第179話 進化の光 その1
ブリッジに続く通路を走っていたバリソンだったが激しく揺れるハガネの船体にバランスを崩し、通路に手を置いて姿勢を整える。
「こいつはまじでやばいな……ッ! アクセルが出てきたらヴィンデルの奴まで来るぞ」
乱戦の中で万全な状態の敵の増援ほど恐ろしい物はない……シャドウミラーの構成員という事で大人しくしていたバリソンだったが、流石にそんな事を言ってられないと判断しダイテツの元へ向かっていたのだ。
「ダイテツ中佐ッ!!」
ブリッジに飛び込むなりバリソンはダイテツの名を叫んだ。その声にブリッジにいた全員が振り返り、真っ先にテツヤが一歩前に出た。
「今は戦闘中だ! 非戦闘員は指定された区画に避難しろッ!」
「俺が非戦闘員だって? 馬鹿を言うなよ、俺だってパイロットさ。どいてくれ、あんたじゃ話にならねえ」
ダイテツとバリソンの間に入ったテツヤを押しのけ、バリソンはダイテツの前に立った。
「ダイテツ中佐。今は戦力を出し惜しみしている場合じゃないだろ? シャドウミラーの構成員だった俺やエキドナを信用出来ねぇのは分かる。だが今はそんな事を言ってる場合じゃない。違うか?」
エキドナの扱いは捕虜だが、バリソンの扱いは保護した民間人となっているがバリソンは軍属だけあり、上官への対応はしっかりとしている。だが今はそんな事を言っている場合ではないと、乱暴な口調でダイテツに詰め寄る。
「貴様」
「俺が悪いのは分かってるさ、だがこのままだとハガネは轟沈する。いや、ハガネだけじゃなねぇ、ヒリュウ改もクロガネもシロガネだって轟沈するのは分かりきってるだろ? この状況で機体を遊ばせている時間なんて無い、違うか?」
上をとられ思うように動けない今の状況は完全に詰みの一歩手前の状況だ。そんな状況で機体を遊ばせている余裕なんて無いだろと言われればテツヤとて言葉に詰まる。
「だが出撃可能な機体は……「グルンガストとヴァイサーガにアースゲインがあるだろ? 回収した奴がよ」……しかしだなッ!」
武蔵を救出した際にシャドウミラーの拠点から多くの補充物資を回収したダイテツ達、ただエルアインスやアシュセイヴァーなど運用するにあたり問題がある機体も多く、格納庫に保管されているのだが……その中にバリソンが使っていたグルンガスト、そしてパイロット不在という事とデータ取りの為にランス装備のヴァイサーガとノーマルタイプのアースゲインも保管されていた。それを使わせろと言うバリソンにテツヤが声を荒げようとしたその時だった。バリソンの話を黙って聞いていたダイテツが口を開いた。
「ヴィンデルという男はそれほどまでに厄介か?」
「……ああ、あいつはほんの少しの勝率でも拾って生き延び続けた男だ。間違いなく仕掛けてくると断言出来る」
ヴィンデルのカリスマ性は勝利を続ける事で培った物だ。逃げたこともあったが、間違いなく勝利したと言えるだけの戦果は常々上げている。ギリギリの窮地の中で勝利を続けていたヴィンデルの嗅覚はとても鋭い事をバリソンは知っている……相手がもっとも嫌がるタイミングで、自分達への被害を限りなく0にした状態で仕掛けてくると確信していた。
「今は戦力が少しでも欲しい、頼めるか?」
「その為に俺は来たんだ。整備班に連絡を入れてくれ」
ダイテツは少し考える素振りを見せた後にバリソンとエキドナへ出撃許可を出すのと、格納庫で保管されているグルンガストとヴァイサーガ、アースゲインの起動を行なうように格納庫の整備兵に指示を出すとバリソンは弾かれたように走り出しブリッジを後にする。
「よろしいのですか艦長」
「今は戦力が少しでも欲しい状況だ大尉。形振り構っている場合ではない、どんな手段を使っても我々は無事にこの場を脱出しなければならんのだ」
百鬼帝国、インスペクター、シャドウミラー。いずれの組織と戦ったとしても轟沈もしくは戦死を覚悟しなければならない程の強敵が一堂に会しているのだ。今はまだ龍王鬼が指揮を取っているからこそ物量で仕掛けて来る事はないが、それもいつまで続くかも分からない。ほんの少しでも全員が生存できる可能性があるのならばダイテツはどんな手でも使う事を決めていた。
(……例えそれがワシの命を引き換えになったとしてもだ)
長いこと軍人をしていれば嫌でも死が近づいてくるのを感じる物だ。だが今この時、ダイテツはいまだかつて無いほどに死が自分へ近づいているのを感じているのだった……。
整備兵や警備兵がジト目で見つめて来ていてもエキドナは表情を1つ変えず。ダイテツに出撃許可を取りに行ったバリソンが戻るのを待っていた……なんでお前が、どうしてという視線が向けられるがそれは覚悟の上だ。
(自分が行なった結果は覆らない)
武蔵を裏切り、拉致したという結果は変わらない。それでも、それでもだ。エキドナは再び機体に乗り戦う事を選んだのだ。
(流石にゲッターに乗せてくれとは言えないからな……)
Wナンバーズのエキドナとラミアならばゲッターロボを乗りこなせるだけの身体データは出ている。だが1度ゲッターのシステムをダウンさせ、裏切った女を乗せる人間などいない。
「武蔵は気にしなそうだがな……」
あんな人の良い、もっと言えば人を疑うって事を知らないような能天気な武蔵ならと思うがエキドナはそれを言わないと決めた。今の自分ではゲッターに乗るのも武蔵の力になる資格もないのだから……。
「何ヲそんなに考え込んでいるノ?」
「っ!?」
エキドナがふと顔を上げると殆ど目と鼻がつくような距離で自分の顔を覗き込んでいたラルトスに気付き、驚いて声を上げ尻餅をついた。
「ニシシ、驚いた驚いたかナ?」
ラルトスはそんなエキドナに手を差し伸べて立ち上がらせ、再びニシシと楽しそうな笑みを浮かべた。
「なんのようだ?」
「ンー聞こえてなかったみたいだからネ、ラルちゃんが呼びに来たんだヨー、出撃許可下りたヨ?」
その言葉に格納庫を見ると数人の整備兵がグルンガストの調整に走り、パイロットスーツが無いので連邦の制服に身を包んだバリソンがコックピットに続くタラップを駆けていた。
「本当にパイロットスーツ無しで良いのか!」
「あちら側にそんな上等なもんはとうの昔に無くなっててよ! 私服か制服で出撃するのが当たり前だったんだよ!」
「だが予備のパイロットスーツくらい準備できるぞ!」
「元敵だったのに心配してくれてありがとよ! でも俺は平気だぜ!!」
元々バリソンは守る人間だったのだ。それが壊す側に回っていた間はさぞフラストレーションが溜まっていただろう。それが今本来の立ち位置……即ち守る人間に戻った事でバリソンの顔はこれ以上に無いというほどに活き活きとした物になり、グルンガストのコックピットに身体を滑り込ませた。
『エキドナ! 先に出るぞッ!!!』
起動したグルンガストからバリソンの怒声が飛び、エキドナは手を上げることで返事を返し深く息を吐き意識を切り替えた。
「ヴァ「ヴァイサーガの準備は終わってるヨ、シールドもタワーシールドとまでは言わないけどちゃんと準備したヨ」……ありがとう」
アースゲインは使いこなせないと判断していたエキドナはヴァイサーガの準備がされていることに感謝し、ヴァイサーガのコックピットに続くタラップに足を向ける。
「■よ、私は貴女を祝福する。愛を持って自我に芽生えた貴女を祝福しましょう」
「……今なんと言った?」
小さな囁きにも似たその声にエキドナは思わず振り返った。その声はずっと聞いていた敬愛すべき自身の創造主であるレモンの声に酷似していたからだ。だが振り返った先にいたのはレモンには似ても似つかない容姿をしたラルトスであり、ラルトスはダボダボの袖を振り楽しそうな笑みを浮かべる。
「無事に帰っておいでヨ! ほら、君のアンジュルグも修理してあげるからネ! 頑張って行っておいデ!」
奇妙なイントネーションで明るい声のラルトスの声は先ほど耳に届いた声とはまるで違っていて、エキドナはさっきの声は聞き違いだったか? と首を傾げるがそれは一瞬の事でヴァイサーガのコックピットに向かってすぐに走り出した。
「ちょっと気を抜きすぎたかナ、カナ? まぁそれだけ嬉しかったからしょうがないネ! っととッ!!」
出撃するヴァイサーガのスラスターの暴風で瓶底眼鏡が宙を舞い、一瞬だけラルトスの素顔が明らかになる。
「え?」
「嘘ぉ……」
残念系美少女を自称するラルトスだが、その素顔を見た者は殆どおらず。恐らくその素顔を見たのはいま驚きの余り言葉を失っている整備兵達が初めてだろう。地面に眼鏡が叩きつけられる前にラルトスはジャンプして瓶底眼鏡をキャッチし掛けなおし、自身を見つめている整備兵に視線を向け悪戯っぽく微笑んだ。
「ンーナイショネ? ラルちゃんあんまり顔見られるの好きじゃないのネ」
ダボダボの袖から指先を出して口元に当ててシーっと言うジェスチャーをしたラルトスに整備兵は顔を赤くさせ何度も何度も頷き、その姿を見たラルトスはにんまりと笑った。
「サーて、おっしごと、おっしごと♪ 死にたくないから頑張るヨー」
今も外は戦闘中であり気を緩めている時間はないと言わんばかりに補給に戻って来た機体の整備の手伝いに駆けていくラルトスの背中をぼんやりとした様子で見つめ、整備兵長の怒声で我に帰りラルトスと同じ様に簡易整備の手伝いに駆け出した。なお後日ラルトスの素顔を見た整備兵達は思い出したように呟いていた。
「ラルちゃんの素顔誰かに似てるなって思ってたんだけどさ、最近分かったわ」
「実は俺も、せーので言ってみるか?」
「OK、せーの」
「「エクセレン少尉」」
「あーやっぱりかあ。ラルちゃんの素顔ってなんかエクセレン少尉に似てるよな」
「似てる似てる。目つきがちょっと悪いけどな」
「ドアホ共! さぼってねえで仕事しろッ!!」
「「す、すいませーんッ!!」」
整備長の怒鳴り声で作業に戻る整備兵達を見ながらラルトスは若干蒼い顔で冷や汗をかいていたりする……。
ゲッターロボVがクロガネの甲板に陣取ってから戦況は圧倒的劣勢からほんの僅かだが戦況を均衡に近づける事が出来ていた。出力を上げたゲッター炉心とビアンの最高傑作である重力操作装置……それを組み合わせることで百鬼獣等の移動をほんの僅かだが阻害する為の重力フィールドを展開していたからだ。ただそれは完全に動きを止めるまでには至らず、ほんの僅か1挙動か2挙動動きを鈍らせる程度の物だったが、この乱戦の状況の中で相手の動きが僅かに鈍いというのは数の不利を引っくり返し、短時間だが補給を受ける時間をキョウスケ達に与えていた。だがラングレー全域への作用する重力フィールドともなればその消耗は凄まじく、ゲッター炉心を持ってしてもカバーしきれないエネルギー消費をゲッターVへとかしていた。
「……ぬう、これは思った以上に厳しいな……プロペラントタンクだ! プロペラントタンクを持ってきてくれッ!! 今この制御を止めるわけにはいかんッ!!」
ゲッターVのコックピットでビアンがそう叫び、クロガネの護衛をしていたLB隊の兵士が格納庫へと着艦する為に機体を反転させる。その姿をビアンが見届けた直後、凄まじい衝撃をビアンが襲い、怒りに満ちた女の声が広域通信でビアンに向かって叩きつけられる。
『小細工してんじゃないよッ!! 大将がみっともない真似するなよッ!!!』
風蘭の駆る風神鬼の放った風の刃――それはゲッターVが常時展開している湾曲フィールドとゲッター線バリアを貫通し、ゲッターVの胴体に深い傷を刻み付ける。ジャガー号の損傷が酷くレッドアラートを灯すが、元々ゲッターVは戦闘中の分離や再合体を想定していないのでそのアラートは微々たる問題であり、ゲッター線と重力装置をコントロールするイーグル号さえ無事ならばいいとまでビアンは考えていた。
「それを言うのならばこれほどまでに罠を張って私達を誘い込んだそちらのほうがみっともなくないかね?」
『うっ……それは……そうだけど……ッ『親父ぃッ!!! 無茶すんなよッ!!』ちッ! また邪魔がッ!!!』
ゲッターVを沈めに来た風神鬼だったが、ビアンの挑発とそしてビアンを守る為に上昇してきたヴァルシオーネの攻撃を受けて逃れるように雲の下へと急降下する。
『ビアンのおっさん、大丈夫かッ!!』
「ああ、なんとかと言う所だよ。ただ……状況は芳しくないな……まだ広域攻撃は使えないのかね?」
『……すまねえ、あの風神鬼とやらにダメージを与えない限りは難しいぜ』
このような状況で頼りになるサイバスターとヴァルシオーネのサイフラッシュとサイコブラスターだが、風神鬼の能力によって封じられていた。
(流石にジガンスクードやゲッターD2の広域攻撃を使わせるわけにはいかんしな)
破壊力のあるGサークルブラスターや、フルパワーのゲッタービームならばサイフラッシュとサイコブラスターにも負けない火力があるが、その代りに敵味方の識別が出来ないという欠点があり敵を倒すよりも味方を巻き込むリスクの方が圧倒的に高く、敵味方の識別が出来る兵器としてSRXのテレキネシスミサイルやアステリオン、ベルガリオンの多弾頭ミサイルがあるがそれは逆に威力が低く、戦況を左右するとまでは言えない。
「難しいと思うが、何とか風神鬼を追ってくれ」
『言われなくても分かってるッ!! ビアンのおっさんも無茶すんなよッ!!!』
ヴァルシオーネとサイバスターが風神鬼を追うが、風を司る百鬼獣であり、そして風蘭自身の技能も高く追いきれていないがそれでも構わない。風神鬼も広域に左右する風の刃を持ち合わせているのでそれを使わせないためにも追うだけでも十分に意味がある。
(何とかしてサイバスターとヴァルシオーネの機能が回復すれば……突破の糸口も見えてくるのだが……な)
上を百鬼帝国に抑えられ、地上はシャドウミラーとインスペクターの無人機の群れ、そして単体性能の高い百鬼獣と百鬼帝国の将軍である龍王鬼一派と百鬼帝国に回収され改造されたブラックゲッターロボと敵の戦力は悔しい事に完全にビアン達を上回っていた。
『キシャアアアアッ!!!』
『うおらああッ!!!』
ゲッターザウルスと武蔵の雄叫びが重なり凄まじい衝突音を周囲に響かせ、激しいぶつかり合いを続けているがどちらも回復能力を持ち合わせているからか中々決着がつかない。
『アヒャハハハハハハ!! どうしました僕はまだ全然元気ですよおッ!!』
『くそっ化け物がッ!!!』
『……流石に不味いな』
SRXとアウセンザイターのペアに、イングラム達が支援していてもゲッターノワールを倒すには全く手が足りていなかった。百鬼帝国が改造したゲッターノワールの力が余りにも強すぎたのだ。少なくともこの乱戦の中で戦力が限られた中では倒しきれる相手ではなく、味方の戦力を全て集結させてやっとか、ゲッターD2と武蔵が当たってやっと撃墜出来る可能性が生まれるほどの相手だった。
『ガッハハハ!!! 楽しいなあッ!!! ははははははッ!!! おらッ!!!』
『うおおおおッ!!!』
『良いぜ良いぜ、根性見せろよッ! 男ならよぉッ!!!』
『うああああああ――ッ!!!』
龍虎皇鬼と虎龍王の火の出るような打撃戦は徐々に虎龍王が押され始めていた。ゲッターVの重力を受けてもなお、龍虎皇鬼の自力が虎龍王を完全に上回っていたのだ。
「……これは不味いぞ……」
皆死力を尽くして戦っているがやはり敵の戦力が無尽蔵すぎるとビアンは顔を歪めた。一騎当千のパイロット達が揃っているが、数の暴力に加え、圧倒的な力を持つ突出戦力がいることで連携を取る事も難しい。その上合流を防ぎつつ妨害するように立ち回っている無人機達とそれを防ぐ為に多大な戦力を割く事になりエネルギーと弾薬の消耗が著しく激しい物となっている……戦況、そして長時間にわたる戦いの中で疲弊の色が濃くなっている……この場合では逃げを打ちたいが、龍王鬼一派の鬼がそれを許さない。
『よぉ、闘龍鬼……次で仕舞いだ。勝負しようや、俺が死ぬか、てめえが死ぬかのなッ!!!』
ボロボロのグルンガスト火花を散らしながら計都羅喉剣を構え、イルムが吼えると闘龍鬼も同じ様に三日月刀を構え腰を深く落とした。
『……良いだろう……乗ってやる、勝負だ。イルムガルトッ!!』
敵を信用するなど馬鹿のすることだが、龍王鬼一派は普通の鬼と違っていた。命を賭けた闘争を良しとし、卑劣を嫌う鬼達だからこそ、その誘いに乗る。どの道このまま戦っていても勝機は薄い、一か八かの博打に出て龍王鬼一派の鬼を短時間でも戦闘不能に追い込めれば、あるいは自分の命と引き換えに仲間を逃がす機会を作ろうと考えたのはイルム達だけではなかった。
『……』
『はははははははッ!! 良いぜ良いぜッ!! その姿を見れば分かるッ! 次で最後だなッ!! おい! 俺らの邪魔をするんじゃねえぞッ!!! 分かってるよなあッ!!!』
ゲシュペンスト・MK-Ⅲと闘刃鬼では圧倒的までに地力の差があった。右腕が肩からねじ切られ、頭部が半壊し、コックピットのほんの僅か上には闘刃鬼の拳の跡とクナイが突き刺さリ、完全に死に体になっているゲシュペンスト・MKーⅢだがカイの闘志は全く消えておらず、残された左拳を突き出しそれを握り締め腰を落す、その動作だけでカイが何を言おうとしているのか悟ったヤイバは楽しそうに笑い、その勝負に乗った。闘龍鬼とヤイバにとっては戦いこそ誉れ、そして命を賭けた勝負を挑む漢こそ友であり、屠るべき敵なのだ。
『……クスハ、龍王機、虎王機……俺に力を貸してくれ』
『ブリット君……うん……私の力も持って行って』
虎龍王が両拳を固く握り締め龍虎皇鬼に向かって拳を突き出す。
『次だ。次に俺の……俺達の全てを込めるッ!!』
『ガッハハハッ!! 良いぜ、てめえの魂とやらを俺様の魂でぶち砕いていやんよッ!!!』
空気を振動させる龍虎皇鬼の咆哮……それは先ほどまでブリットが臆していた物だったが、ブリットはそれに耐えた。
『良いねぇ……本当はよ、武蔵と決着を付けたかったんだが……てめえも俺様を満足させれるだけの漢って認めてやるよ。てめえが死んでも、てめえの名は覚えておいてやるよッ!! ブリットォッ!!!!!!!』
龍虎皇鬼の筋肉が隆起し、大地を強く踏みしめる。圧倒的な威圧感を放つ龍虎皇鬼を虎龍王は睨みつけ同じ様に地面を踏みしめる。
『行くぜえッ!!!』
『うおおおおッ!!!』
虎龍王と龍虎鬼皇の咆哮が重なり同時に飛び出すを合図にしたかのようにグルンガストと闘龍鬼、闘刃鬼とゲシュペンスト・MK-Ⅲを初めとした機体が弾かれたように動き出した。
『計都羅喉剣……暗ッ! 剣ッ!!』
『……闘龍鬼……参るッ!!!』
計都羅喉剣を正眼に構え闘龍鬼へ最後のエネルギーを振り絞り突撃するグルンガストとそれを迎え撃たんと闘龍鬼も赤黒いエネルギーをまとって突撃する。
『……ォォおおおおおおおおおおおッ!!!!』
『行くぜえッ!!! おっさんッ!!!!』
放電を繰り返すライトニングステークと燃えさかる右拳を振りかぶり闘刃鬼とゲシュペンスト・MK-Ⅲが同時に駆け出し、その拳を大きく振りかぶる……闘志は伝染し、ここがオペレーション・プランタジネット、いやこの戦いの明暗を分ける戦いになると防御を考えず最後の攻撃に打って出た。ブライでさえもこの戦いを見届けるつもりで妨害しろという指示を出すことはなかった、龍王鬼の性格を考慮し水を差せば反逆すらしかねない龍王鬼だが、その力を認めているからこそこの場の戦いは全て龍王鬼に一任していた。
「このぶつかり合いですべてが決まる。見届けさせてもらうぞ」
自分たち百鬼帝国が本気で戦うべき相手かそれを見届けようとしたブライだが、その目論見は崩される事になる……。
「……ん。これは……いかんッ!!! 全員防御を固めろッ!! 今戦っている敵から距離を取るんだッ!!!」
『皆さん守りを固めてください! 広範囲攻撃が来ますわッ!!!』
この場に最後の戦いに水を差すものはいなかった。だが隠れひそみ、勝利する事だけを考えている男がそれを見逃すわけが無く、その存在を察知したビアンは広域通信で声を張り上げ、それに続くように予知したのであろうシャインの悲鳴にも似た守りを固めろという声が全員のコックピットに響いた。ゲッターVの高性能なレーダー……いやゲッター線は転移してくる何者かの悪意を感じ取り、シャインは予知能力により現れる何者かの攻撃で壊滅的な打撃を受ける光景を見たのだ。ビアンとシャインの指示に目の前の敵からの被弾を覚悟でキョウスケ達は防御を固めその場で動きを止めた。だが闘龍鬼達はその動きを止める事が出来ず、目の前で動きを止めたグルンガストやゲシュペンスト・MK-Ⅲに望んでいない攻撃を加えることになった……そしてその直後空間が歪みギャンランドとギャンランドの上に陣取っているツヴァイザーゲインが転移で姿を現すと同時にその姿を無数に分身させ、ラングレー基地の上空を埋め尽くした。
『貴様らの力見極めさせてもらうぞっ!! 受けろ我が力をッ!!!』
実の所ヴィンデルは最初からラングレー基地の近くで待機し、ツヴァイザーゲインの力を高め続けていた。そしてもっとも効果的な瞬間を待ち続け、パイロットが疲弊しその動きを緩めた瞬間に転移してきたのだ。ラングレーの上空を埋め尽くさんばかりに分身したツヴァイザーゲインから邪龍鱗によるエネルギー弾の雨、そして残影玄武弾による拳の嵐がキョウスケ達に一斉に襲い掛かるのだった……。
ビアンの警告により防御を固めたキョウスケ達だったがツヴァイザーゲインの邪龍鱗、そして残影玄武弾による超広範囲攻撃はラングレー基地の設備を破壊しつくし、その爆発に巻き込まれたアルトアイゼン・ギーガを初めとしたハガネの機体は大きなダメージを受け、その動きを止めていた。
「くそ……レモン、レモン応答しろ……ヴィンデル……ッ! 良くも邪魔をしてくれたなッ!!」
邪龍鱗の余波の所為か通信は安定せず、自分のフォローをしていたレモンと通信が繋がらないアクセルは苛立った様子でヴィンデルを怒鳴りつける。
『アクセル。お前がベーオウルフと決着を付けたいと考えている事は私も知っている。だがそれはあくまで我々の目的の中での経過に過ぎないのだ。優先すべきは我等の悲願を叶える事であり、お前とベーオウルフの決着ではない、そして悲願をかなえる為にレモンもまた死を覚悟している筈だ。目先に囚われて大局を見失うな』
戦いを邪魔された上にレモンまで撃墜したかもしれないヴィンデルにアクセルは強い怒りを露にする。だがヴィンデルの言う通り自分達が何を優先すべきかと言われればキョウスケとの決着ではなく、ハガネ達をここで確実に仕留める事だ。だがそうだとしても味方ごと攻撃したヴィンデルにはアクセルも不信感を抱いた。確かに目的を叶える為に死ぬ覚悟はアクセルも出来ている。だがその死が味方によって齎される事まで受け入れたつもりはアクセルにはなかった。
『おいヴィンデルッ!! 良くも俺様の闘争を邪魔してくれたなあッ!!! 覚悟は出来てるんだろうなあッ!!!』
そしてヴィンデルに強い怒りを抱いたのはアクセルだけではなく龍王鬼も同様だった。折角戦いを楽しんでいたのに虎龍王との戦いに水を挿された事に龍王鬼は強い怒りを露にする。勿論龍王鬼達だけではなく、龍王鬼一派の鬼達も同様であり心から楽しんでいた戦いを邪魔され凄まじい殺意がヴィンデルへと向けられる。
『私は大帝に何をしても良いと許可を『ああ、そうかい。だからてめえは小物なんだよ、虎の威を借りる事しか出来ねぇ小心者のつまらねぇ男だ』
ブライを盾にして自分は何をしてもいいと言うヴィンデルに龍王鬼はつまらない男だと吐き捨て、その闘気を霧散させた。
『命令違反をするつもりか』
戦う意志を無くした龍王鬼にヴィンデルが遠回しにそんな事をして良いのかとなじる。だが龍王鬼はそんなヴィンデルを見て興味を失ったと言わんばかりに鼻を鳴らした。
『うるせえよ、俺は俺の好きなようにする。こんな横槍を入れられてまで戦うつもりはねえんだよ、屑が』
自分の意志を貫き通す事を第一にしている龍王鬼は例えブライがラングレーの上空にいたとしても、邪魔を入れられた段階でもうハガネの戦力と戦うつもりは微塵もなかった。ヴィンデルは自分の攻撃でハガネの機体を攻撃し、龍王鬼達にトドメを刺させるつもりだったので計算が狂ったことに動揺を見せる。
(龍王鬼の言う通りだ。詰まらない男になったな)
あちら側の世界にいた時の覇気が無くなり、効率よく自分達の目的を叶えることしか考えていないヴィンデルは確かに龍王鬼の言う通り虎の威を借りる狐と言われても当然だった。
『アクセル、ベーオウルフにはトドメを刺しておけ、武蔵が動く前にな』
無人機の爆弾も一斉に起爆した事でラングレー基地には静寂が広がっており、ダメージと奇襲から回復する前にキョウスケにトドメを刺せと命令をするヴィンデルにアクセルは返事こそ返さなかったがソウルゲインをアルトアイゼン・ギーガに向かわせようとし、地面を蹴り大きく後方に飛びのいた。ソウルゲインが一瞬前までいた所には凄まじいエネルギーの柱が立っており、あと一歩前に進んでいたらソウルゲインはその光の柱に飲み込まれて大破していただろう……だがアクセルがその顔色を変えたのは光の柱ではない、虚空から姿を見せた異形の存在を目の当たりにしたからだった。
『……外してしまいましたの』
虚空に罅割れが走り、這い出るように姿を見せた鬼面で構成された紅いアインスト――ペルゼイン・リヒカイトの姿を確認しアクセルの顔が鬼の形相に変わった。
「ヴィンデル貴様のせいだぞッ!! 貴様の行いで今ここでベーオウルフが誕生するッ!!」
『何をしている! アクセル、トドメを刺せッ!! キョウスケ・ナンブをベーオウルフにさせるなあッ!!』
ペルゼイン・リヒカイトの姿をアクセル達が目にするのはこれが初めてだったが、ペルゼイン・リヒカイトに酷似したアインストをアクセル達は知っていた。ゲシュペンスト・MK-Ⅲを取り込み、キョウスケをベーオウルフに変えたアインスト――腕の有無こそあれど、あちら側の世界で1番最初に確認されたアインストにペルゼイン・リヒカイトは酷似していたのだ。
『……させませんのよ? キョウスケもエクセレンも私が守りますの、2人とも私には必要なんですの』
ペルゼイン・リヒカイトが虚空から日本刀を抜き放ち振るうと同時に無数のアインストが姿を現し、一斉にアクセルに襲い掛かる。
「ちいっ!!! 面倒な事になったぞ、これがなッ!!!」
ツヴァイザーゲインの襲撃、それによって最もアクセル達が恐れていた事――キョウスケのベーオウルフへの変異が始まろうとしている。それを阻止しようにもツヴァイザーゲインの攻撃で龍王鬼は臍を曲げ、無人機達もその多くが沈黙した。ヴィンデルが勝機を確信し行った攻撃によってハガネ隊が圧倒的に不利だった戦況は一気に互角にまで傾こうとしているのだった……。
第180話 進化の光 その2へ続く
禿に続く戦犯その2緑わかめです。一応言っておきますとヴィンデルの攻撃で味方ユニットのHPは赤ゾーンになっているので、かなり不利なのは変わりませんがツインユニットの解禁で挽回は楽という状況になりました。ヴィンデルはここまで馬鹿じゃないと言う意見もあるかもしれませんが、ヴィンデルは私の中では禿と同等なので扱いはやや酷いことになりますがご了承ください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
今回の迎撃戦は地味に難しいですね。
今ハイスコアが39997で、後3ポイントでSランクなのに、何回やっても乱数で5から1足りない状態でアーっとなっております……。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い