進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第349話

第208話 セレヴィス攻防戦 その4

 

ガルガウがインベーダーとアインストに喰われ、黒が混ざったゲッター線を放っているのを見て武蔵はポセイドン号の通信機のスイッチを入れた。

 

「エキドナさん。大分無茶しますけど大丈夫そうですか?」

 

『……大……大丈夫だ……あれを見て放置していて良いものではないと言うのは……私にも分かる』

 

朱玄皇鬼もインベーダーとアインストに喰われて異形と化しているが、ゲッター線の光は放っていない。強敵なのは間違いないがガルガウよりも危険度は下がる。

 

「コウキとラドラで朱王鬼を潰してくれ、ガルガウはオイラとエキドナさんで何とかする」

 

『分かった。ここまで変異しているとキョウスケ達には戦わせられん』

 

『下手をすると喰われるからな、まあそれは俺達も条件は同じだが……』

 

「すぐ食われることはないだろ? 多分が付くけどよ」

 

高密度のゲッター線を纏っているゲッターD2、ゲッターザウルス、轟破・鉄甲鬼はインベーダーとアインストとてそう簡単に取り込むことが出来ない相手だ。だからこそ初手に自分の仲間を増やすために種をばら撒いたのだ。戦力で劣ったとしても、数で押し潰す事は十分に可能だからだ。

 

【グガアアアアアッ!!!】

 

「行くぜオラアッ!!」

 

機械合成音などと言うちゃちな咆哮ではない、獣その物の雄叫びを上げるガルガウに負けるかと武蔵も叫び返し、ゲッターD2をガルガウへと突撃させる。

 

『いきなり突撃で大丈夫か?』

 

「自由にさせるほうが危険だ。まずは出足を潰すッ!! ダブルトマホークッ!!」

 

エキドナの言葉に武蔵はそう返事を返し、ダブルトマホークをゲッターD2の両手に握らせ一気に距離を詰めようとし……舌打ちと共にダブルトマホークをクロスさせて防御の姿勢に入った。

 

「くうっ!?」

 

閃光にダブルトマホークは切り裂かれ、ゲッターD2の装甲にも深い傷を刻み付けた。

 

『うあッ!? な、なんだ……今のは……「ちいっ!!」うっ!?』

 

理解不能の攻撃にエキドナが困惑しながら武蔵になんだと問いかけようとしたが、武蔵が急にゲッターを操った事で呻き声となり問いかける事は出来なかったが……月面に刻まれている傷痕を見てエキドナは顔を青褪めさせた。

 

『なんと言う破壊力だ……ッ』

 

深い……それこそクレーターレベルの破壊痕にエキドナは恐れ戦いた。今まで様々な破壊力の武器を見てきたエキドナだが、全く説明の付かない攻撃に驚きと恐怖を感じていた。それは武蔵も同じだが、それが自分の命を刈り取るものであると判断した武蔵は一体何で攻撃されているのかを見極めようとし、ゲッターを前進させると同時に地面を蹴って飛び上がりゲッターウィングを展開する。完全に攻撃を回避した……ように見えたが、ゲッターD2の脚部には深い傷痕が刻まれていた。

 

『一体何で攻撃されているんだ!?』

 

「高密度のゲッター線だ。エキドナさん、それをあの両手の爪から鉤爪みたいにして飛ばしてるんだ……ッ』

 

何で攻撃されているのか理解出来ていなかったエキドナに武蔵は何で攻撃されたのかを口にした。全身に纏っているゲッター線……それは盾であり矛なのだ。ゲッターD2の装甲さえ容易く引き裂くゲッター線の刃――そして遠距離からの攻撃は纏っているゲッター線でガードする。

 

『どうやって間合いを詰める。下手に突っ込んだら……膾切りだぞ?』

 

「とにかくまずは避けます、あれだけのゲッター線を使ってたらいつかは息切れするだろうし……その隙に切り込むしか『ならあたいが囮になってやるよ』……インスペクターがどういう風の吹き回しだ?」

 

『これでも宇宙の秩序を守るって言うのがあたい達の誇りさ。確かに侵略はしたし、殺しもした。だけど、あくまであたい達は宇宙の秩序を守ってきたつもりだ』

 

「インベーダーとアインストが危険だから協力するってか? それだけで許されると思ってんのか?」

 

『思っちゃ居ないよ。だけどこの戦いで生き残ったら話くらい聞いてくれても良いだろ?』

 

「……オイラは助けねえぞ」

 

『分かってるよ、あたいが勝手に囮になるだけさ』

 

『……』

 

『怪しい真似をしたらお前を殺す』

 

『それだけの事をお前達はしてきたんだ。分かっているだろうな?』

 

『……』

 

『覚悟は出来ているか、良いだろう』

 

『俺達も言えた口ではないからな、お前の行動で判断させてもらうとしよう』

 

ゲッターD2の横に浮かぶシルベルヴィントからの接触通信に武蔵は棘のある口調でアギーハへと問いかけ、そしてシカログはコウキとラドラと共に朱玄皇鬼へとドルーキンを立ち向かわせ、そしてメキボスが乗るグレイターキン改もまたキョウスケ達と共にインベーダー、あるいはアインストに寄生された百鬼獣との戦いに身を投じているのだった……。

 

 

 

戦況を見ていたインスペクターの機体が動き出した事にヒリュウ改のクルー達は緊張を強めたが、広域通信で告げられた言葉にその動きを止めた。

 

『取引がしたい、ヒリュウ改のクルーは応答されたし、こちらは武装を全て放棄する。誠意ある対応を望む』

 

グレイターキン改が所持しているビームキャノン、シールドを投げ捨て、ドルーキンは武装であるハンマーやメイスを足元へと落す、構造上武装を取り外せないシルベルヴィントは動力を停止させ、活動出来ない状態へと移行する。

 

「副長……どう思いますか?」

 

「罠……とはいえませんな、恐らく現状がインスペクターにとっても想定外なのでしょう。勿論我々も想定していなかった訳ですがね……」

 

ガルガウがインベーダーとアインストに喰われている状況はインスペクターにとっても想定外だったのだろうが、武装解除されてもはいそうですかと信じる訳には行かない。

 

『今のうちにぶっ潰す事を提案するぜ艦長、大体あいつらがインベーダーに寄生されていねぇって言う根拠がねぇ』

 

カチーナの言う通りである。ここで取引を受け入れたとしてもメキボス達がインベーダーに寄生されていない根拠が無い以上……メキボスの要求を聞き入れる理由はないのだが、レフィーナは僅かな逡巡の後キョウスケ達に命令を下した。

 

「交渉は私が当ります、インスペクターへの攻撃は一時中断してください」

 

『おいおい正気か!?』

 

『……何を考えて……』

 

その命令は流石のキョウスケ達も躊躇いを覚えるが、目の前の百鬼獣の残骸がメタルビーストやアインストに変化を始めるのを見れば其方に意識を向けざるを得なかった。それでも通信機だけは稼働状態にして、メキボスとレフィーナの会話に耳を傾ける。

 

「地球連合軍レフィーナ・エンフィールドです」

 

『ゾヴォークのメキボス・ボルクェーデだ』

 

「長話をするつもりはありません、取引の内容を聞かせてください」

 

レフィーナの険しい声にメキボスは分かっていると返事をし、取引の内容を口にする。

 

『事態は俺達にとっても想像を超えるレベルで悪化の一途を辿っている。こんな事を言えた口ではないのは分かっているが、今のままでは事態が悪化する事はあるが好転する事はありえない。よって俺メキボス、アギーハ、シカログの3人は現時刻を持って地球監査ではなく、宇宙の平和・秩序を守る惑星間連合ゾヴォークの理念に従い、インベーダーとアインストの殲滅を最優先とする。よって貴君らへの共闘を要請する』

 

メキボスの言葉にレフィーナはグッと拳を握り締めた。侵略行為を散々しておいて、今更何を言っていると、お前達の行動のせいでここまで地球圏は混乱したと言うのに今更なんだと叫びたくなる気持ちをグッと堪えて口を開いた。

 

「当たり前の話ですが、貴方の話を信用する事は出来ません」

 

『だろうな、俺達の今までの行動を見ればそう思うのは当然だ。なら俺達はどうすれば良い?』

 

「この戦いで貴方達の真意を見させてもらいます。それを見た上でどうするか判断します」

 

『分かった、それで構わない、自分達の行動で示すのは当然の事だからな。だが後から撃つのは止めてくれよ?』

 

「それは貴方達次第です」

 

一方的に通信を切ったレフィーナは艦長席に腰掛け、深く息を吐いた。

 

「……副長。私の決断をどう思いますか?」

 

「今出来る最善だったでしょう、恐らくダイテツ艦長も同じ決断を下した事でしょう」

 

正直に言えばレフィーナだってインスペクターとの共闘なんて冗談ではないと叫びたかった。だが大局を見れば、いや、もっと言えば星間連合と言う肩書きを面に出してきた事をレフィーナは危惧したのだ。もしもメキボス達が帰らず、地球人に返り討ちになったとすればその科学力を持ってレフィーナ達では想像も得出来ない兵器を持ち出してくるかもしれない。そうなれば地球全体が、いや太陽系全体の危機に陥りかねない……恨みはある、今更どの口で共闘したいと言い出したと罵ってやりたいが、込み上げてくる怒りをレフィーナはぐっと堪えてメキボス達の余りにも都合のいい申し入れを受け入れたのだ。

 

「ですが、艦長。そう怒る事も無いでしょう」

 

「何でですか?」

 

自分と同じ思いを抱いている筈のショーンが笑みを浮かべながら怒る必要が無いと口にし、レフィーナが若干声を荒げてどういう意味だと問いかけるとショーンは顎鬚を撫でながら意地の悪い顔で笑った。

 

「共闘したとしても武蔵が許すとは思えませんからね。誰よりも強烈な一撃を叩き込んでくれると思いますよ」

 

その言葉にレフィーナは一瞬驚いたように目を見開き、その通りだと笑いユンにキョウスケ達にインペクターと共闘する旨の通達を出すように指示を出し、モニターに写るインベーダーとアインストに寄生された百鬼獣達に視線を向けるのだった……。

 

 

 

シカログと言う男は生粋の戦士である。それもゾヴォークでは馬鹿にされていると言っても良いほどに古い宗教観を持つ宗教戦士であった。その宗教では戦士は寡黙である事が美徳とされる……己を必要以上に飾る事無く、己を賞賛する事無く、贅沢をする事無く、そして愛する者を守って戦う事を美徳とし、成し遂げるのが難しい誓約を己に課す戦士こそ優れていると賞賛する――己を厳しく律する事こそが己の優秀さを示すとされる戦闘民族である。ゾヴォークが発足した当時は重宝された部族ではあるが……現在はその古い価値観と宗教によって辺境に追いやられ、絶滅の危惧に瀕しているような少数民族の生まれがシカログである。

 

「!!!」

 

そんなシカログが監察官に選ばれたのはその戦闘能力の高さ、機動兵器の操縦適正の高さ、そして現在においても宗教の教えを守り、只管に己を鍛え上げ続けた事が監察官として認められたのである。そして監察官になった事でシカログが己に課した誓約は、喋らない事である。言葉ではなく己の行動で自身の価値を示し続ける事をシカログは選んだのである。

 

【シャアアッ!!!】

 

メタルビーストいやアインスト……そのどちらでもない朱玄皇鬼・D(デッドマン)の突き出された腕から伸ばされた触手をドルーキンは片手で掴んで一気に引き寄せる。吹っ飛んで来た朱玄皇鬼・Dの胴体にメイスを突き立てる。

 

【グギャアアアアア!?】

 

「!!!」

 

苦悶の声を上げ暴れる朱玄皇鬼・Dをそのまま頭上へと持ち上げる。アギーハとシカログの間に言葉は必要ではない、互いを思う合う気持ちで心が繋がっているからだ。そして武蔵、コウキ、ラドラ達とも言葉は必要ではなかった……何故ならば戦士だからだ、戦士の間に言葉は必要ではない。

 

『焼け焦げても知らんぞッ!!』

 

『吹き飛べッ!!!』

 

ゲッターザウルスの口から吐き出された火炎と轟破・鉄甲鬼の放った酸とゲッター線が混ざった暴風が朱玄皇鬼・Dとドルーキンを飲み込んだ。

 

【グギウイイイイイイッ!!!?】

 

「!?!?」

 

火炎による熱、そして装甲を溶かす特殊溶剤によってドルーキンの強固な装甲が溶かされ、メイスも少しずつ溶かされる。それでもシカログは朱玄皇鬼・Dを捕らえる手を緩める事は無い。確かにシカログ達が地球に行なった事は決して褒められる対応ではなかった……むしろゾヴォークとしての対応としても完全な悪手だった。だがシカログは戦士である、戦士は上官の命令は絶対であり、ウェンドロがそれを良しと認めたのならばそれに対して反論をすると言うつもりは一切無かった。だが思う所がなかった訳ではない、ヴィガジの暴走によって地球人と対立を深いものとした……それさえなければ、もっと早くにインベーダーとアインストに対応する事が出来たのだ。

 

『行動で見るとは言ったが、死ねとは言っていないぞ』

 

接触通信によるコウキの言葉にハッとしたシカログはドルーキンが手にしていたメイスが柄を残して消滅しており、インベーダー細胞とアインストの触手がドルーキンの本体に迫っているのを見て咄嗟にメイスを投げ捨てた。

 

『使え、そんな物を使うよりもよっぽど有効打を与えられるだろう』

 

ゲッターザウルスから投げ渡されたダブルシュテルンを受け取り、2度3度と振るわせてシカログは驚いた。馴染んでいるのである。メイスやハンマーと言った旧式の武器を使うドルーキンだが、当然ながらドルーキンとゲッターザウルスでは重心の位置などはまるで違う。だがそれでもまるでドルーキンの為に作られた武器のようにダブルシュテルンが馴染んだ事に、シカログは驚いたのだ。

 

『馴染んだのならそれを使え、化物が本領を発揮し始めたぞ』

 

朱玄皇鬼・Dの身体から生えるように機体の構成をインベーダーとアインスト細胞へと置き換えた玄朱皇鬼・Dが現れ、槍を振るう姿を見てシカログは眉を顰め、改めて何故地球人を力で抑え込もうとしたのだと、最初からゾヴォークに迎え入れようとすればこんな脅威が生まれる事は無かったのだと思わずにはいられなかった。

 

『お前と俺であいつを沈める。遅れるなよ』

 

「!」

 

ゲッターガリムへとゲッターチェンジしたゲッターザウルスが玄朱皇鬼・Dに向かって爪を振るう姿を見ながら、シカログの駆るドルーキンと轟破・鉄甲鬼は玄朱皇鬼・Dへと向かって行くのだった……。

 

 

 

 

朱王鬼と玄王鬼が操っていた時よりも朱玄皇鬼、玄朱皇鬼の2体は強くなっているとラドラは感じていた。朱王鬼と玄王鬼の2人はどう見ても小者である。自分が傷つられるわけが無いと、自分達は一方的に搾取し傷つける側だと疑わず、己を鍛える事をしなかった……同じ四邪の鬼人である龍王鬼と虎王鬼は常に己を鍛え、常に魂力を高めていた。そして純度と濃度が高まった龍王鬼と虎王鬼の魂力は、龍虎皇鬼に大きな恩恵を与えていた。それに対し己を鍛えようとしない朱王鬼と玄王鬼から魂力を与えられていた朱玄皇鬼は、弱体化こそしなかった物の……その力を強める事は無かった……それが今、インベーダーとアインストに寄生された事により朱王鬼と玄王鬼は自らの強い闘争本能を満たす優秀なパイロットを得る事が出来たと言うのは、とんでもない皮肉な話だった。

 

「インベーダーとアインストに乗っ取られた方が強いか……お前も恵まれてないな」

 

【シャアアッ!!】

 

炎と氷を纏った槍による連続攻撃は早く、重い、それに加えてインベーダーとアインストの触手が加わるので避けるのは至難の技だろう。だが玄朱皇鬼・Dとラドラとゲッターガリムは、致命的なまでに相性が悪かった。

 

「子供の遊びだなッ!!!」

 

触手の嵐をゲッターガリムの鉤爪が全て切り裂き、スピードの乗った回し蹴りが玄朱皇鬼・Dの顔面を拉げさせ、よろよろと後退させる。武蔵とコウキもそうだが、ラドラも化物とは戦い慣れているのだ。触手が伸びてこようが腕が伸びてこようが、装甲からインベーダーが顔を見せて来ようがうろたえるような甘い経験値ではないのだ。

 

「ふんッ!!!」

 

【ギギャァッ!?】

 

「どうした? 外に出たかったのだろう? 俺が出してやると言っているんだ遠慮する事はないッ!!」

 

伸びて来たインベーダーの頭部をガリムの鉤爪が鷲づかみにし、強引に引き抜きに掛かる。装甲と繋がっているインベーダーの頭部からどす黒い体液が噴出し、体内に引き戻そうともがく玄朱皇鬼・Dだがゲッターガリムに完全に動きを止められていた。それでも体内に引き戻そうともがき、ゲッターガリムが急に手を離し凄まじい勢いでインベーダーの頭部が体内に回収され、轟音を周囲に響かせる。

 

「おっと、悪かったな。戻りたがっているようだから戻してやろうとしただけなんだがな?」

 

【グガアアアッ!!】

 

言葉を理解しているとはラドラも思っていなかったが、玄朱皇鬼・Dが怒りのリアクションを見せるのを見て、畜生でも馬鹿にされていると理解しているのかとラドラは内心感心していたりする。

 

(仕込みはした。後はタイミングだな)

 

ゲッターザウルスが高密度のゲッター線を内包していたとしても、掴み続ける事はインベーダーに寄生されるリスクがある。それでもラドラがインベーダーの頭部を掴んでいたのはある理由がある、朱王鬼と玄王鬼の性格、そしてその一部を学習してある行動に出るだろうからと仕掛けた罠が、玄朱皇鬼・Dの体内に隠されていた。

 

【ゴアアアアアアッ!!!】

 

「好都合だ。どんどんエネルギーを使うが良い」

 

玄朱皇鬼の翼が広げられ、周囲を焼き払う火球の雨が放たれる。その熱、速度、破壊力、そして攻撃範囲はサイバスターやヴァルシオーネの広域攻撃であるサイフラッシュやサイコブラスターにも引けを取らない……いや、被弾した場所に残り続け周囲を焼く悪辣さ、その一点だけはサイフラッシュやサイコブラスターよりも優れている点であり、玄朱皇鬼・D、朱玄皇鬼・Dがそれぞれ所有している盾が展開しているエネルギーフィールドの阻害効果も相まって、並の機体ならば避ける事は不可能だっただろ。

 

「言った筈だ、子供の遊びだとなッ!!」

 

ゲッターガリムの全身をゲッター線の輝きが包み込み、月面を高速で駆け回り放たれる火球の雨を全て回避し、少しずつ距離を詰め始める。

 

【ガアアッ!!】

 

近づけませまいと槍を振るい火球や氷の礫、そして背部の翼から火球を放ち続ける玄朱皇鬼・D。速度に優れた機体がその速度で負けたのならば、相手の出足や足を鈍らせるのは戦術として間違いではない……間違いでは無いがそんな悠長な行動をラドラが許すわけも無く、月面を砕いての急加速で一気に距離を詰める。

 

【シャアッ!!!】

 

包囲網を築くのが間に合わないと判断し、攻撃の威力を下げ攻撃範囲と速度を上げる事で対応しようとする玄朱皇鬼・Dの戦術は正しい。威力を落としたことで攻撃はより早くなり攻撃範囲も広がった。そして威力を落としたとは言え、インベーダーとアインストに寄生され出力が上がっている玄朱皇鬼・Dの火力を考えれば、一発でも掠めればそこから畳み掛ける事も可能であり、一撃でも被弾すれば危険と言わざるを得ないが……。

を落としたことで攻撃はより早くなり攻撃範囲も広がった。そして威力を落としたとは言え、インベーダーとアインストに寄生され出力が上がっている玄朱皇鬼・Dの火力を考えれば一発でも掠めればそこから畳み掛ける事も可能であり、一撃でも被弾すれば危険と言わざるを得ないが……。

 

「当らなければどうということはないッ!!!」

 

当ったら危険ならば当らなければ良い……脳筋な考え方かもしれないが武蔵やコウキ、ラドラならばそれは不可能ではないのだ。一瞬で攻撃を見切る反射神経の高さ、そして動物的とも言える危機察知能力、迷う事も躊躇う事も無く自分の身体を動かす事が出来る勝負度胸から、武蔵達は言うならば生粋の怪異殺しと言っても良い。敵が異形の姿をしていようがなんだろうが躊躇う事も恐れることも無い。

 

「うおおおおおッ!!!」

 

雨霰のように放たれる攻撃を全て回避し、玄朱皇鬼・Dに組み付いたゲッターガリムは高速回転する右腕を最大速度のまま突き出した。

 

【ギギャアアアアアアッ!!!?】

 

顔面にドリルのように回転する鉤爪を突き刺され、玄朱皇鬼・Dは苦悶の悲鳴を上げて逃げようとするが、ゲッターガリムの尾が胴体に巻きついており離れる事が出来ず、これは堪らないと玄朱皇鬼・Dが周囲に展開していたバリアフィールドのビットとなっていた玄王鬼の甲羅を自身の身体に戻すのを見て、ラドラは獰猛な笑みを浮かべた。

 

「その鬱陶しい盾をぶち砕くッ!!!」

 

分離し状況に応じてバリアフィールドなどを展開する盾はラドラにとっても鬱陶しいものだった。こうして間合い詰めて攻撃を加えれば攻撃に晒されるのを嫌って盾を回収し、自分の身を守ると踏んでいたのだ。

 

「これが畜生の限界だ」

 

自分の事しか考えられないインベーダーとアインストだからこそ、自分の守りを優先する。攻撃に優れ防御が弱い玄朱皇鬼・Dを守る為に展開されていたバリアフィールドが解除された。ラドラは畜生と言ったが、朱王鬼と玄王鬼を取り込んだアインストとインベーダーは、仲間を裏切っても自分が生き残るという考え方までも取り込んでいたのがこの行動に繋がったのだ。

 

『逃がすか、くたばれッ!!!』

 

『……ォォ……オオオオオオオオオオオ――ッ!!!』

 

【グギャアアアアアアアッ!!!】

 

機動力と攻撃力に優れる玄朱皇鬼を模した玄朱皇鬼・Dは、インベーダーとアインストの再生能力を生かし辛うじてゲッターガリムの攻撃を回避し致命傷を回避していた。だがそれは朱玄皇鬼・Dと自身のバリアが機能していたからだ。それを失えば、多少の被弾などお構いなしに突っ込んでくる轟破・鉄甲鬼とドルーキンの圧力を止める事は不可能だ。斧とダブルシュテルンの一撃を喰らって両腕を切り落とされた朱玄皇鬼・Dが地面を蹴って逃げようとするが、その足に轟破・鉄甲鬼の手から伸びた鎖が絡みついて月面へと叩きつけられる。

 

『逃がさんと言ったはずだッ!!』

 

【グギャアッ!? ゴガアッ!?】

 

鎖で繋がったまま振り回されては月面に叩きつけられる朱玄皇鬼・D。インベーダーとアインストの複合体なので身体を溶かして何度も拘束から逃れようとするが鎖が淡く翡翠色に輝き、身体を溶かそうとする度に苦悶の悲鳴と白煙を上げて元の姿に戻らされている。

 

『1度捕らえた獲物を逃がすほど俺は甘くはないぞッ!』

 

鎖が放っている光は当然ながらゲッター線だ。ゲッター線に焼かれている朱玄皇鬼・Dは逃れることも、防ぐ事も出来ず身体を焼かれ、月面へと何度も何度も叩きつけられる。

 

【ギイイッ!?】

 

「今更取り繕った所でもう遅いッ!!」

 

相方である朱玄皇鬼・Dが轟破・鉄甲鬼とドルーキンに痛めつけられている姿を見て、再び玄朱皇鬼・Dはバリアフィールドを展開しようとするがゲッターガリムに組み付かれ、攻撃を防いでいるうちに玄王鬼の甲羅はボロボロになっており、仮にバリアフィールドを展開できたとしてもゲッター線で稼働しているゲッターガリムと轟破・鉄甲鬼の動きを阻害出来るほどのバリアを展開するのは不可能であった。

 

「おおおおおッ!!!!」

 

【ギ、ギギャアアアアアアッ!?】

 

高速回転する鉤爪を胸に突き刺され、装甲の奥のコアを抉られた玄朱皇鬼・Dは苦悶の声を上げながら、高速回転する腕から放たれた衝撃破に全身を切り裂かれながら弾き飛ばされる。

 

【ギィイイッ!!!】

 

【キッシャ!!】

 

それは奇しくも轟破鉄甲鬼とドルーキンに痛めつけられていた朱玄皇鬼・Dの元であり、月面の中に隠していた細胞を呼び戻し、互いの身体を溶かして再び1つになって互いの傷を修復しようとするが、その動きが突如止まった。

 

【ギ、ギガア!?】

 

【ご、ゴガアアア……ッ!?】

 

『何を仕掛けた?』

 

融合も分離も出来ない、身体が中途半端に結合し動く事が出来なくなった玄朱皇鬼・Dと朱玄皇鬼・Dを見ながらコウキがラドラに何をしたと問いかける。

 

「仕込みをしておいた、インベーダーとアインストの生存本能と朱王鬼と玄王鬼の生き汚さを考えればこう来るだろうと思ってな、だから俺はお前の体内にガリムの爪を残した」

俺はお前の体内にガリムの爪を残した」

 

……ラドラの言う仕込みの正体は、何時の間にか消えていたゲッターガリムの左手の爪だったのだ。高純度のゲッター合金で作られたガリムの爪のゲッター線が徐々に身体に回り、融合する為に体組織を緩めた事でその結合を一気に崩したのだ。

 

『あの時か……ふっ、上手くやったな、これで隠れていた奴らも誘き出せた。一気に殲滅するぞ』

 

ゲッター線とて万能ではない、インベーダーに寄生される事もある。そのリスクを背負ってまで玄朱皇鬼に寄生しているインベーダーの体内にゲッター合金製の爪を残すという手段に出たラドラをコウキは賞賛し、月面に隠れていたインベーダー細胞が顔を出したのを見て獰猛な笑みを浮かべた。

 

『予想通り過ぎて笑えんな』

 

「寄生する相手を探っていたのだろう、だがそう来るであろうと予測がついていれば何の恐ろしさも無い」

 

体内の高密度のゲッター線が反発しあい、玄朱皇鬼・Dと朱玄皇鬼・Dは中途半端に結合した状態でその動きを止める。ゲッター線を求めながらも高密度のゲッター線に耐えられないインベーダーとアインストの性質、そしてインベーダーとアインストに取り込まれてもなお、インベーダーとアインストの影響を与える自我を持っている朱王鬼と玄王鬼の性質から、次の寄生先を確実に捕らえる為に核をどこかに隠していると踏まえた上での罠だった。

 

「これで何の憂いも無く……」

 

『消し飛ばせるッ!』

 

ゲッターザウルスと轟破・鉄甲鬼が並び立ち腹部のレンズが展開される。それを見て朱玄皇鬼・Dと玄朱皇鬼・Dは互いの身体を切り離してまで逃げようとするが互いの身体が中途半端に融合している事で逃げることも出来ず、無様に這いずって逃げようとするが当然そんな動きでラドラ達から逃れられるわけも無い。

 

『「ゲッタァアアア……ビィィイイイムッ!!!」』

 

【【ギッ! ギャアアアアアアアーーッ!!!】】

 

暴虐を繰り返した悪鬼に待っていたのは因果応報の結末だった……インベーダーとアインストに取り込まれ、自我を持たない獣となりゲッター線の翡翠の輝きの中へ飲まれて断末魔の悲鳴を月面に響かせながら、朱王鬼と玄王鬼は跡形も無く消え去るのだった……。

 

 

 

第209話 セレヴィス攻防戦 その5へ続く

 

 




インベーダーとアインストに取り込まれても基礎性能が低すぎる上にゲッター線特攻でぼこられて消滅。こいつらはかっこいい戦闘とか無しで丁度良いかなって思ったので今回の形となりました。とは言えゲッターザウルスと轟破鉄甲鬼だからこそ有利だっただけで、OGユニットだったらかなり苦戦する事になったと思います。なので次回はキョウスケ達の視点でインベーダーとアインストに寄生された百鬼獣との戦いを書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。


PS 久しぶりのガチャ報告

ダブルファンネル2枚とオーライザーのSSR1枚、無事に入手できました。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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