第182話 進化の光 その4
ゲッターザウルスが咆哮と共に放ったゲッタービームによってE-フィールドを破られ、高度を著しく落としたギャンランドの姿はラングレー基地にいる全てに衝撃を与えていた。撃墜までには至らなかったが、無人機の出撃と上空からの主砲を無力化出来たのは非常に大きかった。
『こちらラドラッ!! ゲッターザウルスは掌握したッ!! このまま脱出支援に入るッ!! シロガネ、ヒリュウ改は機体の回収作業をッ!!』
『グオオオオオンッ!!!』
一方的なラドラの通信の後にゲッターザウルスが咆哮を上げ、両手にダブルシュテルンを握り締めアインスト達を薙ぎ払いながら突進する。
「収容率はどうなってる!」
「現在57%! 本艦だけでは回収しきれません!!」
「ぬう……ハガネとクロガネへの通信はどうなっている!」
「駄目です! 通信は依然回復しません……ブリッジのクルーが「不吉な事を言うなッ!!」
応答の無いことをブリッジのクルーが死んだからではないか、と言いかけたオペレーターの言葉をリーは怒声で遮った。
「通信を続けろ! それと損傷の酷い機体は廃棄ッ! 自爆により進路を作らせるッ!! 救助可能な機体はパイロットの保護を行い、至急後退されたしッ!!! 続けて艦首大型レールガン発射準備ッ!!!」
「ちゅ、中佐! 今のシロガネの損傷ではレールガンの反動で大破する可能性が……」
「可能性など目安に過ぎんッ!!! 今はこの場を切り抜けることだけを考えろッ!! 最悪の状態になったとしても艦首ユニットを切り離せば居住区と格納庫は無事だッ!」
リーの矢継ぎ早の指示にシロガネのクルーは最早誰1人反論を口にする事は出来ず、鬼気迫る表情で指揮をとるリーの指示に従うしか出来なかった。
「流石、エアロゲイターの進軍の際に旧式の兵器と僅かなPTだけで、戦死者も出さずに切り抜けた指揮官だけありますな」
「ええ。私もリー中佐を見習わなければなりませんね」
通信を繋げたままになっているヒリュウ改にもシロガネのリーの怒声は響いており、この状況でもまだ全員が無事で生存する事を諦めていない、その不屈の闘志はヒリュウ改にも伝播する。
「ユン! 収容率はどうなっていますか!」
「げ、現在85%です! カチーナ中尉が予備機のゲシュペンスト・MK-Ⅲでの出撃を求めていますが」
「許可しますッ!! 今はとにかく脱出支援を優先してください! それとハガネから応答はありましたか!」
「返答はありませんが、機体の回収作業が行なわれているのでブリッジが損傷したとも思われます!」
「文章による通信はどうですかな?」
「それも試みていますが返答はありませんッ!」
ツヴァイザーゲインの攻撃を受け、いまだ沈黙を続けるハガネとクロガネ。その両艦とも機体の回収作業を行なっているのでまだ戦艦としての機能は生きているのが分かるが、応答がいまだ無いことにレフィーナ達も不安を隠し切る事が出来ないのだった……。
「ふーむ、人間は中々しぶといねぇ、そう思うだろう? スティンガーくぅん?」
「うんうん、ぼ、僕もそう思うよ! しぶといというよりも、これは生き汚いというべきだと思うんだよ、コーウェン君!!」
ミサイルやビームが飛び交う音を聞きながら無人となっているラングレー基地の地下へと進むコーウェンとスティンガーの2人はバイオロイドを時折貪り、己の血肉と変えながら只管に地下へと走る。インベーダーである2人が何故ラングレー基地にいるのかと言えば、それは簡単な理屈だった。
「ゲッター線は相変わらず神出鬼没だ。まさかこんな所に現れるなんてね」
「そ、そうだね! だけどこれだけ強力なゲッター線だ。そ、それを見過ごすなんて勿体無いよね!」
新西暦では稀少なゲッター線……その反応を感じ取ったからこそ、コーウェンとスティンガーはゲッター線を得る為に北米にやってきていたのだ。
「でも出来損ない風情がゲッター線を手にしているのは不愉快だねぇ、君はどう思う? スティンガー君?」
「僕はね、分不相応な事をした奴には制裁が必要だと思うんだよ、コーウェン君」
「やつぱりそうだよえね、武蔵もいるし、出来損ないのとかげもいる。真のゲッター線の使徒として制裁は加えておこうよ」
コーウェンとスティンガーはにやりと微笑み、開けた研究機の開発区画に互いの左腕を引きちぎり投げ捨てる。それを確認した2人は再びラングレーの地下を目指して走り出し、引き千切られた腕は独りでに丸くなり胎動を初めているのだった……。
沈黙を続けていたSRXのコックピットに何度も響くラトゥーニ達の声、それは意識を失っていたリュウセイの意識を呼び覚ます事に成功していた。
「うっく……な、何が……」
頭を振りながら身体を起こしたリュウセイは火花が散っているコックピットモニターに驚き、R-2とR-3へ通信を繋げる。
「ライ! アヤッ!! 応答してくれ! ライ! アヤッ!!!」
『うっく……リュウセイ……何があった……ぐっ……』
『リュウ……そんなに大声を出さなくても聞こえてるわ……何があったの』
何度かの呼びかけでライとアヤも意識を取り戻した事にリュウセイは安堵したが、何時までも安心している時間はない。
「ライ! 動力の復旧は出来るか!?」
『今やっている……当り所が相当悪かったな……くそ、完全にシステムダウンしているッ!』
意識がハッキリしてくると、リュウセイ達も突然上空に現われた機体からフェアリオン達を庇い多く被弾した事を思い出した。だがそれを思い出したところで焦りが込み上げてくる。
「な、なんとか復旧出来ないか! それが無理ならせめて分離をッ!」
『無理だ、フレームが捻じ曲がっている……ッ! 分離するにもこの場では無理だ……再起動は試みるが現状では立ち上がる事も出来んぞ』
「う、嘘だろッ!? なんでだよッ!?」
立ち上がることも出来ないと言われリュウセイが声を上げる。R-2のコックピットの様子を映しているモニターにもノイズ交じりだが、苦虫を噛み潰しているようなライの顔が映し出される。
『相手はSRXの構造を理解していた。1番弱い所に集中攻撃を受けている』
「……量産型SRXかッ」
シャドウミラーは量産型のSRXを運用していた。その時の経験からSRXの弱点を熟知しており、その上味方を庇うことを計算に入れ、合体と分離に関係する箇所に集中攻撃を加えていた。それによりSRXは立ち上がることは愚か、分離することも出来ない棺桶と化していた。
『なんとかならない、ライ?』
『尽力はしますが……隊長。恐らくかなり厳しいかと』
通信が回復し、状況を聞いていたヴィレッタ達もSRXが立ち上がることは愚か、分離も出来ない状況と聞いて渋面を浮かべる。
『せめて分離が出来れば帰艦してもらう事も出来るけど……』
『今はそれも難しいようです。それよりも隊長、現状はどうなっているんですか』
戦闘音が聞こえてもモニターが完全に復旧しておらず、外がどうなっているのかとアヤがヴィレッタに問いかける。
『シャドウミラーとアインストが出現して、百鬼帝国は一時撤退、インスペクターも自分の身を守るためかこっちに協力しているわ。徐々に撤退は完了しているけど、ゲッターノワールとシャドウミラーを何とかしない限り私達がこの場を脱出する事は難しいわ』
「ゲッターノワールは今は誰が相手をしてるんだ、隊長!」
『……武蔵とレトゥーラよ、また現れたのよ、リュウセイ。貴方を助けにね』
リュウセイの危機の度に現れているズィーリアス……1回目はビルトファルケンに仕掛けられていた朱王鬼の罠、2回目はロスターに取り込まれそうになった時、そして3回目はアギラの乗る不知火に襲われた時……そして今回で4度目。同じ事が4回も続けばレトゥーラがリュウセイに執着しており、その窮地を黙ってみてられないと言う説も真実味を帯びてくる。
「レトゥーラ……お前は一体誰なんだ……」
念の感知でリュウセイはレトゥーラがラトゥー二に似ている、もしくは親しい人物だと感じていた。だが今回は違っていた。1回目、2回目、3回目……そして今回の4回目の邂逅――だが今回のレトゥーラの念はその3回と全く異なる物だった。
(誰だ……いや、俺は知ってる……でも分からない……この念は……誰なんだ)
知っているはずなのに知らない人物の念……過去3回とはまるで異なる激しく燃え盛っているのに何もかも飲み込むようなどす黒い念を放つレトゥーラにリュウセイは激しく困惑するのだった……。
【……】
「……そうか、お前も漸く終わったか……ならば俺も、やっとタイムダイバーとして、因果律の番人としての役目を果たせる」
機能停止したR-SWORDのコックピットの闇の中、イングラムは己を赤い双眼で見つめてくる半身の姿を久しぶりに確認した。長い間求め続けた、奇跡で手にした自己。その自我を持って今度こそリュウセイ達を守り導きたいと願っていたのに、力の足りない自分に歯がゆい思いをしてきたイングラムの元に、やっと戻って来た己の半身――そしてその後を見て、そうか、そうだったのかと呟いた。
「ゲッターエンペラー……これがお前の意志か、だが俺達はお前の思い通りになどなりはしない」
イーグル号を模した巨大な宇宙戦艦――ゲッター線が辿り着く1つの可能性にしてゲッター線の究極の姿の1つ……因果律の番人であるイングラム、そしてその後継者にすら干渉出来る存在――それがゲッターエンペラーだった。
「テトラクテュス・グラマトン、さぁ来い、我が半身よッ!!」
それによってアストラナガンを封じられていたのだと悟ったイングラムは、お前の思い通りになどなりはしないと口にしゲッターエンペラーを睨みつけながら呪文を唱え、それに歓喜するようにアストラナガンが咆哮を上げるのだった……。
強烈な追突音の後、まるで隕石でも落ちたような轟音が周囲に響き渡った……地面に手を叩きつけ、辛うじて減速を果たしたのはゲッターD2であり、その胸部には拳の形の陥没痕がくっきりと刻まれていた。
「……ちくしょうめ、この化け物がッ!!」
『アヒャハハハハッ!! ヒャハ、ハハハハハハハハッ!!!』
既に意味のある言葉を失い、狂ったように笑うアーチボルドの声がゲッターノワールから周囲に響き渡った。そしてその笑い声と共に変異を続けるゲッターノワールは武蔵の口にした通り化物だった。
『アハアア……良い気持ちですねええええええッ!!!』
ノワールの背中にはゲッター3の頭部とその伸縮自在の両腕、そして肩部にはゲッター2の頭部と一体化したドリルアームが出現し、触手のように宙を舞っている。
『……攻撃が読めない』
「無茶すんなッ!! オイラとゲッターが何とかするッ!!」
ゲッター1をベースにゲッター2と3の能力を行使し、マシンセルによる無尽蔵の再生と、ゲッター炉心でエネルギーの枯渇の心配が無いゲッターノワールを相手にするには通常の機体では不可能だった。
『アヒャハハハハッ!! ほら行きますよおおおおおおおッ!!!』
凄まじい速度で伸びてきたゲッターアーム、それをスピンカッターで切り払うが、その直後にドリルミサイルがゲッターD2の肩部に突き刺さり爆発する。
「ぐうっ!! ゲッタァァアアアアッ!! ビィイイイイムッ!!!」
反撃に放たれた頭部ゲッタービームがゲッターノワールの頭部の右半分を消し飛ばすが、すぐにパーツが盛り上がり完全回復を果たす。
『つよいつよいつよい!!! アヒャハハハハハハ!! 僕はああッ!!! つよいイイイイイイッ!!!!』
ゲッターノワールの全身から伸びた腕が全てゲッタートマホークを握り締め、それを一斉にゲッターD2とズィーリアスに向かって投げ付ける。
『ッ!!』
ズィーリアスは念動フィールドを展開し防ぐのと同時にビームライフルで迎撃を試みるが、僅かに軌道を逸らすのがやっとで念動フィールドにゲッタートマホークがぶつかり凄まじい勢いで後方に向かって弾き飛ばされ、それを庇うようにゲッターD2が前に出る。
「くそがぁッ!! バトルウィングッ!!!」
ダブルトマホークでは打ち落とせないと判断した武蔵はバトルウィングとその拳で迎撃を試みるが、装甲に突き刺さると爆発するゲッタートマホークにゲッターD2の装甲が砕け罅割れる。
『やあああっと限界ですかあああああッ!?』
ゲッターロボの装甲は基本的に張りぼてであり、ゲッター線さえ十分ならばその装甲を即座に修復することも出来る……だが今のゲッターD2には装甲を修復するだけのエネルギーの余裕が無く、ドラゴン、ライガー、ポセイドンの主要ブロックだけを再生し、砕けた右腕や皹だらけの脚部はそのままだった。
「くそっ……どうしろっつうんだよッ」
エネルギー切れ……宇宙から降り注ぐゲッター線を動力にするゲッターD2とは言え、降り注ぐゲッター線の絶対量が少なく慢性的なエネルギー不足に悩まされていたが、それが再び武蔵に牙を剥いた。立ち上がったゲッターD2だが膝が震え、カメラアイが点滅を繰り返し限界を迎えているのは明らかだった。
『大丈夫なのか』
「辛うじてな、だけどあの化物を倒すにはエネルギーが余りにも足りねぇッ」
後数回、下手をすれば一撃でも受ければ装甲の修復は不可能になるのが目に見えており、武蔵にも強い焦りの色が見える。
(リミッター解除したとしても駄目か……くそ、万事休すかよッ)
敷島博士が施したリミッターを解除する事も考えた武蔵だが、それはあくまでも操縦と出力制御に対するリミッターであり、仮に解除したとしてもエネルギーが回復するわけではない。装甲を修復する余力がないのだからゲッタービームなど当然使えるわけが無く、ゲッターD2の今の攻撃力ではゲッターノワールの再生能力を上回れない……詰みに追い込まれ武蔵が歯を噛み締めたその時だった。
【グオオオオオオオオオオオンッ!!!】
百鬼獣でもゲッターザウルスでも、ましてやアインストでもない、本能的に恐怖を与えるような凄まじい獣の咆哮が周囲に響き渡った。その中心には黒い魔法陣を展開した半壊したR-SWORDが存在し、宙へと浮かび上がるとその周辺を無数の魔法陣が埋め尽くす。
『テトラクテュス・グラマトン、さぁ来い、我が半身よッ!!』
イングラムがそう吼えると魔法陣はR-SWORDを包み込み、漆黒の繭へと変化する。そして内部から漆黒に染め上げられた腕が突き出され、繭を引き千切り漆黒の悪魔が姿を現した。
「アストラナガン……じゃない?」
武蔵はL5戦役の中盤から終盤に掛けてイングラムが乗っていた漆黒の天使――アストラナガンを想像していたが、繭から姿を現したのはR-SWORDとアストラナガンが融合したような機体だった。アストラナガンのフェイスパーツを仮面の様に装着し、両肩は鋭角な複数の結晶体へと変化し、両手・両足は元のR-SWORDから鋭い鉤爪を持つ装甲によって延長され、PTサイズから準特機サイズまで巨大化し、背中にはアストラナガンの翼がそのまま現れていた。その姿は正しく悪魔……だが翼と両腕から撒き散らされる光の粒子によって神々しさも感じさせた。
『完全に呼び戻す事は無理だったか……だが今はこれで十分だ。お前の力を見せてもらうぞ、R-SWORD・シーツリヒター』
完全にアストラナガンをその手中に収める事が出来ず、R-SWORDにアストラナガンを憑依させた状態をシーツリヒター……審判と名付けたイングラムの言葉に応じるようにR-SWORD・シーツリヒターはエネルギーを撒き散らしながらアストラナガンの翼を広げて再び咆哮をあげる。
『なんですか、それはあああッ!!』
『お前の声は耳障りだ、消え失せろ』
漆黒の銃神が腕をゲッターノワールに向けると魔法陣が展開される。
『次元の狭間へと消えるが良い、アキシオンスマッシャー……デッドエンドシュートッ!!!』
凄まじい轟音と共に放たれた赤黒い光弾がゲッターノワールの目の前で弾け、次の瞬間虚空に穴が開き、凄まじい光の奔流がゲッターノワールを飲み込んだ。
『が、がああああああああ――ッ!!』
獣のような雄叫びがアーチボルドの喉から迸る。だがゲッターノワールは破壊と再生を繰り返し、活動をとめようとしない。だがその動きを封じるのが目的だったのか、ゲッターノワールに目もくれずゲッターD2の隣へと瞬間移動と見間違うばかりの速度で移動する。
『武蔵、今ゲッターに座標を打ち込んだ。今すぐにそこへ向かえ』
「イングラムさん、でもこの化物は……それにこの座標に向かって何が変わるっていうんですか、それにリュウセイ達は」
ポセイドンのモニターに映っているのはラングレー基地の司令部周辺の座標であり、そこに向かった所で何も変わらないと武蔵が不満を露にし、ゲッターD2が離れる事でSRXが無防備になる事を危惧する武蔵にイングラムは大丈夫だと笑った。
『SRXは俺が離脱させる』
「いや、だから……マジか……」
翼と両肩の結晶体の一部が切り離され、SRXを覆うように結界を展開した。そして瞬きほどの一瞬でSRX達の姿はハガネの近くまで飛ばされていた。
『アストラナガンの力を限定的とは言え取り戻したんだ。これくらい俺にとっては朝飯前だ、分かったら行け、今お前が求めているものがそこにある、あの化物は俺が相手をする。急げ、恐らくこれが最初で最後のチャンスだ』
イングラムの言っている言葉の意味は武蔵には判らなかったが、この状況でイングラムが武蔵を騙す意味などあるわけがない。
「頼んます」
『ああ、俺に任せろ、休んでいた分働かせてもらうさ……分かったら行け』
イングラムの言葉に武蔵は頷き、ボロボロのゲッターD2は翼を広げ飛び立った。
『逃がし……『お前の相手は俺だ、アーチボルド・グリムズ』……ぎっ!! 良いでしょう、良いでしょう!! 相手になってあげますよ、イングラム・プリスケエエエエエエンッ!!!』
ゲッターノワールをその手にした剣で引き裂き立ち塞がるR-SWORD・シーツリヒターをアーチボルドは敵と見定め狂ったように笑い、イングラムの名を叫びながら襲い掛かってくる。だがイングラムに恐怖も動揺も無く、涼しい笑みを浮かべたままゲッターノワールとの戦闘を開始するのだった……。
R-SWORD・シーツリヒターのコックピットからゲッタノワールを見つめるイングラムは、呆れたと言わんばかりの冷笑を浮かべた。
「ゲッターロボという素材をここまで改悪できるか……愚かの極みだな」
ゲッターロボの最大の武器はオープンゲットによる緊急回避からの再合体を戦闘中にほぼ瞬間で行える事だ。特機であり機動力に乏しいゲッターロボにとってオープンゲットは矛であり、盾だ。そんな最大の武器を失っているゲッターノワールはイングラムにとって恐れるに値しない敵であった。
『アアアアアアアッ!!!』
思案している間もゲッターノワールの攻撃は続けられていたが、かすりもしない事にアーチボルドが怒りに満ちた声を上げる。
「腕を増やせば攻撃が当ると思っているのか?」
確かに異形の姿へと変貌を遂げたゲッターノワールの攻撃力は驚異的と言えるだろう。だがそれは当たればの話であり、言うならば当たらなければどうと言う事はないのだ。ゲッタートマホーク、ミサイル、ドリルの雨をR-SWORD・シーツリヒターはすり抜けるようにして回避する。
『何故何故何故ええええッ!!!』
準特機サイズであるR-SWORD・シーツリヒターに攻撃が当たらない理由が判らず、何故だと叫ぶアーチボルドには既に冷静に物を考えるだけの知性が残されていなかった。鬼になった事による闘争本能の肥大化、そしてゲッターロボの力の全能感……だがアーチボルドの冷静さを奪っていたのは鬼になってからの最長の戦闘時間にあった。アギラがそうであったように、鬼の力と言うのは人間にとっては麻薬に等しい、それを御せる強靭な精神力を持たなければその力に飲み込まれ狂う。そしてアーチボルドのような生粋の殺戮者はその欲望に抗う事が出来なかった。
「自分で考えるんだな、最も考える事が出来ればの話だがな」
突き出されたR-SWORD・シーツリヒターの掌から放たれた光弾がゲッターノワールの身体を貫きオイルを撒き散らす。だがそれは一瞬で修復され、また歪な形へと変化する。
『僕は死なない、アヒャハハハハハハッ!!! 傷つけば傷つくほどに強くなる!!! 僕は絶対にぃいいいいいッ! 負けないッ!!!』
より強靭な姿に再生する事を誇らしげに言うアーチボルドだが、イングラムは小声で愚かなと呟いた。確かに再生能力は脅威だ、だが再生する度に変異するのは愚かな事だ。増えた腕が互いに干渉し、取り回しが極端に悪くなっている。その上巨大化していくので既に足は完全に退化し、移動する事も出来ないでいる。
再生する度に変異するのは愚かな事だ。増えた腕が互いに干渉し、取り回しが極端に悪くなっている。その上巨大化していくので既に足は完全に退化し、移動する事も出来ないでいる。
「レトゥーラ。少し力を借りたい」
『なんで私が』
「リュウセイを守るためだと言ったら?」
『何をしている、早く教えろ』
リュウセイが安全圏に離脱したので撤退しようとしてレトゥーラはイングラムの言葉に態度をガラッと返る。レトゥーラにとってはリュウセイだけが全てであり、何よりもそれを優先する。リュウセイがおらずキョウスケがいればキョウスケを殺しに行くが、リュウセイがいるのならばその思考はリュウセイを守る事だけに固執する。
「再生能力を逆手に取る。お前がチャンスだと思えばそこで攻撃してくれば良い」
『……巻き込まれるぞ?』
「生憎だが、お前の攻撃に巻き込まれるほど柔な腕じゃない。余計な心配はするな」
イングラムの言葉にレトゥーラはむっとする物の分かったと返事を返し、イングラムに指示された通り最大攻撃を行なう為のエネルギーチャージに入る。その姿を確認したイングラムはR-SWORD・シーツリヒターを急降下させる。
『アヒャハハハハハハ!! 自分から接近戦を仕掛けてくるなんて馬鹿なんですかああッ!!!』
触手の先にドリルアームを展開しつつ、無数の腕にゲッタートマホークを握り締めるゲッターノワール。その武装の数に接近戦を挑むのはアーチボルドの言う通り馬鹿な特攻志願者にしか見えないだろう。
「馬鹿は貴様だ、アーチボルド・グリムズ。Z・Oカリバーッ!!!」
両肩の結晶の一部が分離し、R-SWORD・シーツリヒターの手に収まる。するとその結晶はゾル・オリハルコニウム製の怪しい輝きを持つ両刃の西洋剣へと変化する。
『そんな玩具でゲッターに勝てると思ってるんですか!!!!』
「玩具かどうかはその身で味わえッ!!!」
ドリルアームによる突きを受け流し、ゲッタートマホークの斬撃の雨を一瞬ですり抜けたR-SWORD・シーツリヒターがゲッターノワールの懐に飛び込むZ・Oカリバーを振るった。
『は……? ギ、ギギャアアアアアアッ!!!』
閃光が走りゲッターノワールの右腕を根元から切り落とす。余りに一瞬の事で認識出来なかったアーチボルドだったが、ノワールの右半身が爆発した事で凄まじい絶叫を上げる。
「どうした? 玩具ではなかったのか?」
『ぐ、僕を、僕を馬鹿にするなあアアアアッ!!』
イングラムの挑発に激昂したアーチボルドの感情に呼応するようにゲッターノワールは再び身体を再生する。だがその再生が余りに急速すぎ異様な形状へと変化する。それによって機体のバランスが著しく狂う、それを修正しようと再び再生が行なわれる。
「遅い、遅すぎるな」
再生中という隙だらけな状態を守る為に胴体部から銃弾が乱射される。だがその銃弾の嵐はR-SWORD・シーツリヒターが展開しているバリアによって阻まれ、Z・Oカリバーが変形した銃から放たれた光線がゲッターノワールの肩を大きく抉る。
『何故何故何故えええええええッ!!!』
「ぎゃあぎゃあ喚くな、耳障りだ」
翼から射出されたビットとR-SWORD・シーツリヒターが手にしている銃からは銃弾が放たれ続け、ゲッターノワールの全身の装甲を容赦なく抉る。
『僕を舐めるなあああッ!!!』
「ちっ……流石に避けきれんかッ」
ゲッターノワールの背部の翼と突き出された両手から乱反射するゲッタービームが放たれる。流石のイングラムも視界全てを埋め尽くすゲッタービームを回避する事は困難で、数発被弾したがR-SWORD・シーツリヒターの姿がぶれるとゲッタービームの雨の中からR-SWORD・シーツリヒターの姿は消えていた。
『転移能力……アヒャハハハハハハ、それを喰らえば僕もその力をおおおおおおッ!!!』
必中の攻撃が避けられた事でアーチボルドはR-SWORD・シーツリヒターに攻撃が当らない理由が転移能力だと知り、SRXを取り込んでトロニウムエンジンを得ようとしたのと同じ様に、R-SWORD・シーツリヒターを取り込めばその能力を得れると触手をR-SWORD・シーツリヒターへと伸ばす。
「だから貴様は愚かなのだ、アーチボルド」
だが転移能力を持つR-SWORD・シーツリヒターを緩慢な動きの触手で捉えられるわけが無く、再び転移で逃れたR-SWORD・シーツリヒターはズィーリアスの隣へと転移する。
『避けるんじゃなかったのか?』
「相手が予想以上に馬鹿すぎてな、だが確実に仕留めれると思えば相手が馬鹿なほうが都合がいい」
本来の計画ではR-SWORD・シーツリヒターが足止めをし、ズィーリアスがトドメ、あるいは戦闘続行不能級のダメージを与える計画だったが、取り込むという選択をし、ただでさえ鈍重な動きを更に鈍重にさせたゲッターノワールを相手に態々囮を使う必要はなかった。
「一撃で極めるぞ」
『……私に指図するな、だが……その意見には賛成だ』
R-SWORD・シーツリヒター手にしていた銃が変形し、巨大な銃口を露にするとその銃口の回りに魔法陣が幾重にも展開される。
『リュウセイに害なす者は……消えろ』
翼を展開し、レトゥーラの念動力を最大限にまで増幅させたズィーリアスが両手を突き出し、その間に螺旋回転する赤黒い念動力の球が現れる。
『念動力と転移能力を寄越せえええええええええッ!!!』
遠目に見てもそのどちらも受けきれる攻撃ではないのは明らかだったが、ゲッター炉心、そしてマシンセルによる再生能力を過信しているアーチボルドはR-SWORD・シーツリヒターとズィーリアスを取り込もうと、触手だけではなく、両腕、そして首までも伸ばす……それが求めてはならない太陽だと気付かずに……。
「アキシオンスマッシャー、デッドエンドシュートッ!!!」
『消えうせろッ!!!!』
『僕は、僕は、僕はアアアアアアアあああああ―――ッ!!!』
魔法陣から放たれた漆黒の極光、そして真紅の念動波の直撃を受けたゲッターノワールは全身を光によって融解させられながらも再生を繰り返し、アーチボルドの絶叫を周囲に響かせながら地中深くへと消えていくのだった……。
第183話 進化の光 その5へ続く
アストラナガンを出すとやりすぎ感があるのでリヴァーレポジのR-SWORDの進化系にしました。系統としてはリヴァーレではなく、ベルグバウとか、ディス・アストラナガン系統で、R-SWORDをベースにアストラナガンの装甲を装備している状態と思っていただければ幸いです。一応進化の光の後におまけでゲッターザウルス、R-SWORD・シーツリヒターと共に機体設定を出そうと思いますので、それまでは詳細は保留と言う事でお願いします。次回はアクセル達の視点をメインにしつつ、ヒャッハーしているインベーダーズを出そうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
PS
共闘戦最終日の無料ガチャでインターセプターのSSRが出たのは許せん。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い