第166話 武神装甲ダイゼンガー その3
ゼンガー達が窮地に追い込まれていたのは戦力差も理由の1つだが、最も大きな苦戦の原因は合流予定時間を大幅に過ぎても今だにテスラ研に接近すら出来ていないハガネ、シロガネ、ヒリュウ改、クロガネにあった。当初の計画ではアステリオン、ベルガリオンがMAPWを駆使して突破路を確保、その後をクロガネが維持し、ハガネ達と合流後にテスラ研へ向かうという物だった。
「ぐうっ!? エネルギーフィールドの維持率はどうなっているッ!」
「本艦のエネルギーフィールド維持率45%ッ! ハガネ、ヒリュウ改もかなりの損傷をしておりますッ!!!」
オペレーターの報告にリーは苛立った様子で肘掛けに拳を叩きつける。
「合流想定時間を30分もオーバーしているッ! このままではゼンガー少佐達が危険だというのにッ!」
ハガネ達が合流してくれる前提で4機での強行突破を選択したゼンガー達の機体は速度を重視し、プロペラントやカートリッジと言った補給物資を搭載していない。百鬼帝国、インスペクターが確認されてる以上その消耗は通常の戦闘の比ではない……早く合流しなければと焦りだけが募る。
「ダイテツ中佐ッ! 本艦がこの場に残るのでハガネとヒリュウ改はテスラ研へッ!」
ゼンガー達を失うわけには行かないとリーはハガネに通信を繋げ、自分達が足止めをする間にテスラ研へ向かってくれと告げる。だがダイテツの一喝と共にリーの申し出は却下された。
『それは出来んッ! この状況でシロガネを残せばシロガネは轟沈するッ! それが分からないわけではあるまいッ!』
「ですがッ!! これ以上合流時間をオーバーすればそれこそゼンガー少佐達が危ないッ!』
『それはワシとて判っているッ! だがここでシロガネもそしてお前達も失うわけにはいかんのだッ!』
ダイテツとて戦況の不味さ、そしてゼンガー達が危険という事は分かっている。だがここでシロガネを残せばシロガネは轟沈する事も分かっている……ゼンガー達を失うわけにも行かないが、ここでハガネ、ヒリュウ改、シロガネ、クロガネのいずれかが轟沈されてはそれこそ人類に百鬼帝国、インスペクターと戦い勝利する事が出来なくなる。
『なんとしてもこのままの陣形でこの空域を突破するッ! まだ諦めるなッ! 突破する機会は必ずあるッ!』
「りょ、了解ッ!!」
ダイテツの激励に敬礼しながら返事を返すリーは再び戦況図に視線を戻し、額に拳を叩きつけながらこの状況を突破する一手を必死に考える。
(考えろ、考えろッ! ただ指示に従うだけで足を引っ張ってどうするッ! 考えろ、考えるのだリー・リンジュンッ!)
轟沈しないで済んでいるのはダイテツの卓越した艦隊指揮能力があっての物で、自分は何も出来てない。それ故にリーは必死のこの状況を打破する一手に考えを巡らせる――だが戦況は地獄絵図としか言いようのない悲惨な物であり、ブリッジに響いて来る獣の咆哮と混乱したノイエDCの兵士の叫び声にリーはその顔を歪める。
【ゴハアアアアッ!!!】
【カカカカカッ!!!】
『や、止めろッ! 来るな、来るなッ!! うわあああああああ――ッ!!!』
『なんで、なんでこんな化け物が俺達の母艦か……ッ!!!』
【助けてッ! 助けてくれッ!! 死にたく……死にたく……ッ!!』
百鬼獣とそれに紛れている分身の饕餮に追い回され、引き裂かれ、あるいは噛み砕かされ爆発するAMの数々――。
【キシャアアアアアーッ!!!!】
【グルルルオオオオオオオッ!!!】
『やだ、やめッ! やめてえええええッ!!!』
『嫌だ、嫌だ嫌だッ!! 出してッ! 出してくれええええええッ!!!』
コックピットブロックを態々抉り出し、見せ付けるようにしてコックピットブロック噛み締める饕餮。半狂乱になったパイロットの叫び声が生々しい咀嚼音と共に掻き消され、その光景を間近で見ていたリュウセイ達は思わず顔を背けた……助けようとしても間に合わなかった現実、そして自分達が破壊したAMを踏みしめ笑う百鬼獣達のおぞましい姿に言葉を失った。
【ゲッハハハハハハッ!!!】
【ヒャーハハハッ!!!】
壊して、殺して、喰らう――獣その物の百鬼獣と饕餮達はテスラ研への進路を塞いでいる。1体1体が非常に強力で再生能力を持ち合わせていることから離脱を許せばほぼ無傷の状態まで回復し、再び襲い掛かってくるので完全にイタチゴッコの様相を呈していた。
『教官! SRXの合体許可をッ! SRXであいつらをぶっ飛ばしてやるッ!』
『駄目だ、ここでSRXを使えばラングレーで使えなくなる。連携で突破する』
『っ! 了解ッ!!!』
オペレーション・プランタジネットに備え、戦力を温存しなければならない――しかし百鬼獣達を相手に出し惜しみなど本来出来る訳も無い――それがいらない消耗を招いている。
『キョウスケ、ちょっとやばくない?』
『……見積もりが甘かった……俺達の想像以上に百鬼帝国は戦力を蓄えていた……ッ』
百鬼帝国はプランタジネットでノイエDCを切り捨てる計画だったのだろう。母艦から出撃した百鬼獣にノイエDCの機体の多くが破壊され、援護が間に合ったと思えばそれは見ている前で百鬼獣に変貌する――助けてくれと求める声も本物なのか、偽りなのかがわからないのはキョウスケ達に酷い精神的負荷を与えていた。
『ゲッタァアアアビィイイイイムッ!!!』
頭部から放たれたゲッタービームの一閃が百鬼獣を両断し、AMに擬態していた百鬼獣の姿を露にさせる。だが倒すには至らず、襲ってくる百鬼獣とダブルトマホークでの鍔迫り合いを行いゲッターD2から武蔵の苛立った声が響いた。
『くそッ! ゲッターが本調子ならッ!!』
ゲッターD2のゲッター線は十分に回復しておらず、威力が乏しいとは言えこの場にいる機動兵器の中で1番火力がある頭部ゲッタービームでも百鬼獣を倒せないほどに弱体化している様子に武蔵は焦りと苛立ちを覚える。
『いや、十分だッ!!』
『ぶち抜くッ!』
ゲッタービームの掃射によって正体をあらわにした百鬼獣にゲシュペンスト・タイプSとゲシュペンスト・シグが飛びかかり頭部を破壊する。
『プラズマ……サンダアアアアアアーッ!!!』
バンの雄叫びと共に放たれた高電圧の雷の槍は戦場を駆け巡り、姿を偽装している百鬼獣の正体を明らかにする。
『これならッ! クロスマッシャーッ!!!』
『ファイナルビームッ!!!』
偽装百鬼獣の正体が判ったのならばとヴァルシオーネとグルンガストの強烈な一撃が百鬼獣を破壊する。AMに偽装している分装甲が僅かに脆く、正体さえ露にすれば偽装百鬼獣を倒す事は不可能ではなかった……残る強敵は超鬼神の饕餮鬼皇の分身体だった。
『このおッ!!!』
【ギギャアアァアアアア……】
『リョウト君! いけるわよッ!!』
『うんッ!! いっけえええ――ッ!!!』
【グッギャアアアアアアアーッ!!!】
龍虎王の龍王破山剣の一閃とヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントの赤熱化した拳が饕餮の顔面を打ち貫きその巨体を弾き飛ばす。
『くそが、やっぱり化け物だな。耐久力が段違いだ』
『うへえ……こんなのがまだ沢山いるのかよ……』
『泣き言を言ってる時間はなくてよタスク。エルザム様達は私達よりももっと厳しい戦いをしているのだから、少しでも早くここを突破して合流しなくては……』
『口にするは簡単だがそう簡単にはいかんぞ』
敵の数は膨大で1機、1機が最新鋭の特機に匹敵する生きた機動兵器とも言える百鬼獣だ。甘く見れば返り討ちにあうのは分かりきった事であり、その上キョウスケ達の戦いはここで終わりではなく、あくまでここは通過点である。百鬼帝国とインスペクターもそれが分かっているからこそ、テスラ研へと続くこのエリアに強力な百鬼獣を配置していた。
『この分だとコウキを先に行かせたのは正解だったな』
『だな、多分テスラ研だったっけ? そこもかなり百鬼獣が多くいるはずだしなあ、コウキが上手く立ち回ってくれてることを祈るしかねえな』
アイビス達が先行出来たのは4機程度テスラ研で潰せるという確信があったからだろう。コウキの轟破・鉄甲鬼もゲッター炉心を搭載しているし、何よりもコウキ自身が戦上手だ。コウキが上手く立ち回り時間稼ぎをしてくれている事を祈るしかないと武蔵は言いつつ、再びゲッターD2を饕餮へと向かせ、どんな攻撃にも対応できるように身構えさせる。
『敵機補足! まだまだ来るわよッ!』
『百鬼獣とAMの混成部隊ですッ! 爆撃に気をつけて』
R-3・パワードのアヤとフェアリオンのラトゥーニから警告が入る。制空権までも完全に取られ、今度は最初から百鬼獣が出撃していると聞き、誰もがその顔を歪める。
『アヤ大尉とリュウセイ少尉は1度シロガネまで後退されたしッ!』
『え!?』
『このタイミングで何で後退なんだ!』
シロガネのリーからの後退命令にアヤと流星は即座に復唱とはいかなかった。敵の援軍が来る中でなんで後退するんだとリーの命令に怪訝そうな反応を見せる。
『命令に従うんだ。大丈夫だ、2人が抜けた分は我々が穴埋めする』
『このまま足止めをされ続けているわけには行きません、リー中佐の作戦を実行します』
ビアンとレフィーナからも下がれと指示を出され、リュウセイとアヤが後退し、変わりにクロガネから出撃したLB隊とトロイエ隊のガーリオン・ヴァルキリオンが横に展開し、戦線を維持する。
『リー中佐、何を考えている?』
『このまま戦っても埒が明かない。なればこそだ、ノイエDC各員に告げる。死にたくない者はハガネ、シロガネまで後退されたし、その際に貴君らの母艦の動力を暴走させて来る事』
『ちょいちよいッ! 鬼を乗り込ませるつもり!?』
リーの広域通信にエクセレンが待てを掛ける。だがリーは繰り返し同じ事を告げ、百鬼獣から追われていたAMが反転し、ハガネへと向かってくる。
『だ、大丈夫なのか!?』
『ハガネが撃墜されるんじゃ』
百鬼獣が偽装している可能性もある者を招き入れるなんて正気かと動揺が広がり掛けた時、R-1とR-3から広域通信が入った。
『マサキ! お前の正面のアーマリオンの後のリオンだ! それが百鬼獣だッ!』
『ラトゥーニ、シャイン王女! 貴方達の目の前の一団は全て百鬼獣よッ!』
リュウセイとアヤが念動力で敵意を感知し、偽装百鬼獣だけを見抜きピンポイントで撃墜指示を出す。
『主砲! ライノセラスにあわせッ!』
『てえッ!!!』
無人となり動く気配の無いライノセラスにヒリュウ改とシロガネの主砲が放たれ、動力が暴走していたライノセラスは大爆発を起し、周りの百鬼獣を巻き込んで爆発する。戦艦の動力の爆発は百鬼獣に大しても少なくないダメージを与え陣形を大きく崩す。
『後5分以内にこの空域を離脱しテスラ研へ向かう!』
リーの力強い指示が飛ぶ、一刻も早くこの区域を抜けて孤軍奮闘しているであろうゼンガー達と合流する……それだけを考えてキョウスケ達はこの圧倒的に不利な戦いに身を投じるのだった……。
鋳人・槍に向かって神龍が地面を砕きながら飛びかかり、その手にした二刀で猛攻撃を仕掛ける。
「うおらあッ!!」
上段からの振り下ろし、着地と同時に逆手に持ちかえその場で回転しながらの回転切り――型等ない本能による獣のような攻撃は鋳人・槍の防御を貫き、その胴に深い傷を刻み付ける。
【ギギッ!!】
「はっはぁッ!! 逃がすかよボケがッ!!!」
圧倒的な暴力を嫌って鋳人・槍は地面を蹴って逃げようとするが、フェイの操る神龍は姿勢を低くし地を這う獣のような動きで間合いを詰める。
【シャアッ!】
「ははッ! そうだよ、反撃して来いよッ! あたしには当たらないけどなあッ!!」
接近されるのを嫌がり、宙に浮かび構えた槍から高圧水流を放つ鋳人・槍の攻撃に自ら飛び込み、高圧水流による水の弾丸を手にした2刀で迎撃し、少しずつ、少しずつ間合いを詰める神龍。
【カーッ!!!】
再び間合いに飛び込まれると判断した鋳人・槍は槍を横薙ぎに振るい、広範囲に水の刃を飛ばす。それを神龍のコックピットで見たフェイは獰猛な笑みを浮かべた。
「馬鹿がッ! 隙だらけなんだよッ!」
攻撃速度、攻撃範囲が広くともフェイにとっては横薙ぎの飛ぶ斬撃等避けるに容易い攻撃であり、自ら手にした剣を地面に突き立て、それを踏み台にして跳躍し鋳人・槍に拳で殴り掛かる神龍。
「おらあッ!!」
弾丸のような勢いで間合いを詰めた神龍のアッパーカットが鋳人・槍に叩き込まれるが、飛行能力を持たない神龍は上空へと逃げた鋳人・槍を追う事が出来ずブースターで僅かに落下までの速度を落としながら着陸するしかない。
【ゲハハハハハッ!!!】
今度はお前が隙だらけだと言わんばかりに大笑いをした鋳人・槍は手にした槍を変形させ、その切っ先を神龍に向ける。
「はッ! 舐めんなッ! 人形野郎ッ!!」
ブーストナックルのような勢いで右拳が射出され、地面に突き立ったままの剣をつかむ。
「おいッ!! そこの飛んでるのッ!! あたしの援護をしなッ!!! あんだけ的がでかいんだ外すんじゃねえぞッ!!」
『は、はいッ!!!』
フェイの一喝で反射的に引き金を引いたアイビスの駆るアステリオンの放ったレールガンが鋳人・槍の胸部を捉え、僅かに射撃軸を逸らせる。
「いいぜ、あたし好みの距離だッ!!! シュートッ!!!」
神龍と神虎の両拳はワイヤーナックルとなっており、回収される勢いで地面から引き抜かれた剣目掛けて神龍が回し蹴りを叩き込む、一歩間違えば足を大破させるとんでもない暴挙――だがフェイは卓越した操縦技術で柄を蹴り抜いて剣を鋳人・槍へと蹴り飛ばす。
【ゲッバアアッ!!】
その剣が身体を貫通し、血反吐を吐きながら落下する鋳人・槍の姿を見て、フェイはブースターを全開にし空中から鋳人・槍へと襲い掛かる。
「うおらあッ!!! オラオラオラッ!!! いくぜいくぜいくぜッ!!!!」
【グガアッ!?】
空中で反転し、そのままの勢いで踵落しを叩き込む神龍、鋳人・槍は咄嗟にガードするが、その威力すべてを殺しきれず地面に叩きつけられる。そして神龍は着地と同時に鋳人・槍に突き刺さったままの剣を抜き放ち、再び両手に握ると乱暴に、ただたたきつけて断ち切るといわんばかりに剣を振るう。その動きはゼンガーと異なりただただ乱暴で凶暴な喧嘩殺法……だがその動きには乱暴さと卓越した操縦技術を組み合せた動きで鋳人・槍へと襲い掛かる。その動きは百鬼獣に通じる物があり、とても人間が操縦している機動兵器には見えない動きだった。
『なんであんな動きが出来るの……』
『機体性能ではない、パイロットの純粋な腕か……ッ』
スレイとアイビスがフェイの操縦に驚いていると、神虎のバロンから通信が入る。
『お嬢さん方、目の前の敵に集中しないと死にますよ』
軽い口調だが、重みのある言葉にスレイ達はハッとした表情になり、その顔を引き締める。
『気合が入った用で何より、では僕がフォワードをします。支援をお願い出来ますかね?』
『え? 大丈夫なんですか?』
『はい? 何がですかね?』
『いや、その機体は射撃型じゃ?』
神虎の武装は背部の折りたたみ式のビームキャノンと小型シールドに内蔵された実弾キャノンが2門しか見えず、アイビスが射撃型の機体だと指摘する。
『はい、神虎は射撃型ですが何か?』
『え、あ……え?』
自信満々に射撃型ですけど何か? と言うバロンにアイビスがしどろもどろになる。
『大丈夫なのか?』
『はいはい、大丈夫ですよ。それより支援よろしくお願いしますね』
どこまでも軽い口調のままバロンは神虎を操り、百鬼獣の群れの中に飛び込んでいく神虎――射撃機でインファイトを仕掛けようとしているバロンにスレイとアイビスが驚きに目を見開いたが次の瞬間には別の意味で目を見開くことになる。
【キシャアアッ!!!】
『遅いですねぇ~もう少し頑張ったほうがいいですよ? まぁ次はないんですけどね』
銃声が響き双剣鬼の頭が吹っ飛び、神虎は反転と同時に踵のローラーで後退し、白骨鬼のガトリングを避ける。
『はいはい、残念ですね~』
【ギャアッ!?】
射撃型の機体で白兵戦の距離で射撃を行い、最小の動きでカウンターを叩き込み通常の攻撃よりも大きなダメージを与えるその戦法はスレイとアイビスにとって目から鱗の物だった。
『うそお……』
『まさかここまで凄腕のパイロットが野に埋もれているとは……』
想像を超える動きに驚くスレイとアイビスだったが、自分達のやるべきこと神虎の支援を行い、神虎が動きやすいようにマシンキャノンで攻撃を仕掛ける。
『いいですね~動きやすくなりましたよ~』
飄々とした口調だが、その動きは嵐のように凄まじく、緩急を付けた動きで百鬼獣を翻弄し鋳人・弓へと肉薄する。
【シャアッ!!】
『っとと。危ない危ないっと』
炸裂する弓矢を避け、両腕の実弾キャノンで攻撃を仕掛ける神虎。だが鋳人・弓は損傷を簡単に回復し弓を構える。
『んーフェイ、こっち手伝えませんか?』
「うっせえ! あたしはこっちで手一杯だッ!! 猫被ってないで真面目にやれッ!」
『いやいや僕は真面目なんですけどねぇ……でもまあ……もう少し頑張りましょうかね』
バロンがそう告げると神虎はその姿を変形させ、4つ足の獣の姿へと変える。
『では行きますか』
どこまでも軽く、緩い口調だがその纏う空気は鋭く、神虎と対峙した百鬼獣はバロンが自分達よりも強い事を悟り、僅かに後退したが次の瞬間に神虎は百鬼獣の首筋に喰らいついていた。
『敵を前に後退――いけませんねぇ。隙だらけですよ』
首を噛み切られゆっくりと崩れ落ちる百鬼獣を蹴りつけ、神虎は空中で機人へとその姿を変え実弾をばら撒き着地する瞬間には再び獣へとその姿を変え、低い姿勢で這うように走り出す。
『お嬢さん方、適当に撃ちまくってくれてかまいませんよ』
『私達の攻撃までお前に当たるぞ』
『大丈夫ですよ。貴女達ルーキーの攻撃に当たるほど僕は耄碌していませんからね』
挑発するような言葉にむっとするスレイとアイビスだったが、バロンの言う通り上空からの射撃を行う……
『ほらね? 当たらないでしょ』
銃弾をすり抜けるように回避し、百鬼獣に飛びかかる神虎を見てスレイとアイビスはバロンと神虎の底知れない実力に目を見開くのだった……
獣のような動きで暴れまわる神龍と姿こそ獣だが理知的でチェスのように詰みに持っていく神虎の2体はたった2体だが戦況を引っくり返すだけの力を有しており、フェイとバロンの2人も卓越した操縦技術を持つからこそ有利に立ち回っているように見えていたが、実際はそこまでの余裕が無い事をコウキは知っていた。リシュウのかつて作った特機である神龍と神虎はOSのアップデートと装甲と関節部などの強化こそ行なわれているが、長時間エンジンに灯が灯った事は無く、ましては全開稼動なんてした事も無い。いずれ限界が訪れる事は分かっていた。
「うおおおおおッ!!! いい加減に鬱陶しいんだよッ!!!」
【!!】
神虎と神龍が暴れ回り、そして鋳人が百鬼獣を取り込んだ事で敵の数は減っている、百鬼獣の増援が来る前にとコウキは轟破・鉄甲鬼を操り、がっぷり4つに組み合っていた鉄甲鬼を殴り飛ばし、双剣鬼の持っていた剣を手に取るとそれを地面に倒れている鉄甲鬼のマントに突き刺し、踏みつける事で鉄甲鬼を完全に地面に縫い付ける。
「お前の相手は後だ、そこで大人しく待っていろッ!!」
大人しく待っていろと言われても百鬼獣がはいそうですかとしたがうわけが無く、拘束から逃れようともがきながら自由に動く頭部の角から電撃を放つが、自由に動く事が出来ない上に縫い付けられて禄に射角が取れない攻撃に当たるほどコウキは耄碌していない。
【シャアッ!!】
「お前に直接的な戦闘力がない事は分かっているんだよッ!!」
胡蝶鬼はあくまでジャミング等の支援に特化した百鬼獣だ。ナノマシンによるセンサー類の妨害とハッキング、そしてある意味百鬼獣の共通装備と言える角からの電撃、切れ味のいい蝶の羽根型のブレードブーメランと決して武装の数は多くなく、そして攻撃力も高い訳ではない。
「ここまで距離を詰めればッ! お前の姿を見失う道理はないッ!!」
他の機体による横槍が無ければ姿を完全に補足した胡蝶鬼を見失う道理はないと叫んだコウキは自ら胡蝶鬼の放った光る蝶の中に身を投じる。ナノマシンとジャミングによる妨害でモニターとセンサー類が全て光を失うが、既に完全に胡蝶鬼の姿をロックオンしているコウキにとってその妨害は何の意味も無かった……。
「そこだあああッ!!」
胡蝶鬼の機動力、そして接近戦能力の無さから逃げる場所は上空しかないと読んでいたコウキは両腕のアタッチメントをガトリングアームへと変形させ狙いなど絞らずに乱射する。ガトリングアームには胡蝶鬼を破壊するだけの攻撃力はないが、命中した音と角度から胡蝶鬼の場所を割り出すことが出来る――だがこの芸当は旧西暦のコウキだからこそ出来る動物的な直感と天才的な戦闘センスだから出来る物であり、誰もが出来るものではない。強いて言えば武蔵とラドラが出来るくらいの神技的な芸当と言えるだろう……。
「捉えたぞッ!!! ブラスターキャノン発射ッ!!!」
【アアアアアアアア――……ッ】
フルパワーまでチャージしていた腹部ブラスターキャノンが放たれ、胡蝶鬼は断末魔の悲鳴をあげながら熱線の中に消える。轟破・鉄甲鬼がマントを翻し着地した後で、僅かに頭部と胴体、それと両肩を残した胡蝶鬼が轟音と共に落下し機体を軋ませながら、残された右腕から再び光る蝶を放とうとした瞬間、前を向いたままで斧を振い、その一閃で胡蝶鬼は完全にトドメを刺され爆発と共にその場に倒れカメラアイから光が消えた。
【グルルルルウ】
「ふん、腹が立っているようだが……それは俺も同じなんだよ。この出来損ないがッ!!!」
暴れ回り、マントを引きちぎった事で立ち上がった鉄甲鬼が唸り声を上げながらその手に斧を握る。
「来い、格の違いを教えてやる。三下」
【ゴガアアアッ!!】
手招きをする轟破・鉄甲鬼に向かって怒りの咆哮を上げて突進してくる鉄甲鬼。その姿を見てコウキは呆れたように肩を竦めた。
「やはり電子頭脳だな、俺ならばそんな無様な真似はしない」
怒りのままの振るわれる斧の一閃を下からの切り上げで切り払い、前蹴りを叩き込み鉄甲鬼を蹴り飛ばす轟破・鉄甲鬼。
「あの時は俺も轟破・鉄甲鬼も万全ではなかったが……万全ならばお前に負ける道理はないッ!!!」
【シャアアッ!!!】
轟破・鉄甲鬼の額から放たれたブラスターキャノンと鉄甲鬼の角から放たれた電撃がぶつかり合い爆発を起こし、その爆発によって発生した光が消えると同時に、轟破・鉄甲鬼と鉄甲鬼は同時に弾かれたように走り出した。
「うおおおおおッ!!!」
【グルオオオオオッ!!!】
コウキと鉄甲鬼の雄叫びが重なり、同時に振るわれた斧がぶつかり合い凄まじい轟音がテスラ研に響き渡ったのを合図に轟破・鉄甲鬼と鉄甲鬼の戦いの幕が開けられたのだった……
ガルガウと対峙しているウォーダンはスレードゲルミルのコックピットの中で僅かに驚きの表情を浮かべていた。
「……ゲッター合金でコーティングした斬艦刀に亀裂が……」
マシンセルの力で即座に修復されるが、それでも斬艦刀に亀裂が入った事はウォーダンにとっても驚きだった。
『こんな所でこれを使わせられるとはなッ!! だがこれを使う以上、貴様など俺の相手ではないわッ!!!』
怒りに満ちたヴィガジの声と共にガルガウが唸り声を上げ、背部の翼を大きく広げる。転移してきたレストジェミラが運んで来た強化パーツを装着したガルガウがアイアンクローをぶつけ合い火花を散らす。
「あのような姿はデータには無いが……相手にとって不足なしッ!!」
両腕に装着する大型のシールドと一体化したアイアンクロー、そして背部と肩部に装着する装甲にはビームキャノンと飛行能力を補う為の翼ではなく、エネルギー放熱用の放射板なのだろう……その証拠にガルガウ改の背後から陽炎のような熱が漏れ出している。
『ぬおおおおッ!!!』
「むっ!! ぐうっ!?」
想定以上に早い踏み込みにウォーダンは一瞬反応が遅れ、アイアンクローの強烈な一撃にスレードゲルミルの巨体が宙を舞う。
「……修復が遅い……これはッ」
スレードゲルミルのマシンセルの修復能力が遅い――この現象にウォーダンは見覚えがあった。ゲッターD2と武蔵と戦った時の現象だと
気付き、ガルガウの装着したパーツがゲッター合金製だとウォーダンはすぐに見抜いた。
『ふははははははッ!! 素晴らしいパワーだっ!! ははははッ!! 今ならば百鬼帝国に感謝してもいいッ!! ゲッター合金の力は素晴らしいぞッ!!!』
その力に酔いしれて高笑いするヴィガジの姿を見てウォーダンは興醒めと言わんばかりに深い溜め息を吐いた。
「力に溺れるか。監察官だの、我々を野蛮人だなんだのと言っておいてその様か」
地球人を散々野蛮人だの、下等な生物だと罵っておいて自分もゲッター合金製の武装を手にすればその力に溺れる。ウォーダンからすればそれは愚かな行動にしか見えなかった。
『ふんッ! 好きに言うがいい、貴様はここで俺に敗れて死ぬのだからなあッ!!!』
ゲッター合金製の爪を突き出しながら突進してくるガルガウ改。圧倒的な質量と高性能の動力、そしてゲッター合金製の変幻自在かつ高硬度の装甲はそれだけで強力な武器と言えるだろう。
「貴様など俺の眼中にないッ! 貴様には過ぎた武器だが……見せてやろうッ! 俺の新しい斬艦刀をなッ!!」
スレードゲルミルの左手が斬艦刀の刀身をなでるように動くと、その刀身が液体へと変化し、翡翠の光と共にその姿を造り替える。深い蒼い色は鮮やかな翡翠の色へと変わり、その刀身もより鋭く、そして巨大な物へとその姿を変えた。
『ぬっ! その輝きはッ!』
「ご名答、俺の斬艦刀もまたゲッター合金だッ! 斬艦刀……真打。その切れ味――身を持って知るがいいッ!!! 推して参るッ!!!」
ゲッター線の輝きを灯した斬艦刀とガルガウ改のアイアンクローがぶつかり合う、速度は圧倒的にガルガウ改の方が上だったが、吹き飛んだのはガルガウ改の方だった。
『ぐあっ!? 馬鹿な……なんだこの破壊力はッ』
「言った筈だ……貴様には過ぎた力だとなッ!!」
ゲッター線を扱う事が出来るウォーダンと、それを扱う事が出来ないヴィガジ――それはウォーダンとヴィガジのゲッター線適合率の違いを如実に現していた。
「おおおおッ!!!」
『来るな来るなッ!!!』
「無様だな監察官ッ!! 貴様こそここで俺に敗れて死ねッ!!!!」
無人機の群れを一振りで両断し、最短距離でガルガウ改へと走るスレードゲルミルの姿にヴィガジは恐怖し、背中のキャノン砲を発射する。その姿を見てウォーダンは興醒めにも程があると冷笑を浮かべ、ガルガウ改の攻撃を弾きながらスレードゲルミルは間合いを詰め続け、そして斬艦刀の威力が最大限に発揮される位置までその間合いを詰める。
『メガ……』
「踏み込みが遅いッ!!!」
メガスマッシャーを放とうとするガルガウだが、その動きは余りにも遅く、ガルガウ改がメガスマッシャーの発射姿勢に入る前にスレードルゲルミルが斬艦刀を大上段に振りかぶり、その刀身をガルガウ改へと振り下ろそうとし……突如その動きを止めた。
「なんだ!? 何が起きたッ!!」
『は、ははははっ!!! 貴様らの様な下等な猿が俺達監察官に唾を吐いたことを悔いろッ!!!』
完全に仕留めれたタイミングで動きを止めたスレードゲルミルにガルガウ改のゲッター合金で強化された尾が叩き込まれ、スレードゲルミルは吹っ飛ばされ、背中から壁に叩きつけられる。
「ぐう……何が……何が起きたというのだ」
整備は完璧だったはずなのに何故スレードゲルミルが動きを止めたのか、困惑しながら身体を起こしたウォーダンが目にしたのは鎧武者を思わせる特機がガルガウ改によって宙に持ち上げられ、動く事も出来ずそのアイアンクローによって破壊されそうになっている姿なのだった……。
第167話 武神装甲ダイゼンガー その4へ続く
やっとここまで来たなあ、次回ダブルG(魔改造)の登場ターンです。原作よりかなり改造してパワーアップしているので、ゲームともアニメとも違う感じでボリュームマシマシで書きたいと思います。敵も少しふやしても良いかなと思っていますしね、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
PS
真ゲチェンジアタック2ガチャはオーラチャージ
無料10連でチェンゲアタック1・2の神引き
後はステップアップでストナーサンシャインが出ていたら完璧でした
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
-
サイドまたは視点は必要
-
今のままで良い