第193話 愛する者の為に その5
ベルゲルミル・タイプDを撃墜し、オウカ達と合流したアラドとゼオラはそのまま海面まで降下し、フェアリオン・タイプSが両手で沈みかけているR-1を支えているのと、コックピットから這い出て頭部に立って手を振っているクエルボの救出の手助けを始める。
『大丈夫か、リュウセイ』
「おーなんとかな、再起動まで後340秒だとさ……悪いけどアラドも支えてくれるか?」
『分かった!』
フェアリオン・タイプSとビルトビルガーに支えられやっと態勢が安定したリュウセイはヘルメットを脱いで額の汗を拭った。
(あいつらもいったか)
風神鬼と鳥獣鬼は何時の間にか姿を消しており、リュウセイ達と戦う意志が無かったと知り、今のボロボロの状態で戦う事にならなくて良かったとリュウセイは安堵し、思わずポロリと楽観的な言葉を口にしてしまった。
「なんとかなったな」
捨て身を通り越して特攻になってしまったが、ベルゲルミルのバリアを砕き撃墜のお膳立てが出来た。この大破寸前のR-1でもなんとかなったなとリュウセイは薄暗いコックピットの中で笑った。
『なんとかなったけど無茶しすぎだよッ!』
「うッ……わ、悪い……ラトゥーニ」
すぐにラトゥーニに怒鳴られ、悪かったと謝罪する事になる。実際死ぬ一歩手前だったのだから怒られるのは当然だ。
『本当ですわ、もう少し考えて行動をするように、それとリョウト達と連絡が取れたのでもうすぐこっちに合流してくれると思いますわよ』
「……はい」
自分より年下のシャインに叱られ、その上仲間と合流する手筈まで整えてくれていた事にリュウセイは肩を落す。
『あードンマイ』
「……いや、無理に励ましてくれなくてもいいぜアラド。良くライに叱られてるしな」
考えるより行動のリュウセイは叱られ慣れしていると言っても良い、それに今回はOBを分離すれば空中分解もあり得るから決してパージするなと注意されていたのにパージして変形を強行したので100%自分が悪いと自覚しているリュウセイは謝る事しか出来ない。
『それよりゼオラ達は』
「大丈夫だって、リー中佐も保護するのは軍人の使命って言ってただろ? ちゃんと保護してくれるから心配ないさ」
リュウセイのこの言葉は決して楽観的ではなく、今までの戦いでリュウセイ達が見てきたリー・リンジュンという男だから信用出来ると言う信頼の現われだった。
『それよりもあのアンサズとスリサズがのってた機体は……ゲッターロボGに良く似てた。だけどあれはアードラーが使っていたのは別物をベースにしてると思う』
『……ええ。乗せられていたから分かりますわ、あれにはゲッター炉心が組み込まれていますわ、パイロットがあんな子供でなければ……きっと私達は死んでいましたわ』
『あの再生力はウォーダンが乗ってるスレードゲルミルと同じもんだと思う……これはかなりやばいんじゃないか?』
アードラーが作りだした量産型ゲッターロボG――それが製造されたのはアースクレイドルであり、アースクレイドルを占拠している百鬼帝国、そして異形と化したゲッターノワールも元は本物のゲッターロボであり、アースクレイドルの技術力を考えれば本物のゲッターロボを量産することも不可能ではない。その上マシンセルを組み込まれてしまえばゲッター炉心によるエネルギー回復、そしてマシンセルによる自己修復と進化……手のつけられない化け物になる可能性をラトゥー二達は危惧した。
「ああ、多分アースクレイドルに情報が残ってたんだろうな……エクセレン少尉の事もあるし、R-1も復旧した。早くハガネに戻って報告しないと……ッ!!」
リュウセイもその事に同意し復旧したR-1を浮上させようとしてその顔を歪めた。
「早くそこから逃げろッ!!」
『な、何を……』
「早くッ!! 死ぬぞッ!!!」
突如逃げろと叫ばれたオウカは困惑したがその必死さを滲ませる声にクエルボをラピエサージュのコックピットに回収し、ビルトファルケンと共に急浮上する。その直後海中から伸びて来た鋭い触手がラーズアングリフとラピエサージュ、ビルトファルケンが滞空していた場所を刺し貫いた。
『何が……ッ!!』
『これって……!?』
枝分かれを繰り返し、ラピエサージュとビルトファルケンを追い回す触手……どす黒く、黄色の複眼がびっしりに浮かんでいる。
「インベーダーだッ! どこか……らッ!?」
『嘘……』
『こんな事が……あって良いのですか……』
触手の先……本体が海中から浮上する。それは紛れも無くベルゲルミル・タイプDであった。だが失った上半身はインベーダーと取り込んだラーズアングリフ、そして同じく上半身を消し飛ばされたもう1機のベルゲルミル・タイプDが変異した異様なシルエットの物だった。
【キシャアアアアアアアッ!!!】
「散れッ!!」
リュウセイが叫ぶのとメタルビースト・ベルゲルミルが雄叫びを上げるのは殆ど同じだった。メタルビースト・ベルゲルミルの全身の複眼が不気味な音を立てながら蠢きこの空域にいる全てを取り込まんとして触手を伸ばす。
「くそッ! やべえッ!!」
『伸びてくる勢いと範囲が広すぎるッ』
『これは不味いですわよッ!?』
全方位へ一斉に伸ばされた触手が更にそこから縦横無尽に枝分かれを繰り返し、執拗に追ってくる。だがそれでもリュウセイ達は触手を伸ばしているメタルビースト・ベルゲルミルから距離があるから回避する事が出来た。だが距離が近すぎたオウカとゼオラは伸びてくる触手に完全に逃げ道を断たれ、海面に顔を出したメタルビースト・ベルゲルミルの胴体が開き巨大な口となりラピエサージュとビルトファルケンを噛み砕こうと飛び出す。
『ゼオラッ! オウカ姉さん!!!』
『避けてッ!!!』
アラドとラトゥーニが咄嗟に避けろと叫んだが、上空には触手、両脇も触手に囲まれ、下から飛び出してくるメタルビースト・ベルゲルミルの攻撃を避ける手段はどちらかメタルビースト・ベルゲルミルに捕食されるしか残されていなかった。
「ゼオラ、貴女はなんとしても逃げなさい」
『オウカ姉様、駄目ッ!!』
ラピエサージュがビルトファルケンを突き飛ばし、メガプラズマカッターでメタルビースト・ベルゲルミルと応戦しようと……いや、自分が犠牲になりゼオラを生かす事を選択したオウカは目の前に広がる巨大な口を見て、恐怖に僅かに身体を強張らせても妹を救う事が出来たと笑みを浮かべた。
「セロ博士、すみません」
「私は構わないさ、なんとしてもゼオラ達を逃がさなくてはいけないと言うのは私も同じ気持ちだ」
クエルボを巻き込んでしまう事にオウカが謝罪したその時だった。
『馬鹿野郎ッ!! 生きる事を諦めんなッ!!! トマホォォオオクッ!! ブゥゥゥウウウメランッ!!!!』
武蔵の怒声と共に投げられたゲッタートマホークがラピエサージュとビルトファルケンを覆っていた触手を切り払い、メタルビースト・ベルゲルミルに突き刺さる。
【ギギャアアアアアアッ!!!】
『くたばりやがれッ!! メタルビーストッ!!!』
トマホークブーメランを投げつけると共に急降下していたゲッタートロンベ1はメタルビースト・ベルゲルミルに突き刺さっていたゲッタートマホークを掴んで全体重を掛けたまま袈裟切りに切りつける。
『まだだッ!!! ミサイルマシンガンッ!! うおおおおおおッ!!!!』
そして大口を開けているメタルビースト・ベルゲルミルの口の中に腕を突っ込み、そこからミサイルマシンガンを展開し全弾発射する。
『逃げるぞッ!!!』
「え、あッ!?」
『わ、わわわッ!?』
メタルビースト・ベルゲルミルの体内でゲッターミサイルが爆発し、苦悶の絶叫を上げているメタルビースト・ベルゲルミルを蹴りつけて急上昇したゲッターロボ・トロンベ1はラピエサージュとビルトファルケンの腕を掴んで加速し、フェアリオンとRー1の元へ向かう。
「武蔵! 来てくれたのか!」
『悪い、遅れたッ!! もうじき皆が来る! あの化けもんはオイラに任せて、リュウセイ達は自分の身を守る事に集中しろッ!!』
ラピエサージュとビルトファルケンを安全圏まで連れ出した武蔵の駆るゲッターロボ・トロンベ1は再び急降下し、海面から憎悪に満ちた瞳で睨みつけてくるメタルビースト・ベルゲルミルへと突撃していくのだった……。
海面から顔を出しているメタルビースト・ベルゲルミルには最早もとの面影は無く、海中に適応した姿……鮟鱇の様な体に異形の上半身が乗っているだけの化物となっていた。
「カイさん、ギリアムさん! オープンゲット……なんで死にそうな顔をしてるんですかッ!?」
相手が海中ならばゲッター1ではなく、ゲッター3にチェンジしようとしてオープンゲットをするとイーグル号のギリアムとジャガー号のカイに通信をつなげた武蔵だったが、モニターに映った光景に絶叫した。
『……(手を左右に振り無理とやっているギリアム)』
『……(青い顔で口を押さえて瀕死のカイ)』
「返事もする気力もないんですか!? くそッ!! こうなりゃゲッター1でやってやるッ!!! うおおおおッ!!!!」
メタルビースト相手に手を抜くほど武蔵は愚かではない、慣れていないゲッタートロンベだろうと基本的な部分は乗りなれているゲッター1と操縦系は大差はない。鮟鱇の背中の部分から伸びている触手を右手で掴み、引き千切りながら左手でゲッタートマホークを振るう。
「ドラゴンのパチモンなんかにオイラが負けるかッ!! ゲッターレザァァアアアアアーッ!!!」
腕の側面の刃でメタルビースト・ベルゲルミルをすれ違い様に切り裂くが、切り裂かれた箇所から触手が伸びてくる。
「くそが、舐めんなよッ!!!」
逆手に構えたゲッタートマホークで切り払い、口を開いて突っ込んで来た触手の顔面に拳を叩き込み、触手を破裂させる。圧倒的な攻撃力を持っているように見えるが武蔵は苛立った様子で声を上げた。
「軽いんだよッ!! ああッ! もうッ! 苛々するッ!!! 攻撃力が足りねぇッ!!!」
ゲッタートロンベはテスラドライブなどを搭載し、新西暦の人間でも操縦できるようになっている。だがその反面ゲッター1と比べても馬力が弱く、ゲッタービームの出力も弱い。新西暦基準で考えれば破格の性能を持った特機だが、ゲッターパイロットからすればゲッタートロンベは余りにも性能が低かった。
「エンジンを上げて行きますよ! お願いだから気絶だけはしないでくださいよ! カイさん、ギリアムさんッ!!」
『『!?!?』』
今でも十分にやばかったのに、更にエンジンを上げるという武蔵にカイとギリアムは声にならない声で制止するが、当然メタルビーストを前にしている武蔵が手加減や遠慮をするわけがない。もっと言えばゲッター1なのに空中戦を挑まず、敵の上に乗って戦っているのにも理由があった。
(多分、リュウセイ達は戦えない、ならここで足止めしねえとッ!)
飛行するくらいのエネルギーは残っているだろうが、メタルビースト・ベルゲルミルと戦うには心もとない筈だ。ここでゲッタートロンベを囮にし、R-1達を捕食させない為に全方位からの攻撃に晒される事になるが、相手の体の上に乗っての戦いを武蔵は選んだのだ。
【グオオオオッ!!!】
「でかけりゃ強いわけじゃねえぞッ!!! うおらあッ!!!」
マシンセル、そしてインベーダー細胞で巨大化したダブルトマホークとゲッタートマホークがぶつかり合い火花を散らす。だが徐々にゲッタートマホークが押されて来る。
「カイさん!? ギリアムさん! ちょっと大丈夫ですか!?」
明らかにパワーダウンしている。その理由がカイとギリアムにあると判断した武蔵はモニターを見て絶句した。
『……(白目を剥いてかなり危ない感じで上半身が揺れてる)』
『……(青を通り越して白い顔で辛うじて操縦桿を握っているがそれだけのカイ)』
全力の武蔵に操縦についてこれずギリアムは失神、カイも気絶寸前で根性で操縦桿を握ってるだけで、戦力に数えられない。
『武蔵様! 避けてくださいッ!!』
「シャインちゃんか! 助かるッ!! うおおおッ!!!」
フェアリオン・タイプGの放ったロールキャノンがダブルトマホークの切っ先を僅かに逸らし、その隙を付いてゲッタートロンベは強く踏み込みながら振り被ったゲッタートマホークの一撃を叩き込む。
【グギャアアアアッ!?】
「うおッ!? ったとととっ!?」
武蔵が会心の手応えを感じた通りメタルビースト・ベルゲルミルはその痛みに暴れだす。その暴れように殆ど単独操縦のゲッタートロンベでは対応しきれず、バランスを崩しゲッタートロンベが海中に落下する。
「やべえッ!! 逃げろッ!!!」
ゲッタートロンベを振り落としたメタルビースト・ベルゲルミルは鮟鱇のような姿から変異し、首長竜のような姿になると翼を生やし海から飛び立つ。その姿を見て武蔵はメタルビースト・ベルゲルミルの狙いがR-1達を喰らってエネルギーを回復させる事だと見抜き、逃げろと叫んだ。
『カロリックミサイルッ!』
『いっけえッ!! クロスマッシャーッ!!!』
【ギギャァアアアアッ!!!】
飛び立った瞬間雲の間から飛来したミサイルと螺旋状の光がメタルビースト・ベルゲルミルの背中を貫いた。
『マサキ! 来てくれたのか!』
『おう! 間に合ってよかったぜ、リュウセイ。後来たのは俺だけじゃないぞ』
マサキの言葉の通り雲を突き抜けてヒュッケバインガンナー・タイプMとアステリオンとベルガリオンが姿を見せる。
『間に合ったぁッ!!』
『喜んでる場合か! 今牽引用のロープを射出する! それに捕まれッ!! 武蔵、私達は離脱するが構わないか』
「行ってくれ! 巻き込んじまうッ!!!」
ゲッターウィングで飛翔しながら武蔵が叫ぶとアステリオンとベルガリオンが射出したロープにR-1と今になってゲッターキャノンのダメージが出て来てエンスト寸前のビルトビルガーが捕まる。
『武蔵さん、エクセレン少尉は!?』
「オイラが来た時にはエクセレンさんはもういなかった! 詳しくはリュウセイ達に聞いてくれッ! あんまり喋ってる時間は無さそうだ! 急いで離脱してくれッ! マサキとリューネは守ってやってくれ!」
ベルゲルミル・タイプDとインベーダーの適合率が上がってきたのか、その姿がより洗礼されていくのを見て武蔵は早く離脱するように促す。
『ラトゥーニ、シャイン王女、一緒にいるって事は』
『はい! ゼオラは朱王鬼の術から解放されてます!』
『分かったわ、それじゃあファルケンともう1機は私とリョウト君で牽引する! マサキ君、リューネ! 支援をお願い!』
武蔵だけを残して良い物かと悩んだが、武蔵の剣幕で自分達がここにいた方が武蔵が危ないと判断したリオはガンナーからロープを射出しラピエサージュとファルケンに掴まるように声を掛ける。
『だ、だけど、武蔵だけじゃ』
『そうだぜ、相手はインベーダーだ。武蔵1人じゃ無茶だ』
武蔵が1人で残ることにリュウセイとリューネが渋り、マサキも撤退すること事体には反対していないが別案を出す。
『ああ、俺かリューネだけでも残るべきだと思うぜ』
「大丈夫だぜ、オイラは1人じゃないんでね」
『斬艦刀ッ! 電光石火ッ!!!』
武蔵が1人じゃないと口にした次の瞬間、空中から飛来したエネルギーの刃がメタルビースト・ベルゲルミルの背中で炸裂し、メタルビースト・ベルゲルミルが苦悶の声を上げ、ダイゼンガーとゲシュペンスト・タイプSが姿を見せる。
『ゼンガー少佐!』
『それにカーウァイ大佐も!』
救援信号をキャッチしたゼンガーとカーウァイが助っ人に現れたことにマサキ達が声を上げる。
『ここは俺とカーウァイ大佐が残る、ハガネへ戻れ。何が起こるか判らん』
斬艦刀を油断無く構えながら早く行けと促すゼンガーとその隣で参式斬艦刀を抜き放つゲシュペンスト・タイプS
『その通りだ、ここは私とゼンガー、そして武蔵に任せて先に行け』
「そういう事、多分やべえことになるからさ、早く行ってくれ」
変異を繰り返し、より戦闘に特化した姿になろうとしているメタルビースト・ベルゲルミルを見て、これ以上はここに残れないと判断し、リュウセイ達はアステリオン達に牽引されて離脱する。
『シャイン王女、早く』
『分かっていますわ、武蔵様。お気をつけて』
「おう! 大丈夫ちゃっちゃと片付けて帰るからさ! シャイン達も気をつけてな」
武蔵の言葉に背中を押されシャイン達のフェアリオンもアステリオンの後を追って空域を離脱する。その姿を見ていた武蔵の口元には笑みが浮かんでいたが、その姿が見えなくなるとその視線が鋭い物になる。
「さてと、ああは言いましたけど。こいつ結構やばいですよ、早く倒さないとどこまで進化するか分かりませんよ」
『ああ、ここで確実に仕留める、油断するなよ、ゼンガー』
『はっ!』
武蔵、カーウァイ、ゼンガーの眼下ではメタルビースト・ベルゲルミルが更なる変異を遂げていた、首長竜のような胴体はより戦闘に特化したのか機銃や電撃を放つであろう円錐状のパーツが突き出し、竜の頭部は東洋の竜を思わせる形状へと変化し、異形のベルゲルミルの姿はゲッタードラゴンの上半身へと変異していた。それはベルゲルミルの要素が消え去り、もっとも戦闘に適した形状へと変化した証なのだった……。
武蔵は知る由もないが、メタルビースト・ベルゲルミルが変化した姿は突然変異と言う訳ではない。ゲッター線の記憶の中にある強敵であり、竜馬、隼人、弁慶の乗るゲッターロボGを一蹴したアトランティス帝国の守護神であり、アトランティス帝国の住人が眠る揺り篭でもあった「ウザーラ」そしてゲッターロボの進化の究極系の1つでもあり、正しい進化を果たした「真ドラゴン」を模した姿であった。ベルゲルミル・タイプDの元になった量産型ゲッターロボG、そしてそれに搭載されたゲッター炉心が引き金となり呼び起こされた姿であった。
【ギギャアアッ!!!】
『ぬううッ!!!』
下半身の竜の首から吐き出されたどす黒い色のゲッタービームをダイゼンガーが斬艦刀を盾にして防ぐ、だがその熱量を完全に防ぐ事は出来ずゼンガーの苦悶の声が周囲に響く。
「武蔵!」
『分かってます! ミサイルマシンガンッ!!!』
ミサイルマシンガンとグランスラッシュリッパーが立て続けに命中し、ゲッタービームの照射は止まった。だがゲッタービームの直撃を受けていたダイゼンガーの装甲のあちこちからは黒い煙が上がっていた。
『大丈夫ですか! ゼンガーさん』
『問題ないッ! だがこいつの攻撃力は侮れんッ!』
メタルビーストになった所でインベーダーの知恵は決して高い物ではなく、搭載されている武装を使うだけでありそこに戦術などはない。だが真ドラゴン・ウザーラの記憶を引き出したベルゲルミル・タイプDは効率的に戦う事を学習していた。
【シャアッ!!!】
短い雄叫びと共に竜の部分から無数のビットが射出され、ゲッタートロンベ、ダイゼンガー、ゲシュペンスト・タイプSを取り囲むように展開される。
『またそれかッ!! トマホォォオオクッ!! ブゥゥゥウウウメランッ!!!!』
『斬艦刀……大ッ! 車ッ!! りぃぃいいいんッ!!!!』
ゲッタートロンベの投げ付けた2つのゲッタートマホークとダイゼンガーの斬艦刀大車輪によってビットの大半を破壊することに成功するが、余りに大量に展開されておりその全てを破壊する事はできず再び翡翠の檻が形成される。
「ぐっ……! 鬱陶しいなッ!!!」
『操縦桿が重い……ッ! 厄介な事をしやがってッ!!』
ビット同士からゲッター線を応用した重力場、そしてジャミングが発生しシステムダウン、そして身体に圧し掛かる重圧にカーウァイと武蔵は悪態を付いた。動けないほどではない、だが僅かに反応が遅れる。それは圧倒的な攻撃力を持つメタルビースト・ベルゲルミルを相手にするには致命的な隙になりかねない、ぎこちなく動くゲッタートロンベとゲシュペンスト・タイプSの横を抜け、ダイゼンガーがメタルビースト・ベルゲルミルへと肉薄する。不幸中の幸いと言うべきか、ダイゼンガーはゲッター線の檻に囚われていなかった。
『チェストオオオオオッ!!!!』
【グルオオオオッ!!!】
ゼンガーの裂帛の気合と共に振るわれた斬艦刀の一閃とメタルビースト・ベルゲルミルの雄叫びと共に振るったダブルトマホークが重なり、鈍い音を立てて竜の首とメタルビースト・ベルゲルミルの腕が宙を舞った。
『浅いッ……【シャアアッ!】ぐっ!』
ゲッター線の檻はすり抜けた筈だった……だが僅かに檻が機体を掠めスピードが鈍った分だけ狙いがズレた。反撃の尾による打撃でダイゼンガーの装甲が拉げ弾き飛ばされる。
「ブラスターキャノンッ!!!!」
『ゲッタービィィイイイイムッ!!!!』
動きが鈍いのならば白兵戦ではなく射撃兵器を使えばいい。ブラスターキャノンとゲッタービームが立て続けにメタルビースト・ベルゲルミルを捉え、耳障りな絶叫と共にビットが回収されゲッタートロンベとゲシュペンスト・タイプSの機体の自由が戻ってくる。だがゲッタートロンベの反応が鈍く、触手が足に巻き付き引き寄せられるのを見てゲシュペンスト・タイプSがフォローし、離脱する事が出来たが武蔵とは思えない反応の鈍さにカーウァイがどうしたんだと声を掛ける。
「武蔵、どうした、随分と動きが鈍いぞ」
『いや、カーウァイさん。ギリアムさんとカイさんが気絶してて出力が全然上がらないんですよ……』
「何? 何をしてるんだ、あいつらはッ!!」
3人揃っていればゲッターD2と比べれば機体性能が劣るゲッタートロンベでもある程度戦えるはずが、パイロット2人が行動不能で逆に出力低下していると聞いてカーウァイは激昂する。
『カーウァイ大佐、いきなり武蔵の全開の操縦についていけなかったのでは?』
「だとしても気絶するとは情けないッ! 鍛え方が足りんッ!」
ゼンガーがフォローするがそれでもカーウァイの怒りは収まらず、ゼンガーは心の中で南無と呟きながらダイゼンガーを前に前進させる。
『武蔵、フルパワーのゲッタービームならあいつを撃墜できるか?』
『ちょっと厳しいっすね、元々ゲッタートロンベは少し出力に難がありますし……今2人気絶してますし……生半可なゲッタービームじゃあいつを強化することに繋がるかもしれないですから目1杯エネルギーをチャージして……その上で炉心、あいつの炉心を露出させてくれれば……多分いけます』
炉心を露出させろと言う武蔵の言葉にカーウァイとゼンガーはメタルビースト・ベルゲルミルに視線を向ける。巨大化のペースは遅く、取り込むものも無く急速に強化される可能性は低いが、生半可なゲッタービームでは進化を促してしまう可能性があると武蔵が口にする。
「どれくらい掛かる?」
『……今の調子なら3分。檻を展開されたらもっと時間が掛かると思います』
武蔵の返事を聞いてカーウァイとゼンガーは少しだけ思考を巡らせたが、2人の出した答えは同じものだった。
「分かった、時間は稼いでやる。一撃で決めてくれ」
大破寸前のハガネの防衛で応援は望めない、仮に応援を呼んだとしても守りを手薄にし敵の強襲を受け帰る場所を失うリスクを考えれば武蔵とゲッタートロンベに全てを賭けるのが最善手だと判断したのだ。
『頼んだぞ武蔵』
斬撃ではメタルビースト・ベルゲルミルを倒すのは難しく、ブラスターキャノンでは出力が足りない。不安要素はあるがゲッタービームに賭ける事を決めたカーウァイとゼンガーはそう言うと首と腕を再生させたメタルビースト・ベルゲルミルに向かってダイゼンガーとゲシュペンスト・タイプSを向かわせ、危険を承知で白兵戦を挑むのだった。
成層圏のギリギリの所でメタルビーストと化したベルゲルミルのデータを取っていたウルズは落胆した素振りを隠す事が出来なかった。
「アンサズとスリサズの愚か者め、これではデータが取れない」
ツインバードストライクでコックピットを潰された。本来ならばアンサズとスリサズもインベーダーと化し、マシンナリーチルドレンの技術を持ったメタルビーストになる筈だったのだが、コックピットを潰され爆発した事で完全に死を迎えてからインベーダー化したので本能で暴れるメタルビースト・ベルゲルミルは期待したほどの戦闘力を持ち合わせていなかった。
『斬艦刀……雷光斬りッ!!! チェストオオオオオオオッ!!!!』
ゲッタービームを真っ向から両断し突撃するダイゼンガーとその後からグランスラッシュリッパーを射出するゲシュペンスト・タイプS。
【グギャアッ!?】
ゲッタービームを斬られて接近されるという予想外の行動にメタルビースト・ベルゲルミルは反応出来ず、グランスラッシュリッパーに×の字に傷をつけられ苦悶の声を上げながらダブルトマホークを出鱈目に振り回し近づけさせまいとするが、そんな動きは教導隊であるゼンガーとカーウァイを捉えれるものではない。
「……時間の問題か」
触手に噛みつき、ダブルトマホークにゲッタービームキャノン……インベーダーの特性を十分に利用し、多角的な攻撃を繰り出し、イーグレットがゲッター線を応用した結界も利用しているがその動きにゼンガー達が適応し始めている。
【シャアアッ!!!】
苦し紛れに首を伸ばし、ゲシュペンスト・タイプSを噛み砕こうとするメタルビースト・ベルゲルミルだったが、ゲシュペンスト・タイプSはそれを余裕を持ってかわし、脇の間で伸びきった頭部を挟み込んで受け止める。
【ギシャア!!!】
首から触手を伸ばしゲシュペンスト・タイプSを取り込もうとしたメタルビースト・ベルゲルミルだったが、次の瞬間には伸びた触手が煙を上げながら溶け、メタルビースト・ベルゲルミルは痛みによる絶叫を上げる。
『馬鹿がッ! その程度を予測出来ないと思っているのかッ! ゼンガーッ!!! この邪魔な首を切り落とせッ!!!』
『うおおおおおッ!!! チェストオオオオオオオッ!!!』
ゲッター炉心の出力を上げメタルビースト・ベルゲルミルが耐え切れない量を放出することでメタルビースト・ベルゲルミルを怯ませ、伸び切った首をゲッター線の輝きを灯した参式斬艦刀が両断する。
【ぐ、グギャアアアアアッ!!!?】
ゲッター線で焼かれ、ゲッター線の刃で切り裂かれたメタルビースト・ベルゲルミルの下半身の首はボロボロと崩れ落ち、苦し紛れに頭部ゲッタービームを発射するが、そこに合わせてブラスターキャノンを打ち込まれメタルビースト・ベルゲルミルの頭部が弾け飛んだ。
「……チェックメイトか……」
上半身と下半身の首を失ったとしても全身の複眼で回りは確認出来る。だが首を失った痛みにインベーダーは耐え切れず、攻撃は力任せにダブルトマホークを振り回し、全身の触手を出鱈目に伸ばすだけ。そして伸ばした触手も切り落とされ、更に痛みで暴れる。搭載されている機能も使わず暴れ回るだけでは何の意味もない、仮にこれが乱戦ならばその巨体で暴れるだけでも十分な攻撃力もあっただろうが、機動力に秀でているゲシュペンスト・タイプSは回避されて終わり、ダイゼンガーはその触手を切り落とす事でメタルビースト・ベルゲルミルの攻撃は一切届かない。
『ゲッタァァアアアアッ!!! ビィィイイイイムッ!!!!』
裂帛の気合と共に放たれたゲッタービームがメタルビースト・ベルゲルミルのゲッター炉心を撃ち抜き、外と内部からゲッター線で焼かれたメタルビースト・ベルゲルミルがボロボロと崩れ崩壊していくのを見届けてからウルズの乗るベルゲルミル・タイプGはASRSを展開し、アースクレイドルへと帰還した。
「こいつマジで強いっすね……」
「ああ、かなり危険だな。一体どういう経緯で現れたのか確認しておかなければ不味い事になりそうだ」
ボロボロと崩壊するメタルビースト・ベルゲルミルが完全に消滅するのを確認するまでの間、武蔵達はメタルビースト・ベルゲルミルがどこから現れたのかを意見を交わす。
「武蔵達と同様に過去もしくは平行世界から現れたのでは?」
「いや、多分違いますよ、こんな奴見たことないですし……ゲッター線を使うメタルビーストなんて過去でも、平行世界でも殆ど見たことないですよ」
「とにかくサンプルも回収した今はハガネに戻ろう。今後の計画を変更する必要があるかもしれん……」
完全にメタルビースト・ベルゲルミルが消滅し、使用していた異形のゲッタートマホークを回収した武蔵達はハガネへと帰還する。そしてリュウセイ達からメタルビースト・ベルゲルミルが現れた経緯を聞き、立案していた作戦を諦める事になるのだが……それが後に人類を救う一手へと繋がる事になるのだった……。
第194話 2つの再会 その1へ続く
アンサズとスリサズはあっさり退場です、あんまり好きじゃないですし、マシンナリーチルドレンが死ぬとインベーダーになるって言うのを書きたい話だったのでこういう感じになりました。期待に応えれたかは少し不安ですが、自分に出せる全力は出したと思うのでご理解していただけると幸いです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
シャインスパークがチャ
ダブルトマホークダークネス×2
ゲッターチェンジアタック(すり抜け)
αβガンマアタック
竜巻斬艦刀ガチャ
雷光切り
雲耀の太刀
トロンベ×2
無念……
制圧戦16は最終エリアまで行きましたが、凡ミスでアムロとシャアを落としてしまい、ブレイカーと遠距離アタッカーがおらずリタイア。最大戦力の真ゲッターとグリッドマンが使いにくい構成だととても困る。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
-
サイドまたは視点は必要
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今のままで良い