第165話 武神装甲ダイゼンガー その2
リシュウが古文書に記されていた鋼機人をベースに作り上げた特機を回収に来ていたバロンとフェイの2人は唐突にその足を止めた。
「おい、ヴォルフ」
「バロンと呼んでくださいと言っているでしょう? まぁフェイ。貴女の言いたい事は分かります」
険しい声にフェイに対し、バロンの声はいつも通りだがその目には剣呑な光が宿り、フェイと同じ物を感じたのは明らかだった。虫の知らせ、第六感とでも言うのだろう……2人はある存在が動き出した事を本能的に感じ取っていた……。
「あたしに念動力は無いがはっきり分かる。バラルだ」
「ええ、僕もです。思ったより早かったというべきでしょうか?」
念動力者ではないため、超機人のパイロットとしての適性は無く、そしてテロリストとして指名手配されていたとしてもフェイとバロンの思いは同じだ。何れ蘇るかもしれないバラルへの対抗手段を得る……オーダーとしてバラルと戦った者の末裔として成し遂げねばならない使命だと心のどこかで理解していた、だがそれは焦燥感にも似た不明瞭な物で、それでも焦りとなさねばならない何かを感じているのに、それが何か判らなかった……バラルに備えるという事は分かっていても、何をどうすれば良いのか分からなかったのだが、今初めてバロンとフェイの2人は今まで漠然としていた物がはっきりと形になったのを感じた。
「早いんじゃなくて遅すぎるんじゃないか? ゲッター線を使う奴がいるんだろ?」
「ええ、ですが……彼はとても温厚だそうですし……ふーむ……まぁ会うこともあるでしょう。その時に聞いて見るとしましょう」
バロンの言葉にフェイは不服そうな表情を浮かべ早足で歩き出した。
「フェイ。貴女がゲッターロボを好いていないのは僕も承知していますが、恨みだけで本質を見ないのは「うるせえ、分かってるよッ! 時間がねえ、行くぞ」……ええ。分かりました」
不機嫌そうに歩き出すフェイの後を追ってバロンも薄暗い通路を再び歩きだす。非常灯と手にした懐中電灯しか明かりがないのでその歩みは遅く、崩壊している通路もあり回り道をする羽目になったが、2人は目的地である格納庫に辿り着く事が出来た。
「やっと見つけたぜ。鋼機人ッ!」
ハンガーに固定された30m強の2機の特機を見てフェイが獰猛な笑みを浮かべ掌に拳を打ちつける。その様子を見てバロンはやれやれと肩を竦めながら格納庫の明かりを灯し、懐のサングラスを再び掛けなおす。
「リシュウ先生の作り出したレプリカなのでオリジナルではないですけどね」
「こまけえ事はいいんだよ。AMやPTよりはつぇえだろ?」
「まぁそれは間違いないでしょうけどね」
オーダーとバラルの争いで使われた鋼機人よりは劣るが、少なくもゲシュペンストやガーリオンよりは強力な機体である事は間違いない。龍虎王をモチーフにしたのか、龍と虎の意匠を持つ機体を見上げたフェイは龍の機体にその指を向ける。
「あたしは龍にするけど良いよな? 良し決定」
背部に大型ブレードを2振り装備している青と黄色の機体色を持つ鋼機人を自分の機体にするとバロンに声を掛ける。
「僕は返事を返してないですけどねぇ」
「文句あるのか?」
返事を返していないと思わずぼやくとフェイがバロンをにらみつける。その眼力は凄まじくバロンは即座に両手を上げて降参という素振りを見せる。
「いーえ、どうぞどうぞ? 僕は白兵戦苦手ですからね。大人しく貴女の支援に徹しますよ」
実際の所文句を言いはしたが、バロンは白兵戦よりも射撃戦の方が得意であり、最初から虎の機体にするつもりだったので文句等あるわけがない。しかしサングラス越しのバロンの目は鋭く細められており、その雰囲気も険しい物になっていた。
「急いでセッティングを、時間がありません」
「分かってらッ! お前もとろとろすんなよッ!」
タラップを駆け上がり龍の特機に乗り込むフェイを横目にバロンも虎の特機のコックピットに身体を滑り込ませ、OSを立ち上がらせる。
『神龍だよと、いい名前じゃねえか。そっちはどうだ?』
「こっちは神虎と言うそうですね。流石リシュウ先生というべきですね、妖機人のコアもなしにここまでのスペックを引き出すとは……」
本来鋼機人は妖機人のコアを動力にすることで高い能力を発揮する物だが、妖機人のコアを使っている事で妖機人に変化する危険性を秘めている危険な機体でもある。安定性に欠けているが高い能力が武器であったが、リシュウが文献を元に作成し、改造強化を続け神龍、神虎と名を変えた轟龍、雷虎は最大値は鋼機人である轟龍、雷虎には劣っているが高い安定性と柔軟性を持つ機体に仕上がっていた。
「良し、僕の方は立ち上げ終了しましたがそちらはどうです?」
『こっちもOKだ』
バロンの言葉にフェイは神龍にファイティングポーズを取らせる事で返事をする。それを確認したバロンは神虎の背部の大型ビームキャノン――神雷を展開する。
『ひゅう♪ おいおいお前にしては物騒だな?』
「時間がありませんからね、仕方がありません。神雷を発射後格納庫が崩壊する前に脱出しテスラ研へ向かいます。よろしいですか?」
『かまやしねぇ、ぶっ放せッ!!!』
フェイの了承を得たと同時に神雷が放たれ、格納庫の天井が破壊され大穴が開いた。その瞬間に神龍と神虎は背部のブースターを全開にし、格納庫が崩壊する前に外へと飛び出し、テスラ研へと向かって行くのだった……。
バロンとフェイの2人が神龍、神虎を持ち出すより少し前、テスラ研で戦いの流れは異形の巨人――2機の妖機人によって完全に乱されていた。
【カカカカカッ!!!】
【キュアアアアアッ!!!】
最初に現れたのは魚と鳥を模した槍と弓であり、それはテスラ研のカタパルトに突き刺さると同時に触手をテスラ研全域へと伸ばした。
『なにかやばいッ! アイビス逃げろッ!』
『わ、分かったッ!!』
弓から縦横無尽に伸ばされる触手をスレイとアイビスは必死に機体を操って回避し上空へと逃げる。アステリオンとベルガリオンの加速に追いつけないと判断するとテスラ研の上空を飛びかうグライダーを絡め取り自身の身体へと取り込んでいく……。
『え、な、なにあれ……』
『アインストなのかッ!?』
戦いの中で破壊された無人機や百鬼獣を取り込み、その身体を作り上げていく異形にスレイとアイビスは言葉を失った。インベーダーやアインストとはまた別のベクトルの化け物であり、残骸がオイルを撒き散らしながら人型へ姿を変えて行くのは出来の悪いホラー映画のような光景だった。
『なんだこれはぁッ! 新種のインベーダーかッ!?』
『面妖なッ!?』
ヴィガジとゼンガーにも向かっても槍から伸びた触手が伸ばされ、手にした武器で切り払うが触手は執拗にグルンガスト参式・タイプGとガルガウに向かって伸ばされ、その都度切り払われ触手はグルンガスト参式・タイプGとガルガウを取り込むのは不可能だと判断したのか、触手を束ねて腕を作り出すとそれをパチンコのように使い自らの身体を弾丸のように牛角鬼へ向かって撃ちだした。
【ブ、ブモオオオオッ!?】
槍は生々しい音を立て牛角鬼の体内へと消えて行き、牛角鬼の身体が何度も何度も痙攣を繰り返す。
『な、何が……何が起きていると言うのだ……ッ!?』
『新種の化け物なのかッ……』
そのおぞましい光景はゼンガーとヴィガジとて動揺を隠せず、そして百鬼獣も近づけば自分達も同じ徹を踏むと感じたのか誰も動かない。無人機であれ本能的に近づいてはいけないと感じさせる何かがあった……永遠とも思える一瞬の間に牛角鬼はその姿を全くの別物へと変えていた。牛角鬼はその名の通り牛の頭部を持つ屈強な身体と棍棒を武器にする百鬼獣だ。鎧などは身に纏っておらず、鉄板を丸めただけの丸太のような手足を持ち、胴体も飾り気のない物だ。だが槍に貫かれ、身体を奪われた牛角鬼の姿は鎧兜を身に纏い、ちゃんとした人型に見える鎧武者へとその姿を変え、その掌から不気味な音を立てて体内へと消えた槍が姿を現し、牛角鬼だったそれは槍を頭上で振り回しその切っ先をグルンガスト参式・タイプGとガルガウへと向けていた。
【キュアアアアアアッ!】
そしてそれは弓から伸びた触手によって身体に作り変えられた残骸も同様で、民族衣装を思わせる衣服に身を包んだ細身の女のような姿になりその手には触手を伸ばしていた弓が握られている。
『造り替えたの……』
『なんなんだ……あれはッ!?』
物体に寄生し己の肉体にするインベーダーも同じ事が出来るが、それよりももっと醜悪であり、そしておぞましい何かを見てスレイとアイビスは言葉を失った。人知を超えた敵は今まで何度も見てきたが、それとは明らかに異質な物であった。
【カカカカカッ!!】
【キュアアアアアッ!!!】
肉体を得た事を喜んでいるのか2体の異形の巨人――鋳人(いじん)と呼ばれる妖機人は歓喜の声を上げる。己の肉体を持たず、機人に寄生する事でやっと己の肉体が得れるという特性を持つ鋳人にとって自分の肉体は何よりも欲してならないものであり、肉体を得るためならばバラルにも従う事も苦ではない、何百年ぶりかに得た肉体、そしてただ戦えという単純な命令しか与えられていない鋳人は自分達の本能に突き動かされテスラ研攻防戦へとその身を投じるのだった……。
鋳人・弓が放つ光の矢の雨は着弾すると同時に爆発を引き起こし、鋳人・槍の手にする槍の一閃は百鬼獣、無人機を容赦なく引き裂き両断する……鋳人自体は決して突出する能力を持たない妖機人だが、百鬼獣を取り込んだことによりその能力は超機人に匹敵する物へとなっていた。
【カカカカカッ!!!】
「くっ! 押し込まれるッ」
高笑いと共に振るわれる槍と参式斬艦刀がぶつかり合い激しい火花を散らす。機体の大きさはグルンガスト参式・タイプGが上回っていたが、柔軟な動きを取る事が出来る鋳人・槍の攻撃の激しさに徐々に徐々に押し込まれ始めていた。それでも撃墜されず、立ち回る事が出来ていたのは鋳人が敵味方関係無しに襲い掛かるからだった。グルンガスト参式・タイプGへと攻撃を仕掛けたと思いきや、突如地面を蹴りガルガウへと襲い掛かる。
【カーッ!】
『ぐうっ!? やはり所詮は化け物かッ!?』
ガルガウの鈍重な動きでは鋳人・槍の神速の槍捌きには反応しきれず機体に細かい傷が付けられる。ガルガウのアイアンクローを踏みつけ、上空へと跳びあがった鋳人・槍は手にした槍の切っ先から熱線を放ち、グルンガスト参式・タイプGとガルガウへと攻撃を加える。
「うぐうっ!?」
『グアッ!? おのれえッ!!!』
ゼンガーとヴィガジの苦悶の声を聞き、鋳人・槍は楽しそうにステップを踏み、槍の切っ先を正面に向けて轟破・鉄甲鬼と鉄甲鬼、胡蝶鬼との戦いに割り込んでいく……ゼンガーとヴィガジに激しい敵意を見せたと思ったら、興味がないと言わんばかりに別の敵へと襲い掛かるのは鋳人・弓も同じだった。
【キャキャキャキャッ!】
現れた場所から一歩も動かず、爆発する矢を目があった相手に向かって放つ――それは考えているようには見えず、ただ目に付いたから攻撃すると言わんばかりの適当な物だった。だが着弾すると爆発するという性質上その攻撃は極めて厄介な物でもあった……。
『!?』
『ぎゃあッ!?』
無人機の胴体に着弾し弓は爆発を起こし動力部を吹き飛ばす。その余波は近くに居た百鬼獣をも飲み込み、百鬼獣の苦しそうな声を聞くと鋳人は楽しそうに笑い、再び虚空から光り輝く矢を取り出すとそれを番え上空のアステリオンとベルガリオンへと放った。確かに弓の速度は速かったが、アステリオンとベルガリオンの方が早く、悠々と2機が回避した瞬間だった……矢が爆発しアステリオンとベルガリオンは爆風に飲み込まれた。
『う、うわああッ!?』
『く、くそッ!?』
螺旋回転し墜落するアステリオンとベルガリオンを見て鋳人・弓は手を叩いて喜び、今度は光り輝く矢を空中から無数に取り出し、それを弓に番え空中へと放った。それは空中で弧を描きながら急降下しグルンガスト参式・タイプG、ガルガウ、轟破・鉄甲鬼、百鬼獣、そして同じ妖機人である鋳人・槍をも巻き込む絨毯爆撃となる。
「くッ! 避け切れんッ! ぐあっ!?」
『ぐ、ぐおおおおッ!?』
『ちいっ!! ゼンガーッ! なんとかして離脱しろッ!!』
鈍重なグルンガスト参式・タイプGとガルガウは避けきれず光の矢の爆風に呑まれ、細かい爆発が2機を中心にして巻き起こる。コウキは轟破・鉄甲鬼のアタッチメントをガトリングアームへと換装し矢の迎撃と共に爆発に呑まれたグルンガスト参式・タイプGへ攻撃を仕掛けようとする百鬼獣と無人機を牽制しつつ、ゼンガーへ逃げろと叫んだ。
『グルオオオオッ!!!』
『キュアアアアアッ!!!』
ゼンガーへの支援を行った事で露になった隙を鉄甲鬼と胡蝶鬼が見逃すわけが無く、鉄甲鬼の投げた斧と胡蝶鬼の羽から放たれた光る蝶が轟破・鉄甲鬼へと襲い掛かる。コウキは最初こそゼンガーへの支援を行っていた……だが鋳人・弓、そして鉄甲鬼達の攻撃は激しくなり、自分の身を守るのに手一杯の状況へと追い込まれる。
「コウキもういいッ!」
『ぐっ! 悪いッ! これ以上は無理だッ!』
コウキの支援で僅かに鋳人・弓の攻撃範囲から逃れる事の出来たゼンガーの声を聞いて、ガトリングアームを格納しマントで防御しながら鉄甲鬼と胡蝶鬼から距離を取ったが、無差別に攻撃を繰り出す鋳人と、インスペクターの無人機の群れ、そして百鬼獣――あまりにも激しい乱戦、隙を見せれば対峙していた相手とは別の相手から強烈な一撃を受けるというこの状況はゼンガーとコウキですら激しく精神力と集中力を消耗させていた。
『はぁ……はぁ……み、皆はまだなの……』
『な、泣き言をいうつもりは無いが……さすがに厳しいぞ』
ルーキーの域を出ないスレイとアイビスは集中力が限界を向かえようとしていたその時――新型機を回収するというのを最優先目的としているインスペクターの無人機……レストジェミラがその身体を変形させアステリオンとベルガリオンへと飛びかかる。
『待て! ゼンガーッ! 俺がフォローするッ!!』
「いかんッ! 穿てドリルブーストナックルッ!!!」
コウキの静止の声が飛ぶが、それよりも早くゼンガーはドリルブーストナックルを上空に向けて打ち出しレストジェミラを破壊し、スレイとアイビスを救った……だがその対価は決して安い物ではなかった。
『隙を見せたな、下等な野蛮人がッ!!』
この乱戦の中でもヴィガジは自分を馬鹿にしたゼンガーが隙を見せるのを待ち続けていた。自分の監察官としてのプライドを傷つけ、地球人よりも遥かに進化しているゾヴォークを自分達の同類と呼んだゼンガーを殺す機会をこの乱戦の中でも虎視眈々を窺い続けていた。
『貴様にはここで死んでもらうぞッ!!!』
尾で地面を叩きつけると同時に両腕のブースターを全開にしグルンガスト参式・タイプGに襲い掛かるガルガウ。今までよりも圧倒的に早いその踏み込みにゼンガーは咄嗟に右腕の斬艦刀で受け止めようとした……そしてそれがヴィガジの誘いだと見抜いたが、それは余りに遅すぎた。
『フフフ……まずはその右腕を貰うぞッ!』
コックピットを狙ったのではない、最初からヴィガジは斬艦刀を振るうその右腕を狙っていた。開閉式の鉤爪であるアイアンクローを敢えて閉じての突撃は擬似的なランスチャージとなり、鋭い切っ先が肩の付け根に突き刺さり、それと同時にガルガウは腕を捻りこんだ。
「うぬッ! 斬艦刀がッ!?」
右腕が千切れ飛び、握っていた斬艦刀も宙を舞いテスラ研の東側の格納庫に突き刺さる。
「くっ! まだだッ!」
左腕を回収すればと動き出そうとしたゼンガー。確かに今までならば十分に回収する隙はあった……無差別に暴れている鋳人の攻撃を利用する事をゼンガーは考えた。だが鋳人は腕を失い、明らかに弱体化したゼンガーのグルンガスト参式・タイプGを標的と定めた。
「ぐうっ!?」
光る矢が残された左肩に突き刺さり大爆発を起こし左肩を根元から吹き飛ばす。その直後に鋳人・槍が手から放った水の槍が両膝に突き刺さり、グルンガスト参式・タイプGは膝から崩れ落ちた。
『ゼンガーッ! 脱出しろッ!!』
『グルオオオオオオッ!!!』
『キュアアアアアッ!!』
フォローに入ろうとしたコウキだが鉄甲鬼と胡蝶鬼に前後を取られて動きを封じられる。4つ巴の乱戦の中で撃墜された者がいなかったのはそれぞれの陣営の力具合が辛うじて均衡を保っていたからだ。その中で両腕を失い、自由に動く事ができないグルンガスト参式・タイプGは恰好の的であり、それぞれの陣営の思惑が違っていたとしても、グルンガスト参式・タイプGを破壊するという目的に限りインスペクター、百鬼獣、妖機人の考えは完全に合致していた。
『アイビス! タイミングを合わせろッ!』
『ゼンガー少佐を助けないとッ!』
自分達を助けた事で窮地に追い込まれたゼンガーをスレイとアイビスが救出に向かおうとするが、そうはさせまいと地上から無人機の弾幕と鋳人・弓の拡散する矢の嵐で近づけば自分達が撃墜される状況に追い込まれ、悔しさに歯を噛み締めながら機体を上昇させることしか出来なかった。
『両腕を失えば頼みの太刀を振るう事も出来まい――これで終わりだ。ゼンガー・ゾンボルト』
アイアンクローでグルンガスト参式・タイプGの頭部を挟んで持ち上げるガルガウ。あえてゆっくりとアイアンクローを締め上げる……グルンガストシリーズのコックピットは基本的に頭部であり、徐々に自分に迫ってくるコックピットブロックの壁と破壊された内部機器の爆発にゼンガーは思わず腕で顔を庇う。
「ぐっ……ここまでかッ」
脱出しようにも頭部を掴まれていては脱出装置も起動出来ない。徐々に迫ってくるコックピットの内装にゼンガーは自分の死を覚悟した。
「所長、 すぐに2号機の発進をッ!」
その光景は地下のダブルGの格納庫にも映し出されており、2号機のコックピットで待機していたレーツェルが早く出撃させてくれと叫ぶ。その気持ちはジョナサンも同じだったが、モニターに映し出されている2号機の状態を見て無理だと声を上げた。
「駄目だッ、 エネルギーチャージにまだ時間がかかるッ! ゲッター炉心もまだ起動していないッ! この状態では出撃は無理だッ!」
ダブルGはフレームから装甲まで全てゲッター合金で製造されており、動力もゲッター炉心であり形状こそ違えどゲッターロボと言っても過言ではないビアンの技術の粋を集めた特機だ。ビアンが最初から建造する事が出来ていればすぐにでも出撃させる事は出来ていた。だが追われる身でありクロガネの設備では仕上げる事が出来ないと考えたビアンによって自分の親派の元にパーツの設計図とパーツを送り、製造させテスラ研で組み上げたダブルGは規格の違いや最終調整が済んでいないなど……短時間では修正出来ないほどの数多のエラーが発生していたのだ。
「なら、1号機じゃッ! 先に1号機を出せッ! ゲッター炉心は稼動している筈じゃッ!」
2号機が使えないのならば2号機を使えとリシュウが声を上げるが、今度は1号機の調整をしていたフィリオが無理だと声を上げた。
「炉心は稼動していますが、OSのセッティングがまだですッ……! それに内部武装とOSの紐付けがまだ……」
「動けば良いッ! このままではゼンガーが死んでしまうぞッ!」
アイアンクローで締め上げられているグルンガスト参式・タイプGは小刻みな痙攣を繰り返し、機体各所も小さな爆発を起し始めており、動力炉に誘爆するのも時間の問題なのは明らかだった。パイロットが乗っておらず、的になるかもしれないが1号機を出撃させれば戦況は変わるとリシュウは声を荒げたその時だった。地下のダブルGの格納庫に緊急警報が鳴り響いたのは……。
「フィリオ識別はッ!」
「正体不明機3機確認ッ! その内の1機が後30秒でテスラ研の敷地に入ってきますッ!!」
「ぬう……このタイミングで増援じゃとッ……零式さえワシの手元にあればッ!!」
この状況での正体不明機――味方ではなく、敵機である事は誰の目から見ても明らかであり、誰もが顔を歪める中1番最初に現れたのは白亜の巨神――スレードゲルミルの姿だった。
「あ、あれはッ!? スレードゲルミルッ! シャドウミラーの機体が何故ここにッ!」
何度も戦っていたレーツェルはその機体がシャドウミラーの特機であるスレードゲルミルだと気付いた。スレードゲルミルはガルガウに吊り上げられているグルンガスト参式・タイプGに視線を向けると、肩のパーツを分離させ斬艦刀を展開させる。
『貴様何者だッ!!!』
『一意専心ッ! 推して参るッ!!!!』
その咆哮と共に急加速したスレードゲルミルは一直線にガルガウへと向かい、斬艦刀を一閃しガルガウを弾き飛ばしその背中でグルンガスト参式……いやゼンガーを庇う素振りを見せる。
「何故ウォーダンがゼンガーを」
「どうなっているんだ……いや、今はどうでもいい! 巻き返すぞッ!!」
敵勢力のシャドウミラーがゼンガーを助けた……その事に地下のレーツェル達は勿論、コウキ達も驚きを隠す事が出来なかった。だがスレードゲルミルの乱入はこの混迷を極める戦いの流れを大きく変えようとしていた……。
大破寸前のグルンガスト参式・タイプGを背中に庇い、ウォーダンはスレードゲルミルをガルガウへと向き合わせる。
(……これで良い、これで良いはずだ)
レモンはウォーダンに自分で考えて行動しろと告げた。そしてウォーダンはヴィガジに倒されそうになっているゼンガーを見て、考えるよりも先にガルガウへと攻撃を繰り出し、そしてスレードゲルミルでグルンガスト参式・タイプGを庇っていた。
『ウォーダン……何故、この俺を……庇うッ!?』
ノイズ交じりのゼンガーの通信を聞いてウォーダンもまた通信を繋げる。
「貴様を倒す者はこの俺以外であってはならない……そして、貴様との決着はこのような形であってはならぬッ」
W-15ではない、ウォーダンが自分自身を確立させる為にはゼンガーと戦い勝利する必要があるとウォーダンはレモンから言われている。だがレモンに言われたからではない、ウォーダンは自分のオリジナルであるゼンガーとの戦いの決着は1対1の正々堂々とした決闘であるべきだと考えていた。だからこそウォーダンはゼンガーを救ったのだ。己が己であると証明する為には、ゼンガーを越えたと証明する為には万全の状態ゼンガーと戦い勝利しなければならないのだとゼンガーへと告げる。
「俺は俺のオリジナルであると言える貴様の存在を抹消し……W15ではなく、 真のメイガスの剣……ウォーダン・ユミルとなる。それが俺の……俺自身の意思だ」
誰の命令でもない、強いて言えばウォーダン自身が自分へと命じた命令と言える。そしてそれはヴィンデルとアクセルが求めるWシリーズではあってはならない事だが、レモンの求めるWシリーズには必要不可欠の物であった。
『意思……ッ! ウォーダン、やはりお前は……ッ』
「聞け、ゼンガー。 貴様が新たな剣を手にするまでの時間は、俺が稼いでやる……我らの勝負はその後だ」
有無を言わさないその迫力はゼンガーとウォーダンが初めて出会った時とは別格の覇気に満ちており、ゼンガーはウォーダンがラミア、エキドナと同様自我に芽生えている事を感じたがそれを口にする事は無くただ一言感謝の言葉を口にした。
『感謝するウォーダン』
「礼などいらん、ただそうだな……俺に感謝するというのならば……俺が越えるべき壁として無様な姿は見せてくれるな、ゼンガー」
『……承知』
「行け! ゼンガーッ! お前の新たな剣を手にするのだッ!!!」
ウォーダンの言葉にゼンガーは頷き、両腕を失ったグルンガスト参式・タイプGを操り、戦いの中で大きく離れたテスラ研へと向かう。
『!!』
『!!』
度重なるダメージによって十分な飛行速度を得る事が出来ないグルンガスト参式・タイプGはレストジェミラを初めとしたインスペクターの無人機にとってただの的に過ぎず、ビームやアサルトマシンガンの弾丸が幾つも命中する。
「ぐっ……ま、まだだあああッ!!!」
グルンガスト参式・タイプGの全身を覆っていたゲッター線バリアが消滅すると同時にゼンガーは禁じ手を切った――今まで共に戦いぬいたグルンガスト参式・タイプGの装甲とフレームがメキメキと音を立ててオイルを撒き散らしながら分離する。緊急脱出――本来タイプGはGバイソン、Gラプターへの分離は可能とされておらず、機体を半ば大破させタイプGは無理矢理にGバイソンとGラプターへと分離する。
「くっ……許せ、参式ッ!」
Gバイソンは本来の戦車形態に変形する事無く墜落し、グルンガスト参式・タイプGを追っていたレストジェミラ達を巻き込み爆発炎上する。
「ぐうう……ッ!! 後少し……後少しだ、耐えてくれ参式よッ!」
完全にGラプターへ変形する事は無く、不完全な飛行機の姿ではあるが故にGバイソンの爆発に巻き込まれ、大きく姿勢を崩し、完全に変形も出来ない不恰好な姿だがGラプターは最後までゼンガーをテスラ研にまで運んで見せた――だがテスラ研の上空で力尽き空を半ば墜落するように着陸し、コックピットから這い出たゼンガーは爆発炎上しているグルンガスト参式・タイプGへと振り返る。
「すまない、参式……ッ!」
半身とも言えるグルンガスト参式・タイプGが完全に大破している事に胸を痛めても、立ち止まっている時間はなくゼンガーはゆっくりとリフトアップされていたダブルGの格納庫へ続くエレベーターを目指して走り出す。
『何者かは知らんが邪魔はさせんぞッ!!』
倒す寸前まで追詰めたゼンガーを救おうとするウォーダンに邪魔をするなと叫んだヴィガジはガルガウを操り、スレードゲルミルへとアイアンクローを突き出し、スレードゲルミルの振るう斬艦刀とぶつかり合い凄まじい火花を散らす。
「来いッ! インスペクターよッ! しばしの間……貴様の相手はこの俺がするッ!」
『ふざけるなよッ!! 良くも俺の邪魔をしてくれたなあッ!!』
怒りに支配されたヴィガジは最早スレードゲルミルとウォーダンしか見えていなかったが、敵はヴィガジだけではなく、インスペクターの無人機、百鬼獣、妖機人は今だ健在であり、轟破・鉄甲鬼とアステリオンとベルガリオン相手で戦いぬける敵ではなかった。
「来るかッ!」
鋳人、そして鉄甲鬼と胡蝶鬼が轟破・鉄甲鬼へ向かって動き出そうとした時だった……テスラ研に第3者の声が響き渡った。
『おらおらおらぁッ!! あたしが相手だッ!!! 妖機人ッ!!』
【カカカカカッ!!!】
青と黄色の機体色を持つ人型の龍と言うべき特機が現れ、真っ直ぐに鋳人・槍へと攻撃を仕掛け、鋳人・槍も今までの無差別攻撃が嘘のように現れた特機――神龍へと強い敵意を見せ、神龍の振るう2振りの剣と鋳人の手にする槍がぶつかり合い凄まじい火花を散らす。
『み、味方なの……? スレイは知ってる?』
『何でもかんでも私に聞くなッ!』
アイビスはスレイに知ってる機体かと問いかけるが、一杯一杯のスレイはなんでもかんでも聞くなと声を荒げる。すると鋳人・弓へ向かって強烈なビームが放たれ、現れてから1歩も動かなかった鋳人・弓を弾き飛ばし、白と黄色の機体色の虎のような意匠を持つ特機がテスラ研へと降り立った。
『ふー間にあった用で何より、お嬢さん方。援護しますよ』
『援護って……やっぱり味方だよ、スレイッ!』
『簡単に信用するなアイビスッ! お前は何者だッ!』
援護の言葉に味方と喜ぶアイビスだが、スレイは強い警戒心を見せながら広域通信で問いかける。
『僕はバロン。オーダーのバロンと申します、そうですね……通りすがりの正義の味方と言う事で1つよろしく、ああ、それと彼女はフェイと言います、少々乱暴ですが気のいい人ですよ』
『誰が乱暴だッ! エセ貴族ッ!』
バロンの言葉にフェイが怒鳴り声を上げる、だが鋳人・槍への攻撃を続けテスラ研から鋳人を追い出そうとしている姿を見れば、スレイとアイビスも敵ではないという事は分かった。
『とにかく今は敵を退けない事には話してる時間も無いでしょう? 今は協力しましょう』
『……分かった』
『よろしくお願いします! バロンさん』
バロンの言う通り今はここで揉めている時間はない、いつインスペクターの増援が来るかも分からず、ハガネ達も到着する気配がない、怪しくはあるが今は協力しなければこの戦いを潜り抜けることは出来ないと判断し、バロンとフェイと共に共同戦線を張る事をスレイ達は選択せざるを得ないのだった……。
第166話 武神装甲ダイゼンガー その3へ続く
シナリオデモがかなり長かったですが、次回からはバリバリ戦闘で書いて行こうと思います。登場させる味方とか、ウォーダンの事で大分文字数を使ったので、ここから戦闘に入るのは厳しいと思い今回もシナリオデモだけで終わったので、次回からの戦闘はかなり気合を入れていこうと思いますのでご理解頂ければ幸いです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
PS ハイパー・メガ・バズーカ・ランチャーを入手してニコニコのところにストナーサンシャイン復刻で地獄に落とされました。石がねぇ……。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い