進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第169話 策謀

第169話 策謀

 

ダイゼンガーはクロガネに運び込まれていた。その理由はジョナサンとフィリオが苦戦したDMLシステム、そしてJINKI-1の再調整の為だ。

 

「申し訳ないな、面倒ごとに巻き込んでしまって」

 

「なーに、かまわんさ。ワシはどうせテスラ研で待つしか出来ん、それならば少しでも手助けをするまでよ」

 

剣術モーションに掛けてはリシュウに勝る者はいないとビアンを持ってしても認めざるを得なかった。DMLシステムとJINKI-1の調整はビアンが行なうが、ゼンガーの動きを最適化したモーションの調整はリシュウが受け持つことになった。

 

「ゼンガー少佐。ダイゼンガーとは良いネーミングだ、やはりスーパーロボットの名前はそうでなくてはならん」

 

分かっていると褒められてもゼンガーはなんと反応すれば良いのか困り唸るにとどまる。

 

「実際に操縦してみてどうだった? 何か思った事はあるかね?」

 

「いえ、文句等ありません。俺好みの最高の機体だと思います」

 

「そうか、喜んでもらえて何よりだ。とは言え……私の想定していた物よりも仕上がっていない」

 

「それは酷というものじゃ、ジョナサンもフィリオも相当努力したのじゃぞ?」

 

ダイゼンガーの完成度に満足のいっていない様子のビアンの言葉を聞いたリシュウがそれは余りにも高望みしすぎだと釘を刺す。ゲッターD2、ゲッターV、そしてネオゲッターロボとオーバーテクノロジーに触れ続け、技量を高めたビアンが異質なのであり自分と同じレベルを求めるのは余りにも酷だ。

 

「それを言われると困るな……ふうむ、ゼンガー少佐。内蔵武器だが、プランタジネットまでに調整は無理そうだ。パーツと動力系統、それとエネルギーバイパスが不安定だからな。参式の炉心が機能停止してなければゲッター線のチャージ設備を作れたのだが残念だ」

 

「どこも壊れていないのに起動せんとは、ゲッター線とは不可思議な物じゃな」

 

参式の炉心は奇跡的に破損していなかったが、機能は完全に停止しており壊れていないから修理のしようがないという有様だった。フレームも無事な箇所が多いので改修が行われる事になったが、当然ながらプランタジネットには間に合うわけも無かった。

 

「修理にはどれぐらいの時間がかかりますか?」

 

ダイゼンガーはビアンが地球防衛、そしてゲッターロボの僚機となれるように設計しているので、内部武装も非常に充実する筈だったのだが、ここでもビアンの技量に追従出来なかったことの弊害が出ていた。参式斬艦刀があれば事足りると言うゼンガーだが、インスペクターやシャドウミラーを相手にするには斬艦刀で足りるかもしれないが、数多く出現するアインスト、インベーダー、百鬼獣に対しては斬艦刀一振りでは流石に厳しい物があるとゼンガーも感じており、どれほど修理に時間が掛かるかとビアンへと尋ねる。

 

「調整が早く済みそうなものはダイナミックナックルとゼネラルブラスター、それと徒手空拳用のスラスターの調整などを含めて、2日ほどか……どれか1つに絞ればプランタジネットには間に合うと思うが……エネルギーの運用の最適化を考えると燃費が極端に悪くなる。ゲッター炉心で回復するとは言え多用は出来ないかも知れん」

 

他の研究者ならば1ヶ月ほどの時間を有するが、ビアンにとって自分が設計した機体を再び再調整する事など朝飯前だったが、プランタジネットを控え時間がない今では全てを修理する事も、エネルギー効率を最適化するのも難しいと渋い顔でゼンガーへと告げる。

 

「……ブラスターのみ使用可能として貰えますか? ビアン博士」

 

「それはかまわない。だがエネルギー効率はさっきも言った通り最悪に等しいぞ?」

 

「それでもです。囲まれた時、そして包囲網が形成された時にそれを突破する広域攻撃は必要となります」

 

今回の戦いでも感じていたが転移で多数の敵が同時に出現する事、そして百鬼獣の耐久力を考えれば広域攻撃、そして強力な単体攻撃は必要不可欠だ。斬艦刀・大車輪などの剣技による広域攻撃はゼンガーの技量を持ってすれば十分に可能だが、百鬼獣や妖機人が戦場に居ればそれは自ら武器を手放す事に等しい……他の手段による広域攻撃の術が必要だとゼンガーはビアンへ告げる。

 

「了解した。ではその様に調整しよう」

 

「よろしくお願いします。ウォーダンに無様な姿を見せるわけには行きませんので」

 

ウォーダンの名前にビアンは驚いたような表情を浮かべるが、剣撃モーションの調整をしていたリシュウは納得という表情を浮かべた。

 

「敵でありながら天晴れな武人であったな」

 

リシュウの目から見てもウォーダンは武人であり、浅からぬ因縁を感じさせながらもゼンガーを守り、そして道を作ったその姿は紛れも無く高潔な武人の姿だった。

 

「ウォーダンがいなければ俺はダイゼンガーを手にする事は出来なかった。なればこそ、俺は武人として奴との決着を付ける為にも、そしてソフィア・ネート博士と交わした約束を守る為にも敗れるわけにはいかぬのです」

 

違える事の出来ぬ約束の為に、そして己を越える壁としているウォーダンの思いに応える為にももう負けられないのだと闘志を燃やすゼンガーの姿を見て、ビアンは少しだけ表情を曇らせた。

 

「ソフィア博士はアースクレイドルにいる。その事をちゃんと理解しているな? ゼンガー少佐」

 

「……はい。俺は俺の成すべき事をします……それがソフィア博士をこの手で殺めることになったとしても、俺は彼女の願いを叶えます」

 

アースクレイドルは本来人類の揺り篭となるべき人類の拠点だったが、今は百鬼帝国、そしてシャドウミラーの手中に落ちている。その事を考えればソフィアが無事でいる可能性は窮めて低い、それこそ最悪鬼に改造されている可能性もある。そうなった時斬れるか? というビアンの問いかけにゼンガーは悲しみを宿した瞳で殺める覚悟はあると返事を返した。

 

「ゼンガーよ、そう悲痛に考えるではない。アースクレイドルのメインコンピューターはソフィア博士でなければ操作出来ぬと聞く、ならばソフィア博士は無事な筈じゃ」

 

「……リシュウ先生。ありがとうございます、それを確かめる為にも俺はラングレー基地を取り返し、インスペクターを退けアースクレイドルへと向かいます」

 

リシュウの激励の言葉に頷いたゼンガーは格納庫に固定されているダイゼンガーを憂いを秘めた瞳で見つめる。アースクレイドルにいるであろう想い人を想うその姿にビアンもリシュウも掛ける言葉が見つからないのだった……。

 

 

 

 

ダイテツ、レフィーナ、リー、そしてビアンの代わりに参加しているリリーとブライアンとグライエンの6人の表情は暗く、それぞれの手元に連邦本部からの指令内容に眉を顰めていた。

 

「あと1時間で出撃なんて不可能に決まっている、これでは見す見す死にに行くような物だ」

 

テスラ研を奪還する――プランタジネットの作戦の第一段階でハガネ達の損傷率は50%、エネルギーフィールドの出力も大幅に低下しており、マンハッタンを経由しラングレー基地へ向かうのは誰の目から見ても自殺行為だった。

 

「ですが、司令部は意見を変えるつもりがないんですよね?」

 

「うむ、ゲッターロボと武蔵がいるのだから強行せよとの事だ」

 

本当は連邦本部で確保したかった武蔵がハガネに同行している事に対するやっかみもあるだろうが、本部からの命令は無茶を通り越して無謀だった。

 

「リリー中佐、そちらの物資を使用したとして、万全な状態になるまではどれくらいの時間がかかりますか?」

 

「軽く見積もっても8時間ほど必要です。テスラ研の設備が万全だったとしても4時間は最低必要かと」

 

連邦本部の指令が余りにも無茶が過ぎるとダイテツ達は再び眉を顰める。

 

「やっぱりあれだね、ブライが手を引いていると見て良いんじゃないかい? ウィザード」

 

「そうとしか考えられまい、ブライアンが負傷し一時的に最高責任者となるといけしゃあしゃあと言っていたからな、病院からのパフォーマンスでかなりの支持率は急上昇している」

 

グライエンが口にする事はなかったが、プランタジネットの後にブライアンの負傷を理由にし、ブライが政権を掴むのは避けられない事態となっている。

 

「プランタジネットを成功させてブライ議員が鬼だと公表すると言うのは……」

 

「それは恐らく無理だね、レフィーナ中佐。ブライは馬鹿じゃない、ノイエDCを切り捨てるんだ。自分が不利や劣勢になるように立ち回ることはない、このプランタジネット自体が罠と言っても良いんだからね」

 

ブライアンの言葉はこの場にいる全員に重く圧し掛かる。連邦本部がブライに押さえられており、言論操作に鬼の成り代わりによっていまや連邦軍の内部は権力闘争と鬼による扇動でガタガタ、その上大統領府襲撃の際にビアンが2人目撃されたことで人の中にも鬼が生まれてしまった。

 

「疑心暗鬼、本来協力し合えるはずがそれすらも難しくなっている」

 

「その上ノイエDCの中にも鬼とそうじゃない者が居る。彼らを見捨てる訳にも行かない」

 

ビアンが本物だと思い、地球を救うという決意によってノイエDCに参加した者も多くいる。それらの軍人はダイテツ達と志を共にするものだ。そんな者達をみすみす見殺しにするなんて事は出来る訳もない。仮に見捨てたとなればブライはそれすらも利用し、ダイテツ達を初めとしたL5戦役の英雄達の評価を地に落とすだろう。

 

「戦っても駄目、逃げても駄目、敵の首魁がいる場所も分かっているのに攻撃を仕掛けることも出来ない……本当に完全に積みだよ。お手上げだ」

 

「諦めるのか? ブライアン」

 

「まさか。出来る限りの手は打たせて貰うさ……とは言えなぁ、僕はブライに助けられた事になっているし、ラングレーは恐らく敵勢力が全て出てくるだろうし……どうしたものか……」

 

知恵者がこれだけ集まっても名案は何一つ浮かばない、それほどまでにブライが用意した包囲網はダイテツ達を取り囲んでおり、仮にプランタジネットを切り抜ける事が出来たとしても、その先に待っているのは今まで暗躍していた百鬼帝国が表へと進出して来る事、そしてブライが政権を取ることで考えられる最悪の展開――。

 

「恐らく我々は分断される事になるだろう」

 

「でしょうね、戦力分断は戦の基本ですから」

 

プランタジネットで纏めて叩く事が出来なければ今度は各個撃破を試みてくるだろう。インスペクター、あるいは百鬼帝国の軍勢が待つところへ戦力を分散した状態で向かう事になる……それは途方もない絶望的な戦いに身を投じることと同意儀だ。

 

「私はそれよりも月が心配です。百鬼帝国には人を鬼に改造する術がある。月の住民が心配です」

 

「……確かに月の全人口の半分以上が月へ残されているからな。そちらの救出も急務か」

 

百鬼帝国とインスペクターに制圧されている月とムーンクレイドル、そこの住人すべてが鬼に改造されているかもしれないと言う最悪の予想が脳裏を過ぎる。テスラ研を奪還し、ダイゼンガーとアウセンザイターというビアンが心血を注いだスーパーロボットも加わった。だが状況は決して好転する事無く、悪化の一途を辿っているのだった……。

 

 

 

 

 

 

オペレーション・プランタジネットでラングレーへ向かってくるハガネ達を待ち構えてる陸皇鬼の一室ではアクセルの苛立った声が響いていた。

 

「……W15、貴様に与えられていた指令は敵の戦力を削ぐ事だった筈だ。 そして……対象外はヘリオス・オリンパスのみ……何故、ゼンガー・ゾンボルトを助けるような真似をした?」

 

スレードゲルミルの戦闘データの開示によってゼンガーの手助けをしたウォーダンの行動が明らかになり、アクセルがウォーダンへと詰問を行なっていた。アクセルの攻める口調にも、殺気を込めた視線にもウォーダンは動じる事無く、一切の弁解もせずアクセルの言葉に耳を傾けているがその態度にアクセルは更に苛立ちと怒りを覚える。

 

「結果、奴は新型を手に入れ……連中の戦力は増強されてしまった。……つまり、貴様は指令を無視したことになるが、ラミアとエキドナのように俺達を裏切る算段でもしているのか?」

 

「そんなつもりはない……ただ俺は奴と互角の勝負をする為に手助けをしただけだ、それを責められる謂れはない」

 

人形の分際でとアクセルが声を荒げようとした時、龍王鬼の上機嫌な笑い声が響き渡った。

 

「良いぜ良いぜ、そういうのは大好きだ!どうせ戦うのなら最強の状態の敵と戦いてえよなあッ!!」

 

「龍王鬼…これは俺達シャドウミラーの話だ、割り込まないで欲しいのだが?」

 

アクセルが殺気をこめながら龍王鬼の名を呼ぶと、その後から姿を見せた闘龍鬼が腰に刺している剣の柄に手を回す。

 

「お前達は龍王鬼様の慈悲で陸皇鬼にいさせてもらっているに過ぎない。立場を弁えるのは貴様だ、アクセル・アルマー」

 

「まぁそう互いに殺気だつなよ、本番はこれからだろ?」

 

一触即発という雰囲気の闘龍鬼とアクセルの間に龍王鬼が割って入るが、その目は鋭くこれ以上揉めれば龍王鬼と戦う事になると悟り、アクセルは構えを解き、ウォーダンへと更なる問いかけを行なう。

 

「互角の勝負をしてどうするつもりだ? それで貴様が敗れたら? お前は永遠の闘争の世界を支える為の存在だと判っているのか?」

 

「それは違う、俺はメイガスの剣。他のWシリーズとは与えられた役割が違う。アクセル隊長こそ、俺の任を理解しているのか?」

 

ウォーダンの挑発めいた言葉にアクセルの額に青筋が浮かび、その様子を見てレモンは楽しそうな笑い声を上げた。

 

「1本とられたわねアクセル。ウォーダンはメイガス、アースクレイドルを守るという事が第一目標と設定されているわ、ほかのWシリーズと同等に考えた段階で貴方の負けよ」

 

アースクレイドルは後に永遠に続く闘争の世界を作る為に量産型Wシリーズの製造拠点の1つとなる予定だ。だからこそウォーダンにはメイガスを守る事がプログラムとしてこの世界に来て組み込まれた。メイガスと同調しなければ自我が不安定であるウォーダンには適任であり、マシンセルによる再生能力を持つスレードゲルミルはアースクレイドルの守護者として適任だった。

 

「ちっ、もう良い、ウォーダン。言ったからには貴様がゼンガーを必ず討て」

 

「……承知」

 

不機嫌そうに部屋を出て行くアクセルをレモンと龍王鬼達は見送り、その姿が見えなくなってから小さく笑った。

 

「聞いたか? 今ウォーダンって呼んだぜ?」

 

「ええ、今まで番号で呼んでたのにね」

 

アクセルはそのあり方を認めれば番号ではなく、名を呼ぶという癖がある。本人は気付いていないようだが、それでもウォーダンのあり方はアクセルから見れば十分に認めれるだけの物があったという訳だ。

 

「さってと、俺様達もそろそろ準備をするかね」

 

「あら、結構気が早いのね?」

 

「おうよ! 武蔵とも戦いてえしよ! 龍虎王も悪くねぇ、俺様はラングレーでの戦いが楽しみで仕方ねえよ!」

 

歯を剥き出しにて笑う龍王鬼は拳を掌に何度も打ちつけ獰猛に笑った。

 

「おう、ウォーダンもがんばれよ。ダイゼンガーだったっけか? ありゃ強いぜえ、お前が戦うっていわねぇなら俺様が戦いたいくらいだ」

 

龍王鬼が笑いながら言うとウォーダンが前に出て、龍王鬼の前に立った。

 

「ゼンガーは俺が倒す、余計な横槍は止めて貰おうか」

 

殺気ではない、闘志を叩きつけられた龍王鬼は子供のように楽しそうに笑い、ウォーダンの肩を叩いた。

 

「分かってるぜ、そう焦るなよ。なーに、プランタジネットとかいう奴の百鬼帝国側の指揮官は俺だ、お前とゼンガーの戦いに邪魔はさせねえよ。思う存分正々堂々一騎打ちで戦いな!どうせこの戦いはよ、始まりだからな。」

 

「始まりって……ここで終わりにするんじゃないの?」

 

インスペクター、百鬼帝国、シャドウミラー……ハガネ達に敵対するすべての勢力がラングレー基地に集まり、テスラ研では多少のイレギュラーがあったが、間違いなく中破クラスの損傷を全ての機体が負っている筈、その上で高官に成り代わっている鬼の指示により、上層部の情報を操作し補給も整備の時間も禄に取らせず、ラングレー基地に向かってきているハガネの現状はある意味レモン達が経験した戦いよりも遥かに厳しい状況だ。それなのに龍王鬼は始まりだと告げた、その真意をレモンが問いかけると龍王鬼はにやりと笑った。

 

「戦場には流れがある、戦いの流れだ。その流れが俺様に言っているのよ、これで終わりじゃないってな」

 

「勘って事かしら?」

 

龍王鬼の話には何の根拠も確信もない、科学者としては到底受け入れらない勘という物ではないか? とレモンが口にする。

 

「勘さ、だけど俺様の勘は良く当たるんだぜ? 嘘だと思ってるなら良く見てな、この戦い。俺様達は誰も殺せねえよ。行くぜ、闘龍鬼」

 

「はっ」

 

殺せないと言い切った龍王鬼が闘龍鬼と共に部屋を出て行く、その姿を見送りながらレモンの頭の中はありえないと言う言葉で一杯だった。周りが全て敵、そして援軍も応援も望めない絶望的な状況に追い込んだというのに誰も殺せないと龍王鬼は言い切った。

 

(何故かその通りだと思ってる……どうして?)

 

龍王鬼の言葉には説明出来ない説得力があり、レモンは完全に混乱していた。それと同時に奇妙な事に龍王鬼の言葉が真実であるとありえないと思いながらも確信してしまっていた。

 

「ウォーダン、行きましょう。貴方の調整をするわ、ゼンガーと本気で戦えるようにね。そしてゼンガーに勝って、貴方は本当の意味でウォーダン・ユミルになるのよ」

 

「……承知」

 

龍王鬼の言う通りなら、ラングレーで想像を絶する何かが起きる。そして龍王鬼は誰も殺せないと言ったが、自分達が殺されないとは口にしていなかった。プランタジネットまでの僅かな時間、自分に出来る全てを行なおうとレモンは部屋を後にするのだった……

 

 

 

 

 

ネビーイームに転移してきたヴィガジは瀕死の重傷を負いながらも、自分がテスラ研で何を見たのか、そして何が起こったのかを記録したデータディスクをウェンドロに託し、意識を失った。無能な部下を嫌うウェンドロだが、ここまで行なわれればある程度の慈悲は持ち合わせていた。

 

「ヴィガジを培養ポッドへ、死なせるんじゃないよ」

 

『了解』

 

バイオロイドに命じ、治療ポッドに眠らせる程度だが……その忠義を少しだけかう事にしたのだ。そして戦闘データを見たウェンドロは即座にブライへ通信を繋げた。

 

「ブライ、君が言っていた事とはまるで違うことになっているが、これはどういうことかな?」

 

ダイゼンガー、アウセンザイターと言うゲッター炉心で稼動する特機の存在は聞いていなかったと批判するとブライは意外にも謝罪の言葉を口にした。

 

『それに関しては私のミスだよ。申し訳ない、まさかあんな機体がテスラ研にあるとは想像もしていなかった』

 

「補給路とかはしっかり監視していたんだろう? ヴィガジを謀殺でもするつもりだったのかい?」

 

『まさか、そんな事をするつもりは無かったよ。どうやってテスラ研にあれだけの機体の材料を運び込んだのか今も皆目見当が付かない。

少々ビアンを甘く見ていたかもしれない、しかし申し訳無い事をした。テスラ研をみすみす奪還させる事になってしまったことを謝罪しよう』

 

ビアンの頭脳を甘く見ていたのが原因であり、ヴィガジの負傷とテスラ研奪還については自分の責任だと謝罪するブライに、ウェンドロは僅かに眉を細める。

 

「この調子でプランタジネットを実行して大丈夫なのかい?」

 

『確かに不安要素はあるが、ここまで来て止める訳にもいくまい? ここまでの好機はそうそうないと思うがね?』

 

疲弊させ、補給も整備も満足に行えない状況に追い込み、全ての勢力が集結している今、ラングレーは確実にハガネ達を沈める為の完璧な布陣と言える。だがそれでもウェンドロには拭いきれない不信感があった……確かに元々ブライを信用しているわけでは無いがそれでも謎の異形の巨人の出現と共に姿を消した百鬼獣には不信感を抱いていた。目の前の餌を利用し、自分達を捨て駒にしようとしているのではないか? と考えを払拭する事が出来ない。

 

『今回の件で私達に不信感を抱くのは当然だ。ならばプランタジネットの戦場では我々が先陣を……いや戦力の7割を我々が補填しよう、そして流石に百鬼帝国の指揮官である龍王鬼まで其方の言う事を聞かせるわけには行かないが、それ以外の戦力の指揮権は全て其方に譲渡しようではないか』

 

「……何を企んでいるんだい?」

 

明らかにウェンドロ達にとって有利すぎる条件の提示にウェンドロはブライの真意が分からなくなる。

 

『これは私の誠意の形だ。共に協力し合うのにくだらないいがみ合いは良くない、そうだろう?』

 

敵は自分達ではなくゲッターロボである筈だと遠回しに言うブライにウェンドロは深い溜め息を吐いた。

 

「分かった、分かったよ。今回は君の事を信じよう、その代りこちらも1つ条件を出させてもらう」

 

何もかもブライの思い通りにさせるわけには行かないとウェンドロもプランタジネットを実行する上で何もかもブライの敷いたレールで行動するのは余りにも危険だと再認識したのだ。

 

『かまわないよ、何を望むかね?』

 

「こちらの損傷度が4割を越えたら僕達は撤退する、こんな不確定要素が多すぎる戦いを深追いするつもりはないんだよ』

 

ゲッターD2に匹敵する可能性を秘めたダイゼンガー、アウセンザイターがいる以上。オペレーション・プランタジネットを利用し、ハガネ達を沈めると言う作戦には懐疑的にならざるを得ず。損傷が軽微の内に離脱する権利を貰うと言うウェンドロの要求はブライにとっても眉を顰めるものであったが、今回の事を考えればインスペクターが手を引くと言い出すのは当然の事であり、早期撤退要求で済めば御の字と認めざるを得ずブライはウェンドロの要求を呑む事となった。

 

「それと今回の件が失敗したら、次の作戦は僕の主導でやらせてもらうけど良いよね?」

 

『かまわないさ、纏めて倒すと欲張ったのが敗因だと言うのならば今度は各個撃破だ。幸い私は上層部に指示を出せる立ち位置にいる、戦力を削いだ上であの艦隊のいずれかを宇宙へ送ろう、そのあとは全て君に任せるよ』

 

プランタジネットが失敗したのならば次は各個撃破と作戦を切り替える必要があるのは誰の目から見ても明白で、ブライはウェンドロの条件を飲んだ上で、確実に仕留める状況を作ると提案する。

 

「それくらいで良いかな、じゃあプランタジネットが成功するといいね」

 

そう笑ったウェンドロは通信を切り、次の計画を練り始める。それはプランタジネットは成功しないと確信しての行動だった。

 

「やれやれ、あの程度で済んでよかったと思うべきだな。さてと……テスラ研に現れた妖機人だが、あれはバラルの手の物か?」

 

テスラ研での戦闘をめちゃくちゃにしてくれた鋳人について問いかけるブライに共行王は怒りのせいか、その目を真紅に輝かせながら返事を返す。

 

「間違いない、あの腐れ仙人が使役する妖機人じゃ、鬼よ」

 

「分かっているさ、ただし妖機人が出現するまで待機だ。バラルへの宣戦布告は万全の状態で行なうべきだ……ワシも正直腹に据えかねている」

 

万全の準備をし、戦力をそぎ落とした。ブライの計画ではテスラ研に辿り着く前にそこでハガネ、ヒリュウ改、シロガネ、クロガネのいずれかは大破に近いダメージを与える予定だったのだが、それを崩されあまつさえ戦況さえも乱してくれたバラルにはブライも強い怒りを抱き、普段隠している角を露していることからその怒りの深さが容易に分かる。地球の明暗を分けるオペレーション・プランタジネット――しかしその行く末は誰にも予想が出来ぬ物へとなりつつあるのだった……。

 

第170話 オペレーション・プランタジネット その1へ続く

 

 

 




今回の話はインターバルでした。どの陣営も己の計画が乱され想定していない戦いに身を投じる事になります。そしてバラルの仙人が現れるかもしれないという嫌なフラグも用意しておきました。混迷を極めつつあるオペレーション・プランタジネット、それがどんな結末を迎えるのか楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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