進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第160話 紅の雨 その5

 

第160話 紅の雨 その5

 

レモンによって改造されたビルトファルケンの機動性はビルトビルガーよりも上で、何度も何度もアラドはその動きを見失った。アシュセイバー系列の高性能のスラスター、そして4つのウィングにはソードブレイカーが装備され、死神が手にするような鎌を手にしているファルケンの姿は増設されているスラスターによって異形の死神のように見えていたが、アラドは恐れる事無く無手のビルトビルガーにビルトファルケンを追わせる。

 

「ゼオラッ! 聞こえているんだろ! 俺が判るんだろッ!! 逃げんなよッ! ゼオラぁッ!!!」

 

その機動性で背後を取っても攻撃を仕掛けてくることは無く、オクスタンランチャーの銃口を向け、それでも引き金を引かないビルトファルケンを見れば、ゼオラが躊躇っている事、そして自分を認識しているとアラドは感じていた。だからこそ無手でビルトファルケンを捕まえようと必死にその姿を追い続ける。

 

『駄目……ダメナノ……ヤダヤダ……コロシタクナイ……コナイデ……』

 

僅かに指先が触れ、接触通信で響いたゼオラの声は殺したくない、嫌だと涙を滲ませるゼオラの声だった。

 

「絶対捕まえるッ!! ゼオラぁッ!!!」

 

朱王鬼の術にゼオラも抗ってるのだ。ここで自分が根性を見せないでどうすると気合をいれ、アラドは操縦桿を強く握り締める。

 

(絶対に、絶対に取り戻すッ!)

 

ゼオラもオウカもこの手に取り戻す。それだけを考えて必死にアラドはビルトビルガーを操縦する、だがどうしても後一歩が届かない。

 

「くそッ!! 絶対……絶対に取り戻すッ!!!」

 

空中で反転しアラドを嘲笑うかのように飛ぶビルトファルケンを追って、アラドはビルトビルガーを反転させたが、目の前に広がった光景に言葉を失った。鎌を手にしている左腕を、右腕が掴みその動きを封じ、奇妙な動きを繰り返していた。

 

『コロサナイト……イヤコロシタクナイ……ニゲテ……コロスノ……イヤァッ! アラド……アラド……コナイデ、キテ、コロス、コロシタクナイ……』

 

「ぜ、ゼオラ……」

 

朱王鬼の術の影響が強くなって来たのか、ゼオラの言葉は支離滅裂なもので、それと同時に自分が間に合わなかった事を思い知らされたアラドは呆然とした様子でゼオラの名前を呼ぶことしか出来なかった。

 

『コロス、コロス……コロサナイトッ!!!』

 

「ゼオラ……ッ!!」

 

一瞬で切り込んできたビルトファルケンがビルトビルガーを両断しようとその手に持った鎌を、ゼオラの変質を受け入れる事が出来ず呆然としていたアラドの乗るビルトビルガーへと振り下ろした。

 

『アラド……もっと強くなるの、まだ貴方は弱くて良い。だけど……もっと強くなって』

 

だがそれはビルトビルガーとファルケンの間に割り込んだラピエサージュの肩へ突き刺さっていた。

 

「オウカ……姉さん……俺、俺ッ!!」

 

助けたかった、守りたかった。それだけを考えていたアラドだが、僅かな自我を見せていたゼオラは再び朱王鬼の術中に落ち、そしてオウカに守られただけで何にも出来なかったという絶望感がアラドの胸を埋め尽くす。

 

『……まだ時間はあるわ。アラド、ありがとう。私達を助けようとしてくれて、行くわよ、ゼオラ』

 

『コロサナイト……わたし私……アラ……ド……ゴメン……ネ……ハナセハナセッ! コロス、コロスウウウウッ!!!』

 

謝罪の言葉を口にした途端豹変し、殺すと叫ぶゼオラとビルトファルケンをオウカは自身の乗るラピエサージュが傷付く事も厭わず、抱き締めるように取り押さえる。

 

「姉さん! ゼオラッ!」

 

『駄目よアラドッ! 貴方が近づけば近づくほどに朱王鬼の術は強くなる……これ以上ゼオラが暴走したらそれこそ取り返しが付かない事になるわ』

 

オウカの静止の言葉にアラドの手が操縦桿から離れて落ちた。

 

『……ごめんなさい、私がもっとしっかりしていればこんな事にはならなかった……ごめんなさい』

 

「ち、違う! 姉さんは……オウカ姉さんは悪くない……俺……俺ッ! ちくしょう、ちくしょうッ! 後少しだったのに……うわああああああ――ッ!!!」

 

オウカもゼオラもアラドも誰も悪くないのに、皆が苦しみ、傷ついて後悔している。飛び去るラピエサージュとビルトファルケンを見つめ無力感に打ちのめされ叫ぶアラドの目からは涙が溢れているのだった……。

 

 

 

リュウセイ達がキョウスケ達が来るまでの間、何があったのかとブリーフィングルームで報告を行なう。

 

「……という事がありました。俺……やっぱり何も出来なくて……助けたかったのに……何も出来なくて……守られてただけで……」

 

「もう良い……良く頑張った。ラーダ女史、申し訳無いがアラドを頼む。休ませてやって欲しい」

 

目を真っ赤にしたアラドが拳を強く握り締め、何をしていたのかと肩を震わせながら報告を続けようとするが、その余りに悲痛な姿を見て、ダイテツは報告はもう良いと言ってラーダにアラドを休まるように指示を出す。

 

「はい、さ、行きましょう。アラド」

 

掌から血が溢れるほどに拳を握り締めているアラドの手をラーダがゆっくりと開き、ラーダに手を引かれ、アラドはブリーフィングルームを後にした。

 

「あの歳の餓鬼には重すぎる荷物だな」

 

「そうだな……とは言え、ただ鹵獲するだけ駄目なんだもんな」

 

機体を撃墜してパイロットを救出することだけならば、ハガネの戦力を考えれば十分に可能だ。だが朱王鬼という鬼に操られているゼオラはラトゥーニか、オウカかアラドを殺すまでは正気に戻らず、そして正気に戻ったとしても自分の家族を手に掛けたという事でゼオラは自ら命を絶つ……余りにも救われない状況にカチーナ達は眉を顰める。

 

「一番は術を掛けた鬼を倒す事だと思うけど……その朱王鬼ってどこにいるのよ?」

 

『セレヴィスとマオ社を制圧しているので月に居ます』

 

ヒリュウ改のリョウトからの報告を聞いてエクセレンは眉を細める。

 

「今の状況じゃ無理ね……本当……なんとかしてあげたいんだけどね」

 

「……仕方あるまい。少しずつ、少しずつ取り返していくしかない、ラングレーも、武蔵も、テスラ研も月もな」

 

百鬼帝国、インスペクターに奪われたものは多い。だが激情に身を任せ攻撃を仕掛ければ自分達も二の舞になる、例え遠回りでも少しずつでも奪われたものは取り返すとキョウスケが静かだが、強い意思の込められた声で言う。

 

『その通りだ。奪われたものは取り返せば良い、それよりもだ。リュウセイ少尉、ビーストのパイロットについてだが……』

 

「あ、はい、あのパイロットはレトゥーラと俺に名乗りました。機体はズィーリアスだと言ってました」

 

リーの問いかけにリュウセイがそう返事を返した、アビアノ基地周辺で現れ、そしてロスターが出現した際もリュウセイの元に現れ、キョウスケに尋常ではない敵意を向ける謎のパイロットと機体。

 

『一応改めて聞いておくが、知り合いではないのだな?』

 

「本当に思い当たる節は無くて……俺も正直その……困惑してます」

 

『まぁ確かにそうですな。ラトゥーニ少尉達を殺そうとする割にはリュウセイ少尉を守ると言うのでしょう? はてはて、リュウセイ少尉はそんなにプレイボーイでしたかね』

 

『ショーン副長。今はふざけている場合ではありません、しかし……本当に何者なのでしょうか……』

 

からかうようなショーンにレフィーナがぴしゃりと釘を刺しながら、レトゥーラが何者なのかと首を傾げる。

 

「リュウセイに匹敵する念動力者で」

 

「尋常じゃない出力を持つ機体を操り、囲まれた状態から悠々と逃げる」

 

「んでもってリュウセイとキョウスケに執着してる女のパイロット……」

 

「それともう1つラトゥーニとマイに尋常じゃない敵意を見せている。そしてそれに呼応するようにラトゥーニの攻撃性も増していた」

 

分かっている事は決して多くは無いが、その少量の情報からある程度の予測は出来ると話し合いを始めようとした時、手を叩く音がブリーフィングルームに響き渡った。

 

「この件に関しては俺達に出来る事はない。ケンゾウ博士に任せるべきだ、下手な推論は思い込みを呼ぶ。念動力が検知されているのならばケンゾウ博士に解析を頼んでから考察するべきだ」

 

強引に話を打ち切るイングラムにリュウセイ達は勿論、キョウスケ達も僅かな違和感を覚える。だがイングラムの言う事も一理あると追求する事をやめた。

 

「……」

 

「ラトゥーニ? どうかしたのか?」

 

「あ、ううん、リュウセイ。なんでもない……ちょっと気になることがあっただけ」

 

なんでもないと笑うラトゥーニだが、その顔はなんでもないと言う顔ではなかった。

 

「なんかあったら相談してくれよ。俺で出来る事なら相談に乗るから」

 

「うん……ありがとうリュウセイ」

 

問いただすのではなく、相談するのを待つと言うリュウセイの言葉に笑みを浮かべるラトゥーニ。その姿は仲睦まじさを感じさせたのだが……。

 

「マイ? どうかした?」

 

「う、うん。なんでもないよ」

 

ただその姿をジッと見つめていたマイにブリーフィングルームに居た何人かは何かを感じ取った……。

 

(なんかあれね……地雷を感じるわね)

 

(確かに……リュウセイの奴意外と天然だしな)

 

レトゥーラの事も含め、リュウセイが天然フラグメーカーではないかと言うひそひそ話があちこちで聞こえるが、ダイテツの咳払いで全員が顔を上げた。

 

「ビースト、いや……ズィーリアスとレトゥーラのこともあるが、当面の問題は別にある。テツヤ大尉」

 

「了解です」

 

ダイテツの合図でテツヤがコンソールを操作し、不知火の姿をモニターに映し出した。

 

『やっぱりホワイトデスクロスに似てる……』

 

『これは百鬼獣なのですか?』

 

「どういう経緯でこれが現れたのか教えてくれ」

 

蛇のような下半身、4つ腕、武装や機体色に違いはあるが、それは紛れも無くオペレーションプランタジネット終盤で現れたホワイトデスクロス――ジュデッカに酷似していた。キョウスケ達が見たのは数分だった為にリュウセイ達に不知火についての事をキョウスケ達が問いかける。

 

「この百鬼獣は不知火という名前で、ガーリオンをベースにした百鬼獣のようです。パイロットはスクールのアギラ・セトメ。そうよね、ラトゥー二」

 

「は、はい、でも声が随分と若くなってて……もしかすると鬼になって若返ったのかもしれないです」

 

鬼になって若返ったというラトゥー二にブリーフィングルームにざわめきが広がる。

 

「え、鬼になるってそんな事も出来るの? そこの所どう? コウキ」

 

『ん? いや俺の知ってる限りではないが……死人を鬼にして復活させるとか言うのは見たような気がする』

 

「どう考えてもそっちの方がやばいだろがッ! 死人が復活……復活」

 

尻すぼみになるカチーナの視線の先には涼しい顔をしているイングラムの姿がある。

 

「ここにもいるな、死人が」

 

「イングラム少佐、そういうブラックジョークは止めて下さい」

 

「そうよ、イングラム。またビンタされたいのかしら?」

 

「……断っておこう」

 

素振りをするヴィレッタから引き攣った様子でイングラムは視線を逸らし眉を顰めた。

 

「問題はだ。こいつがナノマシンで稼動する百鬼獣であり、取り込むものがある限り無限に再生するということだ」

 

SRXの攻撃を受けても即座に再生し、身体を作り直す不知火。その異常な再生能力にはキョウスケ達も絶句する。

 

『ここまでとは……こうなると跡形も無く消し飛ばすしか、倒す方法はないのではないか?』

 

『ですがリー中佐、それほどの攻撃を地球で使えば……』

 

「地表への影響が余りにも大きすぎる……この百鬼獣を倒すにはテスラ研の奪還が必要となりそうだな」

 

不知火の身体を構成するナノマシン――それをなんとかしなければ不知火を完全に撃破する術は無く、そして今のハガネ、ヒリュウ改、シロガネにナノマシンに精通している者もいない。

 

「また厄介な敵が出てきたわね……」

 

エクセレンの小さな呟きがブリーフィングルームへと響く、1つ問題を解決すればそれを上回る問題が立て続けに起こる。余りにも絶望的な状況だが、それでも心を折っている場合ではない。そしてダイテツ達がこうしてブリーフィングルームに面子を集めたのはリュウセイ達から話を聞く為でもあったが、本当の目的は今ハガネのクルーの間に生まれようとしている火種を取り除く為の物であった。

 

「……ここにいる全員はマイ・コバヤシについてある懸念を抱いているだろう。それに関してワシから話がある」

 

そう前置きをし、ダイテツはゆっくりとマイについての話を始めるのだった……。

 

 

 

アヤとマイの姉妹の話、そしてマイが何故レビ・トーラーへと至り、そして今マイ・コバヤシとしてハガネに乗っているのか、ダイテツの話に誰もが無言で耳を傾ける。そしてマイが歩んで来た道がどれだけ過酷で救いが無かったのかを知り、誰もが言葉を失った。

 

「……以上が、 マイ・コバヤシに関するこれまでの経緯だ。だがマイ・コバヤシとレビ・トーラーは違う、諸君らがマイを仲間として迎え入れてくれる事を切に願う」

 

ダイテツの言葉は真摯にこの場にいる全員の胸を打った。確かに過去は変えられない、だがそれに縛られ、マイをマイと見ないのがどれだけ愚かな事かは言うまでもないだろう。

 

「彼女も…… エアロゲイターの犠牲者だったのか」

 

「……ああ。俺達はそれを知っていたけどよ……何時話せば良いかって皆考えていたんだ」

 

「ああ。マイは俺達の仲間だが……それでもそれをすぐに受け入れられる訳ではないだろう?」

 

リュウセイ達がマイの事を黙っていた理由、そして庇っていた理由を知れば、リュウセイ達の対応は間違いでは無かったとブリット達は嫌でも理解することになる。ビアン達と異なり、エアロゲイターとして、地球に攻撃を仕掛けてきたレビとビアン達では話が余りにも違うからだ。

 

「でもアヤ大尉……今は貴女の妹ちゃんなんでしょ? それなら隠そうとしないで、早く言ってくれたらよかったのに……こんにちわ、マイマイ」

 

「え、あ……こんにちわ」

 

エクセレンがマイの肩に腕を回して、視線を合わせて微笑みかける。マイは少し気恥ずかしそうにしながらもエクセレンに対して頭を下げる。

 

「もうーこの反応可愛いわねぇ~良い子良い子」

 

可愛い可愛いと言いながらマイの頭を撫でるエクセレン。それはマイが敵ではないと、守るべき幼い少女なのだとキョウスケ達に見せているようにさえ見せた。

 

「エクセレン……」

 

「んふふ、過去は過去、今は今でしょ? 昔の事ばかりに拘ってちゃ何にもならないわ。まぁ未来の事を考えて不安に思うのもどうかと思うけどね」

 

普段はお茶らけているがエクセレンはハガネのメンバーの中でも上位の才女であり、ムードメイカーでもある。そんなエクセレンがマイを擁護すれば雰囲気は一気に変わる。それでもマイの中には一抹の不安がある……。

 

「良いの……私は敵だったんだ。それでも仲間で良いのか……」

 

レビであったという事実は変わらない、そして敵であったと言う過去も……それでも受け入れて欲しいと言う願いがあり、マイがおずおずとそう呟くとリョウト達が口を開いた。

 

「僕だって昔はDCでリュウセイ達の敵だった。まぁ……僕の場合は人間爆弾みたいな捨て駒だったけど……僕だって下手をすればリュウセイ達を殺していたかもしれない。それでもリュウセイ達は僕を仲間として受けれてくれた。だから僕は今皆と一緒にたたかっている……自分の意志で」

 

トーマスによってハガネを吹き飛ばす爆弾として戦場に送り出されたリョウトは紛れも無く捨て駒として扱われていたが、DCの兵士であり敵だったという事実と過去は変わらない……それでもハガネの仲間として共に戦っている。

 

「それを言えば私はコロニー統合軍で思いっきり敵でしたわよ。ユーリア隊長も」

 

「ああ。それは変えようの無い事実であり、過去だ。だがそれならば、自分の行動によって過去の評価を変えていけば良い……何故そんな驚いた顔をする」

 

凄く良い事を言うユーリアなのだが、普段のポンコツ振りを見ているからえっと信じられない物を見るようなものを見る目で見られて、何故と言うが誰も答える事はない。

 

「マイは自分の意志で戦う事を証明したんだ。誰がなんと言おうと、俺達の仲間だ」

 

「ああ。だからそんなに不安そうな顔をすんなよ。マイ」

 

「……ありがとう……そう言って貰えて嬉しい」

 

リュウセイとライの言葉にぎこちない笑みを浮かべながら感謝の言葉を口にする。

 

「これでマイマイは私達の仲間ってことで良いわよね。カチーナ中尉」

 

1人だけ仏頂面をしているカチーナにエクセレンがそう声を掛ける。心情的にはカチーナは既にマイを仲間として認めているが、それでも憎まれ役を買って出る。言ったら悪いが、ハガネのクルーは皆善人ばかりであり、誰かは憎まれ役をやらなければならないのだ。

 

「あいつはエアロゲイターの大将の」

 

「それを言うならあたしはどうなるの? あたしはビアン・ゾルダークの娘だよ、確かに親父は地球の為に戦ってるけど、戦争を起こしたのは変わらないし、罪人って言うのも変わらないよ」

 

「ぬ……だけどな」

 

リューネの言葉にカチーナは言葉に詰まるが、それでも口を開こうとする。

 

『それを言えば俺は元・百鬼帝国だし、この場にはいないがラドラは恐竜帝国だな、ついでに言えばカーウァイも敵だったな』

 

『やだ、この船のクルー、元敵ばっかりだヨ』

 

「俺もだな、操られていたが、敵としてお前達の前に立ち塞がった事に変わりはない。カチーナ中尉は俺達の事をまだ敵だと思っているのか?」

 

コウキは百鬼帝国で、ラドラは恐竜帝国、そしてイングラムは操られ、カーウァイもサイボーグに改造されて敵として幾度と無くハガネの前に立ち塞がった。ラルトスが不謹慎にもけらけらと笑うが、ハガネ、ヒリュウ改、シロガネの中にはリョウトやレオナを含めて相当数のかつて敵だった者が乗り込んでいる。

 

「分かった分かったよ。あたしの負けだよ。 頼むからそんなにあたしを見るなよ」

 

「んふふふ、憎まれ役を買って出るカチーナ中尉は不憫よねぇ」

 

「分かってたら嫌な話の振り方をするんじゃねぇッ! まぁエアロゲイターの正体は知ってるし、結果が出ちまったことだ、 もうゴチャゴチャ言わねえよ」

 

そう言うとカチーナは不機嫌そうに椅子に腰掛け、ラッセルがすぐにカチーナに茶菓子とお茶を出して、機嫌を直すように声を掛ける。

 

「これで万事解決ね。アヤ大尉はちゃんとマイちゃんを大事にしてあげるのよ、お姉ちゃんなんだからね」

 

「ええ……分かってるわ。ありがとう、エクセレン」

 

からかう様にいうエクセレンにアヤは笑みを浮かべ、マイの側に立つ。するとマイはアヤの服を掴んで後ろに回る。

 

「あ、ありがとう……エクセレン」

 

アヤの後に隠れながら感謝の言葉を口にする。その微笑ましい姿にエクセレンは笑みを浮かべた。

 

「どう致しまくりやがりましてございますの~……って、これじゃラミアちゃんみたいね」

 

伊豆基地で自爆する事で自分達を守ったラミアの事を思うエクセレン。だがそれはエクセレンだけではなくブリット達もラミアはシャドウミラーであったが、最終的に自分達を守ってくれたラミアをエクセレン達はどうしても敵だとは思いたくなかったのだ。だからこそ、エクセレンはマイを擁護したのかもしれない、もしラミアが生きていたら再びハガネや自分達が彼女の居場所となれるように……。

 

「……他に異論のある者は?」

 

ダイテツがそう声を掛けるが誰も声を上げることはない、それは既にハガネのクルーがマイを仲間として受け入れている証だった。

 

「では、以上だ。 本艦は武蔵救出任務を続行する。 各員は持ち場に戻れ」

 

ダイテツの合図で解散となり、マイはハガネの仲間として受け入れられるのだった……。

 

「てことがあったんだ。武蔵」

 

「なんかオイラのいない間に凄い事になってないか? いや、マイが仲間って受け入れられたのはオイラ凄く良い事だと思うんだけどさ」

 

自分がいないあいだにマイが仲間として受け入れられていたのは喜ばしい事だが、リュウセイに知らされたことに武蔵は鬼の形相を浮かべた。

 

「武蔵様、どうしましたか?」

 

「あーいやさ。朱王鬼って言うクソ鬼な。殺しかけたんだけどさ、リョウト達を逃がすことを優先したからトドメを刺してなかったんだよ。ミスったな……その話を聞いていたらぶっ殺してたんだけどな」

 

軽い口調の武蔵だが、その声は紛れも無く本気の物で、もしもアラド達とゼオラの関係を武蔵が知っていたら、月を脱出する前に確実に朱王鬼にトドメを刺してたのは間違いない。

 

「いや、大丈夫っすよ、あいつには俺がちゃんと落とし前を付けさせますから」

 

「そっか。そうだよな、アラドはあいつのせいで苦しんだんだ。オイラが余計な茶々を入れちゃ駄目だよな。だけど……そこまで言ったんだ。負けんなよ」

 

武蔵にドンっと胸を叩かれ、アラドは一瞬言葉に詰まったがすぐに力強い返事を返す。

 

「俺これからカチーナ中尉の訓練なんですよ。とにかく身体を鍛えて、操縦ももっと上手くなって、絶対にゼオラとオウカ姉さんを取り戻すんです」

 

「その意気だ。アラド、よっしゃ、オイラも手伝ってやるよ」

 

「ええ! 本当ですか! ありがとうございますッ!」

 

アラドは武蔵が協力してくれると言う事に嬉しそうだったが、ブリットとの鍛錬を見ていたイルム達はアラドに向けて手を合わせて南無と呟いていた。

 

「それでしたら、私は後でエキドナと飲み物とタオルを準備して行きますわ」

 

「ご飯を食べたばかりだから無理はしないほうが良い」

 

「大丈夫大丈夫、オイラとかリョウとか隼人は飯食った後に重りを全身につけて20キロ走ったりするのざらだったから、アラドも平気だって、学生のオイラ達が出来たんだからさ」

 

自分達の訓練を例に挙げて大丈夫と笑う武蔵だが、アラドはこの時やっと自分へ向けられている合掌する手と南無の言葉の意味を悟った。

 

「しゃあ、行くかあ。オイラもちょっと鈍ってるし、しっかり鍛えておこうぜ」

 

「あ、はいッ! 頑張ります!」

 

「そんなに頑張らなくて良いって、ここじゃ走れないから……そうだな。うん、腹筋・腕立て・スクワットを1000回くらい準備運動でして、そっから組み手を……2時間くらいだな、しゃ、行こうぜ」

 

「え? え?」

 

武蔵の軽い感じの言葉に目を丸く困惑するアラド。しかし武蔵はそんな様子に気付かずアラドの肩に腕を回し、武蔵によってアラドは連れて行かれたが、その後姿が煤けていた事は言うまでも無い。

 

「……旧西暦クオリティの軽いって俺達の常識越えてるな」

 

「下手に武蔵に特訓なんか頼んだら三途の川送りだな。体験しているブリットはどう思う?」

 

「ん? いや、俺は慣れたぞ? うっし、じゃ俺も行ってきます。おーい! 武蔵、アラド! 俺も行くぞーッ!!」

 

「「マジか……」」

 

自ら地獄に飛び込んでいく勇者ブリットをイルムとタスクは信じられない者を見る目で見送り……振り返った瞬間にヒュっと息を呑んだ。

 

「……」

 

ラトゥー二が無言でジュースの缶を握り潰し、マイと共に食事をしているリュウセイをジッと微動だにせず見つめていたからだ。

 

「ご馳走様でした。また一緒にご飯を食べよう。リュウ」

 

「お、おう……」

 

食堂に連れて来られ、一緒に昼食を取る事になったリュウセイは満面の笑みを浮かべるマイを困惑した様子で見送り、自分の食べ終えた食器を片付けに立ち上がった所で足を止めた。

 

「……リュウセイ、話があります」

 

「ラトゥーニ?」

 

「いいよね?」

 

「……はい」

 

ラトゥー二の気配に気圧されたリュウセイはか細い声で返事を返し、食器を片付けた所をラトゥー二に連行されていった。その後姿を見たイルムとタスクは再び合掌し、南無と手を合わせるのだった……。

 

マイと食事をしていたリュウセイに嫉妬や怒りに似た感情を抱いたラトゥーニだが、ラトゥー二がリュウセイを傷つける事はない。

 

「……ラトゥー二、ラトゥーニさん?」

 

「……何?」

 

「何はこっちの台詞なんだけど……」

 

ゲームをしている時のように胡坐のリュウセイを椅子にしているラトゥーニだが、今日は向き合う形で座っていて、リュウセイは僅かに赤面しているが、それはラトゥーニも同じだった。

 

「リュウセイは私が守る……未来の私じゃない、私が守るから」

 

イルム達は恐怖したが、ラトゥーニの怒りはマイではなく、レトゥーラへと向けてのものだった。自分ではない自分がリュウセイに擦り寄っているのが腹立たしくて、そして憎くて恐ろしかったのだ。

 

「……やっぱりラトゥーニも分かったのか」

 

「……うん。レトゥーラは私、私だけど、私じゃない私」

 

リュウセイは念動力で、ラトゥーニは同一存在という事でレトゥーラが自分に近しい物だと感じ取っていた。

 

「リュウセイ、私は本当は怖い、あいつが怖くて、気持ち悪くて……憎い、だけど一番は自分にこんな気持ちがあったのが1番怖い、自分が醜い存在なんじゃないかって思う」

 

醜い感情と初めて向き合ったラトゥーニは何よりも自分を恐れた。自分の中にこんなに醜い感情があったのかのかと、そしてマイの姿が声が、何故か自分の筈のレトゥーラと似たものに感じ、怒りの余りジュースの缶を握り潰すと言う事に繋がっていた。

 

「大丈夫だ。ラトゥーニは醜くなんか無い」

 

小さく身体を震わせるラトゥーニの身体を抱き締めてリュウセイはそう言うと、ラトゥーニは安堵した表情を浮かべる。

 

「……少し寝ても良いかな」

 

「ああ。大丈夫、俺はここにいるから」

 

正面を向いてリュウセイに寄りかかり目を閉じるラトゥーニとそんなラトゥーニの肩を抱いてリュウセイもまたその目を閉じるのだった……。

 

 

 

第161話 白銀の流星、真紅の彗星 その1へ続く

 

 

 




リュウラトのコミュが進みます。元々距離感バグ気味でしたがレトゥーラの件で更に加速、後にマイも加わり更にカオスとなる予定です。
次回は久しぶりにスレイとアイビス達の再会を書いて、ダイゼンガーに繋げて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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