った筈だ、俺が消えたらシステムXNは廃棄しろと。あれはお前達に、いや俺にとて制御出来る物ではない。その機能は限定されているとは言え、下手に使用すれば世界の因果律が狂う。それによってカーウァイ大佐や、ラドラ、そして武蔵……もっと言えば恐竜帝国、百鬼帝国、そしてインベーダー……全ての害悪がこの世界に導かれた可能性すらあるのだ』

 

システムXNが何かはゼンガー達には分からなかったが、それが武蔵達を初めとし、恐竜帝国すらも呼び寄せたという言葉に、流石のゼンガー達も言葉を失った。

 

「ふ、ふふふ……素晴らしいではないか、数多の侵略者を招き入れたのだ。これこそが私の望みである永遠の闘争を成就させる為に必要不可欠なのだ。世界の扉を開き、侵略を、あるいは侵略される事で永遠の闘争を続ける為にな」

 

『それは許されない、世界の崩壊をさせないためにもシステムXNは破壊しなければならないのだ』

 

ヴィンデルとてシステムXNを完全に理解しているわけではない。ギリアムの残した資料を元に、レモン達と研究しその使い方に辿り着いただけであり、それがどれほど危険な物なのかを1つも理解していないのだ。だからこそギリアムは警告する、真に招いては行けないものが招かれる前に、システムXNは破壊しなければならないとギリアムは警告する。

 

「断る、これは我が宿願を叶える為の物だ。コアである貴様を捕らえればよりシステムXNは安定する。私達の前に現れた事を悔いるがいいヘリオスよ。お前を捕らえ、私は今度こそアギュイエウスの扉を開くッ!」

 

ヴィンデルの言葉には狂気が感じられた。最早何を言ってもヴィンデルの暴走は止まらない、止めるには殺すしかないのだとギリアムは悟った。

 

『アギュイエウス……そしてリュケイオスの扉は二度と開かれてはならないのだ。それが分からない訳ではないだろう? レモン』

 

「ふふ、確かに……そうかもしれないわね。転移システムのコアである貴方ですら『こちら側』に飛ばされてしまったくらいの不安定さだものね」

 

『それが分かっていても、なお開くというのか?』

 

「まぁボスがね、意見を変えない限りは私もある程度は従うつもりよ。止めるつもりならばツヴァイを壊すしかないわね」

 

ギリアムの問いかけを飄々とした態度ではぐらかすレモン、その言動を聞けばレモンですらアギュイエウス、リュケイオスの扉を開く事に懐疑的であると言うことは判った。エキドナ、ラミア、バリソンの反逆が示す通りシャドウミラーも一枚岩ではないという事がレモンの言葉からは感じられた。

 

『システムXNはこの世界に存在してはならない。そして……俺も……そしてお前達もな、だからこそ、俺はこの世界で待っていた……システムXNを悪用する者を……追放者達を……その存在を確実に抹消する為に』

 

言葉こそ静かだが燃え盛るような闘志を見せるギリアムに、最早交渉の余地はないとヴィンデルも悟ったのだろう。

 

「良いだろう、お前の意志が通るか、我らの意思が通るか……それはこの戦いにて明らかになる。量産型Wナンバーズよ、ヘリオス・オリンパスを捕らえるのだ」

 

ヴィンデルの言葉で臨戦態勢に入る量産型Wナンバーズ。それらを相手にするには流石のギリアムでも厳しい物がある、だがギリアムは決して1人ではないのだ。

 

『ギリアム、それがお前の抱えていた闇か……だがな。存在していてはいけない命なんて物はない。死ぬことは許さんぞ』

 

『そう言うことだ。今まで1人で全てを抱えて来ただろうが……お前の重荷を俺達にも分けろ。1人で何もかも背負うんじゃない』

 

『その通りだ。今更だが、お前の背負って来た宿命を、俺達にも教えてくれ』

 

『1人ではないのだ、ギリアム。もう1人で何かも耐える必要はない』

 

カーウァイの言葉にカイ達が続き、ギリアムを激励する。異邦人であると、下手をすれば全ての悲劇の引き金になっていたかもしれないギリアムを受け入れてくれる仲間がいる。だからこそ、ギリアムは孤独に、そして己の宿命に耐えて1人で戦い続ける事が出来たのだ。

 

『なんとしてもシステムXNを破壊する。力を貸してくれ』

 

ギリアムの言葉に仲間達が返事を返す、それが途方もない力をギリアムに与える。

 

「システムXNは破壊させない、各員攻撃開始! ヘリオスを捕らえるのだッ!」

 

ギリアムがヘリオスだと判り、なんとしてもヘリオスを捕らえようとするシャドウミラーは戦力の出し惜しみをせず次々と機体を出撃させる。廃棄された基地での戦いは武蔵とギリアムの奪還・防衛戦へとその形を変えていくのだった……。

 

 

 

 

ソウルゲインとスレードゲルミルというシャドウミラーの最大戦力がギャンランドの前へ立ち塞がり、ゲッターD2とアンジュルグ・ノワールの元へエルアインス、エルシュナイデをはじめとしたシャドウミラーの量産機が向かう。決して広くない基地での戦いは2局面に分けられ激しい戦いを繰り広げていた。

 

『甘いな……貴様達は……そのような甘さでは真の意味で世界は救えん。人の意思が世界のバランスを崩す、これがな』

 

ソウルゲインの拳と参式斬艦刀がぶつかり合い火花を散らす。

 

「破壊と殺戮、戦いのみを続ける世界に何がある。そこにあるのは絶望と死のみだ。そんな世界は地獄以外の何者でもないッ!!」

 

参式斬艦刀の切り上げによってソウルゲインの右腕が跳ね上げられ、ガードががら空きになった瞬間にヴァイサーガがマントを翻しソウルゲインの懐へと切り込む。

 

「人の意志が世界を作りだす、私はそれを知ったのです。自分達の意志で新たな世界を作る……その意味を私は知りました、だからこそ判る。貴方達の理想は間違っているとッ!!」

 

「随分と饒舌に喋るなラミア、では貴様はこの世界をどうするつもりだ? お前は知っているはずだ。俺達の世界が何故滅びたのかをな、それでもお前は平和等と言う愚かな夢を見るのか?」

 

五大剣とソウルゲインの拳が何度もぶつかり合い激しい火花を散らす。アクセル達の理想を批判したラミアだが、まだ自我を得たばかりの幼いラミアにはアクセルの強固な意志を跳ね返すだけの言葉がなかった。五大剣を殴りつけたまま拳を回転させるソウルゲインを見て、ヴァイサーガを押しのけるようにゲシュペンスト・タイプSが前に出て参式斬艦刀を振るう

 

「夢を見る事の何が悪い。争いのない平和な世界を夢見て何が悪いんだ。アクセル」

 

「夢を見る事が悪いとは言わん。だが平和は何も生み出さない、ただ世界を腐敗させていくだけだッ!!」

 

「それはお前達の偏った考えだッ! 世界は人の意志によって作られる。平和を望む人の意志を否定する資格などお前達に、いや誰にもないッ!!」

 

参式斬艦刀の一閃に押されるようにしてソウルゲインの巨体が宙へと浮かぶ。だがソウルゲインは空中で回転し、両手をヴァイサーガとゲシュペンスト・タイプSに向け青龍鱗を放ち、アクセルも叫びを上げる。

 

「確かに平和を望む者の意志を否定はせんッ! だが闘争を忘れた者達は兵士を、軍を、俺達を切り捨て否定するッ! 俺達の様な者は戦いがなければ生きていけないのだッ! それが判らないとは言わさんぞッ!!」

 

兵士である自分達は戦いの中でしか生きられないと叫ぶアクセル。それは確かに1つの側面であり、間違いではない。例え国を守る為に戦ったとしても、争いが終われば殺人者であり迫害される。それは争いの歴史の数だけ生み出されてきた光景であり、紛れもない事実であった。

 

「アクセル隊長。それは戦う者だけの都合です」

 

「なんだと?」

 

だがそのアクセルの言葉はラミアの中で1つの答えを導き出す事になった。赤ちゃんが生まれるのだと嬉しそうに話すラトゥーニと、彼女が持っていた写真の夫婦を思い出したラミアは、自分が出すべき答えに辿り着く事が出来たのだ。

 

「戦いを望まない者、平和という世界に可能性を見出す者……そして、生まれてくる新たな命の為に平和な世界を作ろうとする者……確かに兵士は争いの中でしか生きられないかもしれない、しかし平和な世界を作る為に戦うことは出来るッ!」

 

 

自分達は争いから逃げられないとしても、それでも平和な世界を作り争いを望まない者の為の礎にはなれる。それが戦う事しか出来ない自分達に出来る事だとラミアは叫んだ。

 

「甘いな、争いが無くなれば俺達に居場所などはないという事が何故判らないッ!」

 

「お前達の世界がそうであったとしても、私達の世界まではそうとは限らない。例えそうだったとしても、私達は平和を目指して戦うのだッ!」

 

「平和な世界を見て見たい。涙と、絶望に満ちた世界ではない、笑顔が広がる世界を見たいと思う事は、間違いではないはずだッ!」

 

参式斬艦刀と五大剣の一閃がソウルゲインの胸部を深く傷つけ、その装甲に×の字が刻まれるがEG装甲によって見る見る間にその傷が修復される。

 

「チェストォおおおおおおッ!!!」

 

「ぐ、ぐうううううッ!?」

 

スレードゲルミルもグルンガスト参式・タイプGに鋭く重い一撃を叩き込まれ、大きく弾き飛ばされ地響きを立てながら着地する。劣勢に追い込まれているのはアクセルとウォーダンだけではなく、量産型Wナンバーズもだった。兵士としては優秀だが、教導隊メンバーとは余りにも地力が違う。数は多くてもエルザムやラドラ、ギリアムを止めるには力が余りにも足りなさ過ぎたのだ……だが時間稼ぎには十分な戦力を持っていた。

 

「平和を望むという事は判った、だが俺達は永遠の闘争を捨てることはない……お前達が本当に世界を平和に出来ると言うのならば……俺達だけではない、百鬼帝国も打ち倒せるのだろう?」

 

アクセルとて百鬼帝国に対して思う事がないわけではない。だがこの劣勢を跳ね返すことが出来るのならば何だって利用する……生きてさえいれば次があるのだ、泥を啜ろうが敗北しようが生きてさえいれば何でも出来るのだ。一時の屈辱など、死ぬ事と比べればなんという事はない。海面に顔を見せた百鬼帝国の巨大戦艦、そして無数の百鬼獣の群れを見てアクセルは自嘲気味に笑い、再びソウルゲインを立ち上がらせゼンガー達の前に立ち塞がるのだった……。

 

激しい戦闘音が響いて来る格納庫で、武蔵はゲッターとの戦いを続けていた。ゲッターが稼動しないと判った武蔵はゲッターを使う事を諦め、使えるかどうかは不安だが、それでも頭数になればと格納庫に保管されていたシャドウミラー製の機体を使おうとした。

 

「くそッ! なんでだ! なんでオイラの邪魔をするんだッ! 兄弟ッ!!!」

 

だが乗り込んだ時はすんなりと武蔵を受け入れたゲッターD2は決してコックピットを開く事は無く、武蔵は完全にゲットマシンの中に閉じ込められていた。

 

「くそくそッ! なんでだッ! なんでオイラを裏切るんだよッ!! ゲッタ――っ!!!」

 

今まで何度もゲッターロボに武蔵は救われてきた、だが今回は自分を裏切った。武蔵は激しい焦燥感と共にゲットマシンのモニターを何度も殴りつけた。皮膚が裂け血が溢れるが、それでもゲッターは沈黙を続ける。

 

「なんでだ……なんでだよ……頼む、頼むよ……オイラを戦わせてくれよ……ゲッター……」

 

ゲッターロボが自分の意志を汲み取ってくれない、自分を助けてくれたエキドナが、そして外から響いてくるゼンガーとウォーダンの叫び……更に数分前から混ざり始めた百鬼獣の叫び声に焦りばかりが募り、武蔵の目から悔し涙が溢れその涙がモニターへと落ちた時――今まで沈黙を続けていたゲッターが突如獣のような唸り声を上げ、今までの沈黙が嘘だったかのようにゲットマシンの中に翡翠の光を溢れさせた……それは待たせてすまなかったと言わんばかり武蔵の身体を包み、武蔵の見ている前で拳の傷が癒え、ゲッターエネルギーが満たされていく……。

 

「おせえよ……兄弟。オイラはてっきりおめえに裏切られたって思ったじゃねえか……」

 

涙を拭い顔を上げた武蔵の目は力強い意志の光に彩られ、それに呼応するようにゲッターD2を包むゲッター線はその光をより強く輝かせていくのだった……。

 

 

 

 

第152話 楽園からの追放者 その5へ続く

 

 




今回も前回と続きほぼシナリオデモとなってしまいましたが、シナリオの都合上致し方ないことなのでお許しください。次回は百鬼帝国を交えしっかりと戦闘シーン、そして百鬼帝国の新兵器を登場させて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。


ガチャチケットで赤特のくえすのシエンが出たので共闘戦のアイテムの全部交換できました。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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