第172話 オペレーション・プランタジネット その3
ラングレー基地で人間は最早メキボスしかおらず、残りの人員は全てバイオロイドとなっていた……。ヴィガジはゲッターD2の攻撃でガルガウ改が大破されられ今は医療用ポッドの中で眠っており目覚める気配がない。そしてハガネ達の足止めを命じられていたアギーハとシカログはネビーイームにインベーダーが出現したので呼び戻された。
「それで鬼の大将は俺になんのようだ?」
『そう身構えてくれるな、私は今この場にいないのだからね』
1体のバイオロイドの側頭部が開き、そこから伸びた牛のような太く鋭い角が伸び、バイオロイドのフェイスパーツには明暗を繰り返すブライの顔が浮かんでいた。
『ウェンドロとの話し合いの結果、君は命の危険を感じたのならば撤退してくれて構わない』
「そいつはどーも、んじゃあ俺はもう命の危険を感じてるから逃げても良いか?」
ゲッターD2を始めとした地球の最大戦力が集まって来ている今の状況は命の危機だろとメキボスが言うとブライの意志を伝えるバイオロイドはやれやれという感じで肩を竦めた。
『流石にそれは早すぎるだろう? 百鬼獣もいる。それに君達に紹介したシャドウミラーは中々に役に立つ。私が率いる本陣が来るまでは待っていて貰いたいね。大丈夫だよ、バイオロイドは君を守ってくれる。君は司令部に陣取って悠然と構えていてくれればいい』
ブライの言葉にメキボスは眉を顰める。ブライの口調に苛立ったわけではない、ましてや何もしなくて良いと言うブライに馬鹿にするなと怒りを抱いたわけでもない。
(……こいつ、鬱陶しいぜ)
声自体に力がある。そこに姿がなくとも、偽りの肉体であったとしても従属を誓わせる……そんな圧倒的な力があった。
「それならのんびりと構えさせてもらいますかね、敵と戦うのはそちらに任せていいんですよね?」
『ほう……ふっふ、その通りだ。この場を百鬼帝国の名乗りの場として使わせて貰う、ここで決着をつけるのも吝かでは無いが……抗ってもらいたいとワシは思っているよ。では指揮は君に任せよう、メキボス君』
私ではなくワシという本来の1人称を口にし、メキボスの目の前にいたバイオロイドはその場に倒れ、溶けるように消滅して行った……。
「やっぱりなんかしてやがったな、あの野郎」
ブライの声は一種の洗脳の効果を持っている。それに抗ったメキボスをブライは面白く思い手を引いたのだ。もしも抗う事が出来なければメキボスはブライに操られるだけのだけの存在となっていただろう。
「対等だのなんだの言っておいて、俺らを利用するつもりかよ……まぁ分からんでもないがな」
ダヴィーンを利用しバイオロイドの製造技術をゾヴォークは得たが、エンペラーに襲われるダヴィーンにゾヴォークは助けを出さなかった。ダヴィーンの意志を継いでいるブライは間違いなくその事に怒りを抱いている……だがそれを知性で押さえ込んでいるからこそ厄介だとメキボスは感じていた。
「感情的に来てくれたほうがやりやすいぜ、全くよ」
溶けたバイオロイドが被っていたヘルメットを蹴り飛ばしてメキボスは格納庫へと足を向ける。ラングレー基地の内部は全てブライの手の内であり、いつバイオロイドに襲撃を受けるか判らない状況だったが、ヴィガジ、シカログ、アギーハといれば順番に身体を休める事も出来ていたが、今は1人。その上バイオロイドはブライの合図で鬼化し、その戦闘力を段違いに跳ね上げさせる。1対1ならばメキボスでも鬼と戦う事は十分に可能だがラングレーにいるバイオロイドの数は120……それだけの相手に追われながらグレイターキンに乗るのは不可能であり、まだバイオロイドが自分の言う事を聞く間にメキボスはグレイターキンに乗り込むことを選択したのだ。
「やれやれ……これだけでかい基地で俺の領土はこの狭いコックピットだけかよ」
ゲッター合金で強化され、やや大型化したグレイターキンでなければ籠城する事は不可能であり、ゾヴォークにとって忌むべき物ではあるゲッター合金に救われていると言う事実にメキボスは肩を竦めながら、パイロットシートを後に倒し背中を深く預ける。
「さてとお手並み拝見と行こうかねぇ」
ハガネが来るまでは格納庫で待機する事を決めたメキボスは窮地に追い込まれながらも飄々とした態度を崩す事無く、むしろその窮地を楽しむ素振りさえ感じさせながら笑みを浮かべているのだった……。
数多の百鬼獣の群れ、そして無人機の襲撃を退けてラングレー基地へと辿り着いたビアン達だったが、破壊されたAMやPTの数々、そして大破寸前のライノセラスの艦隊を見て眉を顰めた。ライノセラスを1体で守っていたのはラーズアングリフ・ゲイルレイブンだけであり、ビアンが配置していたLB隊やトロイエ隊の姿はどこにも存在しておらず、圧倒的な数のレストジェミラ、そしてヒュッケバイン・MK-Ⅲとゲシュペンスト・MK-Ⅲ、シャドウミラー隊の戦力であるエルアインス、アシュセイヴァー、アースゲインという量産機とは思えない高性能な機体の数々は通常のPTやAMを運用している部隊では一矢報いる事すら難しい圧倒的な戦力だ。
『こちらユウキ・ジュグナンッ! クロガネ応答せよッ!』
「ユウキ少尉からの通信です!」
「モニターに回せッ!」
ノイズ混じりの中クロガネのモニターに疲労の色が濃いユウキの顔が映し出される。
「LB隊とトロイエ隊はどうなった!」
『百鬼獣に撃墜されました。脱出は出来ていますが部隊は壊滅状態で支援を求めますッ! 私1人ではライノセラスの防衛は不可能ですッ!』
ラーズアングリフ・ゲイルレイブンは奮闘しているが、武装の殆どが実弾である以上継戦能力には不安が残る。今もガンランスを主に戦闘しており、弾薬に余裕がないことが一目で見て取れる。
「すぐにヴァルキリオンを支援に向かわせる! ヴァルキリオンから武装を受け取れば戦闘は続行可能か」
『問題ありませんッ! 武器と弾薬の補給をお願いします!』
「ヴァルキリオン隊出撃! ライノセラスの支援及び後退支援を行えッ! リリー中佐! 敵機の索敵はどうなっている!」
オペレーター席で索敵を行っているリリーにビアンが戦況がどうなっているのかと怒鳴る。
「百鬼獣と思われる戦艦1確認! しかし百鬼獣は3体しか確認出来ません、それにインスペクターの指揮官機グレイターキンの姿もありませんッ!」
「……戦力を温存されたか……ッ」
ここに来るまでに無尽蔵に襲撃を仕掛けてきた百鬼獣の姿はラングレー基地には無く、その上シャドウミラーの戦闘母艦であるギャンランド、そして龍王鬼の母艦である陸皇鬼の姿はあるが、バリアを展開しており完全に様子見という状態だ。自分達は疲弊しながら辿り着いたのに対し、敵が完全に戦力温存している事にビアンは唇を噛み締める。
『ライノセラスを中心に艦隊を組む、やはりこの作戦は罠だった』
「ああ。ならば我々のやる事は全員無事にこの場から脱出する事だ」
分かっていた事だが、こうして目の当たりにするとその衝撃は大きく連邦の上層部にどれだけ百鬼帝国が手を伸ばしているのかとダイテツ達は顔を歪める。本来味方である筈の人間が信用できず、自分達の上官すらも鬼の可能性があれば命令に従うことすら疑わなければならない。
『脱出する事に反対はありませんが……今すぐにとは行きませんね』
『敵前逃亡兵とされてしまえば、我々の発言力は地に落ちる。いや下手をすれば部隊解散に追い込まれるかもしれない』
レフィーナとリーの言う通りであり、この場がハガネ達を確実に仕留めるべく百鬼帝国、インスペクター、シャドウミラーが作り出した狩場だ。それが分かれば無駄に命を散らす事も無く、自分達が来るまで必死に耐えていたビアン派のノイエDC兵と共に離脱するのが最も理想的な展開だ。だがそれをすればダイテツ達は敵前逃亡兵となり、L5戦役を集結させた英雄部隊という名誉は地に落ち、ダイテツ達を良く思っていない高官達の付け入る隙を自ら作り出す事になる。そうなれば人類は百鬼帝国やインスペクターに抗う術を失う事になる……それだけはなんとしても避けなければならない。
『ダイテツ中佐、私達が敵陣に突っ込む、他の部隊は艦隊の防衛に回してくれ』
『カーウァイ大佐、死ぬつもりか?』
カーウァイの言う私達とは教導隊、そして武蔵を含めた1部隊にも満たない少数部隊だ。それで敵陣に突っ込むなど正気ではないと考えるのは当然だが、カーウァイは真面目にこの特攻めいた突撃作戦を提案していた。
『にらみ合いになれば相手は戦力を出し惜しむ。連邦・ノイエDCの応援部隊が鬼の手の者である可能性の方が高いんだ、必要なのは短期決戦しかない。敵陣に大打撃を与え本命を引き摺りだす以外あるまい』
ここまで百鬼帝国が根回しし、補給や整備もまともにさせず疲弊させきった状態ならば逃げを打ってくるのは誰だって予想が付く。そこを軍属である事を利用し敵前逃亡をちらつかせる事で逃亡の抑制、そして戦闘の強要を強いる。テスラ研で僅かな補給と整備は出来たが、それはアギーハとシカログとの戦いとそこを突破するのに温存する予定だった。ゲッターD2、ダイゼンガー、アウセンザイターなどの特機を切ってしまっているが、その代りにアルトアイゼン・ギーガやジガンスクード・ドゥロ、グルンガストにSRX、龍虎王と百鬼獣と互角に戦える機体を残している……となれば百鬼帝国は万全を期す為に援軍の中に鬼を混ぜてくる。そして肝心の応援部隊もダイテツ達を疎んでいる連中なのでギリギリになるまでラングレー基地に突入して来る事はない。
『挟撃を防ぐ為とは言えリスクが高いですよ』
『罠の中に突っ込んでおいてリスク等という言葉は今更だ。異論がなければ……いや、あってもそうするが構わないな?』
尋ねていると言う風を装っているがカーウァイの中で自分達が突撃するのは決定事項であり、今話しているのはあくまで自分達が突撃した後の打ち合わせに過ぎない。
『了解した。カーウァイ大佐、頼んだ』
『任せておけ、このような負け戦は何度も経験している。ならば我々にできる事は上手く負けることだ』
上手に負けるというカーウァイの言葉はおかしな発言に聞こえるが、実際はその通りだ。万全な状態ならば食い下がる事も出来る……だがここまで不利な状況では長く戦えば戦うほどに被害は爆発的に増加していく、敵の本陣を引きずり出しそれらの戦いの末離脱という流れを作らなければオペレーション・プランタジネットの失敗の責任を全て押し付けられる……それを避ける為の一手が必要不可欠だった。
『というわけだ武蔵。派手にぶちかませ』
『了解ッ!! 行くぜえッ!! ダブルトマホーク……ブゥゥウウウメランッ!!!!』
ゲッターD2が両手に持ったダブルトマホークを全力で敵陣の真ん中に向かって投擲する。ゲッター線の光を宿したダブルトマホークの一撃はゲッター線の竜巻とでも言うべき現象を作り出し、無人機の陣形を大きく乱した。
『突っ込むぞッ! ゼンガーッ! レーツェルッ!!!』
『『了解ッ!!』』
そして再び敵が陣形を固める前にカーウァイの駆るゲシュペンスト・タイプSを先頭に、ダイゼンガー、アウセンザイターが敵陣の真ん中へと突撃する。意図したわけでは無いが、ダブルトマホークブーメランがMAPWのような役割を果たしていた。
「ダイテツ! ぼんやりするな! 陣形を固めろッ! 主砲、副砲! 発射準備ッ!」
『お前に言われなくても判っているぞビアンッ! 艦隊防衛を優先しつつ、転移による強襲に備えよッ!』
『百鬼獣との戦闘はグルンガスト等に任せ、PT隊は無人機及びシャドウミラーとの戦闘を優先せよッ! 良いか! 諸君らの死に場所はここではないッ! 己の命を賭ける場所を間違えるなッ!』
『ユン伍長! 索敵レンジを最大に転移反応及び、超機人の高エネルギー反応に最大の警戒を続けてください! 本艦を艦隊の先頭へ! E-フィールドを全力展開してください!』
各戦艦の艦長の指示が矢継ぎ早に飛び、ラングレー基地での戦いが幕を開けるのだった……。
ラングレー基地での戦いは想像以上の乱戦から始まっていた……カーウァイ・ゼンガー・レーツェル・武蔵の4人の正気を疑う突撃で浮き足立つと思えば、百鬼帝国もインスペクターも決して浮き足立つ事ことなく、冷静に部隊を展開し前方・後方で戦場を区切り戦線を展開していた。
「……嫌な流れだな」
『そうねえ……勢いはこっちにあるけどコントロールされてるって感じが拭えないわね』
普段お茶らけた言動をするエクセレンでさえその顔を渋く歪めている。カーウァイの作戦通りに最初に大打撃を与える事で敵を引きずり出すという目的は半分だけ成功し、半分だけ失敗していた。
『!!』
「……鬱陶しいな。こんな奴らを相手に弾薬を消費するわけにいかないと言うのに」
中破しながらもアルトアイゼン・ギーガに突撃して来たゲシュペンスト・MK-Ⅲにリボルビング・バンカーを突き刺し、持ち上げると同時に引き金を引くキョウスケ。それによってゲシュペンスト・MK-Ⅲは宙に弾き飛ばされ大爆発を引き起こす。
『くうっ……これ洒落になんねえぞッ!』
『無人機で万歳特攻なんて冗談じゃねえぞッ!?』
リボルビング・バンカーで爆発したのではない、無人機の多くは中に爆弾を抱えており組み付き自爆するか、大きなダメージを受ける事で自爆しキョウスケ達を巻き込んで消滅しようとしていたのだ。
『くそッ! 鬱陶しい真似をしやがってッ!!』
『本当ならこういう乱戦が1番得意だってのにさッ!!』
サイバスターの放ったカロリックミサイルが着弾したレストジェミラが凄まじい大爆発を起こし、ハイパービームキャノンで貫かれたヒュッケバイン・MK-Ⅲは爆発する事無く転倒し小規模な爆発を引き起こす。爆弾を抱えている物とそうではない物があり、下手にサイフラッシュやサイコブラスターを使えば爆弾が一斉に起爆し、周囲もろとも吹っ飛んでしまう……ダブルトマホークブーメランによる一掃はゲッター線の効果なのかは不明だが、上空に逃れていたが他の機体ではそうは行かない。
『リョウト! 駄目です! それは爆弾が搭載されていますッ!!』
『ッ!! くそッ!!』
フェアリオン・タイプGのシャインからの警告でヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプMタイラントは伸ばしかけたガイストナックルを引っ込め地面を蹴って大きく後退する。
『そこだッ!!』
ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプMタイラントと入れ代わりで前に出たビルトビルガーがスタンアサルトカノンを命中させ、レストジェミラを感電させる。
『イルム中尉! お願いしますッ!!』
『おう! 任せろッ!!』
レストジェミラが感電している間にグルンガストがレストジェミラを頭上に担ぎ上げ、敵陣のど真ん中へ投げ付ける。
『ライッ!!』
『いけッ!!』
イルムがライの名を呼ぶと同時に発射されたフォトンライフルがレストジェミラを撃ち貫き、レストジェミラが無人機を巻き込んで大爆発を引き起こす。
『ちい……これだから無人機つうのは厄介なんだ』
『あ、あれでもまだ動くのかッ』
カチーナが舌打ちし、ラッセルが信じられないと言う様子でつぶやいた。手足を失い、胴体も拉げ、中にパイロットが乗っていれば脱出を選択するほどのダメージを負っても無人機はオイルを撒き散らしながら歩き続ける。
『大破している無人機に爆弾もちはいませんわッ! 今の内に迎撃をッ! ラトゥーニ! ポイント4-B2、8-B2ですわッ!』
『分かりました、シャイン王女ッ!』
シャインの指示でフェアリオン・タイプSがペイント弾を発射し、爆弾を抱えている無人機に印を付ける。
『これで随分と戦いやすくなった。おい、コウキ』
『分かっている……突っ込むぞッ!!』
ペイント弾で爆弾もちが分かったと同時にゲシュペンスト・シグと轟破・鉄甲鬼が地響きを立てながら敵陣のど真ん中へ突っ込み、マーカーを撃ちこまれていない無人機へと突撃する。
『コウキ博士ッ!? 何を考えてるんですか!?』
『鉄甲鬼では爆発に巻き込まれますよ!?』
上空から支援射撃を行っていたベルガリオンとアステリオンからスレイとアイビスの悲鳴が響くが、コウキが操る轟破・鉄甲鬼はその手にした斧をマーカーが撃ちこまれた爆弾を内包した無人機へと突き立てそのまま無人機を持ち上げると同時に跳躍し、斧に捕らえた爆弾付きの無人機を文字通りハンマーのように牛角鬼に向かって振り下ろした。
『くたばれッ!!!』
【グ、グギャアアアアッ!?】
斧による斬撃と無人機の爆発に巻き込まれ、牛角鬼が爆発する。その隣ではゲシュペンスト・MK-Ⅲに体当たりし、そのままの勢いで白骨鬼へとぶつかったゲシュペンスト・シグがエネルギークローでゲシュペンスト・Mk-Ⅲごと白骨鬼を貫き、ほぼ同時に牛角鬼と白骨鬼が大爆発する。
『『良し』』
『何が良しかあッ!! このドアホウ共ッ!!』
ゲシュペンスト・リバイブが大破しているのでゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKに乗っているカイが怒鳴りつけるが、コウキもラドラもどこ吹く風だ、ついでに言うとゲシュペンスト・シグも轟破・鉄甲鬼も無傷なので余計に何をしていると怒鳴りつけたくなるカイだったが、その勢いは急速に小さくなった。コウキとラドラに恐怖したのではない、馬鹿みたいな特攻をした馬鹿を怒鳴りつけるなんて馬鹿な事をしている場合ではないと本能で悟ったのだ。
『ギリアム、前線指揮は任せる。バン・バ・チュン、そのゲッターロボは飾りじゃないんだろ? 力を貸せ』
『言われるまでもない、伊達や酔狂でゲッターロボに乗っているわけではないわッ!』
バリアを展開し、沈黙していた陸皇鬼がバリアを解除し、その亀の甲羅のような格納庫を展開する。そこから姿を見せるのは圧倒的な存在感を持つ無数の百鬼獣の数々……。
『行けるのか?』
『やるしかないだろうが、それに無人機だって山ほどいる。乱戦の中にあいつらが突っ込んできたら対処できんだろうがあッ!!!』
ギリアムの心配そうな声に返事を返しながら、カイは格納庫が展開されると同時に弾丸のような勢いで突っ込んで来た闘刃鬼の胸部装甲を掴み、巴投げの要領でゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKをひっくり返らせ、掴んだ闘刃鬼をはるか後方へと投げ捨てる。
『おっはッ!! あっははははっ!! よお、おっさんッ!!! また戦いに来てやったぜッ!!』
巴投げで投げられた闘刃鬼は片手で着地し、片手の腕力だけでゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKへと飛び蹴りを放った。
『おっさんおっさんやかましいわッ! この若造がッ!!』
だがカイも並みのパイロットではなく、その飛び蹴りを肘で受け止めさせると腰にタックルし、キョウスケ達から闘刃鬼を引き離す。
『ふんっ!!』
『っとと、へっへ、いいね、いいね、やっぱりおっさん強いよなあ、また勝負する時が楽しみで楽しみでしょうがなかったぜ』
『戦闘狂め』
『そいつは俺にとっちゃ褒め言葉よ。さぁやろうぜッ!! 心踊る闘争をなぁッ!!!』
圧倒的な闘志を剥き出しにするヤイバ。その闘志に当てられたのかカイも小さく微笑んで操縦桿を握り締める。
『行くぜええッ!!!』
『行くぞッ!!!』
ヤイバとカイの咆哮が重なり、ゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKと闘刃鬼の拳がぶつかり合い、凄まじい轟音を響かせる。
『キョウスケ、ここは任せるぜ。あいつは俺をお呼びだ』
『……了解』
キョウスケにそう声を掛けたイルムは隊列から離脱し、腕組みをし待っていた闘龍鬼の元へと向かう。
『お前なら応えてくれる。そう思っていた』
『はっ! 男のストーカーに追い回されるのはごめんでね。いい加減決着付けようや』
『ふっふ、はははははははッ!! 俺の好みの返答だが……心にも思っていない事は言わない方が良い』
闘龍鬼の返事にイルムはちっと舌打ちを打った。闘龍鬼の性格を把握し、こうすれば自分にだけ意識を向けれると考えていたイルムだが闘龍鬼は思った以上に冷静だった。
『だがまぁ、良いだろう。お前がそういうのならば……この場で決着をつけてやっても良い……お前の死という形でなあッ!!』
『はっ! そう簡単に取れると思うなよッ!!』
計都羅喉剣と闘龍鬼の半月刀がぶつかり合い激しい火花を散らす。
『がーっははははッ! 良いぜ良いぜ、やっぱり戦いはこうじゃなきゃなあ! 己の誇りを賭けた戦いこそ、至高ッ! 俺様の求める戦いだッ!!』
『そうねえ、自分よりも弱い奴を嬲り殺すって言うのはあたし達の趣味じゃないしねぇ』
龍王鬼、虎王鬼の2機も陸皇鬼から姿を見せる……だが陸皇鬼から姿を現したのは百鬼獣だけではない。
『ソウルゲイン……アクセル・アルマーかッ』
『ウォーダン・ユミル……それにレモン様もか……』
シャドウミラーの主力機であるソウルゲイン、スレードゲルミル、そしてヴァイスセイヴァーの3機が現れるが、それは想定外の出来事だった。
「ギャンランドではなく百鬼帝国の戦艦で待機していたのかッ」
「戦況が一気に読めなくなったな……」
シャドウミラーの主力は母艦であるギャンランドと共に現れると踏んでいたダイテツ達だったが、龍王鬼の母艦である陸皇鬼に待機しているのは想定外だった。
『ッ! 巨大な熱源を多数感知ッ! モニターに回しッ!?』
『敵勢力の識別出来ましたッ! 百鬼獣です! ですがその数が……ッ!?』
ユンとシロガネのオペレーターがレーダーに熱源を感知するが、その桁違いの反応に言葉に詰まる。
『報告は正確に行なえッ! 何を感知したッ!』
『ユン伍長! 何を感知したのですか!』
リーとレフィーナが何を感知したのかと問いかけ、再びユン達が口を開く前にレーダーに感知された巨大な熱源がその姿を現した……。
「馬鹿な……あれが……百鬼帝国とでも言うのかッ!?」
「信じられん……あんな物が地球の技術力で作り出せるというのか……ッ!?」
誰もが言葉を失う中、ビアンとグライエンだけが言葉を発する事が出来た。それはグラスマン家に伝わってた資料と、アメリカ大陸の内部に隠されていたメガフロートの資料を分析していたビアンだからこそ、ダイテツ達よりも先に我に帰る事が出来ただけであり。そうでなければビアン達も島のような巨大な飛行物体を見て言葉を失っていた筈だ。共行王達によって発見された 科学要塞島がラングレー基地の上空に何十、何百と言う百鬼獣を伴って現れるのだった……。
第173話 オペレーション・プランタジネット その4へ続く
随分と長くなりましたが、本格的な戦闘前のイベントで殆ど1話使ってしまいましたが、次回からは戦闘メインでバリバリ頑張って行きたいと思います。かなりの話数と文字数になるかもしれませんが1つの場面だけで1話ずつガッツリと書く予定ですので、どうなるのか楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い