第210話 セレヴィス攻防戦 その6
ヒリュウ改のメインモニターに映る戦いを見て、レフィーナは信じられないと言わんばかりにその目を見開いていた。
「これがダイテツ中佐の言っていたデッドマン……ッ」
シルベルヴィントが陽動を行なってもなお武蔵の駆るゲッターD2が間合いにも入り込めないという、圧倒的な力を発揮しているインベーダーとアインストに寄生されたガルガウを見て呻くようにレフィーナが呟くと、ショーンが口を開いた。
「いえ、恐らくデッドマンとは別個体でしょうな」
「は?」
「艦長報告書に目を通しましたか? デッドマンはアインストとインベーダーの複合体で活動時間に加えて、もう1つ特性があった筈ですが?」
ショーンの言葉にレフィーナはハッとした表情を浮かべた。デッドマンの最たる脅威として報告書に記されていた一文を、レフィーナはショーンの言葉で思い出した。
「精神汚染ですかッ!」
念動力者であるリュウセイがまず誘い出され、そしてリュウセイを探していたハガネのクルーが次々と死を連想させる思念をぶつけられ行動不能になった事を、ショーンの言葉でレフィーナは思い出すことが出来た。
「ええ、その通りです。武蔵とコウキ博士以外が活動不能になった凶悪な精神汚染の予兆がありませんし、インベーダーとアインストの細胞の喰らいあいも無い……恐らくあれはダイテツ中佐達が目撃したデッドマンとは異なる存在なのでしょう」
鋭く細められたショーンの視線がガルガウへと向けられる。アインストのコアにインベーダーの細胞が混ざり合い、デッドマンのように互いの細胞を食い合うことも無い……よく見ればデッドマンと目の前の個体が別の存在である事は明白だった。
「進化したということですか」
「恐らく、互いに喰いあうのではなく共存を選んだ別個体なのでしょうな」
ロスターと似た特性を持ちながらロスターとは決定的に違う存在の誕生はメキボスがレフィーナ達に告げたとおり、悪化の一途を辿る現状が好転する事はないという事を如実にあらわしている光景だった。
「ユン、戦況は」
「各員奮闘していますが、戦況は完全に均衡状態で突破口は今だ見えていませんッ!」
たった6体――たった6体の進化個体にヒリュウ改の全戦力をつぎ込んで均衡状態と言う現実に、レフィーナは親指の爪を噛み締めた。
(まだ足りない、まだ足りないと言うんですか!)
現在の連邦のどこに鬼がいるか分からない上に、自分達を疎ましく思っている高官が多い中でそれでもレフィーナ達は懸命に戦力を育て、未知の脅威と戦う為にマオ社やテスラ研は全力を注いで来たつもりだ。だが現実はアインストとインベーダーに寄生された朱玄皇鬼はコウキとラドラの2人が、そしてガルガウは武蔵が1人で抑えている。そしてキョウスケ達はインベーダーが模倣したゲッターロボと戦うのがやっとであり、突破口もまるで見えてこない。
「……彼らがどんな世界で戦っていたのか、私達は理解したつもりで出来て無かった……」
未知の脅威に晒され、政府にその時代が存在した痕跡を消され、地球を守る為に戦い守り抜いたのにその存在を全て否定された旧西暦の人々……どんな思いで、そしてどれほどの絶望的な状況でも希望を消さずに戦い抜いたからこそ、新西暦と言う時代が存在している。
「そうでしょうなあ、サブカルチャーの世界そのものですからなあ、彼らが戦ってきた敵と言うのは……」
どれほど強大でも、レフィーナ達が戦ってきた敵は科学的にその強さを知る事が出来た。だが武蔵が戦ってきた敵は、常識の外を生きている化物だった。力になれない、頼る事しかできない無力感に、レフィーナは悪い癖だと自覚していても親指の爪を噛み締めながら、武蔵達の戦いに視線を向ける。
(どうすれば、これ以上私達はどうすれば良いと言うんですか)
同じ地球人の中でも自分達を疎ましく思い、排除しようとしている勢力がいる中で出来る事は全てやった、キョウスケ達も自ら自分達に厳しい訓練を課してその能力を間違いなく上昇させた。それでもまだ届かない、自分達の努力などは全て無意味と思わされるような隔絶した戦闘力の差にレフィーナは顔を歪めた。だがレフィーナは自分達と武蔵達に戦闘力の差があり過ぎると思っていたが、実際の所キョウスケ達と武蔵達の差はそれほど大きく離れているわけでは無かった。確かに機体性能の差はあるが、轟破鉄甲鬼を除けばゲッターザウルスもゲッターD2も紛れも無く高出力なだけの旧式機であると言うのは紛れも無い事実であった。キョウスケ達と武蔵達の差は単純に言えば人外との戦いの経験値の差とでも言うべき物であった。武蔵にしろ、ラドラにしろ、コウキにしろ人外の化物とは戦いには馴れていた。コウキとラドラは化物側で、戦いなれていると言うよりも自分達がそちら側だったからこその理解度で対応出来ているのであって、正直に言えばガルガウ達に寄生している進化個体のインベーダーとアインストの融合態は武蔵達にとっても未知の存在であり、攻めあぐねていると言うべき状況であった。
「くそッ!! 全然距離が詰められねぇッ!! アギーハッ!! もっとこうかく乱できねえのかッ!!」
『あたいだって当らないだけで必死なんだよッ!!』
進化態のガルガウの攻撃範囲は広く、そして被弾すればゲッターD2の強固な装甲さえも切り裂くほどの攻撃力がある。流石の武蔵も無策で突っ込むという行動に移る事は出来ずガルガウの攻撃がキョウスケ達の方角に向かわないようにかく乱しつつ、切り込むタイミングを必死で計っていた。だがゲッターの装甲を切り裂くゲッター線を纏った爪による飛ぶ斬撃に加えて、攻撃範囲の広い射撃武器と遠近に隙が無い上にインベーダーとアインストの再生能力と並大抵の攻撃は全て無効になってしまう今のガルガウは、武蔵から見ても難攻不落の難敵だった。
『ライガーで突っ込めないのかい!?』
「出来るならやってるッ!! オイラはライガーの操縦が苦手なんだよッ!!」
隼人ならば最大速度で突っ込みながらもガルガウの攻撃を回避し懐に飛び込むという事も可能だっただろうが、武蔵はライガー2の操縦は決して得意ではない、突っ込む事は出来ても攻撃をしつつガルガウの攻撃を回避する自信が無かった。ドラゴンで突っ込む事は可能であったとしても、ドラゴン号にエキドナが乗っているので、無策で突っ込みエキドナを危険に晒すつもりも無かった。
(くそ、せめて突破口が見出せれば……ッ)
何か攻略するヒントはないかと武蔵が頭を必死に回転させていると、ドラゴン号のエキドナからポセイドン号へ通信が繋げられた。
『武蔵。私に任せてくれないか?』
「何か勝機があるんですか? エキドナさん」
『ある。攻撃を避けている間にずっと時間を計測していた、発射から着弾までの秒数と攻撃が広がりきるまでの時間を記憶した。確実に避けて間合いにまで入り込める』
「……ドラゴン号のコントロールを渡します。間合いにさえ入ってくれればあとはオイラが何とかします」
自信に満ちたエキドナの表情と言葉に、自分では間合いに入り込むタイミングを掴めないと思い始めていた武蔵は、エキドナに託す事にした。
ゲッター線は今は十分な数値だが、無茶をして装甲を何度も回復させていてはまたガス欠を引き起こす可能性が高いのは言うまでも無く、その上月面を奪還したとしても月面を奪還した事で百鬼帝国も本腰を入れて動き出す可能性が高く、超機人に龍王鬼に虎王鬼と言う強敵が残っている中でエネルギーを使い果たすのは武蔵としても避けたいが、自分では被弾を覚悟して突っ込むしかない以上避けれると断言したエキドナの言葉を信じ、ドラゴン号のコントロールをエキドナにへと渡す。
『私を信じてくれてありがとう。後は任せてくれ』
エキドナの力強い言葉に武蔵は頷き、ポセイドン号の操縦桿から手を放した。
ドラゴン号のモニターに浮かんでいた赤いランプが消えると同時にエキドナは操縦桿を握り締め、ペダルを強く踏み込んだ。
「ぐうッ!?」
急加速のGに思わず呻き声を上げたエキドナだったが、その目はガルガウだけを見つめ、そしてその目に恐怖の色は一切浮かんで居らず、むしろ喜びの色さえ浮かんでいた。
(やり遂げてみせる)
1度裏切った自分を信じて操縦を任せてくれた武蔵の信頼が、エキドナにとっては何よりも嬉しい物であり、彼女を奮起させる物であった。
【シャアッ!!】
ガルガウの鋭い威嚇の声と、共に背部のインベーダーが寄生したミサイルが雨霰のようにゲッターD2に向かって放たれる。複雑な軌道を描き迫り来るミサイルをエキドナの駆るゲッターD2は必要最低限の移動ですり抜けるように避け、ガルガウとの距離を詰める。
【ガアアアアアッ!!!】
だがインベーダーが寄生したミサイルはゲッターD2の背後で弧を描き、あるいは急速反転をし執拗にゲッターD2を追い続ける。
「くっ!?」
放たれるミサイルが増えるにつれ徐々にゲッターD2が避けきれなくなった時、ミサイルとゲッターD2の間にシルベルヴィントが割り込みミサイルを迎撃する。
『何をするつもりかは知らないけどあんまり無茶するんじゃないよ! あんたが落ちたらあたいだけじゃあいつは倒せないんだからねッ!! 何かやるならさっさとやりなッ!!』
口は悪いがゲッターD2が動きやすいようにミサイルを誘導し、迎撃するシルベルヴィントとアギーハによってほんの少しだけ開かれた隙間にエキドナはゲッターD2を潜り込ませる。
【シャアアアアッ!!!】
その瞬間にガルガウが両腕を振り上げ×の字の飛ぶ斬撃を放つ。攻撃範囲そして速度共に尋常な物では無く、避けるのも困難な攻撃を前にして、エキドナの目に恐怖の色は無かった。
(……3……2……1ッ!)
斬撃の網が完全に広がる前に自ら斬撃の中に飛び込み、ほんの僅かな隙間をゲッターD2は潜り抜ける。
「流石に全部は避けきれないかッ!!」
ゲッターウィングが切り裂かれ僅かに高度と速度が落ちた所を狙う撃つように再び飛ぶ斬撃が放たれる。
「武蔵! 衝撃に備えろッ!!」
その言葉と共にエキドナはゲッターウィングを格納し、飛行能力を失ったゲッターD2はその自重で月面に向かって急降下する。
「ううッ!?」
ゲッターロボが通常の重力法則に反しているからこその裏技である。無重力である筈の宇宙で重力に引かれると言うあり得ない現象に、エキドナは顔を歪めながらも意識を失わないように奥歯を噛み締める。
(距離は……後半分か……かなり厳しいが……十分挽回出来るッ!)
ミサイルで追われた分計算していた距離よりも離れてしまっていたが、ゲッターD2の加速力を持ってすれば十分に詰められる距離だとエキドナは確信していた。
【グルルウルル……】
2連射した事で斬撃を放とうとしても出来ないガルガウの口が大きく開き、その口内に業火が生成されかけた次の瞬間月面にガルガウの苦悶の絶叫が響き渡った。ゲッターD2の頭部から放たれた威力よりも速度を重視したゲッタービーム……それがガルガウの口内に飛び込み、火炎弾と反応し大爆発を起こしガルガウを大きく仰け反らせた。距離を詰める絶好の好機だがゲッターD2はその場から動かなかった。
『エキドナさんッ!!』
「ッ……ああッ!!」
エキドナはゲッタービームの反動で一瞬意識を飛ばしており、武蔵の言葉に意識を取り戻しペダルを全力で踏み込んだ。背中から音を立ててゲッターウィングが展開され、月面を蹴ったゲッターD2が閃光となってガルガウとの距離を詰める。
【ガアアアアアッ!!】
ガルガウとゲッターD2……共にその動きを止めていたが立ち直るのはガルガウの方が僅かに早かった。咆哮と共に左腕を振り上げようとしたガルガウの身体が大きく揺れ、ゲッターに向かって放たれるはずだった斬撃はガルガウを攻撃したシルベルヴィントへ向かって放たれた。
『くうっ!!!? ここまでかいッ!? 脱出だよッ!?』
ゲッターD2の装甲をさえも引き裂く斬撃をシルベルヴィントが耐えれる筈も無く、両断されたシルベルヴィントから悔しそうなアギーハの声が響くと機体から小型のシャトルのような物が射出された直後に、シルベルヴィントは爆発した。
「武蔵ぃッ! 後は任せるッ!!」
『任されましたッ!!』
まだガルガウとの距離はあったが、エキドナでは厳しい距離でも武蔵ならば詰めれる距離だった。今度はエキドナが操縦桿を手放し、ポセイドン号へとコントロールを返した次の瞬間ゲッターD2は更に加速しガルガウとの距離を詰め、その手に握ったダブルトマホークでガルガウの胴体に真一文字の傷痕を刻み付け、ガルガウは絶叫しながら大きく仰け反ったのを見てエキドナは緊張の糸が切れるのを感じた。
(……なんとか……なったか)
操縦は出来たし、気絶する事も無かったが、自分で操縦する疲労と緊張感は凄まじい物でありエキドナの精神力と体力をごっそりと奪い取っていた。だがガルガウの間合いにゲッターD2が入り込む事が出来た……それで自分は役目を果たしたとエキドナは小さく笑みを浮かべ、ドラゴン号の背もたれに背中を預け意識を失うのだった……。
ゲッターライガーの翼を生やしたゲッター2に翻弄されていたキョウスケ達だったが、少しずつ、少しずつだがその動きに慣れてきていた。外見こそゲッターロボだが、その本質はインベーダーとアインストであり、その戦いのパターンは本能的な物が強くなってくる。確かにゲッターの姿を模倣するのは戦闘力を上げるという面では決して間違いではない。だがキョウスケ達は武蔵の動きを見て、ゲッターロボの動きを知っている。少しずつ、少しずつだがゲッター2の動きに慣れ、守りから攻勢に出始めていた。
【キシャアアアアアッ!!】
「いつまでもお前達の思い通りになる俺達ではないッ!! クレイモアッ!!」
残像を残すほどの高速移動で月面を駆けてくるゲッター2に向かってチタンベアリング弾の嵐が放たれる。
【シャアッ!!】
だがゲッター2は細かいステップを繰り返しベアリング弾の雨を抜け、アルトアイゼン・リーゼに向かってゲッタードリルを突き出そうとし……その動きを止められた。避けられるのは想定内であり、むしろ広範囲の攻撃でゲッター2の動きを制限する事が目的であった。例えレーダーが感知出来るギリギリの速度であったとしても、動きを制限すればキョウスケ達はその速度に十分に対応出来た。
『言っただろうが、いつまでもお前達の思い通りになる俺達じゃねえってなあッ!! ラミアッ!!』
『ターゲットロック……舞えッ! 紅蓮の不死鳥よッ!!!』
ブーストナックルに足を掴まれ動きを止められたゲッター2に向かって燃え盛る紅蓮の不死鳥が突撃し、ゲッター2の姿が炎の中へと消える。
【ガアアアアアアアッ!?】
「これでトドメだッ! バンカーッ! ぶち抜けッ!!」
ファントムフェニックスの業火から抜け出したゲッター2……いや、ゲッターロボの装甲を失い、インベーダーとアインストの細胞が混じった辛うじて人型のゲッター2が再び動き出すよりも早く赤い流星――アルトアイゼン・リーゼのリボルビング・バンカーがアインストのコアを撃ち貫いていた。
【ゴガアアアッ!!!】
「ちいっ! 流石に硬いかッ!!」
だがインベーダーとアインストの融合個体の再生力は桁外れに高く、2発リボルビング・バンカーをコアに喰らっても活動を止めず、アルトアイゼン・リーゼを取り込もうと身体を大きく広げるがそれは明らかな愚策だった……。
「全弾持って行けッ!!」
重々しい音を立ててすべてのハッチが解き放たれ、クレイモアの弾雨が今度こそ融合態の全身を貫きその巨体を吹っ飛ばす。
「ラミアッ! イルム中尉ッ!」
『分かっていますッ!!』
『必殺思い付きってかッ!! 計都羅喉剣……神炎殺ッ!!』
【ギ、ギギャアアアアアアッ!!!!】
燃え盛る炎の剣と化した計都羅喉剣の一閃が今度こそ融合態のコアを両断し、凄まじい断末魔の悲鳴を上げながら炎に飲まれて消え去った。
『やはりインベーダーとアインストを相手するのならばアンジュルグの方が良いと言うのは、間違いでは無かったようですね』
「そうみたいだな。1つの対策と言う事だ、問題は」
『ヴァイサーガの攻撃力を失うって所だな。あれ、ラミアかエキドナしか操縦出来ないもんな』
インベーダーとアインストの最大の武器はその再生能力だ。圧倒的な火力で消し飛ばすのも1つの手ではあるが、それだけの火力を出そうと思えば機体への負担も大きくなる上にエネルギーの枯渇などの問題があるが、炎や焼夷弾などの長時間燃える、あるいは炎で傷口を焼き再生能力を遅延させる……その攻撃が可能な機体は限られるがアインストとインベーダーと戦う上での1つの解決策だった。総戦力の低下と言う見過ごせない弱点もあるが……紛れも無くキョウスケ達は1つの打開策を手にしていた。武蔵から与えられたインベーダー対策は3つ、1つは圧倒的な火力で細胞を1つも残さず消し飛ばす事、1つは火炎放射や凍らせる事で細胞の活性化を著しく低下させる事、そして最後の1つは……。
「捉えたぞッ!!」
『逃がさんッ!!!』
炸裂音と共に放たれた無数のスパイクがゲッター1に模倣しているインベーダーの全身に突き刺さる。本来のゲッターロボならばこのスパイクなど取るに足らない攻撃だが、進化態はあくまで模倣しているだけであり装甲は百鬼獣の物を流用したもので防御能力はさほど高いものではなかった。そしてゲッター合金で精製されたスパイクは、インベーダーの弱点である目を確実に刺し貫いていた。
【グ、グギャアアアアアアアッ!!?】
スパイクが装甲を突き破り、その下に隠されたインベーダーの弱点である複眼を貫き月面にインベーダーとアインストの声が混じった絶叫が響き渡る。
『どうやら十分な効果があるようだな』
「コストの問題こそあるが、十分な効果を得れたと分かっただけで大成功だろう」
ゲッター合金製のスパイクとそれを射出する特殊な銃は、全てゲッター合金製である必要がある。量産が効く武器でも無く、そして予備のカートリッジもない1発限りの武装だが、カイとギリアムの2人はスパイク弾の6割をゲッター1の装甲の下のインベーダーの目に的中させていた。装甲の下に隠され、見ることも出来ない小さな的である目を打ち抜く事が出来るのは教導隊としての技量の高さを示していた。
「スパイクが抜け落ちる前に決めろッ!!」
『予備の弾頭はないッ! それが抜け落ちたら終わりだぞッ!!』
弱点である目にゲッター合金のスパイクを撃ちこまれた事で暴れまわっているゲッター1だが、暴れるたびにスパイクが抜け落ちているのを見てカイとギリアムが極めろと声を上げる。
『ちっ、気持ちわりいなッ!! いい加減にくたばりやがれッ!!』
装甲の下から溢れ出てきたインベーダーの体細胞を埋め尽くす複眼を見て、カチーナは嫌悪感に顔を歪めながらもゲシュペンスト・MK-Ⅲ・カスタムの両腕のシーズアンカーを射出し、ゲッター1を捕らえる。
『フルパワーだッ!! くらいやがれぇッ!!!』
【ゴ、ゴガアアアアアアアアッ!?】
エネルギーを全て使い果たす勢いで放たれた電撃に体細胞が焼け焦げ、模倣体の腕が溶け落ち白煙を上げながら消え去る。
『リョウト、社長ッ!! 極めろッ!!! ラッセル逃がすなッ!!』
シーズアンカーの電撃を維持したままゲッター1を振り回し、投げ飛ばした所にスパイダーネットが放たれゲッター1の姿を絡め取る。
『マグマ原子炉臨界点突破まで3……2……1……リョウト君ッ!!』
『うんッ! Gインパクトキャノン……ファイヤッ!!!』
『ブラックホールキャノン、発射ッ!!!』
マグマ原子炉の熱を臨界点まで高めた事で紅く光輝くヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイラントの放ったG・インパクトキャノン、そしてヒュッケバインの放ったブラックホールキャノンの光の中にゲッター1は飲み込まれ、残骸1つ残さず消え去った。その圧倒的破壊力を前にメキボスは完全に言葉を失い、グレイターキン改のコックピットで地球に来たのは間違いだったかもしれないと小さく呟いた。
「逃がさんッ!! チェーンナックルッ!!」
ゲッター合金で出来たフィストガードから逃げようとするゲッター3の腕にネオゲッター1の右拳が絡みつき、左腕でチェーンを掴んだネオゲッター1が腰を落としてゲッター3をその場に拘束する。
『アイビス合わせろッ!!』
『分かったッ!!』
動きを止めたゲッター3にアステリオンとベルガリオンのマシンキャノンの掃射が叩き込まれる。だがゲッター合金ではないマシンキャノンはゲッター3を模した進化態を怒らせるだけの攻撃だった。
【シャアアアアッ!!】
事実激昂しアステリオン達に向かって強烈な敵意と殺意を向け、ゲッターミサイルを発射しようとしたゲッター3の身体が一気にネオゲッターへ向かって引き寄せられた。
【シャア!?】
均衡していたのが何故と驚きの声を上げるゲッター3の視界には、翡翠の輝きに包まれたネオゲッター1と、共にチェーンを引くドルーキンの姿があった。
「切り札は最後まで取っておくものだッ!」
「!!!」
確かにネオゲッターは「ゲッター炉心」は搭載していない、だがゲッター線のエネルギータンクは搭載していた。炉心と違って使い切りで機体に凄まじい負担をかけるが、一時的にその出力は本物のゲッターロボにも負けないものとなる。
【ギシャッヤアアアアアアッ!!】
「う、うおおおおッ!!!」
本能的に引き寄せられたら負けだと理解したゲッター3は脚部のキャタピラをフル稼働させて必死に抵抗する。そしてバンは抵抗を許さないと言わんばかりに雄叫びを上げながら、レバーを力強く引き寄せる。
「……お、おお……う、うおおおおおおおおおッ!!!!」
シカログの咆哮と共にドルーキンが関節の各部から白い煙を吐き出しながら、必死に抵抗を続けるゲッター3を自分の方へと引き寄せる。
「ぬ、ぬ……舐めるなあああああッ!!!」
紛い物のゲッターロボが、いや、獣風情に負ける事など許されないと言わんばかりに雄叫びを上げたシカログとドルーキン、そしてネオゲッター1が一気にゲッター3を引き寄せ、頭上へ投げ飛ばした。
『コスモノヴァッ!!!』
『クロスマッシャーッ!!!』
装甲の隙間からアインストの触手を伸ばし月面へと戻ろうとしたゲッター3だが、触手が月面に届くよりも先にサイバスターとヴァルシオーネの放った極光に飲み込まれ、断末魔の悲鳴を上げる事すらなく光の中へと消え去るのだった……。
ガルガウの飛ぶ斬撃は、武蔵を持ってしても避けに回らなければならない程の破壊力を持った攻撃だった。だがそれは間合いが離れていたからこその攻撃であり、完全に間合いを詰めたゲッターD2にガルガウは反撃の糸口すら掴めず防戦一方に追い込まれていた。
【シャアアッ!!!】
「舐めんなッ!」
【グギャアッ!!】
エネルギーを溜める事が出来ないのならばと振り下ろされた右の鉤爪をゲッターD2は腕一本で防ぎ、がら空きのガルガウの顔面に左のストレートを叩き込んだ。悲鳴を上げて吹き飛ぶガルガウが体勢を立て直す前に、月面に凄まじい亀裂を刻みつけながら加速したゲッターD2の回し蹴りがガルガウの顔面を蹴り砕き月面へと叩きつける。
【ゴガアアアッ!!!】
「ちいっ! まだ動きやがるかッ!!」
だが月面に叩きつけられてもガルガウは健在で、すぐに身体を起こし吐き出された火炎とゲッターD2の頭部ゲッタービームがぶつかり合い凄まじい爆発を引き起こす。
「ぐううっ! 大丈夫ですかエキドナさん!?」
武蔵でも呻き声を上げる衝撃に武蔵はエキドナに大丈夫かと問いかけるが……。
『……』
凄まじい振動と爆発で機体が激しく揺られた事で顔を青褪めさせて首を左右に振るエキドナを見て、武蔵はエキドナの限界が近いことを一目で悟った。
(とは言ってもあいつの回復能力は半端じゃねえ……ゲッタービームでも倒しきれねえぞ)
アインスト・インベーダー・妖機人の再生能力が交じり合っているガルガウの再生能力は今まで武蔵が対峙した敵の中でもダントツでゲッタービームのダメージこそ僅かに残っているが、外見上は最早完全体に近い状況まで回復していた。
「(ストナーサンシャインなら倒しきれるけど……)絶対間にあわねえなッ!! ブラストキャノンッ!!」
【キシャアアッ!!】
ストナーサンシャインの威力ならば確実に倒せるが、溜めの時間が必要で使っている時間が無い。ではどうするかと考えた武蔵の脳裏に浮かんだのは、あの異常な再生能力を持つガルガウを倒せるかもしれない妙案だった。
「エキドナさん! 後少しだけ我慢してくださいよッ!!」
ブラストキャノンを乱射しながらガルガウに再び接近戦を仕掛けると見せ掛け、ガルガウが応戦に出た瞬間に一気に後退する。
【グルルッ!?】
「トマホークブゥゥメランッ!!!」
向かって来るものと応戦に出たガルガウの攻撃が空振りすると同時に、後退したゲッターD2の投げ付けたダブルトマホークがガルガウの胴体にめり込み、その巨体を上空に向かって弾き飛ばす。
「オープンゲットッ!! チェンジライガーッ!! チェーンアタックッ!!!」
ゲッターD2の姿が爆ぜゲッターライガー2へとゲッターチェンジし、即座に放たれたチェーンアタックがガルガウの頭部に突き刺さる。
【ゴガアアアッ!?】
鈍い音を立てて潰れた頭部にガルガウが苦悶の雄叫びを上げる。だが武蔵の攻撃はまだ終わりでは無かった……チェーンアタックは次の攻撃に繋げる為の行動であり、ガルガウの頭部が潰されたのはあくまで偶然だった。だがその偶然が武蔵に更なる流れを呼び込むことになった。
「よっしゃ、取ったああッ!! おらおらおらッ!!」
チェーンがダブルトマホークを絡め取ったのを確認するとチェーンを激しく振り回し、上下左右から縦横無尽にダブルトマホークをガルガウに向かって叩きつける。鎖鎌のように速度に乗ったその攻撃はガルガウの装甲を容易く切り裂き、その再生能力を持ってしても即座に回復できないダメージを次々に与える。
『……』
なお連続のゲッターチェンジと縦横無尽の軌道によってエキドナは気絶・覚醒を交互に繰り返していたりするが……武蔵にそれを気遣う余裕は無かった。ここで攻撃の手を緩めてガルガウを回復させるわけにはいかないからだ。
「うおらあッ!!」
【ギギャアアッ!?】
渾身の振り下ろしによってダブルトマホークがガルガウの胴体に深くめり込むとライガー2はその場で回転し、ガルガウを月面に2度、3度と叩きつけハンマー投げの要領で頭上へと投げ飛ばした。
「オープンゲット!! チェンジポセイドンッ!! フィンガーネットッ!!!」
即座にオープンゲットしポセイドン2へとゲッターチェンジし、手から放たれたフィンガーネットがガルガウの巨体を絡め取る。二足モードからキャタピラモードへと脚部を変形させる。単発の攻撃で倒しきれないのならば攻撃を重ねる。それがガルガウを倒すために武蔵が考え付いた秘策だった。
「大ッ! 雪ッ!! 山ッ!!! おろしぃいいいいッ!!!」
渾身の大雪山おろしが決まり吹っ飛んでいくガルガウに向かってポセイドン2が頭を下げ、ストロングミサイル発射態勢へと移る。
「こいつでトドメだッ! ストロングミサイルッ!!!」
【ギ、ギギャアアアアアアッ!?】
発射された2発のストロングミサイルを避ける余力がガルガウにあるわけも無く……セレヴィス、いや地球圏に未曾有の危機を齎そうとしたインベーダーとアインスト、そして妖機人の複合個体はゲッター線の光の中へ消えた。
「ふう、エキドナさん……大丈夫ですか?」
『ら、らい……うっぷ……ひょぶ』
呂律が回ってない上に顔を青褪めさせているエキドナの姿を見て、武蔵は通信機のスイッチを入れた。
「レフィーナさん。オイラとゲッターはここでフルパワーにして撃ち込まれたインベーダーとアインストの種を消滅させてから帰還します。保護した人達の対応はコウキとラドラに任せるんで、よろしくお願いします」
『分かりました。焦って戻らなくて良いので、周囲の警戒をよろしくお願いしますね』
「レフィーナさん。こんな事を言える立場じゃないですけど、最悪は想定してくださいよ。コウキとラドラを止めたら駄目です」
『……分かっています。そうならないためにも時間を掛けて検査をしたいと思います』
エキドナの事に武蔵は触れなかったが、レフィーナは武蔵がすぐ帰還しないのをエキドナの乙女の尊厳に関わる所だと察し、武蔵の帰還が遅れるのを容認した。メキボス達との話し合いはあるがまずは保護した民間人への対応が最優先だ。
「コウキ博士。その……」
「艦の中にいろ。後で答えてやる」
「……はい、分かりました」
「お前達も戻っても良いんだぞ」
「最悪に備えるんだろ? 俺とカイも付き合うさ」
「お前とコウキだけに悪役を押し付けるわけにもいかんからな」
ゲッターザウルスと轟破鉄甲鬼の間を民間人が通っていく、もしもこの中にインベーダーとアインストに寄生された者がいれば、ヒリュウ改は丸ごと地球圏への脅威になる……それはなんとしても避けなければならず、最悪の場合非情な決断を取れる者だけが身元照会の場に立ち会っていた。セレヴィスの奪還作戦は無事に終わった……だが保護した中にインベーダーとアインストに喰われた者がいるかもしれないという懸念はどうしても捨て去る事が出来ず、厳戒態勢の中少しずつ民間人の身元照会が行なわれるのだった……。
第211話 セレヴィス攻防戦 その7へ続く
と言う訳でアインストとインベーダーと妖機人の融合個体戦は今回で終わりです。少しずつインベーダーとアインスト対策が出来て来たって所ですかね。遅いよって思うかもしれないですが、インベーダーとアインストという訳のわからない敵となるとこれくらい時間が掛かる物かなってところでお許しください、次回で月面は1度休憩でメタルビースト・アルタード戦に話を進めて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
ライザーソードガチャは無事に2枚入手する事に成功しました。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
-
サイドまたは視点は必要
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今のままで良い