第189話 愛する者の為に その1
オペレーション・プランタジネットの前に積み込んできた物資は膨大だ。ビアンも極秘裏に集めた大量の物資の事を考えればプランタジネットに失敗したとしても十分に立て直せるだけの物資の筈だった。
「……まだ見積もりが甘かったか……」
『いえ、これに関してはビアン博士が悪いわけではありません。これだけの物資を用意してくれた事に我々は感謝しています』
「いや、私は万全を期したつもりだったのだ……まだ百鬼獣の脅威を見誤っていた……」
十分だった筈の物資はまるで足りず、損傷を受けている機体の修理すらままならない状況だった。
『それを責める事は私達には出来ません。今の我々は、ビアン博士が用意してくれた物資に頼っている状況なのですから……』
テスラ研やアルビノ基地と、ダイテツ派の軍人が居る拠点で僅かな物資を得る事は出来たが、万全とは言えないものであった。これから大作戦に挑む軍に与えるには余りにも足りない物資……。
『補給の段階から百鬼帝国の策は始動していた……ここまでの事が出来るとなればやはり上層部は……』
「その殆どが鬼に成り代わっているだろう……」
オペレーション・プランタジネットの失敗は決して無駄ではなかった。重傷者も多く、機体の大半が大破している状況で無駄ではなかったと言うのは無理があると思うかもしれない、だが百鬼帝国の拠点、そして上層部にどれだけ鬼の手が広がっているかと言う事を知る事が出来たのは、大きな利点と言えた。
「後はここからどう巻き返すかだ」
『厳しい戦いになるのは間違いないですね』
『だがやらねばならない……くじけている時間は我々にない』
『少しずつでもいい、私達は前に進まなければならない。ダイテツ中佐ならば、この状況でも決して諦めない……ほんの僅かな勝機でも、それを掴む為に全力を尽くした筈だ』
「その通りだ。私達にはくじけている時間も絶望している時間もない、普通ならばここで攻めに出ることはない。だが……あえて打って出るしかあるまい」
テツヤの言葉に続き、ビアンは強い決意がこめられた口調でそう告げた。
『私達から攻め込むのですか? どこへ? どうやって……?』
『ビアン博士達の演説で軍はいま混乱状態ですが……百鬼帝国やインスペクターによる被害が甚大な物になる危険性があるのですよ』
ビアン、シャイン、武蔵の演説は高まっていた連邦への不満を爆発させた。DC戦争……L5戦役、そして隠し続けてきた百鬼帝国、インベーダー、アインストの情報操作……武蔵のテロリスト認定や、リクセントへの支援を行わなかった事……非常に多くの上層部の不祥事が明らかになり、抗議活動が多く行なわれていると言う情報はビアン達の下へも届いていた。そして連邦軍は現状分裂し、上層部に付き従い、横暴な事を行っていた勢力は自分達に非はないと声をあげ、最新鋭機で自分達の拠点を守る事を始めた。だが当然そこに民間人は含まれておらず、避難さえも滞っている。それに対しL5戦役で殉職したノーマン・スレイ少将の遺志を継ぎ、冷遇されてもなお地球圏を守る為に連邦軍に席を置き続けていた者達は、旧式機となったゲシュペンストMKーⅡやリオン、アーマリオンを使い民間人を少しでも守り、インスペクターや、百鬼帝国の襲撃に備えようとしている。今の連邦軍は、それら二つの勢力に完全に二分された状況になり、混迷を極めている。
「確かに民間人への守りが手薄になる事は認めよう……私の言う事は決して人道的ではない、むしろ非人道的と言えるかも知れん。だが私はこれしかないと考えている……アースクレイドル、ムーンクレイドルの奪還……これを成し遂げなくては我々に勝利はない」
百鬼獣を製造しているプラントだと思われるムーンクレイドルとアースクレイドルの奪還を提案するビアン。
『ううむ……ビアン博士。流石にそれは些か……いや、かなり厳しいのでは?』
疲弊している戦力を更に分けて敵陣営に乗り込もうと言うのだ。流石のショーンも厳しいだろうと言うが、テツヤが違うとショーンと間逆の意見を口にした。
『インスペクターの指揮官機は今回の作戦で中破、あるいは大破したのを確認しております。現状インスペクターの戦力は無人機のみ、百鬼帝国もインベーダーやアインストとの戦いで疲弊しています。確かに懸念材料は多くありますが……確実に相手の戦力は低下している。時間を与えれば、それだけ我々が不利になる』
『お前の意見も分かる……だがそれは余りにも楽観的な意見だ。リスクが高すぎる』
『私もそう思います。もう少し状況を見極めてから動くべきではないでしょうか?』
「いやそんな時間はない、それに私が危惧しているは敵が戦力を整えることだけではない、もっと先の事を言っている」
自分達の現状の戦力……疲弊し、そして負傷している兵士達の事を考え、反対意見を口にするレフィーナとリーだが、ビアンは自分が危惧しているのはそこではないと断言し、今攻め込むべき理由を告げた。
「本格的な侵攻に入れば百鬼帝国は捕虜を鬼と改造する。ムーンクレイドルとセレヴィスシティを始めとした月面の住人、そしてアースクレイドル周辺の住人すべてが鬼に改造され、製造された百鬼獣に乗ることになれば戦力の差で押し潰される……まだ改造されていないであろう今の内に、周辺住人の救出作戦を伴った奪還作戦を行なう必要があるのだ」
今も人質になっているアースクレイドルとムーンクレイドル周辺住人の鬼化を防ぐ目的があると言うビアンの言葉を聞けば、レフィーナとリーはビアンの提案に反対する言葉を失ってしまうのだった……。
キョウスケとダイテツが治療を受けている緊急治療室の前の椅子に腰掛け、動く気配のなかったエクセレンを見ていられずラミアが強引に自分の私室に連れて来ていた。
「エクセお姉様、お茶をどうぞ」
「……ありがと、ラミアちゃん」
ありがとうと言いつつもお茶を飲む気配も無いエクセレン。深い隈を化粧で隠してこそいるがその疲労の色は隠しきれず、普段の明るい気配は微塵もなかった。
「エクセ姉様。少し休んでください」
「……分かってはいるんだけどね」
一命は取り留めたとは言え、意識不明のキョウスケはいつ容態が悪化するか分からず、予断を許さないと聞けば恋人の身を案じるのは当然であり、不眠、そして食事もまともに取れない状況にエクセレンは陥っていた。確かに夜は自室に戻っているようだが、その顔を見れば眠っていないのは明らかだった。
「これでエクセ姉様も倒れてしまったらキョウスケ中尉が目覚めた時に悲しみますよ?」
「……それを言われると辛いわね……でもその通りね」
弱々しい笑みを浮かべてラミアが用意した紅茶を口にし一息ついた様子のエクセレンは少し迷う素振りを見せてからラミアに問いかけた。
「レモンってどんな人?」
「……レモン様ですか? そうですね……とても優しい人ですよ」
確かにレモンの行なっている事は決して人に認められることではない、人造人間を作り出しそれを兵器のパイロットにしようとしている……ヴィンデルの行なおうとしている永遠の闘争の世界を成し遂げる為に人間を作り出そうとしているのは決して許された行いではないだろう。
「とても優しい……か」
「嘘だと思いますか?」
「ううん、ちょっとだけ分かるかもしれない」
オペレーション・プランタジネットでのインベーダーとアインスト出現時に、成り行きとは言えエクセレンはレモンと共闘する事になった。レモンがいなければ間違いなくエクセレンは死んでいたし、レモンもまたエクセレンがいなければ死んでいただろう……互いの命を救いあったからか、奇妙なシンパシーをエクセレンは感じていた。だがそのシンパシーはレモンだけではなく、アルフィミィにも感じていた物……まるで己の肉親に抱くようなシンパシー……ありえないとも言えるそれを感じていた。だからこそ分からないのだ……レモンは情が深い人物である事はエクセレンも分かっている……では何故そんな情の深い人物が、こんな非道を出来るのかが理解出来なかった。
「本当は、Wシリーズは戦争の為の物ではないそうです」
「そうなの?」
「はい……レモン様は……そのですね……地球を捨てて宇宙に出た時……地球人が再び繁栄する為にと……」
精一杯言葉を濁しながら言うラミアに、エクセレンは何を言おうとしているのか理解した。
「マジで? 嘘、そんな事できるの?」
「……できるらしいです……」
人造人間でもオーバーテクノロジーというのに、その人造人間は子供を産む事まで出来る……レモンの行いはいうなれば、新しい人類の創造主とも言える行いだ。だがそれと同時にこれだけの事が出来るのに、何故シャドウミラーに協力しているのかがエクセレンには分からなかった。
「……レモン様は母になりたかったと、でも私は成れなかったと悲しそうに腹を撫でていました」
「……そっか……そうなのね」
レモンには何らかの障害があり、子供を宿す事が出来なかった。それでも母になることを諦め切れなかったのだ……だから間違っている方法と分かりつつもWシリーズを作り出した。そしてそれに目を付けたヴィンデルによってシャドウミラーにスカウトされたのかと、考えた所でエクセレンは気付いた。
(そっか……恩があるってそういう事なのね)
断片的にだが得ることが出来た情報では、ラミア達の世界は滅亡一歩手前だ。そんな世界で研究を行うのは容易な事ではない、そしてそれが人造人間を作ると言う途方もないプロジェクトとなれば、途方もない資金が必要となるだろう。その為のスポンサーとして、ヴィンデルはレモンに目をつけた。利用されているとは分かりつつも助けられたのもまた事実であり、それがレモンをシャドウミラーに縛っている……エクセレンの予想は限りなく正解に近かったが、少しだけ間違っていた。レモンは人造人間を作るという、生命を冒涜する行いに対する咎という名目で囚われかけた……いや、正確には自分の父と母が行って来た実験等の全ての責任を押し付けられ、そして連邦に売られたのだ。そこを助けたのがヴィンデルであり、処刑の一歩手前、そして人造人間を作る為に必要な資金を提供して貰った事、そして恋人のアクセルの存在がレモンをシャドウミラーへと縛り付けていた。
「ラミアちゃんはどうしたいの?」
「……」
「誰にも言わないわよ。女同士の秘密の話」
「私は……止めたいのです。レモン様には生きていて欲しい……レモン様は本当は永遠の闘争なんて望んでいない事を私は知ってるから……」
誰にも言わないと言うエクセレンの言葉を信じ、レモンに生きていて欲しいと、永遠の闘争を望んでいないレモンの本当の真意を知っているから、望んでいない事をやらないで欲しいとラミアは心から祈っていた。だがそれは許されることではない、それを口にしたラミアは不安で俯き、エクセレンの返事を待った。
「エクセ姉様? やはり私の願いは……エクセ姉様?」
だが何時まで待ってもエクセレンの返事は無く、ラミアが顔を上げた時エクセレンの姿はどこにもなかった。自動扉の開く音も閉まる音もしなかった……忽然と何の前触れも無くエクセレンの姿が目の前から消えた。
「いかんッ!!!」
ラミアはその現象を知っている――アインストによる拉致現象。アインストが出現を始めた最初期に多発していた謎の失踪事件……それと酷似した現象を目の当たりにしたラミアは通路へと飛び出し緊急警報を知らせるレバーを下ろそうとし、それよりも早くヒリュウ改の内部に緊急警報が鳴り響いた。
『エクセレン少尉がヴァイスリッターで出撃! 出撃可能なパイロットは出撃準備を急いでください! エクセレン少尉は正気ではない事が確認されています! デッドマン及びアインストの出現に最大限の警戒をしてください!』
ユンの焦りに満ちた報告を聞いて、ラミアは弾かれたように格納庫へ向かって走り出した。自分が1番近くに居た、それなのに気付けなかった事に怒りを抱き、間に合えと心の中で繰り返し叫びながら格納庫に辿り着いたラミアは、ヴァイサーガに乗り込み、ヴァイスリッターの後を追ってヒリュウ改から飛び立っていくのだった……。
時間は少し遡り、エクセレンがラミアの部屋で話している時まで遡る……
ハガネの食堂ではリュウセイが深い深い溜め息を吐いていた。その理由は単純明快……ゲッターノワールとの戦いでフレームが歪んだSRXの修復に、かなりの時間が掛かると言う整備班の話を聞いての物だった。
「そんなにSRXの状態は酷いのか? リュウセイ」
「おう……R-1は何とか分離出来たんだけど、R-2とR-3の合体が解除出来ないらしいし、パワードパーツもお釈迦でな……暫くSRXは使えそうにないらしい」
時間は掛かるがR-2とR-3の分離は可能であり、単独出撃は可能と成るとのことだが……それでもSRXチームで現状出撃可能なのはリュウセイとマイ、そしてイングラムの3人しかいないと言う状況だ。
「やっぱり機体が足りないのか……シャインちゃんのフェアリオンは大丈夫なのか?」
「はい、フェアリオンは機動力と防御力が高いので、エネルギーさえ補給出来ればすぐにでも出撃は可能ですわ」
「そっか……少しでも頭数が欲しい所らしいけど……」
出撃出来ると告げたシャインに対して武蔵の反応は芳しくない、その様子を見てシャインはその顔を曇らせる。
「私は大丈夫ですわよ、武蔵様。心配してくださらなくても私もお力になれますわ」
「う、うーん……いやな、そういう訳じゃないんだよ。いや、シャインちゃんの事は心配してるぜ? でもな、オイラが心配してるのはそこじゃないんだ……何かな、すげえ嫌な予感がするんだ。コウキはどう思う?」
話を振られたコウキは手にしていたナイフとフォークを机の上に置いて、武蔵に視線を向けた。
「俺も感じている……ぞわぞわとした……なんとも言えない奇妙な感覚がある」
「だよな……うーん……なんだろ、この感じ……」
旧西暦の住人である武蔵とコウキだけが感じ取れる何かがある。食堂にいたイルム達もその顔色を変え、手にしていたマグカップや箸を机の上に置いた。
「また何か化け物が出てくるとでも?」
「そこは全然分からないっすね……なんかこう……うーん……なんだろう……? コウキは?」
「俺もなんとも言えん……奇妙な感覚だ」
「敵って感じではないのか? 武蔵、コウキ博士」
「敵って感覚ならもう言ってるよ、敵って感覚がしないから困ってるんだよなあ……」
武蔵とコウキの感覚ならば敵意や殺意ならば感じ取り、警戒しろと言う事も出来る。だがその感覚でも感じ取れない、どこか現実味のない気配……それがコウキと武蔵を困惑させていた。
「でもそれは何か分かるわ……あたしも何か嫌な感じとは違う。何かを感じるのよ」
「うん……私もだ」
武蔵とコウキの奇妙な感覚……それが分かるとアヤとマイが口にした時、リュウセイが椅子を引っくり返しながら立ち上がった。
「どうした!?」
「やべえ……この感じ……デッドマンの時と同じだ……でも……デッドマンじゃねぇ……誰だ……誰かが呼んでる……」
誰かに呼ばれている感覚がするとリュウセイは血相を変えて呟いた。
「リュウ、間違いないの!?」
アヤにはリュウセイが感じている声が聞こえず、本当なのかとアヤが問いかけるが、リュウセイはその声に反応しない。
「……呼んでる……誰を呼んで……やばいぞ……呼び寄せられる……」
「アヤ、私もだ。私にも聞こえる……誰か……誰を呼んでる……」
ぼんやりとした様子で誰かを呼んでいると口にしていたリュウセイとマイの2人は次の瞬間、弾かれたように顔を上げその目に理性の色を取り戻した。
「エクセレン少尉だ!! ヒリュウ改に連絡を急いでくれッ!!」
「早く止めないと……この感じ……ラングレーに出た紅い鬼だッ!」
エクセレンを止めるようにリュウセイとマイが叫んだが、それは余りにも遅すぎた……。
『エクセレン少尉がヴァイスリッターで出撃! 出撃可能なパイロットは出撃準備を急いでください! エクセレン少尉は正気ではない事が確認されています! デッドマン及びアインストの出現に最大限の警戒をしてください!』
ヒリュウ改からの報告は既にエクセレンがアインストに呼ばれて飛び出してしまったと告げられ、リュウセイ達は食堂を飛び出す。
「オイラもギリアムさんとカイさんと一緒にゲッタートロンベで行く!! なんとかしてエクセレンさんを止めてくれッ!!」
武蔵の必ず合流すると言う声を背中に受けながら、リュウセイ達は格納庫へと走り出すのだった……。
ヴァイスリッターがヒリュウを出撃した頃、龍王鬼の母艦である陸皇鬼でも動きがあった。
「偵察!? この状況で何故!?」
「必要な事だからよ、クエルボ」
「で、ですが……」
虎王鬼からのゼオラとオウカの偵察命令に、クエルボは何故だと喰らいつく。見た目は妙齢の女性でも、片手で自分を殺せる相手と分かりながらも、クエルボはゼオラとオウカを守る為にここで死んだとしても偵察には送り出さないという強い決意を秘めた瞳で虎王鬼を睨みつける。
(クエルボ。気持ちは分かるけど、あたし達もオペレーション・プランタジネットの失敗でちょっと立場が悪いのよ)
(それは……ッ)
シャドウミラーの横槍で龍王鬼は臍を曲げて戦いを投げた。ブライはそれもまた龍王鬼のあり方として認め許したからこそ、処罰はない……だが龍王鬼を面白く思っていない鬼に対する弱みを作ってしまった。
(それにラングレー基地の戦いでアラドを見てゼオラは強い反応を見せた……今が好機かもしれないわ)
ゼオラを正気に戻す機会として虎王鬼はゼオラとオウカを偵察に出すと言うのだ。
(ですが、それは余りにも甘い考えでは?)
(確かにね、あたしもそう思うわ。だけど……もしも今回の事でコウメイや、朱王鬼が絡んできたら1度失態をしているあたし達じゃ庇いきれないのよ)
虎王鬼とてゼオラが正気に戻るまで手元においておきたいと願っている……だが龍王鬼を陥れたい鬼は多くおり、特に武力によって自分の思い通りにしてきた龍王鬼にとって、戦闘を放棄したのは大きな弱みとして露呈してしまった。
(元に戻る可能性は……)
(あるとあたしは踏んでる。アラドの窮地にゼオラは強く反応した……今が正気に戻すチャンスだと思う。もしこの偵察で駄目だったら……あたしはなんとしてもゼオラとオウカを守る。この1回だけ、あたしの賭けに乗ってくれないかしら?)
虎王鬼とて本意ではない。だが、今心が揺らぎ、朱王鬼の術に揺らぎが見えている今……ゼオラとアラドを会わせる事がゼオラを正気に戻す切っ掛けになるかもしれないと言う虎王鬼の考えには、クエルボも同意出来た。
「分かりました……オウカに偵察を頼みます」
「……ごめんなさい。風蘭をつけるわ、彼女がいれば最悪は回避出来る。クエルボ、貴方も出撃してくれるわね?」
「……はい」
それはもしもゼオラが意識を取り戻せば龍王鬼と虎王鬼の元へ帰ってくるなと言う虎王鬼の優しさであり、風蘭はもしもゼオラが己を取り戻す事がない場合のアラドから引き離す為の保険でもあった。庇えないと言いつつも守る為の一手、そして逃げる為の手立ても準備してくれている虎王鬼に心からクエルボは感謝し、虎王鬼の偵察命令を受け入れ、ゼオラとオウカを呼びに行く為に虎王鬼に深く頭を下げてその場を後にした。これがゼオラとオウカを救う手立てになる……根拠はないがこの偵察が自分達を変える手立て……いやゼオラが正気に戻るような予感があるのだった……。
街中に佇むペルゼイン・リヒカイトの内部でアルフィミィは閉じていた目をそっと開いた。
「……分かっていますの、言われなくても……全部分かっていますのよ」
ゲッター炉心を得たアルフィミィは強烈な自我を獲得していたが、それはアインスト・レジセイアやアインスト・ヴォルフにとって面白い物ではなかった。それ故にアルフィミィは異空間を追い出されていた。門を開け、開く為の鍵を手に入れろ……それを成し遂げろと言う命令のみを与えられ、追い出された事にアルフィミィは怒りさえ覚えていた。以前ならば感じなかった感情……ゲッター炉心によって進化したアインストであるアルフィミィは、最早アインストと言う種を越えていた……それをアインスト・レジセイアとアインスト・ヴォルフは許さなかった。自分達が取り込む事を恐れ、アルフィミィに取り込ませたにも関わらず、アルフィミィがゲッター炉心の恩恵を逃さずに掴み取った事を怒っていたのだ。
「……良いですのよ、寄り代も鍵も手に入れますの……だけど……私の欲しい者も手に入れますのよ……」
与えられた命令は成し遂げる。だが自分の目的も成し遂げる……ゆっくりと顔を上げたアルフィミィの動きを真似るように、ペルゼイン・リヒカイトが顔を上げる。
「……まずはエクセレン……貴女ですのよ?」
アルフィミィが欲しくて欲しくてしょうがない存在……エクセレンとキョウスケの2人。だが2人揃ってしまうと今のアルフィミィとは言え容易には行かない。キョウスケがいないうちにまずは1人……エクセレンを確実に手中に収める。
「……お待ちしてましたのよ、エクセレン?」
アルフィミィの思念によってこの場に呼び出されたヴァイスリッターの姿を見て、アルフィミィは残酷で残忍な笑みを浮かべるのだった……。
第190話 愛する者の為に その2へ続く
ゲームではシナリオの中でエクセレンが連れ去られましたが、今作は少し戦闘シーンも書いて見たいと思います。そして暗いイベントが多かったですが、今回は少し明るいイベントも組み込んで生きたいと思っておりますのでどんな結果が待っているのか楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
今回のイベントガチャは2週で
舞浜シャイニングパンチ×4でした
はは、偏りすぎと嗤えないレベルですが回避アタッカーが欲しかったのでよしとすることにします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
-
サイドまたは視点は必要
-
今のままで良い