進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

345 / 400
第204話 魔の宇宙へ その2

第204話 魔の宇宙へ その2

 

ヒリュウ改の進路を塞ぐように展開されているアインストの群れ――クノッヘン、グリート、ゲミュートと何時も通りの軍勢……とキョウスケ達は油断すること無く、軍勢の奥に隠れるように配置されている数体のアインストを険しい目付きで睨みつけていた。

 

『キョウスケ中尉ッ! あれはッ!』

 

『動揺するなアイビス。あの中にはエクセレンは乗っていない、見せ掛けだけだ』

 

そのアインスト――純白の装甲に蝙蝠のような翼を持ったヴァイスリッターに酷似したアインストを見て動揺するアイビスに忠告するキョウスケだが、その声には隠し切れない怒気が込められていた。

 

「グルンガストもアルトアイゼンもいやがるな……ゲシュペンスト・タイプSとR-SWORDをコピーしてたとは聞いてたが、こいつは予想外だな」

 

ラングレーで出現したアルトアイゼンのコピーの出現は想定内だったが、その中にヴァイスリッターとグルンガストまで混ざっているのは想定外であり、流石のイルムも苦々しい声で呟く。すると通信を聞いていたのか、リンがグルンガスト改へ通信を繋げる。

 

『弱気だな、イルム。それなら今からでも私にグルンガストを回すか?』

 

「冗談言うなよリン。こいつは俺の機体だぜ、それにビビッてる訳じゃねえ。新生グルンガストに丁度良い敵がいるって思ったのさ」

 

グルンガストの変形機構を阻害せず機体の耐久力のギリギリまで機体各部を延長し、手足には手甲・脚甲を装備させ、胴体は既存の装甲の上から挟み込むように追加装甲を装着し機体サイズをワンサイズ以上アップさせたグルンガスト改の相手は最早PTやAM、下手な特機ですら相手が出来ない機体へと仕上がっている。

 

『余計な心配だったか、ヒリュウはこっちで防衛する。後は気にせず派手に暴れて来い』

 

「おうさッ! 武蔵達を捕捉させないように派手に暴れさせてもらうぜッ!」

 

グルンガスト改が両腕をクロスさせながら腰元に構える。

 

「行くぜえッ!! アルティメットビームッ!!!」

 

胸部の装甲が展開し、作り出された砲身から轟音と共に放たれた熱線がアインストへ襲いかかる。それを見てグリートが前に出てバリアで防ごうとしたが……強化されたアルティメットビームはグリートのバリアなどお構いなしに、グリートとクノッヘンの一団を纏めて消し炭へと変える。

 

『すげ……めちゃくちゃパワーアップしてやがるッ』

 

『半端ないね……いや、でもアインストや百鬼獣と戦うには、これくらいのパワーが必要なのかもしれないね』

 

グリートのバリアは非常に強力でビーム兵器を完全に無効化するほどの強度を誇っていた。集まれば戦艦の主砲ですら防ぐそのバリアを簡単に貫通し、消し炭に変えたその破壊力にマサキとリューネが驚きの声を上げる。その直後ヴァルシオーネの目の前を鎖でつながれた拳が通過し、闇の中から滲み出るように姿を見せたクノッヘンのコアを殴り砕いた。

 

『リューネ嬢。相手は何をしてくるか分からない、油断は命を失う事に繋がるぞ』

 

『ご、ごめん。バン大佐』

 

『構いませんよ、私はビアン総帥からフォローするように言われてますから。マサキ・アンドー、リューネ嬢の隣にいながら何を油断している、魔装機神操者と言うのは戦場で油断していても勤まるような軽い物なのか?』

 

『……悪い、俺が油断していた』

 

ネオゲッターを駆るバンの苦言に、マサキとリューネは素直に謝罪の言葉を口にする。ヒリュウの戦力が手薄になると言う事でクロガネからヒリュウに回されたネオゲッターチームは、武蔵達の抜けた穴を完璧にフォローしていた。流石に指揮を取るような真似はしないが、後方から戦況を十分に把握し万全なフォローをしていた。

 

『作戦に変更はない、フォワードは俺とイルム中尉、カチーナ中尉で務める。リョウト達はヒリュウの護衛と敵機の陽動だ、カチーナ中尉、イルム中尉もそれでよろしいですね?』

 

『かまやしねえさッ! 新型のゲシュペンストの力を精々試させて貰うぜッ!』

 

「俺もだ。とにかく悠長な事を言ってる時間はねぇ、ここで完全に物にさせてもらうぜ」

 

新型の慣熟を悠長に行っている時間はないのは言うまでもない。月面に向かえば百鬼獣は勿論、朱玄皇鬼、インスペクターに加えて、アインスト、インベーダーの出現まで考えられるのだ。武蔵達がセレヴィスに侵入する為の陽動だけではなく、機体の癖を掴む為にもキョウスケ、イルム、カチーナの3人のみをフォワードに据え、ヒリュウ改の護衛と敵の陽動に他の機体を当てることにした。この一見無謀に見える作戦もこれから戦うであろう敵の事を考えた上での最善策だった。

 

『出し惜しみはするな、この宙域のインベーダーとアインストを全てこの場に誘き寄せるつもりで陽動を行なえ。では戦況開始ッ!!』

 

戦況開始の命令を出すと同時にキョウスケの駆るアルトアイゼン・リーゼはアインスト・アイゼン、アインスト・ヴァイスへと突撃する。紅い線が宇宙に描き出されるのを見てイルムはグルンガスト改のコックピットの中で小さく笑った。

 

「冷静な振りして腸煮えくり返ってるじゃねえか……ま、俺も気持ちは分かるけどなあッ!」

 

【!!?】

 

グルンガスト改の振るった計都羅喉剣と、アインスト・ヒュッケバインの振るったビームソードがぶつかり合い火花を散らす。模造品、出来損ないと分かっていても、自分のパートナーが乗る機体がアインストによってコピーされている事にイルムの額に血管が浮かんだ。

 

「中身がねぇ、出来損ないで俺とグルンガストに勝てると思ってんのかッ!! 俺達を馬鹿にするんじゃねえぞッ! アインストッ!!!」

 

グルンガスト改の手甲が変形しながら拳を覆い、スライドした事で露出したブースターが火炎を撒き散らし放たれるときを今か今かと待ちわびる様に唸り声を上げる。

 

「ブーストナックルッ!!!」

 

グルンガスト参式、スレードゲルミルのドリルブーストナックルを参考にし、貫通力と破壊力を追求した鋭利な手甲を纏ったブーストナックルはアインスト・ヒュッケバインを胴体から貫き、その後のアインスト・ゲミュートまで貫き爆散させる。

 

「はっ、今のも避けられねえんじゃ話になんねえぜ」

 

姿形を真似した所で積み重ねた技術を真似出来ていないのならばそれは猿真似に過ぎない、姿を真似しただけで強くなったと思っているアインストの行動はイルム達、いや人間が今まで積み重ねてきた物全てを馬鹿にしていると言っても過言ではない。

 

「来いよ、本物の強さって奴を見せてやるぜッ!!」

 

【【!!】】

 

自分の前に2機のアインスト・グルンガストが立ち塞がったとしてもイルムの心に不安は無かった。姿を真似し、イルムの操縦技術を模範していたとしても、イルムの背中を様々な人間が支えている。その支えが、願いがある限りイルムの心は決して折れることはない。

 

【!】

 

「おせえッ!!」

 

アインスト・グルンガストのブーストナックルが発射される前にグルンガスト改の両目から熱線が放たれ、アインスト・グルンガストのブーストナックルが弾け飛んだ。

 

【!!!】

 

拳が吹き飛ばされた所でアインスト・グルンガストの動きが止まる事は無く、骨組みに触手を纏わせて拳を再生させ再びブーストナックルを放とうとするが……。

 

「言っただろッ!! おせえってなあッ!!」

 

増設されたブースターやスラスター、そして搭載されたテスラドライブによって今までのグルンガストの弱点であった機動力が大幅に強化され、ブーストナックルが放たれる前にアインスト・グルンガストの眼前に移動したグルンガスト改が計都羅喉剣を振るう。

 

「計都羅喉剣……暗剣殺ッ!!!」

 

【!?】

 

目に止まらない唐竹切りからの一閃にアインスト・グルンガストは防御する素振りすら見せずに両断され大爆発を起こし、もう1機のアインスト・グルンガストがその爆発の裏からファイナルビームでグルンガスト改を狙ったが、その熱線がグルンガスト改を捉える事は無かった。

 

【!?】

 

胸部が爆発し動揺するアインスト・グルンガストの胸部にはグルンガスト改が放ったクナイ型の飛び道具――ダークロックが突き刺さっていた。

 

「はっ、そんな子供騙しが俺に通用するかッ!」

 

ダークロックによって胸部が爆発し、動揺しているアインスト・グルンガストの顔面にダークロックを握りこんだグルンガスト改の右拳が振るわれ、アインスト・グルンガストの頭部は拉げ胴体から弾き飛ばされる。

 

【!!】

 

だがその程度でアインストが動きを止める訳が無く、両腕を伸ばしグルンガスト改を捕らえようとする。が、グルンガスト改の目からダブルオメガレーザーが頭部を失った胴体に放たれ、コアを破壊されたアインスト・グルンガストは大爆発を引き起こす。

 

「全然損傷なしか、親父め。とんでもねえもん作りやがって」

 

ゲッターロボの解析によって得た技術を元に新造された装甲はアインストの至近距離の爆発にびくともせず、イルムはその装甲の強度に驚いていたが、その顔に笑みは無かった。

 

(これでどこまで食い込めるんだ、もう足手纏いはごめんだぜ)

 

確かにグルンガスト改はかなりのパワーアップを果たした。だがこの力を持ってしても百鬼獣――龍虎皇鬼や、闘龍鬼、そして超機人達にどこまで近づけたのか、そしてゲッターロボと武蔵にどこまで近づけたのかと思えば、技術もクソもないアインストを倒したとしても誇れる物ではないという事をイルムは嫌と言うほど分かっていた。

 

【【【!!】】】

 

「はっ! 何体出て来てもな、超闘士グルンガストの敵じゃねえんだよッ!! この偽物野郎ッ!!」

 

今倒したばかりのアインスト・グルンガストが3体になってイルムの前に立ち塞がる。さっきのアインスト・グルンガストよりも威圧感が増しており、機体の各所も変化しより強力になっていると一目で分かるが、イルムはそれすらも好都合と考えていた。自分を真似て強くなる敵――それはグルンガスト改の熟練をしたかったイルムにとってはこの上ない訓練相手であり、アインスト・グルンガストとの戦いの中でイルムは恐ろしい速度でグルンガスト改を己の物へとして行くのだった……。

 

 

 

 

 

ゲシュペンスト・MK-Ⅲ・カスタムに求められたのはグルンガスト改やアルトアイゼン・リーゼのような突破力ではなく、量産が効き、パイロットに応じて機体性能を変化させる事――つまり究極の汎用性だった。だがそれは決して難しい事では無く、実際に汎用性で言えばゲシュペンスト・MK-Ⅲの段階でパイロットに応じたカスタム、修理、量産が可能な追加装甲にパイロットをサポートする高性能TC-OSと、ゲシュペンスト・MK-Ⅲの段階で汎用性に関してはクリアされていた。ではカスタムに求められていたものはと言えば、汎用性に加えてもう2つの要素だった。

 

「うおらああッ!!!」

 

カチーナの雄叫びを宇宙空間に響かせながらゲシュペンスト・MK-Ⅲ・カスタムが縦横無尽に戦場を駆け抜ける。

 

【!!】

 

「なめんなッ!!」

 

アインスト・クノッヘンの爪による斬撃を機体を僅かに傾けただけで回避させたカチーナは操縦桿とペダルを同時に操作し、ゲシュペンスト・MK-Ⅲ・カスタムの膝をアインスト・クノッヘンの顔面に叩きつける。

 

【?!?】

 

宇宙空間に響いたのは打撃音ではなく、抉り取るようなドリルの回転音――白兵戦に特化したカチーナ用のゲシュペンスト・MK-Ⅲ・カスタムの名に偽りは無く、真紅のゲシュペンスト・MK-Ⅲ・カスタムの全身が武器と化していた。膝から飛び出したドリルがアインスト・クノッヘンの顔面を貫き、そのまま容赦なく振り切られた回し蹴りはアインスト・クノッヘンのコアも貫いて破壊し、脱力したアインスト・クノッヘンは1度痙攣すると爆発する。

 

「っと、ナイスフォローだ。ラッセル」

 

爆発に隠れて突っ込んで来たアインスト・ゲミュートの胸部装甲にレールガンの弾頭が叩き込まれ、ゲシュペンスト・MK-Ⅲ・カスタムから引き離される。それを見たカチーナはラッセルにナイスフォローだと賞賛の声を向けるが、コックピットに響いたのはラッセルの怒声だった。

 

『カチーナ中尉ッ! もう少し周りを見てくださいッ!!』

 

「わぁってるよッ! アインストの奴らは仲間意識がなくてやりにくいんだよッ!」

 

仲間ごと、あるいは爆発に紛れての強襲は分かっていても対応がしにくい、アインストの再生能力とバリアによる機体の保護を基点にして突っ込んでくるのだから対応する難易度は尋常じゃ無く高い。今でこそラッセルにフォローされたが、機体の熟練の為に単騎で突っ込んだカチーナがまともに被弾していないのがある意味異常なのだ。

 

『満足したらヒリュウまで下がってくださいよ?』

 

「分かってる。大分感覚は掴んだぜ、やっぱりゲシュペンストじゃ大型のインベーダーやアインストと戦うの難しいってな」

 

ゲシュペンスト・MK-Ⅲ・カスタムに求められた2つの要素の内の1つは継続戦闘能力の高さだ。インスペクターとシャドウミラー、そしてアインストとインベーダーは転移により無尽蔵の戦力を送り込んでくる。そしてその中に特出した個体や指揮官機が混ざる事で燃費の悪いグルンガストや、ジガンスクードと言った特機はそれらに対応する為にエネルギーを消費し、エネルギー不足に陥りそこを転移してきたアインストやインベーダーの大群に押し込まれるというのがキョウスケ達がジリ貧に追い込まれる原因の1つだった。ゲシュペンスト・MK-Ⅲは優秀な機体ではあるが、その機体性能に動力がついて行かないという欠点があった。それの改善点の1つが……アメリカ大陸内部に偽装されていたメガフロートの中に眠っていたネオゲッターロボだ。ゲッター線を使っていないにも拘らず、グルンガストを遥かに越えるエネルギー総量、そして継戦能力の高さの秘密――PTやAMの動力として一般的な核融合エンジン、プラズマリアクターよりも安全、そして高いエネルギーを得れるプラズマボムス。ビアンを以ってしてもその全容はまだ掴めていないが、エネルギー循環や、圧縮などの技術のほんの一部を流用しただけで既存のプラズマリアクターはその性能を飛躍的に上昇させた。

 

(あれだけ暴れてもまだエネルギーは全然余裕だ。エネルギー系の武装をあんまり使って無いのもあるが……継戦能力は桁違いに上昇してるな)

 

ゲシュペンスト・MK-Ⅲならとっくの昔にエネルギーが枯渇している筈だが、新型のプラズマリアクターを搭載したゲシュペンスト・MK-Ⅲ・カスタムのエネルギー表示は依然グリーンであり、ほぼ万全な状態であることを示していた。ネオゲッターロボによってエネルギー問題が解決し、継戦能力は飛躍的に上昇した。これが求められた1つ目の要素、そしてもう1つの要素は……。

 

「アンカーセット、行くぜええッ!!」

 

ジガンスクード・ドゥロのシーズアンカーをそのまま小型化した手甲の爪先が開き、エネルギー刃を展開される。

 

「うおらぁッ!!」

 

電撃を伴ったエネルギー刃はゲミュートの強固な装甲をいとも容易く引き裂き、そして突き出された左腕から凄まじい勢いで射出されたシーズアンカーはゲミュートごとゲシュペンスト・MK-Ⅲ・カスタムを狙っていたグリートのコアを貫き爆発させた。

 

「良い武器じゃねえか、あたし好みだ。それに……」

 

【!!】

 

「ライトニングステークを使えるのもわるかねぇッ!!」

 

手甲が変形し、ゲシュペンスト・MK-Ⅲの基本装備であるライトニングステークの電極が露になり、飛びかかって来たアインスト・アイゼンはコアにカウンターで右拳が叩き込まれ、一撃で沈黙する事になった。もう1つの要素――それは無尽蔵に現れる小型アインストに引けを取らない戦闘能力だ。乱戦の中での支援、そして複数出現し連携を取って来る事で脅威度を飛躍的に上昇させるアインスト、インベーダーを単騎で撃墜出来る攻撃力が必要とされた能力の1つ。究極の汎用性、高出力エンジンによる継続戦闘能力、そしてアインストとインベーダーに劣らない攻撃力を得たことで、次世代のエースパイロット専用量産機としてゲシュペンスト・MKーⅢ・Gカスタムは見事初陣でその成果を見せつけるのだった……。

 

 

 

 

 

アルトアイゼン・リーゼが通過した背後では、無数のアインストの残骸が浮かんでいた。だがその残骸に破壊痕は無く、凄まじい重量で押し潰されたかのように拉げた状態だった……これが銃弾の跡やビームで溶かされた跡、斬撃の痕跡などならば分かるが、拉げた痕跡がアインストの残骸にある理由・・・それは単純明解だった。

 

「ぐッ……アルトやギーガ以上の暴れ馬だな。こいつは……ッ」

 

ゲッター合金コーティングや可変式のブースター、スラスター、そして最大加速を得る為の様々な工夫が施されPTとは思えない重量になった為に無理矢理テスラドライブを搭載し重量問題を解決したアルトアイゼン・リーゼの加速力は、直線に限ればゲッターD2に匹敵する物であり、軽く踏み込んだだけでアインストの群れをその重量と加速で一掃していた。だがその加速力は、パイロットであるキョウスケをも蝕んでいた。

 

(だが、今ので感覚は掴んだぞ)

 

レバーを引き戻し、踏み込んだままのペダルから足を退けるまでの間アルトアイゼン・リーゼは加速を続け、キョウスケにダメージを与えていたが、その痛みと全身に感じていたGでキョウスケはアルトアイゼン・リーゼの操縦感覚を掴む事に成功していた。

 

「練習相手には困らん、俺とアルトの相手をして貰うぞ……アインストッ」

 

アルトアイゼン・リーゼが強大な力を秘めているのはキョウスケも十分に理解した。だがイルムがグルンガスト改で感じた通り、その力であってもどこまで通用するかは未知数だ。機体性能を最大限に発揮するためには、機体性能に振り回されてはならない。己の手足のように操れなければ、龍虎鬼皇や共行皇達のいる超常の場所までは踏み込めない……ましてやアルフィミィに連れ去られたエクセレンを取り返すことすら出来ないと、キョウスケは静かに闘志を燃やしながらアインストの群れを睨みつけ操縦桿のボタンを押し込んだ。

 

「っ……ぐうッ!? 暴れ馬なのは武器も一緒か……面白いッ」

 

左腕の6連装マシンカノン――武装自体はギーガと大差はないが、リーゼの巨体に合わせてサイズアップしたその破壊力は尋常ではなくアインストの手足を容赦なく引き千切り、コアでさえも簡単に粉砕してみせる。しかしその反動でキョウスケの身体はベルトで固定していても派手に揺さぶられ、傷口に衝撃が走ったことでキョウスケの額に大粒の脂汗が浮かび、その動きが一瞬止まる。

 

【【【!】】】

 

動きを止めたアルトアイゼン・リーゼに向かってアインスト・アイゼンが右腕に内蔵されたリボルビングステークを模した武装――ホルツシュラオベの切っ先をアルトアイゼン・リーゼに向けて飛び掛る――その切っ先がアルトアイゼン・リーゼの巨体に触れかけた次の瞬間、アルトアイゼン・リーゼの姿は宇宙空間に真紅の軌跡を刻み、全く違う場所に存在していた。

 

「ぐっ!? じゃじゃ馬が過ぎるぞ……アルトッ!!」

 

ソウルゲインとの戦いではアルトアイゼン・ギーガは最大速度に入る前の出足を潰され、終始戦闘のイニシアチブを取られ続けた。その改善策と言うには些か問題はあるが、ゲッターロボ由来のロストテクノロジー、そしてEOTを組み込んだ事で最小の動作から最大の加速がアルトアイゼン・リーゼでは可能となっていた。自分の予想を超える反応速度、そして加速によって襲い掛かってきたGに顔を歪めながらもキョウスケは操縦桿から手を離す事は無く、そして今度は自らの意思でフットペダルを踏み込んだ。

 

「ぐっ……バンカーッ!!!」

 

予備動作なしの最大加速で突撃するアルトアイゼン・リーゼは紅い流星その物であり、アインスト・アイゼンを3機串刺しにしてもその加速を緩めず、アインスト・グルンガストをも貫き更に加速を続ける。

 

「うッ……うおおおおおおお――ッ!!!」

 

キョウスケの雄叫びと共にリボルビング・バンカーが炸裂し、アインスト・アイゼン、アインスト・グルンガストが一撃でバラバラに砕け散った。

 

『……化けもんかよ』

 

『し、信じられない……』

 

サイバスターやプロジェクトTDの機体と比べれば不恰好で、そして力任せの加速だが……直線に限ればゲッターD2に引けも取らないというその謳い文句に偽りが無かった事に、マサキとアイビスの2人は驚愕の声を上げた。

 

『キョウスケ中尉! インベーダーが接近中ッ! 一時後退してくださいッ!』

 

「いや、このまま行く。イルム中尉とカチーナ中尉に下がるように言ってくれ、巻き込みかねないからな」

 

両肩のハッチが開き、ブースターを兼ねていた背部のハッチも展開し凄まじい数のクレイモアの発射口が露になる。

 

 

『い、イルム中尉! カチーナ中尉ッ! 後退してくださいッ!! その位置はクレイモアの射角ですッ!!』

 

『きょ、キョウスケッ! ま、まだだぞッ! まだ撃つんじゃねえぞッ!!』

 

『馬鹿野郎ッ! そいつは容易にぶっ放すなって言っただろうがッ!!!』

 

ギーガユニットの一部をそのまま胴体部に流用し、その上でクレイモアを増設すると言う正気を疑う改造が施されたそれの発射口が自分達に向けられているのに気付き、イルムとカチーナが撃つんじゃないと叫びながら射角から機体を後退させる。

 

「クレイモアッ!!!」

 

グルンガスト改とゲシュペンスト・MK-Ⅲ・カスタムが射角から逃れると同時に凄まじい轟音を響かせチタンベアリング弾の嵐――アヴァランチ・クレイモアが、戦闘のエネルギーに誘き寄せられたインベーダーとアインストの群れに向かって放たれた。

 

【キシャアッ!?】

 

【!?!?】

 

【ギギャアアアアッ!?】

 

アインストとインベーダーの再生能力とバリアをその射出速度と重量で圧倒し、インベーダーとアインストの身体は一瞬で穴だらけになり、その上更にベアリング弾を叩き込まれ全身をバラバラにされ次々と消滅する。

 

「アルフィミィ。見ているのだろう?」

 

その破壊の中を突き抜け、クレイモアで四肢を破壊されたアインスト・ヴァイスを捕らえたアルトアイゼン・リーゼから発せられたキョウスケの言葉に、アインスト・ヴァイスから返事が返される。

 

『……流石キョウスケですの、良く私だと分かりましたの』

 

楽しそうに……いや実際に楽しいのだろう、恋人との会話を楽しむように声を弾ませるアルフィミィに対し、キョウスケの声は更に低い物となり、左腕でアインスト・ヴァイスの頭を掴み、リボルビング・バンカーの切っ先を露出しているコアに向ける。

 

『……もう少し優しくしてくれても罰は当たらないと思いますのよ?』

 

「悪いがお前に優しくする道理はない、エクセレンは返してもらうぞ。アルフィミィ」

 

キョウスケの宣戦布告と共にリボルビングバンカーがアインスト・ヴァイスのコアを砕いた。するとヒリュウ改の進路を塞いでいたアインスト達はボロボロと崩れ始めた。

 

『……ちゃんと……エクセレンと……待ってます……のよ』

 

「ああ、待っていろ。今度は直接こいつを叩き込んでやる」

 

アインスト・ヴァイスのコアの残骸にもう1度バンカーが叩き込まれ、アルフィミィの思念波は完全に途絶えた。

 

「……必ず取り返す」

 

崩れ去っていくアインスト・ヴァイスに向かってアルトアイゼン・リーゼが手を伸ばすが、その手が触れるよりも先にコアを失ったアインスト・ヴァイスは霧散する。崩れ去っていく砂を見つめながらキョウスケはエクセレンを必ず取り返すと、誓いを新たにするように強い決意の込められた口調で呟くのだった……。

 

 

 

 

キョウスケ達が作戦通りに陽動を行なっている頃――武蔵、コウキ、ラドラの3人はセレヴィスに潜入を果たしていた。

 

「ふうー……やっと一息つけるな」

 

「油断するなよ、俺達3人だけなんだ。1人しくじれば全滅だぞ」

 

宇宙服のヘルメットを脱いで大きく息を吐く武蔵にコウキが注意を促し、自身も着ていた宇宙服を脱ぎ再び装備を整える。

 

「コウキ。鬼に改造しているとなればどこが怪しい?」

 

「イスルギ重工関連だな。あの女狐の事だ……鬼とも手を結んでいるに違いないからまず間違いないだろう」

 

「マオ社は大丈夫なのか? 設備で言えばマオ社も大きいだろ?」

 

マオ社に匿われていた時期がある武蔵はマオ社の方が怪しくないか? とコウキに問いかけるがコウキは首を左右に振った。

 

「鬼にした後に36時間コールドスリープさせる必要がある。拠点としてマオ社は申し分ないが、それだけの設備を運び込むだけのスペースはない筈だ」

 

鬼化と言うが魔法や呪いで鬼に変えているわけではない。角を模した電子機器を埋め込み、その電子機器からの電波などで身体能力を強化し、百鬼帝国への忠誠心やブライの念動力に反応するように処置する。鬼化とは一種の人体改造に近い手術であり、その都合上脳への過負荷があり36時間冷凍睡眠させる必要があると鬼にする手順を聞き、マオ社ではなくイスルギ重工で鬼への改造がされている可能性が高いと言うのは武蔵もラドラも納得した。

 

「どうする? まずは民間人の保護か?」

 

「朱王鬼が催眠術や呪に長けているのならば、鬼にする前になんらかの追加の処置をしている可能性がある」

 

「民間人の所に朱王鬼がいると言う事だな。良し、決まりだ。まずは民間人が捕らえられているであろうシェルターを探す。リン社長からセレヴィスのシェルターの場所は聞いているから、イスルギ重工に近い場所から潰していくとしよう」

 

手早く作戦会議を済ませた武蔵達はそれぞれ無言で振り返る。

 

「オイラ真ん中にするわ」

 

「なら俺は右だ」

 

「仕方ない、左で我慢するとするか」

 

襲撃者などいるわけが無いと油断しきっている百鬼帝国の兵士に視線を向け、その中の1人が欠伸した瞬間にラドラが飛び出し、タックルの要領で引き摺り倒す。

 

「は……は!?」

 

突然仲間の1人が倒された事に鬼が間抜け面を晒している間に武蔵とコウキも背後から回りこんで、鬼の首に腕を回して首を後に捻り一瞬で絶命させる。

 

「油断してて楽だったな。もっと面倒かと思ったけどよ」

 

「敵がくるはずないと慢心しているからだ、たわけめ。こいつらの服とIDカードを剥ぎとるぞ、余り時間を掛けると不味いからな」

 

始末した鬼を監視カメラの死角に引きずり込み、武蔵達は鬼の服へと着替え民間人を救出する為にシェルターへ向かって歩き出すのだった……。

 

 

第205話 セレヴィス攻防戦 その1へ続く

 





新ユニットの3機追加です。これは後日あとがきに追加したいと思います。次回からはセレヴィス侵入を書いて行こうと思いますが、ちょっとここは短めになるかもしれないのでご了承願いします。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。




アルトアイゼン・リーゼ(IF)

ラングレー基地での戦いで大破したアルトアイゼン・ギーガはコックピットブロックを含めて完全にお釈迦になっており、修理が不可能だった為マリオンがゲッター合金製のGフレームを元に完全ワンオフとして建造していたゲシュペンストMK-Ⅳ(仮)を元に百鬼獣、ゲッターD2の研究した結果製造出来た新機構を全て組み込んだ物。キョウスケの安全を考えれば新機構は1つ、多くても2つが限界だったが、キョウスケの希望により、可変機構、リボルビングバンカー改、クレイモアの増設および強化、人造筋肉等の新機構を全て搭載した。
ゲッター合金で製造されたゲシュペンスト系のGフレームは恐るべき強度と柔軟性を誇りダイゼンガー、アウセンザイターなどのダブルGを除けば現在の地球では最高の機体に仕上がっているが、当然ながらパイロットの安全性は度外視であり、特殊なパイロットスーツの着用が必要不可欠となっている。アインスト、インベーダー、超機人、それらの超常の存在と戦う為に、そしてエクセレンを取り返す為には自分を大事にしていては駄目だというキョウスケの覚悟の現れである。また急ピッチの製造の為まだ完成してないパーツもあり、ネオギーガーアーマー、フライトユニットを装備することを前提としている為機体各部にハードポイントが用意されているが、イルム曰くその完全体になったアルトに新西暦の人間が乗れるとは思えないという代物である。機体各部の変形は空気抵抗を減らす為の物であり、機体のシルエットを変えるほどでは無いが、その加速力はギーガを遥かに上回るほどに強化されており、ゲッター合金のフレームによって強度を確保したことでテスラドライブの増設、更にリボルビングバンカーのT-ドットアレイの範囲も大幅に強化されその突破力、破壊力はゲッターライガー2に匹敵するほどである。


アルトアイゼン・リーゼ(IF)
HP14000(16700)
EN350(550)
運動性140(170)
装甲2000(2500)

特殊能力

ハイ・ビームコート ビーム兵器の威力を3000まで無効にする


ヒートブレードホーン ATK3700
アヴァランチクレイモア(MAP) 3900
6連装マシンカノン ATK4100
リボルビングバンカー改 ATK4900
アヴァランチクレイモア ATK5200
リボルビングバンカー改・OC ATK6200
エアリアルクレイモア ATK7200





グルンガスト改

ギリアムがジョナサンに託したXNガイストを再現する為のXNアーマーのデータを元にゲッター合金で建造された強化パーツを装着したグルンガスト。機体各部を1度バラバラにし、関節の延長、装甲の増設が施され、ワンサイズUPし、55m級になったグルンガスト。背部のアーマーラウンデル・ウィングにジェネレーターの増設、更に本体ジェネレーターの強化も施され、パワー、機動力、装甲、戦闘時間その全てが大幅にパワーアップしているだけではなくガストランダー、ウィングガストへの変形機構も健在である。


グルンガスト・改
HP9700(14500)
EN420(650)
運動性115(155)
装甲1900(2550)



ダークロック ATK3500
ダブルオメガレーザー ATK3800
ハイパーブーストナックル ATK4000
8連ミサイルランチャー ATK4200
アルティメットビーム ATK5000
計都羅喉剣改 ATK5500
計都羅喉剣暗剣殺 ATK6100
計都羅喉剣五黄殺 ATK7500






ゲシュペンスト・MKーⅢ・Gカスタム

ゲシュペンスト・MK-Ⅲでパイロットに応じたカスタマイズによる究極の汎用性を得、カスタムでは継戦能力を与えられたエース仕様のゲシュペンスト・MK-Ⅲ。ネオゲッターのプラズマボムスを解析した事でパワーアップしたプラズマリアクターを搭載しており、PTとは思えない出力と継戦能力を手にした。Gカスタムはカチーナの希望によってサイズダウンしたシーズアンカーを搭載しており、このGの略はガンドロカスタム。つまりジガンスクード・ドゥロをPTサイズにダウンサイジングした物とも言える。シーズアンカーは可動式でシーズアンカーの下には通常のゲシュペンスト・MKーⅢの腕部が収納されており、PTの手持ち火器も使用可能となっている。そしてフライトユニットを改造したフライトアーマーが標準装備されており、予備のプロペラントタンク、カートリッジ、武装の追加とゲシュペンストに求めていた究極の汎用性と継戦能力を手にしたゲシュペンストの完成形の1つとなっている。



ゲシュペンスト・MKーⅢ・Gカスタム


HP7900(10100)
EN350(420)
運動性150(190)
装甲1900(2100)

ネオプラズマカッター ATK3400
スプリットミサイル(ゲッター合金弾頭) ATK3900
ツインビームカノン ATK4200
アンカーブレード ATK4200
ドリルニー ATK4500
ライトニングステーク ATK5400
シーズアンカー ATK5800

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。