進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第154話 世界を流離う者 その1

第154話 世界を流離う者 その1

 

ハガネ、ヒリュウ改、シロガネ、そしてクロガネの4つの戦艦のブリーフィングルームが通信で繋げられる。本来はリスクがありできない衛星通信を用いた通信方法だが、ビアンは堂々とこの会議に参加していた。

 

「本当に大丈夫なのか? ビアン」

 

『問題はない、ゲッター線の応用だ。5日ほど徹夜している時に閃いてな』

 

「また原住民ダンスしてたんですか? ビアンさん」

 

『ずんどこさ踊っていたな。リリー中佐に頭を殴られた所までは覚えている』

 

なにしてるんだクロガネのクルーはと誰もが天を仰いだ。

 

「原住民ダンスって何?」

 

「なんか開発した物の周りを踊ってる時あるんですよビアンさん。後クロガネの開発チームも」

 

「……あ、それ知ってる。ヴァルシオーネが出来た時も親父同じ事してた」

 

徹夜の弊害と疲労によるハイな状態――ある意味父親の黒歴史にリューネは顔を真っ赤にしていた。

 

「……フィリオもしてたよね?」

 

「……そうね」

 

「……俺の親父もだな……」

 

そしてビアンの奇行はフィリオとジョナサンもしており、それを思い出したツグミ、アイビス、イルムも何とも言えない表情を浮かべる。ちなみにこの場にスレイがいても恐らく同じ反応をしていたと思われる。

 

『こほん、ダイテツ中佐。ビアン博士、話がそれています』

 

「む、そうだな」

 

『すまないな、リー中佐』

 

リーの咳払いと注意の言葉にダイテツとビアンは苦笑いを浮かべ、ハガネのブリーフィングルームの中心にいるラミア、エキドナ、バリソンの3人にその視線を向けた。

 

「……カーウァイ大佐達が言った事は正しかったようだな、ラミア・ラヴレス」

 

確かにラミアとエキドナは裏切りはした。だが百鬼獣、シャドウミラーとの戦いで己の身の潔白を証明した。その事はレフィーナ、リーも認める所であり、勿論キョウスケ達も同じだった。

 

「……私達を信じて下さった事に感謝しています」

 

「本当に申し訳無い事をしたと思っています」

 

ラミアとエキドナは謝罪と感謝の言葉を口にするが、バリソンはシャドウミラーを裏切ったばかりであり、その上この中の面子に知り合いもいないので、口を開くことは無く直立不動で静止していた。

 

「では、 ここにいる皆に真実を話して貰おう、ギリアム少佐、イングラム少佐も話に参加して貰うぞ」

 

「構いません、俺もそのつもりです」

 

「俺もだ。1度情報を整理する必要があるからな」

 

ラミア、エキドナ、バリソン。そしてイングラムとギリアムが知る世界の話――4隻の戦艦のブリーフィングルームには重い緊張感があった。

 

『誰から話をするのですか?』

 

「まずは俺だ。レフィーナ中佐、話が拗れるから基本的なことを皆に理解して貰おうと思う」

 

ギリアムが手を上げブリーフィングルームのPCを操作する。

 

「まずはだが……ゼンガー達はあの戦いの中で俺の話を覚えているか?」

 

ギリアムの問いかけにヒリュウ改のブリーフィングルームのゼンガーが口を開いた。

 

『世界が崩壊すると言っていたな。それとお前もまたこの世界の住人ではないとも』

 

世界の崩壊、そしてギリアムもこの世界の住人ではないという言葉にブリーフィングルームに異様な雰囲気が広がった。

 

「その通りだ。まずだが……俺は本来はこの世界の住人ではないし、ラミア達の世界の住人でもない。世界とは無数の姿を持ち、その中の1つからラミア達の世界に流れ着き、そしてこの世界に定住する事になった者だ」

 

ギリアムはそう言うとコンソールを操作し、複数の球体をモニターへ映し出す。

 

「まずはラミア達のいた世界をAと呼称する。そして俺のいた世界をB、武蔵のいた世界をC、イングラムのいた世界をD、そして今のこの世界をEとしよう。それらは本来交わる事は無く、その世界で完結している。だがなんらかのイレギュラーによって……俺はまずAへと跳ばされた、そしてそこでBの世界へ帰ろうとしある機械を開発した。これはラミア達も知っているだろう?」

 

「システムXN――空間・次元転移装置の事ですね? 2基存在しそれぞれアギュイエウス、リュケイオスと呼称された時空転移装置の開発者がギリアム少佐でしたね」

 

ギリアムが開発した時空転移システムが存在していると言う言葉に誰もが目を見開いた。この世界の住人ではないという事にも驚かされていたが、時空転移システムまでも開発していたと言うギリアムに誰もが驚いていた。

 

「その通りだ。俺はなんとしても元の世界に帰りたかった……だがそれは許されない罰だった」

 

「当たり前だ。世界を超えるということは世界を壊すことに繋がる、本来ならば俺はお前を殺さなければならない、因果律の番人……タイムダイバーの使命としてな」

 

「そうならなかったことに俺は感謝しているがな」

 

イングラムから告げられた言葉にブリーフィングルームはますます混乱を深める事となった。当事者達は理解しているが、周りの人間――キョウスケ達は勿論ラミア達も困惑しており、分かったのはイングラムとギリアムだけが分かる何かという事だけだった。

 

「教官、前も言ってたけど因果律の番人ってなんなんだ?」

 

「世界とそこに属するモノを『こういう原因でこういう結果になっている』と規定しているルールのようなものとでも言おうか……不可逆の原因と結果であり、それは本来決して覆る事はない。しかし極稀にその因果を乱す者がいる、それを抹殺し世界を正常な状態に戻す……それが因果律の番人であり、タイムダイバーの使命と言ってもいい。L5戦役で俺が呼び出したアストラナガン、あれは世界を越える事が出来る意志ある機動兵器であり、俺の半身と言えるな」

 

あまりにもオカルト、そして理解を超えた話だ。だがイングラムもギリアムも真顔で語っており、それが真実であると言う事を現していた。

 

「だがその不可逆の因果を越えて世界を修正することが出来る者もいる――それがゲッター線であり、ゲッターロボ。そして武蔵だ」

 

「え? オイラですか? でもそんなのオイラは知りませんよ?」

 

話を振られた武蔵は知らないと言わんばかりに手を振る。因果律の番人やギリアムの話もまるで理解出来ていないのに当事者にされては困ると武蔵は慌てるが、ギリアムとイングラムは小さく笑うだけだった。

 

「まだそこまで至っていないと言う事だ。だがゲッター線は世界を変える力――いや固定すると言ってもいい、例えるのならば満杯の箱を外側から紐で縛り、無理やり形を固定していると言っても良いな」

 

『……それがバランサーという事か、武蔵とゲッターがいれば異物が世界を超えてやって来ても世界は崩壊しないと言うことか?』

 

「大まかに言えばそうなります。ですがそれも絶対ではない、だからこそシャドウミラーの行なおうとしているアギュイエウス、リュケイオスの扉を開く事は阻止しなければならないのです。扉を開き、世界の因果が混ざれば何が起きるか判らない平行世界が1つになる、それによって存在が消え去る者、死んでしまうものもいるのだから……」

 

扉が開く事で消え去る者、死ぬものがいるかもしれないという言葉にヒュっと息を呑む音が響くのだった……。

 

 

 

 

世界を超える扉が開く事で存在が消える者、死ぬ者がいる。その言葉の意味を正しく理解出来ている者はこの場にはイングラムとギリアムの2人しかいなかっただろう。

 

『どういう意味なのですか? ギリアム少佐』

 

「A~Eの世界があると言っただろう? その世界にはその世界の歴史がある。そしてその歴史の中でAの世界では死んでいるが、Cの世界では生きている、その逆もあるが……世界を超える扉が開けばどちらかに塗りつぶされる。死者は生者となり、生者は死者となる――極論ではあるがその可能性は0ではない……ラミア、エキドナ、それにバリソン。お前達はこの世界の事を調べているだろう? お前達の知る中で自分達の世界と最も違う事を話してくれないか?」

 

ギリアムの言葉にラミア達は少し迷う素振りを見せたが、互いに頷きあい意を決した表情で口を開いた。

 

「……新西暦160年代から盛んになった、スペースコロニーの独立自治権獲得運動、NID4……それは地球政府とコロニーの間に大きな確執を生み出し、コロニーの台頭を恐れた地球連邦政府はNID4を弾圧……連邦とコロニーの対立は激化し、ついには機動兵器を使用したテロ事件が数多く発生……世界は混乱に包まれた。そして、ある事件によりコロニーの命運は大きく変わる事になる……」

 

「ありゃひでえ争いだったな……コロニーの住人は宇宙人だ、皆殺しだって政府の発表が合った時は俺も驚いたぜ」

 

あまりにも凄惨な過去、そしてコロニーの弾圧、コロニーの住人の抹殺――その2つのキーワードはエルザム達にある事件を連想させた。

 

『それはまさかエルピスで起きた?』

 

自分の妻を失った事件の事、そしてその首謀者の事を思い出したのか声が震えているエルザムの問いかけにラミア達は沈鬱そうに頷いた。

 

「はい。 地球至上主義のテロリストがスペースコロニー・エルピスへ潜入……内部で毒ガスを使用し、住人の大半を死に至らしめた事件です」

 

「馬鹿なッ! あの事件はそんな結末ではッ!」

 

「落ち着け、ライ。言っただろう? IFの世界、もしもの可能性の話だ」

 

思わず声を荒げたライにイングラムが落ち着けと言いながらその肩を掴んで椅子へと座らせる。

 

「コロニーは壊滅し、夥しい死者が出た。その中には……連邦宇宙軍総司令官……マイヤー・V・ブランシュタイン。そしてその長男エルザム、彼の妻だったカトライアに加え、次男ライディース。ブランシュタイン家を初めとするコロニーの名家と言われる一族の生まれは皆死んだ。それによってコロニーは独立する事が出来ず、連邦にしたがって家畜の様に生きるか、宇宙人としてコロニーに核ミサイルを打ち込まれて死ぬかの二択を強いられることになった」

 

『私だけではなく……ライディースまでも死んだというのか!?』

 

『なんという事だ……信じられん……』

 

「核ミサイルでコロニーを消し飛ばしたというのか……」

 

「信じらんねえ……って言えれば良かったんだけどな……一時期は確かにそういう動きがあったのも確かだな」

 

エルザムだけではなくライも死亡し、コロニーは独立出来ず服従か死かを迫られたと聞いて誰もが絶句した。

 

『バリソンだったな、生存者で連邦軍に属した者はいるのか?』

 

リーの問いかけにバリソンは自分達の世界とこの世界の違いと前置きした上でリーの問いかけに答えた。

 

「俺の知ってる限りではカーウァイ少将とテンペスト中佐、それとSRXチームのレオナ・ガーシュタイン中尉くらいだな」

 

「わ、私がSRXチームにッ!?」

 

「う、嘘だろ!? なんでレオナちゃんがッ!?」

 

レオナがSRXチームに所属していたというバリソンの言葉にレオナとタスクが声を上げた。

 

「そっちは驚くかもしれないが、俺だって驚いてるんだぜ? 鋼の戦神SRXは俺達の世界じゃ絶対の守護神だった。リュウセイ・ダテ、レオナ・ガーシュタイン、マイ・コバヤシとラトゥーニ・スゥボータ。俺達にとってSRXチームと言えばこの4人だ」

 

平行世界、異なる歴史を歩んだ世界という事は聞いていた、だがあまりにも自分達とは異なっていた。

 

「アヤは!? アヤはどうなったんだよ!」

 

「アヤ……? ああ、アヤ司令官か」

 

「司令官!? 私が!?」

 

バリソンの司令官という言葉にアヤが声を上げ、その声に視線を向けたバリソンは目を見開いた。

 

「は? 若ッ!? 嘘だろッ!? 俺の知ってるアヤ司令はもっとババ……ふぐっ!?」

 

婆と言い掛けたバリソンにアヤの投げたコップが直撃し、バリソンは泡を吹いてひっくり返った。

 

「……ラミアさん、エキドナさん? どういうことか説明してくれるかしら?」

 

圧倒的な威圧感を放つアヤにラミアは震え、シャインを思い出したエキドナは再び腰を抜かしていた。

 

「えっと……確かアヤ司令は念動力の過剰使用で年齢以上に老け込んでいたといたとか、アヤと名乗る複数の人物がいたともあって詳しい事は分かりませんが、少なくとも私は若いアヤ司令と年老いたアヤ司令の2人を知っています」

 

『アヤ大尉の名前を名乗って何がしたかったんでしょうか?』

 

『……分からんがある意味象徴だったのかもしれんな……』

 

複数人いるアヤの名を名乗る人物――武蔵の話によればラミア達の世界はインベーダーとアインストが闊歩し、人の拠り所が必要だったのかもしれない、それがアヤを名乗る複数の人物の正体だったかもしれないが……ラミア達は詳しい話を知らないので憶測へとなる。

 

『ふむ……では君達の世界の私はどうなっている? やはり死んでいるのかね?』

 

ビアンの問いかけにラミアが返事を返そうとしたが、エキドナがその手を掴んで止める。それは自分が説明すると言うエキドナの意思表示であり、ラミアはその意志を尊重しビアンの事についてはエキドナに任せる事にした。

 

「ビアン博士……はい、ビアン・ゾルダーク博士はDCを結成し、連邦に反対するコロニーの住人と共に戦争を起こし、連邦軍は苦戦の末

ビアン博士を打ち倒し勝利を収めました……」

 

『なるほど……違う事もあるが似たような出来事もあると言うことか……その後はどうなったのだね? エキドナ』

 

続きを聞かせてくれと促すビアンにエキドナは分かりましたと返事を返し、自分達の世界のビアンの話を続ける。

 

「ビアン博士がDC戦争中に開示した異星人の侵略の可能性、そしてその脅威を重く見た連邦軍は地球圏防衛の為、大幅な軍備増強を敢行しその結果、 多種多様な機動兵器が開発される事となりました」

 

多種多様な機動兵器――エキドナの言葉を聞いていた全員の脳裏を過ぎったのはPTでもAMでもない、シャドウミラーが運用する無数の機動兵器の姿だった。

 

「もしかしてあの紅い戦車とか、インベーダーに寄生されてたけど、ソウルゲインに似てるのも軍備増強計画で作られたのかしら? エキドナちゃん」

 

今まで戦ってきた正体不明の機動兵器が異なる世界の軍備増強で作られたのか? と問いかけるエクセレンにエキドナが視線を向け硬直した。

 

「エキドナちゃんって嫌?」

 

「あ、いえ、お好きに呼んでいただいて結構です。まずはZ&R社の ヴァルキュリアシリーズ、 FI社のアサルト・ドラグーン……イスルギ重工のリオンシリーズ、 テスラ研のEGシリーズのアースゲインとマオ社のパーソナルトルーパーなどになります」

 

ちゃん付けが嫌だった? と尋ねるエクセレンに我に帰ったエキドナはDC戦争後に機動兵器を開発したメーカーとその代表と言える機体を次々口にする。

 

「……あの髭男、テスラ研製だったのか……コウキ、アースゲインとかって開発されてるのか?」

 

『いや、俺の知る限りではない。プロジェクトTDとグルンガスト参式がテスラ研で今開発されている機体だな』

 

「やはり世界が違うというのはこういうところか……納得だな」

 

自分達の世界で開発されている機体、そして平行世界で開発されている機体――機動兵器というカテゴライズでは同じだが、その経緯は全く異なっている。

 

『今調べましたけど、Z&R社では機動兵器は開発されておらず、FI社はそもそも存在していませんね』

 

『倒産してどこかの会社に併合されたが兵器の開発からは手を引いているな』

 

レフィーナとリーが会社名で調べた結果を口にするが、そもそも機動兵器が開発されていない、あるいは会社自身が存在していないと教えられた。

 

「なるほどな……道理で機体データが無い訳だ。連邦軍が主力としたのはやはりゲシュペンスト・MK-Ⅲなのか?」

 

テツヤがそう問いかけるとエキドナとラミアは何とも言えない表情を浮かべる。

 

「違うのか? やはりリオンシリーズなのか?」

 

その反応を見て違ったのか? と問いかけるテツヤ。ラドラの開発したリバイブが無ければ、ゲシュペンスト・MK-ⅡもMK-Ⅲ製造されることが無かった。もしかするとラドラがおらず、製造されなかったのかとテツヤは感じたのだが、ラミアとエキドナの話は想像の斜め上を行っていた。

 

「この世界のゲシュペンスト・MK-Ⅲと私達の世界のゲシュペンスト・MK-Ⅲは全くの別物です」

 

「こちらの世界のゲシュペンスト・MK-Ⅲの方が私達の世界の物よりもっと強く、汎用性が秀でています」

 

同じ名称の兵器はあるが、全く性能が違うと言われ話を聞いていた全員が何故と首を傾げるのだった……。

 

 

 

エキドナのDコンのデータがブリーフィングルームのモニターに映し出され、そのカタログスペックを見ていたキョウスケ達はラミア達の微妙な表情の理由を知った。

 

『ラルトス。マオ社のスタッフだったお前に聞くが、これはどうだ?』

 

「んー弱いネ、マリーシショーもいうヨ。全然駄目ってネ」

 

「確かにな、やはり開発チームの違いか……」

 

同じゲシュペンスト・MK-Ⅲの名を関しているがカタログスペックの半分も届いていない。

 

『カイ少佐やギリアム少佐のゲシュペンスト・リバイブ、そしてフライトユニットの開発も無かったので、恐らくそれが原因かと思います』

 

「なるほど……リバイブとシグの開発データは大きかったからな、それがあると無しでは雲泥の差があるか……」

 

「納得したヨー」

 

開発者として何故ゲシュペンスト・MK-Ⅲにここまでの差があったのか、それがリバイブとシグの有無だと知りコウキとラルトスは納得したと揃って頷いた。

 

「じゃア。あの沢山のゲシュペンスト・MK-Ⅱはどれくらい製造されたのかナ?」

 

倒しても倒してもすぐ現れるテスラドライブ搭載型のゲシュペンスト・MK-Ⅱ。向こう側で作られたのは判ったが、何機ほど製造されたのか? とラルトスがラミアへと問いかける。

 

『……初期ロットで3000機。インベーダーとアインスト出現時に更に3000機製造されたと聞いています』

 

合わせて6000機も製造されていたと聞き誰もが驚きに声を上げた。

 

『キョウスケ、こっちのMK-Ⅱってどれくらい製造されてた?』

 

『……確かL5戦役の前に急ピッチで製造されて200機前後だった筈だが……』

 

「んー正しくは199、試作型で21で220機ヨ、キョウスケ中尉」

 

マオ社のスタッフであるラルトスが詳しい数を言うが、それでも6000機製造されていたラミア達の世界とは根本的な数が違いすぎていた。

 

「ラミア、お前達に聞きたいんだが、あの量産型SRXとやらは何時ごろ製造されたんだ?」

 

インベーダーに寄生され恐ろしい脅威として立ち塞がったメタルビースト・SRX。コウキが何時ごろ製造されたのか? と問いかける。

 

『確かにな、こっちだとSRXの量産なんて考えられる状況じゃないしな……』

 

『俺もそれは気になっていた。武蔵の話ではエアロゲイターではなく、先にインスペクターが出現したのだろう? 動力はトロニウムではないのか?』

 

『……普通に考えればそうよね』

 

SRXチームがずっと抱えていた疑問――どうやって量産型SRXを作ったのか、そしてメテオ3が落ちていないのにどうやってトロニウムを手にしたのか? という質問に話を聞いていたコウキは自分が聞こうとしていた事だったので好都合と言わんばかりの笑みを浮かべて手帳とペンを手に取った。何か今後の開発の手助けになるかと思ったからだ、だがラミアとエキドナの返答はコウキにとって想定外の物だった。

 

『データ上ではオリジナルのSRXの動力はトロニウムの筈です。ただ量産型SRXの動力は不明です』

 

「分からないだと? どういうことだ」

 

『分からないとしか言いようがないんです。ビアン博士の警告通り侵略活動を始めた異星人との戦いに投入する為に何度か開発・中断を繰り返し、最終的にはロールアウトし、人類の守護神、鋼の戦神と言われるほどの戦果を上げ続け、量産型SRXの製造にも踏み切りましたが、その動力は不明のままです……ただ、SRXの完成には虚空から現れた半壊したSRXが関係していると言う話です』

 

SRXの完成に関係している半壊したSRX――ラミアの言葉を聞いて、全員が弾かれたように武蔵へと視線を向けた。

 

『おう、多分旧西暦でオイラ達がぶっ飛ばしたメタルビースト・SRXがエキドナさん達の世界に流れ着いたんだと思う、確かそうですよね? イングラムさん』

 

『ああ、まず間違いない。卵が先か、鶏が先かという話になるが……ラミア達の世界は旧西暦で倒された量産型SRXを元にSRXが開発され、そしてSRXの完成によって量産型SRXが作られた。どちらが先か、あとかなんて事は関係のない世界なのだろうな……』

 

あまりにも複雑な因果関係であり、その全てを理解する事は出来ず憶測となるが少なくともラミア達の世界でSRXが誕生したのは、旧西暦での戦いが原因であると言うことは判った。

 

「ん? 待ってくれ、メタルビースト・SRXがラミアさん達の世界に来たんですよね?」

 

『あ、ああ。そうなると思うが……それがどうかしたのか? アラド』

 

「いや……インベーダーって少しでも増えるんですよね? 武蔵さん」

 

『まぁ基本的にはそうなると思うぜ?』

 

「……ラミアさん達の世界でインベーダーが出現したのって量産型SRXが原因なんじゃ」

 

アラドがそう尋ねるとアヤにコップを投げられて昏倒していたバリソンがゆっくりと身体を起こして違うと断言した。

 

『そいつは違うぞ、坊主。確かにメタルビースト・SRXにはインベーダーはいたかもしれねえ、だが俺達の世界でインベーダーが増えたのはイージスシステムの暴走で発生した亜空間からインベーダーが出現したのが原因だ』

 

イージスシステム――それはこの世界でも今開発されている地球を守る為のシステム。平行世界の地球が滅びる原因となったシステム……。

 

「レフィーナ艦長。イージス計画は」

 

「今も続行されている筈です」

 

『続行されているぞ、レフィーナ中佐。上層部の一部はそれだけが地球を守る術だと思っているからな……だがもし計画が実行される事になれば……』

 

『我々の世界もラミア達の世界のように再びインベーダーの侵略を受ける可能性があると言うことか……』

 

確かに平行世界と言う事で同じ事が起きるとは言い切れない、だがそれでも同じ様な出来事が起きているのも事実――イージス計画がラミア達の世界のように自分達の世界を滅ぼす切っ掛けになるかもしれない。その可能性を知りエクセレン達は言葉を失う事になったが、その中でキョウスケだけは違っていた。

 

『イージス計画の危険性は十分に分かった。だが俺にはそれよりも気になっている事がある』

 

『キョウスケ中尉……それはやはり』

 

キョウスケの真剣な表情と重い声色にラミアはキョウスケが何をしりたいと思っているのかそれを即座に感じ取った。

 

『ベーオウルフ……お前達の世界のアインストに寄生された俺が何をしたのか、そして何故アクセル達が俺を憎むのか、それを教えてくれラミア』

 

武蔵達から話は聞いている、だが武蔵達が知るのはアインストに寄生された後の自分の事ばかりだ。何があったのか、そして何故自分をここまで危惧するのかそれを教えてくれと言うキョウスケにラミアとエキドナは躊躇いを見せたがバリソンは違った。ラミアとエキドナはデータとしては知っているが、詳しくは知らず何があったのか全容を知るのはバリソンだけだった。

 

『長くなるぜ、ベーオウルフ』

 

当事者であり、そしてキョウスケを憎む者の1人――その瞳に込められた殺気と憎悪。それを感じ取った上でキョウスケはバリソンの瞳を見つめ返した。

 

『構わない教えてくれ、俺はそれを知らなければならない』

 

自分の本気の殺気を耐え、そして揺らぐ事のない強い決意を込めた視線を向けられバリソンは満足したように頷いた。

 

『OK、分かったぜ。ただし……後悔すんなよ』

 

ベーオウルフ、そしてウルブズ……武蔵達が現れる前の自分達の世界をバリソンはゆっくり話し始める。だがそれはキョウスケ達の予想を遥かに上回るおぞましい話なのだった……。

 

 

 

第155話 世界を流離う者 その2へ続く

 

 

 




私の頭脳ではイングラムとギリアムの話は無理でした……IQが足りなかったのかもしれないですが、これが限界でした。

平行世界の話はやはりあまりにも難しかったですね……要勉強です。次回は過去捏造のベーオウルブズの話を書いて見たいと思います。
それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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