第180話 進化の光 その2
ブライはツヴァイザーゲインの奇襲を見てくだらないと鼻を鳴らした。自分が作り上げた罠を崩され、あまつさえ折角分断した敵までも合流させた……ブライの中でヴィンデルの評価は著しく低下する事になった。
「所詮はハイエナ、くだらん男だ。龍王鬼達に帰還命令を出せ、こんな横槍が入ってはあの男はまともに戦わん。代わりに量産型の闘龍鬼と不知火を出せ、攻撃命令はあの化物8、人間2の割合で構わん」
「よろしいのですか? 大帝」
ブライの龍王鬼への帰還命令を聞いていたコウメイがブライに本当に良いのかと尋ねる。
「構わん、ワシは倒せるのならばここで仕留めるくらいには言っていたが、本当にここで仕留めるつもりなど微塵もなかったからな」
ブライの中ではオペレーション・プランタジネットは絶望的な状況でのハガネ達の底力を見つつ、敵に値しないと判断すれば殲滅するといった物であり、オペレーション・プランタジネットの真の目的は百鬼帝国の存在を知らしめることにある。ビアンが衛星放送を利用しようとしていることも計算の内であり、異星人と未知の敵勢戦力がいるという事を知らしめる事が出来ればその段階でハガネを詰みに持っているだけの策を既にブライは準備していた。自分の政治家という立場、そしてブライアンの生死不明という事でその立ち位置をより磐石にしたブライにはこの先にいくらでも詰みに持っていける手段があり、この場に固執する必要性はないのだ。
「敵に情けをかける必要などは……」
「何を馬鹿な事を言っている? 敵なき最強になってなんとする。それでは最強になったとしても何の意味も無い、何の為にワシがこれほど骨を折って来たと思っているのだ」
何十年も議員を続け連邦議員としての立場を確立させたのも、超機人を蘇らせて配下にしたのも、アースクレイドルを支配下においたのも全ては単純にして、そして「ブライ」だからこそ成し遂げねばならぬ大願の為だ。
「ゲッターロボを倒す……それがワシの、ワシ達の……いや、ダヴィーンの総意なのだよ」
今までやって来たのは全てゲッターロボを倒す為だ。勿論ブライとてコウメイの方が正しいと分かっていても、ダヴィーンの総意、そして様々な世界で破れたブライの遺志がそれを許さないのだ。
「余りに早く決着をつけるのも面白くない。これは舞台なのだよ、百鬼帝国が新西暦にその名を轟かせる為のな」
プランタジネットはあくまで百鬼帝国の存在を広げる為の舞台であり、元々ブライに決着をつける意図はないのだ……何故ならば。
「ここで倒してしまっては回収して鬼にも出来ん、百鬼帝国の脅威を存在を、連邦議会とそして軍上層部に知らしめワシの作戦通りに動かさねばならんからな」
ここまで抗って見せた……新西暦の兵器では抗えない筈の百鬼獣を撃破し、戦って見せたのだ。そういう面では龍王鬼を出撃させたのは一種の御前試合のような意味合いが強く、この絶望的な状況で戦い抜いた。その段階でキョウスケ達の評価はシャドウミラーよりも上であり、地球ではなく宇宙を見据えているブライにとっては殺してしまうのではなく、鬼に改造するほうが価値のある存在となっていた。牙を剥き出しにし、獰猛に笑うブライの目はその表情と打って変わり、子供のようにキラキラとした光が宿っているのだった……。
ハガネ隊で邪龍鱗と残影玄武弾による広域攻撃を回避する事が出来たのは機動力に秀でた一部の機体だけだった。それ以外の機体は防御を固めて防ぎきったが無人機が抱えている爆弾による追撃を受け大きなダメージを受けている。
「……酷い」
『良くもあんな真似が出来るものだなッ!』
敵味方関係なく薙ぎ払ったその攻撃にアイビスは言葉を失い、その非道にスレイは怒りを露にした。
『動ける機体は損傷の酷い機体の援護に回ってくださいッ!!!』
『アインストが出現しているがその目的は機体への寄生だと思われるッ!! なんとしてもそれを防げッ!!! 我々はハガネとクロガネの支援を行うッ!』
位置的に軽症だったヒリュウ改とシロガネのレフィーナとリーの焦りに満ちた指示が飛んだ。ハガネとクロガネは黒煙を上げ高度を大きく落としている上に通信が繋がらないという状況であり、一刻の猶予もないのは明らかだった。アステリオンとベルガリオンは機首を下にして急降下しようとした瞬間マントを翻したゲッターVがアステリオン達を追い抜いて急降下する。
「び、ビアン博士!? 貴方が前線に出てどうするんですか!?」
ビアンはこの場で1番死んではならない男だ。それが真っ先に前線に出たことにアイビスが驚いて通信を繋げようとするが規格が違うので通信は繋がらず、代わりに広域通信によるビアンの指示がアステリオンへと響いた。
『風神鬼が撤退した。今ならばサイバスターとヴァルオーネの広域攻撃も可能だッ! アインストと無人機を一掃する! 動ける者は撤退支援だッ!! これ以上は戦えんッ!! マサキッ!! リューネッ!!! 私に続けッ!! 脱出経路を作るッ!! ハガネとクロガネは最早戦闘は不可能だッ!! これ以上この場に残れば轟沈するッ! それだけはなんとしても避けなければならんッ!!』
ゲッターVの後を追ってサイバードへと変形したサイバスターとヴァルシオーネが続く、誰がどう見てもこれ以上は戦えないのは明らかであり、戦いは既にラングレーの奪還ではなく全員生存しての撤退戦になろうとしていた。
『……ザ……ザザ……き……は……そう……だつ……を……』
ノイズ交じりの広域通信がクロガネから発せられ、格納庫が開閉され、少し遅れてハガネの格納庫も解放される。それは轟沈寸前であろうと母艦としての最後の役割を果たそうとしている姿でもあった。
『誰でも構いませんッ! 手伝ってくださいッ!!! フェアリオンでは押さえきれませんわッ!!!』
『急いでッ!! 早くッ!!!』
「スレイッ!!」
『分かってるッ!! 行くぞアイビスッ!!!』
シャインとラトゥーニの救助を求める声にアステリオンとベルガリオンが急降下する。雲を付き抜け、再び破壊され尽くしたラングレー基地を視界に収めたスレイとアイビスの目の前に現れたのは醜悪な化け物の姿だった。
『あああ……痛い、いたいいたい……痛いですねええッ!!! アヒャハハハハハハッ!!! でも生きてます、僕は生きてますよぉッ!!!』
邪龍鱗と残影玄武弾による攻撃の被害を受けているのは当然ながらキョウスケ達だけではなかった。百鬼獣もインスペクターもシャドウミラーの無人機も等しく打撃を受けていた。キョウスケ達よりもダメージが軽微だったのは単純に装甲の厚さの違い、そして百鬼獣が持つ特有の再生能力の有無だった。しかしその再生能力を持ってしても、大きな被害を受けているのはゲッターノワールだった……その巨体さ故に避ける事が出来ず全弾被弾したゲッタノワールの身体は穴だらけで、穴の空いた装甲内部では触手の様な物が蠢き、全身からオイルを撒き散らしながら動くその姿は、スレイとアイビスには醜悪なゾンビに見えていた。
『くっ!! リュウセイ達はやらせないッ!!!』
『アハハハハハッ!! 無駄ですよおおおおおッ!!! そんな豆鉄砲で僕は止まりませんからねぇッ!!!』
ゲッターノワールの口元が開き、牙を打ち鳴らすのを見てスレイとアイビスはアーチボルドが何をしようとしているのかを悟った。
『SRXとアウセンザイターを食うつもりかッ!!!』
「き、機械なのにそんな事が出来るの!?」
『そうとしか思えんッ!! ラトゥーニ少尉! アイビスは声掛けを続けろッ!! 我々ではSRX達を運搬するのは不可能だッ!!』
ゲッターノワールがSRXとアウセンザイターを捕食しようとするのを防ごうと攻撃を行なうスレイ達だが、火力が圧倒的に足りていなかった……ツヴァイザーゲインの攻撃によって損傷した箇所を攻撃することでやっとダメージが通るが、ゲッターノワールを撃退するには力が余りにも不足している上に、再生能力によってその損傷箇所も見る見るうちにその数を減らし、有効打撃を与えられる場所が箇所が消えてしまえば、火力が不足しているアステリオンやフェアリオンではゲッターノワールを仰け反らせるのも困難になっていく……。
『さーて……トロニウムエンジンを頂くと……「うおおおおッ!!!」『ぎ、ギシャアアアアアアッ!!!』……なんですってえッ!?』
アイビス達の善戦も空しくゲッターノワールを止めることは叶わず、その手がSRXに触れようとした時。武蔵の雄叫びとゲッターザウルスの苦悶の呻き声が地中から響き背後からゲッターザウルス……いやガリムを押さえ込み、ドリルを無理矢理操っているゲッターD2が地中からその姿を現した。
「くたばりやがれええええッ!!!!」
『ギ、ギャアアアアアアアッ!!!!』
ゲッターガリムのドリルがSRXを喰らおうとしていたゲッターノワールの口に突っ込まれ、その頭部が内部から抉られオイルがまるで血のように噴出し、ゲッターD2とゲッターガリムを瞬く間に真紅に染め上げる。
「うおらっ!!! こいつも喰らっとけッ!!!」
『ギギャアアッ!?』
ゲッターノワールの頭部を破壊し尽くしたゲッターガリムの背後に回ったゲッターD2は、その背中に蹴りを入れゲッターノワールの方へと吹き飛ばすと、ゲッターランサーを両手に持ちゲッターノワールとゲッターガリムをまるで昆虫標本のように地面に縫い付けその動きを封じると同時に、ゲッターD2は地響きを立ててその場に膝を着いて動きを止めた。
『武蔵様! 武蔵様! 大丈夫ですか!?』
「はぁ……はぁ……な、なんとか……がつくけど無事だぜ」
武蔵とゲッターD2の疲弊具合は凄まじく、限界が見えていたがそれでもゲッターD2は立ち上がり翼を広げる。しかしゲッターD2もツヴァイザーゲインの攻撃を受けていたのか、全身の装甲に亀裂が走り火花が散っている。
『それ以上は無茶ッ! 武蔵も帰還して』
「まだそんな事言ってられんねえよ……敵はまだまだ出てくるんだ。少なくとも撤退準備が出来るまではオイラは休めねえよ」
満身創痍の有様を見てラトゥーニが帰還するように促したが、武蔵はまだ撤退できないと返事を返す。
『で、ですが! いくらゲッターロボとは言え……その有様ではッ!』
「話してる時間はないんだ! これは完全に負け戦だ! こんな所で死ぬわけにはいかねえんだッ!!」
シャインが説得を試みるが、それでも武蔵はまだ戦うという意見を曲げる事はなかった。万全な状態の百鬼獣が出現するまで、いや、もっと言えば無人機の群れがいつまた現れるかも分からない。口論している時間はないと武蔵は言うとゲッターD2は翼を広げて天へと舞い上がった。
「こいつもくれてやるッ!! 持って行きやがれッ!!!」
ダブルトマホークとゲッターランサーを無数に投げ付け、ゲッターノワールとゲッターガリムの姿が武器の山の中に埋もれて消えた。
「倒したの……」
「倒せてなんかいねぇッ! 只の足止めだ! シャインちゃん達は何とかしてリュウセイ達を起こして早くこの場所を離れるんだ!!」
倒しきるにはゲッターロボと言えど時間が足りないと武蔵は叫ぶと、シャイン達に逃げるように告げ百鬼帝国から次々と姿を現す不知火達の方へと飛び去って行った。
『とにかく今は気絶している面子を起こす……と言いたいところだが……』
『流石にそんな事も言ってられないみたい……』
百鬼獣は武蔵が押さえに向かったが、少しずつ現れるアインスト、そしてインスペクターとシャドウミラーの無人機が少しずつ姿を現し始める。
『戦いながら通信を繋げるしかありませんわ! 武蔵様の言う通り、なんとか全員で脱出することを諦めてはいけません!』
状況は絶望的だが諦めてはいけないとシャインが叫んだ直後、フェアリオンが戦おうとしていた無人機に投擲されたランスが突き刺さり、いっきに後方へ引き寄せられると同時に引き裂かれ爆発四散する。
「あれって……シャドウミラーの……」
『バリソンか?』
誰がヴァイサーガに乗っているのかとスレイ達が困惑する中、広域通信でヴァイサーガのパイロットの声が響いた。
『何をしに来たと言うかも知れんが……助けに来た。敵は私に任せて、お前達は気絶している面子を早く起こすんだ」
出撃のタイミングのお蔭で万全な状態で姿を見せたヴァイサーガはランスとタワーシールドを構え、爆発的な加速でシャイン達を庇うように前に出ると、たった1機で無人機の群れとの戦いを始める。
『エキドナの助けを無駄にしてはいけません! 今の内ですわ!』
エキドナが時間を稼いでくれているうちにとシャインは叫び、SRXへ取り付いて接触通信による通信でリュウセイ達を起こす事を試みる。それに続くようにラトゥーニもSRXに取り付いて必死に声を掛ける。この絶望的な戦場から脱出に向けての戦いが始まろうとしているのだった……。
ツヴァイザーゲインのコックピットでヴィンデルは怒りにその顔を歪めていた。敵が疲弊したところに回避出来ない広域攻撃を行なうのは戦いの定石だ。そもそもMAPWとは開幕、もしくは後詰めで使い出鼻を挫くか、防御すらさせず殲滅する為の物だ。
「私は間違っていない……ッ」
戦いにおいてもっとも正しい選択をしたはずなのに、目の前の光景はヴィンデルにとって受け入れ難いものであった。ハガネのPT隊はいまだ健在であり、そしてハガネ、シロガネ、クロガネ、ヒリュウ改のいずれも撃墜出来ていない。完璧なタイミングによる奇襲、そして最大限にまでエネルギーを高めた広域殲滅攻撃によって決着がつくはずだったのだ。
『……てめえ、情けか……殺すならさっさと殺しやがれ……』
『この様な決着を俺は認めん。戦いに横槍を入れられただけでも腸が煮え返るほどだと言うのに、このような形で勝利を拾うなど俺の流儀に反する』
闘龍鬼が大破しているグルンガストに肩を貸し、アインストを切り払いながらハガネの近くまで運んでいく姿にヴィンデルは困惑を隠しきれなかった。
『おっさん……いや、カイさんよ。決着は先送りだ、こんなくそくだらねえ決着は俺はしたくないんでね。今度はそんな量産機じゃなくて、ちゃんとしたのを用意しておけよ! そんなのを倒してもつまらねからなッ!! おい、闘龍鬼。行くぜッ!!』
『分かっている。ではな、また会おう』
「何をしているのか分かっているのかッ! あの馬鹿共はッ!!!」
何故トドメを刺さないとヴィンデルは声を荒げるが、馬鹿はヴィンデルの方だった。この場にいるのが朱王鬼ならば嬉々として動く事の出来ないイルム達を嬲り殺しにしただろう……だがこの場にいるのは龍王鬼一派であり、その気質は鬼の中でも異質な正々堂々とした戦いを望む武人達であり、戦いの中で勝利したのならば殺しもするだろう……だが横槍が入った段階で戦うという意志は消え去っていたのだ。
『あんた、もう戦わないって言うのかよ』
『然り、百鬼獣は知らぬが我らは戦わぬ。そちらが戦うというのならばその限りでは無いが……』
雷神鬼も全身に細かい被弾の跡こそあれど戦闘不能には見えなかったのだが、肝心のパイロットである龍玄に戦う意志が無くなっていた。
『アラド行くぞ、戦わなねえって言ってる奴を態々敵にする事はねぇ、あたしらの敵は……』
『キシャアアアッ!!』
『……』
カチーナの言葉を遮りアサルトブレードを構え突撃してくるエルアインス、そしてシャムシールのような形状をした細身のブレードを手にした不知火をカチーナは睨みつけ、ダメージの余り動きが鈍いゲシュペンスト・MK-Ⅲを操りライトニングステークを起動させる。
『この化け物共だッ!!!』
クロスカウンターの要領で拳を叩き込まれた不知火が半回転し、ラングレー基地のカタパルトに叩きつけられる。
『動ける者は撤退支援に回れッ!! 戦える者はチームを組んで応戦しろッ! 決して孤立するなッ!!』
カーウァイの指示が矢継ぎ早に飛び、邪龍鱗と残影玄武弾によって受けたダメージが深刻ながらも陣形を立て直し戦線の維持を始めている。
「こんな筈ではッ!!! くっ!! ふざけるな、ふざけるなよッ!! 私の計画が覆されるなどあってはならんのだッ!!」
自分の作戦は完璧だった筈だ。確実に敵を屠れる盤面を作り、倒せないにしろ致命的なダメージを与え撃墜出来るだけの舞台を整えた。だが結果はどうだ? 百鬼帝国の主力である龍王鬼達は戦いを止め、ブライもそれを咎める事は無く代わりに廉価版の百鬼獣を出撃させてこそいるが、トドメを刺そうという意思が感じられない。その上積極的に攻撃を仕掛けているのはアインストに向けてであり、ハガネの部隊と戦うという意志が感じられなかった。百鬼獣は生き物であり、個体差があるが少なくともこの場の敵はアインストと見定めている様子だった。
『あーあ、こんなことになっちまってよお……初陣が地球人じゃなくて化物狩りかよ』
ヴィンデルの知るグレイターキンとは細部が違うが、紛れも無くグレイターキンであるその機体はハガネの機体と戦う素振りを見せず、アインストと戦いを繰り広げている。
『なんであんたまであたしたちに攻撃しないのさ』
『あん? んだよ、俺達とまで事を構えるつもりか? そんなんだから地球人は野蛮な猿っていわれんだよ。目の前の状況をみろや、この状況で化物と戦わねえ馬鹿がいるのかよ』
リューネの問いかけに嘲笑うような態度でメキボスは返事を返し、高周波ブレードでアインストを両断する。
『それによ、こわーい龍神が俺を睨んでやがるからよ。今この時は味方してやるよ。どうせラングレーもぶっ壊れちまったし、テスラ研は奪われちまったしよ、あーあやだやだ、とんだ大損だ。とんでもねぇ馬鹿のせいでよ』
飄々とした態度を崩す事無く、そして積極的にハガネの部隊を援護するような素振りこそ見せていないが、ヴィンデルの行動を批判してくる。
「くそッ!! こんな筈ではッ!!!」
そしてアインストの群れに襲われているヴィンデルの支援を行う者は誰もいない。レモンは邪龍鱗と残影玄武弾に巻き込まれどうなったかも分からず、そしてアクセルはキョウスケがベーオウルフになることを恐れ、アルトアイゼン・ギーガをその背中に庇っているペルゼイン・リヒカイトを突破しようとしているが冷静さを失った今のアクセルではアルフィミィを突破する事は不可能に等しかった。ヴィンデルの行なった事は戦略・戦術としては正しかったが、正しい事が全て正解ではない……ヴィンデルはこの場でもっともやってはいけない、誤った行動をしてしまったのだった……。
アインストの出現によってラングレー基地での戦いは奇妙な方向に転がり始めていた。この場にいる全員に無差別に襲い掛かってくるアインストをより脅威と判断したのだ。アルフィミィを除けばアインストとは意思疎通も出来ない上に何を目的としているのかも分からないとなれば、その脅威度は百鬼獣やインスペクターを大きく上回るのは当然の事と言える。
『『『……ッ!!!』』』
『グルアアアアッ!!』
量産型闘龍鬼に何体ものクノッヘンが飛び掛かるが、やはり個体としては量産型とは言え闘龍鬼に軍配が上がるのかクノッヘンの身体が腕の一振りで砕けるが、生き残った個体が身体に組み付きその爪と牙を突き立てる。
『『『ッ!!!』』』
その痛みに闘龍鬼が雄叫びを上げると、それを好機と見たのかクノッヘンが更に襲い掛かり、まるで捕食でもするかのように量産型闘龍鬼をバラバラに切り刻んでいく。その余りも凄惨な光景に思わず何人かが目を背ける。
『馬鹿かッ!! 目を背けている暇があれば逃げろッ!!! チェーンナックルッ!!!』
ネオゲッター1の拳が射出され不知火の胴体に風穴を開けると残された右腕で鎖を掴み、ネオゲッター1は不知火をハンマーのように振り回しハガネとクロガネの周辺を覆おうとしていた無人機達を薙ぎ払う。
『行けッ!! 殿は私が務めるッ!!』
『1人で抑えられると思ってるのか? それなら貴様は大間抜けだ』
『俺もコウキもまだ戦える、伊達に歳は食っていないからな』
オイルを撒き散らし亡者のような有様だがゲシュペンスト・シグは回転する爪でゲミュートの腹を貫き、そのまま持ち上げて粉微塵に打ち砕き、轟破・鉄甲鬼が投げ付けた斧がシャドウミラーの無人機を胴体から両断し空中に爆発の華を咲かせる。
『武蔵ッ! そのトカゲもどきは俺が潰すッ!! お前はそのゲッターもどきを潰せッ』
破壊されたことで僅かに空いた穴を抜け、ラドラの駆るゲシュペンスト・シグはゲッターザウルスへと突撃し、武蔵へ敵のターゲットを変えることを提案する。
『ラドラ……しゃあッ!! ならそっちは任せるぜッ!!! おいメキボスッ!!!』
一瞬迷いを見せた武蔵だったがラドラが元・恐竜帝国であると言うこと、そして1番メカザウルスを理解しているからこそゲッターザウルスへの対処法を理解していると考えラドラの提案を受け入れつつ、成り行きで近くにまで押されていたメキボスへと釘を刺す。
『……あー、なんだ?』
『変な事をしてみろ、てめえを殺すぜ』
『……わぁーってるよ……今だけは味方だぜ、俺はよ。俺もまだ死にたくはないんでね、ところで1個聞いても良いか?』
武蔵に脅されたメキボスはあえてお茶らけた口調で武蔵に問いかけた。
『ここで手助けしたら少し手心を加えてくれたりしねぇ? どうせまた会えばやりあうことにはなるんだろうけどよ、お前の仲間を助けてやっただろ?』
何を恩着せがましいことを言っていると誰もが思った、元々メキボス達インスペクターが侵略活動を行なわなければこんな事にはならなかったのだ。
『さて……な、オイラは殺しはあんまり好きじゃねぇとだけ言っといてやるよ、敵でも借りは借りだ。ちゃんと返す』
だが武蔵の返答は律儀な物であった。甘いとも言えるだろうがこの甘さが武蔵の弱点でもあり、また美点でもあったのだ。
『つうわけだ。後から撃つとか勘弁してくれよ』
『しゃあねえな、俺はてめえは嫌いなんだが……なッ!!!』
イルムのグルンガストとは異なるカラーリングのグルンガストを駆るバリソンにとってメキボスに良いイメージは無いが、それを言えば今の自分も似たような立ち位置なので下手なことを言えないという事が余計にバリソンを苛ただせ、それを誤魔化すようにブーストナックルを打ち出し量産型闘龍鬼の胴体に風穴を開け爆発させ、不本意ながらグレイターキン改と背中合わせで立ち回ることになる。
『ちいっ、てめえと組むなんて最低だ』
『そいつは悪いな、だけど俺も地球人と組むなんて最悪だぜ』
互いに口の悪い男同士だからこそ暴言を吐くが、メキボスとバリソンとて分かっているのだ。この場を切り抜ける為には気に食わない相手だとしてもその力を借りなければならないのだ。唸り声を上げて襲ってくるアインストグラートとクノッヘンに向かって計都羅喉剣と高周波ブレードの一閃が振るわれるのだった……。
龍王鬼一派が矛を収め、百鬼帝国の主力は既に撤退し、インスペクターの無人機もメキボスが止めているので追加で出現する事はない……今ラングレーを巡る戦いはアインスト、そしてシャドウミラーの因縁へと変わりつつあった。
「……キョウスケはやらせませんことよ? 勿論エクセレンも、2人とも私に必要なんですもの」
「化け物がッ!! 俺は貴様の存在を認めんぞッ! アインストッ!!」
キョウスケとエクセレンを殺させない為にアルフィミィはこの場に現れた。ゲッター線を取り込み、進化したから得た本当の意味の自我。その芽生えたばかりの自我はキョウスケとエクセレンを欲し、それを守りに来た。だがアクセルからすればアルフィミィの存在は己の世界でキョウスケをベーオウルフへと変えたアインストにしか見えず、ベーオウルフが、そしてそれに匹敵するかもしれない存在が生まれようとするのを認めるわけには行かないとペルゼイン・リヒカイトに向かってソウルゲインは拳を振るう。
「……貴方に用はございませんのよ? 私は只……キョウスケとエクセレンを助けに来ただけなのですの」
ペルゼイン・リヒカイトが無造作に突き出した刀の切っ先がソウルゲインの拳を止める。
「化け物がッ!! 玄武剛弾ッ!!!」
自分など相手ではないと言わんばかりの態度にアクセルは激昂し、玄武剛弾を放ち力ずくでペルゼイン・リヒカイトの刀を弾き飛ばす。
「……むう、こんな乙女に化物とは失礼ですのよ?」
「貴様など化物で十分だ、ここで死ねアインストッ! 馬鹿なッ!?」
戦うつもりがないアルフィミィに向かってソウルゲインが殴りかかろうとした瞬間、ペルゼイン・リヒカイトの全身が翡翠の輝きが放たれソウルゲインを弾き飛ばした。その光をアクセルは勿論、ハガネやクロガネのクルーだって知っている。
戦うつもりがないアルフィミィに向かってソウルゲインが殴りかかろうとした瞬間、ペルゼイン・リヒカイトの全身が翡翠の輝きが放たれソウルゲインを弾き飛ばした。その光をアクセルは勿論、ハガネやクロガネのクルーだって知っている。
ビアンが信じられないと声を震わせて叫ぶとペルゼイン・リヒカイトはその姿を音を立てて変える。
「……その通りですのと言いたいのですが、私が取り込んだのは地底に眠っていた弱い物……それでも私はより高みへと至っちゃたりしてますの」
ゲッター線のオーラを纏ったペルゼイン・リヒカイトから放たれる圧倒的な威圧感。高みへと至った……アルフィミィの言葉は嘘でも偽りでも無く、更に上の存在へと至っていたのだ。
「最悪だ、これがな。俺達の世界以上の悲劇になるぞ……」
ゲッター線を得たアインストの存在、そして進化したペルゼイン・リヒカイトの存在はベーオウルフを超える脅威が生まれようとしている証拠だった。
ゲッター線を求め、そしてそれを手にしたことで進化したペルゼイン・リヒカイトとアインスト・アルフィミィ……だがこの戦いへの乱入者はアルフィミィだけではなかった。
『いっぎいいいいッ!! 何故何故何故ッ!! 僕の邪魔をするのですかあッ!!』
『……何故? そんなのお前がリュウセイを傷つけたからだ……殺してやる』
赤黒い念動力の刃で切り裂かれたアーチボルドの苦しみ悶える声がゲッターノワールから響くがビーストのパイロット……レトゥーラはその問いかけに狂気を交えた冷え切った声で返事を返し半壊寸前のSRXをその背中に庇い、ゲッターノワールへ念動力の刃を突きつけているのだった……。
第181話 進化の光 その3へ続く
アルフィミィ&ペルゼイン・リヒカイト(進化)とレトゥーラ&ズィーリアスも参戦し、プランタジネットでの地獄は更に加速します。
次回からはゲッターノワール・ゲッターザウルス、ペルゼインリヒカイトとの戦いを1つずつ丁寧に仕上げていこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
PS
次の期間限定はダブルオーみたいですが、刹那は全然育っていないので見送りしたいと思います。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い