進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第171話 オペレーション・プランタジネット その2

第171話 オペレーション・プランタジネット その2  

 

オペレーション・プランタジネットに参加する事が強制されたカーラは陸皇鬼の内部に用意された部屋のベッドに腰掛け、写真を見つめていた。

 

「……お姉ちゃん、頑張るからね」

 

ノイエDCは正義の組織ではなく、鬼の傘下の組織である。それでも全てが全て悪ではなく、龍王鬼のように鬼でありながら人道を説く鬼もいる、人に悪人と善人がいるように鬼にも善人と悪人がいるそれだけだ。それに少なくともカーラの目から見ても龍王鬼は信用出来るし、エアロゲイターの襲撃時に自分を助けてくれたユウキもいる……それだけがまだカーラがノイエDCに籍を置いている理由でもあった。鬼に対して思う事がないと言えば嘘になる、本当にノイエDC……いや、百鬼帝国にいても良いのかという不安もある。

 

「はーい、今開けます」

 

亡くした家族の写真を見つめ、思い悩んでいたカーラだったが、ノック音に気付き写真を懐にしまい扉を開けるカーラ。無警戒とも言えるが、龍王鬼の配下が多く非道や外道な行いをする鬼が少ないのを目の当たりにしていたのがカーラが無警戒に扉を開けた理由だった。

 

「え、あっ!?」

 

部屋の中を少し空け、通路にいた鬼を見たカーラは慌てて扉を閉めようとした。だが鬼の膂力は圧倒的で閉めようとした扉が強引に開かれ雪崩込んで来た鬼はカーラに下卑た視線を向ける。

 

「へっへ! ノイエDCはもういらないってよ」

 

「なら我慢する事もねえよなあッ! どうせ殺しちまうんだから少しは楽しまねえとなあッ!!」

 

カーラの目には鬼が右腕を振るったそれしか見えず、次の瞬間には身体がいやに冷たかった。

 

「あ、あ……いやああああああーーーーッ!!!」

 

鬼の一閃で服を破かれ胸が完全に露出し、スカートも引き裂かれ下着が見えているのに気付いたカーラは悲鳴をあげながら手で自分の身体を隠して蹲る。

 

「やっぱり良い身体してるよなあ」

 

「それに今の悲鳴がいいぜ、これは初物だぜ」

 

「時間が無いんだからよ、さっさと済ませようぜ」

 

「やだ、やめてっ!!」

 

鬼の腕が伸ばされ、胸を隠していた腕が強引に上に持ち上げられ、3人の鬼に裸体を見つめられてるカーラの目に涙が滲む。しかしそんな素振りが鬼――ハガネを迎え撃つ為にアースクレイドルから連れて来られた龍王鬼配下ではない鬼の嗜虐心と性欲を刺激する。

 

「泣いちゃって可愛いねぇ」

 

「大丈夫大丈夫すぐに鳴かせてやるからな」

 

「その後はぜーんぶ綺麗に食ってやるさ、その前に残ってる服も脱がせてやるかな」

 

鬼の腕が殆ど襤褸切れ同然で、腰に引っかかっているスカートと下着へと伸ばされる。

 

「やだやだッ!! やめッ! やめてえええッ!!!」

 

好きでもない相手に身体を暴かれる恐怖にカーラが泣き叫んで暴れるがカーラの力では鬼の片手すら振り解く事はできず、鬼の指先が下着に触れようとした瞬間、

 

「カーラ! 目を閉じろッ!!!」

 

通路からユウキの声が響き、部屋の外から何かが投げ込まれた。

 

「ぎゃあッ!」

 

「め、目があッ!!」

 

「きゃあっ!?」

 

投げ込まれたのはフラッシュバンか何かだったのか、目を焼かれた鬼の手から解放されたカーラはそのまま床に尻餅を付いた。

 

「カーラッ! こっちだッ!」

 

「ユウッ!」

 

目を押さえて悶えている鬼の間を抜け、自分の名を呼ぶユウキの元へ向かうと、すぐにジャケットが頭の上から被せられ、ユウキに肩を抱かれながら通路を走る。

 

「ユウ……ユウ、あたし」

 

「もう大丈夫だ、俺がお前を助ける。もう少しだけ頑張ってくれ」

 

強姦されかけたカーラの精神状態が極めて不安定なのはユウキも分かっていたが、今慰めている時間はなく頑張ってくれと声を掛け、警報が鳴り響く中格納庫へと走る。

 

「ユウキ少尉! 俺達は先に出るぞッ!!」

 

「ちゃんとお姫様をエスコートしてきなさいよッ!!」

 

2機ずつのガーリオンとアーマリオンが陸皇鬼の格納庫を突き破り、外へと飛び出すと陸皇鬼を細かい振動が襲う。

 

「何が……何が起きてるの」

 

「俺達はノイエDCじゃない、ビアン派。つまり正しい意味でのDCになる、ノイエDCと鬼の動向を探る為に潜り込んでいたんだ。良し、カーラ。来いッ!」

 

レモンと虎王鬼が改修した、ラーズアングリフ・ゲイルレイブンへ続く昇降機に乗り込みながらユウキがカーラを呼ぶと、カーラはユウキのジャケットに袖を通して伸ばされたユウキの手を握り締める。

 

「……大丈夫なの? あたしも何かに乗ったほうが……」

 

「そんな格好で操縦させれるか、心配するな。俺が守ると言った筈だ、サブシートで悪いがそっちに乗ってくれ……正直言って……目に毒だ。早く後に乗ってくれたほうがありがたい」

 

下着のみでジャケットを着ているだけのカーラに頬と耳を紅くして目に毒だというユウキの姿を見て、カーラも改めて自分の今の姿を理解し、耳まで真っ赤になりユウキの座っているパイロットシートの後のサブシートに腰を下ろしベルトを身につける。

 

「お、OKだよ、ユウ」

 

「良し、行くぞ。カーラッ!」

 

盾を壊す戦乙女ラーズアングリフは大鷲を意味するレイブン、そして古ノルド語で槍を意味するゲイル、大鷲の翼と槍を与えられた戦乙女は内部から破壊された格納庫から大空へと飛び出して行くのだった……。

 

 

 

 

手の中で暴れる操縦桿を力で抑え込みユウキは先に脱出した同じビアン派の兵士と合流しようとしたのだが……その目論みは一瞬で崩れ去る事になる。

 

「……くっ」

 

「え、うそ……やられ……ちゃったの……?」

 

先に脱出したアーマリオンとガーリオンの姿は無く、無人機達が無機質な殺気を放ちながら手にした武器を向けてくる。破壊され黒煙を上げているアーマリオンとガーリオンの残骸を見てユウキは唇を噛み締め、カーラは目の前の光景が信じられないと声を震わせる。

 

『撃て撃て! 怯むなッ!!』

 

『もうじきビアン総帥が来る! それまで何としても死守せよッ!!』

 

ビアン一派の軍人が乗るライノセラスとAMが必死に応戦しているが、戦力差は圧倒的でユウキ達への支援も、着艦することも望めない絶望的な状況に追い込まれていた。

 

【グルルルオオオオッ!!!】

 

【キシャアアアッ!!!】

 

「ちいっ!!」

 

だがユウキには嘆いている時間も悲しんでいる時間もなかった……虚空から浮かび出る様に突き出された鉤爪を腕部に装着された盾で弾き、ユウキはラーズアングリフ・ゲイルレイブンを反転させる。

 

「作戦変更だ、このまま離脱ではなくハガネが来るまで耐えるぞ」

 

カメレオン型の百鬼獣ではなく、姿を隠す事が出来、より戦闘力の高い鬼の頭部のみの百鬼獣迅雷鬼と漆黒の装甲を持つ闇龍鬼――今出撃している百鬼獣は2体だけだが、4機のレストジェミラに5機ずつのヒュッケバイン・MK-Ⅲ、ゲシュペンスト・MK-Ⅲと敵の数は多い。その上ハガネ達をラングレーに誘い出し、一網打尽にする計画でありインスペクターと百鬼帝国、そしてシャドウミラーにはまだ予備戦力が幾らでもある。

 

「だ、大丈夫なの? ユウ」

 

「大丈夫だ。陣形を配置しているという事はハガネはもうこっちへ向かって来ている。それがどれほどの時間かまでは判らないが……そう長くは無い筈」

 

クロガネからの連絡はジャミングのせいで途絶えているが、ラングレーの近くにまで来ているのは分かっている。だから大丈夫だと繰り返しカーラに告げたユウキは操縦桿を強く握り締め、ペダルに足を乗せる。

 

(とんだじゃじゃ馬にしてくれた物だな)

 

改良されたラーズアングリフは以前の物よりも細身になりつつも、装甲の強度を百鬼獣と同等の素材を使う事で強化し、武装はランスとレールガンを一体化させたガンランスを除き、基本的にはラーズアングリフの物を強化発展させた物となっている。元々が武器庫と称されるほどの火器を内蔵しているラーズアングリフならば弾幕を張りつつ耐久するのは不可能では無いが、動力部まで強化された事でコックピットのレイアウトは同じなのに、全く異なる操縦を強いられているユウキには口調ほど余裕が無かった。だがそれでもここで死ぬわけには行かないと荒れ狂うラーズアングリフ・ゲイルレイブンを全力で押さえ込む。

 

「行くぞッ! 俺の前に立った不運を呪えッ!!!」

 

鈍重な外見からは想像出来ない速度で切り込んだラーズアングリフ・ゲイルレイブンはそのままの勢いで手にしたガンランスでヒュッケバイン・MK-Ⅲの胴体を貫き、ガンランスを振りぬく事で胴体から両断する。

 

『!!』

 

『!!!』

 

バイオロイドであるが故に仲間がやられても動じる事無くヒュッケバイン・MK-Ⅲとゲシュペンスト・MK-Ⅲがフォトンライフルとパルチザンランチャーをラーズアングリフ・ゲイルレイブンへと放つ。

 

「俺を舐めるなよッ!!」

 

ガンランスを保持していない右腕に装着されたシールドがスライドするとラーズアングリフ・ゲイルレイブンは腕を振りフォトンライフルとパルチザンランチャーを弾き飛ばし、超低空飛行で後退しながらユウキは操縦桿のボタンを押し込んだ。

 

「狙いは外さんッ!!」

 

背部に装着されていたビームキャノンが肩へ装着され、そこから放たれた光線がヒュッケバイン・MK-Ⅲの胴体を消し飛ばし、倒れ込むと同時に爆発したヒュッケバイン・MK-Ⅲに巻き込まれ、ゲシュペンスト・MK-Ⅲも爆発炎上する。

 

【シャアアッ!!!】

 

「くそッ!!」

 

獣のような低い姿勢で飛び込んできた闇龍鬼の攻撃にユウキは舌打ちと共に手にしていたガンランスを背部にマウントさせる。それは時間にすれば数秒だが、その数秒は百鬼獣を相手にするのは致命的な隙となった。

 

「うぐうっ!?」

 

「きゃあっ!?」

 

強烈な振動と共にラーズアングリフ・ゲイルレイブンの巨体が大きく弾き飛ばされる。その上体勢を立てなおす時間も与えさせないといわんばかりに唸り声を上げて襲い掛かってきた闇龍鬼の鋭い両手の鉤爪が連続で振るわれる。

 

「くっ! そう易々と!」

 

ラーズアングリフ・ゲイルレイブンはその形状から見て分かるように射撃特化機であり、近接戦闘に弱いという弱点がある。それはレモンの改修があったとしても易々と改善出来る弱点ではなく、シールドを両腕に装備し、闇龍鬼の攻撃を防ぎに入るユウキだが、前後左右からの衝撃に姿勢を崩され闇龍鬼に対して隙を露にしてしまう。

 

【シャアアッ!!!】

 

速度を乗せた飛び蹴りがラーズアングリフ・ゲイルレイブンの胸部を捉え、ユウキとカーラは苦悶の声を上げることも出来ず大きく蹴り飛ばされる。

 

「げほっ! ごほっ……だ、大丈夫か、カーラ」

 

「えほ……な、なん……ゆ、ユウ! 上ッ!!!」

 

カーラの警告とラーズアングリフ・ゲイルレイブンのコックピットに警戒音が鳴り響くのはほぼ同時でラーズアングリフ・ゲイルレイブンの頭上に陣取っていた迅雷鬼が放電を繰り返す姿がモニターに映し出される。

 

「くっ! 間に合えッ!!!」

 

ラーズアングリフ・ゲイルレイブンの撃ち出した対艦ミサイルが迅雷鬼に向かうが、そんなものは何の抵抗にもならないと言わんばかりに迅雷鬼の放った雷が対艦ミサイルを貫き、ラーズアングリフ・ゲイルレイブンの頭上で大爆発を起した。

 

「う、うおおおおッ!?」

 

「きゃあああっ!?」

 

爆炎に呑まれユウキとカーラの悲鳴がコックピットの中で木霊する。雷の直撃は対艦ミサイルが盾になり防ぐ事は出来たが、その膨大なエネルギー全てを打ち消せるわけではない。爆発と雷の余波はラーズアングリフ・ゲイルレイブンの守りを貫いてユウキとカーラを襲っていた。不幸中の幸いは無人機の群れと百鬼獣もその爆風に飲み込まれラーズアングリフ・ゲイルレイブンから大きく引き離されていた事だろう。

 

「ぐ、……くう……カーラ、カーラ。大丈夫か……」

 

「う……ううう……」

 

「カーラ! カーラ大丈夫かッ!?」

 

返事が無い事に焦ったユウキは慌てて背部を覗き込むと大粒の汗を浮かべ、焦点の合っていないカーラの目と視線が合う。

 

「だ、大丈夫……あたしは……大丈夫だよ。ユウ」

 

「大丈夫な物か!」

 

パイロットスーツを着ているユウキに対して、カーラは殆ど裸同然だ。爆発と雷の熱はコックピットにいたとしても防げる物ではない、軽度の火傷を全身に負った状態のカーラを見てユウキは強く拳を握り締める。

 

(何が守るだ。守れていないではないかッ!)

 

敵に囲まれ1機で奮闘を続けていたユウキだが、このままでは自分が死ぬよりも先にカーラが死んでしまうと言う事を悟り、その顔を苦しそうに歪める。

 

「……ユウ……大丈夫だよ……そんなに全部背負わなくて良いよ」

 

カーラが震える手でユウキの手を握る。意識が朦朧としていてもカーラはユウキを安心させるように微笑んだ。

 

「大丈夫……あたしは大丈夫だよ。ユウの手伝いだって出来るよ……」

 

「だが今のお前はッ!」

 

本来ラーズアングリフ・ゲイルレイブンは2人乗りで、1人で操縦するのに無理があるのは当然だ。それを知っていながらユウキは1人で操縦していたが、背部座席にも操縦桿があるのを見れば、馬鹿でもラーズアングリフ・ゲイルレイブンが2人乗りなのは判る。

 

「1人で駄目でも、2人なら出来るよ。ユウ」

 

「カーラ……」

 

「大丈夫だよ。あたしは大丈夫……今度はあたしが助けるよ、エアロゲイターがあたしの街を焼いたとき……助けてくれたの知ってるんだから」

 

「……ッ! 知っていたのか……」

 

「うん、知ってたよ。だからあたしはユウと一緒に来たんだよ、近くに居たかったから……だから大丈夫。あたしも一緒に戦うよ」

 

その強い意志の光を宿す目に射抜かれたユウキは一瞬大きく目を見開いた。

 

「一緒に戦ってくれるか?」

 

「うん……ユウとならどこまでも」

 

苦しいだろうに笑うカーラにユウキはありがとうと小さく呟き、メインコンソールを操作し後部座席から操縦出来るようにモードを切りかける。

 

「行くぞ、カーラ。2人で生き残るんだ」

 

「うん! 行こうユウ」

 

1人では出来ないことも2人なら出来る。今のユウキとカーラの胸の中に絶望感は不思議と無く、変わりに温かい物があった……。絶望的な状況なのに、何故か何とかなる――何故かそんな予感……いや、確信がユウキとカーラの中にはあった。そして物言わぬラーズアングリフ・ゲイルレイブンのメインモニターには小さく「ウラヌスシステム」の文字が踊っているのだった……。

 

 

 

 

陸皇鬼のブリッジで戦況を見ていたアクセルの表情には驚きの色が浮かんでいた。ノイエDC――それも百鬼帝国の物ではなく、ビアンの意志に従がう者達もこのオペレーション・プランタジネットで全て処理すると聞いていたアクセルは見所のある者がいれば龍王鬼に直談判し、シャドウミラーに迎え入れる事も視野にいれ、戦況を確認するためにブリッジにいたのだが……当然百鬼獣やインスペクターの無尽蔵に現れる無人機に押され1機、また1機と沈むのを感情を読み取れない視線で見つめていたのだが、迅雷鬼の攻撃で倒れたランドグリーズのカスタム機が立ち上がると同時に凄まじい勢いで無人機を撃墜し、百鬼獣と互角の鍔迫り合いを行なっているのを見て、不機嫌そうにレモンへと視線を向けた。

 

「レモン、どういうことだ。あの機体があそこまで強い等と俺は聞いていないぞ」

 

あくまでランドグリーズのカスタム機、そこまでの性能ではないと思っていたアクセルだったが、百鬼獣と互角に戦えるのでは話が違うとレモンに説明を求める。

 

「そうねえ、私も驚いてるわよ。アクセル」

 

「なに? お前が手を加えたのだろう?」

 

「確かに私が改造したわよ? でも武装面の強化と動力の追加、それとテスラドライブを搭載しただけなのよ。後は虎王鬼が少し手を加えたのよね?」

 

レモンが確認という感じで振り返りながら虎王鬼へと話を投げる。

 

「ええ、でもちょっとだけよ? 少しだけ百鬼獣と同じ装甲の加工をしただけで無いよりまし程度の改造をしただけなんだけどね……」

 

レモンと虎王鬼にとっても理解不能な現象がラーズアングリフ・ゲイルレイブンに起きていた。

 

『うおおおおッ!!!』

 

『いっけええええッ!!!』

 

ランドグリーズ・ゲイルレイブンに乗っているのはユウキ・ジュグナンとリルカーラ・ボーグナイン――龍王鬼と虎王鬼が目に掛けていたノイエDCの兵士だったとアクセルは記憶していた。そんな2人が乗るラーズアングリフ・ゲイルレイブンの手にしているガンランスには翡翠の輝き――ゲッター線とは異なるが、同じ超常の力の証の光が灯っていた。アクセルはその光を知っている、いや向こう側の住人であるアクセル達がその光を知らないわけが無いのだ。

 

「あれは念動力の光だ」

 

「そうね。素質があったのかしらね? 一応T-LINKシステムが組み込んであったはずだけど……今までうんともすんとも言わなかったのにねぇ」

 

念動力を持ったWシリーズの作成を一時期シャドウミラーは行なっていたが、極めて不安定であり莫大なコストが掛かる割りにリターンが少ないということで量産するのを止め、Wナンバーズ同様ワンオフの高性能な個体を数体作るに留まっていた。量産に備えてシャドウミラーの機体の1部にはT-LINKシステムを搭載した機体があったが、適合者はいないだろうとノイエDCに提供したラーズアングリフの1体がT-LINKシステム搭載機で、それがこの土壇場で起動するなんてレモンの頭脳を持ってしても予測不可能な出来事だろう。

 

「はっはッ!! あれか? 想いあう男と女が起した奇跡とでも言うのかねぇ」

 

龍王鬼は心底楽しそうに笑い、念動力の刃を振るい次々とレストジェミラを破壊するラーズアングリフ・ゲイルレイブンへと視線を向ける。

 

(そうだ、進め。止まるな)

 

ユウキがスパイであると言う事は龍王鬼は最初から気付いていた。だからこそ手元におき、他の鬼から遠ざけた。自ら敵陣に乗り込み、情報を盗み取ろうとするユウキの豪胆さを龍王鬼は買っていたからだ。そしてその時がきた時ユウキが生き延びるのか、それとも志半ばで死ぬのか……それを見届けてやろうと考えていたのだ。そして龍王鬼の期待通り……いや期待を上回る強さを見せているユウキの姿を見て嬉しくないわけがない。

 

『俺の邪魔をするなッ!!!』

 

ラーズアングリフ・ゲイルレイブンが手にしているガンランスの装甲が展開し、背部にマウントしていた荷電粒子砲と合体し、展開された銃身の回りを回転し始める。

 

「……ちょっとやばそうな雰囲気ね」

 

虎王鬼が引き攣った顔でそういうのは当然で、エネルギーを溜めて隙だらけのラーズアングリフ・ゲイルレイブンへ攻撃が向けられるが、余剰エネルギーによって展開されたバリア、そして。

 

『ユウには手を出させないんだからねッ!!』

 

後部座席でバックパックの武装を操り、射撃を行なっているカーラによってその動きを封じられ、大技の為にエネルギーを溜めているラーズアングリフ・ゲイルレイブンを止めるにいたらない。

 

「ちょっとどころじゃねえな。大分やばいな、おい。バリア展開用意」

 

「はっ! バリアを展開します!」

 

龍王鬼の指示で陸皇鬼の甲羅の一部が展開されその巨体をバリアが包み込むのと念動力でコーティングされた荷電粒子砲の一撃がラングレー基地にいた全てに向かって放たれた。

 

「う、うおおおおおッ!? はっはあッ! こいつは中々やばいなッ!」

 

「本当ねぇ、直撃だったら結構危なかったかもねぇ」

 

陸皇鬼のバリアを突き破り装甲に損傷を与えたラーズアングリフ・ゲイルレイブンの攻撃を龍王鬼は凄まじい攻撃だったと賞賛する。

 

「笑っていて良いのか? お前の手駒は皆やられたぞ?」

 

「あん? んなもん前座も前座だ。まだ焦る時じゃねえよ、まぁそろそろウォームアップを始めるつもりだったけどな」

 

にやりと牙を剥き出しにして笑う龍王鬼の視線の先には連戦による損傷によりダメージは負っているが、それゆえにより万全に見えるハガネ達が戦隊を組んでラングレー上空に現れ、部隊を展開する。勿論その部隊の先頭はゲッターロボD2であり、真紅の龍神のその力強い姿を見て龍王鬼は歓喜に身を振るわせる。

 

「手負いの獣ほど恐ろしいもんはねぇ。がっはっはははッ!!! こいつは楽しめるぜ、なぁ虎ぁッ!!」

 

「ふふふ、そうね。これは楽しい戦いになりそうだわ、龍」

 

伊豆基地で戦った時よりも遥かに強いと肌で感じとり、龍王鬼は獰猛な笑みを浮かべ大声で笑う。

 

「レモン、俺も出撃の準備に入る。ウォーダンも準備をさせておけ、俺は龍王鬼ほど楽観視をするつもりはないんでな。ここで確実に仕留めるぞ、これがな」

 

龍王鬼ほど楽観視していないといいつつも、獰猛な笑みを浮かべているアクセルを見てレモンは苦笑するが、レモンもまた獰猛な笑みを浮かべている。オペレーション・プランタジネット……ハガネを、いや自分達の目的を邪魔するであろう者達全てを陥れ打ち滅ぼす為に作られた策謀の舞台がここラングレー基地であり、オペレーションプランタジネットと言う劇の演目であった……そしてそれらの策謀全てをハガネ達が退けたとしても、新たな策謀を持って立ち塞がる為の準備を既にブライは終えている。この北米ラングレーの地は新生百鬼帝国の名乗りの場として用意された舞台であり、その舞台の幕が開かれようとしているのだった……。

 

 

第172話 オペレーション・プランタジネット その3へ続く

 

 




ラーズアングリフ・レイブンはなんかちょっと好きじゃないので大幅にてこ入れして、2人乗りに魔改造しました。後T-LINKシステムも付いているので意外と高性能化ですね。後今作のユウキはツンデレじゃないです、クールデレですかね。カーラには割りと甘めでいこうと思いますのであしからず、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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