進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第199話 時の迷い子 その1

 

第199話 時の迷い子 その1

 

黒い穴が武蔵達の目の前で開いた瞬間にカルディアスはその姿を消し、変わりに無数のメカザウルス、百鬼獣、そして量産型Rシリーズがその姿を現した。

 

「逃がした……か。仕方あるまい、ラドラ、ラミア、武蔵。このまま敵機を撃破する、但しメカザウルスと量産型Rシリーズを各1機ずつ鹵獲する。完全に破壊するなよ」

 

イングラムはそう指示を出しながらR-SWORDを操り、ブレードトンファーを展開し殴りかかってきた量産型Rー1の攻撃を回避する。

 

「アクセルも分かっているな? お前まで鹵獲されたくなければ俺の指示に従ってもらおう」

 

アクセルから返事は無かったが……アースゲインの動きが変わったのを見ればイングラムの指示に従うという意志はあるのが分かる。

 

「ラウル。お前はそのまま待機していろ、エクサランスはまともに動ける状況じゃない。無茶をするな」

 

『りょ、了解ッ!』

 

ラウルに釘を刺した後にイングラムは目の前の混成部隊に鋭い視線を向けた。

 

(やはり間違いない、あの謎の生き物。あいつがこの部隊の首領と言う所か)

 

ピンク色の奇妙な生き物――あちら側で数度しか見ていないが、あれほどの存在を忘れるわけがない。それなのに忘れていた……いや、「思い出せない」でいた。それはアクセル達と同様にこれからこの世界で何らかの騒動を起こす存在であり、そしてこの世界に存在を認められたという証拠でもあった。

 

(エンペラー……だけではなさそうだ、アストラナガンを持ってしても駄目か)

 

この世界は複雑に因子が混ざり、入りこんでいる。切っ掛けは始まりの進化の使徒である武蔵ではあるが……最早武蔵だけではない、イングラムやカーウァイ、そして恐竜帝国や百鬼帝国と言う因子が入り混じり、完全に正史とは外れた世界となっている。ここまで世界が乱れてしまえば因果律の番人であるイングラムですら修正は不可能だ。そしてそこまで乱れているのにも拘らず世界の崩壊は始まらないのは、ギリアムが指摘したとおり何らかの要因があるのは間違いない。その中で最も可能性が高いのはゲッターエンペラーとイングラムは考えていたが……自分が知らない、何らかの要因があることを確信した。カルディアス、そしてカルディアスの裏にいる何者かのように、自分たちの知らない所で闇は蠢いていたのだ。

 

(……だからこそ、少しでも懸念材料は減らさせてもらうぞ)

 

百鬼帝国、インベーダー、アインスト――戦っても戦っても脅威は減らず、迫り来る敵の脅威は爆発的に増していく中で悠長に戦力を鍛え上げ、新たな機体を開発している時間はない。短時間で戦力を迫り来る脅威に匹敵するレベルにまで鍛え上げるには正攻法では駄目なのだ。

 

『……ッ!!』

 

「飛んで火にいる夏の虫……か」

 

メカザウルスの動力であるマグマ原子炉にしろ、量産型Rシリーズの技術にしろ、今のイングラム達には喉から手が出る程に欲しい技術の宝庫だ。敵が運用していた物を取り入れるのは確かに危険ではあるが、今は手段を選んでいる場合ではない。R-SWORDのビームソードが量産型R-1の頭部を貫くと、即座にビームソードを引き抜かせ動力部に再び突き立てる。

 

『1機ずつで良いんだな?』

 

同じ様に動力部を破壊して量産型R-3を無力化しながらラミアがイングラムへと問いかける。

 

「ああ、それ以上あっても持ち帰れん。だが出来る限りR-2の動力部に損傷は与えないでくれ、動力を知りたい」

 

R-1、R-3よりも重要度が高いのはR-2だ。量産型ではあるがSRXへの合体が可能となっている量産型Rシリーズだ、トロニウムに変わる……あるいは通常のPTの動力であるプラズマジェネレーターでSRXを維持する術。もしくはイングラム達では思いもつかない何かが量産型R-2にある可能性は極めて高く、動力部を破壊するなと言うイングラムの指示にラミアは苦笑いを浮かべた。

 

『……それはかなり難しそうだな、自爆されれば全滅するぞ』

 

量産型R-2は量産型R-1やR-3よりも遥かにエネルギー反応が高く、鹵獲を感知すれば自爆する可能性は極めて高い。

 

「ああ、最悪の場合は動力部の破壊を認めるが、何とか確保したい」

 

自爆の可能性はイングラムとて重々承知している。だがそのリスクを背負ってもなお動力を破壊せずに鹵獲するだけの価値が量産型R-2にあるのも事実であり、R-SWORDとヴァイサーガの2機体制で量産型Rー2の鹵獲を試みるのだった……。

 

 

 

 

 

 

片腕を失っているアースゲインではあるが、アクセルは問題なく迫り来る百鬼獣を処理していた。確かに百鬼獣の機体性能はそのままだ、だがデュミナスが複製した百鬼獣はオリジナルと比べると格段に弱い物だったからだ。

 

「同じ姿をしていてもこうも違うものか」

 

姿形はアクセルも知る百鬼獣と同じ物だが、そこに野生はないのだ。機体性能を武器に人間のような理路整然とした戦い方をしてくる。

 

「宝の持ち腐れとはこの事だなッ!」

 

複製するだけの技術も、百鬼獣もこのように運用するのでは本来のポテンシャルは発揮出来ない。そして本来のポテンシャルを発揮出来ない百鬼獣に遅れを取るほどアクセルの戦闘経験は甘いものではない、むしろ片腕を失っての戦闘などインベーダーとアインストが闊歩する地獄で戦っていたアクセルにとってはいつもの事でしかなく、片腕を失っているのならば片腕を失っているなりの戦い方をアクセルは習得していた。

 

「ふっッ!!」

 

片腕を失い重心が崩れているからこそ出来る足や腕の反動を利用した変幻自在の構えに百鬼獣やメカザウルスは対処出来ず、遠心力を利用した拳打に次々と崩れ落ちる。

 

『ふん、中々やるものだな。くたばるかと思っていたのだが……生き恥汚い男だ』

 

「お褒めに預かり光栄だ、これがな」

 

互いに皮肉の応酬だが、共通の敵がいるから協力しているだけの関係だ。特にラドラはシビアな男であり、敵に対して掛ける情けなどない。

 

『一応今は味方だぜ? ラドラ』

 

『今はだ、俺はお前ほど甘くもないし楽観的でもないぞ、武蔵』

 

ゲッター・トロンベから響く武蔵の声とゲッターザウルスのラドラの声にその通りだとアクセルは頷いた。生き残る為に敵同士であろうと協力はする……だがそれが終われば再び敵同士なのだ。武蔵の考えは甘いと言わざるを得ない。

 

(が……それが武蔵の長所か……やれやれ、俺も随分と甘い)

 

武蔵の人となりはアクセルとして理解している。確かに武蔵の考えは誰から見ても甘いが……それでもその甘さが武蔵の長所であり弱点だ。少しずつアースゲインを移動させ、この場の敵を武蔵達に押し付ける位置に移動するアクセル。この戦いが終われば敵同士に戻る事は間違いない、この場は見逃すと言っていてもここからアースクレイドルに戻れるかはアクセルの運次第だ。戻るだけの余力を残しておかなければ連邦軍に補足され撃墜される可能性も捨て切れない。

 

(そこまで甘くはないだろうからな)

 

この場限りの共闘が出来ただけも御の字なのだ。武蔵の手前見逃すとイングラムは言ったが、この激戦区では片腕を失ったアースゲインは的に過ぎないのだ。だから見逃すではなく、見捨てるがイングラムの真意であるのだ。だからこそ、ここでアクセルは無茶をしない、生き残る為の最善の一手を打つために頭を回転させる。逃げる事は恥ではない、むしろ誇りを守る為に死んでは何の意味もない。生きていれば次がある……。

 

(俺はここで死ぬわけには行かないからな)

 

ラングレー基地での戦いで終盤アクセルは意識を飛ばしていた。ヴィンデルからゲシュペンスト・MK-Ⅲ……いやアルトアイゼンを大破させたと聞き、あの損傷ではキョウスケも恐らく再起不能もしくは死んでいるだろうと聞かされていた。だがアクセルはそんな言葉を鵜呑みするほど馬鹿ではない、ここでこうして武蔵と会ったことでアクセルはキョウスケが生きていると確信した。

 

(あんなにも平然としていられるわけがない、エクサランスを手にするのは失敗したが……十分な収穫だ)

 

武蔵達が現れた段階でエクサランスを回収するのは不可能であり、そしてマグマ原子炉を回収するのを止める術もアクセルは持ちえていない。無事に戻った所でヴィンデルにその事を叱責されるであろうが、アクセルにとってはキョウスケが生きていると分かった方が価値のある情報だった。

 

(あんな勝ち方など認める物かッ)

 

アルフィミィに干渉を受けての勝利などアクセルは欲していない、己の力でキョウスケに勝利する事が死んだ仲間達への手向けであり……アクセルが再び前に進む為に必要不可欠な物なのだった……。

 

 

 

 

 

メカザウルス達の残骸の山の中でラミアは一縷の望みを託して転移反応を探ったが、その反応は完全に消え去っていた。

 

(反応はやはりないか……あの異形を見逃したのは痛手だった)

 

メカザウルス、百鬼獣、量産型Rシリーズの襲撃は機械的であり脅威ではなかった。だがその数だけは多く、徹底して足止めを狙っての攻撃だった。だが突如ピタリと増援が止まったのを見て、この転移による連続襲撃はカルディアスの転移反応が完全に消えるまでの時間稼ぎである事は明白だった。

 

『これで共闘は終わりだ。あとはどこにでも行くが良い、アクセル』

 

『ああ、言われなくともそうさせて貰う』

 

片腕を失い、全身に細かい傷を負っているアースゲインのアクセルの闘志と覇気は微塵も揺らいでいなかった。むしろ傷を負っているからこそ放つ必殺の気迫のような物を纏っていた。だがその闘志をふっと消してアクセルはラミアに問いかけた。

 

『ラミア。ベーオウルフはどうなった?』

 

「は、いや……」

 

世間話のようななんでもないような感じで声を掛けられたラミアは上擦った返事を返してしまった。

 

『それだけで十分に分かった』

 

そこからアクセルを騙す方に話を向けるのは不可能で、ラミアは自分の反応に後悔しながらラミアは観念したように口を開いた。

 

「キョウスケ中尉は生きております、そして次に向けての準備をしています」

 

イングラムとラドラも何も言わない。あの反応でキョウスケが生きているとラミアは教えてしまったような物だ、それに単純な武蔵がいる段階で駆け引きと言うのが無理と言うのは分かっている。遅かれ早かれキョウスケが生きていると知られるのは分かりきっていた。

 

『そうか、武蔵』

 

「はい?」

 

『ベーオウルフに入ったカードは俺と戦えるか?』

 

「あーなんか物すげえの作ってましたけど、オイラは良く判りませんよ?」

 

武蔵の返答にアクセルはふっと小さく笑うとアースゲインを反転させた。

 

『ベーオウルフが生きていると教えてくれた礼だ、俺達は今ホワイトスターにいる。アースクレイドルからは手を引いた』

 

アースクレイドルにシャドウミラーがいると考えていたイングラムとラドラはアクセルの言葉が真実か、それとも偽りかと考えさせられる事になる。

 

『礼だと言っているだろう? 俺は嘘は言っていない。それとムーンクレイドル……それを奪還するなら急ぐが良い。鬼がムーンクレイドルと月面都市で何かしようとしているぞ、月の住人が鬼にされる前に動くが良い』

 

アクセルはそう吐き捨てると、振り返る事無くこの場を離脱して行った。

 

「イングラム少佐、アクセル隊長の言葉は……」

 

『恐らく真実だろう。アクセルの気質から言って百鬼帝国のやり方は受け入れられるものではない筈だ』

 

悪人ではあるが冷酷ではない、それに義理堅い男でもある。助けられたからそれに匹敵する情報を提供した……と言うわけでもないだろう。

 

『俺達と百鬼帝国を潰し合わせて漁夫の利でも狙っているのだろう、あいつらにとってはどちらも敵だ』

 

『身も蓋もない、事実その通りだろうな。だがアースクレイドルの事とシュウの情報ともすり合わせが出来る……それに決して無駄じゃない拾い物もあった』

 

マグマ原子炉が4つ、量産型Rシリーズがそれぞれ1機ずつ、そしてエクサランス開発チームの救助が出来たのは紛れも無くプラスだったと話すイングラムとラドラの話を聞いていたラミアだったが、ヴァイサーガのモニターに映った光景を見て、思わずあっと呟いた。

 

『どうしたラミア?』

 

「……あの、武蔵がもう降りてます」

 

エクサランスから降りて来たラウルに声を掛けながら手を振っている武蔵の姿にイングラムは深い溜め息を吐いて、コックピットハッチを開放する。

 

『ラミアはラドラと共に周辺を警戒していてくれ、ラウル達と交渉して積み込めるようになったらマグマ原子炉を搭載しハガネへと帰還する』

 

ラドラやラミアがいると拗れると判断したイングラムの言葉にラドラ達は反対する事無く、周囲の警戒をしながら武蔵とイングラムの説得が終わるのを待つ事にする。

 

「ラドラ少佐」

 

『なんだ?』

 

「マグマ原子炉をヴァイサーガに搭載する事は可能でしょうか?」

 

『不可能ではない、だが数が限られている物だ。優先するのはカイやギリアムになる』

 

ラドラのいう事は最もだ。高性能なエンジンを信頼出来るパイロットに回すのは当然の事……だがラミアも折れなかった。

 

「ヴァイサーガにも搭載を検討して欲しい。マグマ原子炉はパイロットに強い負担を掛けると聞くが、その点私は常人よりも遥かに身体が……いや、余計な事は言うまい、単刀直入に言おう。私の目的の為に、私が成すべき事をする為にマグマ原子炉を私にくれ」

 

自我を得ているとは言えラミアはまだ子供であり、口でラドラを納得させるような言葉は言えない。だから自分の嘘偽りのない気持ちをラドラへと訴えた。

 

『お前の目的とはなんだ? その理由によっては協力するのも吝かでは無いが……』

 

だがその稚拙だが言葉の願いのこもった真っ直ぐな言葉はラドラを動かした。あれやこれやと理由をつけるよりも、真っ直ぐな言葉に込められた意志をラドラは汲み取った。

 

「お前達にとっては敵であると言うことは分かっている。だがレモン様は……私の……母なんだ。間違った道を進もうとする母を止めたい……だが今の私の力では無理なんだ。きっと言葉ではレモン様は止まらない、止まってくれない……母を止める為に、過ちを正す為に……私に力を与えて欲しい」

 

ハガネの為ではない、ラミアは自分が母と慕うレモンを止めるための力を欲していた。

 

『地球が窮地と知っていて、なお自分の願いだけを押し通そうとするのか、なんとも傲慢な事だな』

 

「……それは……分かっている」

 

『俺達の目的は地球を守る事でお前の母を助ける事ではない、むしろ助けた所で敵に回る可能性の高い相手を助ける為に貴重なマグマ原子炉を使えと来たか……そんなことが許されると思っているのか?』

 

「……だがそれでも……私はレモン様を『だがそこが良い、良いだろう。協力してやる』は?」

 

ラドラの嫌味に断れると思っていたラミアは続く言葉に信じられないと言う間抜けな声を出した。

 

「な、何故……」

 

『なんだいらないのか?』

 

「いや、いる。いるがッ! あれだけ私の言葉を否定して何故?」

 

ラドラが何故自分に協力してくれるのか、その真意が分からいラミアは何故だと問いかける。

 

『俺はお前が地球のためだのなんだのと言うのならば信用しなかった。味方であると言う事は認めている、だがお前はシャドウミラーだ。永遠の闘争が続く世界を作ろうとしていた組織の人造人間の綺麗な言葉など俺は信じない、だが……お前はどこまでも自分勝手で、自分の意志を通そうとした。それは紛れも無く人間らしさだ、その人間らしさを信じてみたくなったという所だな』

 

自分勝手な心からの言葉、それは紛れも無く人間だけが持つ言葉だった。人造人間のラミアならば信じなかったが、人間のラミアの自分勝手な言葉をラドラは信用すると言ったのだ。

 

(……人間……私が……)

 

ラドラの言葉に少しだけ笑みを浮かべたラミアだったが……。

 

『だが余りにも子供過ぎるがな、もう少し歯に衣を着せる事も覚える事だ。人を騙せとは言わんが、欺く程度の会話スキルは習得しておけ、これは武蔵にも言えることだがな』

 

「……了解」

 

最後に付け加えられた言葉に臍を曲げることになるのだが……もしその表情を見ればレモンが狂喜乱舞していたことだろう。何故ならば、そのラミアの表情は人間にしか出来ない物であったからだ……。

 

 

 

アクセルはなんとか無事にアースクレイドルに戻り、ホワイトスターへ向かい転移していく戦艦を見てやっと安堵の溜め息を吐いた。

 

『随分とボロボロね、今格納庫を開けるわ。着艦してアクセル』

 

転移を控えていた戦艦の1つにレモンが乗っていたのか、着艦しろとの言葉にアクセルは了解と返事を返し、開閉された格納庫にアースゲインを着艦させる。

 

「お疲れ様、エクサランスは駄目だったみたいね」

 

「流石に武蔵達まで来ると俺1人では自殺行為でしかないぞ」

 

中破しているアースゲインを見て、救急箱を手に格納庫に来たレモンに何があったのをぼやきながら報告するアクセルに、レモンは楽しそうな笑みを浮かべる。

な笑みを浮かべる。

 

「ぐっ……もう少し丁寧にやれ」

 

「はいはいっと分かってますよ」

 

消毒液を吹きかけてくるレモンに丁寧にやれと怒鳴るアクセルだが、レモンを突き飛ばす事は無く大人しくレモンの治療を受けていた。

 

「はい、おしまい。ま、エクサランスを逃したのは惜しいけど、しょうがないわね。ソウルゲインならまだしもアースゲインじゃ無茶は出来ないし」

 

レモンのフォローするような言葉にアクセルは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、その顔を見てレモンはますます楽しそうに笑い不貞腐れているアクセルの頬を突いた。

 

「何か言いたい事があるんじゃないの?」

 

その言葉にアクセルはふうっと小さく溜め息を吐き、何もかもお見通しかと呟いた。

 

「武蔵とラミアが言っていたんだがな、ベーオウルフの奴生きているそうだ」

 

「へえ? あれで生きてたんだ。驚きね」

 

驚きと言いつつもレモンの顔に一切の変化は無い、ヴィンデルのようにレモンもアクセルも楽観的ではない、いや百鬼帝国とインスペクターの力があればキョウスケなど敵ではないと慢心しているだけかもしれないが、ヴィンデルの考えとレモンとアクセルの考えには大きな隔たりが存在していた。

 

「武蔵が言うにはゲシュペンスト・MK-Ⅲが凄い事になっているそうだ」

 

「あれでも十分凄かったけどねぇ、でも武蔵がそこまで言うならかなり凄い事になってるのは間違いなさそうね」

 

アルトアイゼン・ギーガもかなり凄まじい性能をしていたが、それを上回る機体ともなるとソウルゲインでは完全に力不足だろう。

 

「暫く動けなくなるけど……改良する?」

 

「当たり前だろ、俺はあんな横槍での勝利なぞ認めん。真っ向から、今度こそ俺の力でベーオウルフに勝つ。レモン」

 

「なーに?」

 

アクセルが何を言おうとしているのか分かりながらも、分からないという反応をするレモンに向かってアクセルは力強い言葉を放つ。

 

「俺に今度こそベーオウルフに勝つ為の力を寄越せ、レモン」

 

「んふふ~♪ 了解、任されたわ」

 

アクセルの言葉にレモンは楽しそうに笑った。覇気と闘志に満ちたアクセルの姿はこの世界に来てから不貞腐れ、ヴィンデルへの不信感を抱き、百鬼帝国の悪逆を受け入れらず迷いを見せていたアクセルからは想像も出来ない姿だった。確かにまだアクセルは全てを受け入れたわけではない、だが改めてベーオウルフを倒すと決意を固めたアクセルに迷いは無かった。

 

(今のアクセルなら大丈夫そうね)

 

レモンとてアルトアイゼン・ギーガを見て、今のままのソウルゲインでは少々厳しいというのは理解していた。だがアクセルは良いも悪いも己の感情に左右される男だ。ヴィンデルへの不信感や、百鬼帝国への不満と言う迷いを抱いているアクセルにはゲッターD2や百鬼帝国の技術を元に作り出した新技術を組み込んだ機体を与えるのは不安があったが、今のアクセルならば大丈夫だと確信したレモンは頭の中に描いていた改良案を組み込んだ新型のソウルゲインを組み上げる事を決めた。

 

「さてと、じゃあその為に宇宙へ行きましょうか、はいはい、そんな嫌そうな顔をしないの」

 

インスペクターのいるホワイトスターへ向かうと聞いて嫌そうな顔をするアクセルだが、ヴィンデルの所為で龍王鬼の庇護を得れなくなったシャドウミラーが身を守るには宇宙へ向かうしかなく、ブリッジから響く量産型Wシリーズの警告を聞きながらアクセルとレモンは格納庫を後にするのだった……。

 

 

第200話 時の迷い子 その2へ続く

 

 




今回はシナリオ回なのでやや短めでした、味方の強化フラグも出来ましたがアクセルの強化フラグも成立したので状況的にはイーブンでしょうね。次回はラウル達との話し合いと味方ユニットの強化の話を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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