進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第186話  進化の光 その8

第186話  進化の光 その8 

 

ストナーサンシャインの爆心地となったラングレー基地の周辺は完全に消し飛んでいた。球体状に抉り取られた着弾地、そして突如現れた空間の境目が爆発したことで周囲は完全に更地になっていた……その光景を見下ろしているグレイターキン改も膝から下が完全に消し飛び火花を散らしていた。

 

「逃げろって言ってくれたのはいいけどよ、間に合ってねえよ」

 

武蔵の警告は一応メキボスにも届いてはいたが、ゲッター線、そしてアインストとインベーダーの影響でネビーイームへの転移は叶わず、苦渋の策で行なった短距離転移も間に合わず足を消し飛ばされた。

 

「まぁ命があるだけマシか」

 

後ほんの数秒遅れていたらメキボスも消し飛んでいた事を考えれば、機体の両足を失ったとしてもそれ以外は万全の状態であれば十分と言える。

 

「……つうか、さっきのありゃなんだ……」

 

コンソールを操作し戦闘データを呼び出したメキボスは空間の境目から顔を出している異形を見て眉を顰めた。

 

「……ドラゴン……か? いや、それにしてはこいつは……生き物くせえ……それにインベーダーとわけの分からん化物まで融合してやがるし……マジで地球はパンドラの箱か?」

 

空間が裂けるなんて事は監察官として長く活動しているメキボスでさえも初見の現象だ。その上異形の化け物があれだけ出てきたというのは、メキボスとしても看過出来る事ではなかった。

 

「真面目にこりゃ手を引くべきじゃねえか? 駄目元で提案してみるかね」

 

ゾガルとの政治闘争もあるが、これ以上深入りすれば命が無くなると悟ったメキボスは駄目元で撤退を提案してみるかと呟き、再び転移を試みるがコックピットにアラート音が響いた。

 

「……くそったれ、どうしろっつうんだよ」

 

足を消し飛ばされた事で動力系に異常が出ており、転移は勿論だが飛行にも時間制限が付きメキボスは悪態を付き、どうするかと頭を悩ませていると翼の羽ばたく音と共に百鬼獣が雲の切れ間から姿を見せた。

 

『インスペクターのメキボスだな? 大帝様のご指示により探しに参った』

 

『貴殿が望むのならば百鬼帝国に一時的に保護しても良いの事だが……』

 

『『返答はいかに』』

 

双子なのか奇妙な言い回しの鬼の言葉にメキボスは深い溜め息を吐きながら通信をONにした。

 

「そりゃ助かる。大帝様に感謝するぜ、保護を頼んでも良いか?」

 

どの道長くは飛行できない上に、地球人もこれだけの破壊があれば間違いなく調査に来る。そうなればどっちにせよ詰みなのでメキボスは半分やけくそ気味に百鬼帝国に保護される道を選んだ。

 

『御意。兄上』

 

『うむ、参ろうぞ弟よ』

 

やっぱり双子だったのかと苦笑するメキボスの乗るグレイターキンを左右から持ち上げた百鬼獣によってメキボスは百鬼帝国へと連れて行かれるのだった……。

 

 

「災難だったね、メキボス君」

 

「ええ、死ぬかと思いましたよ。助けてくれてありがとうございます(なんで俺ばっかりこんな目に合うんだよ、ちくしょう)」

 

百鬼帝国に付くなり風呂に入れ、身嗜みを整えろと拒否する間もなくスーツに着替えさせられたメキボスは、ブライと対面しながらの食事になんでだよと叫びそうになりながらも、その顔に笑みを浮かべ、ステーキを切り分けて口に運ぶが、当然味など分かるわけもない最悪の食事である。

 

「すまないね、私もこんなことになるとは思わなかったのだよ。君はちゃんとネビーイームに届けよう」

 

「助かります」

 

転移が出来ず、グレイターキン改も中破とメキボスがネビーイームに戻るには別の手段が必要であり、それが可能なのは現段階では百鬼帝国しかおらず、メキボスはブライに協力を要請するしかなかった。

 

「構わないとも、だけど私も君にもお願いがあるのだよ」

 

ブライの言葉に来たかとメキボスは身構え、ナイフとフォークを机の上においてナプキンで口を拭った。

 

「急に話を振られても困りますね。私にはそこまでの決定権はないのですから」

 

ウェンドロでは無く、百鬼帝国の力を借りなければネビーイームに帰れないメキボスに話を振ってきた。断れない条件を作り無理難題を吹っかけれては困るとメキボスが予防線を張る。

 

「そう難しいものではない、私の配下にシャドウミラーという一団がいるのだよ。少々功を急ってとんでもない暴走をしてくれたが……彼らはとても優秀なのだよ」

 

功を焦って暴走したと聞いたメキボスは机を下から蹴り上げて机の上の料理を床にぶちまける。その音に外で待機していた鬼達が雪崩込んでくるがブライの下がれという命令でメキボスを睨みながらも引き返す。

 

「あんな奴らを抱え込んだら厄種だろうが、優秀だとしてもいらねえよ」

 

「ふっふ……歯に衣を着せぬその言いぶりの方が良い男だぞ。メキボス君」

 

「うるせえよ。あいつらのせいで状況が最悪の方に転がったんだぞ、そんな奴らを預かるなんてごめんだ」

 

ネビーイームに帰れないとしてもブライの要求はメキボスにとって聞き入れる事が出来無い内容だった。シャドウミラーの攻撃でアインストが出現し、そしてインベーダーが現れた……ラングレーでの戦いを悪い方向に転がしたシャドウミラーはメキボスからすれば憎い相手と言える。

 

「ではこうしよう、ネビーイームに預かってくれとは言わん。君達が見極める期間を設けて、その上で協力するかどうかを考えて欲しい」

 

「……後から撃つような相手の何を見極めろと言うんだ? 冗談きついぜ」

 

「その件に関しては龍王鬼が制裁を加えに行っている、それ相応の罰は背負ってもらうさ。返答はすぐでなくても構わないが「YESと言わないと俺をネビーイームに帰さないってか?」……ふっふ、その通り。君は人質にはならないと言うのは分かっている、断られると処分しなければならないのでね、出来れば頷いてくれると私としても嬉しいよ。今はとりあえずゲッターの攻撃で音信不通と言う事にしておいてその間にしっかりと見極めて欲しい、勿論お礼はするさ」

 

机の上に弾かれて来たのは1枚の写真――それに目を通したメキボスは目を見開いた。

 

「ゲッターロボGだと……? この数は……量産機か」

 

ハンガーに固定されている数体のゲッターロボGはメキボスにとって信じられない物だった。

 

「その通り。それはゲッター炉心を搭載していない量産機だが……構造はゲッターロボGと同じ、完全なレプリカと言える。そしてそれを操縦出来るであろう特別なバイオロイドも用意し、シャドウミラーとの共闘も考えてくれるのならば炉心も搭載しよう。最悪それを持ち帰れば君達のゾヴォークでの地位も安泰だろう?」

 

「……少し考えさせてくれ」

 

「構わないとも。でも私も忙しくてね、2日は待とう。それ以上は待てないとだけ言っておこう」

 

地雷を見せ、妥協点も与え、そして喉から手が出る程に欲しいものを見せ付ける……断る事の出来ない案件に深い溜め息を吐きながらメキボスはブライが呼んだメイド服姿の鬼に連れられて客間へと足を向け、用意されていた贅を凝らした一室で不機嫌そうに横たわり目を閉じるのだった……。

 

 

 

 

ラングレー基地を強襲し戦況を最悪の物にしたヴィンデルを待ち構えていたのは怒りに満ちた龍王鬼であり、面を貸せと言う言葉に逆らう事もできず龍王鬼に連れ出されたヴィンデルは龍王鬼配下に囲まれ、逃げることの出来ない円形のリングで龍王鬼とタイマンをすることになっていた。

 

「うおらあ!!!」

 

龍王鬼の雄叫びと共に振るわれた拳をガードするが、人間の力で鬼の攻撃をガード出来るわけが無く、ボールのように弾き飛ばされ回りの鬼に受け止められ、再び龍王鬼の前に出されヴィンデルは再び殴り飛ばされる。

 

「……これ処刑じゃないの?」

 

声も無く、いやとっくの昔に意識を失っているヴィンデルを嬲っているようにしかレモンには見えず、隣に居る虎王鬼にそう尋ねる。

 

「けじめは大事よ、いらない被害を出してくれたしね。これに懲りたらもうあんな事はしないことね」

 

温厚で人道派だとしても鬼は鬼なのだ。厳しい縦社会で出来ており、龍王鬼の面子を潰したヴィンデルへ制裁を行わなければ自分の立ち位置も危うくなる……力とカリスマ性で統制されている龍王鬼配下の事を考えればけじめは必要であり、この処刑にも等しい処罰はヴィンデルのやった事を考えれば殺さないだけ十分に甘い処罰と言えるだろう。

 

「殺さないのは温情よね?」

 

「そうね、一応はそうなるわ。死んでなければ傷は治るしね、ほら、レモンも行くわよ」

 

これ以上は見ない方が良いと言外に言う虎王鬼に連れられ、レモンは生々しい打撃音に髪を引かれながらその場を後にする。

 

「治療よね?」

 

「治療ね」

 

「……なんで全部脱ぐの?」

 

「ここは女しか居ないから大丈夫よ?」

 

「……そういう問題じゃないんだけどなあ……」

 

虎王鬼に連れられて来た医務室に来たレモンだが、そこで全裸になるように指示され培養液に満たされたプールに身を沈めるように言われて不安そうな笑みを浮かべる。

 

「人間は水の中で呼吸できないんだけど」

 

「大丈夫鬼も出来ないわ、酸素を供給してくれるマスクをつけてプールに入ってね」

 

「入らないと駄目?」

 

「跡が残るわよ、それにあんな訳の分からない化物の思念波を受けてるんだから念には念を入れておきましょう」

 

空間の裂け目から零れ落ちたコールタールのような化物の思念により、レモンも錯乱状態に陥っていた。その事を心配してくれている虎王鬼にNOとも言えずレモンはプールの中に足を踏み入れた。

 

「……なんか思ってたのと違う」

 

「見た目よりさらさらしてるでしょ? 最初はぬるぬるしてたんだけどね、色々と改良したのよ、香りも良いでしょ?」

 

「……見た目と香りが合致しないけどね」

 

見た目は青紫の毒々しい色なのに香りは柑橘系の爽やかな物でレモンはなんとも言えない表情を浮かべ、虎王鬼は分かる分かると苦笑する。

 

「まぁゆっくりすると良いわ、プールの中に沈むと眠くなるから少し長めに寝ると良いわね。最近寝不足でしょ?」

 

「……大丈夫? 溺れ死なない?」

 

「大丈夫大丈夫、ほらマスクを付けて頭まで潜りなさいな。あたしはここで見てるから」

 

大丈夫と言われても水の中に潜って眠ると言う事に不安を抱くのは人間として当然の事だが、断れる雰囲気ではないと悟りレモンは口元にマスクを持って行き……一瞬手を止めた。

 

「アクセルは?」

 

「もう沈めてあるわ。ヴィンデルも後で沈めるし」

 

「その言い方だと死にそうで怖いわね……まぁ女は度胸って言うし、やるけど」

 

アクセルは意識不明で、ヴィンデルは物理的に意識不明にされてからに対してレモンは意識がある状態でだから2人よりも遥かに抵抗は強いが、ここまで来たら脅えている場合じゃないと水の中に頭まで勢い良く沈んだ。

 

(あら……)

 

プールの中は思ったよりも温かく、目を開いていても痛みは殆どない。リラックスした状態で自然な浮力を得て浮かぶ事が出来る、その上水が温かくまるで母親に抱き締められているような感覚があり、脅えるまもなくレモンの意識は闇の中に沈んだ。

 

「……さてと、レモンには悪いけど少し手を加えさせてもらうわよ」

 

何故レモンがヴィンデルに従がうのか……レモンは恩があると言っていたがそれ以上の何かがあると虎王鬼は感じていた、だから無理に理由をつけて培養液の中で眠らせ、レモンの状態を確認する事にした虎王鬼は絶句した。

 

「そう……そうだったのね……」

 

人に言うべきことではない、己の中で留めておくべき事実を知り、その事実がレモンがヴィンデルに協力している理由だと虎王鬼は理解し、レモンの優秀な頭脳ならばヴィンデルの進む道に破滅しかないと分かっている筈だ。それなのにレモンがヴィンデルに従う理由を理解した虎王鬼は培養液の設定をするコンソールに指を走らせた。

 

「友達だからね、これはあたしから貴女への贈り物よ」

 

虎王鬼の贈り物にレモンが気付くかは定かではない、虎王鬼もそれを口にするつもりはないからだ。ただレモンがそれに気づいた時、虎王鬼に感謝するのか、それとも憎むのか……だが虎王鬼の贈り物はレモンの閉ざされた道を開く物である事は間違いなく、友人を助けたいと思う虎王鬼の嘘偽りのない気持ちの現われなのだった……。

 

 

 

 

ラングレー基地から命からがら逃走に成功したハガネ、シロガネ、ヒリュウ改、クロガネの4隻は平常時とは比べ物にならない低速で航行を続けていた。

 

「……敵機の追撃はあるか?」

 

「ありません、今の所はアンノウン及び友軍の熱源は感知されていません、転移反応もありません」

 

この場でのアンノウンが示す言葉は百鬼獣、インスペクター、アインストのいずれかを差していた。ノイエDCは百鬼帝国に切り捨てられ壊滅し、残りの敵として明確にその姿を確認出来ているのがその3つの陣営のいずれかだった。

 

「……そうか、友軍機の反応もないか……ふー」

 

背もたれに背中を預け深い息を吐いたリーの顔には濃い疲労の浮かんでいる。ラングレー基地から逃走して5時間――リーは自身の身体に鞭を打って指揮を執り続けていたが、それすらも限界が近いのはブリッジクルーの誰の目から見ても明らかだった。

 

「リー艦長、少しお休みになられてはどうですか?」

 

「いや、まだだ。レフィーナ中佐が休息を終えるまでは私は休むわけにはいかん……今は友軍機の反応に細心の注意を払え」

 

「はい、救援「ではない、我々を処理しにウルブズが来る可能性を最大限に警戒せよと言っているのだ、最悪敵勢力と判断しても構わない」……リー艦長、それは考えすぎでは?」

 

5時間過ぎても現れない友軍に対してリーは敵勢力として考えても構わないと断言し、レーダーを確認していたクルーが考えすぎでは? と告げるがリーは沈鬱そうに首を左右に振った。

 

「プランタジネットが罠である事は我々も想定していた。だがそれでも少数の友軍は来ると思っていたがそれすらもない、上層部にとって我々は目の上の瘤だ。まともに戦闘できる機体が殆どない今――プランタジネットの失敗と共に轟沈された方が都合が良いと考える者がいてもおかしくはない」

 

L5戦役の英雄とされてるハガネ、ヒリュウ改、そしてそれと行動を共にするシロガネもまた今の上層部にとって都合のいい存在ではない、何か理由をつけて処分される可能性をリーは危惧していた。

 

「鬼は成り変りの技術を持つ、上層部に入れ知恵をする者がいないとは言い切れんのだ……今の我々の味方はこの場にいる4隻のみと思え」

 

リーの言葉を信じたくないという表情をしながらもリーの考えも考えも分かるのか、ブリッジクルーは沈鬱そうな表情で了解と小さく呟いた。

 

(……だが正直現状では轟沈は時間の問題だ。どこかで停泊し修理をしなければ……)

 

インスペクター、アインスト、シャドウミラー、百鬼帝国、インベーダーとの連戦でボロボロであり、ダイテツを始めとし、負傷者も多い……まともに部隊を運用出来ない今ハガネ達を潰そうと考える者は間違い無く居るとリーは考えていた。

 

「各艦に連絡を入れてくれ、進路について話し合いたい」

 

インスペクターが制圧していたので北米に友軍基地はなく、停泊出来るポイントも決して多くないがそれでも4隻が停泊出来るポイントはある……とにかく今はどこかに停泊する必要がある。しかしただ停泊するだけでは駄目だ、敵の襲撃に備える事が出来、動力を休ませる為に着水出来る場所となるとかなり限られるが、リーには候補があった。

 

『リー中佐、どうしましたかな?』

 

『敵の熱源を感知しましたか?』

 

『す、すいません、遅れました、どうかしましたか?』

 

ヒリュウ改のショーン、クロガネのリリー、それから少し遅れて臨時のブリッジクルーとして行動してくれているツグミがその姿を見せる。

 

「進路についてのご相談です、私はスペリオル湖を目指すべきだと考えているのですが如何でしょう?

 

現在地から決して近いわけではない、だがスペースノア級が停泊出来るポイントとなるとスペリオル湖しかないとリーは考えていた。

 

『スペリオル湖ですか……ふうむ……悪くないですな』

 

『問題はそこに向かうまでに敵機に補足されないかですが……クロガネにはまだ出撃可能な機体が残っています、偵察に向かってからというのはどうでしょうか?』

 

「感謝します、リリー中佐。疲弊しているのは私も承知ですが偵察隊を編成していただけますか?」

 

『構いません。すぐに出撃準備をして貰います、戻ってくるまでの間少しリー中佐も休んでください、酷い顔をしていますよ』

 

『ええ、その方が宜しいかと、これから忙しくなるのです。今の内に休んでいてください、肝心な時に倒れられては困りますからな』

 

「……そうですね、お言葉に甘えさせてもらいます」

 

ショーンとリリーの2人に休めと言われれば流石のリーも突っぱねる事が出来ず、少し休ませて貰うと口にしたその時だった。

 

『ちょっと待ってください! ダイテツ中佐とキョウスケ中尉のオペが終了したそうです! 予断は許されないですが一命は取り留めたそうです!!』

 

最も重傷だったダイテツとキョウスケの2人が命を取り留めたという報告は絶望の闇の中に居るリー達にとって、明るい一筋の光となるのだった……

 

 

 

 

ダイテツとキョウスケが一命を取り留めたという明るいニュースは包帯塗れや消毒液の匂いに塗れた武蔵達にとっても喜ばしいニュースだったが、喜んでもいられない。状況はこうしている間も変化し続け、その中でも最後に出現した異形のドラゴンに関しての緊急会議が行なわれていた。

 

『不進化態ッ!!! ここはてめえらの来る世界じゃねぇッ!!!!』

 

戦闘記録に残されていた武蔵の叫び声と一瞬だけ姿が確認された生物のようなゲッタードラゴンの映像を見て武蔵はうーんと唸る。

 

「覚えていないのか?」

 

「全然、全く覚えてないっすね……つうか、オイラ。俺とか言わないし、それにイントネーションもなんか違いますよ」

 

ギリアムの問いかけに武蔵は全然覚えてないと言って首を左右に振る。

 

「確かにあの一瞬の武蔵君はどこかおかしかった」

 

「声の感じも違っていたしな……」

 

武蔵である事は間違い無いのだが、どこか武蔵との違いがあった。言うならば……

 

「誰かが武蔵様を真似ているような……そんな感じが致しましたわ」

 

「確かに……私もそう感じた、ユーリアは」

 

「おかしな話だが、私もそう思ったな。ほかには?」

 

シャイン達の問いかけに話を聞いていたカチーナ達やマサキ達が手を上げる。それを見て武蔵は手にしていたマグカップを机の上においた。

 

「マジで? オイラ本当に何も覚えて無いんだけど……」

 

だが武蔵にその記憶は無く、目の前の映像を見ても首を傾げる事になる。だがストナーサンシャインを放つ前後の武蔵は全くの別人と言っても良かった。

 

『だが気になるのはそこではない、不進化態……あれがなんなのかだ』

 

生物のようなゲッタードラゴン――その目は憎悪で濁り、歪んでいた。生物でありながら無機物という印象を受ける謎の存在――「武蔵」が言う不進化態とはなんだったのかという疑惑が残る。

 

「龍虎王が目覚めた時に地下から現れた壊れたゲッターロボと関係しているって言うのはどうですか?」

 

「確かにその線が濃いが……確かクスハ達は龍虎王の言葉を聞いていたんだったな、なんと言っていたか思い出せるか?」

 

ギリアムの問いかけにクスハとブリットは頷き

 

「……進化の光に選ばれず、この地に残された者……皇帝に見初められなかった者達の骸と言ってました」

 

「そして俺達の使命は百邪を退けると共に今代の進化の使徒が誤った道へ進まんとした時、それを止める事だと」

 

骸……確かにあの異形のドラゴンに生気は無く、恨みと憎悪を感じさせる亡者のような印象があった。しかし進化を止めるという言葉がどういうことだ? とギリアム達やモニター越しのビアン達が首を傾げる中、武蔵だけは納得したように頷いた。

 

「多分あれだ。あのゲッター線の光の中でオイラ、早乙女研究所にいたんだよ、あのまま研究所の中にいたら……多分ゲッター線に取り込まれてたんじゃないかなあ……」

 

心地よい夢の中で眠りそうになっていたという武蔵の言葉に話を聞いていたギリアム達だったが、その顔は当然険しい物になる。

 

「ゲッター線は何を考えていると言うんだ……」

 

「本当にそれだぜ、ギリアム少佐。あのままだったら武蔵は中に乗ったまま繭になってたんだろ? 洒落になんないだろそれ」

 

無機物が繭を作る事が進化だというのならば、武蔵もまたそれに巻き込まれて共に繭になっていただろうし、皇帝とやらに選ばれなければあの時空間の裂け目から顔を出した異形のゲッタードラゴンか、地下に出現した亡者のようなゲッターロボに成り果てていたと可能性もある。

 

『ゲッター線に我々は助けられた、だが……その本質を我々は理解しなければならないのかもしれないな……』

 

意志を持つエネルギー……ゲッター線。今まで幾重となく助けられてきたが、ラングレー基地での戦いを経てビアン達の中にゲッター線とは何なのか、そして何をしようとしてるのかと言う疑問が生まれるのだった……。

 

 

第187話  敗走 その1へ続く

 

 




と言う訳で今回の話はここで終わりになります。全員ボロボロで動ける機体も少ないという状態でゲッター線とはという疑問にぶち当たったビアン博士達ですね、次回は今回よりも更に掘り下げて戦いの後の話を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします。 


PS

今回の迎撃戦は割りと簡単だったので50万いけました。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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