進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第211話 セレヴィス攻防戦 その7

第211話 セレヴィス攻防戦 その7

 

ヒリュウ改のブリーフィングルームの椅子にキョウスケ達はぐったりとした様子で腰掛けていたが、その顔には確かな安堵の色が浮かんでいた。

 

「誰も喰われていなくて良かったな」

 

「本当にそうですね。安心しましたよ」

 

インベーダーとアインストに寄生されたガルガウの存在があったからか、保護した民間人の中にもインベーダーとアインストに喰われた者がいるかもしれないという恐怖があったが、インベーダーとアインストに喰われた、あるいは寄生された住人は誰1人として存在しなかった。

 

「鬼に改造された奴もいねえんだよな? コウキ」

 

「ああ、それは間違いない。後半日か1日遅れていたらやばかったがな」

 

「ギリギリセーフだったんですね……」

 

コウキの後少し遅れていたら鬼に改造されていた住人がいたかもしれないと言う言葉にブリーフィングルームにいたラッセルやリョウト達は安堵の溜め息を吐きかけたが、ラドラの手を叩く音がブリーフィングルームに響きハッとした表情で全員が顔を上げた。

 

「まだ気を緩めるには早い。ゲッターD2がゲッター線を照射する事で、インベーダーとアインストに寄生されたインスペクターが周囲に撒き散らした種はある程度処理できたと思われるが……」

 

「あいつがセレヴィスに来る前に種を撒いていたとしたら、月面はそう遠くない内にインベーダーとアインストの巣窟になると言う事だ。ムーンクレイドルの機能を停止させ、地球に帰還するまでは気を張り詰めていろ」

 

「「「了解ッ!!」」」

 

ギリアムとカイの言葉にキョウスケ達は緩みかけた緊張の糸を再び張り詰めさせ、了解と返事を返した。

 

「それでいい、まだインスペクターとの話し合いも残っているんだ。気を緩めるには早いだろう」

 

インスペクターとの話し合いと言うラドラの言葉にマサキ達の顔は険しい物になる。

 

「本当に話し合うのか? あいつらがやってきた事を考えるとはいそうですかとは言えねえんだけどよ」

 

「あたしも同じだよ。インベーダーとアインストがいたから協力しようって言ってるんだろ? あんまりにも都合のいい事を言ってるだけじゃないか」

 

「普通に考えりゃ、化け物共がいなくなったらまた侵略してくるかも知れねぇ相手なんか信用できねえだろ」

 

星間連合として協力を要請すると最もな事をいっていたが、結果論を言えば自分達では勝てないインベーダーとアインストが大量に出現しているからで、インベーダーとアインストが消えればまた敵対してくる可能性はある。レフィーナの決断にはキョウスケ達も思う事があるのは確かだ。

 

「だがここで戦い続けることを選べば、ゾヴォークだったか、やつらの第二陣・第三陣が襲撃してくる可能性は高い、あいつらの科学力は驚異的だ。今回は戦いにこぎつける事が出来たが……」

 

「俺達の戦力をインスペクター共が正しく理解したら、今度は戦いにすらなんねぇかも知れねえぞ。俺だって思う事はあるが……いや、俺だけじゃねえな。あいつらと戦った地球人は皆思う事があると思うが、向こうが停戦を持ちかけてきたんだ。精々俺達に益がある条件を向こうに飲ませてあいつらとの戦いを終わらせるのが最善策だ」

 

リンとイルムの声は普段から考えられないほどに平坦で冷たい声だった。リンは厳しくはあるが優しさのある声をしていたし、イルムもお調子者に見えるが思慮深く、明るい声色をしていただけにリンとイルムの言葉に驚きを隠せない者は何人もいた。

 

「あの、戦いにならないってどういうことですか?」

 

その中の1人のアイビスがイルムに問いかけると、イルムは飲んでいた紅茶のカップを机の上においた。

 

「向こうはこっちよりも科学力が発達してるんだぞ? 星を破壊するミサイルだって作れるだろうし、それこそ太陽の光を遮るような装置だって作れるかも知れねぇ。直接戦って負ける可能性があるのならそれ以外の方法で俺達を殺しに来る可能性は捨て切れないぞ」

 

「いくらなんでもそこまでの科学力は……」

 

「いや、ゲッターロボのレコーダーに星を破壊する事が可能なビーム兵器を使ったと言う記録があった。あいつらの中でも条約で使ってはいけない類の武器はあるようだぞ」

 

まだ武蔵が合流していない時の話なのでキョウスケ達は知らなかったが、バンを始めとしたクロガネ組はその話を聞いていたのだ。ジャレッドとオーガストの言葉にブリーフィングルームに重い沈黙が広がったが、格納庫からの緊急通信を知らせるアラームが響いた。

 

『コウキとラドラはすぐに格納庫に来てくれッ! 武蔵とメキボス達が鉢合わせたッ!!』

 

『けじめだ、歯ぁ食いしばれこの野郎ッ!!』

 

『まっ!? ぐぼおおッ!!!』

 

『もう1発ッ!!!』

 

『武蔵をとめろッ!! あいつやばいぞッ! なんかやばい感じで痙攣してるッ!?』

 

『掛かれーッ!! 全員で止めろぉッ!!』

 

『早くしてくれッ!!! 整備員じゃ止められんッ!!!』

 

格納庫で武蔵とエキドナの帰還を待っていたユーリアからの通信と、合間合間に聞こえて来るメキボスの悲鳴と武蔵を止めようとして吹っ飛ばされる整備員の悲鳴に、キョウスケ達は弾かれたように格納庫へ向かいそこで見たものは……。

 

「うおらぁッ!!!」

 

「!?!?!?」

 

「し、シカログーッ!? しっかりしてッ!!」

 

武蔵の渾身の右ストレートを喰らい螺旋回転しながら吹っ飛ぶスキンヘッドの巨漢と、倒れ伏した巨漢の頬を叩いて意識を取り戻させようとしている美女の姿だった。

 

「武蔵、俺達の殴る分が無いだろうが」

 

「あー関節技でも極めるか?」

 

「そうだな、そうするか」

 

ラドラが倒れ伏しているメキボスの腰に座り、スコーピオンデスロックを極める。

 

「折れるッ!! 折れるうううううッ!!」

 

「大丈夫だ、人間の骨は簡単には折れない」

 

「そもそも宇宙人だから問題ないだろ」

 

「ッ!!!」

 

「ダーリンが死んじゃうじゃないかッ!! やるならあたいにやれよぉッ!!」

 

シカログが関節技を極められているのを見てアギーハが止めに入ったが……。

 

「「「女は殴らないからどいてろ」」」

 

フェミニストと言うわけでは無いが、女に好き好んで暴力を振るう性格ではない武蔵達は邪魔するなと言ってアギーハを横に退ける。

 

「ぎゃーーーーーッ!!!」

 

「バンバンバンッ!!」

 

「あたいを殴れば良いだろうッ!!」

 

「「「女は殴らないって言ってるだろうがッ!」」」

 

拷問に悲鳴を上げるメキボスと格納庫の床を叩いているシカログ、そして自分を殴れよと叫んでいるアギーハととんでもない光景に意識を飛ばしていたキョウスケ達だったが、このままではメキボス達が死ぬと慌てて武蔵達を止める為に走り出すのだった……。

 

 

 

 

一騒動あったが、メキボス達とレフィーナの話し合いの場が設けられることになった。

 

「随分と男前になりましたね。良い男になったと思いますよ」

 

武蔵にボコボコにされ、コウキとラドラのサブミッションで瀕死の状態のメキボスを見てレフィーナはショーン達でも見たことが無い、それはそれは綺麗な笑みで毒を吐いていた。

 

「そりゃどーも……」

 

引き攣った顔で言うメキボスだが、若干顔の形が変わっているが……それだけ凄まじい力で殴り倒されたのだ。シカログがまだ泡を吹いて意識を取り戻していない所を見ると、一見優男のメキボスの方が耐久力が高かったようだ。

 

「武蔵さん、もう少し良い男にしても良かったんですよ?」

 

「え? マジで? もう10発くらい殴っときます?」

 

「待て待て、今度は俺にやらせろ」

 

「あいつには恨みしかないからな、俺も殴らせろ。顔だと気絶するから腹だ」

 

「あー腹だと気絶できねぇよな。内臓破裂するかも知れねえけど」

 

「まぁ宇宙人だから死なないだろう」

 

メキボスがレフィーナに害をなす可能性もあるかもしれないという事で同席していた武蔵達が拳を握るのを見て、メキボスは頼むから勘弁してくれと机に頭を叩きつけながら深く頭を下げた。

 

「まぁ良いでしょう。今は」

 

「今は!?」

 

「貴方の言動次第と言う事で。大丈夫ですよ、武蔵さん達は手加減が上手です」

 

「俺が殴られるのは決定事項なのか!?」

 

笑顔で処刑宣告するレフィーナの姿に、キョウスケ達はレフィーナは決して怒らせてはいけないと理解した。

 

「前から考えていたことだが、俺達のリーダーのウェンドロの決断は間違っていたと思う。百鬼帝国と手を組み、そして今はシャドウミラーとか言う連中を招きいれ、俺達を本国に戻そうとしているが……恐らくその通りにすれば、俺達は消される事になるだろう」

 

「……いま、シャドウミラーはホワイトスターにいるのですか?」

 

「……ああ。百鬼帝国から提供されたゲッター炉心で稼働するゲッターロボGの量産と改良をしている筈だ。まぁ失敗続きで資材を無駄に消費しているだけだが……少なくともゲッター炉心で稼働しているドラゴン、ライガー、ポセイドンが1機ずつはある」

 

「そちら側はゲッターロボを完全に複製する技術があったのですか……」

 

メキボスからの信じられない言葉にレフィーナは目を見開いた。百鬼帝国との協力態勢は感じていたが、まさか百鬼帝国がゲッターロボGの複製に成功しているとは思っていなかったのだが……続くメキボスの言葉に更に目を見開いた。

 

「出来るわきゃねえだろ。そもそも俺達の星でゲッターロボに関わるなって言う伝説があるくらいだぜ? 鬼の連中が言ってたが、どうもあいつらに協力してる第三勢力がいるらしい。俺は見たことねぇけどな、そいつらがゲッターロボを運び込んできたんだ」

 

ゲッターロボを運用出来る第三勢力の言葉にレフィーナの脳裏を過ぎったのは、亜空間を引き裂く能力を持ったインベーダーに寄生されたゲッターロボの存在だった。

 

「思い当たる節があるみたいだな、そもそも地球は俺達異星人にとっちゃあパンドラの箱だ。これでもかって言うくらい恐ろしい逸話が多数ある。皇帝とかな」

 

「皇帝つうのはやっぱりゲッターロボなのか?」

 

皇帝と龍帝……武蔵の知らないゲッターロボを知っているメキボスに武蔵がそう尋ねるとメキボスは一瞬驚いた表情を浮かべたが、自分の知る皇帝――すなわちゲッターエンペラーの話を始めた。

 

「……ああ、お前は知らないのか。伝承とかで俺は詳しくはしらねえが……惑星規模のゲッターロボらしい、合体するだけでビックバンを起すほどのエネルギーを撒き散らす最強最悪のゲッターロボだ。すくなくともそいつの所為で星がいくつも潰されたのは間違いねぇ」

 

ゲッターロボの皇帝……今まで謎ばかりだった皇帝と呼ばれるゲッターエンペラーの情報が開示されたが、レフィーナ達にとってゲッターロボは味方であり、そして武蔵にとってゲッターロボは正義のスーパーロボットであり信じられないと言う表情を浮かべ、その表情に気づいたメキボスはとってつけるように話を続けた。

 

「俺達は襲われた側だからかなり悪意のある解釈になっていると思うが……とんでもなく強いゲッターロボって言うのは間違いねえな」

 

「その皇帝って言うのはどうなったんだ? それだけ強いんだろ? 何か他にないのか?」

 

武蔵の問いかけに、メキボスは分からないと告げて首を左右に振った。

 

「ゾヴォークに所属している星の約4割を滅ぼした後に、皇帝は空間を引き裂いて消え去ったとある。それ以上はゾヴォークにも情報はねぇ」

 

皇帝と呼ばれるゲッターの凶暴性、そして凶悪性がメキボスから伝えられる。一方的な情報なのでどこまで真実かは判らないが……単騎で星を滅ぼすほどの力を持ったゲッターと言う信じられない情報に、レフィーナ達は眉を顰めた。

 

「滅ぼされるには何か理由があったのですか?」

 

「ん、んー俺は考古学者じゃねえからなあ……詳しくはしらねえが……時空間転移システム、平たく言えばタイムマシンを研究していた星って事くらいだな。皇帝を倒すにはゲッターロボの起源を滅ぼすしかないって考えて、タイムマシンを研究してたそうだ」

 

「タイムマシンで過去へ飛んで早乙女博士を殺そうとしたのか?」

 

「多分だがそんな所だろうな、まぁ古い話だからどこまで本当かは俺も分からないけどな」

 

皇帝はゲッターロボが生まれた事で生まれるのだから先に早乙女博士を殺して自分達を滅ぼそうとした皇帝を消し去ろうとしたが、その結果が皇帝の怒りに触れて滅ぼされたと言うのならば、本末転倒としか言い様が無いだろう。

 

「昔話は良い、お前達はこれからどうするつもりだ」

 

ラドラの言葉にメキボスは懐からリモコンのような物を取り出した。

 

「これはムーンクレイドルにいるバイオロイドの制御装置だ。これで止まる筈」

 

「筈とは何だ、筈とは。お前達の兵器ではないのか?」

 

不安そうなメキボスにコウキがそう尋ねると、メキボスはなんともいえない表情を浮かべて、そうじゃないんだと呟いた。

 

「バイオロイドは、ダヴィーンと言う皇帝に滅ぼされた惑星から献上された技術で作り出した物だ。そして百鬼帝国は、ダヴィーンの生き残りが作り出した物だ。百鬼帝国は俺達のバイオロイドを操れる……何か異常があれば向こうで操られる可能性は十分にある」

 

鬼が宇宙人の末裔と知り武蔵は勿論、元鬼だったコウキも信じられないと言う表情をその顔に浮かべた。

 

「止まらなかったら悪いとしか言えないが、こればっかりは俺達でもどうにもならん。百鬼帝国が干渉しない事を祈ってくれ」

 

「保険として貰っておきましょう。バイオロイドが動いていたら武蔵さん達にお願いしても良いですか?」

 

レフィーナの言葉に任せてくださいという武蔵達に、メキボスはこいつらじゃ負けないだろうなと遠い目をしていた。

 

「俺とシカログでネビーイームに戻って本国へ連絡を取ってみる。地球への対応を見直すように進言してみるつもりだ、アギーハは機体が壊れちまったから出来ればこちらに残して欲しい。俺とシカログとの連絡係としてだ、都合のいい話だが捕虜としての扱いを望む」

 

「良いでしょう。私の権限で捕虜として扱う事を約束しましょう」

 

「すまないな。もしもネビーイーム内にインベーダーとアインストがいれば連絡を入れる、そうではない場合はウェンドロを拘束してシャドウミラーのいる区画をネビーイームから切り離すつもりだ」

 

「最悪の場合は?」

 

「48時間以内に連絡がなければ俺達は死んだと思ってくれていい。アギーハを預かってくれるんだ、死んだとしても意地でも本国へ連絡は繋げて見せるから、安心して欲しい」

 

メキボスの真剣な目を見れば命を懸けてネビーイームに戻ろうとしていると分かり、レフィーナは暫しの逡巡の後に口を開いた。

 

「貴方達の機体の整備と武装を提供します。出発を3時間ほど遅らせてください、これが我々に出来る最大の支援です」

 

「……感謝する」

 

確かにメキボス達に思う事はある。だが百鬼帝国・シャドウミラーに加えてゲッターロボを複製できる第三勢力、更にメタルビーストSRX……いやアルタードを使役する謎の勢力、そしてインベーダーとアインスト……数え切れない脅威が存在する中で、メキボスとシカログの2人がインスペクターとシャドウミラーを無力化してくれる可能性があるのならば、それを支援すると言う考えを持つのは当然の事だ。打算はある、疑いもある。それでも星間連合の人間として、インベーダーとアインストが他の銀河に手を伸ばすのを止めなければならないと言うメキボス達の言葉が真実だと思わせる真摯な響きをレフィーナは信じ、可能な限りの支援を行うとメキボス達に約束するのだった……。ゲッターD2、ゲッターザウルス、轟破鉄甲鬼のゲッター炉心によって月面のインベーダーとアインストの種はたった1個体を残して全て死滅していた。だがその個体は種から決して開花する事無く、月面の高密度のゲッター線に焼かれ続ける事になる。

 

「い、いだあああいいいいッ!!!?」

 

「あ、ぎゃあ、ぎぎゅああああああッ!?」

 

朱王鬼と玄王鬼の苦悶の叫び声がクレーターの奥深くから響き、闇の中で何度も反響を繰り返す。

 

「うぎやあああああッ!?」

 

「あがおがあああッ!?」

 

意味のある言葉は既に朱王鬼と玄王鬼の口からは発せられていない。ゲッターガリムの爪を打ち込まれ、そして周囲を満たすゲッター線に弱いアインスト・インベーダーとの複合体と成り果てた朱王鬼と玄王鬼は、本来ならば再生することもなく消失するはずだが、朱王鬼と玄王鬼が生前自分達に掛けていた術がそれを邪魔する。どちらか片方が生きている限り、もう片方も死なないという禁呪が、朱王鬼と玄王鬼を生かし続ける。

 

「―――ッ!!!」

 

死んで、生き返って、死んで、生き返る。インベーダーとアインストもまた宿主が蘇る事で復活し、そしてゲッター線に焼かれて死ぬ。だが、朱王鬼と玄王鬼が時間差で生き返ることで再び活性化する。人を弄び、人の想いを踏み躙り続けた鬼の末路は、決して死ぬことの出来ない、未来永劫終わることのない、永遠に続く地獄のような責め苦なのであった。

 

 

 

闇の中に佇むトリコロールカラーの巨人を、レトゥーラはジッと見つめていた。黒く澱んだ瞳の中に様々な葛藤が見え隠れし、その心が複雑に揺れ動いているのは誰の目から見ても明らかだった。メタルビースト・SRXの内部データを読み取ったデュミナスによって作られた、アルタードの複製品……本来なら粗悪で、アルタードの名前には程遠い不完全品だが、メタルビースト・SRXが内部パーツとなる事で完全に近い能力を持ったメタルビースト・アルタードが誕生したのだ。

 

「レトゥーラ。アルタードをインベーダーに与えた事が不満ですか?」

 

「デュミナス……いや、そう言う訳ではない。ただ……」

 

「ただ、どうしました?」

 

「分からないんだ。怒りもある、嘆きもある、だが喜びもあるし、困惑もある。私にとってアルタードがどんな存在かは判らないが……こいつが私を悩ませる何かではあるようだ」

 

レトゥーラはティス達同様デュミナスに作り出された存在ではあるが、ティス達と異なりレトゥーラはデュミナスが感情を学ぶ為に救い創造した存在であり、部下と言う訳ではない。レトゥーラはデュミナスと対等な関係であり、特別な待遇が与えられていた。ティス達とは明確に役割の違うホムンクルス――それがレトゥーラであった。

 

「アルタードを使うのは良い。だがこれがリュウセイに害為すというのならば、私はこいつの敵になるだろう」

 

デュミナスに作られた存在ではあるがデュミナスを敬う訳でもない、むしろアルタードを複製したことに強い敵意を見せるレトゥーラに、デュミナスは満足そうに笑った。そうでなければレトゥーラを作った意味が無い、そしてそうでなければアルタードをレトゥーラに見せた意味が無い。これを見たレトゥーラがどう動くか、その全てをデュミナスは受け入れるつもりだった。

 

「構いません。貴女は貴女の好きなように動いてくれれば良いのです。それが、私に愛する事を教えてくれた、貴女への報酬ですから」

 

ティス達はレトゥーラの存在を面白くないと思っているだろうが、レトゥーラがいなければデュミナスがティス達への愛を学ぶ事は無かった。ティス達がどう思っていようが、レトゥーラはティス達の恩人である事は間違いのない事実だった。そうでなければデュミナスはティス達を道具のように扱っていた筈だ、だがレトゥーラから愛を学んだ事で、デュミナスはティス達を自分の子供として扱っていた。勿論それだけではなくデュミナスの精神性をレトゥーラが大きく変えていたのだ。

 

「なら好きにさせてもらう。ではな、デュミナス。また会うこともあるか、それともこれが別れになるかは分からんがな」

 

「私は貴女に帰ってきて欲しいと思っていますよ、レトゥーラ。行ってらっしゃい」

 

デュミナスの言葉にレトゥーラは返事を返さず闇の中へと消え、デュミナスはもうじき完全にインベーダーが馴染むメタルビースト・アルタードへとその視線を向ける。

 

「……貴女を傷つけることになったのですね、レトゥーラ。私が浅はかでした」

 

メタルビースト・SRXを手中に収める為の行動がレトゥーラを傷つける事になったのだと悟ったデュミナスは己の浅はかさに気付き、レトゥーラへの謝罪の言葉を残し闇の中へと消える。だが後悔しようが己の間違いに気付こうが、既に賽は投げられた。

 

『グルウオオオオオオオオッ!!!』

 

アルタードの力を手にした悪魔王が目覚めより完全へとなる為に、SRX……いや、本当の意味で完成するために足りない物……サイコドライバーであるリュウセイと念動力者であるアヤ、そしてマイを求め闇の中から飛び立つのだった……。

 

 

第212話 純真しかして邪悪なる者 その1へ続く

 

 




と言う訳でメキボス・シカログ・アギーハ離反ルートには入りました。正し離反しても助かるわけではありませんのであしからず。そして次回からは世界最後の日から戦っていたメタルビーストSRX改め、アルタードとの決着編の前哨戦に入っていこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

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