進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第192話 愛する者の為に その4

第192話 愛する者の為に その4

 

止める間も無かった……脱力しているビルトファルケンの腕を動かし、自らの機体のコックピットに押し当てて引き金を引かせようとしていることに気付いたのは、ラーズアングリフでこの場に来るのが遅れたクエルボの絶叫が響いたからだった。咄嗟に止める様にオウカ達は叫んだが……それは余りにも遅かった。オクスタンライフルのビームがビルトビルガーのコックピットを貫き、カメラアイから光を失ったビルトビルガーが頭を下に真っ逆様に墜落する姿を見てオウカ達は悲鳴を上げた。

 

「あ……ああああああッ!!!!????」

 

『あ……嘘……』

 

『……そ、そんな……』

 

ベルゲルミル・タイプDの猛攻撃を避けるので手一杯だった。量産型ゲッターロボGをベースしたベルゲルミル・タイプDの性能は圧倒的だった。オウカとラトゥー二は紛れも無くエースパイロットであり、シャインはゲッター線の影響で予知しにくいとはいえ、回避に専念すれば十分に攻撃を先読みする事は可能だった。W-I3NKシステムによって断片的な予知を共有したラトゥーニは、思い出したくない技術ではあるがスクール時代の通信不能時の連携モーションデータを使い、オウカにもその情報を与えた。攻勢に出るのは難しかったが、耐久と時間稼ぎならば十分に出来た……いや、出来てしまった。目の前の強敵にのみ意識が向いてしまったのだ、だがそれを責める事は出来ない。一発でもまともに被弾すれば、ラピエサージュは勿論フェアリオンですら撃墜されかねない攻撃力を持つベルゲルミル・タイプDを警戒するなというのが無理な話だったのだ。

 

『なんだよ、僕が殺そうとしたのに勝手に死んでるじゃないか…これだから欠陥品は』

 

「お前ッ! お前ッ!!! 私の弟……アラドを欠陥品と言うなあッ!!!」

 

アンサズの言葉に激昂したオウカはラピエサージュをベルゲルミル・タイプDに向かわせようとしたが、振り返った所でその動きが止まる。

 

「な、何が……」

 

『う、機体が……動かないッ!?』

 

『ど、どういうことですの!?』

 

ラピエサージュだけではなく、フェアリオンもその動きを止め、ラトゥーニとシャインの困惑の声が重なる。

 

『だから欠陥品なんだよ、お前らはッ! 周りも見れてないのかよッ!』

 

アンサズが嘲笑いながら動きを止めているラピエサージュ達を指差した。ゲッター線を最も理解している早乙女博士はその力を最大に生かし攻撃力に全振りしたが、それは人知を超えた敵と戦うためであり、もしも早乙女博士が新西暦にいたとすれば、そして強大すぎる敵が存在しなければゲッターロボは全く別の能力を有していただろう。そしてそれは早乙女博士と研究を共にしていたコーウェンとスティンガーがイーグレットに情報を提供する事により日の目を見ることになった。それはゲッター線を応用した強力なバリア能力であり、ジャミング能力であり……早乙女博士が作ったゲッターロボがもち得ない数多の特殊能力だった。

 

『全くだ。だが相手が欠陥品だからこそ、簡単に処理……「誰が欠陥品だってッ!?」ぐあっ!? 馬鹿な、何故お前は動けるんだッ!!』

 

欠陥品だと嘲笑っていたスリサズの乗っていたベルゲルミル・タイプDに風神鬼の飛び蹴りが叩き込まれ、ベルゲルミル・タイプDの身体がくの字に折れる。

 

『んなもん知るかッ!! お前らは不愉快なんだよッ! ここでくたばりなッ!!』

 

『このッ! 裏切り者がッ!?』

 

『はぁ? 何の事か分からないよッ!! 第一、お前達が味方なんて話は私は聞いた事もないさッ!!』

 

アンサズとスリサズが味方だと認識していても、龍王鬼が味方だと認めておらず、その上自分達は選ばれた人類だといって驕っているマシンナリーチルドレンは風蘭の癪に触る存在であり、大した力も持たないのに偉そうにしている姿は力こそ全てとする鬼からして見ても唾棄するべき物だった。

 

『そっちはそっちで何とかしなッ!! んで、お前は小細工なんてしてないで真っ向から掛かってきなッ!!!』

 

『この……下等な鬼の分際でッ!!』

 

『私が下等ならお前は下種だッ!! とっととくたばりなッ!!!』

 

ベルゲルミル・タイプDのダブルトマホークと風神鬼の刀がぶつかり合い鍔迫り合いになると、風神鬼は翼から風を巻き起こしベルゲルミル・タイプDを強引に引き離す。

 

『ちいっ! 射程距離がッ! スリサズッ! 後は自分で何とかしろッ!』

 

『はっ! 欠陥品如き僕1人で十分なんだよ、スリサズ。ウルズもしっかりと見ておけよなッ!』

 

小さなビットがアンサズのベルゲルミル・タイプDに回収されるとラピエサージュの動きが僅かに戻る。

 

『オウカ! ラトゥーニ! 何とか機体のコントロールを取り戻すんだ! アラドは僕が助けるッ!!』

 

ラーズアングリフが海上をホバーで疾走しながら銃火器を乱射し、ビルトビルガーへの追撃を防ぎながらアラドを任せろとクエルボが叫ぶ。その叫び声を聞いてオウカ達は僅かに動く機体を必死に制御し、ベルゲルミル・タイプDへの攻撃を行なう。機体の制御を失ったのがベルゲルミル・タイプDの仕業ならばダメージを与えれば機体のコントロールを取り戻せると考えての行動だった。

 

「そこですッ!!」

 

頭部のガトリングが火を放ち、ラピエサージュの斜め上を滞空していたビットを捉える。すると、オウカ達の機体のコントロールが僅かだか戻った……ビットの正体はベルゲルミル・タイプDのゲッター炉心を利用した一種の結界のような物であり、その範囲の中のゲッター線で動いていない機体のコントロールを妨害するための物であった。武蔵とゲッターD2を近くで見ているからゲッター線は攻撃にしか転用できないという思い込みがラトゥーニとシャインの判断を鈍らせたのだ。

 

『ふん、やっと気付いたか……まぁ気付いた所でもう遅いけどな』

 

『う、うおおおッ!?!?』

 

「セロ博士ッ!」

 

僅かに動くようになった機体でベルゲルミル・タイプDと周囲へのビットへの攻撃を行い、少しずつ機体の自由を取り戻すオウカ達をアンサズは嘲笑うかのように、ビルトビルガーを受け止めようとしていたクエルボのラーズアングリフに向かってビットを飛ばす。ゲッター線ビットの展開した刃で右足と左肩を破壊されたラーズアングリフは、バランスを著しく崩し海中へと没する。

 

『これで目障りな奴は消えた……今度こそ、さよならだ。欠陥品』

 

『させないッ!!!』

 

『アラドはやらせませんわよッ!』

 

ゲッター線ビームキャノンを墜落していくビルトビルガーに向ける姿を見て、ぎこちない動きながらフェアリオンがボストークレーザーでベルゲルミル・タイプDを狙うが、展開されているバリアをボストークレーザーは貫く事が出来なかった。

 

『まずはこの欠陥品を処分する、次はお前達……ぐうっ!?』

 

オウカ達の制止の声が発されるよりも先にベルゲルミル・タイプDは引き金を引き、放たれた翡翠色の光がビルトビルガーへと向かったその瞬間だった……背後からの攻撃でベルゲルミル・タイプDの背部パーツが大爆発を起し、ゲッタービームキャノンの掃射が止まる。

 

「ゼオラ、まさか……」

 

背後から奇襲を仕掛けられる位置にいたのはビルトファルケンだけだった。脱力し、浮かんでいるだけだったビルトファルケンの手にはオクスタンライフルがしっかりと握られていた。その姿にオウカがゼオラが意識を取り戻したのかと通信で問い掛けようとした時……ビルトファルケンから血を吐くようなゼオラの絶叫が戦場に響き渡った。ベルゲルミル・タイプDを狙撃したオクスタンライフルを投げ捨て、頭を下にして急降下するビルトファルケン。攻撃を加えられた事で掃射は止まったが、発射されたビームは今もビルトビルガーを飲み込まんとしており、それを追って急降下するビルトファルケンは熱線の余波で機体を焼かれながらもその加速を決して緩める事無く、海面に叩き付けられようとしているビルトビルガーを……いや、アラドを助けようとその手を伸ばす。

 

『やめてぇえええええええッ!!!! アラドッ!! アラドッ!!! やだッ! やだよッ!! アラドッ!! 忘れるなんて出来ないよッ!!! 死なないでッ! お願い私の側からいなくならないでッ!!!』

 

ずっと自我を封じられ、人形とされていたゼオラが発した叫び声が周囲に響き渡り、ビルトファルケンがギリギリの所でビルトビルガーを抱き抱えベルゲルミルの攻撃範囲からビルトビルガーを救う。それはアラドの献身とも言える自死の覚悟が朱王鬼の術を破り、ゼオラの意識を取り戻す切っ掛けとなった瞬間だった……。

 

 

 

 

朱王鬼の術によって自我が封じられていたゼオラだが、完全にその自我が封じられたわけでは無かった。アラドと遭遇した時などにその封印は一部解かれ、自分の意志ではないがアラドを嘲笑し、傷つけた言葉を発した記憶はゼオラにあったのだ。

 

(違う、違うの……アラド……違うの、わ、私そんなことを考えてないッ)

 

朱王鬼の悪辣さは仮にゼオラが自分の意志で自分の術を破ったとしても、アラドを傷つけた言葉の記憶を持たせる事で罪の意識に苛ませる……心を徹底的に傷つける事を目的としていた。そして虎王鬼からユウキへ、ユウキからアラドに渡った札はゼオラも持っていた。それはなんら特別な効果を持ったものではない、ただお互いの声を繋げる。通信機としての役割を持つだけの札……だがそれが必要だと虎王鬼は直感で理解したのだ。通信越しではない、札を通じて聞こえる肉声。それがゼオラに一番必要な物であると……。

 

『ゼオラ……俺さ……本当……お前の事好きだったんだぜ……? お前は多分……俺の事嫌いだと思うからさ……』

 

アラドの震える声が耳を打つ度にゼオラの身体は震えた。分かったのだ、分かってしまったのだ。アラドが何をしようとしているのか……。

 

「――ッ!!」

 

声を出そうとしてもゼオラの喉から言葉が発せられる事はない。アラドが側にいるから自我を取り戻していても、その身体は朱王鬼の支配下にあるのだ。どれだけ願っても、涙を流してもゼオラの身体は彼女の思い通りに動いてはくれない。

 

(違う、違うよぉ……嫌いじゃない、アラド。好きだよ、私もアラドの事が好きだよッ!!)

 

素直になれない性格だから、自分が好きではないゼオラだから……アラドに好かれる訳がないと思っていたから、強い口調でアラドを弟のように扱っていたが、そうしなければアラドが自分の側を離れてしまうと思っていた。オウカと仲睦まじくしている姿に、頼るのではなく頼られるようにならなければアラドが居なくなってしまうと思ったから強い自分の仮面を被っていたに過ぎない。

 

(やだ……止めて……アラド……そんなことしないで……私……私が死ぬからッ!! 止めて……止めてッ!!)

 

ビルトビルガーの腕に力が入りオクスタンライフルの発射シークエンスに入ったのがモニターに映り、アラドを失う恐怖で身体が震え歯がカチカチとぶつかり合って音を立てる。

 

『……俺の事忘れてくれよ……俺……死ぬからさ……本当に……頼むよ……ゼオラ……俺の事さ、本当忘れてくれていいから、オウカ姉さんとラトとさ……3人で生きてくれよ……な……』

 

「……やだぁッ!!!!」

 

引き金が引かれる寸前……アラドを失うかもしれないという恐怖と遺言を聞いたゼオラは朱王鬼の術を破った。操縦桿を握り、僅かに銃口をずらしたコックピットからコックピットの斜め上に……それが奇跡的にアラドの命を救った。

 

「アラド! アラド! お願い返事をしてアラドッ!!」

 

抱き抱えたビルトビルガーに接触通信でゼオラは必死にアラドの名を叫ぶ、だが帰ってくるのは静寂でゼオラの顔から血の気が引いた。

 

『ゼ……ゼオラ?』

 

「アラド、アラド! ごめん、ごめんなさいッ!! 私、私……ッ!」

 

『は……はは……良かった、お前……意識を取り戻したんだな……良かった』

 

力ない声だがアラドは心の底からゼオラが意識を取り戻した事を喜んだ。

 

「聞こえてた……ずっと聞こえてた……アラドが私を助けてくれようとしてたの……ずっと聞こえてたの……嫌いじゃない、アラド……私アラドの事嫌いじゃないよ……好き……大好き……アラドが死んだら……私……私……」

 

 

言いたい事は山ほどある……だけど言葉が出てこない、ゼオラがそうであるようにアラドも同じだった。言いたい言葉、話したい事は山ほどあるのに言葉が出てこない……だがその沈黙が今のゼオラとアラドには心地よかったが、それはいつまでも続かない。

 

『ラブロマンスは終わったかい? なら、さっさと死んでくれないかなッ!!!』

 

スリサズの乗るベルゲルミル・タイプDの放ったビームキャノンをビルガーとファルケンは左右に分かれることで回避する。

 

『ちっ! 欠陥品の分際で…良い加減に死ねよッ!!!』

 

目の前にいるのに完全に無視されていた事、そして自らが欠陥品と見下していたアラド達が今も死んでいないことに苛立った様子でスリサズがそう叫んだ。だが苛立っているのはスリサズ達だけではなかった。人を人とも見ないその傲慢な態度、そしてアラドとゼオラを殺されそうになり、そして再び欠陥品と蔑まれたオウカ達の怒りを買った。

 

『人を欠陥品、欠陥品と……貴方達は何様のつもりですかッ! 人を見下し嘲笑する貴方達こそ、愚かな人間です!』

 

『……私達には貴方達の方がよっぽど欠陥品のように見える、力に溺れた愚かな子供にしか見えないわ』

 

『親に力の使い方も教えられなかったのですね、人を思いやる心もない貴方達は可哀想な子供達ですわ』

 

力に溺れた子供と言うラトゥーニの言葉は的を得ていた。ベルゲルミル・タイプDを与えられ、その力に酔い知れ、自分達以外の全てを欠陥品、失敗作と言うアンサズとスリサズは力に振り回されている子供でしかなかった。そしてシャインの哀れみを伴った言葉がアンサズとスリサズを激昂させた。

 

『ははッ!! 良いぞ良いぞっ! もっと言ってやれッ!! てめえらは自分が優れてるって思ってる愚か者だってなッ!!』

 

風神鬼から風蘭の楽しそうな囃し立てる声が響き、その声に比例するように風神鬼の攻撃が鋭くなり、ベルゲルミル・タイプDの全身に刻まれていた細かい傷が徐々に大きな傷になり、紫電を撒き散らす。

 

『うるさい! 僕達は優れた新人類なんだ!』

 

『ぐうっ!! 無能で欠陥品の旧人類が僕達に意見する事なんて許されないんだよッ!! お前もだ! 下等な鬼の分際で僕達に逆らいやがって!!』

 

『はっ! パパがいなきゃ何にも出来ねぇ餓鬼がッ!! てめえ1人で何でも出来るようになってから私に文句を良いなッ!! それとも怖い怖い共行王でも呼んでやろうか? あはははははッ!!!』

 

 

自分達が蔑んでいる旧人類であるオウカ達に正論で反論され、オウカ達の言葉に反論する言葉をスリサズ達は持っていなかった……2人に出来たのは八つ当たりにも似た広域攻撃でオウカ達を黙らせる事……それは正論で論破され逆切れする子供の癇癪でしか無かった。

 

「やっぱり駄目か……アンサズとスリサズは廃棄だな。ゲイムシステムを使ってもこの様か」

 

ベルゲルミル・タイプGのコックピットで冷ややかな目でアンサズとスリサズを見ていたウルズはイーグレットへと通信を繋げる。

 

「パパ。やっぱりアンサズとスリサズは駄目だよ、もう半分くらい暴走してる」

 

『分かった。ウルズの裁量で処分してくれて構わない、だが戦闘データの記録だけは忘れないでくれ』

 

「分かったよ、パパ」

 

イーグレットの許可を得たことでウルズは自分の兄弟であるアンサズとスリサズを処分する為……いや、処分と言うのは正しくない、マシンナリーチルドレンの量産型とベルゲルミルに仕込まれている機能を使うだけだ。後は暴れるだけ暴れて自壊する……ウルズとイーグレットだけが知っている、オリジネイターと違い量産が効くナンバーに仕込まれている隠し機能を作動させる為に、ウルズはコンソールを操作する。

 

「さよならだ、愚かな兄弟よ。君達のことはほんの少しだけ覚えておいてあげよう」

 

ウルズがボタンを押し込み、ゲイムシステムとは違う鼓動がベルゲルミル・タイプDの内部で脈を打ち始め、それを確認したウルズは機体を上昇させると共にステルスを展開し、戦闘記録の収集を始めるのだった……。

 

 

 

 

 

ゲイムシステムを起動したスリサズはこれで簡単にケリが付くと思っていた。だが現実はそう甘くない、そもそもアンサズとスリサズが優勢を保っていられたのはオウカ達がアラドとゼオラを守る事を優先していたからだ。

 

『ゼオラッ!!』

 

『分かってるわ!』

 

だがゼオラが意識を取り戻し、何の心配も無くなったオウカ達の動きは急速に良くなっていた。

 

「ぐうっ!! 見えている、見えているんだ! 何故当たるッ!!!」

 

ゲイムシステムによるパイロット能力の向上……これを持ってすれば負けるわけがないと言うスリサズの自負は簡単に覆された。言葉をかわさなくても、オウカ、ラトゥーニ、アラド、ゼオラの4人は連携を組む事が出来るのだ。スクールは確かに4人にとってのトラウマだ、だがその全てがトラウマではない……温かい幸せな思い出と、血は繋がっていなくとも姉妹の絆は本物なのだ。

 

『『はぁああああッ!!!』』

 

ビルトビルガーとビルトファルケンの弾幕に紛れて突っ込んで来たラピエサージュのメガプラズマカッターの斬撃とフェアリオンのソニック・ドライバーによる打撃がベルゲルミル・タイプDの機体を激しく揺らす。

 

「ちいっ!!」

 

ゲッター炉心を得ているマシンセルの再生能力は桁違いであり、ダメージは即座に修復されるが、それでも懐に飛び込まれることを嫌がり、スリサズはベルゲルミル・タイプDを上昇させ……。

 

「う、うわあああああッ!?」

 

ボストークレーザーの掃射に飲み込まれ悲鳴を上げた。確かにベルゲルミル・タイプDのバリアと再生能力は脅威だ。だが初代ゲッターロボと比べても粗悪なゲッター炉心の出力では限界がある。

 

『そこに逃げるのは読んでいましたわッ!!』

 

そして最初は予知しきれなかったシャインだが、武蔵と触れている時間が長いシャインはゲッターロボに乗れるほどの身体能力は無いが、ゲッター線への適応率は極めて高い。純度の高いゲッター線に触れているからと言っても良いが、粗悪なベルゲルミル・タイプDのゲッター線に惑わされず、予知を成功させていた。

 

「くそがッ!! 調子に乗るんじゃ『念動集中ッ!! T-LINK……ブレードオオオオオオオッ!!!』がっがあああああああッ!?」

 

連携も攻撃の基盤もシャインの予知がベースになっている。シャインの乗るフェアリオン・タイプGにマシンナリーライフル・Gの照準を合わせようとした次の瞬間、念動力の刃を展開したR-ウィング・OBが突撃を仕掛けてきて、スリサズの絶叫が空域に響き渡る。

 

『貴様らの様な傲慢で矮小な存在こそ、害悪ッ!! 死ぬがいいッ!!!』

 

ベルゲルミル・タイプDの存在を感じたリュウセイと鬼は停戦し、それぞれの味方の助太刀をする事を互いに了承したのだ。武人気質の鬼だからこそ、万全で対等な状態での決着を望んだのだ。最初は疑ったリュウセイだが、下の激しい戦闘音に鬼の提案を受け入れたのだ。

 

『く、くそ!? なんで、なんで量産型の百鬼獣にも僕が押されているんだよ! おかしいだろ!!』

 

『この鳥獣鬼を量産機と甘く見た貴様の未熟さだッ!!!』

 

リュウセイとの戦いでダメージこそ負っているが鳥獣鬼は依然健在であり、飛び蹴りで蹴り飛ばしたベルゲルミル・タイプDに向かってワイヤークローを射出し更に殴り飛ばす。

 

『へぇ、あんた中々やるじゃん!!!』

 

『く、くそがあああああッ!!!』

 

殴り飛ばされた先では風神鬼が両手の間に竜巻を作り待ち構えており、それに飲み込まれたアンサズのベルゲルミル・タイプDは小規模な爆発を繰り返しながら全身を切り刻まれる。

 

『あんた名前は?』

 

『名もなき鬼ゆえ、風蘭様の問いに答える言葉を持ちません』

 

『ふーん。いいね、龍王鬼様にこの戦いであんたが生きて帰れたら紹介してあげるよ』

 

『ありがたき言葉にございます』

 

本来ならばアンサズとスリサズ、そして風蘭と鬼対オウカ、ラトゥーニ、アラド、ゼオラ、シャイン、リュウセイとなる筈が、アンサズとスリサズの傲慢さが本来味方である筈の百鬼帝国である風蘭達でさえ敵に変えたのだ。それは愚かとしか言いようのない所業だった。

 

「なんでだ! なんで僕達が欠陥品に劣るんだッ!!」

 

『そんなこと僕が知るか!! 僕達は旧人類を抹殺し、新たな種となる筈なのにッ!! くそッ! こんなの悪夢だッ!!』

 

ダメージが積み重なり、アンサズとスリサズが互いに怒鳴りあう。だがその言葉の中にリュウセイ達が聞き捨てならない言葉があった。

 

『旧人類の抹殺だと!? それに新たな種だと!? そんな事を俺達がさせるかよッ!!!』

 

「くそ…くそッ!! パパは僕達に言ったじゃないか! 僕達の力なら全人類を粛清して地球を支配出来る器だって……」

 

『こんな……こんなことはありえないッ!!』

 

イーグレットから聞かされた言葉が全てであり、人生経験も疑う事も知らない。自分達が優れた人種であると言う事を疑わず、自分達以外を見下していたアンサズとスリサズにとって今の目の前の光景は悪夢その物だった。

 

『てめえらの好きになんかさせるかよッ!! それに散々人の事を欠陥品だの、処分するだの好き勝手言いやがってッ!!! ゼオラッ! モードTBSだッ!!』

 

『T、TBSッ!? なにそれッ! 私知らないわよッ!!』

 

『ビルガーとファルケンの合体攻撃だッ!! とにかく俺とゼオラなら出来るッ!! 行くぜッ!』

 

『わ、分かったわッ!!!』

 

アラドに先導されゼオラも高機動モードを起動させ、ベルゲルミル・タイプDの攻撃をかわしながら高速で突撃する。

 

『くそ、屈辱だッ!!!』

 

「下等な旧人類ごときにッ!!」

 

1機では防ぎきれないと判断したアンサズとスリサズは2機のゲッター炉心を同調させ、強固なバリアを展開する。その強度は凄まじく、オクスタンライフルとスタンライフルの弾雨を受けてもバリアはびくともしない。

 

『ラトゥーニ、あのバリアを破壊します! 手伝ってくれますね!』

 

『はい、オウカ姉様! シャイン王女、リュウセイも』

 

『分かっていますわッ!』

 

『行くぜッ!!』

 

ダメージこそ負っているビルトビルガーだが、エネルギーに関してはまだ余裕があり、そしてそれはビルトファルケンも同様だった。アラドとゼオラを庇うように立ち回っていたオウカ達の機体はエネルギーと弾薬に不安があり、鳥獣鬼とドッグファイトを繰り広げていたR-ウィング・OBも同様で、今戦闘可能な機体の中で1番火力が出るビルトビルガーとビルトファルケンの為の道を作るのは間違いでは無かった。

 

『はっは! 面白そうじゃないか、比翼連理の翼……見せてもらうとするかねッ!!』

 

風神鬼が振るった刃から放たれた風が海面と天空の両方から竜巻となってベルゲルミル・タイプDを上下から抑え込んでその動きを完全に拘束する。

 

『さってと、後は見てるとしようかな、お前も動くなよ』

 

『御意』

 

もうこれ以上動く気配のない風神鬼と鳥獣鬼を見て、オウカ達もベルゲルミル・タイプDのバリアを破壊する為に動き出す。

 

『ロックオン……Bモードシュートッ!!』

 

オーバーオクスタンランチャーから3連射で実弾を放ち、続けて銃身を展開し腰を落とすラピエサージュ。

 

『ラトゥーニ!』

 

『シャイン王女ッ!!』

 

音を立ててフェアリオンの装甲が展開し、アーマーの下の素体の一部が露出する。フルパワーのボストークレーザーを使うには装甲の一部を展開する必要があり、Eフィールドや装甲の一部が解除され防御力が低下する為乱戦では使用出来なかったが、相手が守りを固め容易に反撃出来ない今ならば確実に当てれるとラトゥーニとシャインは判断した。

 

『『ボストークレーザーッ!!!』』

 

『Eモードシュートッ!!!』

 

最初の実弾は楔であり、ベルゲルミル・タイプDのバリアに阻まれているが、そこに続けてビームが3連射で叩き込まれる。

 

「くうっ! だけどその程度の攻撃でッ!」

 

『ベルゲルミルのバリアは『うおおおおッ!!! 念動集中ッ!!! T-LINK……ナッコォオオオオオッ!!!』な、何いッ!?』

 

並みの特機ならば一撃で大破しかねないほどの出力のビームだったが、ベルゲルミル・タイプDのバリアを破壊するには僅かに力が足りなかった。それに勝ち誇っていたスリサズの目の前に紫電を撒き散らし、右腕を失ったR-1が飛び出してくる。OBをパージし、危惧していた空中分解一歩手前で変形を成功させたリュウセイの魂の一撃はベルゲルミルのバリアを完全に粉砕した。

 

『アラドッ!!! 決めろぉッ!!!』

 

だがその対価として機能停止しカメラアイから光を失ったR-1が真っ逆様に落下する中でも、リュウセイは仲間を鼓舞する叫びを上げる。

 

『り、リュウセイッ!!!』

 

落下していくR-1を慌ててラトゥーニが救出に回る事で事なきを得たが、一歩間違えばリュウセイは死んでいた。文字通り命を懸けてアラドとゼオラの道を作ったのだ。

 

「行くぜゼオラッ!! ジャケットアーマーパージッ!!」

 

『ええッ!!! 高機動モード起動ッ!!』

 

アーマーをパージしたビルトビルガーはスタンアサルトカノンを連射し、バッテリー分全てを撃ち切るとスタンアサルトカノンを投げ捨て、ウィングにマウントされているコールドバスターブレードを両手に持ち一気に加速する。

 

『ふん! 欠陥品風情が突っ込んでくるなんて……返り討ちだッ!!』

 

『アラドを欠陥品って言うなあッ!!!』

 

スリサズの言葉に激昂したゼオラの放ったオクスタンライフルEモードの一撃がベルゲルミル・タイプDの胴体を捉える。だがマシンセルの修復能力で即座に回復し、同様にアサルトスタンカノンの銃弾も修復するからと受け止めた。

 

『な、なんだッ!?』

 

『し、システムダウンだって!?』

 

回復するから、バリアがあるからと回避を怠り、防ぐべき攻撃を防がなかった2機のベルゲルミル・タイプDは過剰電圧によってシステムダウンを引き起こす。

 

「うおりゃあああッ!!!」

 

システムダウンを起せばマシンセルの回復能力も、ゲッター炉心による強固なバリアも何の意味も持たない。コールドバスターブレードを頭上に振り上げ、前転するようにビルトビルガーが叩き込んだ一撃はベルゲルミル・タイプDのゲッター合金の装甲を容易く打ち砕き深い傷を刻み付ける。

 

「まだまだぁッ!!!」

 

だがアラドの攻撃はこれだけでは終わらない。その場で独楽の様に回転し横薙ぎの一撃を叩き込むと同時にベルゲルミル・タイプDを上空に打ち上げる。

 

「ゼオラッ!!」

 

『分かってるッ!!』

 

オクスタンライフルをEモードで乱射しながら急降下して来たビルトファルケンがベルゲルミル・タイプDに組み付き、至近距離でBモードを乱射する。

 

『ぐっ! くそがッ!! こんな、こんなことがッ!!!』

 

接触通信によるアンサズとスリサズの恨み節が聞こえてくるがゼオラは躊躇う事無く引き金を引き続け、蹴りを叩き込みベルゲルミル・タイプDをビルトビルガーに向かって叩き落す。

 

『アラドッ! そっちに行くわよッ!!』

 

「おうッ!! 行くぜぇッ!!!」

 

落下してきたベルゲルミル・タイプDに回し蹴り……いやソバットの要領で回転したビルトビルガーの蹴りが叩き込まれビームステークが炸裂し、ベルゲルミル・タイプDの胴体に大きな風穴が開いた。

 

『回復した!! 調子に乗るなよ欠陥品がぁああああッ!!!』

 

『僕達は選ばれた超人類なんだ、下等な旧人類が僕達に逆らうなあッ!!』

 

アサルトスタンカノンによってダウンしていたシステムが復旧し、マシンセルによる回復とバリアが復活し、今まで一方的に攻撃を受けていたアンサズとスリサズにG・マシンナリーライフルとビットによる攻撃でビルトビルガーとビルトファルケンを近づけさせまいと猛攻撃を仕掛けるが、完全に勢いに乗っているアラドとゼオラの勢いを阻むことは出来ない。

 

「『ツインバードッ』」

 

スタッグビートルクラッシャー改を突撃槍の様に突き出したビルトビルガーとオクスタンライフルの銃口にテスラドライブを応用した刃を展開したビルトファルケンが舞うように攻撃を回避しその速度を爆発的に高める。

 

『「ストラァァァイクッ!!!」』

 

ビルトビルガーとビルトファルケンのテスラドライブが同調し、ブレイクフィールドが展開され最大加速のままブレイクフィールド、そしてスタッグビートルクラッシャー改とオクスタンライフルに押し潰されながら切り裂かれたベルゲルミル・タイプDは上半身を完全に消し飛ばされ、爆発を繰り返す。

 

『う、嘘だ……こ、こんなの……』

 

『ゆ、夢だ……こんなの……夢に決まってる……』

 

その爆発がコックピットブロックをも飲み込みベルゲルミル・タイプDは最後に全身を痙攣させて、大きな爆発を起し海面へと落下していった。

 

「はぁはぁ……人の事を欠陥品とかいうからだぜ……馬鹿野郎共が……ゼオラ、大丈夫か?」

 

『う、うん……私は大丈夫。アラド……私やオウカ姉様ってどうなるの……やっぱりその……捕虜とか?』

 

「大丈夫だって、ハガネもヒリュウ改もシロガネの艦長も皆良い人なんだ。特にシロガネのリー艦長は本当に良い人だから心配する事はなんもねえよ」

 

不安そうに言うゼオラにアラドは大丈夫だと朗らかに笑う。

 

『本当? 私とアラドが引き離されたりしない? アラドは側にいてくれる?』

 

「大丈夫だって、それよりセロ博士とリュウセイを助けて帰ろう。皆にゼオラ達の事も紹介したいしな」

 

ベルゲルミル・タイプGの反応は無く、タイプDは爆発して水没した。あの状況ではアンサズとスリサズも確実に死んでいるであろうとアラドは判断し、リュウセイとセロを助けてハガネへ戻ろうとゼオラに声を掛け、オウカ達と合流する為に高度を落した。確かにアンサズとスリサズはツインバードストライクによって死を迎えた、だがアンサズとスリサズに仕込まれていたもう1つの意志は海中で目覚めを迎えようとしていた……。

 

 

第193話 愛する者の為に その5へ続く

 

 




前半戦はこれにて終了、次回は仲間が合流してくるって感じで強いボスを出そうと思います。あとゼオラは不穏ですが、ゼオラがやんでるのがデフォなのでこれでOKですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。


PS

期間限定の復刻がチャで欲しかったMAP入手出来ましたが、アムロはだいぶ強くなっているのでできればジャッジメントハードレインが良かった。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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