進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第28話 アイドネウス島の決戦 その5

第28話 アイドネウス島の決戦 その5

 

ギガザウルス・ゴールの大爆発により、破壊されつくしたアイドネウス島の中心でゲッターロボとヴァルシオンが向かい合う。ギガザウルス・ゴールとの戦いで半壊した者同士……だがヴァルシオン……いや、ビアンの放つ闘志は武蔵をしても飲み込むほどに凄まじい物だった……

 

「どうしても戦わなきゃいけないのかい?ビアンさん」

 

「そうだ……私は戦争を始めた、その責任を果たさなければならない」

 

静かな声だが何もかもを飲み込み圧倒的な威圧感があった。ディバインアームの切っ先を向けられてもなお、武蔵には迷いがあった。

 

「責任……責任か、死んじまった人の想いか……」

 

「そうだ、私が始め、私の願いに共感し、そして戦い死んでいった者達……それらの犠牲を無駄にすることは出来ないのだッ!!」

 

振るわれたディバインアームが煙を巻き上げる。その姿を見て武蔵もゲッターロボにトマホークを握らせる。

 

「……恐竜帝国と戦うために戦争を始めたって言うのは無理なんだな」

 

「無理だな。日本にも恐竜帝国が現れた、だがそれは……私が作り出し、日本に向けて出撃させた物と政府は発表した」

 

ビアンから告げられた言葉は武蔵にも、ハガネのクルーにも凄まじい衝撃を与える。日本を、世界を護る為に戦ったDCを悪として槍玉に上げられたビアン……それは明確な敵を用意することで自分達への批判を遠ざけようとする政治家達の策略だった。

 

「……なんでそこまで政府はあんたを執拗に眼の敵にする」

 

「そうだな。私も知りたい所だよ……だが1つ言えることがある、政府は……ゲッターロボを、ゲッター線を知っている。そして武蔵君……君を排除しようとしている」

 

「なんだって!?」

 

ビアンから告げられた言葉に武蔵が声を荒げる。なんで新西暦の政治家が自分を眼の敵にするのか、そして排除されなければならないのか……それにどうしてゲッターロボを知っているのか……ビアンから告げられた言葉に武蔵は動揺する、

 

「それは私も判らない、だが人類を見捨ててまで自分達が生き残る事を考える役人達だ。自分達が助かる為の条件としてと言うのは考えられるだろう」

 

地球を捨て、其処に住む人類を捨て自分達が逃げる事だけを考える役人。淡々とした口調だが、その口調に激しい怒りが込められているのが判り、その通信を聞いていた全員が思わず息を呑んだ……

 

「その役人達はどこに逃げるつもりなんだ」

 

「さあな。そこまでは答えるつもりはない……知りたければ……私を倒すことだッ!!!」

 

地面を踏みしめ駆け出してくるヴァルシオン、振り下ろされたディバインアームをゲッタートマホークで受け止める。

 

「どうして、そこでオイラとビアンさんが戦う事になるんだッ!」

 

「武蔵君、人と言うのはどうしようもなく、愚かでそして醜く、邪悪だ。今まで君が戦ってきた恐竜帝国とは違う、ありもしない罪を捏造

され、悪人とされる。そうなった時……君に何が出来る?」

 

ビアンの言葉に武蔵は黙り込む、人間と戦うことなんて武蔵は考えても居なかった。今までDCと戦うこともあったが、その全てを殺すまいと武蔵はしてきた。それは分かり合えると、そう思っていたから……だがそれはありえないとビアンは断言する。

 

「君の優しさは美徳ではある。だが、それを利用する悪辣な人間が居ると知れッ!!」

 

「ぐあっ!!」

 

ヴァルシオンの前蹴りが胴体に叩き込まれ、ゲッターは大きく吹き飛ぶ。

 

「軍人は上の命令には逆らえぬ。ハガネとて、君の敵として立ちふさがる事もあるだろう! 君はこれから1人で世界と戦わねばならぬッ!!」

 

横なぎのディバインアームがゲッターロボを切り裂き、その身体を大きく吹き飛ばす

 

「それが出来なければ、君も私と同じとなるだけだ! 世界を、地球を護ろうとし、戦争を起こすという道しか残されなかった私と同じになるだろう!!」

 

ビアンの言葉は武蔵だけではない、ハガネのクルーにも向けられた言葉だった。軍人である以上どうしても逆らえぬものがある、もしもビアンの言葉の通りならば……ハガネにゲッターロボの破壊命令が出ることも不思議ではない

 

「立て! 立ち上がれッ!! この老いぼれ1人と戦えぬようならば、武蔵君。君はこれから生き残る事など出来はしないッ!!!」

 

ビアンが武蔵に戦いを挑んだ理由……それはこれから孤立無援の戦いに挑まなければならない、武蔵に対する警告であり、そして思いやりでもあった。ゲッターロボはトマホークを支えにして立ち上がる

 

「……判ったよ。ああ、よーくっ判った」

 

「そうか、ならば来いッ!!」

 

「あんたが悲観的で、未来に希望を持てないって言うのはよーっく判った!! ならオイラが教えてやるッ!! そんなに人間は愚かじゃないって事をなぁッ!!!」

 

マントを翻し天を舞うゲッターロボとそれを追って宙を舞うヴァルシオン。ギガザウルス・ゴールとの戦い以上に武蔵とビアンの間に割り込める者は誰1人存在しないのだった……

 

 

 

 

2つの赤がアイドネウス島の上空を何度も何度も交差し、火花を散らし激しい金属音をかき鳴らす。今まで抜群のコンビネーションで恐竜帝国と戦っていた2人が戦う……その光景をDCも、そしてハガネもただ見ていることしか出来なかった。

 

「ククク……2人の邪魔をするのならば、その前にこの私を倒していただきましょうか」

 

最初はDCの兵士も、リュウセイ達も武蔵とビアンを止めようとした。2人の機体は大破こそしていないが、大破の一歩手前と言う状態であり、ただ立っているだけでも火花を散らすほどに損傷していた。それなのに戦うなんて正気ではない、見ている全員がそう思った。ビアンの告げた言葉、それはダイテツを初めとした、ハガネのクルーに衝撃を与えた。その一瞬の動揺の隙にグランゾンが湾曲フィールドと重力を駆使し、ビアンと武蔵の戦う場所を完全に封鎖し、そしてその前に立ちふさがった。今の疲弊した状況でグランゾンと戦えるわけが無く、何度も何度もぶつかり合うゲッターとヴァルシオンをただ見ていることしか出来ない

 

「教官、ビアンの話は本当なのか」

 

ハガネの前で膝を付いていたR-1のコックピットからリュウセイがそうイングラムに問いかける。武蔵は一緒に戦ってきてくれた、それなのに、DCの脅威が去れば武蔵が敵として命令されるかもしれない。そう聞いてリュウセイは冷静ではいられなかった……

 

「判らない、だが……その可能性はゼロではない」

 

執拗にメカザウルスの存在を認めなかった政府、DCとの和平要請を拒否し続けたこと……ビアンの話を嘘と断言したくとも、今までの上層部の動きには不信感がある。

 

「いや、でもよ、武蔵は何も悪いことなんてしてないだろ!? おかしいじゃないか」

 

「リュウセイ……軍には知られてはいけないことがある」

 

ビアンの言葉は嘘だと言って欲しかったリュウセイだが、誰もリュウセイの意見に同意しない。全員が全員、ビアンの言葉が嘘であると断言出来るほど上層部を信用していなかった

 

「な、なんだよ、それ……どうなってるんだよ。軍って奴はッ!」

 

「……リュウセイ、気持ちは判る。だが命令されても、最終的に行動するのは俺達だ」

 

ライの遠まわしの命令を拒否するという言葉に僅かにリュウセイの瞳に希望が宿る。今はまだ……もしもと言う話だ。それが真実になって欲しくないと思うのはライも同じ気持ちだった……

 

「シュウ、なんでお前はそんな事をする」

 

「ククク、珍しいですね。マサキ、貴方が私と会話をしようとするとは」

 

茶化すんじゃねえとマサキが怒鳴る。するとグランゾンはやれやれと肩を竦めるような素振りを見せた

 

「良いですか? 武蔵にしろ、ビアン総帥にしろ、貴方達が介入するとどちらにとっても厄介な事になるのです」

 

そんなことも判らないのですか?と挑発するように告げるシュウ。だが、それは紛れも無い事実。恐竜帝国と言う脅威があったからこそ、DCと共闘したハガネ。だがそれは軍上層部からすれば命令違反だ、そしてビアンと武蔵の戦いを止める為に割り込んだとしても、それはこの戦いが終わった後に双方の立ち位置を悪い物にするだけだ

 

「判ったのなら、黙って見ていればいいのですよ」

 

「……シュウ・シラカワ。お前はビアンと武蔵君が戦っているのを見ても何も感じないのか?」

 

ダイテツからの言葉にシュウはクククッと笑いながら、グランゾンの顔を上空に向ける。

 

「ビアン総帥は決死の覚悟で戦っていますが、武蔵がそう思い通りになるとは思うべきではないのですよ」

 

ビアンの望む結末はありえない、ゲッターロボの動きを見てシュウはそれを確信するのだった……

 

 

 

 

ディバインアームの攻撃をゲッタートマホークで受け止めきれず、肩に命中しそのままアイドネウス島に叩きつけられる。ギガザウルスゴールを倒すまでは最大出力を示していたゲージは徐々に減り始め、今では満タンの7割ほどにまで低下している。

 

(くそッ! この調子だとどこまで出力が下がるか判らんぞッ!?)

 

オーバーフローが原因か、それとも恐竜帝国が消えたことが原因なのか、それは判らないがゲッターは徐々に弱体化を始めていた。

 

「どうした武蔵ッ! そんな様ではお前は死ぬぞッ!!」

 

「ぐっ!!」

 

受け止めるのは無理と判断し、トマホークでディバインアームの側面を叩き軌道を逸らすと同時に飛びのいて距離を取る。長い戦いの間に戦場は上空から地上へと変わっていた……変わったのは最初は互角だったのに、徐々にゲッターが押され始めていると言う事だろう

 

「クロスマッシャー発射ッ!!」

 

手首からではなく、背中に背負ったユニット全てから打ち出される3色のエネルギーの雨。それを見た瞬間、武蔵はペダルを踏み込み、レバーを力強く引いた。ゲッター1の合体を解除し、最大速度でクロスマッシャーを回避に入る武蔵。

 

「逃がすかぁッ!!!」

 

「しまっ!? くそったれッ!!!」

 

だがビアンはその隙を見逃さない。いや、分離させる為に放ったクロスマッシャーだ、オープンゲットをして回避するのはビアンの予想の範疇に過ぎない。投げ付けられ高速で回転しながら迫るディバインアームとチャフグレネードが誘導操縦で動きの鈍いイーグルとジャガーを襲う。衝撃で誘導操縦が解除され、コントロールを失うイーグルとジャガーに舌打ちし、ベアー号を急加速させる

 

「うおおおおおッ!!!」

 

螺旋回転しながら墜落していくジャガー号に凄まじい勢いで追突し、そのままの勢いでイーグル号とも強引に合体する。だが速度の出しすぎでそのまま飛翔することは叶わず、合体した状態でアイドネウス島の上を削りながら滑っていくゲッター1

 

「ぐ、ぐうう……や、やるな。ビアンさん」

 

「当たり前だ。ゲッターの戦闘データを何回解析したと思っている」

 

武蔵の賞賛の言葉にビアンは誇らしげな様子で返事を返す。今までのダメージで湾曲フィールドを張る能力を失い、半壊しているにも関わらずゲッターを圧倒する……その姿は正に究極ロボの名に相応しい能力だろう。

 

「武蔵君。言葉で私を止められると思わないことだ……ここで私とヴァルシオンを打倒しなければ、己が死ぬという事を覚悟するが良い」

 

「……」

 

ビアンの言葉に武蔵は返事を返すことが出来なかった。ここまで追い詰められてもなお、武蔵はビアンを説得できると思っていた。いや、恩人であるビアンに攻撃する事を躊躇い、攻撃をするチャンスを何回も逃していた。

 

「私は君を倒すつもりで攻撃している。躊躇えば、死ぬのは君だッ!!」

 

自分で投げ付けたディバインアームを手に、再びゲッターに向かってくるヴァルシオン。地響きを立てて襲ってくるその姿は紛れも無い恐怖を与えるだろう、今までの武蔵ならばそれを防ぐ事を考えた。だが今は違っていた

 

「ゲッタァアアマシンガンッ!!!」

 

「ぬっ!」

 

今まで使う事の無かったゲッターマシンガンの弾雨が突進してきたヴァルシオンの足を止める。ディバインアームを盾にして直撃を防いだヴァルシオンだが、次の瞬間ヴァルシオンのモニターが真紅に染まる

 

「な、なんだ!? 何がッ!「ウオオオッ!!!」 がはっ!?」

 

武蔵の雄叫びが聞こえたと思った瞬間。凄まじい衝撃が横から襲ってきて、ヴァルシオンは滑走路を削りながら滑る

 

「なるほど、そういうことか」

 

一瞬ヴァルシオンの視界を遮ったのはゲッター1の赤いマントだ。マントを分離させ、それをヴァルシオンの顔に一瞬の内に巻き付けてビアンの視界を遮ったのだ。

 

「行くぞぉッ!!!」

 

砲身が折れたゲッターマシンガンをヴァルシオンに投げ付けると同時に回収したマントを身体に巻きつけるゲッター1。

 

「ゲッタァアアーーービィィィムッ!!!」

 

マントで自身を覆ったまま、ヴァルシオンへと突撃するゲッター1。マントの隙間から放たれるゲッタービームが容赦なく、ヴァルシオンの強固な装甲を破壊していく

 

「まだだ! まだ終わらんッ!!」

 

「ぐっがぁあ!?」

 

突っ込んできたゲッターをバッティングの要領でディバインアームで打ち返す。突進した勢いも相まってゲッター1の頭部はひしゃげ、ジャガー号に深い傷を残しゲッター1は背中から格納庫に叩きつけられ、その動きを止める。

 

「……どうやらこの勝負……私の勝ちのようだ!」

 

ヴァルシオンの4つのカメラアイが光り、全身から凄まじい緑の閃光を放つ。それは紛れも無くゲッター線の輝き……

 

「に、逃げろ武蔵ーッ! 立て! たって逃げろぉッ!!!」

 

黙って見ていられなくなったリュウセイがそう叫ぶがゲッターはピクリとも動かず、ヴァルシオンの放ったゲッター線が混じった重力波に囚われ上空へと巻き上げられる。

 

「これで終わりだッ! 受けろ! メガ……「オオオオオオオーーーーーーーッ!!!」な、何だと!?」

 

完全に重力に囚われていた筈のゲッターの全身がヴァルシオンを上回る閃光に包まれる。武蔵もビアンも知る良しもないが、ヴァルシオンの攻撃に含まれているゲッター線、攻撃を受ける度にゲッター線をゲッターロボは蓄えていた。そして今メガグラビトンウェーブに含まれるゲッター線によってゲッターロボのゲッター線量は最大値に到達したのだ

 

「オープンゲーットッ!!!」

 

ゲッター1が分離し、ゲットマシン形態になるがまだヴァルシオンの重力操作は続いており、機体が重力に囚われる……筈だった。

 

「いっけええええええッ!!!」

 

一際強い閃光をベアー号が放った瞬間。ゲットマシンは重力波から脱出し、凄まじい速度でヴァルシオンに迫る

 

「おおおおおおおおッ!!!」

 

「ぬっぐっ! ぐううううッ!!!」

 

3機のゲットマシンから放たれるマシンガンの嵐。それは本来なら恐れるに足りない攻撃だが、マシンガンの銃弾1発1発にゲッター線の証である緑の光が付与されていることもあり、マシンガンの弾雨はヴァルシオンの装甲を容赦なく削る

 

「チェンジッ!! ゲッタァアアアッ! ワンッ!!! うおおおおおおッ!!!!」

 

空中でゲッター1にチェンジすると同時に両肩からゲッタートマホークを取り出し、ヴァルシオンへと投げ付ける。トマホークも緑の光に包まれ、ヴァルシオンの強固な装甲を豆腐のように切り裂き、基地にぶつかっても直進をやめず、グランゾンが展開している湾曲フィールドをつきぬけ、海面を切り裂きながら水平線の彼方へと消えていく

 

「オープンゲットッ!! チェンジッ!!!」

 

トマホークの投擲と同時に再びゲッターが爆ぜ、凄まじい勢いで急降下しヴァルシオンの背後を取る

 

「馬鹿な!? これほどの速度の合体が出来る訳がッ!!「ゲッタァアアッ!! ツウッ!!!!」 ぐおッ!? があああああッ!?」

 

背後に回りこむと同時にゲッター2に合体し、凄まじい勢いでヴァルシオンの背中に飛び蹴りを叩き込む。その衝撃でヴァルシオンが前のめりになるが、ゲッター2の攻撃はそれだけでは終わらない

 

「ドリルハリケェェェンッ!!!!」

 

着地同時に左腕をヴァルシオンの背中に突き立て高速で回転させる。それは勢いをどんどん増して行き、凄まじい暴風となり信じられない事にヴァルシオンの巨体を巻き上げ上空へと跳ね飛ばす

 

「オープンゲットッ!!!」

 

竜巻に絡め取られ、天を舞うヴァルシオンを追いかけて……いや、追い抜いてゲットマシンが空を飛ぶ。そしてヴァルシオンを追い抜き、上空を取った瞬間武蔵の雄叫びが響き渡る

 

「チェンジッ!!! ゲッタァアアアーーースリィィィッ!!!」

 

身動きの取れないはずの上空でゲッター3へとチェンジし、その伸縮自在の腕をドリルハリケーンによって生まれた竜巻の中に突っ込む

 

「大ッ! 雪ッ!! 山ッ!!!!!!」

 

「ぐっ……こ、ここまでかッ……」

 

「おろぉぉぉーーーしッ!!!!」

 

巻き上げられた以上のスピードで全身を回転させられたヴァルシオンの中でビアンは意識を失い、ヴァルシオンは高速で回転しながら頭からアイドネウス島の地表に叩き付けられ、上半身を完全に潰され爆発の中へ消えて行くのだった……

 

「……」

 

そして爆発炎上するヴァルシオンの姿をゲッター3からゲッター1にチェンジしたゲッターロボが悲しそうに見つめているのだった……

 

 

 

 

ヴァルシオンがアイドネウス島に叩き付けられる数分前。地下ドッグでは……

 

「どうしたんじゃ、コーウェン」

 

自分を助けに来た学会の顔見知りが立ち止まった事に不信感を抱き、アードラーがキラーホエールの深海使用に乗り込む前に足を止める

 

「いえ、少し気になる事があっただけですよ。さ、行ってください、アードラー博士」

 

アードラーに逃げましょうと声を掛けるコーウェン。3隻残されていたキラーホエールの深海使用の内2隻は既に地下ドッグを出航し、アイドネウス島から離れている。真っ先に脱出していそうな、アードラーが残っていたのはビアンの私室に残されていた研究データなどを持ち出す為に、時間ギリギリまで粘っていた事にある

 

「ふん、シュトレーゼマンの派閥に入り込んでから変わったと思ったが、まだおぬし達は昔のままじゃな」

 

「ははは、そう簡単に人は変わりませんとも、あの議員の所にいたのは、あの議員が隠し持っている特機に興味があったからですよ」

 

シュトレーゼマンが隠している特機の言葉にアードラーは一瞬顔色を変え、コーウェンの背後で海面から上半身だけを出している特機に視線を向けたが、あちこちから爆発音が響くのでここで話している場合ではないと判断したのか、再び足をキラーホエールに向ける。

 

「待っておるぞ、コーウェン」

 

「ええ、先に行って待っていてください。私もスティンガー君も直ぐに合流地点に向かいますから」

 

アードラーを見送り、出航するキラーホエールを見つめるコーウェンの背後の影が盛り上がるようにして、スティンガーが姿を見せる。

 

「お、終わったよ。コーウェン君、あの乱暴者ほどではないけど、む、武蔵もゲッター線に選ばれたようだ」

 

「そのようだね。スティンガー君、だけどあの旧式ではGには勝てない」

 

「そ、そう! Gに旧式が勝てる訳が無い」

 

身体中からギチギチと音を立てながらコーウェンとスティンガーは笑う。真紅に輝く瞳が明かりが落ちた地下ドッグで紅く輝く

 

「それでどうしてそんなのを拾ってきたんだい?」

 

「つ、使えるじゃないか、この世界の人間はゲッターに耐えれない。それなら機体に組み込んでしまえばいいんだよ」

 

「なるほど、それも1つの解決方法か。まぁ良いさ、使える、使えないは組み込んでから試せば良い。アードラーも私達がシュトレーゼマンの所から回収したGを解析させれば用済みさ」

 

スティンガーの腕には半身を潰され、全身を火傷し、それでも虫の息ながら生きているテンペストの姿があった。

 

「ほら、スティンガー君」

 

「あ、ありがとう、コーウェン君!」

 

コーウェンは脇に抱えていたヘルメットをスティンガーに投げ渡す。それを受け取ったスティンガーは土気色の顔色をしたテンペストをゴミのように片手で持ち上げて振り返る。

 

「さぁて、まずは種を撒こうじゃないか、一度はGを捨て駒にしないといけないのが苦しいところだけど、それも仕方ない」

 

「そ、そうだね! 南極にも行かないといけないし、それにアースクレイドルに隠されているあれも見ておきたいよね」

 

海面から上半身を出しているGを見つめ、にやりと笑った2人は瀕死のテンペストをGのコックピットに引きずり込み、海中の中へと姿を消すのだった……

 

 

 

 

 

 

海に沈むメカザウルスの残骸と、島の上に上がると同時に機能を停止したゲシュペンストMKーⅡの中でカイはヘルメットを投げ捨て、汗を拭う

 

「はぁ……はぁ……化け物が」

 

「息切れしているか、老いたなカイ」

 

ラドラの言葉にカイはやかましいと怒鳴り返す、その声にラドラはくっくっと喉を鳴らす。中破したゲシュペンストMK-Ⅱに対して、ラドラのゲシュペンスト・シグは小破であり、そしてラドラにも余裕が見えていた

 

「……ラドラ、教導隊を抜けた後、何をしていたんだ」

 

「研究をしていた。俺の新しい剣、ゲシュペンスト・シグの開発をな」

 

軍を抜けたラドラが何故PTを所持しているのか、そして今まで音沙汰が無かったのに何故急に現れたのか、色々と尋ねたい事はあったが、カイは口を閉じた

 

「……お前の退役条件と関係があるのか?」

 

「そういう所だ。だからお前は知らないほうが良い」

 

ラドラは教導隊に所属していたが、そのモーションデータ。そして彼が在籍していたという記録は一切が残されていない、教導隊全体にも緘口令が引かれるほどの徹底振りだ。その退役条件の中にゲシュペンストが関係していると言うことを感じ取ったカイは判ったとコックピットに深く背中を預ける

 

「SOSだけは発信しておいてやる」

 

「それは助かるな……もうこっちはバッテリーがないからな」

 

通常のゲシュペンストよりも頭1個分は大きい、それに伴い機体サイズも巨大化している。PTと言うよりかは、準特機サイズのゲシュペンストだ。カイのゲシュペンストよりも、バッテリーも何もかも数段上なのだろう

 

「1つだけ言っておく、上層部には気をつけろ。最近きな臭い」

 

「……それは俺も薄々感じていた。特にこのメカザウルスだ」

 

DCの部隊がメカザウルスと戦う姿はこの無人島からでも見えていた。その姿は日本を護ろうとしているように見えたのだが、連邦からの攻撃、メカザウルスからの挟撃で劣勢に追い込まれながらも、勝利し撤退して行った姿は確認している

 

「大きな戦いが始まるだろう……気をつけておけ」

 

「了解した、協力感謝する」

 

気にするなと笑い背中に背負っているバックパックから出現した翼で宙を舞うゲシュペンスト・シグの姿を見送るカイ

 

「お前もゼンガーもエルザムも全員不器用なんだよ、馬鹿たれ」

 

今まで姿を消していたと思ったら突然現れたかつての仲間にカイは苦笑いを浮かべ、遠くに見える救援部隊を確認しコックピットから外に出るのだった……

 

 

第29話 逃亡者へ続く

 

 




アイドネウス島編決着です。やばい2人組みが暗躍していますが、そこはあんまり気にしないでください。次回からは暫くオリジナルシナリオで考えて行きたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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