第162話 白銀の流星、真紅の彗星 その2
クロガネの格納庫の一角に固定されている戦闘機を見て、アイビスは足を止めた。何故ならばその姿はカリオンに酷似していたからだ。
「アイビスどう……これはベガリオン……いえ、違う。スレイ……これは?」
「ああ、クロガネにはプロジェクトTDの発足前に兄様と一緒に研究していた人がいると言っただろう? その人がカリオンを強化してくれたんだ。名前は「ベルガリオンさ、よーツグミッ! 元気そうだな!」……ルード……貴方生きていたの!?」
赤いサングラスにオールバック姿の長身の男が白衣を翻し、歩き出すがその足音はやけに重く、ゴツゴツという音が響いた。
「貴方……まさか」
「HAHAHAッ!! 膝から下は義足だ。カリオンのプロトタイプでバグスと遭遇して、相打ちで墜落してこの程度で済めば御の字さ。命が助かっただけよしとするべきだろ?」
そう笑うルードはサングラスを外して、透き通るような蒼い瞳をアイビスに向けた。
「おー良い面してんな」
「ど、どうも……えっとルードさん? プロジェクトTDの?」
「おう、と言ってもまだTDが発足する前の話さ。バグスに撃ち落とされてな、HAHAHAッ!!! んで植物状態、起きたら戦争があったって言うしよ、俺は戸籍上死んでるしよ! 真実は小説より奇なりって言うけどよ。これはやりすぎだよなあ!!」
上機嫌に笑うルードだが、ツグミ達は引き攣った笑みを浮かべるのがやっとだ。
「さてと……悪いが長話をしてる時間はねぇ。作戦を説明するぜ? クロガネからアステリオン、ベルガリオン、ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベが先行する。それを合図にしてハガネ達も動き出す。お前達は進入経路の確保を最優先にしてもらう。バレリオン・ライノセラスを撃墜すれば戦艦も進入可能になる。そうすれば後はテスラ研へ直行し、ゼンガー少佐達の支援。話は簡単だろ?」
言葉にすれば簡単だが、それは恐ろしく難易度の高い作戦だ。
「ルード……想定時間は?」
「最大で6分。それをオーバーすれば転移での敵の出現の可能性が高くなるし、テスラ研の守りもより強固になるだろう。広域攻撃用のオプションは用意してある。それを駆使して6分以内にバレリオンとライノセラスを撃墜してくれ。言っておくが……この作戦はスレイとアイビスのみがアタッカーだ。レーツェルは途中から参加するが、テスラ研奪還の為に温存する必要がある。2人で道を切り開け」
想像を遥かに越える難易度の作戦……以前のアイビスとスレイならば脅えを見せていただろう。だがスレイとアイビスは凛々しさを感じさせる笑みを浮かべた。
「大丈夫です、あたしとスレイなら出来ます」
「ふっ、足を引っ張るなよ?」
「大丈夫だよ。コウキ博士と武蔵に鍛えられたんだ、今ならスレイよりも早く飛べるよ」
「流星にはなるなよ? ルード博士。私とアイビスの準備は出来てます」
「OK。流石フィリオの選んだ戦乙女だ。最高のセッティングをしてやるよ」
フィリオやコウキとは違うが、力強さと任せておけば大丈夫という安心感を感じさせるルードの笑みに、スレイとアイビスは揃って返事を返すのだった。
「ではレーツェル。これをフィリオとジョナサンに渡してくれ」
「ビアン総帥、これは?」
「ダブルGのOSだ。私の協力者達の元でパーツを作り、それをテスラ研で組み上げ、私がOSを作っていた。これを届けてくれ」
「分かりました。友よ、行こう。時間だ」
「承知」
クロガネから飛び立ったアステリオンとベルガリオンの轟音を聞いて、ゼンガーとレーツェルも出撃の為にブリーフィングルームを後にする。
「我々も気を緩めている時間はない、オペレーション・プランタジネット……敵が幾重にも張り巡らせた罠の中に自ら飛び込むのだ。ほんの少しの油断も許されない事を肝に銘じて欲しい」
ビアンの言葉にカーウァイ達が頷き、ビアンはダイテツ達に出撃すると連絡をいれ、ハガネ達よりも先に太平洋からアメリカ大陸へとクロガネを出航させるのだった……。
ベルガリオンとアステリオンの2機はピッタリと速度を完璧に同調させ、低空飛行でアメリカ大陸へと突入することに成功していた。
『第1段階はクリアだね』
懸念材料であった海上での百鬼獣の襲撃が無かった事に安堵したのかアイビスがスレイに通信でそう声を掛ける。
「気を緩めるな、海上はクロガネからのジャミングとASRSがあったからだ。そろそろ……来たぞッ!!」
上空から降り注いで来たスプリットミサイルの弾雨をアステリオンとベルガリオンは急上昇して弾雨を回避する。
『うわあ……凄い数』
「怖気ついたのかアイビス? なら私の支援をするか?」
『まさか。あたしはもう逃げないよ。行こう! スレイッ!』
「ああ、いくぞッ!!!」
レストジェミラ、ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・ゲシュペンスト・MK-Ⅲ……アーマリオン、ガーリオン、そしてバレリオンとライノセラス……2機で突破するには余りにも厳しい敵の布陣にスレイとアイビスは一切臆する事無く、急降下しながらルードが増設したウェポンコンテナを解放する。
「切り離しのタイミングを間違えるなよ! 失敗すれば墜落するぞッ!」
『分かってる! ターゲットマルチロックッ! スレイッ!!』
「ああ、いくぞッ!!!」
アステリオンとベルガリオンのボディに挟み込むように装着されたウェポンコンテナが開き、そこから放たれた巨大な4つのミサイル――CTM-05 プレアディスが凄まじい勢いで急上昇する。
「3……2……1ッ! パージッ!!!」
『パージッ!!』
音を立ててプロペラント、そしてウェポンコンテナがパージされ、アステリオンとベガリオンは急制動が掛かり一気に減速する。それによって自分達が射出したプレアディスの攻撃範囲から離脱する。
「アイビスッ! 何をしている! 再加速だぞッ!」
『分かってるッ!!!』
上空から降り注いだ多弾頭ミサイルの雨にレストジェミラ達が飲み込まれ爆発する中を急加速したアステリオンとベルガリオンが突撃する。
「流石に全機撃墜などと都合のいい事はないかッ! アイビス! 私が先行するッ!」
あくまでプレアディスは先制広域攻撃であり、一撃で敵を破壊するほどの火力はない。しかしそれでも4発動時に発射すればと有象無象を全て撃破出来るのでは? という希望はあった。だがやはりそんな都合のいい話はないかとスレイは口にしながらベルガリオンの操縦桿を強く握り締め、操縦桿の真ん中のカバーをあけてボタンを押し込む。
「私の夢の……邪魔をするなあッ!!!」
胴体に収納されていたパーツがせり出してきて、空気抵抗が急激に強まり、スレイの手の中で操縦桿が暴れだすが、スレイは力を込めて操縦桿を押さえ込み、強引に機首を安定させる。胴体部、そしてせり出した2つの鋭利なパーツの先にエネルギーが収束され、そして3つの刃が1つになり機体全体を包み込む巨大なエネルギー刃を構築すると同時に、加速したベルガリオンの前に立ち塞がったレストジェミラ達はその装甲が何の意味もないと言わんばかりに両断され爆発し、ベルガリオンの後をスリップストリームで着いて来ていたアステリオンにスレイは叫ぶように指示を告げる。
「アイビスッ! 後15秒後ッ! マニューバ212ッ! パターンαッ!」
ピッタリ15秒でエネルギー刃が解除され、冷却の為に減速したベルガリオンに向かってヒュッケバイン・MK-Ⅲはナックルガードを展開し、ゲシュペンスト・MK-Ⅲはライトニングステークを構えて飛びかかる。
『分かったッ! このおッ!!! あたし達の邪魔をするなぁッ!!!』
だがそれはベルガリオンの後から飛び出したアイビスのアステリオンの放ったマシンキャノンによって妨害され、僅かに動きを止めたその隙にソニックブレイカーを展開したアステリオンに蹴散らせれ、機体を大きくへこませる。
『スレイ! 今度はあたしが先行するよッ!』
「そこまで言ったんだ、しくじるなよ! アイビスッ!」
ソニックブレイカーを展開したまま加速するアステリオンの後をベルガリオンが後を追って加速し、ヒュッケバイン・MK-Ⅲ達の包囲網の中へと自ら飛び込んでいく……だがその姿は自暴自棄な物ではない。自分達の夢を取り戻す……その強い決意に支えられた翼はどんな障害に屈する事は無く、どこまでも高く、そしてどこまでも速く空を駆ける。
『ごめん! スレイッ! これ以上は維持出来ないッ!!』
「十分だ! 距離は十分に稼いだッ!! アイビス合わせろッ! 一気にライノセラスとバレリオンの所まで切り込むぞッ!」
『了解ッ! ならマニューバRaMVsだね!?』
「その通りだッ! いくぞ、アイビスッ!」
ソニックブレイカーを解除したアステリオンはミサイルを放ちながら再び加速する為の溜めに入る。その隙をスレイのベルガリオンがミサイルとマシンキャノンを放ちガードする。
『スレイいけるよッ!』
「遅れるなよ! アイビスッ!」
テスラドライブが臨界状態に入り、アステリオンは白銀の光に、そしてベルガリオンが真紅の光に包まれる。
「『マニューバRaMVs……GOッ!!』」
互いの機体に搭載されている射撃武器が全て解放され、凄まじい弾雨がスレイとアイビスの道を塞ぐ敵を撃ち貫き2人が進む道が抉じ開けられる。
『スレイ! このままライノセラスに突っ込んだら駄目かな』
「賛成だ、6分と言わず一気に抜けるぞッ!!」
『うんッ!!』
互いが互いを高めあい、そして互いを助け合いながら加速する流星と彗星は自分達の夢への道を塞ぐライノセラスへと突撃し、その強固な突き破る。
「4分20秒……完璧だ、行くぞ、アイビスッ!」
『うんッ!』
進路を強引に抉じ開けたアステリオンとベルガリオンは更に加速し、テスラ研へと向かう。
『想定以上だな。文句のつけようが無い』
『夢という原動力の力か……感心している時間はない、この場はカーウァイ大佐達に任せて行くぞレーツェル』
アイビスとスレイが作った進路をハガネ達が到着するまでの防衛はクロガネとカーウァイ達に任せ、ゼンガーとレーツェルもテスラ研へと向かっていくのだった……。
高速で飛び去っていくヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベとグルンガスト参式・タイプGを双眼鏡で見つめていたチャイナドレス姿の女――フェイは手にしていた双眼鏡をジープの後部座席に投げ捨て、助手席に座り込む。
「どうする、バロン。ここまでは来たが、どうやって鋼機人を取り出す?」
「そうですねえ……どうしましょうかあ」
「おい」
この期に及んでのほほんとし、緊張感のないバロンにフェイがドスの聞いた声で言うとバロンは両手を上げた。
「殴るのは勘弁を、久しぶりに従兄弟に会うのに顔「じゃあ、腹だ」ぐぶっ……ふ、ふふふふ……フェイ……手加減を覚えたんですね?」
顔は駄目だと言うと即座に腹に拳を叩きこんでくるフェイに冷や汗を流しながらバロンが言うと、フェイは無言で拳を鳴らした。
「もう1発行っとくか? 運転はあたしでも出来るんだぜ?」
「え? 免停されすぎて運転免許再発行されないのに?」
「煽ってんじゃねえよッ! んで、どうすんだ? あたし達じゃ格納庫を開けれねえぞ」
リシュウに言われたポイントまで来ていたフェイとバロンだが、インスペクターの侵略のせいで電力が通っておらず。格納庫の中に入る事が出来ない状態だった、ここまで来たのに見ているだけか? と不機嫌そうに言うフェイにバロンはにこやかに笑った。
「何を言ってるんです? 格納庫なら開けれるじゃないですか?」
「あん? お前何呆けたことを言ってんだ? このでけえ扉を、電力も無しでどうやって開けるんだ?」
電力が通っておらず、搬入口も無い格納庫にどうやって入るんだと言うフェイの言葉にバロンはサングラスを外し、エルザムやライに似ているが、眉や目の形から柔らかいと言えば聞こえは良いが、どこかほにゃりとした顔付きを見て、フェイはふんっと鼻を鳴らした。
「相変わらず気の抜ける顔をしやがって」
「ははは、ですからサングラスをしているんですよ。少しは真面目に見えるでしょう?」
「どうだか……んで、どうするんだ?」
「あそこに沢山あるじゃないですか、僕達が乗れそうな機体がね」
バロンの指差す先にはプレアディスで穴だらけにされ、ギクシャクとした様子で動くゲシュペンスト・MK-Ⅲとヒュッケバイン・MK-Ⅲの姿があった。
「あれで格納庫の扉をぶっ壊すってか」
「不満ですか?」
「いや、あたしららしくて良いんじゃねえか? なんせあたしもお前もお尋ね者だ」
「本当、なんで僕達を指名手配しますかねぇ。これでも正義の味方のつもりなんですが……」
旧西暦の資料を多く持つフェイもバロンも上層部からすれば目の上のたんこぶであることは変わらず、テロリスト予備軍として指名手配されている身だ。
「はっ! んなもん名乗ろうとするから駄目なんだ。あたしらは自分の我を通す、それだけで良い。うら、行くぞ。ハガネまで出てきたら沈められちまう」
「ですねえ。いや、まぁクロガネとクロガネの機体でもやばいんですけどね。とは言えそれしか手段がありませんからねえ……」
格納庫の中に眠る鋼機人を手にする為にフェイとバロンはジープを降りて、ボロボロのゲシュペンスト・MK-Ⅲの方へと走る。
「コックピットブロックが壊れてんな。好都合だ、おい。エセ貴族、外すなよ?」
「はいはいっと、お任せあれ」
軽い口調で放たれたマグナムの銃弾はバイオロイドの額を撃ちぬき、完全に機能を停止させる。
「そんな旧式で良くやるぜ」
「射撃は得意なんですよ。僕はね? さ、急ぎましょうか。派手にドンパチあるでしょうからねえ」
柔和な笑みを浮かべ、ゲシュペンスト・MK-Ⅲの装甲に向かってワイヤーを射出したフェイは、バロンを小脇に抱えたまま、それを巻き取る事でコックピットまで一気に移動する。
「やれやれ、普通逆だと思うんですけどね」
「うっせえ虚弱体質。さっさと後ろに回れ、動力が損傷してるから本当に時間がねぇ」
「はいはい、すいませんね。一応保険で統合軍の識別コードを出しておきますか」
「それで撃たれたらてめえのせいだからな、行くぜえッ!」
乗っ取ったゲシュペンスト・MK-Ⅲを操り自分達の機体を手にする為にフェイとバロンは岩山に偽装された格納庫へとゲシュペンスト・MK-Ⅲを向かわせるのだった。
「不自然な識別コードを確認、リリー中佐、いかがしますか?」
「不自然なコード? 確認し……ッ。問題ありません、そのゲシュペンスト・MK-Ⅲは友軍です」
「友軍? しかしリリー中佐。あれはインスペクターに複製された機体ではないのか?」
「ですが、パイロットは違います。あの機体に乗ってるのは……エルザム様達の従兄弟ですわ。姿を消して長いですが、まさかこんな所で会うとは思っていませんでしたわ」
「エルザムの……そうか、マイヤーが旧西暦の資料を託したという……なるほど、事情は判った。こちらから支援を行え、あと電文だ。支援するとな」
「「「了解です」」」
ビアンの指示で支援命令と電文がゲシュペンスト・MK-Ⅲへと送られる。
「お、お前ちゃんと役立つじゃねえか。ヴォルフ」
ヴォルフ・V・ブランシュタイン。DC戦争の前にコロニーを捨て、旧西暦の資料を手に地球へと降りた考古学者――それがバロンを名乗るこの男の正体だった。だが本名を言われたバロンは嫌そうな表情を浮かべる。
「止めて下さいよ、本名を言うの。僕、狼ってキャラじゃないですからね。貴方だって本名嫌いでしょう?」
「はいはい、あたしが悪かった。これで良いだろ? おら。しっかり捕まってな。一気に行くぜッ!!」
ビアン達の支援を受けたゲシュペンスト・MK-Ⅲは拳を格納庫に叩き込み、扉を強引にこじ開け、フェイとバロンはコックピットを飛び出し格納庫の奥へと走り出すのだった……。
「各員に告げる! スレイとアイビスの両名がテスラ研への突破口を開いたッ! 帰艦せよッ! 繰り返す! テスラ研への突破口を開いたッ! 各員帰艦せよッ!」
インスペクターの無人機と戦っていたリュウセイ達はハガネから響いた帰艦命令に驚きを隠せなかった。
「もうかよッ!? 早すぎるじゃねえかッ!?」
『それだけアイビスも必死という事だ。それよりも帰艦だ、合体を解除するぞ』
ライの言葉の後にSRXは分離し、R-1、R-2・パワード、R-3・パワードへと分離する。
『因縁は俺にもある。突破口が開いていると言うのならば俺に先行させてくれ』
鉄甲鬼に乗っているコウキから先行させてくれという通信が入った。この状況での独断専行は許されるものではない……だが、それがコウキとなれば話は変わってくる。
『コウキ博士、テスラ研の防衛システムの無力化は可能なのか?』
インスペクターに制圧されているテスラ研の防衛システムが救出に向かうダイテツ達に牙を向く可能性は十分にあった。スレイとアイビスがコウキに渡されたプログラムディスクを持っているとは言え、2人は専門家ではない。無力化できない可能性は十分にあった。アステリオンほどでは無いが、十分なスピードを持つ轟破・鉄甲鬼ならば再び包囲網が形成される前に突破する事は十分に可能であり、撃墜される可能性も低い筈だ。
『俺と鉄甲鬼なら出来る。レールガン等の対艦装備を無力化させれば予定よりも早く進軍出来るはずだ』
上層部、そしてノイエDCの計画よりも早く進軍する事が相手の計画を瓦解させる事に繋がる。
『私はコウキ博士に任せても良いと思います』
『ダイテツ中佐、私もです』
レフィーナ、リーの進言がダイテツへと向けられるが、ダイテツの結論もレフィーナ達と同じものだった。
『60秒後にハガネ、ヒリュウ改、シロガネの主砲を発射する。それを合図にしてテスラ研へ向かってくれ』
『任された、必ず対艦装備を無力化させてくる』
コウキの力強い言葉にダイテツ達はコウキを先行させる事を決め、60秒後に放たれた主砲が降下してきたレストジェミラ達のど真ん中で炸裂し、包囲網を強引に抉じ開け、そこを轟破・鉄甲鬼がマントを翻し強行突破する。
「我々も続くぞ! 各機帰艦したな! 全速前進ッ!」
『時間を掛けてはならんッ! 最大戦速ッ!』
『整備兵は補給を急いでくださいッ!』
3隻のE-フィールドを同調させ、強固なバリアを展開したハガネ達は多少の被弾などお構いなしに敵陣のど真ん中へ艦首を捻じ込み、先行しているクロガネと合流すべくアメリカ大陸の上空へと進軍を開始するのだった……。
あまりにも早いハガネ、シロガネ、ヒリュウ改の進軍速度は当然ながらインスペクター・ノイエDC・百鬼帝国にとっても想定外の進軍速度であった。
「もうハガネ達は上陸したのか!? 遅れを取るな! 我々も包囲網を突破するぞ! アーチボルド隊に伝達ッ!」
「了解ッ!!」
「これは地球を守る戦いだ。各員、奮起せよッ!」
確かにノイエDCは百鬼帝国の傘下ではある。だがすべてがそうではない。本当に地球の未来の為に、そしてビアンが本物だと信じている軍人も多く存在している。一部のノイエDCの悪逆が目立ちすぎているだけで、ノイエDC全てが悪と言う訳ではないのだ。
「やれやれ…随分と気合が入っていますねぇ。艦長減速を」
「は、了解です」
「どうせですから、正義に燃える馬鹿達にも死んでもらいましょうか。その方が都合がいいですからねぇ」
だがアーチボルド達は、そんな正義に燃える兵士達を鼻で笑い、自分達にとっての本番へと備える。
「ハガネ達を沈める事が僕達の任務です。正義に燃える馬鹿達は精々、僕達の隠れ蓑として頑張って貰いましょうかね」
インスペクターとノイエDCは手を組んでいる。この戦は出来レースであり、そこまで熱を入れるものではないとアーチボルドは笑い、インスペクターの攻撃で墜落して行くアーマリオン達を見て楽しくて仕方ないと言わんばかりの残虐な笑みを浮かべる。その顔はまるで映画でも見ているかのような、人の生き死にを娯楽としか感じていない人格破綻者の姿その物だった……
「想定通りだ、驚く事はない。予定通りラングレー基地に戦力を集結させろ。勿論ヴィンデル達もだ」
ブライにとってダイテツ達が強行突破を仕掛けて来るのは想定内であり、驚く素振りも見せず、優雅な素振りでチェスの駒を動かし、自分の計画通りだと笑う。
「フェフェフェ……楽しみじゃ、楽しみじゃなあ」
「……お前の下賎な声は耳に障る」
「おうおう王を気取る馬鹿が吼えておるわ」
「……貴様」
「やるか? 人間共を殺す前にお前を血祭りに挙げてやっても良いのだぞ?」
「やめんか、お前の敵はラングレーに現れる。それまで大人しくしていろ」
ブライは今自分が動かせる最大戦力を携えてラングレーへと向かう。ここで沈むような物ならば、警戒した自分が馬鹿だと笑うまで、しかしこの戦いを切り抜けるのならば……
(本腰を入れて戦うべき敵だと認めようではないか)
ブライにとって警戒するべきはゲッターロボと武蔵だ。ハガネ達は武蔵のおまけという認識である、しかしこの張り巡らされた罠を乗り越え、生き延びて見せたのならば……自分の野望を阻む敵であると認め、本気で潰す事を決め、指先で摘んでいたチェスの駒を握り締め、粉々に砕くのだった……
戦いを楽しむつもりのアーチボルド、自分の野望を阻む敵なのか見定めるつもりのブライに対して、ラングレー基地に陣取っているインスペクター陣営には余裕は無く、強い焦りの色が感じられていた。
「何故だ!? 何故ハワイ地区が奪還された! アギーハは何をしていたッ!?」
ハワイ地区の担当だったアギーハがハワイを奪還された事に、ヴィガジは苛立った様子で怒鳴り声を上げる。
「何故だって!? お前の尻拭いで大破したシルベルヴィントの修復が十分じゃなかったからだろうが! そうやって文句を言うのなら、てめえが前線に出れば良かっただろ? なぁ? シカログ?」
責任をアギーハに押し付けようとしていたヴィガジは、メキボスの正論と不満げに睨んでくるシカログに何も言えず、呻き声を上げる。
「それで、俺達に待機を命令している真のリーダーさんの次の一手はどうするんだ?」
煽るようなメキボスの言葉に、ヴィガジは肩を震わせ拳を握り締める。
「俺が出る! テスラ研を奪還されてはウェンドロ様に申し訳が立たんッ! メキボス、シカログ! ラングレーは任せる! 俺は前線へ向かうッ!」
言うが早く司令室を飛び出して行くヴィガジをメキボスとシカログは見送った。
「なぁシカログよ。ホワイトスターでゲッター合金を使った新型機が作られてるが、俺達はゲッター線に触れてよかったと思うか?」
返事はないと思っていたメキボスが愚痴のように呟く、するとシカログはゆっくりと口を開いた。
「……触れるべきではない、大いなる災いが俺達に迫るだろう。だが……最早引き返せん……メキボス、気をつけるがいい」
強い後悔を感じさせるその言葉にメキボスは驚いたように目を開いた。
「ありがとよ、心配してくれて」
ゲッター合金を使った新型機の第1号はメキボスのグレイターキンがベースとなっており、既にラングレーに配備されている。直接乗り込んだことはないメキボスだが……ゲッター合金を使われたグレイターキンには言葉に出来ない不気味さを感じていた。
「俺達はゲッター線に誘い込まれたのかも知れねえなあ……」
かつてゾヴォークはゲッターロボに滅ぼされかけている……分不相応に再びゲッター線に手を伸ばした自分達はもしかしたら自分達の意志ではなくゲッター線に誘い込まれたのではないか? メキボスは口にはしないがそんな風に感じていた…なぜならば……メキボスの目にはゲッター線が人型の姿を取り、歩き回っている姿が見えていたのだから……
第163話 白銀の流星、真紅の彗星 その3へ続く
今回は指定エリアに到達するシナリオだったのでオリキャラや今後のフラグを混ぜてみました。テスラ研争奪戦、そしてラングレー攻防戦の難易度アップ予告ですね。敵も増えますが、味方も増える予定です。あとメキボスはゲッター合金製のグレイターキンに乗って呪われているのでメンタル低下中です。多分他の四天王も後のこうなる予定ですのであしからず、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
期間限定解除ガチャ
ファイナルカイザーブレード狙いで2階引いてきました
ファイナルカイザーブレード×3
真ゲッターチェンジアタック×2
ハイマットフルバースト×3
カオスハーマー
スラッシュハーケン×2
と割りと満足な辺りでした
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い