第2話 平行世界
アイドネウス島の地下の隔離施設の中に上半身と下半身を切断されたメカザウルスとゲッターロボは格納されていた……地下特殊研究室のモニターの前に腰掛ける赤いコートに立派なひげ姿の壮年の男性……「ビアン・ゾルダーク」は深く溜息を吐いた。
「ありえない。こんな物はありえない……生物と無機物の融合で拒絶反応が起こらんなど、既存の技術では不可能だ」
研究者であり、優秀な学者であるビアンは冷凍保存されているメカザウルスを見て、信じられない。いや信じたくないと言う口調で告げるが、彼の優秀な頭脳は理解してしまっていた。このメカザウルスは後天的に生物と機械が融合したのではなく、最初から機械と生物として誕生しているのだと……それが1週間に及ぶビアンの調査結果から導き出された事実だった。
「……新たなる異星人の襲来とでも言うのか……」
EOTI機関の総帥にして、今地球圏で最も異星人の技術に精通していると言っても過言では無いビアンは困惑していた。EOTI機関が決起し、地球連邦に戦争を挑もうとしているその時に突如現れた機械と生物が融合した異形の怪物の襲来は優秀な頭脳を持つ、ビアンを持ってしても予想だにしない存在だった。
「だがありえないのはそれだけではない」
メカザウルスを倒したロボットを分析していたビアンはその顔を驚愕に歪めた。そのロボに使われている螺子やナット、電子基盤などは数百年も前の規格の物であり。既に新西暦186年の現代には存在しない物だったからだ……当然ビアンもその螺子やナット等が使われている年代の資料を調べたが、その年代にこんな巨大なロボットが存在したと言う記録は存在せず。更に言えば、このロボットは謎の放射線を動力源にして駆動する事と、一度起動してしまえば動力源を自ら増幅させて活動できる永久機関を内蔵していることまで判明した。だが彼を驚愕させたのはそこではない。この巨大なロボットは、今の技術でも到底実現し得ない幾つものオーバーテクノロジーが使用されていたのだ。例を挙げれば動力源を応用したであろうテスラ・ドライブとは異なる飛行技術。変形・合体能力を持ち3つの戦闘機により構成されている事や、装甲板は自動的に展開されるなど……例を挙げれば切がないほどに、それこそビアンですら理解出来ない幾つものオーバーテクノロジーが組み込まれていたのだ。ビアンもかつて夢見、そして実現しえなかった、合体ロボット。それが目の前に存在する事にビアンはその胸を高鳴らせるのと同時に、これはどこから来たのかと言う事ばかりを考えていた。そして当初の新しい異星人の襲来から、馬鹿らしいと言わざるを得なかった可能性の一つが、その脳裏に浮かんでいた……
「ありえない時代、謎の動力源を持つ巨大メカか……操縦者の彼に話を聞きたい物だ」
エルザムが救助した少年は、検査の結果日本人である事が判明した。だがその結果、いくつもの謎が新たに生まれていた、自身の鮮血に塗れていたのに、その傷は鮮血の量に対して明らかに軽症。身分証明書らしいものを所持しており、「早乙女研究所所属 巴武蔵」と言う情報から調査を行うも、早乙女研究所なる研究所は存在しなかった。また巴武蔵と言う名前から戸籍も調べた。巴と言う名字の家系は北海道に存在していたが、巴武蔵なる戸籍は存在しなかった。存在しないロボット、存在しない技術、存在しない人間……最初はエアロゲイターかと思っていた。だが調べれば調べるほどに彼が人間であると言う事が判明した。如何にビアンが天才だったとしても最早彼から話を聞かなければ何もわからないという状況になっていたのだ。
「私だ。どうした?」
考えに没頭するビアンの元に救急連絡が入る、受話器を手にしたビアンは即座に座っていた椅子から立ち上がる。電話先は医療室であり、1週間眠り続けていた少年が目を覚ましたと言う連絡が入った。ならばこれ以上1人で考えても仕方ないと判断し、話を聞く為に医療室へと足を向けるのだった。
「ここは何処なんだッ!?いや、それよりも恐竜帝国はッ!?日本はどうなったッ!?」
「お、落ち着くんだ!今ここの責任者が来る!だから落ち着くんだッ!?」
医療室から響く声は混乱しきっており、それを嗜める医者の声も困惑しきっていた。
(恐竜帝国……日本……やはりか)
僅かに聞こえてきた言葉にビアンは自らの考えが正しいことを理解した。彼とあのロボはあの機械と生物が融合した謎の生物と戦っていた。そしてあのロボットはその生物と戦う為に製造されたロボットであると言う考えは正しかったのだと確信した。
「責任者だとッ!?そんなのはどうでもいいッ!!日本はどうなったんだッ!?早乙女研究所はッ!?日本はどうなったんだッ!?」
「落ち着きたまえ。巴武蔵君」
混乱しきっている武蔵にビアンがそう声を掛ける。武蔵はその声に振り返り、襟首を掴んで前後に揺すっていた医者から手を放した。
「あんたがここの責任者かッ!?教えてくれッ!日本はどうなったッ!?恐竜帝国はッ!?俺を助けてくれたのはあんたなのかッ!?」
「君の疑問も困惑も最もだ。答えれる範囲で答えよう、すまないが。私と彼2人にして欲しい」
「し、しかし」
医者の顔を見れば、武蔵の事を狂っているといわんばかりであり、そんな狂人とビアンを2人きりにするべきではないと訴えていたが、ビアンの強い口調に逆らう事が出来ず医療室を出て行く。
「さてと、改めて名乗ろう。EOTI機関総帥「ビアン・ゾルダーク」だ。君は早乙女研究所のムサシ・トモエ君で良いのかな?」
「いや、俺は巴武蔵で、ムサシ・トモエなんて……ああ。でもあんたは外国人そうだし……それに話を聞いてくれそうだ」
今までヒートアップしていた武蔵だが、ビアンの瞳を見て安堵した。先程の医者は武蔵の話を聴いても狂っているとしか認識せず、それに合わせた対応しかしなかった。そんな態度を見れば嫌でも人は警戒心を抱き、声を荒げる。だがビアンの柔らかい口調と優しい瞳に武蔵は冷静さを取り戻す事が出来た。
「いくつか話を聞きたいのだが、恐竜帝国とは何かね?」
「……あんた大丈夫か?地球全体に宣戦布告した恐竜帝国を知らないなんて……どんな生活をしてたんだ?」
心配そうな武蔵にビアンは笑う。その言葉でビアンは武蔵の性質を理解していた……基本的に優しく、自分が困っていても人を心配出来る青年なのだと理解したのだ。
「ふむ。私は世捨て人のように研究をしていたのでな、今の情勢には詳しくない。もし宜しければ教えてくれないか?」
「早乙女博士もそう言えば、TVとか、今のニュースとか知らなかったな。判った、それなら答えるよ。恐竜帝国って言うのは、ゴールって言う爬虫人類とか言う奴らの親玉が治める国だ」
怪訝そうな顔をしながらも、早乙女博士と言う研究者を知るからか、研究に没頭していて地下にでもいたのかな? と思う武蔵。すこし不審には思ったが、武蔵は己の知る限りの事を口にする。
「爬虫人類とは?」
ビアンは武蔵の口から飛び出した信じられない言葉を尋ね返す。その言葉のニュアンスから爬虫類が人類と似た進化をしたと言う荒唐無稽な想像が脳裏を過ぎる。
「あーそれはオイラは良く判らんけど、早乙女博士が言うには恐竜の時代にいた人類とは別の進化をした……えーっとなんだっけ……そう。
そう!先住民族とかなんだとか。でも恐竜を滅ぼしたゲッター線に耐性がなくて地中に逃げたとか何とか……」
「ふむふむ、では爬虫人類と言うだけあり、姿は人間なのかな?」
「でっかい蜥蜴の化け物みたいだな。でも人っぽくも見えるし、喋るし、中々死なないしとんでもない化け物って思ってくれて良いぜ」
「なるほど。では君が倒してくれたあの恐竜は?」
「あれはメカザウルスって言う、恐竜帝国の兵器だ。倒しても頭をぶっ飛ばさないと中々死なない厄介な相手でなあ……と言うか、おっさん大丈夫か?恐竜帝国もメカザウルスも知らないってあんた何処の国……ってそうだそうだ!?オイラ今どこにいるんだ!?」
喜怒哀楽の激しい武蔵にビアンは穏やかに笑いながら、ベッドに座るように促す。
「では今度は私から答えよう。ここは南太平洋のマーケサズ諸島、南アメリカ付近に位置する島「アイドネウス島」だ」
「アイドネウス島? オイラがいたのはニューヨークの筈ッ!?」
「まぁ落ち着きたまえ、武蔵君。君の疑問はちゃんと答えるから」
ニューヨークにいた筈の武蔵が、全く知りもしない場所にいると言う事実に叫びながら立ち上がるが、ビアンは穏やかに笑いながら話を続ける。
「そしてここがどこかだが、君はメテオ3を知ってるかね?」
「メテオスリー?」
舌足らずの言葉にビアンは苦笑し、そして自分の考えが当たっていると言う確信を深める。子供でも知っているメテオ3を知らないなんてありえないからだ。そして武蔵からすれば恐竜帝国を知らないビアンがおかしい、2人の認識の違いを知れば知るほどにビアンは信じられないと思いつつも、自分の考えが正しいと言う確信を得る。
「アイドネウス島に落ちた隕石の事だ。そしてEOTI機関はその隕石を監視し、そして隕石に封じ込められていた技術を分析する組織だ」
「……嘘ついちゃ居なさそうだな。でもおかしいなあ、オイラあんまりTVとかニュースは見ないけど、流石に隕石が落ちたなんて話は聞いていると思うけど……それにリョウも隼人もそんな話はしてないし……」
腕を組みうんうん唸る姿にはどことなく愛嬌があり、思わずビアンは笑ってしまった。武蔵からすれば笑いごとでは無い自体なのだが……
「ってそうだ!?オイラゲッターを自爆させたんだ。なんでオイラは生きてるんだ、それに身体も全身焼け爛れてたはずなのに……」
混乱していた思考が落ち着いてくると武蔵は自分が覚えている最後の記憶を思い出していた。それは自分が炉心をオーバーヒートさせゲッターを自爆させたという記憶だ。自分はゲッターと共に死んだはずなのにどうして生きているのだと……
「うむ、もう少し落ち着いてから聞こうと思っていたが、ここまでしっかりと判断ができるなら問題あるまい。1週間前このアイドネウス島に二つの落下物があった。1つは君が倒したメカザウルス、そしてもう1つは君と・・・・・・ゲッターと言ったか?それだ。メカザウルスはドロドロに融解していたが、まだ生存していて、そしてゲッターは満身創痍と言う状況だったがメカザウルスを撃破し、機能を停止した。覚えているかね?」
「……確かやたら刺々しいロボットを助けたのはぼんやりと覚えてる」
武蔵の言葉にビアンは頷き、そして自身の通信端末を見せながら。
「今は新西暦186年。君の生きていた時代の数百年後の未来だと言ったら……どうする?」
「……冗談……じゃないよな?ビアンさん……」
反射的に冗談と口にした武蔵だが、ビアンの真剣な顔に段々と不安になる。
「辛いことだと思うが、付いて来たまえ。今君がどこにいるのか、そして君が乗ってきたゲッターの場所に案内しよう」
「……よろしくお願いします」
話だけでは信じられないだろうから、証拠を見せようと言うビアンと共に武蔵は医療室を後にするのだった……
最初は冗談、もしくは自分を騙していると考えていた武蔵だが、ビアンに地下研究室に案内される間に見たアイドネウス島の設備などを見て、嫌でもビアンが言っている事が真実だと悟った。
「ビアンさんよ。あの青いロボットはなんだ?」
「DCAM-004リオン。我々……EOTI機関が開発したロボットだよ。何か気になる事でも?」
窓の外を見ていた武蔵はううーむと唸りながら
「ロボットって言うか、戦闘機に手足をつけたみたいだなって……」
武蔵の言葉にビアンは目を丸くして、次の瞬間には大声で笑い始めた。
「えっと……変な事を言っちまったか?」
おどおどしている武蔵になおの事ビアンは笑い出す。EOTI機関も、部下も内心思っていた事であろうが、誰も言わなかったことを指摘され、それが面白くて仕方なかったのだ。
「くっくっく……いやいや、正しくその通りだよ。リオンは飛行型のロボットの試作と言っても良くてね。データ取りや、開発機の雛形とも言えるんだ」
「試作機って奴かぁ、そういやあ、早乙女研究所にもプロトゲッターとか沢山あったなあ」
懐かしむようにつぶやく武蔵。その発言を聞いて、ビアンは武蔵が所属していたのはEOTI機関に匹敵する技術力を持った研究機関だと予想をつける、だが勿論100~200年前にそんな研究所があったと言う記録は無い。抹消された記録と言う事も考えたが、ここまで痕跡を隠す事は可能かと問われれば、実質不可能だと答えるだろう。人の口に戸は立てられぬ、どれだけ厳重な情報規制を強いても、情報はどこかから漏れる物なのだから。
「あっ」
「どうかしたかね?」
突如声を上げた武蔵。武蔵は窓の外を指差す、その指の先にはテスト飛行を終えたガーリオンが降下して来る姿があった。
「あれってオイラがメカザウルスを倒した時。近くにいたロボットですよね?パイロットの人は大丈夫だったんですか?」
自分の方が大変だというのに、他人を心配する。その武蔵の性格にビアンは笑みを浮かべる、未知の動力で動くゲッターロボにも興味はあったが、好ましい性格の彼に、自分の思想に共感して欲しいとも思えたのだ。
「勿論無事だったとも、彼も君に感謝していた。ゲッターロボが保管されている格納庫に向かう途中にガーリオンの格納庫を通る、彼と話をして見るかね?」
「ご迷惑じゃないならお願いします。今更だけど、大丈夫だったかなって心配になってしまって」
あははっ、と誤魔化すように笑う武蔵を伴ってビアンはガーリオンの格納庫へと向かう。
「エルザム少佐。ガーリオンの調子はどうかね?」
「これはビアン総帥……君は……」
整備兵と話をしていたエルザムが振り返り、ビアンへと敬礼する。ビアンの隣にいた武蔵を見て穏やかに笑いながら
「あの時は助かったよ。私は、エルザム・V・ブランシュタインだ。よろしく」
「巴武蔵です。無事で良かった……あ、それとあの時は怒鳴ってしまってすいません、年上とは思ってなくて」
差し出された手を握り返しながら謝る武蔵にエルザムは気にしなくて良いよと笑う。それに安堵した武蔵はハンガーに立つガーリオンを見上げ
「いやあ。こんな小さいロボットで良くメカザウルスに勝負を挑んだなあ……」
「私もまさかあんな化け物が居るとは思って無かったよ。しかしガーリオンを小さいと言うか」
武蔵が操縦していたゲッターロボは約40m。それからすればAMの中では大型だが、18m弱のガーリオンは小さく見えるだろう。苦笑しているエルザムとビアンを見て、武蔵は困ったように笑いながら
「すんません。オイラおもったことを口にしちゃうタイプで、気を悪くしました?」
それだったらすいませんと謝る武蔵だが、ビアンにしろ、エルザムにしろ、ここまで素直な青年は久しぶりで2人して笑い声を上げる。
「武蔵君。ゲッターロボの格納庫にだが、エルザム少佐も同行させたいのだが良いかね?」
「へ?いやあ、ビアンさんに任せますよ。だってオイラ、ここじゃあ余所者みたいですし……」
自分に向けられる好奇の視線に気付いたのか武蔵はその巨体を縮ませながら呟く、ビアンもエルザムもこのままでは良くないと判断し、武蔵を連れてゲッターロボが格納されている地下の研究施設へ向かう。
「ああっ……ゲッター……お、オイラのげったーろぼがぁ……」
ボロボロのゲッターロボを見てへたり込む武蔵。ハンガーに吊るされ修理こそ施されているが、まだ腹部の風穴はそのままとなっているし、頭部の角も折れたままだ。だが千切れていた筈の左腕は骨組みだけとはいえ、胴体と合体寸前にまで修理されていた。
「すまないね、私も努力しているのだが……既に存在しない部品が多く使われているから思うように修理が進まないんだ」
ビアンは間違いなく天才だが、ロストテクノロジーの集大成とも言えるゲッターロボの修理は相当厳しい物があったようだ。
「いやいや、修理して貰えるだけでも嬉しいですよ……それでその……未来って本当なんですかね?」
自分を医療室から連れ出した時にビアンが言った言葉……自分が未来にいると言う言葉が本当なんですか?と改めて尋ねる武蔵。未来?と聞いて怪訝そうにするエルザムにビアンは軽く咳払いをしてから。
「便宜上未来と口にしたが、正確には君の知っている未来とは言いがたい。ここにいるエルザムは統合軍と言う宇宙の軍隊のエースなのだが、統合軍は知っているかな?」
「う、宇宙っ!?いやぁ……早乙女博士は宇宙開発は始まったばっかりって言ってたし」
「ふむ、ではこれを見てくれるかな?」
端末を操作し、浮かんでいるコロニーを見せると武蔵は目を見開き絶句する。予想を超える存在に脳がオーバーヒートしてしまったのだろう。
「え、これ……え?……宇宙船?」
「いや、これはコロニーと言って、宇宙に浮かぶ街の様な物だよ」
エルザムの簡単な説明に武蔵はマジかと呟く。武蔵の知識の中では宇宙開発は始まったばかりでこんな物は存在しないのだから無理も無いだろう。
「そして君の言う、恐竜帝国もメカザウルスも存在した記録は無い。だが君が言うには、恐竜帝国もメカザウルスも存在し、地球全体に宣戦布告をしたと言うのだから、歴史に記録が無いのもまたありえない話だ」
「お、オイラは嘘なんて言ってないぞ!?」
先ほどの医者の目を思い出したのか、嘘なんて言ってないと叫ぶ武蔵。
「大丈夫だよ。私は君の話を信じている、それにメカザウルスと言う動かぬ証拠があるんだ。信じるしかあるまい」
ゲッターロボ、そしてメカザウルスと言う証拠があるのだから武蔵の言っている事が嘘では無い、だから武蔵は嘘は言っていない。だがビアンたちも嘘は言っていない。そこから導き出される結論は1つ。
「武蔵君。君は平行世界へと迷い込んでしまったのだよ」
その結論にエルザムが目を見開く。武蔵は理解出来ない様子で一瞬動きを止めた後、ビアンへと尋ね返す。
「へ、へいこー世界?」
訳が判らないという顔をする武蔵にビアンは机の上のマグネットを3つとり、それを紙の上へと並べる。
「君がいたのが恐竜帝国と言う敵対存在が存在した世界……これをA世界とする。そして私達の知るメテオ3が落ちてきた世界をB世界、そして恐竜帝国も、メテオ3も存在しない世界をC世界と仮定しよう」
ここまでは良いかね?と尋ねるビアンだが、武蔵は良く判ってないような表情で頷く。
「A・B・C世界も途中までは同じ歴史を歩んでいたが、何かの出来事によって歴史が分岐した」
マジックで途中までラインを引くが、途中で枝分かれしそれぞれのマグネットへと向けられる。
「つまり武蔵君の世界では恐竜帝国が歴史の分岐点となり、私達の世界ではメテオ1がその分岐点と言う事ですね?ビアン総帥」
「え?判る……んですか?エルザムさん」
自分と違い素早く理解するエルザムに驚く武蔵だが、まだ17歳の学生だった武蔵と、現在29歳であり、幼い頃から名家としての英才教育を受け、更にはIQも高いエルザムでは理解度が違って当然だ。
「私とて完全に把握しているわけでは無いがね。大きな転換期があり、歴史が分裂したと言うのは分かる。信じがたい話だが……」
「うむ。私とて研究者としてありえないと考えるが、ここまで証拠があれば信じるしかない。武蔵君……君は恐らく、ゲッターを自爆させた時に、世界の枠組みを超えてしまったのだよ」
「……ビアンさん、エルザムさん……お、オイラ……これからどうすれば良いんですか?」
泣きそうな武蔵の肩に手をおいてエルザムは穏やかに笑う。
「君も急にこんな話を聞けば混乱するのは無理も無い、私達だって混乱しているのだからね」
「うむ、私達も平行世界からの住人との遭遇なんて予想にもしていなかった。だからどうすれば良いかなんて言えないし、帰る場所を失った君に道を示すことも出来ない、だが……君に何かしろと命令することもしない、君が何をしたいか決めてくれればいい。それまではここで過ごしてくれれば良い、望むのならばEOTI機関に所属することも出来るし、日本に送り届ける事も出来る。今は体を休め、そして時間を見てこの世界の歴史を学び、そしてどうするか決めてくれればいい。無理強いはしない」
柔らかいビアンの言葉とエルザムの言葉に武蔵はほっとしたような表情を浮かべる。だがそれと同時に部屋の中に響くような大きな腹の音がする。
「あ、あはは……すんません、真剣な話をしてるのに」
「は、ははは。いやいや、1週間も眠っていたんだ。空腹なのも当然だよ、そうだ。助けてくれたお礼に食事をご馳走しよう。武蔵君、君は何が好きなのかな?」
「え、えーっとじゃあ……カツ丼、カツ丼を食べたいです」
「良し判った。ビアン総帥、彼がどうするか決めるまで彼は私の部隊で預かります」
「ああ。そうしてくれると助かる」
EOTI機関も一枚岩ではない、だがビアンの思想を理解し、共感しているエルザムになら預けられると判断したビアンは、武蔵をエルザムに預けることに決めた。エルザムと共に出て行く武蔵を見送ったビアンは小さく溜息を吐く。
「決起の2週間前に異世界からの来訪者か……さて、どうした物か……」
武蔵とゲッターが現れたのは、ゲストと地球連邦による会談の2週間前……ビアンの語った大きな歴史の分岐点はもうすぐそこまで迫っているのだった……
第3話 巴武蔵へ続く
第三者視点で頑張ってきましたが、厳しくなって来た様な気がします。もしかすると1者視点になるかもしれません、元々1者視点で書いているので、3者視点は難しいですね。でも頑張ってみようと思います、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い