進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第32話 VSゲッターロボ その2

第32話 VSゲッターロボ その2

 

ヒリュウ改のブリッジから見ていた赤髪の女性……ヒリュウ改の艦長である「レフィーナ・エンフィールド」は、たった1機の特機に与えられた被害に衝撃を受けていた。

 

「ユン! DC側の勢力はどうなっていますか!?」

 

「は、はい! 8割が行動不能に陥っていますッ!」

 

ヒリュウ改のオペレーターである「ユン・ヒョジュン」が顔を真っ青にして、ゲッター2の攻撃によって被害を受けたDC側の状況を報告する

 

「たった1回の攻撃でそれですか……しかし会話を聞く限り、ダイテツ中佐はあの特機の事はご存知の様子。艦長、戦闘に入る前に通信を繋げるべきだと進言します」

 

銀髪に髭を蓄えた紳士と言う風貌の男性……「ショーン・ウェブリー」がそう告げる。彼はダイテツの副艦長も勤め上げた歴戦の軍人であり、まだ年若いレフィーナの補佐としてヒリュウ改に乗り込んでいた。

 

「判っています、副長。ユン、ハガネへの通信を」

 

レフィーナの指示でハガネへの通信を繋げる、ヒリュウ改。ゲッター2はドリルこそ向けているが、動き出す気配は無い。

 

「ダイテツ中佐、あの特機は一体……」

 

『ムサシ・トモエと言う民間人が騎乗している特機だ。DCとの戦いに協力してくれた人物でもある』

 

「ふむ、ですが、今はDC側……とは言い切れませんが、何故連邦に追われているのですか? 開示できないDCとの戦闘データと関係しているのですか?」

 

ショーンの問いかけにダイテツは少し考える素振りを見せた後、そうだと返事を返す。

 

『この状況を切り抜けたら説明する。それよりも気を引き締めろレフィーナ中佐……ゲッターロボはハガネとヒリュウ改の全PTを持ってしても勝てるか判らない機体だ』

 

その深刻な声、たった1機の特機だが、総数30を越えるPT隊を所有するハガネとヒリュウ改でも勝てないかもしれないと告げられ、レフィーナは顔を引き締め、ゲッターロボへの戦闘命令を出すのだった……

 

 

 

ヒリュウ改の前方に陣取っていた巨大な盾の様な両手を持つ特機「ジガンスクード」を駆る「タスク・シングウジ」は自身の愛機である、ジガンスクードのコックピットで冷たい汗を流していた

 

(見てやがる……)

 

砂漠から姿を見せた白銀の特機が自身を見ている。根拠は無いが、タスクはそう確信した。

 

『タスク! ジガンで突っ込め!』

 

「りょ、了解!!」

 

オクトパス小隊の隊長であり、最初に攻撃命令を出した「カチーナ・タラスク」の命令でジガンスクードが動き出そうとした瞬間

 

「え?」

 

自分でも信じられない間抜けな声が出た。十分に距離は離れていた、だがジガンの目の前にはドリルを振りかぶる白銀の特機の姿があった。警戒を怠ったわけではない、そしてセンサーを見逃したわけでもない。だが本当に一瞬のうちに白銀の特機……ゲッター2はタスクの目の前にいた。

 

『こっちも都合があるんでな。ちっと大人しくしててくれや、ドリルアームッ!!!!』

 

接触通信での通信の後、タスクを襲ったのは今まで感じたことも無い凄まじい衝撃。零式斬艦刀を受け止めた時よりも遥かに凄まじい衝撃がジガンスクードの胸部ユニットを中心に広がる。

 

「う、うわあああああッ!!!」

 

その凄まじい振動と衝撃に耐え切れず、タスクは悲鳴をあげると同時に意識を失い。ジガンスクードの巨体はタクラマカン砂漠に沈み込んだ

 

「タスク!?」

 

強固な防御を誇るジガンスクードが、たった一撃で倒れた。その姿を見てガーリオンに乗っていたレオナが思わずタスクの名を叫ぶが、タスクからは返答は無い

 

「ちいっ! レオナ! タスクの馬鹿をたたき起こせッ! ラッセル! バックアップに入れッ!!」

 

カチーナもまさかたった1撃でジガンスクードが沈むとは思ってはいなかった。特機には特機をぶつける、それが基本だ。だがゲッターの機動力は完全にジガンスクードを上回っていた。

 

「は、はいッ!!」

 

自身の部下である「ラッセル・バーグマン」に続けと命令し、M-13ショットガンによる面射撃を繰り出す。少しでもダメージを与えて、機動力をそぐ目的だった

 

「なっ!?」

 

「は、速いッ!」

 

だがゲッター2をM-13ショットガンの弾幕が捕えることはなく、残像を残してその姿を消す。完全に姿を見失ったカチーナがその攻撃に反応出来たのは一種の本能とでも呼ぶべき物だった。

 

「くっ! 化け物か!?」

 

万力のような右腕を咄嗟に飛び退いて交わす、命中していれば一撃で戦闘不能になっていた。カチーナの背中に冷たい汗が流れる

 

「よう、武蔵。久しぶりの再会にしては随分と手荒じゃねえか」

 

『どーも、イルムさん。さっきも言いましたけど、こっちにもこっちの都合があって、そっちにもそっちの都合があるって事で1つご勘弁を』

 

グルンガストがカチーナとラッセルのゲシュペンストMK-Ⅱを庇うように前に出て、ゲッター2に殴りかかる。だがゲッター2はそれを再び残像を残しながら回避し、イルムの広域通信に返事を返す。

 

「お前、追われてたのか?」

 

『まーそんな感じですね、正直追われる理由は判らないんですけどね。オイラ何時、国家に反逆したんですかねえ』

 

世間話と言う感じで会話を続けているが、その間も計都羅喉剣とゲッタードリルはぶつかり合い、火花を散らしている。

 

「DCについた訳じゃねえんだろ?」

 

計都羅喉剣を振るいゲッター2を弾き飛ばす、本来ならその程度の攻撃ではゲッターは距離を取らないが武蔵も現在行っている戦闘が本意ではないのでそのまま素直に距離を取り、イルムの言葉に返事を返す。

 

『勿論。ただ本当に都合があるんですよ』

 

イルムは会話を続ける事で、武蔵から情報を引きずり出そうとした。ハガネのクルーは皆武蔵を知っており、武蔵が進んでこういうことをするとは思えなかったからだ。だがヒリュウ改のクルーにとっては、初見であり行き成り襲い掛かってきた敵に過ぎない。そしてそれはコロニー統合軍からしても変わりは無い、ランドリオンからのミサイルランチャーと大型レールガンがゲッターに向かう

 

「ちいっ! 邪魔しやがって」

 

背後からの攻撃を感知し、グルンガストは射撃軸から逃れる。鍔迫り合いをしていたグルンガストが離れた事でゲッター2は僅かに姿勢を崩す、その姿にゲッターに攻撃が命中したとヒリュウ改と統合軍は感じた……だが、それはゲッターロボを完全に理解していない、楽観的過ぎる考えだった

 

「ゲッタービジョンッ!!」

 

ゲッター2の姿がぶれ、1体のゲッターロボのはずなのに、2体、4体、8体、16体と倍々に増えていく

 

「な、なんだ、ありゃあ!?」

 

「ね、熱源は16体全てにありますッ!」

 

質量を持った分身、ゲッターロボと戦っていたリュウセイ達も見た事の無いゲッターロボの新しい能力に絶句するしかない

 

「最初に言ったけど、もう一度言ってやるよ…… 死にたくなかったら脱出しなッ!!!」

 

16体のゲッター2が砂塵を巻き上げながら、ランドリオン達に駆け出す。そのありえない光景、そして最初のドリルハリケーンで錐揉み回転し、砂丘に叩きつけられた者は恐怖に駆られ脱出レバーを引く。そしてゲッター2は脱出したランドリオンにドリルアームを叩き込み次々破壊していく

 

「なんと言うパワーだ……」

 

「これは直接戦ったら、その瞬間にスクラップですわね」

 

PTと比べれば装甲の薄いAMだが、その中でもランドリオンは陸戦型と言う事もあり、重厚な装甲を持っている。だがゲッター2はランドリオンの装甲など取るに足りないと言わんばかりに引き裂き、スクラップにしていく

 

「くそったれッ! この化け物がッ!!」

 

その中で1体のランドリオンがゲッター2に抱き付くようにランドリオンを走らせ、それと同時に脱出レバーを引く。攻撃が命中する瞬間だったので、パイロットの思惑通りゲッター2の足を止めることに成功する

 

「そんなんでゲッターは止まらないぜ」

 

万力の腕で足に絡み付いているランドリオンを引き離そうとするゲッター2。だがその致命的な隙を見逃すエクセレンではなかった、上空から反転しヴァイスリッターが最大速度でゲッター2に向かって突撃する

 

「はいはーい、詰まらないものですけどどうぞーッ!!」

 

軽い口調と共に放たれたヴァイスリッターのオクスタンランチャーのビームがランドリオンの動力部を貫く、炸裂したビームとランドリオンの爆発によってゲッターの姿が一瞬巻き上げられた砂の中に消える。

 

「やったか!?」

 

「熱源は消えてます!」

 

ビームの直撃でゲッターの巨大な熱反応が消えた。それはヒリュウ改のクルーにはゲッターを倒したという考えに繋がった。だがハガネのメンバーは違っていた

 

「まだだ! 気を緩めるなッ!」

 

イングラムの通信が入ったが遅かった。粉塵の中から3色の戦闘機……ゲットマシンが弾丸のような勢いで姿を見せる

 

「え!? な、なに何が起こって!?」

 

特機が戦闘機になる。その信じられない光景にエクセレンが困惑している間にゲットマシンはヴァイスリッターをすり抜けて上昇していく

 

「チェンジッ!!!」

 

武蔵の力強い叫びと共に、ジャガー号とベアー号が合体し、ジャガー号の脇から骨組みが現れ、瞬く間に巨大な腕へと変形する。

 

「嘘でしょッ!?」

 

「マジかよ……合体式の特機だと!?」

 

ヒリュウ改のメンバーはその信じられない光景に我が目を疑う。だがその間にもゲッターの合体は続き、ベアー号のミサイル発射口が足へと変形する。

 

「ゲッタァァーッ! ワンッ!!!」

 

イーグル号が覆い被さるように合体する。だがゲッターの攻撃はこれからだった、背中に現れたマントを身体に巻きつけ、急降下しながらヒリュウ改とハガネに向かう。

 

「ゲッタァアアッ! ビィィィームッ!!!!」

 

身体に巻きつけられたマントの隙間から放たれるビームの雨、それはPT達をすり抜け、砂漠に命中する。だがその熱でヴァイスリッターを初めとしたPTは少なくないダメージを受ける。

 

「トマホークブゥゥメランッ!!!」

 

砂漠に突っ込む寸前で反転し、マントを開いたゲッター1の放った2つの巨大な戦斧が空を裂き、ヒリュウ改とハガネに向かって投げ付けられる。だがそれは外さない距離だったのに外され、そのままライノセラスへと向かい、ハガネとヒリュウ改を狙っていた主砲に突き刺さるのだった……

 

 

 

 

グルンガスト零式と向き合っていたキョウスケは今の攻撃に不信感を抱いた。どの攻撃も命中すれば、その時点でゲシュペンストMK-Ⅱもヴァイスリッターも脱出も許さず破壊していただろう。態と外すように投げた戦斧もだ。

 

(……あの特機のパイロットにとってこの戦いは本気ではないと言う事か)

 

最初の見逃せという通信もある、カチーナが攻撃命令を出さなければそのまま離脱していた可能性もある。それにハガネ側のPTが殆どグルンガスト零式の戦いに参加していることもある……何らかの訳ありなのは確実だ。

 

「ちっ、あれこれ考えている場合では無いと言うのに」

 

グルンガスト零式……つまりゼンガーとの戦いだ。それはあの特機と同じく1撃でもクリーンヒットで貰えば、そのまま粉砕される戦いだ。集中力を緩めている場合ではない……

 

『キョウスケ・ナンブ少尉。この場は任せてもいいか』

 

ビルトシュバインからの接触通信……零式に当たっているのはアルトアイゼン、ビルトシュバイン、R-1、R-2、ヒュッケバイン009の5機だ。残りはハガネとヒリュウ改の護衛についているが、あの合体式の特機にあそこまで差し込まれてはそちらに当たる必要がある。

 

「了解しました」

 

キョウスケは少し考えてからイングラムの命令を了承した。確かに思うところはある、だがもしあの特機のパイロットの考えが変わりハガネやヒリュウ改が撃墜されてはと思ったのだ。了承を得てからハガネとヒリュウ改に向かうビルトシュバイン達を見送り、キョウスケの駆るアルトアイゼンはそのままの勢いで零式へと向かう

 

「来るかッ!! キョウスケ・ナンブ!」

 

零式が斬艦刀を構えながら叫ぶ、確かに迷いはある。だがそれでも目の前に立ち塞がると言うのならば……キョウスケに迷いは無い。

 

「全て打ち貫くのみッ!!」

 

アルトアイゼンの右腕のリボルビングステークの切っ先で振るわれた斬艦刀を受け流す……

 

「何を腑抜けている、ゼンガー」

 

「……返す言葉もないな」

 

そう簡単に零式の一撃を受け流せるわけが無い。キョウスケが迷いを持ったのと同時に、またゼンガーもまた迷いを持っていた。

 

「眼前の敵は全て打ち砕け、それがあんたの教えだろう」

 

「ふっ……そうだな」

 

ゼンガーが先ほど纏っていた闘気は消えていた……ゲッターロボの乱入はこの戦場にいる全ての者に凄まじい影響を与えていたのだ。

 

「「!!」」

 

アルトアイゼンと零式が睨みあっている両機体の間にゲッタートマホークが突き刺さる。お互いに距離を取った所で零式は背を向ける

 

「キョウスケ。この場は預ける」

 

キョウスケはゼンガーの言葉にリボルビングステークの切っ先を下ろすことを返事とした。確かに互いに敵ではある、だが闘気が萎えた今……再び戦うと言うのは難しかった。

 

「気をつけるがいい、人類の敵はまだ生きている」

 

「何?」

 

「ハガネが全てを知っている、良いか。もう1度言う、気をつけろ、人類の敵はまだ生きている」

 

ゼンガーはもう1度そう告げると、零式のブースターを吹かしタクラマカン砂漠から離脱していく……キョウスケはその姿を見つめ、ゲッターへと視線を向ける。そして無言のまま、ゲッターへと突撃していく、その目には紛れも無くゼンガーとの戦いを邪魔されたことに対する怒りの色が浮かんでいるのだった……

 

 

 

 

ベアー号のコックピットで武蔵は舌打ちをする。ダイテツを初めとしたハガネのクルー達がいらない不信感を持たれないために戦っているが、やはり顔見知りと戦うことは武蔵にとって抵抗があった。

 

(そろそろ離脱したかな)

 

ゼンガーのグルンガスト零式も姿を消した、そしてその前のリリーが乗っているペレグリンも今ならば安全圏に離脱しているだろう。そろそろ撤退する頃合としては丁度いいのだ。

 

(あっちも終わったみたいだし)

 

ドリルハリケーンの先制攻撃から崩れたDCの部隊もハガネのPT隊によって鎮圧され、背後から回り込もうとしていたライノセラスも完全に沈黙している。ハガネとヒリュウ改に攻撃こそ加えたが、両艦に搭載されているPTも特機も破壊しておらず、牽制程度の攻撃で終わっている。これならばさほど問題が無いと武蔵は考えていたのだが、実際はそうではなかった。

 

「てめえ! 随分と好き勝手やってくれたなッ!!」

 

カチーナを初めとしたヒリュウ改のPT隊の攻撃が執拗で離脱するタイミングが掴めない。それだけならまだ良いのだが

 

『武蔵、お前は何もしてないんだから追われる事は無いだろ! 武蔵の罪が冤罪って隊長達が証明してくれる!』

 

リュウセイ達の説得も入り、武蔵は胃が痛くなってきた気がした。リュウセイ達が心配してくれているのもわかっている、そして自分も勿論罪などは犯していないし、国家反逆罪とか言われても思い当たる節は無い。

 

『……今回の件は兄さんの差し金と言うことか?』

 

「んーそうなるのかなあ、ライはリリーさんって知ってるか?」

 

接触通信で話しかけてくるライ。最初見たこと無い青い機体だから驚いた、だけどライは上手く立ち回って見覚えの無いPTからの攻撃がゲッターに来ないようにして武蔵から話を聞きだそうとしていた

 

『……言っておくが、俺達はお前の捕縛命令など知らない。出来ることならば隙を見て逃げろ』

 

「いやあ。そうしたいんだけどなあ」

 

ハガネに乗っていなかったPTからの攻撃が予想以上に激しい、ゲッターの防御力ならある程度は大丈夫だ。だがそれを過信することも出来ない。

 

『武蔵、追いかけてきたのは何処の部隊か判るか?』

 

今度はイングラムがビルトシュバインで斬りかかりながら尋ねてくる。武蔵はイングラムとライの思惑を読み取り、2人を盾にするようにしてゲッターを操縦する。

 

「識別ってやつは確かジュネーブって所だったと思います」

 

ラトゥーニにインストールして貰った連邦の識別情報。それには確かにジュネーブ所属の部隊だったと返事を返す

 

『なるほど、判った……難しいと思うが、何とか離脱しろ。お前の無実を出来る限りの用意をして証明してみせる。この戦いが終わればヒリュウ改のメンバーにも説明はする。少なくともハガネとヒリュウ改がゲッターを攻撃することは無いようにしよう』

 

「すんませんね、ご迷惑を掛けます」

 

気にするなと言う言葉を最後に2人の接触通信は途絶え、大振りなゲッタートマホークの一撃を大げさなほど距離を取って回避する

 

(皆に迷惑を掛けてるな)

 

敵は少ないのにハガネとヒリュウ改から離れない、華奢な女性のようなシルエットの機体と、アーマリオン、それにビルドラプター。その動きを見れば武蔵を心配して、攻撃に参加していないのは明らかだ

 

(やっぱり良い人たちなんだよな)

 

問答無用で攻撃してきた連邦とは違う。ダイテツ達ならば匿ってくれるだろうし、何かいい考えも出してくれるかもしれないと武蔵は思った、だが今武蔵はビアンを初めとしたDCの生き残りと行動を共にしている。ここで自分がハガネと合流すれば、隠し事が苦手な自分だ。ビアンのことなども話しかねないし、何よりも・・・

 

(連邦は信用できないしなぁ)

 

ビアンに言われたからではない、だがここに来るまでに話を聞かずにゲッターを撃墜しようとしてきた連邦軍の事もあり、ハガネやダイテツが協力してくれても、軍人である以上命令には逆らえないだろうし、それでダイテツ達に迷惑を掛けるのは武蔵の本位ではなかった。やはり同じ戦艦で寝泊りしていたこともあり、リュウセイ達にも情はある。竜馬や隼人では仕方ないと割り切れる事でも武蔵には割り切れなかった、それが巴武蔵と言う青年の良い所でもあり、また弱点でもあった

 

「ジガンテウラガーノッーーーーーッ!!!」

 

「しまっ!? ぬっ、ぐあっ!?」

 

最初の一撃でダウンしていたジガンスクードが復活し、エネルギーフィールドを展開した、全長70mを越える巨体が最大速度で突っ込んでくる。それはいかにゲッターとは言え耐え切れる一撃ではなく、ゲッター1が上空に向かって弾き飛ばされる。破壊されることはなかったが、間違いなく致命傷のはず。その会心の手応えにタスクはコックピットで思わずガッツポーズを取る

 

「ざまぁみやがれえッ!! いつまでも調子乗ってるから……うえ?」

 

だが最後までタスクは言い切れず、間抜けな声が広域通信で零れた。空中でゲッター1は再びゲットマシンへと分離し、空中でゲッター3へとチェンジする

 

「おらあッ!!!」

 

「う、うあわおわおあああーーーッ!?!?」

 

触手のように伸びたゲッターアームがジガンスクードを絡め取り、ゲッター3のカメラアイが怪しく光る

 

「必殺、赤いのハンマーーーーッ!!!」

 

「げぼあたおらーとをつあーーー!?!?」

 

捕まえたジガンスクードを力任せに振り回すというとんでもない暴挙に出たゲッター3。タスクの悲鳴と共に、ジガンスクードが何度も砂丘に叩きつられ、地響きを起こす。その衝撃でランドリオンもハガネ、ヒリュウ改のPT隊も姿勢を崩し、その場に膝をつく

 

「そりゃあーーーッ!」

 

そして最後にジガンスクードを上空に投げ飛ばすと同時に、ゲッター3は再びゲットマシンへと分離し、動く事の出来ないハガネとヒリュウ改のPT隊を見下ろしながら、ゲッター1へと悠々と再合体を果たす

 

「……これさ、キョウスケ。カチーナ中尉が喧嘩売らないほうがよかったんじゃない?」

 

「言うな……あの状況では中尉が正しい」

 

ゲッター1がマントを翻し、悠々と立ち去ろうとする。自分達にトドメをさせる段階にも関わらずだ、その姿にダイテツに武蔵が投げかけた言葉が真実であり、無理に戦う必要は無かったのではとエクセレンが呟く。統合軍の追撃に向かって、容赦なくミサイルマシンガンを放つ姿に本当に戦う気はなく、ゼンガーとリリーを見逃せば消耗も無しに、タクラマカン砂漠を抜けることが出来たのは明白だった

 

「さてと、ま、こんなもんで良いだろ。じゃあ、ダイテツさん、またどこかで」

 

統合軍が動きを止めたのを確認し、ゲッター1がタクラマカン砂漠から離脱しようとした時。一陣の風が吹いた……

 

「でやあああーッ!!」

 

「っと!」

 

少女の姿をした特機がディバインアームを手に襲い掛かってくる。それをゲッタートマホークで受け止め、切り結びながら思わず呟く

 

「くそ、ヴァルシオンと同じ様な装備かよ」

 

「親父の作った機体なんだから、同じ装備があって当然だろッ!!」

 

その口ぶりからこの機体のパイロットがビアンの娘だと判り、さすがの武蔵も反撃に出る手が止まった。

 

「娘ぇ!? え、何それ!? オイラ聞いてないッ!!」

 

「お前、DCだったのか!?」

 

まさかの娘発言に武蔵も思わず大声を出してしまう。だがビアンは自分の話を殆どしなかった、ビアンは武蔵から早乙女研究所やメカザウルスとの戦いの話ばかりを聞きたがったので、武蔵もその話ばかりをしていた。

 

(これは無事に戻ったらちゃんと報告しよう)

 

ビアンももしかしたら、娘がハガネとヒリュウ改と行動を共にしているとは思ってないかもしれない。武蔵はそう受け取ることにした

 

「リューネ! 突っ込みすぎだ!」

 

「で、でも、マサキ!」

 

「ゲッターを止めるよりも、今は動けない味方を助ける方が先だ」

 

いいから少し下がれと叫んでサイバスターがゲッターの間に割り込む、だがそれは攻撃のためではなく、武蔵が逃げる隙を作ってくれていると判断し、改めてゲッターを反転させて離脱しようとしたその時。ゲッターのモニターに砂煙を上げながら突進してくるPTの姿が映りこんだ

 

「この距離……貰ったぞッ!!」

 

赤いカブトムシのようなPTが突撃してくるが、その両肩が開いているのを見て武蔵は反射的に緊急分離のレバーを引いた

 

(やっば……)

 

つい一瞬前までゲッターがいた場所を通過していく、鉄の塊の雨に流石の武蔵も冷や汗を流す。

 

「はいはーい、もう合体なんてさせないわよ」

 

「悪いね、マサキ! ここで捕まえさせて貰う」

 

攻撃を回避する為に分離したが、ヴァルシオーネとヴァイスリッターが、動きの鈍いイーグルとジャガーを狙う。さすがにこれは不味いと武蔵が思った瞬間。ベアー号のゲッター線メーターが一瞬で限界値を振り切った……何かやばいそう思った瞬間。上空から2本のトマホークが降下してくる、だがゲッタートマホークと違い、それは両刃刃であり。そしてサイバスターを背後から襲う、武蔵の声も、リュウセイ達の声も間に合わなかった

 

「な、なんだ!?」

 

「マサキッ! くそっ! チェンジッ!!! ゲッターワンッ!!!」

 

マサキは心配だが、ゲットマシンへの妨害が減ったこの瞬間にとゲッター1へとチェンジする。だがそれと入れ違いに急降下してきた何かがゲッタートマホークが突き刺さり沈黙しているライノセラスの前で静止したと思った瞬間、頭部から光線を放ちライノセラスを破壊する。だが頭部から放たれたビームが問題だった。

 

「ゲッタービームだとッ!?」

 

あの緑の光は間違いなくゲッタービームの輝き……3本角と口髭のようなパーツを持つどこかゲッターに似ている特機は、紛れも無くゲッター炉心で稼動していると言う証拠だった。

 

「待てッ!!! ダイテツさん! 今回はすいませんでした! こっちにも都合があったんで! それじゃッ!」

 

ライノセラスを破壊すると、背を向けて飛び去るゲッターらしい特機。武蔵は慌ててダイテツに謝罪を告げ、逃げる謎のゲッターを追いかけて、タクラマカン砂漠を後にする。

 

(速い!)

 

単独操縦ではあるが、ゲッター1のスピードは最大をマークしている。それなのに全く距離が縮まらない、それ所か徐々に、徐々に引き離されている。それでもあの特機が何者かを知る為に追いかけていたのだが、突如雲の切れ間から蒼い閃光が走る

 

「ぐっ……ば、馬鹿な!? げ、ゲッター2だとッ!?」

 

雲の切れ間から姿を見せたのは武蔵が追いかけているのと同じく、どことなくゲッター2に似た特機が4体。ゲッター2が飛んでいる事に驚いた瞬間、ゲッター2に似た機体の左腕が変形し、ドリルミサイルが同時に放たれる。

 

「くそっ! しまっ!? うわあああああッ!!!」

 

咄嗟にそれを回避した武蔵だが、その直後自分が追いかけていたゲッター1に似た機体が投げ付けてきた2本のトマホークがゲッターのどてっぱらに命中し、ゲッターは錐揉み回転しながら海に向かって墜落していくのだった……

 

 

 

海中に向かって墜落していく旧ゲッターを見つめるゲッターロボG……いや、ライガー号とポセイドン号に乗り込んでいるコーウェンとスティンガーは今回の事で確信していた。

 

「やはり、あのゲッターは不完全だ」

 

「そ、そうだね。コーウェン君! あれは旧ゲッターにしても出力が低すぎる」

 

今回の襲撃はアードラーの依頼でもあったが、こうして直にゲッターを確かめると言う意味もあった。

 

「ゲッター線で稼動していないライガーにも遅れを取るとは、正直残念だ」

 

「炉心を確保したかったのにね」

 

コーウェンとスティンガーの目的は旧ゲッターの炉心にあった。2人の計画では1度ゲッターロボGを破棄する必要があったが、それは炉心を得るための計画であり、旧ゲッターの炉心でも賄えるならばそれに越したことは無いと考えていたのだが、炉心の出力が弱すぎる事を確信し、やはり計画通りにゲッターGを1度破棄する事を決定した。

 

「でもしかたないさ、Gはゲッター線増幅装置のおかげで10倍パワーアップしてるからね」

 

「そ、そこは流石早乙女と言うべきだね」

 

とりあえず今の段階ではゲッターも武蔵も脅威ではない、それが2人の下した決断であった。炉心は正直惜しいが、あの程度の不安定な炉心ではあっても変わらないと判断した。

 

「さぁアースクレイドルに帰ろうか」

 

「そ、そうだね! 帰ろうか!」

 

データ取りは十分、AI制御のこの世界で製造した変形・分離の出来ない、ゲッター炉心すらも搭載していないライガーに遅れを取る。その時点で2人の中で武蔵は脅威ではないと言う判断が為された

 

「やはり恐ろしいのは流竜馬、そして神隼人だな」

 

「そ、そうだね、怖いのはあの2人だね」

 

海中から浮上した旧ゲッター……いや、武蔵を一瞥し、コーウェン達はAI制御のライガー4機を引きつれ、その場を後にするのだった……

 

 

第33話 一つを起点に動き出した思惑たち

 

 




次回は一度インターバルを挟んで話を進めて行こうと思います。武蔵の話をするダイテツとか、そういう件ですね。後は連邦の上層部の話とか、そういうのをやりたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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