第176話 オペレーション・プランタジネット その7
澄んだ金属音が響き、太陽の光を浴びて白刃が宙を煌き、闘刃鬼の背後に砕かれた日本刀の切っ先が突き刺さった。
「は……ははははははははッ!!!! マジかッ!! いやマジかよッ!!! あっははははははははは!!! すげえなおいッ!!!」
中ほどから砕かれた相棒の武器の刀を見てヤイバは楽しそうに笑った。面白くて面白くてしょうがないと言わんばかりに子供のような笑みを浮かべゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKに視線を向ける。量産機、詰まらない相手という考えは既にヤイバの中にはない、全力を持って戦うに値する強敵であるとゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKを駆るカイへの認識を改めた。
『貴様のような戦闘狂には付き合いきれんな』
「はっ! そう言ってくれるなよッ!!! おっさんッ!!!」
地面を蹴り砕き闘刃鬼が恐ろしい速度でゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKへの間合いを詰める。
「おらッ!!」
PT――いや、並みの特機では直撃1発で大破しかねない闘刃鬼の拳をゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKは右腕1本で防ぐ。
「うっそだろ……がっはっ!?」
腕を犠牲にして防いだのではない、完全に技術で自身の一撃を受け流したゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKとカイにヤイバが驚きの声を上げる。腕を犠牲にして防いだのならば分かる、避けたのならばそれも判る。だが攻撃した側である闘刃鬼が姿勢を崩し、無防備な姿勢を晒すような防御を披露するゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKにヤイバは困惑したが、その直後に襲ってきた凄まじい衝撃に苦悶の声を上げた。
『ふんッ!!!』
闘刃鬼の懐で半回転したゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKの強烈な肘打ちからの回し蹴りが闘刃鬼の頭部を蹴りぬいた。
「お……おおッ!?」
鬼と言えど体の構造は人間と大差はない、それに加えて百鬼獣にはパイロットの安全を守ると言う機能は前提として考えられていない。コックピットに近い頭部を蹴り抜かれればその衝撃はダイレクトにヤイバを襲い、軽い脳震盪を起したヤイバが操る闘刃鬼はふらふらと覚束ない足取りを見せる。
『ステークセットッ!! 俺の拳を受けろッ! ヤイバッ!!!』
そしてそんな隙をカイが見逃すわけが無く、両腕のライトニングステークが唸りを上げ白光を煌かせる。確かにゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKはハガネに保管されていた量産型のゲシュペンスト・MK-Ⅲであり、ゲシュペンスト・リバイブとは比べるまでも無く性能の低い機体だ。だがハガネ、ヒリュウ改、シロガネ、クロガネには優秀なエンジニアが揃っている。カイの癖に合わせ時間が許す限りの改造を施されたゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKは十分に百鬼獣と戦うだけの能力を有していた。
『はぁッ!!!』
カイの強烈な気合が乗ったゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKの左フックが再び闘刃鬼の頭部を襲い、ただでさえふらついている闘刃鬼の動きが更に覚束ない物になる。
『うおおおおおッ!!!』
「がっはあッ!?」
そこにブースターとスラスターで加速したゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKの飛び蹴りが叩き込まれ、闘刃鬼は大きく蹴り飛ばされる。
『ゲシュペンストは俺の手足も同然でなッ!! お前が量産機と侮ったこいつの力を見せてやるッ!!!』
蹴り飛ばした闘刃鬼へ向かって突撃したゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKの両拳が容赦なく闘刃鬼へと叩き込まれる。
「がっ!? ぐっ!? おおっ!?」
『遅いッ!! ふんッ!!!』
連続攻撃を受けている間に意識を取り戻したヤイバが闘刃鬼に反撃に拳を繰り出させるが、カイの操るゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKは鋭く回転し伸ばされた闘刃鬼の腕を掴むと1本背負いのような動きで闘刃鬼をその背中に背負い自身の足元に叩きつける。
『これを喰らえッ!!』
「が、があああああああッ!?」
ライトニングステークで地面に押さえつけられ、その圧倒的な電圧を流し込まれた闘刃鬼からヤイバの苦悶の悲鳴が上がる。容赦ない殺す気の攻撃であり、これが人間ならばヤイバは死んでいたが、ヤイバは鬼であり人間よりも遥かに頑丈だった事がヤイバの命を繋いだ。
「う、うがあああああッ!!!」
『ぐっ!?』
自由に動く足でゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKを蹴りつけ、強引に拘束から抜け出した闘刃鬼は腕の力だけで自身を跳ね上げゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKから距離を取った。
「ぜーぜー……やってくれたな、おっさん……ッ!!」
放電時間は決して長くはなかったがそれでもヤイバと闘刃鬼の受けたダメージは深刻だった。モニターはアラートを鳴らし、百鬼獣特有の再生能力もかなり弱くなっている。だが1番大きなダメージを受けているのはヤイバ本人であり砕けたモニターの破片が額を切り、左目の視界を完全に奪っていた。
『しぶとい奴め』
「はっ! 俺がそう簡単に死ぬかよぉッ!!!」
だが痛みはヤイバにとっては闘争本能を掻き立てる物に過ぎず、ヤイバの肥大した闘争本能に呼応するように闘刃鬼の逆立った金髪が伸び、筋肉が隆起する。
「こっからだッ! こっからだぜッ!!!」
闘刃鬼は闘龍鬼のような合体機能は無く、風神鬼のような風を操る能力も、雷神鬼のような圧倒的な再生能力も持ち合わせていない。だが闘刃鬼にも闘龍鬼達に負けない能力がある……それは受けたダメージが大きければ大きくなるほどにヤイバの生命力を吸い取り、自身を強化する能力――特異な能力を持たない代わりに生命力が並みの鬼を遥かに越えるヤイバだからこそ操れる百鬼獣……それが闘刃鬼だった。
陽炎のように揺らめきながら闘刃鬼を包み込むオーラを見てカイはここからだというヤイバの言葉が嘘でも、痩せ我慢でもないと言う事を悟った。
「……最後まで持ってくれよ……ゲシュペンスト」
イエローアラートを灯すゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKのモニターを見つめ、祈るようにそう呟いたカイはゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKにファイティングポーズを取らせ、闘刃鬼と向かい互いに弾かれたように走り出した。
『「うおおおおおッ!!!」』
カイとヤイバの雄叫びとぶつかり合う闘刃鬼とゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKの右拳が轟音を周囲に響かせるのだった……。
龍王鬼一派の所有する百鬼獣の中で戦艦である陸皇鬼を除けば1番巨大な百鬼獣――雷神鬼が地響きを立てながら一歩前に出る。それだけで地上に足を付いているネオゲッター1は姿勢を大きく崩した。
「化け物め……ッ!」
操縦桿を握り締めながらバンは移動するだけで周囲に甚大な被害を齎す雷神鬼を見据え、化け物めと吐き捨てた。
『褒めていただき光栄だ。礼だ、鉛弾をたっぷりとやろうッ!!』
龍玄のその言葉と共に雷神鬼の装甲が開き、無数の銃口が姿を見せるのを見てバンでさえも思わずギョッとする。
「ちいっ!! ショルダーミサイルッ!!!」
バンは好きに叫んでいるのではない、ネオゲッターロボはパイロットの操縦をサポートする機能としてグルンガストのように音声入力式となっている。細かい操作をしなくても良いと言う点でゲッターに慣れていないバンにとっては非常にありがたい機能の1つだった。発射されたミサイルが展開された装甲の内部に飛び込み爆発するが、雷神鬼は全く揺るがない。
『お前の敵はバンだけではないぞッ!!』
百鬼獣を踏みつけて宙に飛んだゲシュペンスト・タイプSの放ったグランスラッシュリッパーが雷神鬼の装甲を引き裂き、弾雨の発射角をいくつか制限するがそれでも十分な脅威と言える弾雨がネオゲッター1とゲシュペンスト・タイプSに向かって放たれた。
「ぬううッ!!!」
『ち、流石に厳しいな』
両腕をクロスし防御するネオゲッター1とバリアを展開したゲシュペンスト・タイプSだったが、いくらか砲門を潰して攻撃力を低下させたとしてもその火力はやはり凄まじく、ネオゲッター1は膝を突き、ゲシュペンスト・タイプSも被弾した箇所から煙を上げている。
『バン大佐、ゲッター3へ』
「馬鹿を言え、オーガスト。お前もジャレッドもそうだが、今この場でゲッターチェンジをして十分に機体をコントロールできると思っているのか?」
バンの言葉にジャレッドとオーガストの2人は言葉に詰まる。バンが操縦しているネオゲッター1の動きでさえ着いていくのがやっとの現状で自分達が主導になって操縦出来るのか? と言われれば答えはNOだ。
「余計な事は考えなくて良い、だが操縦桿を握って気絶するな、最低限それだけはやり遂げろ」
『『りょ、了解ッ!!』』
ジャレッドとオーギュストが意識を失えばネオゲッターの戦力はガタ落ちする。酷な言い方だが、ジャレッド達はまだゲッターに乗って戦うには早すぎたと言っても良い。だからバンは気絶だけするなと口にし、ネオゲッターの現在の状況を把握する。
(……装甲、エネルギー共に問題なし……か、恐ろしい性能だな)
ゲッター炉心では無いがネオゲッターが搭載しているブラズマボムスの出力は新西暦の技術では開発出来ないほど高出力であり、安定感もある。流石に駆動系にいくらかダメージは負っているが、まだ戦闘に支障の出るレベルではないとバンは判断したが、その顔は決して明るいものではない。
(攻撃力が足りていない……か)
ネオゲッターロボはゲッターロボの名を冠しているが、その分類はどちらかと言うとグルンガストに近い特機と言える。ゲッターロボの圧倒的な火力による力押しはネオゲッターには出来ず、そのような無茶をすれば装甲が先に限界を向かえる。
『この程度で死んでくれるなよ? まだ戦いは始まったばかりなのだからなッ!!』
雷神鬼の背中の装甲が展開し、そのまま前面へと移動してくる。2本の突起状のせり出したパーツが放電し始めたのを見て、バンとカーウァイは同時に今出来る最大攻撃を繰り出した。
「ッ!! プラズマ……サンダァァアアアアアア――ッ!!!」
『ブラスターキャノンッ!!!』
放たれた一撃はどちらも強力であり、直撃すれば百鬼獣ですら致命傷を受けかねない一撃だ。だが龍玄はその攻撃を鼻で笑い、射出されていたビットは陣形を組み展開されたバリアがプラズマサンダーとブラスターキャノンの一撃を完全に防いで見せた。
『温い。その程度では……』
『ギガワイドブラスタァァアアアアアアッ!!!』
『いっけええええッ!!!』
龍玄が温いと口にし攻撃を繰り出そうとした瞬間、ジガンスクード・ドゥロとヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントのギガワイドブラスターとG・インパクトキャノンHがバリアへと突き刺さる。流石の雷神鬼も4連続で直撃で喰らえば龍玄とて動揺する。
『ぬうッ! だがまだ足りんぞッ!!!』
雷神鬼の武器はその再生能力、そしてその巨大さにある。巨大であると言う事は装甲も動力も並ではなく、自動的にバリアも強固になる。
バリアの一部が貫通されたとしてもまだ攻撃を中断されるほどのダメージは受けていないと龍玄が吼える。
『主砲合わせッ! 照準巨大百鬼獣ッ!!』
『バリアを砕くッ! 出し惜しみ無しで行くぞッ!!』
だがそこにヒリュウ改とシロガネの連装主砲が続き様に撃ち込まれる。巨体であるがゆえに鈍足な雷神鬼が相手ならばヒリュウ改も攻撃に参加できる。続け様の連続攻撃を前についに雷神鬼のバリアが音を立てて砕け散った。
「うおおおおおッ!!!」
『この好機は逃さんぞッ!!!』
バリアが砕け散る少し前に動き出していたネオゲッター1とゲシュペンスト・タイプSが雷神鬼へ飛びかかり、エネルギーを溜め込んでいた砲門を切り裂いた。
『ぐううおおおッ!?』
溜めていたエネルギーが逆流し大爆発を起こし、雷神鬼の巨体を弾き飛ばす。山のようだった百鬼獣が吹き飛んだ事で歓声が上がるが、バンとカーウァイの2人がまだだと声を荒げる。
「極まりが浅いッ!!」
『頑丈が過ぎるな……ッ』
エネルギーを逆流させてダメージを与えたが、雷神鬼を倒すにはまだ攻撃力が足りていない。強固な装甲、そしてマシンセルを超える再生能力……。
『嘘だろ……もう回復してやがる』
『なんて強力な百鬼獣なんだ……ッ』
間違いなく大爆発を起こし、胸部装甲が吹き飛んだのをリョウト達は見ていた。だが爆煙が消えた頃には既にその損傷は回復しており、目に見えたダメージは無い。
『強い、強いではないか。ふふふ……ははははははははッ!! やはり戦いはこうでなければなッ!! 行くぞ人間共ッ!! 俺を倒して見せるがいいッ!!!』
だが完全に変わっていないと言うわけでもない、ダメージを受けた事で龍玄の闘志が燃え上がりそれに呼応するかのように雷神鬼の目がより力強く輝き、圧倒的な威圧感がバン達に向かって放たれたのだった……。
クロガネの船体が大きく揺れる。その振動で艦長席から転がり落ちそうになったビアンだが、それを踏ん張って耐え被害報告と声を上げる。
「被害は軽微ですが照準などの火器管制システムの誤差が発生してます!」
「動力系のエネルギー巡回路にもエラーが発生していますッ!!」
次々に上がってくる悪い報告にビアンは顔を歪め、クロガネの上空を旋回している小型飛行機を睨みつけた。
「自爆兵器をこれ以上近づけさせるなッ!!」
空を旋回している小型飛行機は百鬼帝国由縁の者ではなく、小型恐竜ジェットというその名の通り恐竜帝国の兵器であり、ゲッターザウルスを引き上げた際に百鬼帝国に回収されたのだが、ブライは制御装置をバイオロイド兵にし、様々なジャミング・チャフ・電子ウィルス等を組み込み、自爆する事でハガネ達の電子機器に致命的な打撃を与える為に次々と百鬼帝国から出撃していた。
「これはかなり厄介だね。高い単体戦闘能力を持ちながらも絡め手もここまで多いとは……」
「感心している暇があったら索敵をしろブライアンッ! そうでなければブリッジから退出しろッ!!」
百鬼帝国や恐竜帝国の事を文献で調べており知識を持つグライエンはオブザーバーとしてブリッジのオペレーター席に腰掛け、覚束ない動きだながら少しでも助けになれればと自らの意思で戦いに参加し今も索敵などを行っていたからこそ、その隣でぽやぽやとしているブライアンに邪魔をするなと怒鳴り声を上げる。
「焦るのは分かる。僕だってあせっているからね……ビアン博士、シロガネかヒリュウ改に通信を繋げれるかい?」
だがブライアンも馬鹿ではない、奇妙な流れを感じたからこそこうして口を開いたのだ。
「この状況で何を言っているブライアン!? 戦いの邪魔をしてどうする」
通信を繋げる事が集中力を見出し邪魔になるとグライエンが声を荒げるが艦長席のビアンは冷静にブライアンにその視線を向けた。
「落ち着いてくれグライエン、何故この状況で通信を繋げろというのだね?」
この状況で通信を繋げろという真意はなんだとビアンがブライアンへと問いかけるとブライアンは腕時計を見つめ深刻な表情を浮かべる。
「そろそろ連邦軍の応援が来る予定の時刻だが、クロガネに連邦軍の識別コードは分かるかい? もし味方がこないのならば陣形を変える必要があると思うのだが……どうだろうか?」
ブライアンの問いかけを聞いたビアンはすぐにオペレーターにヒリュウ改に通信を繋げるようにと指示を出す。
『こちらヒリュウ改! クロガネで何かトラブルですか!?』
「いやすまないね、少し確認したい事があって通信を繋げたんだ。グレッグ司令はいるかい?」
ブライアンの問いかけから数分後にグレッグが通信に応答する。
『ブライアン大統領。この状況で何のお話ですか?』
「いやすまないね、オペレーション・プランタジネットの予定ではそろそろ連邦の他の部隊の応援が来る筈となっているが……そこの所はどうなっているのかなと思ってね」
『……予定時間は既にオーバー。識別コードも近づいてきません……』
グレッグの搾り出すような言葉にブライアンは深い溜め息を吐いてビアンに視線を向ける。
「聞いた通りだ、戦艦の陣形を変えよう。このままだとどてっぱらを食い破られる事になる」
連邦の戦艦が突入してくる区画の前で陣形を取っていたハガネ達だが、時間を過ぎても応援がこないと言うことはこの場に姿を見せていないシャドウミラー、あるいは百鬼帝国の分隊……もしくは最初から出撃していない可能性がある事にビアン達はその顔を歪めた。
『あひゃはははは、美味い美味いのう!!』
『やれやれ、こんな雑兵と戦えとは鬼も嫌な命令をしてくれたものだ』
『ならばお前は食うな! この魂はみなワシが喰らう!!』
だがビアン達の予想は間違いであり、ラングレー基地に来る筈だった増援は超機人饕餮鬼皇、鯀鬼皇、そして百鬼獣によって完全に足止めされていた。
『なんだ、なんなんだ、この化物……う、うわあああああッ!?』
動揺する指揮官機であるゲシュペンスト・MK-Ⅲに饕餮鬼皇が喰らいついた。
『脱……げば』
脱出装置を起動させることも出来ず指揮官は饕餮鬼皇に噛み砕かれる。
『ああ、美味い、美味いのぉ。ひゃーははははははッ!!』
ビクンビクンと痙攣するゲシュペンスト・MK-Ⅲを投げ捨て、口からオイルを垂らしながら舌なめずりを行なう饕餮鬼皇に連邦軍の兵士達は恐怖し、機体を操り逃げようとするが……。
『あ。あえ……』
『あ、あああおおお……』
『苦しませるのは我の性ではない、その魂のみ喰らうとしよう』
大口を開けた鯀鬼皇の口へとゲシュペンスト、ヒュッケバインから飛び出した光が吸い込まれ、パイロットは次々と白目を向いて絶命していく……ハガネ達の支援に送り込まれ続ける部隊は全て2機の超機人の餌と成り果てていた。
「ライノセラスの人員の回収はどうなっている!」
そんな事を知る由もないビアン達は裏切られたのか、百鬼帝国に攻撃されているのかも分からず、だがこれ以上被害を出すわけには行かないと作戦と陣形を変える為に動き出す。
「後少しで全員収容が終わります! 約8分ほどかと!」
「3分で終わらせろ! 機体は廃棄! パイロットと乗務員の撤収のみを急げッ! その後ライノセラスを無人操縦モードに切り替えろ! クロガネから操縦するッ!!」
ビアンが矢継ぎ早に指示を出す、この場にいる誰もが最悪は想定していた。だからこそ、行動に出るのは早い。
『シロガネが前に出る! 急旋回ッ!!!』
シロガネのリーが指示を出し、真っ先に先頭に躍り出る。最もダメージが軽微であり、そしてE-フィールドの出力が依然高いままのシロガネが前に出て、順番に回頭し陣形を作り変える。それは通常の戦艦戦闘で最も有効な一手だが……転移装置を持ち合わせているシャドウミラー、そして圧倒的な火力を前に攻め込んでくる百鬼帝国を前にどこまで効果を発揮するかとビアンは顔を歪める。
「……ゲッターVで出る。リリー中佐、指揮を頼む」
「いけません! この場で最も狙われるのはクロガネとビアン総帥のゲッターVなのですよッ!!」
百鬼帝国からすればビアンは最も殺しておきたい相手だ。そんな相手が戦場に出てくるのを見逃す訳が無い、リリーが制止するがビアンの決意は固かった。
「だからこそだ。私が出れば百鬼帝国は更なる手を打ってくるだろう、戦力で劣っているの言うまでも無く私達だ。後手に回れば勝機はない」
後手に回れば戦力の差で押し潰される。包囲網を敷かれてしまえば脱出するのも困難になる……リスクは承知でビアンは自らが戦場に出る事を決めたのだ。
「しかし」
「それに私とて考えがない訳ではない……とにかく指揮は任せたぞッ!!」
ビアンはそう言うと格納庫へと走りゲッターVへと乗り込み、そしてその顔に困惑の色を浮かべた。
「なんだ……なんだこのパラメータはどうなっている!?」
今まで見た事無いほどにゲッターVの出力が上がっている。単独操縦、その上テスラドライブ、ヴァルシオンの重力装備を搭載しているゲッターVの出力はそれらの影響を感じさせないほどの圧倒的な出力を記録していた。
「……これが武蔵君の言っていたゲッター線の警告という奴かッ」
危険が迫っている時に幾度もゲッター線が警告してきたと言っていた武蔵。ビアンも話半分で聞いていたわけでは無いが、意志を持つエネルギーだとしてもそのような事があるのだろうかと疑っていた。だが実際に目の当たりにすれば武蔵の言葉が真実であると信じざるを得なかった。
「……行くしかあるまい。私達はこんな所で終われないのだから……」
地球を巡る戦いはまだ始まったばかりなのだ。こんな所で終われないとビアンもまた戦場へと自らの意思で足を踏み入れ、ゲッターVが戦場に現れたことでラングレー基地での戦局は変わり始めようとしていた……だがそれは決着に向けた流れではない、己のプライドに懸けて倒さねばならない敵を、自分が倒さねばならない宿命の敵を見定める物であった。
「行くぞ、ベーオウルフッ!!!」
「来いアクセルッ!!!」
そして次なる戦いは古の鉄巨人と魂を刈り取る者、そして白銀の堕天使と灰の救世主の戦いへと移っていく、だがこれだけ激しい戦いを続けているのに不思議な事に撃墜される者は誰1人しておらず、誰もが全力で戦っているのだがどうしても戦いの流れが変わらない・まるでこの戦いは決着がつかない事が定められているような奇妙な空気をこの場にいる誰もが感じ始めているのだった……。
第177話 オペレーション・プランタジネット その8へ続く
次回はアクセルとキョウスケ、エクセレンとレモンの戦い。そしてその次はイルムと闘龍鬼、龍王鬼と虎王鬼とブリット、クスハの戦いを書いて次の場面へと入っていこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
SRXガチャはダイターン3でした。絶望しかない……。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い