第209話 セレヴィス攻防戦 その5
アインストとインベーダーに寄生され変異した朱玄皇鬼、そしてガルガウとの戦闘音は遠く離れたセレヴィスまで響き渡っていた。単騎で戦うのは危険な相手というのは武蔵達も把握していたが、それでも単騎の戦いに持ち込む必要性があったのだ。リュウセイを誘い出し取り込もうとしたロスターとガルガウと朱玄皇鬼が変異したロスターは、別個体と言うべき進化をしていた。道連れにするという悪意ではなく同種を増やすという願望を持ち、キョウスケ達を……いや、もっと言えばセレヴィスだけではなく、ムーンクレイドルの地下のシェルターや他の月面都市に向かっても種を撃っていたのだ。だが百鬼獣に植え付けた種以外発芽はしていなかったのには理由がある。
「馬鹿の一つ覚えみたいに種を打ち込んできやがって……そっちは大丈夫かッ! インスペクターッ!!」
ガルガウと対峙しているゲッターD2、そして朱玄皇鬼・Dと対峙しているゲッターザウルスと轟破・鉄甲鬼のゲッター炉心の出力は強く、寄生目的のインベーダーとアインストの種が着弾する前に消滅させていたからロスターが増える事は無かった。たが武蔵達でも完全に消滅させたという確証が得れない以上、無理にでもセレヴィスとヒリュウ改から引き離す必要性があったのだ。
『インスペクターじゃなくてあたいはアギーハだよッ!』
「そんだけ怒鳴れるなら大丈夫だなッ!!」
インスペクターと怒鳴られアギーハだと怒鳴り返してくる声を聞いて武蔵は大丈夫だなと言いつつも、その目は心配そうにシルベルヴィントを見つめていた。根本的に武蔵は善人なのだ、竜馬や隼人ならば囮として使い潰す事を平気で行うだろう……だが、武蔵のヒリュウ改とセレヴィスから引き離したいと言う願いを聞き入れ協力してくれたアギーハには思う所はあれど、見捨てるという選択は限りなく低い物となっていた。
「甘いって言いますか? エキドナさん」
『……そうだな、甘いな。だが……それがお前の良さだろう。なら私は何も言わないし、言える立場に無い。今はとにかくあいつが種をばら撒くのを封じるのを最優先に行動するしかないだろう』
自分が言っている事がどれだけ難しいのかを知っているエキドナの顔が苦々しく歪むが、武蔵は大丈夫そうですよと呆気からんと笑った。何故だと言いかけたエキドナはセレヴィスの上空で弾ける光を見た。
『あれはビアン博士が作っていた物か』
「インベーダーとアインストのコアを解析して作ったバリアを発生させる装置……あれが上手く起動してくれれば、キョウスケさん達も戦いやすくなる筈」
『その心配は杞憂だな、正常に稼働しているようだ』
ビアンのゲッター線研究は多岐に渡る。ゲッター炉心、ゲッター合金を応用した装甲や武器は勿論対インベーダー、アインストもそれに含まれていた。インベーダーとアインストの最も重大な脅威――寄生に対する守りとして、5つのビットを基点にゲッター線バリアを展開し、寄生目的の種の状態のインベーダーとアインストを死滅させるものであった。そしてそれはビアンの想定通りに稼働し、ガルガウの放つ種を空中で次々に消滅させる。
『……地球人半端ないね。こんな研究ゾヴォークじゃなかったよ』
「はッ! 野蛮人だとなんだの言って人を見下してるからだぞッ! いきなり押さえつけるんじゃなくて少しは話を聞くって事を覚えなッ!!」
『耳が痛いね、全く……あのハゲが居なければもっと友好的な出会いも会ったんだろうにねぇ』
メキボス達と武蔵達の対立が深まったのは全てヴィガジの所為であり、そのヴィガジはインベーダーとアインストに喰われている。因果応報と言えばそれまでだが、ヴィガジが居なければこうして敵対する事も無かっただろうにとアギーハは深く溜め息を吐いた。
「とにかくあいつをぶっ潰すぜ、種は防いでも直接寄生されたらお仕舞いだ」
『分かってる! 精々引っ掻き回すからトドメは頼むよッ!!』
シルベルヴィントとゲッターD2の姿が左右に弾かれたように移動しガルガウの放った光線を回避する。余裕を持って回避した武蔵だがその光線の色を見て眉を顰めた。
「ゲッター線に適合し始めてやがる……今より進化されると不味いぞ」
『ゲッター線とインベーダーは反発するんじゃないのかい?』
「そんな事オイラに言われても分かるもんか、とにかくあいつを倒さなきゃ不味い事になるって事しかわからねえよッ!!」
どす黒いがガルガウの放った光線は紛れも無くゲッタービームであり、ゲッター線に適合進化を始めているガルガウを一刻も早く倒さなければロスターが、いやラングレーに現れかけた不進化態などが現れるかもしれない……武蔵がそれを完全に理解していたわけではない。だがゲッター線の進化にもっとも深く関係する存在である武蔵だからこそ……今のガルガウの変化が危険であると本能で悟ったのであった……。
アインストとインベーダーの細胞は基本的に反発する者同士だ。余りにも両者の関係が近すぎるため互いの自己を浸食すると本能で悟り、拒んでいるのでロスターのような悪意の化身へとその存在が変わっていく。だがガルガウから放たれた種は妖機人が仲介役……いやクッション役となっていた事で、完全な別個体へと変貌を遂げていた。
【グルルル、グガアアアアアッ!!!】
【■■■――ッ!!】
百鬼獣の残骸に寄生していたインベーダーとアインストが、キョウスケ達の見ている目の前で更なる変異を遂げた。
『B級ホラーは止めろっていつも言ってるだろうがッ!!』
『今回ばかりはカチーナに同意するわ……本当に良い加減しなよッ!!』
ベースはインベーダーだ、黒光りするゴムのような身体に全身を覆おう黄色い複眼はそのままに、胸部にアインストの証である紅いコアとゲミュートのような装甲を纏っている。
「デッドマンとは違う進化を遂げたという事か……こいつらをこれ以上増やすわけには行かない、この場で殲滅するぞッ!!」
進化個体もアインストとインベーダーと同じ性質を持っていれば増殖し、増える危険性を危惧したキョウスケは殲滅命令を出したのだが、量産型ゲシュペンスト・MK-Ⅲに乗っていたカイが待ったを掛けた。
『待て、あいつらの様子がおかし……いかん、離れろッ!!!』
突如苦しみ出した寄生体が音を立てて弾け、月面に飛び散る。それはキョウスケ達の前に居た6体の個体全てが全く同じタイミングで内部から弾けるように飛び散ったのだ。
『自滅したの?』
『いや、寄生しやすいように自らを分散させたのかもしれない。バン大佐、バリアのほうは大丈夫ですか?』
『問題はない、このレベルのゲッター線を維持していればインベーダーとアインストが寄生出来ない事はビアン総帥の研究で分かっているが……不安はある。1度下がるべきだ、キョウスケ中尉』
「分かりました、1度下が……ぐうっ!?」
バンの警告で下がれと命令をしようとしたキョウスケの乗るアルトアイゼン・リーゼの巨体がキョウスケの呻き声と共に突然吹き飛んだ。
『キョウスケ中尉ッ!? 一体何が……ッ!?』
『嘘でしょ……あれは……』
『ゲッター……ロボ……』
弾けとんだ寄生体の体細胞から腕が伸び、まるでプールから這い出るように次々と異形の巨人が姿を現す。その姿はインベーダーとアインストの細胞で構成されているが……ゲッター1、ゲッター2、そしてゲッター3だった……。
『おいおいおい……勘弁してくれや……』
『これは確かに厳しいな……単騎で当れば、返り討ちにあうのは我々のほうか……」
6体が3体へと減ったが、ギリアム達の前に立ち塞がるのはアインストとインベーダーが融合し誕生した異形のゲッターロボの姿だった。
『キョウスケ中尉、大丈夫ですか!?』
「ラミアか……ああ。リーゼの装甲の硬さに救われたな……流石に反応しきれなかった。それよりもすみません、イルム中尉。俺の所為で」
『分断されたってか、気にすんなよ。あいつら意外と知恵があるぜ、俺らを分断してやがる』
黒い細胞の内部から放たれたドリルミサイル。それがアルトアイゼン・リーゼを吹き飛ばしたものの正体であり、そして今キョウスケ達の前に立ち塞がり合流させまいとしているゲッター2の腕へと戻り、キョウスケ達を威嚇するように高速回転している。ゲッター1はミサイルマシンガンを乱射し、ゲッター3は伸び縮みするゲッターアームを駆使してリョウト達とカチーナ達を分断させている。
『インベーダーが此処までの知恵を……』
『寄生する事はなさそうだが戦力で押し潰されかねない。キョウスケ』
「分かっています。速攻ですね……ただ……追いきれるかどうかが問題ですね」
残像を交えて月面を駆け回るゲッター2に、キョウスケはゲッターロボが敵に回った恐ろしさを痛感しているのだった……。
ゲシュペンスト・MK-Ⅲ・カスタムに向かって放たれたゲッタートマホークをカチーナはシーズアンカーで受け止め弾き返すが、モニターに映る傷痕に顔を歪めた。
「ちい、ゲッター合金で出来たシーズアンカーに傷が入りやがった。リョウト、リオ!気をつけろ!攻撃力は本物だぞッ!ラッセル!1度下がるッ!煙幕を撃てッ!!」
カチーナの指示を聞いたラッセルがチャフなどではなく、本当の煙幕弾をうち発生した煙に紛れてカチーナの乗るゲシュペンスト・MK-Ⅲは一度安全圏まで後退する。
「不味いな、攻撃力が足りねぇ。おい、リョウト。タイラントならあいつを跡形も無く吹っ飛ばせるか?」
カチーナの言葉にリョウトはすぐには無理だと返事を返した。
『マグマ原子炉の熱を臨界点まで上げないとあいつを消し飛ばすほどの火力は難しいです。そこまで熱を高めている時間がありません』
「ちっ、社長はどうだ」
『こっちも似た様なものだ。ブラックホールキャノンを使うまでのエネルギーチャージに時間が掛かる』
望んだ返事を得られなかったカチーナは通信機に聞こえるような舌打ちを打った。
「賢いじゃねえか……打点不足を自分の前に集めやがったな……ッ」
ゲッター1の最大の特徴は飛行能力、そしてその豊富な武器と攻撃範囲の広さと攻撃力の高さにある。ゲッター2がライガーの特徴を、ゲッター3がストロングミサイルとフィンガーネットを装備しているのに対してゲッター1はドラゴンの特徴を得ていない、それは必要ないと判断したのだ。そもそもゲッタードラゴンはより強力な敵と戦う為に単体攻撃力を極限まで高めたゲッターロボであり、その性質上複数の敵を同時に攻撃するというのは苦手としている。それに対してゲッター1は元が宇宙開発の為の機体であり、それを急遽戦闘用に改造したので足りない攻撃力を補う為に豊富な武装を搭載しているのだ。話を戻せばカチーナ達は確かに強い、強いがあくまでそれは人間相手の話であり、インベーダーとアインストと言う人智を越えた存在から見れば敵とも見えない存在なのだ。ドラゴンの高火力ではなく、ゲッター1の応用力と手数の多さがカチーナ達に最も有効打だと寄生体は判断したのだ。
『リョウトとリンはエネルギーチャージを進めてくれ』
『俺とギリアム、それとカチーナであいつを食い止める。ラッセルは支援を頼む』
カイとギリアムが作戦を提案し、それを実行しようとした時空中からビームが放たれ、ゲッター1の肩を捕らえる。
「お前の力は借りねえぞ」
『そう言うなよ、俺だって死にたくはないんだ。それにお前の所のボスが協力を認めたんだ、そう邪険にするなよ』
グレイターキン改からのメキボスの軽口にカチーナは眉を顰める。
『フォワードが俺がやる。少なくともそのゲシュペンストよりは俺のグレイターキンの方が強いからな』
その言葉と共に切り込んだグレイターキン改だが、ミサイルマシンガンをバットのように振るわれ弾き飛ばされ月面を転がって帰ってくる。
「どっちが強いって?」
『……恥ずかしくて死にそうだ』
「なら良かったな、死んどけッ!!」
ゲシュペンスト・MK-K・カスタムの蹴りがグレイターキン改に叩き込まれ、その身体が宙に浮かんだ。だがその蹴りのお蔭でゲッタービームを回避したメキボスは素直にカチーナに礼を口にする。
『お前口は悪いけど、案外良い奴だな』
「うっせえ、頭数が減るとあたし達があぶねえんだよ、精々あたしらの為の囮になりな」
『へーへー、精々頑張らせてもらうとするぜッ!!』
フォトンブレードでゲッター1に斬り込むグレイターキン改の後をカチーナのゲシュペンスト・MK-Ⅲ・カスタムがピッタリと続く。
【!!】
グレイターキン改のフォトンブレードはゲッターD2の装甲さえも切り裂いた事がある。ゲッタートマホークを両断されかけたゲッター1がトマホークを捨て飛び上がった瞬間をカチーナは待っていた。
「予想通りだッ!! アンカー射出ッ!!」
シーズアンカーがゲッター1の足を掴んで放電する。その強力な電圧にインベーダーとアインストの声が混じった耳障りな悲鳴が月面に木霊する。
『なんだ、案外俺と相性良いんじゃねえか?』
「やかましい、これが終わったらぶん殴ってやるから覚悟しとけッ!!」
『おーおー怖い怖いッ!!』
軽口を叩くメキボスと怒鳴り声を上げるカチーナだが、相性は決して悪いものではなかった。互いに元々が指揮官を務めることもあるが、オールラウンダーで戦術が似通っている事もあり、互いに相手が何をしようとしているのかを瞬間的に悟る事が出来ていた。
「ラッセルッ!!」
『分かってますよッ!!』
ゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプKの背部のレールガンがゲッター1の胴体を捕らえるが、ダメージは軽微で見る見るうちに損傷は修復される。悲しいがイニシアチブを取っていたとしても攻撃力が足りていないと言うのは事実であり、再生能力を上回るダメージを与える事が出来ないと言うのは今も変わっていない。
『『究極ぅッ! ゲシュペンスト……キィィックッ!!!』』
【!?】
だがそもそも、インベーダーとアインストが寄生した敵を倒すには地球の兵器では力不足なのだ。ゲッターロボクラスの火力がなければ細胞ごと消し飛ばすなんて真似は出来ず、再生か増殖をされることになるのが関の山である。だが戦いかたが無いわけではないのだ。
「その腹掻っ捌いてやるぜッ!!」
『大事そうに隠したコアをぶっ潰してやるぜッ!!』
シーズアンカーのブレードモードとフォトンブレードの刃がゲッター1の腹を抉り、寄生体の耳障りな悲鳴が月面に響き渡る。だが倒すには程遠く、その目を紅く輝かせながら傷の修復を始める。その目には強い憎悪の色があり、カチーナ達だけをジッと睨みつけていた。
『ふー、これは随分と面倒な仕事だ』
「はっ、監察官だの言っておいて根性無しが」
『耳が痛いね、だがまぁ……全力でやるさ』
『俺達にあいつの目を向けさせる。リョウト達とリン社長に攻撃を向けさせるな』
『こうして足止めしかできんとは不甲斐無いな』
ブラックホールキャノンとG・インパクトキャノンHが発射出来るまでの時間稼ぎ――それがカチーナ達に今出来る唯一の戦いなのだった……。
はるか下から放たれた無数のミサイルの雨をサイバスター、ヴァルシオーネ、アステリオン、ベルガリオンの4機は必死になって回避していた。
『まだ追いかけてくるッ!? スレイどうしようッ!?』
『こっちに突っ込んで来いッ! ミサイル同士をぶつけるぞッ!』
『わ、分かった!』
スレイの指示に従い反転したアステリオンの後をインベーダーの目を持ったミサイルが追いかける。同じ様に追われているスレイのベルガリオンはアステリオンへと加速する。
『上だッ!』
『くうっ!!』
互いに追突するというタイミングで機首をあげてミサイル同士をぶつけさせて誘爆させるのに成功したが……。
『まだ追いかけてくるだと!?』
『し、しつこすぎるぅッ!!』
煙を突っ切ってくるミサイルにスレイの驚愕の悲鳴とアイビスの悲鳴が木霊し、2機は再びミサイルを引き離す為に加速することを強要され、少しずつ加速するミサイルにアステリオンとベルガリオンが追いつかれそうになった時飛来した金属がミサイルを破壊した。
『インスペクター……助けてくれた?』
『……この場でぐだぐだ言ってる場合ではない……か。助けられた事には感謝する』
スレイとアイビスを救った者……それはダブルシュテルンを装備したドルーキンだった。戻って来たダブルシュテルンを頭上でキャッチしたドルーキンは右手を上げるとゲッター3へと走り出した。
「くそッ! 撃ち落しても撃ち落してもまた撃ってくるんじゃきりが無いよッ!!」
『マサキ~全然駄目ニャーッ!!』
『こ、攻撃力が足りにゃいみたい~』
『シロクロ、戻れッ! カロリックミサイルッ!!』
回避出来ないのならばと撃ち落す事を選んだリューネとマサキだが、インベーダーが寄生しているミサイルは避けるだけでは無く、インベーダー細胞によって耐久力も格段に上昇しており迎撃するのも困難だった。
『これ以上はさせんぞッ!!!』
【グオオッ!!!】
『うっぐおおッ!?』
バンの駆るネオゲッターロボがゲッター3にへと飛び掛るが、それよりも早くゲッターパンチの一撃がネオゲッターの胸部を陥没させ、ネオゲッターロボがボールのように吹っ飛ぶ。
「バン大佐ッ! 無茶したら駄目だよッ!!」
『そうだぜ、バンのおっさんっ!!』
月面の岩にネオゲッターロボが叩きつけられる前にサイバスターとヴァルシオーネが受け止め、バンに無理をするなと声を上げる。
『リューネ嬢にそう言われると辛いが、この中であのゲッターロボと戦える可能性があるのはネオゲッターだけではないですかな?』
バンの言葉にリューネとマサキは言葉に詰まった。サイバスターとヴァルシオーネにはゲッター3の装甲を破れるだけの攻撃力を持つ武装はある事にはあるが、溜めの時間が必要であり、誘導ミサイルに追われる中では到底使える技ではない。
『でもよ、バンのおっさん。ネオゲッターはゲッター炉心で稼働してねえんだろ? それであのゲッター3と戦えるのか?』
ネオゲッターにゲッター炉心を搭載し改良する事はビアンも考えていたが、改造する時間が無かったのだ。この時代の特機の事を考えれば破格の性能を持つネオゲッターだが、ゲッター炉心によるインベーダー特攻がなければ厳しくないかとマサキが問いかける。
『ふっ、心配することはない。私にだって考えの1つくらいある』
ネオゲッターが背部のウェポンラックから武装を取り出すのだが……それを見てマサキとリューネはなんとも言えない表情をそれぞれの機体のコックピットの中で浮かべた。
「いや、バン大佐。無茶だよ」
『……死んじまうぞ?』
バンが自信満々で取り出した武器――それは拳に装着する所謂メリケンサックだった。白兵戦を挑むにしても無謀が過ぎるとマサキとリューネがバンに考え直せと言うが、バンの操るネオゲッターはメリケンサックを装備し、その拳を打ち付けてファイティングポーズを取っていた。
『心配無用。これは高純度のゲッター合金で作られている、ダイゼンガーの斬艦刀にも引けを取らない逸品だ』
『もっと別の武器で作って貰えば良かったんじゃねえか?』
『私も正直そう思ってはいる。だがビアン総帥がな……スーパーロボットはステゴロだといって聞いてくれなかったのだ』
「……親父がごめん、バン大佐。あたしがちゃんと言っておくよ」
バンが自信満々に取り出した切り札が、まさか自分の父親の訳のわからない美学による物だと知りリューネは申し訳なく思って謝罪するが、それもネオゲッターの攻撃を見るまでの事だった。
『ぬおおおッ!!!』
【グギャアアアアアッ!!!?】
バンの雄叫びと共に繰り出されたネオゲッターの拳から放たれた翡翠の衝撃破が、ゲッター3の装甲を拉げさせる。だがそれよりもゲッター線の波動によって内部を焼かれたゲッター3はのたうち回り、雨霰のように放っていたゲッターミサイルの射出が止まった。
『マジか……』
「ちゃんとした武器だったの……?」
拳からゲッター線を打ち出す武器と知りマサキとリューネは驚きの余り目を見開いたが、バンはその威力に顔を歪める。
『やはり遠くからでは威力が落ちる。至近距離まで近づかなければ有効打は望めんか』
「ちょっ!? 流石に無茶が過ぎるよ! バン大佐ッ!!」
『心配してくれることはありがたいですが……少々私を侮りすぎだ。私はお前達が子供の時からずっと戦い続けている、この程度の窮地なれた物だ』
ビアンの娘と言う事で敬語で話していたバンの口調が強い物になり、リューネは驚いたように動きを止めた。そして暫く悩んだ後に口を開いた。
「バン大佐。でかいのぶち込む為に時間稼ぎをしてくれるかい?」
戦士に過度な心配は侮辱だと、その誇りを傷つける行為なのだとリューネは知ったのだ。戦士が求めるのは身を案ずる言葉ではない、その勝利を信じて疑わない強い信頼なのだ。
『任されたッ!!』
月面を砕きながらゲッター3へと挑みかかるネオゲッターの姿は、勇ましさと力強さに満ちていた。確かにゲッター炉心で稼働していない分ネオゲッターはゲッターロボに劣るかもしれない、だが機体性能が全てではないのだ。
【シャアアッ!!】
『舐めるな、化物風情がッ!!!』
レジスタンスとして、そして指導者として、ビアンの思想に共感しDCとして戦い続けたバンの戦闘経験値はリューネやマサキの比ではない。今までは乗る機体に恵まれなかった事、そしてビアンの護衛やビアンの命令で侵入工作をしていたが、そのポテンシャルの高さはカーウァイを持ってしても素晴らしく教導隊にスカウトしていたレベルだと称されるほどなのだ。
【ゴガアッ!?】
『おおおおおッ!!』
バンの雄叫びが月面に響き渡り、その咆哮に呼応するようにネオゲッターはより荒々しく、そして勇ましくその拳を振るう。だがゲッター3を倒すには攻撃力が足りず再生能力を上回る事が出来てないが、それで良いのだ。
『そうだ、お前の敵は俺だッ!』
【ゴガアアアッ!!】
ゲッター3にしろ、2にしろ、1にしろ……寄生体がゲッターをモチーフにしているだけであり、寄生攻撃などは十分にありえる。攻撃を防ぐにしろ避けるにしろ、岩や月面に種が打ち込まれそれがインベーダーやアインストにならないとは言い切れないのだ。
【キシャアアッ!!!】
『おおおッ!!』
遠距離からの攻撃は寄生攻撃や種をばら撒く事を誘発しかねない。だがこうして白兵戦を挑み、インベーダーの闘争本能を刺激する事でそれらを使わせる可能性を下げることが出来る。
『無理ぃ……死ぬう』
『……』
「悪いがまだ耐えてもらうぞ、お前達にも、ネオゲッターにもな」
ネオジャガーとネオベアーからは亡者の呻き声よろしく悲鳴が響いて来るがバンはそれを無視した。そして過度な負担で機体各所がオーバーヒートを起しかけているネオゲッターの状態も見て見ぬ振りをした。躊躇えば、守りに入れば一気に押し込まれる。例え僅かなミスが死を招くとしても、バンは決して怯むことなく前へと出る。
「獅子の戦いを見せてやるッ!!」
傷つき倒れても歩みを止めない不屈の獅子――それがバン・バ・チュンと言う男なのであった。そしてその不屈の闘志に応える様に、ネオゲッターの隣にドルーキンが立つ。
「思うことはあるが、手伝ってくれるというなら頼りにするぞ?」
『……』
シカログからの返事はない、だがダブルシュテルンを突き出すドルーキンにバンは小さく笑い、ゲッター合金製のメリケンサックでダブルシュテルンの側面を叩く。
「行くぞッ!」
『ッ!!!』
それを合図にし、ネオゲッターとドルーキンは月面を砕きながらゲッター3へ向かって走り出すのだった……。
第210話 セレヴィス攻防戦 その6へ続く
キョウスケ達の敵はインベーダーとアインストによるゲッターロボ模倣体でした。戦いの決着は此処では書きませんがガルガウVSゲッターD2の中で書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
ブレイバーンガチャの結果
アーリーツオウル×3
カオスハーマー
という結果でした。ディドが強化出来たので良し!
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
-
サイドまたは視点は必要
-
今のままで良い