第201話 時の迷い子 その3
ハンガーに固定されている新しいアルトアイゼンの異様な姿に格納庫に来ていたイルム達は足を止めた。ギーガの段階で大分あれだったが、それを上回る姿をしているアルトアイゼン・リーゼの姿にはマリオンの改造をマ改造と言って受け止めている面子でさえ思わず硬直する物だった。
「おいおいおい、完全にPTサイズじゃねえ別物になってるじゃねえか」
PTの平均的な全高は約20m前後だが、今ハンガーに固定されているアルトアイゼンは30m後半でありとてもPTを呼べるサイズではなかった。
「これが今の俺に必要な力ですよ。イルム中尉」
「うおッ!? きょ、キョウスケ? だ、大丈夫なのか? それは」
キョウスケに声を掛けられ振り返ったイルムは思わず仰け反った。何故ならば露出している部分は全て包帯塗れ、しかもその包帯も真紅に染まっており夜に見れば悲鳴を上げそうな姿をしていたからだ。
「ええ、問題ありません」
今にも死にそうな姿で包帯を真紅に染めながら大丈夫と言うキョウスケにイルムはドン引きしていた。だがキョウスケの言う必要な力というのも分かっていた。
「アインストにインベーダー、インスペクターに鬼……化物と戦うにゃ、こっちも規格外の機体を使うしかねぇって事か」
これが普通のPTや特機との戦いならばこれほどまでに過剰な改造は必要ないだろう。だがイルム達が戦う相手は人智を超えた化け物であり、生半可な機体では戦う土俵にすら上がれないのが現状なのはイルムも分かっていた。
「それでこれはどんな改造が「それはラルちゃんが説明して上げるヨー」うおッ!?」
何の気配も無く突如背後に現れたラルトスの声にイルムが飛びのくとラルトスは驚いたか? と言って両手で腹を押さえて楽しそうに笑いアルトアイゼン・リーゼにダボダボの白衣の袖を向ける。
「アルトアイゼン・リーゼは百鬼獣の解析データとゲッター合金を一部組み込んだ最新鋭機ヨッ! ゲッター合金をフレームに使ってるかラ、驚くべき柔軟性と強固さがあるヨ! これならリボルビング・バンカーOCを連打しても全然平気ヨ! やったネ!」
「へーそいつはすげえな。キョウスケも安全なんだろ?」
「何言ってるネ? 機体が壊れないだけでパイロットが無事とは言ってないヨ? むしろ安全装置は最低限しか積んでないネ。まぁ最大50Gくらいはあると思うネ」
「「「うおいッ!?」」」
サラッととんでもない事を言うラルトスに格納庫にいた全員が突っ込みを入れる。それは生身の人間が耐えれる重力ではない、機体は大丈夫でもパイロットであるキョウスケが死ぬ可能性が極めて高いのはパイロットであるイルムや整備兵達でもすぐに分かり、今からでも安全装置を組み込めとラルトスに言うがラルトスはダボダボの袖を振って大丈夫と笑った。
「大丈夫ヨ~武蔵とかラドラとかコウキの機体はコンスタントにそれくらいのGが掛かってるネ。同じ人間、耐えられないわけ無いヨ」
同じ人間と言うのは間違いないが、身体能力が化物レベルの武蔵達と同じレベルを要求するのは余りにも酷な話だろう。
「大丈夫大丈夫。ちゃーんと最新のパイロットスーツを作ってるから大丈夫ヨ~んじゃ、説明に戻るネ! まずは装甲全体を空気抵抗を考えて鋭利なシルエットに変更したネ! テスラドライブとゲッター合金はあんまり相性が良くないから、機体の形状から変更したヨ! 武装面は基本的に巨大化しただけネ! でかい=パワーッ!! パワーイズジャスティスッ!!」
「おい、キョウスケ。悪い事は言わないぞ、今からでも間に合うギーガを修理して貰え、死ぬぞ」
興奮して叫んでいるラルトスを見てこれはやばいとイルムがキョウスケに死ぬから止めておけと警告したが、キョウスケは獰猛な笑みを浮かべた。
「言ったでしょう? これが俺に必要な力だとね」
「正気か?」
「正気ですよ。これくらいでなければ龍王鬼には、アクセルには勝てない……エクセレンも取り返せない」
これからの戦いで立ち塞がるであろう強敵の名前とエクセレンを取り返せないの言葉にイルムは何を言っても無駄かと肩を竦めた。
「武装は据え置きなのか?」
「んーバンカーとクレイモアだけ改造したネ! 今までのオーバーチャージは機体への反動を考えてバンカー部にのみテスラドライブを搭載してたヨ、だけどアルトアイゼン・リーゼには機体各所にテスラドライブと百鬼獣闘龍鬼のデータを元にゲッター合金で作ったブースターを搭載して、テスラドライブも機体各所に搭載したネ!」
「……つまりどういうことだ?」
「理論上は何段階でも加速出来るし、直角に曲がれるって事ネ! 機体が重すぎて飛べないけド、垂直なら跳べるヨ! 後は戦闘時に機体各所の変形ネ! こうネ!」
ラルトスがコンソールを操作するとハンガーに固定されていたアルトアイゼン・リーゼの機体が少し変形を始める。両肩のクレイモアが垂直から僅かに斜めに稼働し、背部と肩部に折り畳まれていたウィングが展開される。
「これだけか?」
変形と呼べるほど形状が変わっていないと表情が物語っているイルムにラルトスは分かってないネと言わんばかりに指を左右に振った。
「リーゼ本体の変形は空気抵抗とフレームが壊れないレベルの変形ネ! ここにギーガユニットの予備と新型のフライトユニットを組み合わせたネオ・ギーガを装着して更にドンする予定ネ! 今のリーゼは素体だけド、最終的にはもっと重装甲になるシ、ソニックブレイカーとテスラドライブを姿勢制御と相手との距離を最短距離で詰める為に使えるようになるネ! ただネオギーガユニットは間に合いそうに無いのが悲しいネ……」
今のアルトアイゼン・リーゼですらかなり大型なのに、それにギーガユニットとフライトユニットを組み合わせた追加装甲まで搭載する予定と聞いたイルムはこれ以上聞いていると頭が痛くなりそうだと呟き、シュウがテスラ研から連れてきたグルンガスト改造チームの元へと向かい絶句した。
「……お、お前ら……な、何でグルンガストバラバラにしてんだ?」
自身の相棒であるグルンガストが頭部・胴体・肩部・腕部・腰部・脚部と見事にバラバラにされ、ハンガーに吊るされている姿を見れば流石のイルムも絶句し、声が震える。
「あ、イルムガルト中尉。所長からの改造案でして」
「親父の? いやだからってなんでバラバラにしてんだよッ!? 敵が来たらどうする……なんだ、そのやべえって顔はッ!?」
父親であるジョナサンの改造案だからと言っても、何時敵が襲ってくるか分からない中でバラバラにしてどうするっと言うイルムの言葉にテスラ研の開発チームはいま気付いたという顔をし、イルムは思わず額に手を当てて天を仰いだ。
「イルムガルト中尉。勘違いしないで欲しい、何も私達は忘れていたわけではない」
「何をだよ、と言うかお前テスラ研の特機の開発チームの主任だよな? なにやってたんだこんな所で。……まぁ良い、言い分は聞こうじゃねえか」
あれだけしまったって顔をしておいて何を言っていると思いながらもとりあえず、言い分は聞くことにした。
「確かに敵の強襲という可能性は私達の頭の中にほんの少しだけありました」
「おいッ! ここ敵の勢力圏のど真ん中だぞッ!?」
「ですが「聞けよッ!!」所長の改造案を実行するという考えの方が遥かに私達の頭の中を占めていました、大きい=パワー、そして大きい=強いです」
ラルトスのような事を言い出した主任にイルムは絶対にジョナサンに文句を言う事を心に決めた。
「ですがグルンガストの変形機構を無くしては意味がない。だが今のままでは勝てない、しかし新型を開発している時間はないならば……各部を延長して、下駄やグローブを履かせればいいとなったのですッ!!」
「悪い、お前がなに言ってるのか俺にはわからねぇ……なんでお前らが信じられねぇって顔をすんだよ、信じられねえのは俺だよッ!」
「なんでスーパーロボットに乗ってるのに分からないんですか? でかい=強いなんですよ?」
「分かるかッ!!!」
理解を求められてもイルムには理解出来ない話だった。これがリュウセイだったら意気揚々と同意するだろうが……イルムにはスーパーロボットのロマンが理解出来ていなかった。
「折角ビアン博士も協力してくれたのに」
「コウキ博士とラドラ少佐も手伝ってくれたってのにさ」
「なんで文句を言うかなあ」
「なんで俺が悪いみたいな雰囲気になってるんだ!?」
極めて正論を言っている筈なのに責める様な雰囲気になっているグルンガストのハンガーに1台の運搬車が停車する。
「おーい、テスラ研から持って来たグルンガストの延長パーツ持って来たぞ」
「ひゃあッ! 待ってたぜッ!!」
「ドリルは! 俺の作ったドリルはッ!?」
「馬鹿野郎、搭載するのは俺の作ったレールガン、そうだよな?」
「どっちも置いて来た」
「「あんまりだああああッ!!!」」
泣き崩れ拳を格納庫の床に叩きつける開発チームの姿にイルムはもう何を言っても無駄だと悟った。ブリットのヒュッケバインを改造した頃から怪しかったが……マリオンとラルトスに触発され常識と言うものを投げ捨てた奴らに何を言っても無駄だと理解してしまったのだ。
「……1つだけ聞く」
「なんですか?」
「こいつが仕上がれば俺は足手纏いにならないか?」
イルムとてL5戦役の武蔵とイングラムの特攻は深い心の傷となっている。己の無力さ、足手纏いにしかならなかったという事実……必死に鍛えたつもりだがまだ力はまるで足りていない、このままではまた足手纏いになる。そんなのはごめんだと、今度こそ最後まで共に戦う事は出来るか? と言うイルムの問いかけに開発主任は力強く頷いた。
「なりません。百鬼獣にも遅れを取る事はないと断言します」
「……なら良い、完璧に仕上げてくれ」
その自信に満ちた表情を見てイルムは今度こそ言葉を失い、任せたとだけ告げてグルンガストのハンガーに背を向ける。
「イルム中尉! シュミレーターのプログラムです。1度試しておいてください!」
「ありがとよ」
投げ渡されたグルンガスト・改のシュミレータープログラムの入ったUSBメモリを受け取ったイルムはそのままシュミレータールームへと足を向けるのだった……。
タスクからヴァルガリオン・ズィーガーが完成したと言う連絡を受けたレオナはクロガネの格納庫を訪れ、ハンガーに固定されているヴァルガリオン・ズィーガーを見てその目を見開いた。
「これがズィーガー……」
「へへ、良い仕上がりだろ。ま、ラドム博士の設計からは随分と違う仕上がりになったけどな」
ユーリアのヴァルキリオン、そしてレオナが乗っていたガーリオンを組み合わせ、そこにアステリオンの稼働データを基に作った新型の装甲や、ビルトビルガー・ビルトファルケン、そしてヴァイスリッター改に使われている可変翼――ハガネ、ヒリュウ改に配備されている飛行系のPTの技術を惜しげも無く使い、フレームの基礎こそガーリオンだが、装甲のベースは戦乙女の名を冠したヴァルキリオンの為ガーリオンの重厚なシルエットとは異なり、細身で女性的なシルエットになりつつも装着している装甲によって勇ましさと美しさも兼ね備えている白銀のカラーリングと相まってその姿は戦乙女その物だった。
「これほど美しいAMを見たのは初めてですわ、ありがとうタスク」
「お、おおッ! 気に入ってくれて嬉しいぜ、レオナちゃん」
レオナのストレートな感謝の言葉にタスクは驚きながらも微笑み返したが、レオナと見つめ合ってるのが妙に気恥ずかしかったのかいつものように余計な一言を口にしてしまった。
「本当はフェアリオンみたいにレオナちゃんモチーフにしたかったんだけどな」
「……そんな事をしたら許しませんわよ?」
「冗談、冗談だよレオナちゃんッ! 大体俺じゃヴァルシオーネの人間みたいに顔が動く機体なんか作れないさ」
微笑から一転し絶対零度の視線に見つめられたタスクは背筋に冷たいものが走るのを感じたが、その代りに感じていた妙な気恥ずかしさが消え冗談だよと言いはした。が、1度ビアンからやってみるかと声は掛けられたが、レオナの姿をした機体を作りそれを見られるのは流石に恥ずかしかったのか断っているのだが……レオナにタスクがそれを言う事はないだろう。
「じゃあ機能を説明するけど……前提としてこいつはどこまで行ってもAMだ。百鬼獣と真っ向から戦うのは不可能だ、レオナちゃんがどれだけ腕が良くても百鬼獣と真っ向からぶつかるには質量もパワーも全然足りてないって言うのは分かってるよな?」
「それは……分かっていますわ」
最新技術を詰め込んでも、PTとAMでは百鬼獣と戦うにはパワーが圧倒的に足りていないのは紛れもない事実だ。それこそ4機編成の小隊を組む事や、特機・準特機の支援を行うのがやっとだ。
「だからヴァルガリオンは徹底して支援をする機体だ。でもそれは百鬼獣を相手にした場合で、それ以外の相手なら全然楽勝だと思う。まずはアステリオンみたいに巡航形態への変形の追加……と言ってもバックパックがコックピットと頭部を囲うように移動してくるだけで、形状自体が変形してるわけじゃない、テスラドライブと空気抵抗を軽減するシルエットにしてスピードを上げる為のモンだ」
モニターに変形した姿を映し出すタスクに寄りかかるようにしてレオナもモニターを覗き込んだ。
「なるほど、この形態の武装は?」
「プロジェクトTDのCTM系列のMAPWのスピキュールとプレアディスを搭載してる、レオナちゃんが欲しいって言うならプロミネンスかセイファートも搭載出来るけど……どうする?」
「スピキュールとプレアディスだけで十分ですわ。それにプロミネンスとセイファートは威力の高さが売りですが、百鬼獣に通用しないなら必要ありません」
「OK、そう言うと思った。後はバックパックに搭載してるレールガンとか、換装装備のスパイダーネットとかが使える。巡航形態は一気に切り込んで、そのまま離脱をコンセプトにしてるから武装は貧弱なんだ。だけどその代わりにAM形態の武装は大分頑張ったぜ。まずはブレードレールガン、腰部にマウントされてる武装で射撃と斬撃が出来る武器だ」
ブレードレールガン、腰部にマウントされてる武装で射撃と斬撃が出来る武器だ」
「かなりリーチが短いですわね?」
「ああ、でもそれには理由がある。ゲッター合金製の弾頭を撃つには、銃身もかなり頑丈にしないと暴発の危険性がある。格闘戦にも使えるようにって考えるとこれくらいの長さが限界だった。リーチが短い代わりに頑丈だし、切れ味も抜群だ。ヴァルガリオンのスピードなら……」
「切り込んでそのまま離脱出来るって事ですわね?」
「そゆこと、次にヴァルキリオンのランスをラドラが改造してくれたもんで、フルンティング」
「ベーオウルフ叙事詩ですわね?」
「ああ、これはゲッター線を利用したビームカートリッジを使うためのもんだが、ビームランスとしても使えるし、念動力者のレオナちゃんなら」
「ランスに念動フィールドを纏わせて突撃力を高めれると……なるほど、突き刺す物とはよく言ったものですわ」
フルンティングは北欧語で突き刺すであるHrotを由来としており、念動力者であるレオナの特性を活かした武装と言えるだろう。
「んで最大の武器はガーリオンにもあったソニックブレイカーを発展したもんになる。肩部と胸部を変形させて機体前方の局所へ電磁誘導加熱した金属粒子を固定、その上で念動フィールドで固定して相手を貫いた後に金属粒子をぶっ放すッ! 完全に決まれば百鬼獣も理論上は吹っ飛ばせる武装だ。だけど……」
「威力は私に左右されるわけですわね?」
「そうなる、んで、念動力者じゃないと使えねぇ武装でもある。支援だけって言うのは柄じゃないだろ? 1個くらい百鬼獣に泡を吹かせれる武装が欲しいだろ?」
「良く私の事を分かっているようですわね」
「そりゃもう、愛しのレオナちゃんの事ですから! お礼にキスなんかしてくれちゃっても……「特別ですわよ?」……は?」
「ちょっ!? 自分で言っておいてひっくり返るってどういうことですの!?」
冗談でキスと言ったタスクだが、頬にキスされたタスクはトマトのように真っ赤になり、疲労が蓄積していたこともありそのまま後にひっくり返って気絶し、レオナが慌てて介護を始める。
「ちくしょう、爆発しろ」
「リア充死すべし、慈悲はない」
「なんで私達に出会いないかなあ……結構スタイルと顔に自信あるんだけどな」
「「「それな」」」
出会いがないトロイエ隊の面子は尽くしてくれる彼氏をしっかり捕まえているレオナに恨めしそうな視線を向け、深い深い溜め息を吐くのだった……。
ハンガーに固定されている量産型Rシリーズの姿をリュウセイ、ライ、アヤの3人が信じられないと言う様子で見つめていた。
「ラミア達の世界では完成していると聞いていたが、こうして目の前で見ると信じられない気持ちがあるな」
「メタルビースト・Rシリーズとは違うみたいだしな」
メタルビースト・Rシリーズと量産型Rシリーズは微細な違いがあった。メタルビースト・Rシリーズはインベーダーが寄生している為動物的な攻撃を行なう為に機体の各所がインベーダーの物に置き換わっていたが、量産型Rシリーズはしっかりと人間の技術で使えるもので構成されていた。
「オオミヤ博士、これでSRXの安定度は増すのですか?」
「ん、んーまだ調べてる段階だけど、そうとは言い切れないな。やっぱり量産型とあって廉価版だし、全部流用できる訳じゃなさそうだ」
イングラムが武蔵達と協力して解析用に持ち帰ってきた量産型Rシリーズはやはり量産型特有の欠点を持っていたと言うロブの言葉に、リュウセイはガッカリした素振りを見せた。
「なんだ、これでSRXの戦闘時間が増えると思ったんだけどな」
「いや、それは改善出来ると思うぞ? アポジモーターとかはRシリーズの物よりも高性能だし、冷却システムも流用できる」
「動力に関してはどうなのです? SRXのトロニウムに匹敵するエネルギーを生み出す動力がある筈。それに関してはどうなのですか?」
ライの問いかけにロブは酷く気まずそうな表情をし、ちょっと待ってくれと言って量産型R-2から引き出された何かを隠しているブルーシートに手を掛けた。
「言っておくが他言無用だし、このシステムはSRXに流用出来ない物だ。それと非人道的なシステムだし、俺達の中でこれを再現しようと思う者は誰もいない。それだけの代物だ」
何度も警告してからロブはブルーシートを引っぺがし、それを見たリュウセイ達から声にならない悲鳴が上がった。
「ろ、ロブ……こ、これはッ!? い、インベーダーじゃねぇかッ!?」
「それにあれは……アインストコアッ!?」
「ま、まさか……アインストコアとインベーダー細胞からエネルギーを抽出していたんですか!? オオミヤ博士」
機械に繋がれて干乾びて死んだインベーダーと砕け散ったアインストコアが、外装を外されたR-2の動力部に詰め込まれていた。
「ああ。アインストとインベーダーの再生能力を何らかの方法で動力に変換し、それが量産型SRXの動力に使われていた。トロニウムに匹敵する危険性を持った危険な動力だ。中のインベーダーとアインストコアは既に死んでいるから問題は無いさ。量産型の名前通りに量産型SRXはSRXの廉価版だ。1番欲しかった動力は全く使えない物だったな」
欲しかった動力はアインストとインベーダーを利用するシステムであり、どう考えてもSRXに利用出来るシステムではなかった。
「廉価版と言ったのですか? 聞く限りではSRXを強化するには十分な価値があったと聞こえるのですが」
ライの問いかけにロブは頭をかきながら勘違いさせた事を謝罪した。
「ああ、俺達が欲しかったのはSRXに合体した後のデータなんだ。そこら辺のデータが破損して吸い出せないんだよ、そのデータがあればかなりSRXの強化が出来るだけに残念だなってな」
量産型Rシリーズ自体は宝の宝庫であり、Rシリーズを強化する事は出来る。だがそれはロブを始めとしたSRX計画チームの求めていた情報ではなかったようだ。
「それは残念ですね」
「まぁしょうがない、丁寧に破壊したとはいえ鹵獲した機体だ。完全な状態でデータが手に入るとは思ってないさ、だけどRシリーズはかなり強化出来るぞ! T-LINKシステム回りやエネルギーパイプとか、制御プログラムとか、目に見えた変化はないけど確実に強くなるし、安定度が増す筈だ」
期待していたデータが無かった事に落胆しつつも、リュウセイ達に明るいニュースを伝えようとするロブにリュウセイ達は笑みを浮かべた。
「期待してるぜ、ロブ。なんせ次の俺達の敵は強敵だからな」
「ああ、オオミヤ博士達のサポートがなければ戦えない敵となるでしょう。ですが相手は1人、俺達との違いを見せてやりますよ」
「リュウセイ達なら出来るさ、チームの強さって奴を見せてやれッ!」
ロブの激励にリュウセイ達が力強く頷きながら返事を返すと艦内放送でブリーフィングルームに集合せよという連絡が入り、リュウセイ達はRシリーズが固定されているハンガーから背を向けて歩いてく、その姿を笑顔で見送るロブ。だがリュウセイ達の姿が見えなくなると、その顔が鬼の形相に変わった。
「こんなシステム、Rシリーズに……リュウセイ達の機体に組み込めるものかッ!!」
量産型Rシリーズ――貴重な資質である念動力者の数が限られているにも関わらず量産に踏み切り、SRXを運用できた理由……それは悪魔のような、いや、その表現すら生温い所業だった。
「私も流石にこのシステムを組み込む気にはならん」
「当たり前だ。ハミル博士、そんな事をするというなら俺はあんたを殺す。人道に反しているなんて物じゃないッ!!」
「分かっている。分かっているさ、念動力者の脳をクローニングして組み込む……そんな所業が許せるわけがない」
量産型Rシリーズのブラックボックス……その中身は念動力者の脳のみをクローニングしたものだった。理論上はパイロットに負担を掛けず、T-LINKシステムを最高レベルで稼働させるだけではなく、念動力者の補助としては間違いなく最高峰のシステムだ。
「脳を前提にしたシステムを流用できる訳がない、それ以外のデータ取りが済んだら量産型Rシリーズは廃棄する」
悪夢のシステムを目の当たりにしたロブとカークの顔色は悪い。インベーダーとアインストに制圧された地球では、ここまでしなければ戦えなかった。人の命を燃料にし動くシステムを作らなければ、人類が生き延びることも出来ない地獄――武蔵やイングラムから地獄と化した平行世界の話は聞いていたが、実際にそれを目の当たりにした衝撃は凄まじいものだった。
「こんな人道に反するシステムを使わなくても勝てるように、俺達が頑張らないと」
「科学者である俺達に出来る事は限られているが……やれる事はしよう」
量産型Rシリーズのシステム面の解析データを厳重なプロテクトを掛けて封印したロブとカーク。このシステムは人の目に触れてはならない禁忌のシステムであり、存在してはいけない物として、科学者の了見として封印する判断を下した。だが科学者の全てがロブ達のような決断を下せるわけではない。
「んふふー博士ぇ~捕まえて来たよ~」
「ユルゲン博士。今回は若いホームレスを多く確保する事が出来ました」
「ああ、ありがとう、これでODEシステムは更に発展する」
ホルレーと屈強な黒人男性からの報告を聞いて、ユルゲンは悪意に満ちた表情で微笑む。量産型Rシリーズに組み込まれている物とは違うが、人間をパーツとして利用する悪魔の研究はこの世界でも確かに根付き、そして芽吹きの時を待っているのだった……。
第202話 時の迷い子 その4へ続く
今回はアルト・グルンガスト・ズィーガーの改造と今後のフラグと言う構成でした。次回は教導隊チームの改造の話を入れて、ラウル達の紹介と言う感じで進めて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
PS
アスカ、シンジ、レイが真ゲッターに乗るのは解釈違い
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い