進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第31話 VSゲッターロボ その1

第31話 VSゲッターロボ その1

 

連邦軍の本拠地であるジュネーブ。そこには現在連邦の司令と呼ばれる者達が集まっていた……その議題は地球圏に現れたネビーイームと呼ばれる巨大な移動要塞の出現による会議である……極東支部から呼び出されたレイカーはそうであると思っていた。だが蓋を開けてみれば、その会議の内容は彼の予想を大きく上回っていた。まず、今回の地球圏防衛会議の主催者は反EOTIであり、そして異星人への降伏を選択したアルバート・グレイを初めとしたビアンの主張を一切聞き入れなかった者達で構成されていた。その段階で抗戦派のレイカーとノーマンの立ち位置は危うい物となっていた。

 

「それから、コロニー統合府のブライアン・ミッドクリッド大統領もジュネーブに来ている」

 

「ほう、あの名政治家が……」

 

味方とは言い切れない、だがEOTI審議会による議論の一極化は防いでくれるかもしれないと言う期待をノーマンもレイカーも抱いた。

 

「統合軍によって拉致され、ヒリュウ改によって救助されたミッドクリッド大統領ならば、われわれの目的に理解を示してくれるかもしれない」

 

だが完全に理解し、自分達に味方してくれるとは言い切れないな……レイカーは心の中でそう呟き、ノーマンと共に会議室へと足を向けた。

 

「極東支部とダイテツ・ミナセ中佐にはゲッターロボとムサシ・トモエの捕縛を命じていたはずだが、何故逃亡を許したのかね?」

 

だがそこでノーマンとレイカーを待っていたのは、ムサシを逃がした事に対するダイテツを責める話だった。

 

「ムサシは決して敵ではなく、恐竜帝国と言う敵勢力と戦ってくれた善意の民間人です。彼を捕縛する理由は何ですか?」

 

「……捕縛しろと言っているんだ! お前達のような軍人が政治に口を挟むんじゃない」

 

「それはおかしいですな大使、何故ムサシと言う民間人を捕らえる事が政治に関係するのですか?」

 

ノーマンの言葉にアルバートは眉を顰める、理由は判らないがムサシを捕らえる事が異星人との交渉に関係しているのかもしれない。

 

「もしや、彼を人身御供に出すことが交渉の条件とでも言うのですか?」

 

「う、うるさいうるさい! 戦う事しか考えることの出来ない野蛮人が何を言う!」

 

急に叫びだすアルバートにレイカーは確信した。ムサシとゲッターロボには自分達の知らない秘密があり、それがアルバートが交渉出来ると思い込んでいる理由なのだと……

 

「それよりもだ! ムサシ・トモエを指名手配にし、生かしたまま捕らえるんだッ!!」

 

「それはおかしくないかい? 僕は異星人に対する対策会議と聞いてきているんだが、何故そこに民間人が関係してくるのかな?」

 

レイカーとノーマンに怒鳴り続けていたアルバートがブライアンの言葉で黙り込んだ。

 

「大使に聞きましょう、何故そこまでムサシ・トモエに拘るのですか? それは異星人会議よりも大事なことなのですか?」

 

「……詳しくはお話できませんが、彼を捕える事が大事なのです」

 

アルバートの発言にブライアンは明らかな失望の色を瞳に浮かべる。罪を犯したわけでもない、それなのにまるで犯罪者の様にムサシを扱おうとするアルバート。しかも詳しくは説明出来ないとこればブライアンが失望するのも当然だ

 

「では僕はコロニー統合府大統領として、ムサシ君だったか、彼を罪人とすることに反対させて貰うよ」

 

「……ムサシを捕える事が地球を救う事になるのだ」

 

「何故かな? 彼はただの善意の民間人と言うじゃないか、それがどうして地球存続に関係するのかな?」

 

最もな疑問にアルバートは呻くと同時に黙り込む。そして口を開こうとするが、言葉に出来ず口を閉じたり、開いたりするだけとなる。

 

「ムサシ君をどうこうするよりも、今はまず異星人対策をどうするか、それをはっきりさせてくれよ。これは地球圏防衛会議であって、ただ1人の民間人の罪状をでっち上げるための会議ではないんだろう?」

 

ブライアンの責めるような視線と言葉にアルバートは耐え切れず目を逸らす、その態度を見れば誰もが後ろめたい取引なのだというのは明らかであった。

 

「さてと、じゃあ改めて地球圏防衛会議を始めようじゃないか」

 

ブライアンが仕切る事で改めて会議が始まった。だがブライアンに丸め込まれた事を自分に逆らえないレイカーとノーマンで発散するかのように、無理な要求を突きつけるアルバートにレイカーもノーマンも精神的に疲弊しきる事となるのだった……

 

 

 

 

 

ゲッターロボがバン大佐と合流するまでの4日間、武蔵とビアンは決して寄り道をしていた訳ではない。キラーホエールに乗って退避させていたゲッターロボと炉心の設計図を持つ科学者達に声を掛け、バン大佐の元に来るようにと伝えて回っていたのだ。正直半壊したゲッターロボでは厳しい所もあった、それでもビアン1人でゲッター線を実用レベルにするのは不可能であり、ビアンが認めた科学者だからこそ呼び寄せることにした

 

「来た来た来たーーーーーーッ! おい! ゲッター線の定着率はッ!?」

 

「70……80……85%ッ! 行けーッ! そのまま行ってくれーーーーッ!!!」

 

「ヒャッハーーーーーッ!!!! 俺達は新しい時代を作るんだーッ!!!」

 

ただしアードラー同様少し……いや性格に難はあるが、科学者として研究者としては優秀なのだ

 

「はははははーーーーッ!! ははッ!! はーッはははーーーーッ!!!」

 

その中に赤いコートを着た髭のダンディが混じっているが、決して気にはしてはいけない。研究とは時に正気を失わせるのだ、そしてゲッター線照射装置が停止し、ゲッター線が照射されていた金属には確かにゲッター線の幾何学模様が浮かんでいた

 

「出来た! 出来たぞッ! ゲッター合金だッ!!」

 

「イエーーーーッ! これで炉心が作れますね! ビアン博士!」

 

「いやいや! まずはゲッターの装甲の補修だろッ!!」

 

「武器! でかくて、重い、ハンマーーーッ!」

 

「馬鹿だなあ、男ならドリルしかねえだろう?」

 

「ハンマードリルだぁッ!」

 

「ハンマードリル……くそ、お前馬鹿じゃなくて、天才だったのかよ……」

 

なんか物凄い馬鹿な話をしている研究者がいるが、うん、大丈夫。多分大丈夫、まだ引き返せる可能性はある

 

「お前達は何も判ってないな、ドリルパイルバンカーこそが至高だッ!」

 

「いや、レールガンだ。レールガンをゲッター合金で実現するんだぁッ! スペースノア級に搭載できるレールガンこそ最強ーーーッ!」

 

「「「黙ってろ、ロマン武器馬鹿共ッ!!」」」

 

ロマン武器馬鹿研究者の話を聞いて、良いなそれと呟いているビアンを見て周りの研究者は信じられない物を見るような顔をしてビアンのほうに向き直る

 

「「「ビアン博士ッ!?」」」

 

「い、いや、すぐに作るというわけではなくてだな……あ、あくまで最終的。最終的なことを言っているんだ

 

そんな感じで連日連夜、バン大佐が管理する地下基地はどこぞの原住民の宴状態だった。しかもそこにビアンが混じっているので止める事も出来ず、武蔵達はそれを見て苦笑いを浮かべる。

 

「バンさん、ビアンさんって昔からあんな事を?」

 

「い、いや……きっと徹夜続きでどこかおかしくなってしまったのだろう」

 

ゲッター合金の周りを踊り狂う学者(ビアン含む)は狂乱状態と言っても良いだろう。暫く呆れた様子で見つめていた武蔵とバンだが、1人、また1人と力尽きたのかその場で倒れて動かなくなる

 

「ぶつぶつ……ゲッター合金……柔軟……硬度……」

 

1人だけぶつぶつと呟いているビアン、超集中に入っているのかバンの言葉も武蔵の言葉も届かない様子だ

 

「すまないな、武蔵」

 

「いえいえ、大丈夫ですよー」

 

力尽きた科学者達を背負い、仮眠室へと運ぶバンと武蔵。これがここ数日のバンと武蔵の日課となっていた、ビアンは力尽きるまで研究し、ゲッターロボの足元で死んだように眠るので風邪を引かないように布団を運ぶのも武蔵の仕事だ

 

「他の兵士がここまで嫌がるとは……な」

 

「はは、幽霊を見たでしたっけ? そんなことありえないんですけどねえ」

 

最初は巡回の兵士がビアンに布団を被せ、力尽きた科学者を運んでいた。だが突然それを嫌だと言い始めたのだ、その理由は幽霊を見たという余りにも情けない言葉。その姿に、バンは自分と武蔵でやると言い出したのは仕方の無いことだ

 

「戦争をしているのだ、精神の弱い者は幻覚を見る」

 

「そうなのかもしれないですね、それか外に出れないストレスですかね」

 

「そうだとしてもだ、我等は為さねばならぬ使命がある。そのような弱さは許されないのだ」

 

力強いバンの言葉に武蔵は笑う、確かに厳しくはある。だがその厳しさは武蔵にとって心地よく、信用出来ると思わせる。そしてバンからしても、武蔵の素直な性格は素直に好感が持てる物だった。それほど日にちは過ぎていないが、武蔵は既にこの基地での信用を勝ち取っていた

 

「ああ、それと明朝クロガネが到着する。申し訳ないが、出迎えを頼む」

 

バンの頼みを快く引きうけ、武蔵はビアンに出す為のインスタントコーヒーを準備する為に格納庫を後にする。そして明朝、朝靄に隠れながら1隻の戦艦が降下してしてくる……それはDCの旗艦にして3機めのスペースノア級戦闘母艦……巨大なドリルを持つ漆黒の戦艦「クロガネ」は、リオンやガーリオンに護衛されながら、砂漠に隠されたバンの拠点である隠し基地にゆっくりと収容される。

 

「エルザムさん!」

 

クロガネから降りたエルザムの耳に武蔵の声が飛び込んでくる。声の聞えた方に視線を向けると武蔵が手を振っているのが見え、エルザムも手を振り返す。確かに敵対し合う事になったが、それは意見の違いであり、ビアンも武蔵も、そしてエルザムも願いは地球を護ると言うことで共通している。それにアイドネウス島での恐竜帝国との決戦では共闘したこともあり、エルザムと武蔵の間に蟠りは無かった。

 

「こっちです、ビアンさんが呼んでます」

 

武蔵に案内されエルザムはビアンの元へと向かう、そこは予想に反し会議室などではなく、地下に隠されているバンの拠点の中でも最下層に位置する特殊ドッグだった。

 

「ゲッターの修理は済んでいるようだな」

 

「はい、やっと完全に修理が済んだみたいです」

 

DCを蹴散らし、恐竜帝国と戦った時でも万全ではなかったと言うのだからゲッターのパワーにはエルザムとしても驚かされる。ゲッターの全身を確認しながら階段を下りていくと人だかりが出来ているのにエルザムは気付いた。

 

「武蔵君、あれはなにをやっているんだい?」

 

置いてあるのはPTやAMのシュミレーターではない、もっと大型の戦闘機などのシュミレーターだ。それをわざわざ引っ張り出して何をしているのかをエルザムが尋ねる。するとそのタイミングでシュミレーターが開き、バンが姿を見せた

 

「やったあ! バン大佐がゲットマシンのシュミレーターをクリアしたぞッ!!!」

 

「おめでとうございます! 大佐ッ!!!」

 

ゲッターロボのシュミレーターと聞いてエルザムは驚いた。思わず武蔵に視線を向けると、武蔵は頬を掻きながら理由を説明してくれた。

 

「バットと戦って思ったんですけど、やっぱり単独操縦には限界があって、乗れそうなパイロットを探すためにシュミレーターを作って貰ったんですよ」

 

その言葉になるほどとエルザムは頷く、元々ゲッターロボは3人乗り、それを1人で動かすには限界があるのは当然。だが、前はパイロットを探している時間は無かったが、表立って動かない今パイロットの選出をするのは当然だ。

 

「武蔵……これで……む、少佐か。久しぶりだな」

 

「ええ、お久しぶりです。バン大佐」

 

バンと握手を交わすエルザム。アイドネウス島で会ったきりだが、元気そうで何よりだと互いに挨拶をかわす

 

「おめでとうございます、ゲットマシンを乗りこなせたんですね」

 

「ああ。何度戻して、気絶したかは忘れたが……イーグル号か、あれは何とか操れるようになった」

 

「それでも凄いと思いますよ、大佐」

 

いつ武蔵とビアンがバンと合流したかは判らないが、時間的な余裕は数日あったかどうかだろう。その短時間でゲットマシンに乗れるようになったバンを素直にエルザムは賞賛した。あの悪魔のような乗り心地はエルザムにとっても一種のトラウマになっていたからだ……

 

「だがまだまだと言う所だ。合体シミュレーターと戦闘シミュレーターをクリアしないことにはな……」

 

ゲットマシンを乗りこなす事が出来てもゲッターロボに乗れないのでは意味は無い。その目に強い光が宿っているのを見て、エルザムも武蔵にシュミレーターを使ってみても良いかと尋ねる。

 

「武蔵君、ビアン博士への挨拶を済ませたら私も乗って見てもいいかな?」

 

「こちらこそお願いします。エルザムさんはジャガーを飛ばせましたから、練習さえすれば大丈夫だと思いますよ」

 

今すぐにでもシュミレーターを試したい気持ちはあるが、まずはビアンに挨拶するべきだと判断し、武蔵を促してビアンの元へと案内して貰ったエルザムなのだが……その場所の光景を見て驚かされた。ゲッターロボの足元のコンピューターの近くでうつ伏せで倒れているビアン。その姿を見て叫ばなかった自分をエルザムは褒めてやりたいと思っただろう、だが武蔵は仕方ないという様子で肩を竦めてビアンに近寄る。

 

「あーあ、またこんな所で寝てる。ビアンさん、ビアンさん。こんな所で寝ると風邪引きますよ?」

 

「ん、んむ……ああ、すまないな」

 

武蔵に肩を揺さぶられ目を覚ますビアン。武蔵はそんなビアンに肩を貸して椅子の上に座らせ、その手にコーヒーのカップを持たせる。カップの中のコーヒーを啜り頭が回転し始めたらしく、向かい合って座っている私にこの時初めて気付いたようだ。

 

「少佐か、よく合流してくれた」

 

「いえ、ビアン総帥も……」

 

お元気そうで何よりと言うことは出来なかった。今の今まで死人のように倒れて寝ていたのだ、お元気そうとはとてもだが言える訳が無い。

 

「ふふふ、いや、すまないな。研究に没頭しすぎてあの様だ……だがこれでゲッターロボは万全と言える、後はパイロットを3人揃えるだけだ」

 

異星人と戦うにはゲッターロボを早く万全にするべきとビアンは考えているようだ。確かにあの戦闘力は魅力だ、不完全な1人乗りでもあれだけの力を発揮するゲッターロボ。敵戦力が未知数なので戦力を整えるのは最優先するのは当然だ

 

「それで少佐。リリー中佐とは連絡はついたのかね?」

 

「はい、タクラマカン砂漠に降下する予定と聞いております。ただ、問題はハガネとヒリュウ改もその周辺にいるということです」

 

エルザムとビアンからすればリリー・ユンカースという人物には生きて欲しいと思っている。ハガネやヒリュウ改は連邦の中でもかなり特殊な立ち位置にいる、交渉の余地はあるが……

 

「我が友ゼンガーも同行しているので、最悪のケースは避けられると思いますが……」

 

「出来る事ならば応援を送り込みたい所だな」

 

降下した直後と言うのは機体にもパイロットにも強い負担をかける。そう言う戦場では普段ありえないジャイアントキリングが起きかねない……だがバンの部隊もエルザムの部隊も動かすことは出来ない。連邦からすれば、どちらも敵だ。そして名目上はアードラーと合流する為に降下してきている以上、リオンやガーリオンで出撃すればそのままアードラー派に合流することになる。バンの部隊、エルザムの部隊と言う事がバレれば、アードラーの事だ。クロガネがどこにいるのか? 何故バン大佐が合流しないのかと追求し始めるだろう。それはビアンにもエルザムにも避けたい事態だ……

 

「オイラが行きましょうか? ゲッターなら支援して撤退してくるのも出来ると思うんですよ」

 

「……武蔵君。頼めるかね?」

 

ハガネに乗っていた事もあり、出撃することは武蔵にとってもリスクはある。だがそれでも今自由に動けるのは武蔵だけだった、ビアンは苦渋の決断で武蔵に出撃要請をすることにした。

 

「任せてくださいよ! あ、でもその前にそのえーっとリリーって人ですか? その人が乗ってる戦艦とかゼンガーって人の機体を教えてくれますか?」

 

「勿論だ。それと、可能ならばゼンガーに通信機を渡して欲しい」

 

「了解です! 丈夫で長持ちの武蔵さんに任せてください!」

 

そしてタクラマカン砂漠でハガネ、ヒリュウ改がDCと統合軍の残兵と戦闘を始めた頃。ゲッターロボはタクラマカン砂漠に向かって出撃するのだった……

 

 

 

 

ジュネーブの護衛の任務を与えられているハガネとヒリュウはタクラマカン砂漠を経由して、ジュネーブへと向かう進路を取っていた。だが統合軍司令であるマイヤーを倒したヒリュウ改と、ハガネがたった2艦で動いている。それはDCや統合軍にしても撃墜する最大のチャンスである。敵の伏兵が隠れている事を考慮し、マサキとリューネの2人が偵察へと出た。DC総帥の娘であるリューネ・ゾルダークと、アイドネウス島でメカザウルスと戦ったサイバスターの存在は決して無碍に出来るものではなく、2人の計画通り統合軍の敗残兵を誘き出す事に成功した。最初こそ、先行していたサイバスターとヴァルシオーネが囲まれる結果となったが、ハガネとヒリュウ改が合流したことにより、統合軍との戦力差は広がり始めていた。だがタクラマカン砂漠は統合軍の降下ポイントになっていたこともあり、リリーが率いる統合軍の部隊もまた、ハガネとヒリュウ改が統合軍と戦う場所に現れた

 

「ねえ、キョウスケ……あれってやっぱり」

 

ペレグリンやガーリオンと言う統合軍の主力の中に佇む、黒いグルンガストを見て、ATX計画で開発された白銀の天使と言うべきPT「ヴァイスリッター」のパイロットである「エクセレン・ブロウニング」がパートナーであるキョウスケ・ナンブにそう声を掛ける

 

「ああ……間違いない」

 

カブトムシを連想させるPT「アルトアイゼン」に乗るキョウスケも、黒いグルンガスト……グルンガスト零式を見てその表情を強張らせる。その機体の強さ、そしてそのパイロットである「ゼンガー・ゾンボルト」の強さを知っているからだ。そしてグルンガスト零式から広域通信が放たれる

 

「ハガネ、そしてヒリュウ改の戦士達に告ぐッ!! 我が名はゼンガー! ゼンガー・ゾンボルト! 悪を断つ剣なりッ!! ここを通らんとする者は、何人であろうとも、零式斬艦刀で一刀両断にしてくれるッ!!!」

 

零式の象徴である「零式斬艦刀」を振りかざし、そう叫ぶグルンガスト零式の圧力は凄まじく、思わずR-1にのっていたリュウセイが叫んだ。

 

「な……なんだ、あいつ!? 馬鹿でかい剣を持ちやがって……グルンガストの新型か!?」

 

ハガネにはグルンガストがあることもあり、見たことも無いグルンガストの姿に新型と勘違いする、リュウセイ。だがそれはグルンガストを駆るイルムによって違うと告げられる

 

「いや、あれは剣撃戦闘能力を特化させた試作型……」

 

「ゼンガー・ゾンボルト少佐のグルンガスト零式よ」

 

元トロイエ隊のレオナ・ガーシュタインがイルムの言葉に付け加えて告げた。ゼンガー・ゾンボルト、元ATXチームのリーダーであり、DCへと寝返ったパイロットの名前だったからだ。

 

「そう、私達ATXチームの元ボスよ」

 

自分達のリーダーが再び敵として立ちふさがった。その事に普段はお調子者で明るいエクセレンも悲しそうな様子でヴァイスリッターを零式へと向けた

 

「久々の再会……ってとこね。1人で私達を止めようとするなんて相変わらずみたいね」

 

多勢に無勢、この状況で1人で残ることの危険性は誰が見ても明らかだ。それこそ死ぬ為に残ったと思われても仕方ない、そんなゼンガーを見てキョウスケとエクセレント同じくATXチームの「ブルックリン・ラックフィールド」……ブリットが同じく広域通信で叫ぶ

 

「ゼンガー隊長! 自分達が戦わなければならない理由はもう無いはずですッ!」

 

DCもコロニー統合軍も既に壊滅寸前、今は人間同士で戦っている場合ではないと説得を試みる。だがゼンガーの返答は拒絶だった。

 

「ブルックリン……戦士たる者、ひとたび戦場に身を置けば……眼前の敵を倒す事だけに専念しろと教えたはずだッ!!!」

 

ゼンガーの凄まじい一喝が広がる、それはPTに乗っていても威圧されるほどの凄まじい力が込められた言葉だった。

 

「しかし、自分たちの共通の敵はエアロゲイターの筈です! 今こそ力を合わせるときではないのですか!!」

 

しかしブリットも宇宙での統合軍との戦いを切り抜けた猛者だ。気の弱い人間ならば威圧され、動けなくなる一喝を受けてもなお、自分達の隊長であるゼンガーの説得を試みる

 

「問答無用ッ! 己の信ずる道ならば、己の力で押し通って見せろッ!!!」

 

ゼンガーの力強い一喝にブリットは息を呑み、同じ通信を聞いていたエクセレンがブリットへ通信を繋げる

 

「……ブリット君。ああなったら、ボスはテコでも動かないのは判っているでしょ?」

 

「で、でも!」

 

それでもゼンガーと戦う事を拒むブリット。尊敬しているゼンガーと戦う事に迷いが生まれるのは当然だが、ここは戦場だ。戦う、戦わないという話をしている余裕はない

 

「そこまでだ、ブリット。ゼンガー・ゾンボルトとの決着は俺がこの手でつける」

 

アルトアイゼンを象徴する右腕の杭打ち機のリボルビングステークを零式に向ける

 

「良い度胸だ。来い! キョウスケ・ナンブッ!」

 

「ゼンガー……勝負だッ!!」

 

ゼンガーに対して静かだが、凄まじい闘気がゼンガーの気迫とぶつかり、2人の気迫で空気が震えたと思った瞬間。凄まじい振動が周囲に響く

 

「な、なんだ!? 何が起こって……!?」

 

地震ではない、地震だったとしてもPTがここまで揺れるわけが無い、まるで巨大な何かが砂漠を掘り進んでいるような……そんな衝撃が続く、ランドリオンを初めとした陸戦型のAM、PTがバランスを崩す中、統合軍、そしてハガネとヒリュウ改の間から、高速回転するドリルが姿を見せ、ドリルから腕、そして頭部と徐々に砂漠から巨大な特機が姿を現した。

 

「な、なんだありゃ!? DCの新型か!」

 

「あんな特機があるなんてッ!」

 

ヒリュウ改の面子は見たことも無い特機に驚愕し、そしてハガネのクルーはヒリュウ改のクルーに広がった動揺とは全く異なる動揺が広がった……

 

「ゲッターロボ……」

 

「武蔵! なんでそっち側にいるんだッ!?」

 

砂漠から完全に姿を現したゲッター2はその左腕のドリルの切っ先をハガネとヒリュウ改へと向ける。恐竜帝国との戦いでは味方だった武蔵が敵として立ちふさがる……それはハガネのクルーに凄まじい衝撃を与えるのだった……

 

 

 

 

グルンガスト零式のコックピットでゼンガーは動揺した。突如地面から現れた白銀の特機。それが自分の隣に立ち、武器であろうドリルをハガネとヒリュウ改に向ける姿に動揺するなと言うのが無理であった。

 

「なんで……か。悪いな、リュウセイ。オイラにもオイラの都合ってもんがある、ここでこの人に倒れられる訳には行かないんだよ。エルザムさんの頼みでもあるしな」

 

白銀の特機から告げられた親友でもあるエルザムの名に、僅かにゼンガーは平常心を取り戻した。

 

「お前は?」

 

「ゼンガーさんで良いのかい? 黒いグルンガストってしか聞いてないから状況を見てたんだが……それらしいのはあんたしかないからな。ゼンガーさんであってるかい?」

 

逆にそう尋ねられゼンガーはそうだと返事を返す。エルザムの名前を告げられ、そして親友からの頼みで応援に来たという見知らぬ特機……だが少なくともハガネとは何らかの因縁があるようだ。

 

「そうか、お前は敗残兵についたのか? 武蔵」

 

「いやいや、そういう訳じゃないぜイングラムさん。たださっきも言った通り、オイラにはオイラの都合があるって事だ」

 

万力のような腕を動かし、器用に肩を竦ませるような動きをする特機を見て、決死の覚悟で残ったゼンガーは邪魔をされたと怒鳴るべきなのかと僅かに悩み、そして気付いた。白銀の特機の背後に落ちているコンテナの姿に……まるで回収しろと言わんばかりのそれを、ゼンガーは僅かに悩みながら拾い上げ、補給が出来ず空になっているアーマーブレイカーのコンテナを収容した。

 

「ふん、何か判らんが、味方なら協力しろ! 俺に協力するならば「あ、オイラはそう言うのじゃないから。ただゼンガーさんっていう人とリリーって人を助けてくれって言われて来ただけだから」

 

味方だと勘違いしたジーデルの言葉を両断する武蔵。能天気とも言える口調で告げられる言葉に両軍に動揺が広がる……

 

「じゃあ、DCについたわけじゃないのか?」

 

リュウセイがそうであってくれと言う感じで武蔵にへと問いかける。

 

「あったりめえだ。オイラはオイラの考えで動いているし、DCとか、統合軍とかは関係ない……っと」

 

会話を遮るように放たれるランドリオンからのミサイル。ゲッター2はそれを残像を残しながら回避する

 

「速い……! 特機クラスであの機動力だと」

 

「敵じゃないけど……味方でもないって感じよね、あの口ぶりだと……」

 

ゲッター2の機動力を知っているハガネは動揺することは無い、だが初めてゲッターを見るキョウスケやヒリュウ改のクルーには驚愕が広がる。

 

「ったく、落ち着いて話も出来ねえなぁ……死にたくなければ脱出しなッ!!」

 

ゲッター2の左腕のドリルが高速で回転し、砂漠の砂を膨大に巻き上げ、辺りの視界はどんどん悪くなっている。だがそれだけでは終わらない、砂漠と言う広大な面積に広がる凄まじい風は砂をはらみ叩き付けられるその音はまるで巨大な台風のようだ。

 

「ドリル……ハリケェェェンッ!!!」

 

雄叫びと共に放たれた左腕の突き、そして突き出されたドリルから放たれた突風がランドリオンを巻き上げ、吹き飛ばしていく……それだけに収まらず、砂漠を抉り、上空の雲を吹き飛ばしてもなお周囲を荒らしている突風。それがたった1体の特機によって与えられた被害とは信じられなかった……

 

「マジかよ……」

 

「し、信じられない……なんていうパワーだ」

 

「……ちょっと、キョウスケ。ボスに加えて、あの特機ってちょっと洒落にならないわよ」

 

自然現象を操ると言っても過言ではないパワーを持つ、敵か味方かもわからないゲッターの存在はヒリュウ改のクルーに凄まじい衝撃を与える。

 

「まぁなんだ、オイラにもオイラの都合がある。ダイテツさん、物は相談なんだが……ここは何も見なかったことにして、通り抜けてくれないか? もし先に行ってくれるならば、あの統合軍って奴はオイラが食い止めてもいい、あ、でもゼンガーって人は見逃して貰う」

 

「な! お前何を言っている!」

 

武蔵から提案される案。確かにここに留まるよりも、先に進む方がよっぽど有意義だろう……だがいつの間にか自分まで見逃せという話になっているとゼンガーが声を荒げる。

 

「ゼンガーさん、オイラにも、あんたにもやるべき事があるだろ? それを優先するべきじゃないのかい?」

 

武蔵の言葉にゼンガーも言葉に詰まる……どうするべきか、ここでキョウスケたちと戦うのか、それともエルザムに託された物を確認するのか……何が正しいのか、ゼンガーは零式の操縦桿を握り締め己に問う。そして出した決断は1つ

 

「悪いが俺は引かん」

 

「そうか、ならオイラは何も言わない」

 

一度は萎え掛けたゼンガーの闘気が増す。その姿を見て自分は余計な事をしたなと武蔵は思い、何も言わずドリルを構えさせる。それはハガネ、ヒリュウ改、そしてジーデルが乗るライノセラスのこの場にいる全ての戦艦を狙える立ち位置だった。武蔵はどんな返答であれ対応できる準備をしていた。そして武蔵に提案された案を呑むべきかどうかとダイテツは僅かに悩んだ。

 

(武蔵君は決して敵ではない)

 

恐竜帝国との戦いでも、DCとの戦いでも武蔵の願いは一貫して地球を護る事だ。たとえジュネーブの連邦の本部の命令だったとしても、武蔵を捕える事にダイテツを初めとしたハガネのクルーには迷いがあった。レイカーもまたその命令に従うつもりはなく、極秘でかくまうつもりだったが、それを告げることが出来ないタイミングでもあり、ダイテツは迷い、行動が一手遅れた。だがその迷いが、行動の遅れが戦場の流れを変える。

 

「ゼンガーの味方をするって言うなら、お前も敵だろがッ! やれ! タスク!!」

 

「い、良いのかな……ギガワイドブラスターッ!!!」

 

赤いゲシュペンストの命令に従い、同じく赤い特機の胸部が変形し、巨大なビームを放つ。それは殆ど独断に近い行動だが、武蔵はそれをハガネとヒリュウ改が自分と戦う事を決めたと判断した。

 

「まぁ無理な提案だよな。ここまで来るまでに連邦の兵士に、国家反逆罪とかどうとか言われてたけど……やっぱりダイテツさん達にもそういう命令は出てるんだな……」

 

悲しそうな声で告げる武蔵。その声にダイテツは悩んでいる場合ではなかったと己の判断を悔いた。違うと、告げるべきだったのだ。

 

(ここまで読んでいたのか、ビアン・ゾルダークッ!)

 

武蔵が告げたのはビアンが危惧した、DCとの戦いの後で武蔵に降りかかるであろうと言った物だった。

 

「少佐! そんな命令が出てたのか!?」

 

「聞いてないぜ、少佐」

 

「……お前達に告げるべきかは悩んだ上で、艦長と決めた事だ、それに武蔵とそんなに直ぐ出会うとは思っていなかったんだ」

 

そしてイングラムが遠まわしに捕獲命令が出ている事を認めた、それは広域通信で武蔵の耳にも入る。

 

「ダイテツさん達の立場を悪くするわけにもいかねえし、オイラにもオイラのやるべき事がある。悪いけど、少しの間相手をしてもらうぜッ!!!」

 

武蔵の声に迷いは無い、殺気も敵意も無い。だが全てを飲み込むような凄まじい武蔵の闘志がハガネ、ヒリュウ改、そしてDCと統合軍の敗残兵全てに向けられるのだった……

 

第32話 VSゲッターロボ その2へ続く

 

 




グルンガスト零式&ゲッターロボの組み合わせが、ハガネとヒリュウ改の前に立ち塞がり、そして武蔵にはヒリュウ改、ハガネ、敗残兵と言う3つの組み合わせが敵と言うことになります。この話のゲッターロボはスパロボでよくある黄色ユニットで感じですね、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

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