進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第163話 白銀の流星、真紅の彗星 その3

第163話 白銀の流星、真紅の彗星 その3

 

 

百鬼帝国の機動戦闘母艦はそれぞれ五本鬼に預けられている空戦鬼、龍王鬼の母艦である陸・海に特化にした亀の姿をした陸皇鬼、そして異形の魚の姿をした水皇鬼――それは人類側の箱舟であるスペースノア級に匹敵する巨大戦艦であると同時に、強大な力を内包した百鬼獣でもあるのだ。

 

「本当、百鬼帝国の技術力には驚かされるわよねぇ」

 

陸皇鬼の格納庫の一角でスレードゲルミルの整備をしていたレモンは呆れるような、驚くような、何とも言えない声色でそう呟いた。3隻の母艦は皆内部に百鬼獣の製造プラントを有しており、特別な百鬼獣を除けば短時間で複数の百鬼獣を製造するのも不可能ではない。テスラ研やマオ社、そしてアースクレイドルを上回る製造技術を持ち、それが百鬼帝国の電撃戦を支えているのだ。その設備の一部を使う事を許可されたレモンは、ソウルゲインやスレードゲルミルの改修を行ないながらしみじみした様子でそう呟いた。本来、ワンオフで整備も改造も難しいソウルゲインとスレードゲルミルを改造できる設備、そしてゲッター合金までも加工出来る設備が戦艦の中にあるのはレモン、いや新西暦の住人にとって驚くべき光景と言えた。

 

「レモン様……」

 

「あら、ウォーダン。起きたのね? 気分はどうかしら?」

 

ゼンガーのコピーであるウォーダンも下戸であり、酒盛りに巻き込まれ、速攻で酔い潰されていたウォーダンにレモンがからかうように尋ねる。

 

「……既に万全となっている」

 

「ふふ、それなら心配はないわね?」

 

返事に若干の間があったが、レモンはそれをあえて指摘せず柔らかく微笑み、改修したスレードゲルミルを見上げる。

 

「ゲッター合金製の斬艦刀に各部装甲の強化、それに高性能のブースター、今出来る限りでベストな仕上がりよ。出来ればゲッター炉心も搭載したかったんだけど……まあ流石にそこまでは無理ね。ゲッター炉心を搭載していないからゼンガー・ゾンボルトのグルンガスト参式よりは僅差で劣っているけど……マシンセルを搭載している分貴方の方が上ね「マシンセル……正直興醒めだ。確かに俺とスレードゲルミルには必要だろう……だが武人としては受け入れ難い」……ふふ、良いわよ。私そういうの嫌いじゃないわ」

 

自分の言葉を遮ったウォーダンの言葉に、レモンは笑みを浮かべる。ゼンガーをコピーしたとは言え、ウォーダンはWシリーズである事に変わりは無く、本来ならばレモンの言葉を遮る事はない……だが、それを覆し自分の言葉を遮ったウォーダンにレモンはラミア、エキドナに続き自我に目覚めようとしている予兆として受け取り、嬉しそうな笑みを浮かべた。

 

「今回の貴方の任務はハガネ達の妨害よ。それさえしてくれればこれをしなさい、あれをしなさいというつもりはないわ」

 

本当にウォーダンが自我に芽生えようとしているのか、それを試すつもりでレモンは明確な指示をウォーダンに与えなかった。これで文字通りに受け取り、ハガネ達に攻撃を仕掛けるのならば興醒めであり、ウォーダンがなんと返事を返すのかとレモンが期待しながら視線を向ける。

 

「妨害……それはテスラ研へ向かえという事か?」

 

「さぁ? それはウォーダン、貴方が決めることだわ。ただそうね……キョウスケはアクセルの獲物だし、ヘリオス……いいえ、ギリアムは私達に必要な人材だから、その2人に手を出さなければ何をしてもいいわよ?」

 

答えを求めるウォーダンにレモンは答えを与えず、自分で考えるようにと促す。

 

「……愚かと、何を馬鹿なと言うかもしれない。だが俺の考えを言っても良いか?」

 

その言葉にレモンは返事を返さず、身振りで続けなさいと促す。

 

「……クロガネ、いやゼンガー・ゾンボルトはテスラ研へ向かっている。そこでもし新たなる剣を手する為に向かっていると言うのならば……俺は……」

 

そこで言葉を切ったウォーダンにレモンは続く言葉が何かと期待する。

 

(これでインスペクターに協力する、それを妨害すると言うのならばWシリーズの考えだけど……)

 

「俺はそれを手伝うだろう。これは裏切りか?」

 

「……内容によるわね。どうして手伝うの?」

 

「万全な状態で、そして最強のゼンガーを倒してこそ、俺は俺になれると考える」

 

「ふふ、良いわよ。ウォーダン、貴方の好きにしなさいな」

 

「感謝する」

 

軽く頭を下げてスレードゲルミルへと歩き出すウォーダンの背中を、レモンは楽しそうに見つめる。己で考え、そして出した答え……レモンはそれをよしとする。

 

(人形では勝てない、人にならなければ貴方はゼンガーには勝てないわ。その為の一歩を踏み出したのね、ウォーダン)

 

人形では人には勝てない……自分の限界を知り、それを越えようとしない人形では、守る為に、己の意志を貫く為に戦う人間には勝てないのだ。だが、ウォーダンは己の意志を得て、そして今ならば勝てるであろうゼンガーと戦う事を良しとはしなかった……それは紛れも無く意志の現れであり、レモンはそれを心から祝福するのだった……

 

 

 

 

 

アステリオン、ベルガリオンの2機が先行する後ろを、ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベとグルンガスト参式・タイプGが続く。テスラ研への空路、陸路は共にインスペクターの無人機で埋め尽くされており、その道はとても険しい物だった。

 

「スレイ! アイビス! 余力を残しておけッ! ある程度は私達に任せるんだッ!」

 

テスラ研に辿り着いたとしてもそこでの戦いも残っている。だから余力を残しておけとレーツェルが声を掛けるが、スレイとアイビスは大丈夫だと返事を返した。

 

『問題ありません、弾薬もエネルギーも十分に残しています』

 

『露払いはあたしとスレイがやりますから! 2人は万全な状態でテスラ研へ! あたし達は多分……そこだと役立たずになるから、あたし達が戦える間はあたし達に任せてください!』

 

テスラ研には百鬼獣、そしてインスペクターの指揮官機が待ち構えている可能性が高い、そこに辿り着けばアステリオンとベルガリオンでは力不足だ。だから百鬼獣と戦えるレーツェルとゼンガーに消耗をしないでくれとスレイとアイビスは声を揃える。

 

『友よ、俺達の負けだ』

 

「しかし……」

 

『俺達は万全な状態でテスラ研へ向かい、師匠達を助ける。それがあの2人の信頼に報いる方法だ』

 

本当は自分達が助けたい、だけどその力が無い。だから助けられるゼンガーとレーツェルに託す――それがスレイとアイビスの戦いであり、決意だった。それを無碍にするなというゼンガーの言葉にレーツェルは頷いた。

 

「あと少しだ! 無茶だけはしてくれるなよッ!」

 

『大丈夫です! 行くぞ! アイビスッ! 残りの距離を突っ切るッ!!』

 

『OK! スレイッ!!』

 

アステリオンとベガリオンのテスラドライブが同調し、巨大なソニックブレイカーを展開して敵陣のど真ん中へと突っ込んで行き、無数の無人機を両断しゼンガー達の進む道を作り出す。再び防衛線が敷かれる前にグルンガスト参式・タイプGとヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベはその包囲網を抜け、テスラ研へと最大速度で向かう。

 

『見えた! テスラ研だッ!』

 

『帰ってきた……私達は帰ってきた……全てを取り戻すためにッ!』

 

無数の百鬼獣、そしてインスペクターに鹵獲、複製された地球側の兵器であるPTとAMの大軍――今までの戦いは所詮前座であり、テスラ研を巡る戦いの幕は今切って落とされ、そしてテスラ研に囚われているジョナサン達もまたひそかに戦い始めていた。

 

「敵機、接近中。 数、4。全機、迎撃態勢ヘ移行」

 

無機質な声を聞いてジョナサン達はインスペクターに提出する資料を纏める手を一時止めた。

 

「彼らにとって敵ということは……ッ!」

 

「ワシらにとって味方じゃの」

 

インスペクターのとっての敵はジョナサン達の味方だが、フィリオの顔に浮かぶのは困惑の色だった。

 

「しかし、4機だけとは……もしかして……?」

 

「恐らくフィリオの思った通りだろう」

 

「飛び立った雛鳥達が戻ってきたのじゃな」

 

4機という数は余りにも少ない。インスペクターと百鬼帝国が陣取るテスラ研を奪還するのに、4機では死にに来るような物だ……それなのに来てしまった。テスラ研の上空を旋回する白銀と真紅の流星と彗星を見てフィリオは驚きに目を見開き、その肩を震わせた。

 

「……何故来てしまったんだ……スレイ、アイビス……」

 

「何故って決まってるだろ? 助けに来てくれたのさ、雛鳥が戦乙女となり、2人の騎士を導いて来たんだ」

 

アステリオンとベルガリオンの背後からヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベとグルンガスト参式・タイプGがその姿を現す。

 

「ようやっと来たか……ジョナサン、フィリオ」

 

リシュウが2人に目配せをする。その意味をジョナサンとフィリオの2人は正確に読み取り、敵機の出現に自分達を拘束しているバイオロイド兵の目を盗んで懐のDコンのスイッチを入れる。

 

(コウキが手伝ったんでしょうね)

 

(ああ、やはり彼は最高の弟子だよ)

 

テスラ研の防衛装置が稼動せず、そして一時的にジャミングが解除された。攻撃する素振りを見せず、旋回しているアステリオンとベルガリオンはこのジャミングを発動させる為の動きをしていたのだ。

 

『友よ、ビアン総帥からの預かり物を、そしてお前達を救いに来た。待っていてくれ、私達は必ずお前達を救う』

 

『兄様! 私達は来ました。貴方を助けにッ! やっと来れましたッ!!』

 

『絶対に、絶対に助けるから、あと少しだけ待っててッ!!』

 

一瞬だけの通信、それでも必ず助けると、救い出してみせるという強い決意を感じさせる言葉にフィリオ達の目尻に思わず涙が浮かぶが、天井に向けられて発砲された銃声にその感動は一瞬で掻き消される。

 

「……緊急時ニ付キ、オ前達ノ身柄ヲ拘束スル。抵抗シタ場合ハ射殺スル」

 

無機質な声と共に銃を突きつけてくるバイオロイド兵の姿は今までと異なり、明確な殺意を感じさせた。

 

「おや、 我々を殺しても良いのか? ここのデータを纏められる者がいなくなるぞ」

 

ジョナサンがそう声を掛けるが、バイオロイドの返答は再びの銃声だった。今まではデータを纏められなくなると言うと一時スリープモードに入っていたが、今回は完全に戦闘態勢に移行しているのかより敵意を増させる結果になってしまった……自分の隣のPCに撃ち込まれた銃弾を見てジョナサンの額から冷たい汗が滴り落ちた。

 

「抵抗シタ場合ハ射殺スル」

 

重々しい音を立てて今度は自分に銃口を向けてくるバイオロイド兵を見てジョナサンは即座に両手を上げた。

 

「分かった、分かった。 降参だ、大人しく従うよ」

 

ここで下手に刃向かえば殺されるという事を悟り、ジョナサン達はバイオロイド兵に囲まれながらいた部屋を後にする。

 

(ジョナサン……分かっておるな)

 

(分かっています。 何としてでもダブルGを彼らに……フィリオも良いな?)

 

(ええ……大丈夫です)

 

ビアンから託されたダイナミックゼネラルガーディアン――ゼンガーとエルザ……いやレーツェルの為に作られたスーパーロボットを託す為に、ジョナサン達もまた命を賭けた戦いに身を投じようとしているのだった……。

 

 

 

 

 

テスラ研の防衛装置はコウキによってスレイとアイビスに託されたプログラムによって無力化されていた。だがそれはあくまで研究所の防衛システムであり、それ以外は依然スレイ達にその牙を向けていた。その圧力にスレイとアイビスが思わず息を呑む、無機質な殺意と敵意。それが全方向から向けられるのだ……それは弾き返すにはまだスレイとアイビスには戦闘経験が足りていなかった。

 

「……レーツェル。雑魚は俺達が引き受けるッ! お前は一刻も早く師匠達の元へッ!」

 

参式斬艦刀を抜き放ち、前に出るゼンガーの叫びにスレイとアイビスは我に返り、それぞれの機体の操縦桿を強く握り締める。

 

『了解した! スレイとアイビスは私の支援を頼む! ゼンガー無理をするなよッ!!』

 

ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベがテスラ研へと向かい、その後をアステリオンとベルガリオンが続く、その後を追って双剣鬼と牛角鬼が唸り声を上げて動き出した瞬間に白い光が走り、双剣鬼と牛角鬼は両断され爆発炎上する。

 

「ここから先は通さんッ!!」

 

参式斬艦刀を構え百鬼獣の前に立ち塞がるグルンガスト参式・タイプGの装甲が開き、フェイスガードが展開される。

 

(出し惜しみをしている余裕はない、全力で行く)

 

百鬼獣を相手にして手札を隠している余裕はないと判断したゼンガーはゲッター炉心を起動させる。

 

「キシャアアアッ!!!」

 

「ウガアアアッ!!!」

 

「来いッ! 俺が相手だッ!!!」

 

ゲッター炉心に反応した百鬼獣が唸り声を上げ、地響きをあげてグルンガスト参式・タイプGへと襲い掛かる。

 

「おおおおッ!!!」

 

「グルルウウッ!!」

 

鉤爪を突き出してくる双頭鬼の一撃を参式斬艦刀で受け止め、返す刀で右腕を切り落とし、前蹴りを叩き込んで双頭鬼を蹴り飛ばす。

 

「ぬうっ!!!」

 

距離が近すぎて参式斬艦刀を振るう間合いが無かったからこその蹴りであり、参式斬艦刀を再び振り上げたグルンガスト参式・タイプGの背後を凄まじい衝撃が襲い、たたらを踏んだ間に双頭鬼は地面を蹴り、グルンガスト参式・タイプGから逃げおおせる。

 

「ヒャハハハハッ!!!」

 

衝撃の正体は白骨鬼の両手のガトリングであり、特機サイズのマシンガンの掃射はゲッター線バリアを貫通し、グルンガスト参式・タイプGの背部装甲を容赦なく抉る。

 

「オメガブラスタァァアアアア!!!」

 

振り返ると同時に胸部から放たれたオメガブラスターが白骨鬼へと放たれ、熱線に飲み込まれた白骨鬼の装甲が溶け、内部装甲が露になり、動力炉が爆発して白骨鬼の周辺の百鬼獣を弾き飛ばし、その隙にグルンガスト参式・タイプGは態勢を立てなおし、再び参式斬艦刀を構えなおすと同時に背部ブースターを全開にし、百鬼獣へと肉薄する。

 

「チェストォッ!!!」

 

「ギッ!? ギャアアアアッ!?」

 

双剣鬼が両手をクロスさせ、参式斬艦刀を防ごうとするが、裂帛の気合と共に振るわれた一閃は双剣鬼の防御を突き破り、双剣鬼を両断する。

 

「おおおおッ!!!」

 

「ギッ! シャアアッ!!!」

 

「ゴガアアアッ!!」

 

参式斬艦刀を双頭鬼、牛角鬼が2機掛かりで受け止め、参式斬艦刀の勢いを殺し、巨大な頭部のみの百鬼獣、迅雷鬼がその角から稲妻をグルンガスト参式・タイプGへと放った。

 

「うぐうううッ!!! がああああッ!!!?」

 

凄まじい電撃に流石のゼンガーも苦悶の声を上げる。その悲痛な叫びに思わずアイビスが動きを止め、アステリオンを反転させようとする。

 

『止めろアイビス!』

 

『で、でもッ』

 

『ここで攻撃を加えれば我々も攻撃される! 今は目の前の敵に集中しろッ!』

 

ゼンガーが百鬼獣と対峙しているからこそ、スレイ達はテスラ研に向かう事が出来ていた。それでもヒュッケバイン・MK-Ⅲやゲシュペンスト・MK-Ⅲ、そしてレストジェミラの包囲網は厚く、テスラ研に向かう事も難しい中、百鬼獣へ攻撃を加えれば挟撃になる可能性が極めて高く、アイビスの動きをスレイが静止する。

 

『ゼンガー少佐が……このままじゃ』

 

『大丈夫だ。ゼンガーならばあの程度の危機は自分で切り抜ける! 私達はフィリオ達を助ける事に集中するんだ!』

 

レーツェルはそう一喝し、テスラ研の前に陣取っていたバレリオンに向かってフォトンライフルを撃ち込むと同時に加速し、包囲網を突破する。

 

「う、うおおおおおおお――ッ!!!」

 

その背後ではゼンガーの雄叫びと、迅雷鬼の断末魔の叫びが響き、少し遅れて凄まじい爆発音がスレイ達の背後から響き渡り、レーツェルの言葉はゼンガーを信じているからこその言葉であると悟ったスレイとアイビスは今度こそ振り返らず、レーツェルの支援を行いながらテスラ研へと機体を向かわせるのだった……。

 

 

 

 

 

格納庫でガルガウの調整を終えて出撃したヴィガジは、ガルガウのモニターに映る光景に目の前が真っ暗になるのを感じていた。

 

『うおおおおおッ!!!』

 

ラングレー基地の制圧戦でヴィガジに辛酸を舐めさせたグルンガスト参式・タイプGが、百鬼帝国から貸し与えられていた最後の百鬼獣を両断し、黒いヒュッケバイン・MK-Ⅲがテスラ研の入り口に着陸する光景を見たヴィガジは操縦桿を握り締め、ペダルを強く踏み込んでいた。

 

「この研究所と人員には利用価値がある……貴様らには渡さんぞッ!!!」

 

テスラ研を奪われれば今度こそ自分はウェンドロに見限られる――それを恐れたヴィガジはブースターを全開にしヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベへと肉薄し、巨大な爪をヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベへと突き立てようとする。

 

『させんッ!!!』

 

「ぬううッ! また俺の邪魔をするかあッ!!!」

 

ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベとガルガウの間に割り込んだグルンガスト参式・タイプGが、ガルガウの突進を受け止める。

 

『特殊弾頭はセットしたか!』

 

『OKッ! いけるよッ!!』

 

上空を旋回していたアステリオンとベルガリオンが放ったアーマークラスター弾がガルガウを襲い、ヴィガジはたまらずガルガウを後退させる。

 

『……後は頼むぞ! 友よッ!!』

 

「ちいっ! 行かせるかぁッ!!」

 

ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベから飛び降りたレーツェルを見て、ヴィガジは短絡的に火炎放射を使う構えに入った。それは地球人……もっと言えば監査中の現地人は殺してもかまわないというゾヴォーク特有の傲慢な考えからだった……あとはボタンを押せば発射されるという段階で、ヴィガジはその指を止めた。勿論殺すのを躊躇った訳ではない……ヴィガジにとって想定外のイレギュラーがあったからだ。

 

(馬鹿な、何故カザハラ達は移動している!?)

 

バイオロイド兵達によってジョナサン達が移動させられており、今火炎放射を放てばジョナサン達が死ぬ……そうなればテスラ研のデータは消失する……その事に気付いたヴィガジは、あと少しと言う所で攻撃を止めた。

 

『レーツェルさんはやらせないッ!』

 

『いつまでもお前達の隙にさせると思うなよッ!!』

 

ガルガウは強力な特機ではあるが、動きを止めていれば的に過ぎない、無人機の相手をしていたアステリオンとベルガリオンが急旋回し、ソニックドライバーの銃弾とレールガンの弾頭がガルガウの頭部を捕える。

 

「ぐっぐうッ!? おのれッ!! メガ……」

 

ガルガウの頭上を飛び越えていくアステリオンとベルガリオンに向けて、胸部のメガスマッシャーを発射しようとしたヴィガジ。乱戦の中で目の前の敵から視線を逸らすと言うのは愚の骨頂だが、完全に頭に血が上っていたヴィガジは、グルンガスト参式・タイプG、そしてゼンガーへの警戒を緩めてしまった。

 

『させんッ! アイソリッドレーザーッ!!!』

 

その隙を、ゼンガーほどのパイロットが見逃す訳が無く、目から放たれた光線がガルガウへ襲い掛かる。

 

「ぬうっ!? くそくそくそッ!!! 俺の邪魔を……『うおおおおッ!!!!』 うがあッ!?」

 

再びグルンガスト参式・タイプGへと視線を向けたヴィガジの目の前に広がったのは肩を突き出して突進してくるグルンガスト参式・タイプGの姿であり、身構える間もなく肩口からの体当たりを食らったガルガウの巨体は宙を舞い、テスラ研から遠く離れた場所へと弾き飛ばされる。

 

「ふー……ふー……落ち着け……まだ大丈夫だ、まだ慌てる段階ではない」

 

一方的に攻撃を受けたヴィガジは、自分に言い聞かせるように繰り返し呟き、ゆっくりとガルガウを立ち上がらせる。確かに連続で攻撃を受け、僅かだがアーマークラスター弾を受けたのは確かに不味い状況だ。しかもテスラ研には敵が乗り込んでしまっている……だが、それでもまだヴィガジの優位性は完全に失われたわけではない。テスラ研の中には僅かだが鬼もいる、その上バイオロイド兵が複数ジョナサン達の監視をしている。たった1人で救出出来る訳が無い……そう考えればヴィガジは冷静さを取り戻す事が出来ていた。

 

「フン、たった1人でこのガルガウを止める気か?」

 

確かにグルンガスト参式・タイプGは強力な機体ではあるが、百鬼獣と戦う為に最初からゲッター炉心を使っていた事による機体へのダメージは決して甘く見れるものではなく、そして冷静さを取り戻したのならばアステリオンとベルガリオンがガルガウにダメージを与える術は無く、無人機へアステリオンとベルガリオンへの攻撃を命じればこちらへ妨害する術はない……消耗しているグルンガスト参式・タイプGと、僅かなダメージを受けているがほぼ万全なガルガウでは自分が負ける訳が無いとヴィガジはほくそ笑んだ。そしてその上でゼンガーを挑発する言葉を投げかける。

 

「その闘志は見上げた物だが、 状況が見えていないようだな……やはり、所詮は下等な野蛮人……」

 

『黙れッ!! そして聞けッ! 我が名はゼンガー! ゼンガー・ゾンボルトッ!! 我は悪を断つ剣なりッ!!』

 

ヴィガジはゼンガーの圧倒的な闘志に呑まれ言葉を失った。ヴィガジが査察官として活動した星では、絶望的な状況に心が折れる者しかいなかった……だがゼンガーは、この絶望的な状況でもその闘志を失わず、ヴィガジを圧倒するだけの咆哮を上げる。

 

「何が悪だッ! それは貴様らの方だッ! 再びゲッター線を使い銀河を滅ぼそうとしている貴様達こそが悪なのだッ!」

 

『我らの星へ一方的に攻め込んでおいて何を言うかッ!』

 

ヴィガジからすれば、1度宇宙全体を滅ぼしかけ、どこかへと消え去ったゲッター線を再び呼び覚ました地球人こそが悪という考えを決して変えることはない、だがゼンガー達からすれば突如地球に攻め込んできたインスペクターこそが悪であると言う考えが変わることはない。

 

「予防策なのだよ、これはッ! ゲッター線の危険性も知らずッ! それを使い続ける貴様らは宇宙を滅ぼす病原菌となるッ! 貴様らのような下等な野蛮人はこの宇宙に存在する価値すらないッ!」

 

ヴィガジの駆るガルガウがその爪をグルンガスト参式・タイプGへ叩きつけながら己の正当性を叫ぶ。だがそれは一方的な宣告であり、地球に住む人間の事など一切考えていない、自分達だけが正しいのだと、話し合うつもりも、分かり合うつもりも感じさせす、己の傲慢を隠そうともしない一方的な主張だった。

 

『病原菌だと……ッ!? 貴様達は何を根拠に……いや何の権利があってそのような悪逆をするッ!! お前達の攻撃でどれだけの人間が死んだと思っているッ! 何故言葉をかわそうとしなかったッ!』

 

「貴様達のような下等な生物が死んだ所で何の問題があると言うのだッ! 貴様らは銀河の秩序を乱す存在となるッ! 故に我らに監視……いや、支配されて然るべき野蛮人なのだ、何故そのような下等な生物と言葉をかわす必要があるッ!」

 

ゼンガーの主張をヴィガジは鼻で笑い、話し合う価値も無い下等な生物なのだと口にする。その言葉は無人機と戦っているスレイやアイビスの耳にも届いていた。

 

『酷い……なんでそんなことが言えるんだ……』

 

『人の姿をしていたとしてもその精神性は余りにも違うと言うことか……ッ』

 

星の海を飛ぶという夢を抱くスレイとアイビス、いやプロジェクトTDが目の当たりにするかもしれない異星人の残酷な考えを目の当たりにし、スレイとアイビスはその顔を歪めた。

 

『良く判った……お前達と我らが決して相容れないと言うことがな……ッ! お前達は我らを野蛮人と呼んだッ! だが武力を行使し、己の主張だけと通そうとする貴様らもまた野蛮の徒ッ! 己が優れているから何をしても許されると考えている愚かな存在だッ!!』

 

「ええい、黙れッ! 下等生物にそんなことを言われる覚えはないッ! 貴様はここで死ねッ!!」

 

ゼンガーの言葉に激昂するヴィガジだが、ゼンガーの言葉に怒りを覚えるというのは図星であると言う証明であり、そしてそれを認める事が出来ない自分達が優れた種族だと考え他者の意見を取り入れようとしないインスペクターの限界であり、強大な武力、そして知力によって何もかも思い通りにしてきたゾヴォークの人間の最も愚かな部分が表になった男――それがヴィガジという男だった。

 

【やはり愚か、ゾヴォークは発展も変化もなかったのだな……】

 

【自分達だけが人だと思っているような種族はやはり駄目という事だな……】

 

テスラ研の地下――ダイナミックゼネラルガーディアンが格納されている地下格納庫で、翡翠の輝きを持つ人間達がその整備を行い、2人の早乙女博士が残念そうに、しかし分かっていたと言わんばかりの哀れみさえも感じさせる口調でそう呟き、鎧武者を思わせる機体へとその視線を向ける。

 

【お前はゲッター線の意思に選ばれるか? ゼンガー・ゾンボルト】

 

【ゲッター線はただのエネルギーにあらず……そう簡単に御せると思わぬ事だ。心するが良いゼンガー・ゾンボルト。生半可な覚悟ではゲッター線はお前にも牙を剥く事になるだろう】

 

鎧武者を思わせる特機の全身に翡翠の輝きが走り、起動していないにも関わらずその瞳に翡翠の輝きを灯すのだった……。

 

 

第164話 武神装甲ダイゼンガー その1へ続く

 

 




と言う訳で今回もシナリオ進行がメインとなりました。この話もイベントが多いシナリオですからね、こういう感じへとなってしまいましたが、次回はスレードゲルミルやコウキを交えての戦闘回とレーツェルの視点の話を書いてボリュームを増させていこうと思います。

なお今作のダイゼンガーやアウセンザイターはゲッター合金100%+ゲッター炉心なので、実質ゲッターロボなので下手をすると勝手に火星に飛んでいくかもしれないそんなスーパーロボットとなります。そしてタイトルは武神装甲ダイゼンガー以外ありえませんよね?それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

PS グリッドマンガチャは

カズラズーファー
ダブルグラビトンライフル
グリッドビーム

ピックアップを全て引き当てる事が出来ました。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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