第214話 純真しかして邪悪なる者 その3
クロガネからフォーメーションを組みなおせという指示が飛ぶよりも先にリュウセイ達は既に動き始めていた。ビアンとシュウが嫌な戦場の流れを感じ取ったように、イングラムとカーウァイもその異様な雰囲気を感じ取っていたからだ。
『下がれッ!! 陣形を組みなおすんだッ!!』
『1度下がるぞッ! 最悪数発は被弾しても構わんッ! クロガネまで下がるぞッ!!』
絡みつくような粘着質な視線を感じ取ったイングラムとカーウァイの指示は早かった。特攻兵器のゲットマシンとガーベルゲルミル、ゲーゲルミルと戦っていたリュウセイ達は困惑しつつもイングラムの指示に従い、守りを固めながら後退する。そしてゼンガー達は百鬼獣が自分達をクロガネから引き離すように立ち回っていることに気付いていた事もあり、完全に下がる事は無かったが百鬼獣、そしてクロガネへの帰艦が両方容易に行なえる中間ポイントへ移動し、それに気付いた百鬼獣が反転しようとした時……それらは現れた。
【ギ、ギギャアアアアアアッ!?】
突如百鬼獣の一体が凄まじい絶叫を上げたかと思った次の瞬間胸部から高速回転するチェーンソーが飛び出し、百鬼獣は振りぬかれたチェーンソーによって両断され爆発する。
『あれは!?』
『……イングラム少佐の言っていたのはこういうことだったのかッ!』
そのチェーンソーブレードをリュウセイ達は知っていた。何度も戦い、地球の中で現状最も大きな脅威が扱う武器だったからだ。
【……】
紅いバイザー型のカメラアイを光らせメタルビースト・R-1がその姿を見せ、それに続くように地響きを立ててメタルビースト・R-2が3機転移でその姿を現し、メタルビースト・R-1、Rー2に続きメタルビースト・R-3も転移で出現し、空中を旋回し始める。
『周囲にメタルビースト・アルタードが潜伏している恐れがある! 各員最大限の警戒……』
クロガネから周囲に警戒せよと言う通達が発せられるが、その言葉は最後まで発せられず地面を突き破り放たれた光線が幾つもクロガネの船底を直撃し、警報を周囲に響かせながらクロガネの高度が大きく落ちる。
『クロガネが!?』
『今の攻撃どこからきやがった!?』
ゲッター線バリアで守られたクロガネが大きなダメージを受けたと言う信じられない光景に誰もが驚愕し浮き足立った。
『動揺するなッ!! 俺達がこれから戦う相手に自分達の常識を当てはめるんじゃない!』
旧西暦でインベーダーと戦い、平行世界でインベーダーとアインストと戦ったイングラムとカーウァイから何度も忠告を受け、そして戦ってきたリュウセイ達であったが、まだ心構えが足りていなかった。想定外の光景に驚愕し動揺した、そしてその隙をこの戦場を演出したアーチボルドは見逃さなかった。
『あひゃははははははッ!! 隙だらけですよぉッ!! 正義の味方の皆様方ぁッ!!』
狂気に染められたアーチボルドの狂笑が戦場に響き渡り、地表を砕きながら更なる変異を遂げたゲッターノワールがその姿を現した。
『なんて醜悪な……ッ』
『これがゲッターロボとは信じられませんわ……』
確かにゲッターロボの面影へはある。だがその姿は余りにもゲッターロボと掛け離れたおぞましい異形の姿だった。
『あひゃはひゃははははははッ!! どうですか、どうですか!! 素晴らしいでしょう! 僕の力はああッ!!!』
ゲッター1・2・3の頭部だけが巨大化し、球状になった物を胴体とし、その脇からは蜘蛛を思わせる複脚が幾つも伸び大地を砕き、その8本の足で異形と化したゲッターノワールを支えていた。
『化け物が……ッ』
『ひゃははははは進化ですよッ! これは素晴らしき進化の形なのですよぉッ!!』
嫌悪感を抱かせるゲッターノワールから再びアーチボルドの笑い声が響き、ゲッター1の頭部が開きそこから生える様にゲッタードラゴンの上半身がその姿を見せる。だが下半身は存在せず、ゲッター1の頭部とゲッタードラゴンの上半身を蛇腹状のパーツが繋げていた。
『進化だと、これがかッ!』
『こんなものが進化である筈が無い、そこまで堕ちたかアーチボルドッ!!!』
『いひゃはははははッ!! 負け犬の遠吠えは気持ち良いですねええッ!! あはッ! あひゃははははッ!!!』
ゼンガーとレーツェルの強烈な殺気と敵意、そして嫌悪感に満ちた怒声ですら今のアーチボルドにとっては何の意味も無く、力に蝕まれ狂気に落ちた男の狂った笑い声、そしてメタルビースト達の無機質でありながら身震いするような強烈な敵意と殺意にゼンガー達でさえも背中に冷たい汗が流れるのを感じるのだった……。
そしてそのおぞましい進化を遂げたゲッターノワールを雲の上から見つめる1体の異形の姿があった。ゲッターロボGとインベーダーが複雑に融合したメタルビースト・ゲッタードラゴンだ。
「んんー素晴らしい。あのドラゴン……なんとしても手に入れたい、そう思うだろう? スティンガーくぅん」
「うんうん、ぼ、僕もそう思うよ! あのドラゴンはな、なんとしても手に入れたいよ。コーウェン君!」
龍虎鬼皇、そしてヒリュウ改との戦いから姿を隠し、暗躍を続けていたスティンガーとコーウェンもまたゲッターノワール・変異体のゲッター線に引き寄せられ漁夫の利を狙ってこの戦場に現れていたのだった……。
激しい金属音を立ててR-1が手にしていたシシオウブレードが中ほどから砕かれ、R-1の頭部を斬り飛ばさんと迫るチェーンソーブレードをR-1は上半身を逸らして辛うじて回避し、蹴りを叩き込んでメタルビースト・R-1から距離を取った。
「こいつら前よりも遥かに強くなってやがるッ!!」
メタルビースト・エルアインスから進化を遂げたメタルビースト・R-1はどこからどう見てもR-1そのものに加え、エルアインスの武装を扱う事も出来る上にメタルビースト化も加わりR-1よりも遥かに高いスペックを得ていた。
『リュウセイ下がれッ!! シュートッ!!!』
ライの警告と共に放たれたハイゾルランチャーがメタルビースト・R-1に迫るが、メタルビースト・R-1を庇うように前にでたメタルビースト・R-2のショルダーアーマーと腕部アーマーがハイゾルランチャーを完全に無力化する。
『馬鹿なッ!? ぐううッ!!』
ハイゾルランチャーを無力化された事に驚愕したライの乗るR-2に上空から飛来したシールドビットから放たれたビームの雨が何十発を叩き込まれ黒煙を上げながら倒れるR-2・パワードをフォローしようとR-1が飛び出そうとした瞬間……リュウセイの前には赤黒い念動力を拳に宿したメタルビースト・R-1の姿があった。
「ら、ライッ!? う、わあああっ!?」
咄嗟に防御姿勢には入れたが強烈な一撃にR-1が紫電を放ちながら吹き飛ばされ、リュウセイの悲鳴が木霊する。動けないR-1とR-2・パワードに向かってメタルビースト・R-3が念動集束式レーザーキャノンの銃口を向けようとして、その機首を急上昇させ突撃してきたフェアリオンのソニックブレイカーを回避する。
【……】
『させないッ!!』
『これ以上好きにはさせませんわよッ!!』
テレキネシスミサイルの発射態勢に入ろうとするメタルビースト・R-3だが2機のフェアリオンに追われては複雑な制御が必要なテレキネシスミサイルは発射できずフェアリオンとの激しいドッグファイトを繰り広げる。
【!!!】
『その動きは読んでいますわッ!!』
予知能力を最大限に発揮しメタルビースト・R-3の出足を攻撃速度の早いロールキャノンで潰し、ラトゥーニのフェアリオンがソニックブレイカーで攻め立てるが……。
『攻撃力が足りないッ』
『回復力が高すぎますわッ!』
理想的な立ち回りを続ける事が出来ているがメタルビースト・R-3の自己再生能力が高すぎて攻めていても攻めきれない状況にラトゥーニとシャインは顔を歪めながらもメタルビースト・R-3を自由にすれば広域攻撃とストライクシールドの多角的な攻撃が放たれるのでエネルギーと弾薬を著しく消耗するが攻撃を続けると言うジリ貧の選択肢しか2人には無かった。だがメタルビースト・R-3はまだ3機存在し、ゲッターノワール・変異体から発射される特攻兵器のゲットマシン、そしてガーベルゲルミル、ゲーゲルミルへの対応、警戒も必要であり凄まじい精神的な疲労がシャインとラトゥーニの集中力を容赦なく削っていくが、それでも2人は必死にメタルビースト・Rー3へと喰らい付き、自由にさせないように立ち回る。
『ゼオラッ!!』
『分かってるわッ! アラドッ!!』
もう1機のメタルビースト・R-3はビルトビルガーとビルトファルケンが追う。だがビルトビルガーとビルトファルケンも速度のあるPTではあるが、メタルビースト・R-3の速度には追いつけずテレキネシスミサイルがビルトビルガーとビルトファルケンに向かって放たれる。
『うおおおおッ!!』
だがアラドは恐れること無くその弾雨にビルトビルガーを突っ込ませる。自爆や特攻ではない、自分を守ってくれるゼオラを信頼しているからこそ突撃という選択を取る事が出来るのだ。
『ターゲットロック……アラドはやらせないわよッ!!』
オクスタンライフルの先端に装着されたアタッチメントによってビームの性質が操作され放たれたビームショットガンがテレキネシスミサイルを迎撃する。
【!!】
『にがしゃあしねぇッ!! これでも喰らえッ!!!』
爆煙を突っ切って姿を現したビルトビルガーを見てメタルビースト・R-3は機首を上げて逃れようとするがそれよりも早くスタッグビートルクラッシャー改がメタルビースト・R-3の胴体を挟み込んだ。だが快進撃はそこまでだった……。
(だ、駄目だ。切れねぇ……ッ!!)
スタッグビートルクラッシャー改の切れ味を持ってしてもメタルビースト・R-3を両断するには至らず、アラドは撃墜からメタルビースト・R-3を行動不能へと目的を切り替えた。
『いっけええッ!!!』
【!?!?】
凄まじい放電音と共にメタルビースト・R-3が耳障りな金きり声を上げ、その動きが急速に緩くなり、今も空中に辛うじて浮かんでいるという状態へ陥る。
『オウカ姉さん!』
放電によってPTのバーツ部がショートし、インベーダーが感電し動きを止めた事で露になった致命的な隙を逃がすわけには行かないとアラドは通信機に向かってオウカの名を叫んだ。
『分かってます! 早くそこから離れなさいアラドッ!!』
オウカの言葉にアラドがビルトビルガーをメタルビースト・R-3から離すとオーバーオクスタンランチャーから放たれたゲッター合金製の特製のライフル弾がメタルビースト・R-3の頭部を破壊し、胴体まで貫いた。
『うげえ、これでもまだ生きてるのかよ……』
『動揺してる場合じゃないわ! アラド! 1機でも沈めるのよッ!』
『分かってるッ!!』
機械インベーダーの細胞が緩やかながらに自己再生を始めるのを見てトドメを刺そうとしたアラドとゼオラだが、攻撃する寸前に反転し放たれた地表から放たれたビームをギリギリの所で回避する。
【障害を排除します】
再生を終えたガーベルゲルミルがゲッタートマホークブレードを構えアラド達の前に立ち塞がる。ガーベルゲルミルに妨害され、メタルビースト・R-3は地表に向かって落下する。
『くそッ! 邪魔しやがってッ!!』
『落ち着きなさいアラドッ! メタルビーストよりもこいつの方が厄介よ。メタルビーストの方はユウキ少尉達が何とかしてくれる筈、私達はこいつを抑えるわよ』
『オウカ姉さん……分かった』
『分かったわオウカ姉様。それに……こいつは私達を見逃してくれそうにもないし……』
『だな、こいつも潰しておかないと面倒な事になりそうだぜ』
強烈な敵意を叩きつけて来るガーベルゲルミルに背中を晒す事は出来ないとアラド達はメタルビースト・R-3にトドメを刺す事が出来ない事を悔いながらガーベルゲルミルとの戦いを始めるのだった……。
逃げながらも味方の支援を忘れないメタルビースト・R-3をヴァルガリオン・ズィーガーに乗るレオナは必死に追っていた。
(くっ! とんだじゃじゃ馬ですわねッ!!)
直線における最大加速はフェアリオン、そしてアステリオンを越えるが操縦性は2機よりも遥かに劣悪、そしてG装備の精度も決して完璧とは言えず襲ってくる重力に顔を歪めながらもレオナは笑っていた。タスクに厳しい事を言ってこそいるがレオナはタスクの事は嫌いではなく、むしろ好きと言え、色気のあるプレゼントではないが自分のためだけに作ってくれた専用機であるヴァルガリオン・ズィーガーだって素晴らしいプレゼントだと思っていた。
(だからこそ見せてあげるわ、タスク。貴方がくれた戦乙女の力をッ)
操縦桿を握り締めペダルを踏み込むとヴァルガリオン・ズィーガーの肩部の装甲が変形し、更にその速度を上げる。
「逃がしませんわよッ!!」
【!?】
直線加速で追い抜かれ反転し突撃してくるヴァルガリオン・ズィーガーの姿にメタルビースト・R-3が一瞬混乱し、立てなおすまでの隙にブレードレールガンを乱射しながらメタルビースト・R-3へと肉薄する。
(効かない事は分かっています。ですが動きを止めれれば十分ッ!)
メタルビースト・R-3の回復力を考えればレールガンではダメージなど与えれる訳もない、だが再生中は動きが僅かに鈍くなる。動きが鈍い間に懐に潜り込めれば十分なのだ。何故ならばヴァルガリオン・ズィーガーのモニターにはレオナの動きを見て何を考えているかを読み取って動き出しているジガンスクード・ドゥロの姿が映されていたからだ。
「タスクッ!!!」
最大加速に加えて脚部のブースターで加速された破壊力を爆発的に上げた渾身の回し蹴りがメタルビースト・R-3の頭部を捉え、頭部を蹴り砕きながら地表へ叩き落す。
『任せとけ、レオナちゃんッ!! うおらああッ!!!』
叩き落されてきたメタルビースト・R-3に大きく振り被ったジガンスクード・ドゥロのアッパーが叩き込まれ強烈な破砕音と共に再び上空へと弾き飛ばされてくる所に向かって肩部のブレードを展開したヴァルガリオン・ズィーガーが再び急降下加速をしつつ突撃する。
「疾風のように空を駆けるッ!!」
金属粒子がTドットアレイ、そして念動フィールドによって固定された刃がメタルビースト・R-3のパワードパーツごと本体を刺し貫いた。
【グギャアアアアアアアッ!?】
流石のメタルビースト・R-3もそのダメージには耐え切れず凄まじい絶叫を戦場に響かせるがレオナはその絶叫に動じる事無く更に力強くペダルを踏み込んだ。
「蒼麗の閃光よッ! 悪しき影を砕けッ!!」
念動力を集束しメタルビースト・R-3に向かって加速するヴァルガリオン・ズィーガー。近づくにつれ念動力の刃はより鋭利に、そしてよりそのエネルギーを増幅させすれ違いの一閃によってメタルビースト・R-3が胴体から両断される。
『こいつでトドメだッ!! ギガ・ワイドブラスタァァ――ッ!!!!』
【ギ、ギシャアアアアアアッ!?】
両断された上半身と下半身が再び結合する前に放たれたギガワイドブラスターの閃光の中にメタルビースト・R-3の姿が消える。
『よっしゃあッ! レオナちゃん。まずは1体倒したぜッ!!』
「ええ、何とか上手く行き……いえ、まだですわッ!」
ギガワイドブラスターの閃光の中に消えたメタルビースト・R-3は胸部を僅かに残しただけだったがまだ健在だった。それ所かその胸部が盛り上がりインベーダーへと変質しようとし……。
『メタルジェノサイダーデッドエンドシュートッ!!!』
【グギャアアアアアッ!?】
変形したR-GUNの放ったメタルジェノサイダーの光の中へ断末魔の叫び声を上げながら今度こそ消滅した。
『レオナ、タスク。勝利を確信するには早いわよ』
『う、すいません』
「申し訳ありません……」
ヴィレッタからの叱責にタスクとレオナも申し訳無さそうに謝罪の言葉を口にする。
『次に生かせば良いわ。それにまだ戦いは何も終わっていないのよ』
確かにレオナとタスクはメタルビースト・Rー3を1体撃破した。だが特攻兵器のゲットマシンはいまだ飛び交い、メタルビースト・R-1、R-2のコンビにリュウセイ達は劣勢、そしてゼンガー達はゲッターノワール・変異体と百鬼獣を止めるのに手一杯であり、完全に劣勢に追い込まれている。
「いっけええッ!! T-LINKソードッ!!!!」
この劣勢を跳ね返そうと無数のT-LINKソードを発生させ、放つR-1だが信じられないことにメタルビースト・R-1もR-1と同じ様に無数のT-LINKソードを作り出し、R-1の放ったT-LINKソードにぶつけ完全に相殺する。
『くっ! いつまでも好きにさせないわよッ!! マイッ!』
『アヤ。うん、任せてくれッ!!』
アヤが操るストライクシールドにマイが念動力の刃を纏わせる。ブレードストライクシールドはゲットマシンを貫きクロガネに辿り着く前に爆発させるが、本命のメタルビースト・R-1、R-2は片腕を吹き飛ばされ、あるいはパワードパーツを弾き飛ばされても健在で、それ所か本来不可能なR-1がハイゾルランチャーを装備し、あるいは破壊されたメタルビースト・R-3を取り込み飛翔するメタルビースト・R-2も現れだすなど敵機を撃墜しても戦況は決して好転せず、むしろ悪化しているとさえ言える状況だった。
【ゲイムシステム起動します】
「そんな物で俺を止めれると思うなよッ!!」
そんな危機的な状況でも辛うじて戦線を維持出来ていたのはR-SWORDを駆るイングラムが戦況を細やかにコントロールしていたからだ。ゲッター線で稼働しているRーSWORDの出力を小刻みに調整し、メタルビーストを誘き寄せ、ゲーゲルミルと対峙していたから戦況が完全に崩壊することは無かった……だがメタルビースト・Rシリーズの再生能力の高さ、そして特攻を繰り返してくるゲットマシン、そしてガーベルゲルミル、ゲーゲルミルの2機のマシンセルによって改造されたゲッターロボ……更にはゲッターノワール・変異体と百鬼獣――皆奮闘しているが機体の損傷に始まり、弾薬、そしてエネルギーは減り続け押されながらもギリギリ均衡状態だった戦況は少しずつ、少しずつだが劣勢へと傾き始めていた。その時墜落寸前だったクロガネの格納庫が開かれゲッターロボV、そしてグランゾンの2機がその姿を現した。
『オメガグラビトンウェーブ発射ッ!!!』
『ワームスマッシャー発射ッ!!』
指向性の重力波のオメガグラビトンウェーブ、そして虚空から放たれる無数の高出力のビームは戦況を変えるだけの一手とはならなかった。
『何ッ!?』
『ククク……なるほど第三者はまだこの戦場にいるということですか……』
メタルビースト、そして百鬼獣を薙ぎ払う筈の攻撃は何らかの手段によってその威力を大幅に殺され、弾き飛ばすだけに留まり、信じられない光景にビアンは驚愕し、シュウはこの戦場に介入する機会を窺っている第3者の存在を感じ取り、その顔をほんの少しだけ歪めるのだった……。
ゲッターロボVとグランゾンの攻撃は望まれていただけの効果を発揮しなかったが、その攻撃が完全に無意味だった訳ではない。撃墜には至らなかったが重力波によって押し潰されたメタルビースト・Rシリーズは脅威だった再生能力も装甲が押し潰された事で回復が困難になり攻撃の手が僅かに緩み、今までは反撃に移るのも困難だったリュウセイ達も反撃の糸口を掴む事が出来ていた。そしてワームスマッシャーによる攻撃で特攻を繰り返すゲットマシンもその多くを撃墜する事が出来ていた。望まれていた効果には僅かに届かなかったが、クロガネの轟沈という最悪のシナリオは避ける事が出来ていた。だが戦況は決して好転した訳ではない……。
「くっううッ!!!」
ダイゼンガーからゼンガーの苦しそうな呻き声が響く、ダイゼンガーは斬艦刀で何とか敵の攻撃を防いでいたが圧倒的な圧力を前に膝をつき、その足元が蜘蛛の巣状に割れる。
「ゼンガーッ!!」
ゼンガーが押されているのに気付いたレーツェルによってダイゼンガーを押さえつけていた影が離れ、アウセンザイターがダイゼンガーを庇うようにその横に立つ。
「大丈夫か、ゼンガーッ!」
「ぐ……すまんッ! 不覚を取ったッ」
「仕方あるまい、あのような面妖な存在を前にすれば誰とて動揺する」
レーツェルの視線の先には蛇腹上のパーツの先にゲッター1の上半身が生えた無数の触手の姿があった。
『あひゃははははははッ!! 隙だらけですよぉッ!!!』
狂ったように笑うアーチボルドの声が響き、ダイゼンガーとアウセンザイターに影が落ちる。ゲッターノワール・変異体の巨大な掌が地面に叩きつけられ、凄まじい地響きを響かせ地表に足を付いているゲシュペンスト・タイプS、グルンガスト、虎龍王の姿勢が大きく崩れる。
「ブリット君変わってッ!!」
「クスハすまないッ!!」
無数の触手の先にゲッターロボが一斉に襲い掛かってくるのを見て虎龍王は龍虎王へと変形し上空へと逃れる。
「バリソン、合わせろッ!!」
「了解ッ!!!」
避けきれないと悟ったカーウァイとバリソンは防ぐのではなく、あえて打って出てファイナルビームとブラスターキャノンによって迫ってきたゲッターヘッドを消滅させ、ゲッターノワール・変異体の守りが薄くなり、いまの内に間合いを詰めようとしたゼンガーだったが、アーチボルドの狂笑が響き、凄まじい地鳴りが鳴り響いた。
『まだまだ沢山いますよおおッ!!!』
地面が砕かれそこから再び無数のゲッターヘッドが姿を見せ、トマホークブーメラン、ドリルミサイル、ゲッターミサイルの雨霰がダイゼンガー達を襲う。
「そうなんどもッ!! 斬艦刀ッ! 大車りぃぃいいんッ!!!」
「行け、シェルタープラッテッ!!!」
ククリ刀のような形状に変化した斬艦刀とアウセンザイターが投げ付けた肩のシールドがドリルミサイルとゲッターミサイルを破壊し、その爆風によってゲッタートマホークを弾き飛ばすが、爆煙を突き破り飛んできたゲッタービームの雨がダイゼンガーとアウセンザイターへと降り注いだ。
「ぐううっ!!」
「くそッ!!!」
スパイラルゲッタービームに焼かれた時間は僅かだが、それでも少なくないダメージを受けたダイゼンガーとアウセンザイターの機体の各所からは黒煙が上がる。
「あんな化けもん、どうやって倒せば良いんだ」
「泣き言を言うな、必ず突破口はある」
『あひゃはははははッ!! 僕は強い、あひゃははははっ!! もう誰にも負けないんですよぉッ!!』
巨大な異形へと変異したゲッターノワール、倒しても倒してもすぐに復活してくるゲッターヘッド、そして狂ったように笑うアーチボルド……突破口の見えない絶望的な戦いだがゼンガー達の心は折れておらず、不屈の闘志を持ってゲッターノワール、そしてアーチボルドを打破する手段を見出そうとする。そんな勇敢な魂を持つゼンガー達を見ていた窮奇鬼皇は白目と黒目を反転させ狂気的な笑みを浮かべる。
「あはァ……イイナアア、タノシソウダナア……きゅーちゃんもマゼテホシイナアアッ!!!」
強い魂を好む窮奇鬼皇にとってゼンガー達の強い魂と精神力は何よりも素晴らしい「ご馳走」であり、そしてそれであると同時にその好奇心を強く刺激した。どこまでも純粋で、しかしそれでいて邪悪なる者は酒に酔ったかのような恍惚とした表情を浮かべ、戦場に介入するべく動き出すのだった……。
第215話 純真しかして邪悪なる者 その4へ続く
ノワール変異体はでビルガンダムをイメージしてくれると嬉しいです。マシンセルはDG細胞ですし、どうせならデビルガンダムのようにしてしまえと思ったのでこうなりました。そして次回は新しい超鬼人も参戦し、この話は終了し今度こそメタルビースト・アルタード攻略戦に進めて行こうと思います。前哨戦なのにとんでもない事になっておりますが、メタルビースト・アルタードはこれよりも更に凄い事になると思うので、この前哨戦で次はどうなるのか楽しみにしていただければ幸いです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
ゲッターアークがチャは最後まで初期のゼンカイジャーでした無念
ですが、知り合いのプラモ屋さんでHGナラティブ・A装備とシナンジュ・スタインをセットで5000円で入手したので、これはこれで良しと思う事にしました。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い