進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第164話 武神装甲ダイゼンガー その1 

第164話 武神装甲ダイゼンガー その1 

 

豪華な装飾が施された中華風の一室では孫光龍、泰北三太遊、そして夏喃潤の3人が回転テーブルを囲み、その上の料理を口にしていた。男装の麗人――夏喃は苛立った様子で手にしていた箸を机の上に叩きつけた。

 

「おいおい、マナーがなってないんじゃないかい? 夏喃。そりゃあ尸解仙の僕達には食事なんて意味ないものさ。だけど心が豊かになるだろう?」

 

「何が心が豊かになるだ! いつまでも動き出さずに何がしたいんだ! 孫光龍ッ!」

 

潤からすれば超機人が百鬼帝国の軍門に下り転生しているのも、自分達の超機人を真似た粗悪な朱玄皇鬼の存在も度し難い存在だった。バラルの仙人として人界の守護者として成すべき使命をしない孫光龍に強い怒りを潤は抱いていた。

 

「ほっほっほ、落ち着け夏喃よ」

 

「しかし泰北ッ!」

 

言葉を荒げる潤に三太夫は落ち着けと再び笑いかける。その笑みに毒気が抜かれたのか潤は苛立った様子はそのままに、浮かしかけていた腰を再び椅子の上に降ろした。

 

「夏喃の言う事も判るけど、僕達には今戦力がない事に変わりはないんだ。出来る事は高が知れているだろう?」

 

「……朱武王がある」

 

「無理を言うではない。不完全な修復で戦に出すものではない」

 

「そういうことだね。それにこれは人への試練になる。彼らが地球の守護者として僕らの味方になってくれるか、見極めるのにいい機会じゃないか」

 

飄々としている泰北と茶化してくる孫光龍の言葉に潤の額に井形が浮かび、そんな潤の姿を見て孫光龍は楽しそうな笑みを浮かべたが、突如その顔を忌々しそうに歪めた。

 

「ゲッターロボ以外にゲッター線を使おうとするのはいただけないねぇ。ゲッターロボは象徴でなければならないのだから、今までの小手先の玩具ならば許したけれど……これは度し難いねぇ」

 

テスラ研の地下から感知された膨大なゲッター線反応を感じ取り、孫光龍は忌々しそうにその眉を顰めた。認めたくは無いが、テスラ研の地下で最終調整が行なわれているダブルGはゲッターロボに匹敵する機体である……孫光龍を持ってしてもそれを認めざるを得なかったのだ。

 

「ふぅむ……だがゲッターロボの姿をしていなくともゲッター線を用いているのならば……それもまた人界の守護者と認めても良いのではないか?」

 

「泰北、本気で言っているのかい? ゲッターロボはガンエデンにも認められ、共に戦い地球を守ったんだ。つまりゲッターロボは最強の守護者でなければならない」

 

バラルにとってもゲッターロボの存在は絶対であり、ゾヴォークが危険視するように、バルマーが更なる発展と、その加護を求めるように――バラルにとってゲッターロボは最強の守護者でなければならないのだ。泰北の意見は孫光龍と夏喃の2人から真っ向から否定されたが、それも泰北は善哉と声を上げて笑った。自分の意見も孫光龍の意見も分かるからこそ、無理に自分の意見を通す事は無い、この柔軟性こそが泰北の最も秀でている部分と言っても良いだろう。

 

「妖機人でも嗾けて見るかなあ。僕達がやったって言う証拠も残らないし、もしも今の人類が作った機人がゲッターロボに匹敵する能力を持つのならばそれも良し、どうせここまで乱戦になっているんだ。今更1体や2体敵が増えても気付かないよ」

 

孫光龍の口振りには泰北も夏喃も思う所はあったが、ゲッター線を扱う機人をバラルとして見極めるという責務があると考え、孫光龍の提案を受け入れる事となった。

 

太古の昔、ガンエデンと龍帝が共に戦い地球を守った時――ガンエデンと龍帝の使徒タツヒトは盟約を交わした。それは長い年月の中で暴走しつつあるバラルの仙人達であっても守らねばならない使命となっている。

 

1つは進化の使徒が誤った道に進もうとした時それを止める。あるいは道を正すこと……。

 

1つはゲッター線を乱用せず、悪用せんとするものを監視する事……。

 

そして……最後の1つは

 

「バラルは進化の使徒――つまり武蔵の居場所にならねばならない。時の迷い人である武蔵の帰る場所になるって約束なのだからね」

 

ゲッター線の悪戯によって時を、世界を超えたゲッターパイロットの寄り所になるという事だ。かつての盟約を果たすため、そしてゲッター線を使おうとしている者を見定める為にバラルは1体の妖機人をテスラ研へと向かわせるのだった……。

 

 

 

 

ガルガウと対峙するグルンガスト参式・タイプGのコックピット内は異様な発熱に包まれていた。

 

「……オーバーヒートではない……これは一体何が起こっていると言うのだッ!?」

 

ゲッター炉心の使用時間は厳密に定められているが、百鬼獣、そしてガルガウと戦う為にはそれを無視する必要があった。グルンガスト参式ではゲッター炉心の出力に耐え切れず、自壊を始める頃合の筈なのにグルンガスト参式は今だ健在であり、その出力を増したゲッター線を己の物としている。

 

『くたばれッ! 下等な野蛮人がッ!!!』

 

「ちえいっ!!!」

 

ゼンガーはガルガウのアイアンクローを参式斬艦刀で弾いた……つもりだった。

 

「ぬっ!?」

 

『馬鹿な!? 何が起きているッ!?』

 

恐ろしいほどに軽い手応えにゼンガーは困惑し、ヴィガジの驚愕の声が周囲に響き渡る。ガルガウのアイアンクローはまるで溶かされたように中ほどまで切り裂かれていた……これ以上に無い追撃のチャンスだがゼンガーはガルガウへの追撃を行う事が出来なかった。

 

「ぐうっ……」

 

身体を焼く凄まじい熱にその顔を苦しそうに歪めるゼンガーはヴィガジ以上にダメージを受けており、本能的にゲッター炉心の出力抑制を行なおうとするが凄まじいエラー音がコックピットに響き渡る。

 

「ゲッター炉心が暴走しているのかッ」

 

コックピットに充満する熱にその可能性は考えていたが、実際に目の当たりにしたゼンガーは驚いたが、それでも操縦桿を握る手を緩める事はなかった。

 

「今はこの力が必要だ……躊躇っている時間は無い、推して参るッ!! おおおおおおお――ッ!!!」

 

ここでグルンガスト参式が暴走の末に大破するとしても、この力が無ければ百鬼帝国とガルガウを相手にして戦う事は出来ないのだ。ならば躊躇っている時間も迷っている時間も無い。限界が来るまで、いや限界を超えて己の命を失うとしても戦うまでと覚悟を決めて操縦桿を強く握り締める。

 

『このまま戦い続ければあいつは限界を迎えるッ! やれッ! 百鬼獣どもッ!!』

 

グルンガスト参式・タイプGが暴走していると悟ったヴィガジはガルガウを後退させ、百鬼獣を差し向ける。下等な野蛮人をゼンガーを見下していたヴィガジだが、そのゼンガーが自分を上回る力を見せれば即座に逃げる……それはヴィガジの愚かさの表れその物だった、

 

『キシャアアッ!!!』

 

『グルオオオオッ!!!』

 

「邪魔をするなぁッ!! チェストォオオオオオッ!!!」

 

自分の道を遮る百鬼獣の群れに向かってゼンガーは吼え、グルンガスト参式・タイプGを走らせる。

 

「ぬんッ!!!」

 

双剣鬼が参式斬艦刀の一閃で胴から両断され、上半身がズレ少し遅れて爆発する。

 

『キュアアアアアアーーッ!!!』

 

『グルルルルッ!!!』

 

『くそッ! アイビス打ち落とすぞッ!』

 

『分かっているッ!』

 

鳥獣鬼とプテラノドンのような飛行機が雲の切れ間から姿を見せ、グルンガスト参式・タイプGへの爆撃を行なう。それを阻止しようとアステリオンとベルガリオンが動き出すが、それはほかでもないゼンガーによって制された。

 

「俺にかまうなッ! うおおおおッ!!! オメガブラスタアアアアアアア――ッ!!!」

 

その叫びにスレイとアイビスは一瞬の躊躇いの後に己の機体を急上昇させる。その直後にグルンガスト参式・タイプGの胸部から放たれた翡翠の熱線が爆弾ごと鳥獣鬼達を飲み込み、空中で凄まじい爆発の花を咲かせる。

 

『凄いパワー……だけど……スレイ。あれ危ないんじゃッ!?』

 

『見れば分かるッ! あのままではゼンガー少佐が危……くっ!? 旋回しろッ! アイビスッ!!』

 

オメガブラスターの余波で装甲が焦げている姿を見て、スレイとアイビスはゼンガーの命令を無視して再びゼンガーの支援を行う為に機体を反転させようとし、ロックオンの警告音がコックピットに響き機体を急旋回させる事になった。そしてその間を1機の百鬼獣が駆け抜けていく、斧を手にしマントを翻し空を舞う百鬼獣の姿にアイビスは目を見開いた。

 

『スレイッ! あの百鬼獣はッ!?』

 

『分かっているッ! だがこの位置では追いつけんッ!!』

 

その百鬼獣――鉄甲鬼は角から電撃を放ちながらグルンガスト参式・タイプGへと肉薄する。

 

「ぬううッ!!」

 

異常な出力アップによるダメージで動きが鈍いグルンガスト参式・タイプGはその電撃を回避する事が出来ず、参式斬艦刀で直撃だけは防いだが、その電圧でただでさえ異常を来たしているグルンガスト参式・タイプGのモニターのあちこちにはレッドアラートが点灯する。

 

『はっははッ!! やはり貴様は下等な野蛮人だったなあッ!』

 

動きが鈍くなったグルンガスト参式・タイプGを見て、勝利を確信したのか鉄甲鬼を押しのけてガルガウがグルンガスト参式・タイプGに向かってアイアンクローを構えて走り出す。その光景を見て、ゼンガーは参式斬艦刀を鞘に納め腰だめに構えた。

 

『血迷ったか! 剣を鞘に納めて何が……「はあああああッ!!!」……なっ!?』

 

裂帛の気合と共に抜き放たれた参式斬艦刀の切っ先からゲッター線で出来た光の刃が飛びだし、ガルガウと鉄甲鬼の装甲に深く傷をつけながら弾き飛ばす。それは本来示現流の技ではない、武蔵が鍛錬している間に何度かやって見せた居合い切り……それはゼンガーにとっても勉強となり、それをぶっつけ本番でグルンガスト参式・タイプGに使わせたのだ。

 

(この好機、逃す訳にはッ!)

 

グルンガスト参式・タイプGが動ける時間はもう長くない、ガルガウと鉄甲鬼が姿勢を崩しているこの好機は、今のゼンガーにとって決して逃してはならない最大の好機だった。

 

「伸びろ斬艦……と……ッ!? なんだッ!? 何が……」

 

日本刀モードから大剣モードに変えようとしたゼンガーだが、突如モニター全てが白一色に染まり、一切の操縦をグルンガスト参式・タイプGが受け付けなくなり困惑する。白一色のモニターの中に両手がハサミのような翼になっている百鬼獣が舞っている光景が一瞬映りこんだ。

 

「あの百鬼獣の仕業かッ!?」

 

『グルオオオオオッ!!!』

 

『良くも、良くも恥をかかせてくれたなあッ!!』

 

数秒のシステムダウン――それはゼンガーが手に仕掛けていた好機を奪い、逆に鉄甲鬼とヴィガジに動けないゼンガーとグルンガスト参式・タイプG撃破という好機を与える……事は無かった。

 

『アイビス撃てええッ!!!』

 

『いっけええええッ!!!』

 

ベルガリオンよりも大型で武装を多く搭載できるアステリオンだからこそ、チャフやスパイダーネットをベルガリオンよりも多く搭載できていた。そしてアステリオンの整備をしているのはコウキとツグミであり、コウキはアイビスが百鬼獣と遭遇しても生き残れるように改良したチャフやスパイダーネットが搭載されていた。だがそれは全体の2割ほどであり、全てではない。だが運よく最後に発射されたチャフとスパイダーネットは対百鬼獣の改良された物だった。

 

『ッ!?』

 

『キイイイィッ!?』

 

『な、なんだこれはッ!?』

 

諦めない者に、不屈を誓う者に奇跡は起こる――時間にしては数秒にも満たない一瞬、だがその一瞬で全てが覆された。

 

『今まで随分好き勝手してくれたな……覚悟は出来ているんだろうなあッ!!!』

 

怒りに満ちた鬼神の咆哮――轟破・鉄甲鬼は現れると同時にその手にした斧を投げ付け、グルンガスト参式・タイプGの前に立ち、ガルガウ達の前に立ち塞がる。

 

「コウキ……か」

 

『遅くなって悪かったな、思ったよりも包囲網が厚くてな……それよりもまだ戦えるか?』

 

「無論だ……まだ俺は倒れる事はできんッ!!」

 

百鬼獣胡蝶鬼のジャミングの効果はとうの昔に切れ、不屈の闘志でゼンガーは、グルンガスト参式・タイプGは再び立ち上がる――悪を断つ剣は今だ折れず、その場にあり続けるのだった……。

 

 

 

 

目の前に並んで立つ2機の百鬼獣を見て、コウキは忌々しそうに顔を歪めた。1体はかつての己の半身にして、必ず破壊すると心に誓っていた百鬼獣鉄甲鬼――その武装も戦い方も全て把握していると言っても良いだろう。轟破・鉄甲鬼はその名の通り鉄甲鬼をベースに、ゲッターロボGやグルンガストのデータさえも組み込み大幅改良したのだ。テスラ研から脱出する際は負傷していた事、そしてまだ調整が完全ではなかった事、そしてアイビス達を脱出させなければならないという複数の要因からコウキは逃げたが、普通に考えればコウキと轟破・鉄甲鬼が万全ならば負ける訳が無いのだ。

 

「だからと言って胡蝶鬼を持ち出してくるか……?」

 

胡蝶鬼は百鬼獣の中では下から数えた方が早いような百鬼獣だ。女性的なシルエットで細身であり、両腕は蝶の羽を模したブレードのような翼――と見た目通りに機動力に重点を置き、攻撃力は決して高くないそれが胡蝶鬼の特徴だが、それでも百鬼衆の胡蝶鬼が乗っていた百鬼獣なのだ。その肩書きに恥じない特殊能力を持ち合わせている。

 

『キュアアアアアッ!!』

 

甲高い鳥のような鳴声と共に胡蝶鬼の翼のような腕から光り輝く無数の蝶が姿を見せる。轟破・鉄甲鬼の周りを取り囲もうと周囲へと広がっていく……。

 

「ちいっ!」

 

『ゴガアアッ!!!』

 

それを見て逃げようとしたコウキだが、そうはさせないと鉄甲鬼が斧を轟破・鉄甲鬼に叩きつけ、その重量で轟破・鉄甲鬼の動きを封じ込める。そして光り輝く蝶が轟破・鉄甲鬼に触れた瞬間モニターやレーダーと言った電子機器が全て死んだ。

 

「くそがッ!!」

 

思わず悪態を付きながらコウキは完全に闇に落ちたコックピットの中で神経を研ぎ澄ます。

 

(ブライのプログラミングに今だけは感謝する)

 

裏切り者を許さない性格のブライだ。テスラ研に胡蝶鬼を配置したのは、轟破・鉄甲鬼を見て、改良型の機体だと判断したからだろう。

高い攻撃力と防御力、そして汎用性を併せ持つ鉄甲鬼とジャミングに特化した胡蝶鬼――その組み合わせは相性によってはたった2体で一部隊を壊滅させること出来る最強の組み合わせだ。相性的な問題でゼンガー達では反応も出来ず撃墜される可能性があるが、コウキを狙うようにプログラミングされている2体はコウキによってテスラ研の外まで誘き出されていた……。

 

『うおおおおッ!!!』

 

『ちいっ! 目障りな野蛮人があッ!!』

 

ゼンガーとヴィガジの雄叫びが重なり、凄まじい衝突音が何度も響き渡る。ゲッター炉心の影響でガタが来ているグルンガスト参式・タイプGはいつまでもガルガウと戦う事は出来ないという事はコウキにも分かっていた。出来る事ならばコウキとゼンガーの2人でガルガウと対峙するのが最善だが、鉄甲鬼、胡蝶鬼とガルガウが組めばコウキとゼンガーのペアをスレイとアイビスが支援したとしても、胡蝶鬼の妨害によってその勝率は極端に下がる――各個撃破のリスクが発生するが分かれて戦う事。それが1番生き残る可能性が高いと考えたコウキはスレイとアイビスにゼンガーの支援をするように命じ、自ら単独で百鬼獣と戦う事を決めたのだ。

 

「そこだッ!!」

 

ブライの見積もりは甘かった。常人ならば視界を失えば反応が遅れるだろう……外が分からなければ機体は棺桶と変わらず恐怖するだろう……だがコウキはそんな事で己を見失うほど弱い人間ではない。

 

『グギャアッ!?』

 

耳障りな悲鳴と共に地響きが響き渡り、ジャミングされていた機能が少しずつ復旧してくる。

 

『……コウキ博士……支援……』

 

「必要ない、それよりも俺に近づくな。こいつらはお前達にとって相性が最悪だからな、ゼンガーの支援を徹底しろ。俺に構うな」

 

胡蝶鬼の翼から再び光る蝶が放たれ、通信が途絶えモニターにもノイズが走り始め、スレイの声が遠ざかっていくが……コウキはそれに動じる事無く、再び闇に染め上げられたコックピットの中で悪意とも言えるものを感じ取り鉄甲鬼、胡蝶鬼の2体と対峙する。

 

(ゼンガー達では対処できん……これは俺で良かったと思うべきか)

 

闇の中で殺気や悪意だけを頼りにコウキは轟破・鉄甲鬼を操る。気配だけを頼りに攻撃をしているコウキの攻撃は辛うじて相手の身体を掠めるに留まり、遠隔攻撃には対処できず直感的にマントで防いでいるがダメージは少しずつだが蓄積してくる。

 

「極まりが浅いか……だが泣き言は言ってられんな……ッ」

 

攻撃は浅くしか当たらず、射撃武器で徐々に装甲を削られる――状況は決していい物では無いが、それでもコウキの目に諦めの色は無い。

 

「カザハラ博士とフィリオなら準備をしている筈――それにあいつらだって何時までも足止めをされているわけが無い、必ず突破してくる」

 

インスペクターと百鬼獣の軍勢は確かに容易に突破出来る敵ではない、だがL5戦役を潜り抜け、そして百鬼獣やインベーダー、アインストと戦い続けて来たハガネ達ならば必ずこの場に来るとコウキはそう信じていた。

 

「どうした! 裏切り者はここにいるぞ! この首が欲しくはないのかッ!!!」

 

コウキが声を張り上げると数多の百鬼獣が轟破・鉄甲鬼を取り囲む、鉄甲鬼と胡蝶鬼に加えて雑魚とは言え数十体の百鬼獣――それは絶望的な戦力差と言っても良い、だがコウキは僅かに見えるモニターからの外の光景を見て笑った。

 

「そんな雑兵で俺の首を取れると思っているのか!?随分と甘く見てくれたものだなあッ!!!」

 

数が不利だとしても決してコウキの闘志は決して折れることはない、恩師を救う……そしてかつての己の半身を穢した百鬼帝国への怒りが原動力となり、モニターの不調など何の障害にもならないと言わんばかりに獰猛な笑みを浮かべ、百鬼獣の群れへと単身突撃していくのだった……。

 

 

 

 

コウキの登場によって僅かに盛り返し始めたゼンガー達だが、戦力の差はやはり圧倒的であり、今だ予断を許す状況ではなかった。そしてそれはテスラ研の通路を走るレーツェルもまた同じだった。

 

「くっ! ここもかッ!」

 

テスラ研のバイオロイド兵は、実は既にヴィガジの指揮下から離れて独自に動き始めていた。バイオロイド兵は元々はダヴィーンの技術であり、ブライはダヴィーンの生き残りの頭脳を有しているので幾らでも抜け道を作れる。テスラ研が奪還されそうになった場合、バイオロイド兵は通路などの封鎖を命じられていた。

 

「……敵確認……排除……ガ、ガガガガッ!?」

 

通路から姿を現したバイオロイド兵の額に向かってゲッター合金製の弾頭を持つハンドガンを撃ち込むと同時にレーツェルは地面を蹴って大きく後退する。

 

「ヒャッハアアッ!!!」

 

一瞬前までレーツェルがいた場所に巨大な斧が突き刺さり、蜘蛛の巣状のクレーターが作り出される。それは人間に直撃すれば一瞬で肉片になるほどの破壊力を秘めた一撃である事が容易に分かる。

 

「鬼かッ!!」

 

「はっはぁッ!! 中々やるじゃねえかッ!! 遊ぼうぜッ!! 人間よッ!!」

 

身の丈ほどの斧を軽々と背負い、凄まじい勢いで突進してくる鬼に向かってレーツェルは銃弾を撃ち込む。だがその銃弾は鬼の身体にめり込むがすぐに弾かれ、足止めにもならない。

 

「おらあッ!!」

 

「くっ!」

 

線にしか見えない神速の一撃をレーツェルは転がって回避し、腰のベルトから2振りのアーミーナイフを抜き放ち鬼と対峙する。

 

「おいおい、そんな玩具で俺と戦うつもりか?」

 

「そうだと言ったら?」

 

「自殺行為だといってやるぜッ!!」

 

斧を振り上げ突進してくる鬼にレーツェルは逃げる事無く、アーミーナイフを×の字に構え身構える。

 

「そんな玩具で……ぐ、ぐがああああッ!!?」

 

「うっぐうおッ!!?」

 

鬼の斧がナイフに触れた瞬間翡翠の光が走り、鬼は一瞬で骨となり消し飛んだ。だが衝撃までは無力化出来ずレーツェルも苦しそうに呻いて、片膝をついて蹲った。

 

「はぁ……はぁ……高純度のゲッター合金製のナイフならばある程度鬼に有効と聞いていたが……これほどまでとは……」

 

手袋もゲッター線の高熱によって焼け爛れており、手袋を外すと掌が真っ赤になっていた。あと数秒ナイフを握っていたら手が焼け爛れ、ダブルGを操縦するのは不可能だっただろう。

 

「やはり時間がない」

 

ナイフは後2本残っているが、それを使ってしまえば自分が戦力として数えられなくなる……そうなる前にジョナサン達を見つけなければならないが、テスラ研の内部は鬼によって複雑に入り組んでおり、どうすればジョナサン達の監禁されている部屋に辿り着けるのかDコンの反応を頼りにしても、合流にどれほどの時間が掛かるのかはレーツェルにも分からなかった。外から響いて来る戦闘音の激しさにレーツェルは焦りを覚え、思わず通路の壁を殴りつける。

 

「くそ時間がないと言うのにッ……なんだ……光? いや……これはゲッター線かッ!?」

 

まるで蛍のように宙を進むゲッター線の光……それを見てレーツェルが悩んだのは一瞬で、その光の後を追って薄暗い通路を走り出す。

 

『それより、お前さんにちょいと頼みがあるんじゃが……ワシの杖を取ってきてくれんか? ほれ、ワシは見ての通りの歳でのう……杖がないと具合が悪いんじゃ』

 

その光が消えた所でリシュウの声が中から響いて来る。その声を聞いてレーツェルはホルスターからハンドガンを取り出し飛び込むタイミングを計る。ゲッター線の光に導かれ、そしてジョナサン達のいる部屋に辿り着けた……レーツェルはこれを完全に運が自分の味方をしていると受け取っていた。

 

『な、頼む。 ゴホッ、ゴホッ……この通りじゃ』

 

同情心に訴えるリシュウの演技だったが、余りにもわざとらしく部屋を覗き込んだレーツェルは思わず苦笑する。

 

(バイオロイド兵は1人――鬼もいない……)

 

チャンスは一瞬だ、しかも失敗すればジョナサン達の命がない……極度の緊張が走るが、それでもレーツェルは焦る事無く、そして動揺する事無く飛び込む為のチャンスを窺う。

 

「……動クト撃ツ」

 

「それはこちらの台詞だッ!」

 

バイオロイド兵がその銃口をリシュウ達に向け、出入り口に背を向けた瞬間。レーツェルはドアを蹴り開けて飛び込むと同時にハンドガンの引き金を引き、その銃弾は真っ直ぐにバイオロイドの額を撃ち抜いた。

 

「レーツェル……来てくれたのか」

 

「遅れて申し訳ないカザハラ博士。内部が入り組んでいて救出が遅れた」

 

「いや、君が来てくれて助かったよ、ビアン博士からの預かりものは?」

 

「ここに」

 

ジャケットの内側から取り出したメモリーCDを見たジョナサンは頷き、白衣の中から1つのカードキーを取り出した。

 

「急ごう。状況はかなり不味い筈だ」

 

戦闘音は激しく、地響きと百鬼獣の唸り声が響き続けている。ゼンガー達が一騎当千のパイロットであったとしても数の暴力で押し潰される、話している時間はないと言うジョナサンにレーツェルは頷き、壁際に置かれていた杖を手に取り、それをリシュウへと手渡す。

 

「申し訳ありませんが、状況はかなり不味いです。予定では既にクロガネがテスラ研に到着している筈ですがそれもない……如何にゼンガーと言えど百鬼獣とインスペクターを相手に戦うのは危険だ」

 

「分かっている。すぐにダブルGを起動させよう。 ダブルGは最深地下格納庫だ」

 

レーツェルの言葉に頷いたジョナサンに先導され、ダブルGの格納庫へと向かったレーツェル達だが、外に出て戦況が自分達が想定しているよりも遥かに悪化している事を思い知らされた。

 

【ヒャッヒャヒャ】

 

【カーカカカッ!!!】

 

百鬼獣でも、インスペクターでもない、そしてアインストとインベーダーでもない異形の化け物――その姿を見てレーツェルは思わず声を上げた。

 

「妖機人だとッ!?」

 

饕餮鬼皇達と戦った時に出現した妖機人に酷似した人型の巨人が2体、それが無差別に暴れまわっていた。インスペクターと百鬼獣へ攻撃を繰り出したと思えば空を舞うアステリオンやグルンガスト参式・タイプGにも攻撃を繰り出し、テスラ研の格納庫にも攻撃を繰り出し、被害を爆発的に加速させている。

 

「妖機人じゃとッ!? 何故」

 

「リシュウ先生! 話は後ですッ! 皆こっちだッ! いそげッ!」

 

ダブルGの眠る格納庫へと走り出すジョナサンの後を追ってレーツェル達も走り出した。最早一刻の猶予も無く、テスラ研での戦いはこの短時間でより激しさを増し始めているのだった……。

 

 

第165話 武神装甲ダイゼンガー その2へ続く

 

 




今回は戦闘描写もありましたがシナリオも進めて見ました。妖機人のエントリーとゲッター線に導かれたレーツェルと大きく話が動いたと思います。次回はオリユニットとオリキャラを追加しつつウォーダンも参戦させたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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