第157話 紅の雨 その2
アルブレード・F型に乗ったマイが思念に導かれるまま海上を進む反応は大きく、それを頼りにアヤ達はアルブレード・F型とマイを追いかけていた。
「早過ぎるッ……アルブレードでここまでのスピードが出るなんて……ッ」
だがそのスピードは尋常ではないものであった。本来のアルブレード・F型の倍近い速度で進むその速度はRシリーズのスピードに合わせているとは言え、最新型のテスラドライブを搭載しているフェアリオンとビルトビルガーが辛うじてレーダーの範囲に収めるのがやっとな速度だった。
『駄目だ! このままアヤ大尉達に合わせてたらレーダーの範囲から飛び出しちまう! そうなったら追いきれないぞッ!』
『アヤ大尉、私とシャイン王女で先行しますッ!』
『このままでは完全に見失ってしまいますわッ!』
アラドの焦った声、そして通常のPTの倍近い出力をマークしているのを見てこのままではノイエDC……いや、百鬼帝国に見つかってしまうかもしれないと考えたラトゥーニとシャインが先行するとアヤに提案する。
「……2人ともマーカーを忘れないで、マイを見つけたらすぐに連絡を入れてすぐに合流するから」
『了解ッ! 俺が先行する! 2人はマーカーを忘れないでくれよッ!!』
『うん! 先に行きます』
『急ぎましょう!』
フェアリオンとビルガーが最大加速でアルブレード・F型を追って行き、その後をリュウセイ達SRXチームも追っていくのだが……事態は急速に悪化の一途を辿っていた……アヤ達が危惧したとおり異様なエネルギー反応を放っているアルブレード・F型は既に百鬼帝国に反応を感知されていたのだ。
「風蘭様。飛行物体の反応あり。 数は1、距離は5000です」
「ん? こんな所を飛んでるのが居るの? もー誰よ、その馬鹿はさ」
形だけ指揮官とされていた風蘭は艦長席チャイナドレスの裾が上がるのも気にせず胡坐をかき、頬杖を付いて興味無さそうに尋ねる。
それもその筈――アギラを戦闘に出せと言う月から朱王鬼の命令があり、単独行動だと何をしでかすか分からないという事で龍王鬼から見張り役としてキラーホエールに乗り込むように言われたので気分を完全に害していた。
「現在確認中ですが……連邦軍だと思われます。いかがなさいますか?」
「んー多分あれよね、武蔵を探しに行ってるって所かしらね……んー正直興味ないなあ……」
風蘭もまた龍王鬼配下であり戦闘狂ではあるが、人道を大事にする鬼だ。だからこそ武蔵を探しに行くと言うのならばそれを邪魔すると言うのは本意ではなかった。
「お前が興味がなかろうが、ワシは行くぞ」
「あ? 何言ってるんだよ? このくたばり損ないが、つうか何様だ。私達の話に勝手に入ってくるんじゃねえよ」
アギラが自分が行くと言い出すと風蘭は鋭い視線を向け、強烈な殺気をアギラに叩きつける。戦闘狂ではあるが、それ以外のときは飄々としている風蘭の明確な殺意に、強靭な肉体に加え若返ったとは言えただの科学者のアギラが耐えれる物ではなかった。
「うっ……」
顔を青褪めさせて蹲るアギラを見て、風蘭は馬鹿にするように鼻を鳴らした。
「この程度の殺気で尻込みしてるやつが偉そうにすんな、どうせ朱王鬼の玩具程度で生かされてるに過ぎないんだからさ」
風蘭の言葉にアギラは憎しみを込めた視線を向けるが、風蘭はそれすらも興味がないと言わんばかりに手を振る。
「とりあえず、追いかけて、ハガネとかのならそっちも来るだろうしね」
「ワシとアウ「おい、オウカをアウルム言ったら殺すぞ婆」……オウカとゼオラを連れてワシが先行してもいい」
オウカをアウルムと呼ぼうとしたアギラだったが、風蘭の殺気に呑まれてすぐに訂正し、改めて先行してもいいと告げる。
「てめえみてえな人間の屑を先に行かせるわけねぇだろ、ばーか。少なくともお前に単独行動なんてさせるかよ、出撃はさせてやるが私の指示には絶対従え、従わなかったら殺す。朱王鬼なんて関係ない、龍王鬼様に迷惑を掛けるかもしれないけど……私はあんたをいつでも殺せるんだからね」
有無を言わさない風蘭の迫力にアギラは引き攣った顔で頷くのがやっとであり、そんなアギラを見て風蘭はますます不機嫌そうに顔を歪める。
(自分よりも強い奴に媚を売って、弱い奴には強く出る。こういう屑はだいっきらいなんだよ……あーあ。なんで龍王鬼様達は私にこんな事を命じたんだろ……殺して良いって考えて良いのかな)
不満ばかりを溜める風蘭。だが龍王鬼と虎王鬼が風蘭にアギラの監視を命じたのは風を操る風神鬼ならばアギラが暴走しても取り押さえることが出来、風の結界で周りの被害を抑える事も出来る上にオウカとゼオラを守る事も出来ると言う強い信頼による人選だった。だがそれは風蘭にとってはアギラを殺して良いと許可されたと思わせるに十分な過去があった。
「とりあえず様子見、進路をそっちに。ハガネとかが来たら私達も出るよ、それとアギラも出撃する準備をしておくんだね。言っておくけど、あんたはただの一般兵、誰にも命令なんて出来ないんだからね。横柄な事をしてみな、キラーホエールの主砲であんたをぶっ殺してやる」
「ひっ……わ、分っておるわッ!!」
風蘭に凄まれたアギラは引き攣った悲鳴を上げて、逃げるようにブリッジを出て行き、その姿を見ていた風蘭は完全にアギラから興味を失ったのか、艦長席の背もたれに背中を預けながらモニターに視線を向けるのだった。
「ここは……そうか、お前に呼ばれたとおり私は来たぞッ! 姿を見せろッ!!」
呼び声に導かれるまま、半分意識を失った状態でマイはアルブレード・F型を操り、無人島の上空に差し掛かった所で意識がハッキリしたマイはすぐに状況を把握し姿を見せろと声を上げる。
『そんなに大声を出さなくても聞こえてる』
赤黒い念動力の波動によって海が弾け、そこから漆黒のPTが姿を見せる。その姿を確認したマイは恐怖で己の身体が震えるのを感じた……。
(なんだ……なんなんだ。この感覚は……)
言葉に出来ない恐怖、そして嫌悪感を漆黒のPT――ズィーリアスから感じ取っていた。初めて会った筈なのに、沸きあがる嫌悪感と殺意、そして恐怖……目の前にいるズィーリアスがとても恐ろしい物であると同時に、倒さなければならない存在だとマイは本能的に感じ取り、アルブレード・F型の右腕にコールドメタルソードを握らせる。
『話が早くて良いな。お前は殺す、お前の存在は私にとって脅威だからな』
その行動はレトゥーラにとって喜ばしい物であり、ズィーリアスの左腕にビームソードを握らせてアルブレード・F型の前にズィーリアスを移動させる。
「お前はなんだ、何故レビと共に私の中に現れる!」
『私が何者かなんて事は関係ないだろう……? ここで死ぬお前にはなッ!!』
予備動作も無しに突っ込んで来たズィーリアスの横薙ぎの一閃が簡単にアルブレード・F型の手にしていたコールドメタルソードを焼き切り、右拳がアルブレード・F型の頭部に叩き込まれる。
「うあッ!? く、くそッ!!」
凄まじい衝撃に苦悶の声を上げるマイはこのたった2回の攻撃でレトゥーラとズィーリアスが自分よりも強い事を感じ取り、再び斬り込んでくるズィーリアスの動きを止めようと頭部のバルカンで攻撃を仕掛ける。
『そんな豆鉄砲で私の動きを止めれると思うか?』
凄まじい勢いで乱射されたバルカンは通常のPT・AM戦ならば足止めとして十分な効果があっただろうが、ズィーリアスには何の妨害にもならず念動フィールドで全て弾かれ、一瞬でアルブレード・F型の前に移動しビームサーベルを振りかぶる。
「ッ!」
マイもまた強力な念動力者であり、T-LINKシステムを搭載していないアルブレード・F型で、一瞬だけ、瞬きほどの一瞬だけ念動フィールドを発生させビームサーベルの切っ先を逸らし、ビームライフルを構えて反撃の姿勢に入る。
『防ぐか、だが無意味だ』
「うっ……ぐあッ!?」
爪先から伸びた念動刃がビームライフルの銃口を切り飛ばし、一瞬遅れて爆発しその爆風によってアルブレード・F型の身体が揺らぐと突き出された右手から放たれた念動波がアルブレード・F型を完全に拘束する。
「う……う、うごけ……」
『無意味だといった筈だ。お前の念動力では私の念動力を打ち破る事は出来ない』
なんとかアルブレード・F型を動かそうとするマイだが、レトゥーラが無意味と言った通り、アルブレード・F型はピクリとも動かない。
『まずはお前だ。まだ力に覚醒していないうちにお前を殺す』
『お前が居なければ私はあの人の側に行けるんだ。だからお前は邪魔なんだ』
冷酷な女の声と恋焦がれるような粘着質な女の声が同時にマイの耳に響いた。
「……お前……お前らは……何なんだ……」
『感じ取ったか。だとしてもそれに何の意味もない』
『死んで、私の、私達の為にお前は死ね』
ズィーリアスの手首からビームエッジが展開され、それがアルブレード・F型のコックピットに突き刺さろうとした瞬間だった。ズィーリアスは弾かれたように後退した。アルブレード・F型とズィーリアスの間を高圧電流弾が通過し、雷のような轟音を響かせる。
『くそ外したッ! ラトゥーニ、シャイン王女頼んだッ!!』
アサルトスタンカノンを構えたビルトビルガーの背後からフェアリオンが同時に飛び出し、ブレイクフィールドを展開しズィーリアスへとソニックブレイカーを敢行する。
『行きますわよッ! ラトゥーニッ!』
『はい! シャイン王女ッ!!』
複雑な機動を描き突っ込んでくるフェアリオンには流石のレトゥーラも反応しきれず、フェアリオン・タイプGのソニックブレイカーで念動フィールドを砕かれ、追撃のフェアリオン・タイプSのソニックブレイカーに向かって両腕を突き出し念動フィールドを両手のみに展開しソニックブレイカーを真っ向から受け止める。金属が削れる凄まじい轟音が響き、徐々にフェアリオン・タイプSの動きが緩くなり、ソニックブレイカーの勢いは完全に殺され、ブレイクフィールドも消滅した。
『力づくで止められ……うぐッ!』
ソニックブレイカーを止められ、一瞬硬直したラトゥーニ。次の瞬間にはフェアリオンのEフィールドを突き破ったズィーリアスの右手がフェアリオンの首を掴んで締め上げていた。
『今日は良い日だ。お前まで私の前に来てくれるとはな……お前もここで死ね』
首を締め上げたままズィーリアスの掌にエネルギーが集まるのを見てアラドとシャインがラトゥーニの救出に動くが、ズィーリアスの展開している強固な念動フィールドに弾かれるだけで、その動きを止めるまでには至らない。
『まずは1人……消えろ』
ズィーリアスの手からエネルギー波が放たれようとした瞬間、紅い光がズィーリアスとフェアリオンを覆っていた念動フィールドを打ち砕き、ズィーリアスを弾き飛ばした。
「はぁ……はぁ……わ、私は死なない……ラトゥーニも殺させないッ!!!」
ブラストトンファーから稲妻のような紅い光を放つアルブレード・F型のコックピットからマイの強い叫びが響き渡るのだった……。
ブラストトンファーの一撃を喰らいズィーリアスが吹っ飛んだその隙にビルトビルガーとフェアリオン・タイプGがアルブレード・F型に庇われているフェアリオン・タイプSへと合流する。
『ラトゥーニ! 無事ですの!』
「シャイン王女……はい、マイが助けてくれたので……私は無事です、マイもありがとう」
後数秒遅ければフェアリオンもろとも脱出も出来ず死んでいたと分っていたラトゥーニはマイに感謝の言葉を告げる。
『私のせいだ、私が……あいつに誘き寄せられたから……ごめん』
震える声で謝罪の言葉を口にするマイ。単独行動で強力な敵に遭遇し、味方が全滅しかけたのだ。本来ならば許されることでは無いが、アラド達は違っていた。
『ビーストに呼ばれたって言うのか!? マイは大丈夫かっ!?』
『道理で様子がおかしかった訳ですわ……今は大丈夫なのですの?』
マイの身を案じ、大丈夫なのかと問いかける。マイは怒られる、あるいは怒鳴られると思っていたので少し困惑したが、小声で大丈夫と呟いた。
「それなら良かった……後はどうやってビーストを振り切るかだけど……」
『どう見ても逃がしてくれる雰囲気ではありませんわね』
赤黒い念動フィールドを展開しているズィーリアス。その胸部にはブラストトンファーによる打撃の跡が刻まれていたが、ラトゥーニ達の見ている前で盛り上がるように再生する。
『うげ……マジか……自己再生しやがった。バリアに超火力に再生能力ってどんな化け物だよ……』
すべての能力が高い水準で纏まっているズィーリアスに再生能力まで備わっていると知り、アラドが信じられないと様子で呻いた。
「マーカーは設置してきているけど……リュウセイ達がここに来るのは良くないと思う」
『私もそう思う……今まで言わなかったけど……あいつ夢の中で何度も何度も私の前に出て来てるんだ……リュウセイ、リュウセイって繰り返しいつも言ってて』
誰にも相談出来なかったと言うマイだが、毎日変な夢を見ると言えば精神疾患の何かと思われてしまう可能性が高い上にノイローゼと診察される可能性もあり、相談出来なかったと言うマイの気持ちもラトゥーニ達には良く分った。
『え、なにそれ……こわッ……ストーカー』
『本当ですわね、なんて粘着質なんですの』
シャインが物凄いブーメランな発言をしているが、だれもが自分の事は分からないし、何よりもこの場にはアラドしか男がいないので余計な事をアラドは口にしなかった、何故ならばアラドは空気の読める男だからだ。
「またなのね、あいつは前もリュウセイを奪って行こうとした……ッ」
しかし何よりも暗黒オーラ2割り増しのラトゥーニが怖くて口を閉じていたのだが……勿論それを指摘する者はいないし、アラドもそれを態々指摘しない。人の恋路を邪魔する物は馬に蹴られてなんとやらと言うが、ガチ目に制裁されるので本当に余計な事を言わないことをアラドは学習したのだ。
『お前達は邪魔だ。お前達が居ると私、私達はあの人の所に行けない』
『お前達が憎い、おぞましい、恐ろしい……ここで死ね、お前達を殺さないと私は私に、いや、私達になれない』
発している声は1つ……だがアラド達の耳には2人の女の声が響いていた。
『なんだこれ……声が2つ聞こえる……』
『気持ち悪いですわ……なんですの……この頭の中をかき回すような声は……』
精神を蝕む様々な情念が織り交じった声にアラドとシャインは不調を訴えるが、ラトゥーニとマイは違っていた。頭ではない、本能で理解しているのだ。レトゥーラがいれば自分達が死ぬしかなく、自分達が生きるのならばレトゥーラは死ななければならない……世界の残酷な法則に囚われている事を本能で理解していた。
『私はレトゥーラ。そしてこれはズィーリアス……お前達に死を与える物だ』
『お前達では守れない、私が、私達が守るんだ。もう奪わせない、殺させない』
圧倒的な敵意と守りたい、助けたいという相反する狂気を剥き出しにするレトゥーラを前にラトゥーニとマイは一歩も引かない。
「マイ。手伝ってくれるよね」
『うん、分ってる。リュウセイは私も助けたいから、私にリュウセイは必要なんだ』
「ちょっとそれ後で詳しく聞かせて? ねぇ? なんでリュウセイに……逃げるなあッ!!」
リュウセイが必要と言ったマイにラトゥーニが暗黒微笑を向け、マイの駆るアルブレード・F型からマイの返事は無く逃げ……いやズィーリアスへと向かって行き、フェアリオン・タイプSはその後を追ってズィーリアスへと向かって行くのだった……。
レトゥーラの精神はバラバラに切り刻まれて、それをパッチワークのように縫い合わせた物であり極めて不安定な物だった。だがそれは時間が経つに連れて安定し、そして1つの思いを芯にして切り刻まれた精神は再構築が果たされる。それが今のレトゥーラの状態だ、ラトゥーニとマイを殺そうとする狂気と、そしてリュウセイに対する執着にも似た恋慕の情――狂っている、狂っているがそれゆえにレトゥーラは正常だったのだ。
「温い、そんなものでッ!」
ソニックスレイヤーで切り込んでくるフェアリオン・タイプS。小柄な機体サイズと、小回りの良さを武器に舞の様な攻撃を繰り出してくるフェアリオンの攻撃をズィーリアスは両手に持ったコールドメタルナイフを駆使し、受け止め、受け流し、あるいは弾き返す。
「……っと」
完全に隙を突いて反撃をしたレトゥーラだったが、急にフェアリオン・タイプSの動きが変わり、左手に握っていたコールドメタルナイフを逆手に構えフェアリオン・タイプGの放ったロールキャノンの銃弾とビルトビルガーのアサルトカノンの弾頭をそちらに視線を向ける事無く切り裂いてみせる。
『これでも当たりませんの!?』
『予知したんじゃなかったのか!?』
動揺しているシャインとアラドの声を聞いて、自分が感じた違和感の正体をレトゥーラは理解した。
(なるほど、誰かが予測しているのか)
レトゥーラの動きを予測しその上で行動していると理解したレトゥーラはコールドメタルナイフを収納し、腰にマウントしてるマシンガンをズィーリアスの両手に握らせる。
「その動きのからくり……見破らせて貰う」
自分の考えが当たっているのか、それを確かめる為の攻撃――乱射されたマシンガンの銃弾は空中で静止し、赤黒い念動力に包まれる。
「ほら、避けれるのならば避けて見せてよ」
再びマシンガンを腰にマウントし、両手を広げるズィーリアス。その指が同時に曲げられると同時に空中で静止していた弾丸は凄まじい勢いで加速する。
『アラド旋回! ラトゥーニは上昇! マイは反転ッ!』
その動きを見てシャインの指示が幾つも飛び、その動きにそって動くフェアリオン達を見て、真っ先に沈めるべき敵をフェアリオン・タイプGと、シャインと判断したレトゥーラはその右手をフェアリオン・タイプGに向け……そしてその手を下ろした。
(必要以上に殺す必要はない。そうだよね?)
(ああ、私もそう思う)
明確な邪魔者だが……レトゥーラはシャインを殺す事を躊躇い、ビルトビルガーとフェアリオン・タイプGにのみ銃弾を集中させ、自身はアルブレード・F型とフェアリオン・Sへと攻撃を仕掛ける。
「邪魔なのはお前達だけだ。お前達だけはここで殺すッ!」
レトゥーラにあるのはリュウセイのそばに行きたい、そしてリュウセイを守りたいという願い。確かにベーオウルフ……キョウスケを殺す事も目的の1つではあるが……最も重要視しているのはリュウセイの側にいたいと言う物だ。この場にキョウスケがいないのならば、自分がリュウセイの側にいる為にラトゥーニとマイを殺す事にレトゥーラは何の躊躇いも迷いも無かった。
『ラトゥーニ! マイ! う、動けませんわッ!?』
『くそ、撃ち落してもすぐにまた動き出すのかよッ!?』
念動力で操られている銃弾はビルトビルガーとフェアリオン・タイプGの動きを完全に抑え込んでいた。念動力でコントロールされた銃弾はアラド達の動きを見て動き出し、念動力で覆われているからか破壊力もあり無理に突破すれば中破するのは目に見えており、迎撃しても再び動き出す事で完全にアラドとシャインの動きを封じ込んでいた。
『なんでお前はリュウセイに拘るの!』
「私にとって全てだからだ!」
ソニックスレイヤーとビームソードがぶつかり合い、出力に劣るフェアリオン・タイプSが一瞬の鍔迫り合いの後に海面に向かって弾き飛ばされる。
『レトゥーラ! お前の好きにはさせないッ!!』
背中にマウントしているブラストトンファーと両手に持ったM-950マシンガンによる射撃でズィーリアスのフェアリオン・タイプSへの追撃を防ごうとするマイ。だがレトゥーラはその動きを鼻で笑い、ビームソードを振るいビームカノンを消滅させ、M-950マシンガンの銃弾を念動フィールドで受け止める。
「そら返すぞ」
念動フィールドで受け止められた銃弾はその言葉の通り、全てアルブレード・F型に向かって跳ね返される。
『そんなッ!? うあッ!?』
銃弾が全て命中し、墜落するアルブレード・F型にトドメをさそうとビームライフルの銃口を向けようとしたズィーリアスだが、一瞬で飛行機形態へ変形し急上昇し、その下をソニックスレイヤーを突き出した姿勢のフェアリオン・タイプSが通過した。
『外したッ!?』
ステルスモードによる強襲を避けられたラトゥーニは驚きの声を上げる。そして上空を取ったズィーリアスは空中で獣形態へ変形し、空中を蹴るようにフェアリオン・タイプSに向かって急降下する。
『くっ!』
念動フィールドの上を走るズィーリアスの動きは空中にありながらも、地上を走るライオンやチーターのような猫科の肉食獣その物であり、近づけさせまいとボストークレーザーとロールキャノンによる攻撃を続けるフェアリオン・タイプSだが、その動きはフェアリオンを持ってしても追いきれず、背中のキャノン砲の銃口が先に地面に叩きつけられていたアルブレード・F型へと向けられる。
「2人ともここで死ね」
冷酷な声色で押さえ切れない歓喜の感情が込められた言葉を呟いたズィーリアスは念動フィールドを蹴りつけ、一気に加速する。
『『ラトゥーニッ!』』
機動兵器とは思えない俊敏な動きで飛びかかるその姿は正しく肉食獣その物であり、アラドとシャインのラトゥーニの身を案ずる悲鳴が上がるが、2人はズィーリアスの操る銃弾の檻から脱する事が出来ず、駄目元の攻撃もズィーリアスの念動フィールドを破る事は叶わない。
『避けられないッ!?』
『動け、頼む、動いてくれッ!』
完全に間合いを詰められ避けられないと悲鳴を上げるラトゥーニと、ダメージによって機体が思うように動かないアルブレード・F型からマイの焦りに満ちた声が響いた。
「死ねッ!」
だがレトゥーラはそれにうろたえる事無く、どこまでも冷静にズィーリアスを操り脱出装置など起動させないと言わんばかりにコックピットブロックだけを狙いフェアリオンへと飛びかかる。ズィーリアスの牙がフェアリオンへ突き刺さろうとした瞬間――翡翠色の閃光がフェアリオン・タイプSとズィーリアスの間を駆け抜けた。
「ッ!?」
その光を見たレトゥーラは動揺し、背中のキャノン砲の引き金を引いた。引いてしまった……放たれた念動フィールドを応用したエネルギー波は念動フィールドを展開し突っ込んで来たR-ウィングを掠め海中へと突き刺さり凄まじい爆発を引き起こす。
『ぐっ……くそッ! ラトゥーニとマイはやらせねえぞッ!』
もしも直撃していたらR-ウィングは撃墜され、リュウセイも死んでいた。その事を理解し絶望するレトゥーラに向かってリュウセイの怒りに満ちた怒声が放たれレトゥーラはその表情を苦悶の色へと染め上げる。
「あ……あああ……ああああああ――ッ!!」
悲しみに満ちた表情で悲鳴を上げたレトゥーラはズィーリアスを再び人型へと変形させ、フェアリオン・タイプSへとその視線を向けた。
『レトゥーラッ! なんでお前はこんな事をするんだッ! 俺を助けてくれたじゃねえか! なんでこんな事をするんだよッ!』
フェアリオン・タイプSを片手で抱き、アルブレード・F型を背中で庇いながらGリボルバーの銃口を向けてくるR-1……そしてその背後にリュウセイの姿を見て、レトゥーラの瞳から涙が一滴零れ落ちるのだった……。
ズィーリアスにGリボルバーを向けるR-1だが、そのコックピットのリュウセイの表情は曇っていた。レトゥーラとズィーリアスは2回に渡り助けてくれた。正体こそ不明だが、リュウセイは敵ではないと考えていた。それなのにラトゥーニとマイを殺そうとしていた……その事がどうしてもリュウセイは信じたくなかった。
『リュウセイ……ありがとう。助けてくれて』
「……おう。大丈夫か? ラトゥーニ」
勘違いであって欲しい、そう思ったリュウセイだったがラトゥーニの助けてくれてありがとうの言葉にレトゥーラが2人を殺そうとしていたと知り、その顔に悲しみの色を浮かべた。
『ごめん、リュウセイ……私はリュウセイを助けようとしたんだ……でも私には何も出来なかった。私は敵だったから……レビだったから……もう違うんだって……リュウセイ達の味方なんだって……言いたかったんだ。ごめんなさい……』
「謝るんじゃねぇ、ありがとよ、マイ。その気持ちだけで十分だ、誰にもお前が敵なんて言わせねぇ。マイ、お前は俺達の仲間だ」
レビの記憶を取り戻し、自分がレビだったことを思いだしてしまった。だけど自分はレビ・トーラーではなく、マイ・コバヤシなのだと行動で示そうとした。それを誰にも否定させないとリュウセイが強い口調で告げる。
『良いの……私……リュウセイやアヤ達を傷つけたのに……生きていて良い存在じゃないのに……仲間で良いの?』
『馬鹿な事を言わないでッ!』
マイの自分が生きていてもいいのかという言葉を遮ったのはストライクシールドでズィーリアスに攻撃を仕掛けながら姿を見せたR-3・パワードのアヤの一喝だった。
『お父様や私達は、貴女を死なせるつもりで目覚めさせたんじゃない……ッ! 貴女に幸せな思い出を作って欲しいから、生きていて良かったと思って欲しいから目覚めさせたのッ! 貴女に真実を教えなかった事は謝るわ……それでも私達はマイに幸せに生きて欲しいって願ってるの』
騙した事、そして真実を伝えなかった事……そしてPTに乗せて戦わせた事は許されないことだろう……それでもケンゾウとアヤがマイに幸せに生きて欲しいと思っているのは紛れもない事実だった。
『アヤ……ごめん……へんな事を言って……』
『良いの、私もごめんなさい。伝えるべき事を伝えなかったからそんなに悩んでしまったね……本当にごめんなさい』
互いに謝罪の言葉を口にし和解したアヤとマイ――だがそれを喜んでいる時間は今のリュウセイ達には無かった。
『皆様! 海中から何かが出てきますわ!』
シャインの警告から少し遅れて海面が爆発し、キラーホエールが浮上し機体を出撃させる。
『あれは……オウカ姉様ッ!』
『それにゼオラッ!! ゼオラだッ!』
ノイエDCのAM、そして風神鬼と数体の百鬼獣の中に紛れているラピエサージュ、そしてビルトファルケンの姿を見てラトゥーニとアラドがオウカとゼオラの名前を叫んだが、答えたのはオウカでもゼオラでもなかった……。
『お涙頂戴の和解劇はこれで終わりかの、ふぇふぇふぇ……くだらんやりとりじゃったわい』
人の神経を逆撫でするような粘着質な馬鹿にするような言葉がガーリオンをベースにしたであろう百鬼獣から発せられる。
『まさかこの声は……セトメ博士ッ!?』
『少し若いみたいに聞こえるけど……間違いねぇ、アギラの婆ッ!!!!』
新型の百鬼獣に乗るパイロットがアードラーと同じほど憎む相手であるアギラであると悟ったアラドの怒りに満ちた叫び声が海上へ木霊するのだった……。
第158話 紅の雨 その3へ続く
と言う訳で紅の幻想も難易度アップで、ノイエDCのAM。百鬼獣、百鬼獣版ガーリオン、ラピエサージュ、ファルケン、ズィーリアス(黄色ユニット)でお送りします。 あとレトゥーラは強烈な病み属性なので選択肢を間違えると、気迫・ど根性・鉄壁・魂・必中・閃き・覚醒・加速・集中を毎ターン使用してきて速ガメオベラになりますので行動注意となる敵なのであしからず、それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
-
サイドまたは視点は必要
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今のままで良い