進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第191話 愛する者の為に その3

第191話 愛する者の為に その3

 

風神鬼のコックピットで風蘭は隠すつもりも無い様子で不機嫌そうに大きく舌打ちした。

 

「オウカ、クエルボ、急ぐよ。ゼオラの奴がハガネのPTと会敵したみたいだ……アラドって奴もいる」

 

風蘭、オウカ、クエルボと出撃した筈のゼオラだけが何故リュウセイ達の前に現れたのかと言えば単純な事である。出撃と同時に風蘭達を振り切って1人で独断専行を行なったからだ。スピードに秀でている風神鬼だが出鼻を挫かれ、最大速度で飛び出して行ったビルトファルケンに追いつくのは容易な話ではなかった。更に言えば追いつく事は不可能では無かったが、そうなれば今度はオウカとクエルボを残す事になる。龍王鬼と虎王鬼の2人は力こそ正義というカリスマ性を持つが、コウメイや四本鬼のような策謀を好む鬼とは相性が悪く、戦闘放棄で謹慎を命じられている今の間に更に失墜させようとちょっかいを掛けてくる可能性が高いと分かっている中でオウカとクエルボをアースクレイドル近辺に残す事も出来ず、ラピエサージュとラーズアングリフが付いてこれるギリギリの速度で飛行しながらゼオラを探していたのだ。

 

『風蘭さんッ! ポイントは! どこにゼオラとアラドはいるんですか!?』

 

「私が先行する。オウカとクエルボは遅れないで着いて来なッ!!」

 

戦闘を始めてるとなればアラド達にとっても、オウカ達にとっても最悪の結果になる可能性はある……それを阻止する為にも風蘭達は一刻も早く戦闘区域に向かう必要があった。

 

(なんでオウカ達はこうも運が悪いかなあ……)

 

当たり前の事だが偵察に出ているのはオウカ達だけではない、プランタジネットでとんでもない失態を犯したヴィンデルも姿を隠しているハガネを見つけ名誉挽回を図る為にエルアインス達を偵察に出しているし、ハガネを見つけることで名前持ちになろうとしている野心家の鬼達も動いている事を考えれば、早急にゼオラ達を見つけなくてはならないのだ。

 

『しかし何故今になってゼオラが勝手に移動を始めたと言うんだ……今まで何の反応も見せなかったと言うのに……』

 

オウカやクエルボが言わなければ動く事の無かったゼオラが、出撃すると同時に制止を振り切って飛び出した。その事に疑問を覚えているクエルボに風蘭が確信はないけどと前置きしてから口を開いた。

 

「プランタジネットでアラドは死に掛けた、出撃はして無かったけどゼオラも、オウカ達もそれを見てただろ?」

 

『は、はい……確かに見ていましたが……それが何か関係があるのですか?』

 

「そこは確信はないって言っただろオウカ。アラドが死に掛けているのを見て何らかの心境の変化……いや、朱王鬼の術で自我を封じられてもなお、アラドを思う気持ちがゼオラにあったって事さ、だからゼオラはアラドの所に向かったんだ。無意識に助けを求めたのか……それとも朱王鬼の命令が残っていて殺しにいこうとしたかは私にも分かんないけどね」

 

前者ならゼオラが元に戻る可能性を示唆しており、後者ならば何もかもが終わる。アラドを殺してゼオラが正気に戻り、ゼオラが自らの手でアラドを殺したショックで自殺する……その最悪の展開も十分に予測できる。

 

『そんなことはさせません、姉として……私はそんなことはさせませんッ』

 

「その意気だ、だけど気をつけなよ。あんたもクエルボも、勿論私もね」

 

百鬼帝国は実力こそ全ての縦社会だ。表向きは従順でも、裏では足を引っ張る事を考えているような連中ばかりだ。

 

『気をつける……フレンドリファイヤの事ですか?』

 

「は、そんなもんじゃないよ、邪魔者を排除しようとする容赦の無い攻撃さ。常に警戒してな、まぁ虎王鬼様に言われてるからあんた達は無事にアースクレイドルには返してやるさ」

 

『……風蘭さん……貴女は何故、そこまで親身になってくれるんですか?』

 

最悪の状況に備えて虎王鬼に付くように言われているから風蘭は一緒に行動していると思っていたオウカだが、風蘭の言葉の節々にはオウカ達やアラドに対する思いやりが感じられた。

 

「こんな時に何を言ってるのさ、急がないと手遅れになるよ」

 

オウカの問いかけに対して返ってきたのは風蘭の冷たい態度と刺々しい言葉であり、オウカは風蘭の地雷を完全に踏んだと気付いたが、すでに遅かった。風蘭の態度は急によそよそしい物になり、強い拒絶を感じさせた。

 

『……そう……ですね、すいませんでした』

 

「分かったら良いさ、急ぐよ」

 

どうも触れてはいけない部分だったのか、急に冷たくなった風蘭にオウカは何も言えずスピードを上げた風神鬼についていく為にオウカは操縦に集中し始める。先行する風神鬼のコックピットの風蘭の腕には、傷だらけのゴールドのブレスレットが静かに揺れているのだった……。

 

 

 

 

リュウセイの視界全てを埋め尽くすのは、2機の鳥獣鬼が放ったPTの腕ほどの大きさの巨大な羽の嵐だった。一発でも被弾すれば、PTにとって致命傷になりかねない殺意に塗れた攻撃にR-ウィング……いや、機体後部から背部にかけて強化装甲と巨大なブースターを装備した変形を封じ、飛行能力を特化させたR-ウィング・OB(オーバーブースター)と呼ぶべき機体を操るリュウセイは、恐れる事無く鳥獣鬼の翼の雨に自ら機首を捻じ込みながら飛び込んだ。

 

『馬鹿がッ!!』

 

『血迷って自殺行為かッ!! 愚か者めッ!!』

 

鳥獣鬼から響くのは唸り声ではない、パイロットである鬼のリュウセイに対する蔑みの言葉だ。風蘭の告げたとおりゼオラと共に現れた百鬼獣はゼオラの味方ではなく、自分達の手柄を求めて移動しているビルトファルケンを追いかけて来ただけの名前すら持たない鬼だ。だからこそスタンドプレイに出る。カスタムされた鳥獣鬼、そして専用機を与えられた名前持ちの候補……名前持ちには劣るが十分にエリートと呼べる。だがそんな鬼は幾らでもいるのだ、手柄を求めほかの鬼よりも優れていると言う証明を欲している鬼はハガネを発見する……あるいはそれに順ずる手柄であるリュウセイが自ら飛び込んで来たことに笑みを浮かべる。

 

「俺を舐めるなよッ!! 百鬼帝国ッ!!」

 

リュウセイの雄叫びを嘲笑った鬼だったが、R-ウィング・OBの加速にその嘲笑は凍りついた。

 

「うおおおっ!!!」

 

バレルロールを駆使し、最小の動きで鳥獣鬼の翼の雨を回避したR-ウィング・OBは鳥獣鬼の間を通りぬけると同時に機首を上げて頭を取った。

 

『馬鹿なッ!? 何故避けきれたッ!?』

 

『人間の機体風情が何故ッ!?』

 

確実に落せると確信していた鬼は回避された事に驚きの声を上げる。だがそれは慢心であり驕りである。人間は鬼に勝てないと言う思い込みがリュウセイの動きを見誤らせたのだ。

 

「いっけええッ!!!」

 

轟音と共に放たれたレールガンの銃弾が鳥獣鬼に向かって放たれ、1機は冷静に横に移動し回避した。だがもう1機は被弾しながらも前に出て確実にR-ウィング・OBを墜落させる事を選択し……それが2人の鬼の命運を分けた。

 

『ギャアッ!? な、なんで……う……そ……だろ?』

 

放たれたレールガンの弾頭は鳥獣鬼の頭部を吹き飛ばし、胴体に風穴を開ける。その一撃は鳥獣鬼にとっての致命傷となり、信じられない、いや信じたくないと言う言葉を残して、名前持ち候補だった1体の鬼を乗せたまま鳥獣鬼は空中で爆発四散した。

 

『やはりゲッター合金かッ!!! 相手にとって不足なしッ!! 勝負だッ!! 俺はお前に勝ち、龍王鬼様の配下になるのだッ!!』

 

避けた鳥獣鬼はR-ウィング・OBから放たれたレールガンの弾頭がゲッター合金である事に気づき獰猛な笑みを浮かべる。この鬼の気質もまた通常の鬼とは異質な物――戦いを誉れとし、卑怯な事を嫌う武人肌。だがそんな鬼が全て龍王鬼の配下になれるわけではない、気質が合わない名前持ちの部下になることもある。そんな中で名前持ちの候補になったという事は武勲次第では望みを叶えることも可能だ。

 

『行くぞ! リュウセイ・ダテッ!! 殺しはせん、だが俺と共に来てもらおうかッ!!!』

 

「断るッ!! てめえらの所になんて誰が行くかよッ!!!」

 

鳥獣鬼が腰にマウントしているブレードを抜き放ち、翼を大きく羽ばたかせ急加速しR-ウィング・OBへと突撃する。

 

「クソッ! はええッ!!」

 

『どうしたどうした!! R-1とやらになれッ!! 腕を持たず俺を倒せると思っているのかッ!!!』

 

ピッタリと横を飛びながら変形しろと叫びつつ手にしたブレードを振る鳥獣鬼の言葉にリュウセイは顔を歪める。

 

(出来るなら俺だってしてるってのッ!!)

 

相手が遠距離攻撃かつ空中戦を挑んでくるのならばR-ウィング・OBで十分戦える。しかし目の前の鳥獣鬼のように接近戦を仕掛けてくる相手ならば変形した方が戦いやすいのは明白だ。だがそれが今のR-ウィングには出来ないのだ。無理にR-2・R-3から分離させた為に変形機構の一部に異常を起しており、PT形態に変形は限りなく不可能に近い。だからビアンがベルガリオンやベガリオンのテストの為に作成した強化パーツを装着して出撃しているのだ。これならば変形出来なくてもある程度戦え、なおかつフェアリオンにも追いつけるという計算の上での選択だった。出撃出来る機体が少なく、そしてエクセレンが姿を消すのを事前に感知したリュウセイがいち早く出撃体制に入れたからこその応急処置であり、仮に装甲をパージすれば機体にガタが来ているR-ウィングは強制的に変形を行なうしかなく、もしも変形に失敗すれば空中分解すらしかねない状況だ。

 

「だからって泣き言はいわねえぞッ! 俺はなッ!!」

 

今もアラドは必死にゼオラを取り戻そうとしているのだ。それを手伝うと言っておいて情けない真似が出来るかとリュウセイは吼え、R-ウィング・OBの機首を上げて急上昇する。

 

『逃げる……いや……ふっ、良いだろう、乗ってやるさッ!!!』

 

リュウセイの動きがビルガーとファルケンから自分を引き離そうとしている事に気付き、パイロットである鬼は獰猛に笑い鳥獣鬼を操る。

 

「行くぜぇッ!!!」

 

『元より俺はお前しか見ていないッ!! 周りが気になると言うのならばお前にあわせてやるさッ!!!』

 

R-ウィング・OBの放ったガトリングの銃弾を切り払いながら間合いを詰めようとする鳥獣鬼と、そうはさせないと緩急を生かした動きと銃火器を駆使するR-ウィング・OB。そしてビルガーとファルケンにも近づけさせない。勝ち目のない勝負ということはリュウセイも分かっているが、勝ち目がない=負けではない。武蔵や共にエクセレンを追って出撃したリョウト達が合流するまで粘ればリュウセイは勝ちなのだ。この不利な戦況を均衡状態に戻せるだけの、そしてアラドがゼオラを取り返す間の邪魔をさせない時間を稼ぎ切れれば良いのだ。

 

「行くぜぇッ!!!」

 

切れる手札も持ち札も決して多くない、だがたった1枚だけ……切り札はしっかりと握っている。だが切るタイミングを間違えば、全てが台無しになる……そしてこの超高速の空中戦はリュウセイが体験した事のないものであり、恐ろしい疲労が爆発的に襲い掛かってくる。

 

「……アラド。やり遂げろよッ」

 

視界の隅で必死にファルケンとの距離を詰めようとしているビルガーを見てリュウセイは小さくアラドを鼓舞する言葉を口にし、視線を鳥獣鬼に向ける、目の前の相手は他ごとを考えて勝てる相手ではない。名前こそないが、それに匹敵する力を秘めた強力な鬼である事は間違いない……ここからはリュウセイはアラドやラトゥーニ達の為に出来る事はない、目の前の敵に意識を向け、操縦桿を強く握り締め操縦に全集中を傾けるのだった……。

 

 

 

 

エルアインスの放ったG・リボルバーの弾丸を2機のフェアリオンは舞う様に回転しながら避ける。だが反撃することは無く、一定の距離をエルアインスと取る。

 

『『……』』

 

すると下がった分だけ、エルアインスが前に出る。だが決して前に出すぎる事は無く、フェアリオンが更にほんの少し下がる素振りを見せるとG・リボルバーの銃口をビルガーに向ける。それを見てラトゥーニがフェアリオン・タイプSを前進させるとその銃口をフェアリオンへ・Sへと向ける。その姿を見てラトゥーニは確信を持つ事が出来た、エルアインスに乗っているWシリーズに自我が存在していない事に……。

 

「やっぱり……この人達はラミアさんとは違う」

 

一定の距離を保ち、攻撃を仕掛ける相手を狙う。モーションデータこそ人のように読みきれない物だが、その行動基準は人工知能の物に等しかった。

 

『そうみたいですわね……出来る事ならば倒してしまいたい所ですが……』

 

「下手にダメージを与えるとさっきみたいに自爆されます、シャイン王女」

 

軽微なダメージでは意に介さず攻撃を続け、行動に支障が出る程のダメージを受けると躊躇う事無く自爆する……さっきはシャインの予知で回避する事は出来たが、そう何回も上手く行くとは限らない。それにシャインとラトゥーニを自爆に巻き込めないと判断してアラドとゼオラの方に向かわれても困る。故にラトゥーニとシャインに取れる選択肢は、エルアインスを誘導する一定の距離を保ちながら回避を行なうという事だけだった。誤解して欲しくないのだが、フェアリオンにはエルアインスを一撃で粉砕するだけの攻撃力はある。だが逆を言えば威力がありすぎ、ドッグファイトを行なっているR-ウィング・OBや、ビルトファルケンの攻撃を回避する事に専念しつつも徐々に距離を詰めているビルトビルガーを巻き込みかねないので使えないのだ。

 

「シャイン王女……マサキ達は間に合いますか?」

 

『……言いにくいことですが……敵の方が早いですわ』

 

搾り出すように告げられたシャインの言葉にラトゥーニは驚きは無かった。そもそも自分達の方が拠点から離れているのだ、応援にくるのに時間が掛かるのは当然だ。そういう面ではアラドとゼオラが会敵する前にリュウセイとラトゥーニがシャインとアラドに合流できたことの方が幸運と言えたのだ。

 

(アラド……急いで……時間はそんなにないわ)

 

4分という時間は日常で言えばなんでもない一瞬の時間だが、命のやり取りを行う戦場での240秒という時間はその極限の集中状態も相まって数倍、いや数百倍の時間にすら感じることだってあるだろう。ましてやゼオラ達を取り返す機会を窺い続け、そしてやっと得たこの時間……それは限界以上にアラドの力を引き出していた。

 

『ゼオラッ!! 俺だ! アラドだッ!! 殺すでも何でも良い! 返事をしてくれ……ゼオラッ!!!』

 

アラドが必死にゼオラの名を叫びながらビルトファルケンを追う。その姿は無防備でゼオラの技量を持ってすれば……いや、殺すという意志さえあれば狙う必要も無くビルトビルガーのコックピットを打ち抜ける明確な隙だった。

 

『……ッ!』

 

だがビルトファルケンはオクスタンライフルの銃口を向け引き金を引くが、その銃弾やビームは明後日の方向へ飛ぶ。それはゼオラの技量、そしてTC-OSの事を考えればありえない事だ。あの距離で銃口をあわせているのに外すという事は元来ありえない事で、ゼオラがその意志を持ってビルトビルガーを撃墜する事を拒んでいるとしか言えない光景だった。

 

「ゼオラッ!! ゼオラッ!! 逃げないでゼオラッ!!!」

 

『鬼の卑劣な術になんて負けてはいけませんわ!! 意志をハッキリと持つのです!!』

 

エルアインスへの攻撃を回避しながらラトゥーニとシャインは広域通信でゼオラへと呼びかける。機械的とはいえ攻撃を続けてくるエルアインスの攻撃を回避しながらゼオラへと呼びかける事は容易では無い、しかし味方を巻き込む可能性があり反撃を行う事が出来ないのならば、せめて声を掛けるだけでもと必死に叫んだ。

 

『……ア……ラ……』

 

『動きがッ!! 今行くぜッ!!! ゼオラぁアアアアッ!!!』

 

アラド達の叫びがゼオラに届いたのか、その動きが止まった。その瞬間をチャンスだと判断しビルトビルガーが急加速しビルトファルケンに接触しようとした寸前シャインが叫んだ。

 

『アラドッ! 止まってッ!! 駄目ッ!!』

 

シャインの予知は限りなく完璧な未来予知と言えるだろう。だがそんなシャインでも読めない物がある……それはゲッター線だ。ゲッター線に関する物――武蔵の所在やどこにいるのか分からなかったのはシャインの予知ではゲッター線の意思を完全に読みきれないからだ。それでも悪意は感じ取れ、アラドに駄目だと叫んだが……それは余りにも遅すぎた。

 

『え……う、うわあああああああッ!!!!』

 

上空から降り注いだ翡翠の輝きがビルトビルガーを飲み込み、アラドの苦悶の叫び声が海上へ響き渡る。

 

「あれはッ!? サマ基地のッ!?」

 

翡翠の光が飛んで来た方角を見てラトゥーニは驚きの声を上げた。何故ならばそこにはサマ基地で共行王と共に現れたゲッターロボの面影を持つ異形の人型機動兵器――ベルゲルミル・タイプG、そしてドラゴンの面影を持つベルゲルミル・タイプDの姿があったからだ。

 

『あはははははっ!! 死ね! ゲッター線の輝きの中で死ね! 出来損ないの欠陥品がぁッ!?』

 

ゲッター線ビームキャノンを放ちながら高笑いをするアンサズの乗るベルゲルミル・タイプDの頭部に後方からエルアインスを破壊し飛来した銃弾と風の刃が命中し、その頭部を斬り飛ばす。だが触手が伸びきり飛ばされた首は一瞬で胴体へと戻るが、ビルトビルガーを飲み込んでいたゲッター線の光の照射は止まっていた……。

 

『私の弟に何をするッ!!』

 

『やれやれとんだ餓鬼共だ、良い加減にしろよ。この糞餓鬼共、誰に許可を得てこの場に来てるんだ?』

 

アラドを救ったのはオウカ、そして風蘭の2人だった、ラピエサージュと風神鬼がベルゲルミル・タイプGとタイプDの前に立ち塞がる。

 

『僕は言ったぞ、あくまで偵察だとな……僕は何もしない、自分達で何とかするんだね』

 

『ああ、良いさ、ウルズ。欠陥品を処分するくらい僕達で十分だ』

 

『パパに僕達は役に立つって報告してくれよ』

 

『……それはこの戦いを見てからにする』

 

ベルゲルミル・タイプGは興味なさげに後退し、マントで自身の身体を包むとゲッター線バリアを展開し完全に見ることに徹する姿勢に入る。

 

『アウルム1……僕達に逆らったって事は死ぬ覚悟は出来てるんだよなあ、欠陥品と出来損ない風情が僕達に勝てると思ってるのかい?』

 

ダブルトマホークを構えるスリサズの乗るベルゲルミル・タイプDにオウカは一歩も引かない。

 

『番号の名を誇らしげにする可哀そうな子供達、イーグレットに愛されていないことも分からないのですね』

 

それは安い挑発、だがスリサズはそれに乗った。未熟で歪な精神を持つスリサズにはオウカの挑発を聞き流す事が出来なかったのだ。

 

『ふざけるな!! 欠陥品風情がッ!! お前なんかがパパを語るんじゃないッ!!』

 

激昂しラピエサージュに襲い掛かるベルゲルミル・タイプD。だがそれはオウカが自ら望んだ結果だった……。

 

『ラト! ゼオラとアラドをッ! こいつは私が引き受けますッ!!』

 

『裏切るのか!! ははははッ!! 良いよ、ここで処分してやるよぉッ!!!』

 

メガプラズマカッターとダブルトマホークで鍔迫り合いを行う隣をアンサズの乗るベルゲルミル・タイプDがすり抜け、ビルトビルガーへ向かおうとする。だがフェアリオン・タイプGとSがベルゲルミル・タイプDの前に立ち塞がる。

 

 

「ここは通さない」

 

『その通りですわ』

 

『はっ! そんな人形で僕を止め『いいや、私もいるよ。お前……目障りだな』がぁッ!? 敵は僕じゃないだろ!? 風蘭ッ!!』

 

フェアリオンの前で浮かぶ風神鬼に向かってアンサズがそう叫ぶが、風蘭ははぁ? と馬鹿にするような返事を返す。

 

『私は龍王鬼様と虎王鬼様の配下さ、んであんたらは龍王鬼様は味方と認めていない。じゃあ話は簡単だ、目障りなあんたは私の敵さッ!!!』

 

風蘭やヤイバ、闘龍鬼にとっては龍王鬼と虎王鬼の指示が全てだ。そして龍王鬼が味方と認めていないのならばアンサズとスリサズは味方ではないと言う暴論で風蘭はアンサズと戦う事を決めた。

 

『と、言うわけだ。手伝うさ』

 

「どうして?」

 

『気に食わないだけさ、深い理由じゃないけど、私に取っちゃあ戦う理由なんてそれで十分さ。理由になってないかい?』

 

龍王鬼や、闘龍鬼達の気質を知っているラトゥーニとシャインは風蘭の言葉に嘘はないと受け入れた。

 

『……今は信じますわ、風蘭さん』

 

「あとで戦うとしても……今は信じる」

 

ラトゥーニとシャインの言葉に風蘭は満足そうに笑い、風神鬼の腰の鞘から剣を抜き放たたせ、ベルゲルミル・タイプDと対峙させるのだった……。

 

 

 

 

短い時間とは言えゲッター線ビームキャノンの掃射を受けていたビルトビルガーは深刻なダメージを受けていた、勿論パイロットであるアラドもゲッター線の熱で身体を焼かれ全身に軽い火傷を負っていた……。

 

「う……あ……」

 

異常な熱が満ちるコックピットの中で意識を取り戻したアラドは震える手で、コンソールに手を伸ばす。

 

「……レッドアラートばっかり……かよ……は、はは……ここまでか」

 

強化装甲ごと素体も焼かれており、アラートを灯す機体の状態を見てアラドは乾いた笑い声を上げた。

 

『くっ!!』

 

『はははっ! 裏切り者なんかが僕に勝てると思ってるのかいッ!!!』

 

ノイズ交じりのモニターに映るベルゲルミル・タイプDとラピエサージュの姿にアラドは驚きに目を見開いた。

 

「オウカ姉さん……助けて……くれてるのか……」

 

黒煙を上げながら辛うじて浮いているだけのビルガーを庇うように立ち回っているラピエサージュを見て、自分が足枷になってる事に気付き固く拳を握り締める。

 

『邪魔をするなよ!!』

 

『ううっ!! こいつの動きが全然読めませんわッ!?』

 

『シャイン王女ッ! ううっ!?』

 

フェアリオンから響くラトゥーニとシャインの苦悶の声……どれほど意識を失っていたのかはアラドには分からない、だがフェアリオンの装甲に傷が付いているのを見て自分が庇われていた事に気づいたアラドは、音が出る程に歯を噛み締めた。動かない機体が2つ、その内ビルトファルケンは健在だが、朱王鬼の術によって意識を封じられているゼオラが乗っていては大破とそう違いはない……だがビルガーと違ってゼオラが意識を取り戻せば……オウカ達は逃げれる。

 

「……あとちょっとだけ……後少しだけで良いから……動いてくれ、ビルガー……ッ」

 

アラドの想いに応えるように再び動き出したビルトビルガーは緩慢な動きで同じ様に宙に棒立ちで浮かんでいたビルトファルケンに組み付いた。

 

「ゼオラ……ゼオラ、聞こえるか? いや、聞こえてなくても良いや……これは俺が勝手に言ってるだけだから……出来れば聞こえてないと良いな……恥ずかしいし」

 

ビルトビルガーの腕がオクスタンライフルを手にしているビルトファルケンの腕に伸び、腕を上げさせてその銃口をコックピットに当てさせる。

 

「……ゼオラ、オウカ姉さんもラトゥーニもセロ博士もゼオラの側にいる、それにハガネの人達だって優しいんだぜ、武蔵さんだってあれだ。兄貴みてぇに優しくて良い人なんだ……だからきっとゼオラを助けてくれる」

 

異常なほどに脈打つ自身の心音……恐怖による鼓動の上昇を感じ、歯を震わせながらアラドは笑った。

 

「……だから俺がいなくても、いや、多分俺がいない方がきっとゼオラには良いと思う。だからさ……俺の事なんか忘れてくれよ……頼むから」

 

アラドの目から涙が零れ落ち、両手でしっかりとビルトファルケンにオクスタンランチャーを保持させて、その引き金に指を掛けさせる。自分が死ねばゼオラは意識を取り戻す……動けないビルトビルガーでは足を引っ張るだけだとアラドは自らの死を持って、ゼオラの意識を取り戻す事を選んだ。それが今の自分に出来る最善であり、これ以上皆の足を引っ張るわけには行かないと決意した上での行動だった。

 

『アラドッ!! アラドッ!! 止めろッ!! やめるんだッ!!! アラドッ!!!』

 

その動きにオウカ達は気付いておらず、躊躇わず引き金を引けると思ってたアラドの耳をクエルボの絶叫が打ち、その叫びを聞いたオウカ達の視線がビルトビルガーとビルトファルケンへ向けられた。

 

『アラド! 止めなさい! アラドッ!!!』

 

『アラド駄目ッ!! そんなことしてもゼオラは喜ばないッ!!』

 

オウカとラトゥーニの言葉になんとか堪えようとしていた涙が零れ出す。

 

「……オウカ姉さん、ラトゥーニ、ゼオラを頼むぜ……」

 

ビルトビルガーの指に力が篭もり、ビルトファルケンの指が少しずつ引き金を押し込んでいく……。

 

「ゼオラ……俺さ……本当……お前の事好きだったんだぜ……? お前は多分……俺の事嫌いだと思うからさ……」

 

オクスタンライフルの銃口に光が集まり、発射寸前になり後ほんの少し押し込めばビームが放たれる……そうすれば死ぬと分かってアラドは泣き笑いの笑みを浮かべた。

 

「……俺の事忘れてくれよ……俺……死ぬからさ……本当に……頼むよ……ゼオラ……俺の事さ、本当忘れてくれていいから、オウカ姉さんとラトとさ……3人で生きてくれよ……な……」

 

グッとビルトビルガーの操縦桿を握り締め、それに連動してビルトビルガーが指に力を込める。それによってビルトファルケンの指はオクスタンライフルの引き金を引き、放たれたビームの光でアラドは目の前が真っ白になるのを感じながら……凄まじい衝撃と閃光にその意識を失った。出撃前にユウキから渡された虎王鬼の渡した札が純白の光を放つのにも気付かないままに……。

 

 

第192話 愛する者の為に その4へ続く

 

 




アラドが自殺的な動きをするのは最初から決まっていた展開です、別に私は曇らせがすきとかではないんですが……ゼオラだけはどうしてもこうなってしまうんですよね……謎です。多くは語らず、全ては次回で明らかにしようと思いますので次回の更新を楽しみにしていてください。

PS

ディドの期間限定がチャのラストチャレンジは

舞浜オーシャンパンチ×2でした

解せぬ

PS2

アウセンザイター実装楽しみです。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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