進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第212話 純真しかして邪悪なる者 その1

第212話 純真しかして邪悪なる者 その1

 

クロガネとヒリュウ改が別行動を取っているという情報は、陸皇鬼の龍王鬼の元にも入っていた。だが龍王鬼は甲板で虎王鬼と共に日光浴をしており、動く気配が微塵も無かった。

 

「よろしいのですか?」

 

「あん? なんか言ったか? 闘龍鬼」

 

掛けていたサングラスを外しながら闘龍鬼にどうかしたかと尋ねる龍王鬼には、普段全身から溢れている闘気も覇気も無く、闘争意欲と言う物がまるで感じられなかった。

 

「クロガネがこちらに向かっているようですが……」

 

「ああ、かまやしねえ。ほっとけほっとけ」

 

興味が無いと言わんばかりの態度の龍王鬼は再びサングラスを掛けてビーチベッドに横たわった。

 

「武蔵がいないから興味ないの?」

 

「いんや、なんかやる気しねえんだよなぁ。イーグレットもむかつくし、アーチボルドは言うまでもねぇし、アギラの婆だって鬱陶しいしよ、戦うつもりだった化物も見つからねえしよ……なんかもうやる気がねえんだよなあ」

 

指折りむかつく相手を口にする龍王鬼に虎王鬼はくすりと笑った。

 

「ようは面白くない訳ね?」

 

「そうとも言うな、どっちみちアースクレイドルにいりゃあ向こうから万全で攻め込んでくるだろ? なら俺様から攻撃を仕掛けるのもなぁ? それに向こうは別行動してるんだろ? 戦いに出ても不完全燃焼になるなら俺様はいかねぇ。お前達は好きにして良いぜ」

 

好きにして良いと言われた闘龍鬼達だが、自らの王が動かないと言っているのに配下である自分達が動くつもりは毛頭無かった。

 

「あたしも良いですよ、龍王様。速さ比べをしたいマサキとリューネは宇宙ですし」

 

「だよなあ、カイのおっさんも宇宙にいるんじゃ俺も面白くねぇし」

 

「俺もだな、焦って戦いに行くこともなかろう」

 

戦いたい相手が宇宙に行っているのではやる気も出ないと動く気もない風蘭とヤイバ、そして龍王鬼と同様に万全の状態のクロガネとヒリュウとしか戦う気がない龍玄も、やる気が感じられない表情で湯気が出る湯のみを手にしていた。

 

「では、俺は少しばかり出てまいります」

 

「あら? イルムは宇宙よ?」

 

「存じております。虎王鬼様、俺が目を付けたのはここ数日この近辺を荒らしているメタルビーストです」

 

龍王鬼達もお構いなしに攻撃を仕掛けてくるメタルビースト・Rシリーズの事は把握しており、闘龍鬼の言葉にサングラスを外して興味がありそうな表情を浮かべた。

 

「陸皇鬼の近くにいんのか? あんだけ探し回ったのに見つけられなかったのによ」

 

倒しても再生するメタルビーストはいい暇つぶしになると考えて探していたが、結局見つけられず臍を曲げていた龍王鬼は闘龍鬼に見つけられる算段があるのか? と問いかける。

 

「いえ、それは分かりませんが……クロガネにはリュウセイ・ダテ達がいるので出てくる可能性は充分にあるかと」

 

闘龍鬼の言葉に、龍王鬼は少し考え込む素振りを見せてから上半身を起した。

 

「闘龍鬼。出撃は取り止めだ、そのかわりに偵察機を出せ」

 

「偵察機? どうするのよ、龍王鬼?」

 

偵察機を出せと指示を出す龍王鬼にどういうつもりだと虎王鬼は問いかけ、それに龍王鬼は牙を剥き出しにして楽しそうに笑った。

 

「俺様達が追いかけて駄目ならあいつらに誘き出してもらおうと思ってな! 見つかればそれで良し、見つからなければそれもまた良し! 果報は寝て待てというし、のんびりと待つ事にしようぜ」

 

やる気は依然なさそうな龍王鬼だが、サングラスの下の双眸には僅かな闘志の炎が芽生え始めているのだった……。

 

 

 

 

クロガネのブリッジに映し出されている映像を、テツヤ達は険しい視線で見つめていた。

 

「これがSRX計画の完成形か……素晴らしい完成度と言える。但し、実現不可能という所に目を瞑ればな」

 

「耳が痛いな、だが理論上は不可能ではないぞ?」

 

映し出されていたのはSRX計画の完成形「SRアルタード」のカタログスペックだった。限りなく机上の空論に近い理想論で設計された、対無次元侵入路用超広域殲滅型パーソナルトルーパー……それがSRアルタードだった。

 

「SRXとは逆のコンセプトになるんですね。イングラム少佐」

 

「ああ、SRXは合体を切り札としていたが、アルタードは基本的に合体状態で運用する事を前提としている。3機のPTが1機の特機になるのではなく、アルタードは1機の特機が3機のPTとしても運用できるがコンセプトとなっている」

 

アルタードの設計はロブとカークが行なっているが、大本はイングラムが設計した物であり、ロブ達よりも1歩先に踏み込んだアルタードの真の機能についても解説がなされていた。

 

「この対無次元侵入路と言うのはなんだ? 文字を見ても理解出来ないが」

 

カーウァイの質問にイングラムは手元のコンソールを操作し、別のモニターを映し出した。

 

「エアロゲイター……正確に言えばバルマー帝国は、空間転移システムをインスペクターよりも高いレベルで実用している。それを応用する事で、時空の狭間に幽閉するという兵器も使用可能だ」

 

時空の狭間に幽閉する。軽く告げられた言葉だが、その信じられない能力にテツヤ達は大きく目を見開くことになった。

 

「それの対抗手段がアルタードになる。リュウセイ、アヤ、マイの3人の念動力者がいれば次元を切り裂く事も可能だ。これはオペレーションSRWの最終局面でゼンガー達が見ているはずだ」

 

モニターに映し出されたのは、ユーゼスに操られていたイングラムとアストラナガンを覆う紅い念動力を、SRXの放った飛ぶ斬撃が断ち斬った瞬間だった。

 

「これが空間を裂いていると?」

 

「いや、これを更に発展させればと言うところだ。現状のリュウセイ達では亜空間を切り開く事は不可能だ、それだけの出力を出そうと思えばSRX自身が耐え切れないと言うのもある」

 

現在では机上の空論なのはビアンの言う通りである。ゲッター合金、ゲッター炉心によって機体性能は向上して来ているが、求められる性能に技術力は勿論、リュウセイ達のパイロットの技量も足りていないのが現状だ。

 

「未来……いや、平行世界では違う、と言うことかな?」

 

「量産型のSRXが作られていた事を考えれば、アルタードも作られていてもおかしくはないと俺は考えている」

 

最悪を考えていると言えばその通りだが、量産型SRXが完成しているという事は、完成形のアルタードが作られ実用されていたとしてもおかしくはないと考えるイングラムの気持ちも分かる。

 

「メタルビーストSRXが進化したのか、それとも何者かがアルタードをこの世界に持ち込んだのか……そこが問題だな」

 

メタルビーストSRXが進化しアルタードに近づいたのならば、姿はアルタードであっても、中身はSRXとそう大差はない。だがアルタードを何者かが持ち込み、メタルビーストSRXと融合しているとなると事情は大きく変わってくる。元々量産前提で様々な能力がオミットされている量産型と、インベーダーとアインストを殲滅する切り札として設計され、完成したアルタードでは機体性能に大きな差があると予測される。

 

「恐らく俺の設計したアルタードよりも性能は間違いなく高く、強敵である事は間違いないがそこまで心配する必要はないだろう。メタルビーストSRXもそうだったが、念動力者を取り込んでおらずT-LINKシステムを最大限活用出来ていない今ならば、勝算は十分にある」

 

メタルビーストSRXも念動力を使っていたが、その性質は決して高いものではなく、どちらかと言えばインベーダーの性質が表に出ていた。本来の念動力とはまた異なる物となっており、R-GUNと合体しても十分な攻撃力を得れていなかったと、イングラムは予定スペックと組み合わせてテツヤ達に説明する。

 

「これ以上進化する前に叩く必要がある、と言うことですね」

 

「ああ、現状でも十分な脅威であるが、まだ量産型のSRXの複製には至っていない。ダイゼンガーやSRXを用いて短期決戦による撃破が望まれる。下手にダメージを与えて逃げられればすれば……それこそ終わりだ」

 

出来れば武蔵も地球に残って欲しかったイングラムだが、月面の脅威も見過ごせず戦力を地球に多く残したが全くデータがないメタルビースト・アルタードとの戦いには、流石のイングラムも不安を隠しきれなかった。

 

「確かに不安要素はある。だがそんなのは何時もの事だ」

 

「全く持ってその通りだな。こちらにはアルタードの緻密な内部データがある、それを信用しすぎるのもあれだが……基本的な部分は変わらないはず、対策は十分に練れる筈だ」

 

「その通りだ。戦う前から諦めるつもりはない、だが別の不安要素もある」

 

モニターに映し出されているのは、更に異形化が進んだゲッターノワールの姿だ。元がブラックゲッターとは思えないほどに変異を繰り返したゲッターノワールは、旧西暦で戦った真ドラゴンに近い異形の姿へと変わっていた。

 

「挟撃になると厄介だな。布陣をどう組むか……」

 

「メンバーを大目に地球に残して貰っているが、かなり厳しい戦いになるな」

 

メタルビーストアルタードに加え、アーチボルドを始めとした百鬼帝国の勢力が現れる可能性もあると分かり、イングラム達の表情はより険しくなる。だか、月面奪還に向かっているヒリュウ改も同じく厳しい戦い、いや戦力の大半が地球に残っているのだからテツヤ達よりも遥かに厳しい戦いを強いられているのに弱音を吐いて入られないと気を引き締め、メタルビーストアルタードは勿論ゲッターノワールの乱入も視野に入れた作戦会議を続ける。

 

「ビアン博士、SRXの改修はどこまで進んでいる?」

 

「イングラム少佐に言われた通りR-3を副座にした。マイが小柄だから出来た突貫工事だが、使用する分は問題はない筈だ」

 

「しかしイングラム少佐、何故このタイミングで副座にR-3を改造すると決めたんですか?」

 

「アルタードと戦うには、アルブレードやゲシュペンスト・タイプRDでは力不足だ。それに相手はR-GUNとRーSWORDを召喚出来る。SRXチームフルメンバーで、メタルビーストアルタードを潰す」

 

SRXを主軸に、イングラムの乗るR-SWORDとヴィレッタのR-GUNパワードがサポートする。武蔵やラドラがいない中でのベストがこれだとイングラムは主張する。

 

「メタルビーストアルタードがリュウセイ達を取り込もうとしている可能性が高いのではないのか?」

 

「高いからこそだ。リュウセイの念動力の資質は高い、念動フィールドを展開していればインベーダーも容易に取り込む事は出来ないはずだ」

 

「危険だからこそ1箇所に集めるということか、それも1つの手段だな」

 

メタルビーストアルタードがリュウセイ達を取り込む為に細胞を分離させた場合、周囲すべてにインベーダーが寄生する危険性が出てくる。そうなればアルタードが増えるという最悪の可能性も考えられ、リスクは承知でメタルビーストアルタードが狙うのを逆手に取りSRXでメタルビーストアルタードを倒す、それがイングラム達が考えた最善策なのであった。

 

 

 

パイロットではないのに無茶をしたクエルボの身体の状態は酷い有様でクロガネの医務室で寝たきりの状態だった。

 

「大丈夫? クエルボ」

 

「あ、ああ。すまないな、ラーダ」

 

そんなクエルボをラーダは甲斐甲斐しく世話をしていた。短い間だがクエルボとラーダの姿を見れば互いに想いあっているのは一目瞭然で、パートナーと義姉を取り戻したアラド同様に無事に再会で来て良かったと誰もが思っていた。

 

「すまない、今僕が動けないと言うのは分かっているんだが……どうもゼオラが心配でね。ゼオラの様子はどうだろうか?」

 

車椅子を押しているラーダにクエルボがそう問いかけると、ラーダは口ごもった。

 

「……やっぱり酷い状況かい?」

 

「ええ、精神的にかなり不安定みたいで……アラドの姿が見えなくなると情緒不安定になるわ」

 

「そう……か、元々ゼオラはアラドに依存している気があったからな」

 

朱王鬼に操られていたとは言えアラドに酷い言葉を投げかけたのも、共に死のうとしたのもその全てがゼオラの脳裏に焼きついている。元々臆病な気質のゼオラは、アラドが自分の側から離れていくのが恐ろしくてしょうがないのだと、クエルボは沈鬱そうな表情で告げた。

 

「だけどあんまり良くない傾向よ、2人ともまだ子供なのだから」

 

「分かってる、分かっているさ。前はあそこまでじゃなかったんだよ、ラーダ」

 

ラーダの言いたい事もクエルボは分かっていた。余りにもゼオラがアラドに近すぎるのだ。今はまだ良いが勢い余って一線を越えてしまうことをラーダは勿論、クエルボも危惧していた。

 

「ゼオラのカウンセリングはかなり難しいと思うし、迷惑をもかけていると思うが……ゼオラを気に掛けてやって欲しい」

 

「大丈夫よクエルボ。貴方の代わりにちゃんと見てるから」

 

ラーダの言葉にクエルボはもう1度すまないと謝罪の言葉を口にする。

 

「気にしなくて良いわ、さ、食堂に皆集まってると思うから行きましょうか」

 

今までの事もありすぐに自虐的になってしまうクエルボにラーダは大丈夫だと笑いかけ、クエルボの乗った車椅子を食堂に向かって押した。

 

「……なあ、ゼオラ。離れないか?」

 

「やだ……」

 

「ゼオラ。パンツ見えてる」

 

「良いもん」

 

「よくねえよッ!?」

 

アラドの背中から抱きついて両手足で大好きホールドをしているゼオラはミニスカートと言うこともあり下着が丸見えなのだが、下着が見えているよりもアラドから離れないと言うのが今のゼオラにとっての優先事項らしく、恥じらい0のゼオラにオウカとラトゥーニが右往左往し、アラドが整備員達に近寄るなと声を荒げる地獄のような光景に、クエルボとラーダの瞳から光が消えた。

 

「ねえ、クエルボ」

 

「言わないでくれ、ラーダ。僕もどうしてこうなったって思っている所なんだ……」

 

依存とかそういうレベルを遥かに越えたゼオラの現状にクエルボとラーダは頭を悩ませながらも、この騒動を諌める為にゼオラとアラドに声を掛けに向かった。

 

「セロ博士、だって、だって……アラドが私を嫌いになるかも」

 

「大丈夫だよ。そんな事はないから、でもね、あんまり束縛してしまっては駄目だ」

 

「でもでも」

 

ゼオラのカウンセリングを行なうクエルボ。養父としてずっと面倒を見ていたクエルボと話をする事はゼオラの精神を落ち着ける役割があったのか、少しずつだが落ち着きを取り戻し始めていた。

 

「疲れた……」

 

「お疲れ様でした。アラド、ジュースをどうぞ」

 

「ありがとう、オウカ姉さん」

 

側から離れることを極端に嫌うゼオラに理性とかその他諸々をガッツリと削られて消耗しているアラドにオウカがジュースの入ったグラスを差し出し、それを飲んで一息ついていた。

 

「今回の事はテツヤ大尉にも報告します。いい大人が何をしているのですか」

 

「「「いや、その」」」

 

「言い訳は聞きません、ヴィレッタ。後はお願いします」

 

「ええ、任せて。2度とあんな不埒な真似をしようとしないように徹底的に絞ってくるわ」

 

「俺も行こう、カイ達がいれば同じ事をしただろうからな」

 

「私も同行しよう、そう怯える事はない。ほんの少し灸を据えてやるだけだ」

 

ゼオラの下着を見ようとしていた一部の整備員はほんの少しの出来心でゼンガー達に〆られる事になったが、これは完全な自業自得なので誰も同情することは無かった。

 

「何やってるんだ……」

 

「さすがに俺もそれはねぇと思うぞ」

 

「リュウセイとライまでそんな事をしてたら私が怒るわよ」

 

アヤの冷たい視線に、リュウセイとライは声を揃えてしないと声を荒げた。幾らなんでも、一緒に戦う仲間の下着を見ようなんて浅ましい真似をするリュウセイ達ではなかった。

 

「アヤ、冗談でもそんな事言わないでくれねえか?」

 

リュウセイが引き攣った顔でアヤにそう言いながら食堂の隅を指差し、その指先を見たアヤとライも顔を引き攣らせた。

 

「大尉。今回は大尉が悪かったと思います」

 

「そ、そうね。これは私が悪いわね」

 

ジトッとした目でリュウセイをガン見しているラトゥーニとマイの瘴気にアヤはすぐに謝罪し、リュウセイは疲れた様子で溜め息を吐いた。ゼオラに触発されたのか、ここ数日のラトゥーニとマイのアプローチに、リュウセイは結構弱っていた。

 

「嘘だ!? いや、これ別人だろ!?」

 

「わ、私もそう思いますわ?」

 

「失礼な、私のお母様ですわよ」

 

シャインがリクセントから唯一持ち出してきたアルバムを興味本位で覗き込んだタスクとレオナの言葉に、何を見たんだろうかとリュウセイ達も興味を持ち、シャインの元へと向かう。

 

「シャイン王女。アルバムで何を見ていたのですか?」

 

「ラトゥーニ。ええ、後2年もあればエキドナとユーリアに勝てるかなーと」

 

何がとは言わなかったが、エキドナとユーリアの名前で何を言いたいか理解したリュウセイとライは何も言わなかった。体型に関しては男女共にデリケートな問題なので、それは触れてはいけない話題だと知っているからだ。

 

「丁度良いですわ、ラトゥーニも見てくださいませ、これが私と同じ歳のお母様ですわ」

 

「そっくりですね、シャイン王女」

 

「そうでしょうそうでしょう」

 

亡き母親に似ていると言われてシャインは満足そうに頷き、次のページを捲る。そこにはシャインと同じ位の歳の母親の姿があり、微笑ましい気持ちになっていたリュウセイ達だが、14歳の頃から少しおかしいぞと感じ始めていた。

 

(こんなに成長するか?)

 

(成長期だろう)

 

(いや、その言葉で片付けて良いとは思わないけど)

 

「そしてこれが16歳になったお母様ですわ」

 

「「「え?」」」

 

14歳くらいから急速に背が伸び始めていたシャインの母親だが、16歳になった頃には160後半で胸も大きくなり、腰もくびれた絶世の美女になっていた。

 

「写真間違えてませんか?」

 

「間違えてないですわよ、ハウゼン家の女子は14歳くらいから急速に成長するのです。ハウゼン家の神秘と言われています」

 

いや成長しすぎだろうとアルバムを見ていた面子全員がそう思ったが、口を閉ざす事にした。予知能力を持つハウゼン家だが他にも不思議な能力のある家系だったようだと、別人のように成長しているシャインの母親の不思議をリュウセイ達は無理矢理そうやって納得した。

 

「14歳……」

 

「……なんか理不尽」

 

どちらかと言うとまな板に近いラトゥーニとマイが落ち込んでいるが、後少しすれば武蔵と釣り合える姿になれるとワクワクしているシャインはそれに気付かない。恋する乙女は盲目になりやすいというが……やはり王女であっても恋の熱には浮かされがちになるようだ。だがいつまでもその恋の熱に浮かされている時間は、いや、戦いの前の僅かな休息を満喫していたリュウセイ達だったが、クロガネに走った凄まじい振動と食堂に鳴り響いた警報によって短い休息は終わりを告げ、ブリッジからのテツヤの出撃命令に弾かれたようにリュウセイ達は食堂を飛び出して行くのだった……。

 

「そろそろ僕もちゃんとした戦果が欲しいですからねぇ……クロガネには此処で沈んでもらいましょうかね」

 

クロガネを攻撃したのは、アーチボルドが率いる混成部隊の旗艦であるライノセラス改、その主砲として増築されたレールガンだった。流石にゲッター合金でコーティングされたクロガネを撃墜する事は出来なかったが、臨戦態勢に入ったのを確認し、アーチボルドはブリッジで満足そうに頷き出撃命令を出す。ライノセラスから出撃していく機体は量産型の百鬼獣が4体、そして量産型ゲシュペンスト・MK-Ⅲ、更にヒュッケバイン・MK-Ⅲ。加えてマシンセルとゲッター炉心を搭載したマシンナリーチルドレン専用のゲッターロボとゲッターロボGであるゲーゲルミル・ガーベルゲルミルの試作機が2機ずつと、破格の戦力でクロガネをアーチボルドは迎え撃とうとしていた。そして最後の切り札として、復活したばかりの窮奇王がアーチボルドに同行していたのだが、戦力として数えて良いものかアーチボルドは不安を抱いていた。

 

「本当に協力してくれるんですよね? 窮奇鬼皇さん?」

 

「んー? わかんなーい♪ きゅーちゃんはねー別に百鬼帝国なんてどーでもいいしー♪ 人間も鬼も化物もどうでも良いさー♪ 折角の自由なんだから楽しい事をしたいんだよー♪」

 

ネコ耳着きフード着きのジャケットを着込んだ幼女の言葉にアーチボルドは苛立った様子で近寄ろうとして、その足を止めた。

 

「……ご戯れを」

 

影から伸びた鋭い爪を喉元に突き付けられたアーチボルドは、引き攣った顔で許しを請う。

 

「鬼もどきがきゅーちゃんに指図すんなよ、殺すぞ。ついてきてあげただけ感謝しなよ、気が向いたら助けてあげるからほっといて」

 

寝転がって足をパタパタとさせ漫画を読み始める窮奇鬼皇から逃げるようにアーチボルドは格納庫に向かい、その姿を見て窮奇鬼皇はつまらなそうに鼻を鳴らしたが、すぐに気を取り直し漫画を読み始めようとし、弾かれたように顔を上げた。

 

「あはぁ♪ 龍ちゃんと虎ちゃんだ、くふふ……面白くなりそう」

 

龍虎王の気配を感じ取った窮奇鬼皇は子供のような笑みを浮かべるが、その瞳には隠しきれない狂気に満ちた輝きが光を放ち始めているのだった……。

 

第213話 純真しかして邪悪なる者 その2へ続く

 

 




前哨戦 ゲッターノワール・ガーベルゲルミル・ゲーゲルミル・新型量産百鬼獣4体×3セット+α&複製品Rシリーズ3機3セットと前哨戦とは思えない難易度でお送りします。後もしかすると龍虎夫妻もINしてくるかもしれないと言う地獄での戦闘開始となります、難易度がどこかおかしいですが、基本的にこの難易度でお送りします。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

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