進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第215話 純真しかして邪悪なる者 その4

第215話 純真しかして邪悪なる者 その4

 

凄まじい破砕音を立てて砕け散るグランスラッシュリッパーに視線すら向けずカーウァイはゲシュペンスト・タイプSを走らせる。

 

『あひゃはははははッ!! 時代遅れPTと特機なんかでゲッターロボに勝てると思っているんですかああッ!!』

 

「機体の性能だけが勝敗を分けるわけではないッ!!」

 

『化物と戦い続けて来た俺を舐めんなよッ! テロリスト風情がッ!!』

 

ゲシュペンスト・タイプSが参式斬艦刀を抜き放ち、グルンガストが計都羅睺剣を構え、ゲッタートマホークとゲッタードリルを構えて突っ込んでくるゲッターヘッドを弾き飛ばす。

 

「ちっ、少しずつ強くなっている」

 

『あんまり時間を掛けると不味いですね、炉心をなんとかしねえと』

 

最初は一撃で撃破出来ていたゲッターヘッドだが、今は深い傷痕こそ刻まれているがいまだ健在であり、少しずつその損傷も回復している。状況は決して良くは無いが……カーウァイはそれでも余裕の笑みを崩す事は無かった。

 

「ブリット! お前の出番だッ!」

 

『は、はいッ!! 身分身の術ッ!!』

 

虎龍王の身体が幾重にもぶれ、凄まじい咆哮と共に地面を蹴りゲッターヘッドへと突撃する。

 

『ははははッ!! そんな子供騙しなどぉッ!? ば、馬鹿なッ!?』

 

残像、あるいは幻だと思っていた虎龍王の攻撃がゲッターヘッドを叩き潰す光景を見てアーチボルドが驚愕の声を上げる。身分身の術は只の残像ではない、その全てが質量を持った分身であり、本体の虎龍王と比べれば性能は落ちる。だがゲッターヘッドを倒すには十分すぎる火力を有していた。そして動揺したアーチボルドの乗るゲッターノワール・変異体に向かってランツェ・カノーネの銃弾の嵐が襲い掛かる。

 

『ギィッ!! 己ぇッ!!』

 

ゲッターノワール・変異体がその巨大な腕を振り上げアウセンザイターに叩きつけようとする。

 

『そんな大振りの攻撃など当たらんッ!』

 

だが巨体故に速度が遅くアウセンザイターは叩きつけを簡単に回避し、虎龍王の分身の中へと紛れ込み分身と共に高速で移動しランツェ・カノーネを乱射する。

 

『ぐうッ!! ちょこまかちょこまかあとおおおおッ!!!』

 

攻撃はゲッター線バリアを貫く事は無いが、攻撃を続けられ苛々した素振りを見せるアーチボルドにカーウァイは計算通りだと笑った。

 

(鬼化の影響か、それとも元々の気質か……恐らく両方か、所詮はこの程度の相手と言う事か)

 

アーチボルドのパイロットとしての技量は決して低いものでは無いが、それはあくまでAMに対するものだ。ゲッターノワールの強大な力に振り回され、そして鬼化の影響で冷静さを失っているアーチボルドはその力を闇雲に振るうだけで、そこに技術はない。武蔵というゲッターパイロットを間近で見ていたカーウァイからすればゲッターノワール・変異体は確かに強力だが、現段階ならば恐れるに足りないと言う評価だった。

 

「ゼンガー、好機を逃すな。お前があの化物を攻略する切り札だ。お前の性格を考えれば動かない事は苦痛だと思うが耐えろ」

 

『……必ず成し遂げます』

 

ゼンガーの言葉にカーウァイは小さく笑みを浮かべ、コンソールを操作しゲッター炉心のリミッターを解除する。

 

「ぬっく……ッ! なるほど……これがゲッター線の力か……ッ」

 

パイロットスーツを焼く熱に顔を歪めながらもカーウァイは無意識に笑っていた。ゲッター線に生かされた者だからこそ、ゲッター線の強い意志を感じ取り、その力に酔わされ始めていた。事実操縦桿を握り締めている手にはゲッター線の怪しい輝きが走り、その光が首筋まで伸びかけた時だった。

 

『まじで大丈夫なんですよね? カーウァイ少将』

 

黒煙を上げ始めたゲシュペンスト・タイプSを見たバリソンが接触通信で大丈夫なのかとカーウァイに問いかける。

 

「……心配ない。確実に仕留めるぞ」

 

その問いかけに我に返ったカーウァイ、それと同時にカーウァイの身体を走っていたゲッター線の輝きは消え去っていた。

 

(……呑まれかけていたか、やはり危うい力だな)

 

あの一瞬自分が呑まれていたと気付いたカーウァイはコンソールを操作し、リミッター再稼働までの時間を75秒にセットした。

 

『分身ごと消し飛ばせばいいんですよねぇッ!! ゲッタアアアアアアアッ!!! ビィィイイイムうううううッ!!!』

 

ゲッターノワール・変異体が口元から放ったゲッタービームはゲッターヘッドに当りながら乱反射を繰り返し、虎龍王とアウセンザイターに迫る。

 

「バリソンッ!!」

 

『了解ッ!!』

 

乱反射を繰り返すゲッタービームの中にゲシュペンスト・タイプSとグルンガストは自ら身を投じる。

 

『飛んで火にいる夏の虫イイイイィッ!!! 自分から死にに来たんですかねぇえええええッ!!!』

 

向かってくるゲシュペンスト・タイプSとグルンガストを見て笑っていたアーチボルドだが、その笑みは一瞬の内に凍りついた。

 

「舐めるなよ、小僧」

 

『はっはぁッ!! こんな攻撃見慣れてるぜッ!!』

 

正確無比のマニュアル操縦技術を持つカーウァイと、あちら側の世界で数の暴力に晒され続けていたバリソンの技量を持ってすれば乱反射を繰り返そうが、スパイラルゲッタービームは十分に回避出来る攻撃だったのだ。

 

「くらえッ! ブラスターキャノンッ!!!」

 

『ファイナルビームッ!!!』

 

ゲッター線を利用としたブラスターキャノンがゲッターノワール・変異体のバリアを結晶化させ、そこに続け様に放たれたファイナルビームがバリアブレイクを発生させる。

 

『推して参るッ!!! チェストオオオオオッ!!!』

 

裂帛の気合が込められた咆哮と共に突撃したダイゼンガーの斬艦刀の一閃がゲッターノワール・変異体の胸部を刺し貫いた。

 

『ちい、浅いッ!』

 

「いや、これで良い。これであいつをこちらの土俵に引き摺りこめた」

 

完全に振り切れず再展開されたゲッター線バリアに弾かれたダイゼンガーからゼンガーの悔しそうな声が響くが、カーウァイはそんなゼンガーに良くやったと声を掛ける。

 

『馬鹿な、馬鹿な、馬鹿なあああああッ!! 僕の、僕の力がぁッ!!?』

 

切り裂かれた胸部から溢れ出すゲッター線の光をゲッターノワール・変異体は押さえ込もうとしているが、指の隙間からどんどんゲッター線が放出される。

 

『どんどん小さくなってる、これならッ!』

 

「油断するなブリット、クスハ。弱体化させたといってもマシンセルによる回復能力は健在だ、脅威であると言うことには代わりはないのだからな、あの程度で倒せると思うな」

 

 

ゲッターノワール・変異体の下半身のゲッターの顔が崩れ落ち、周囲を攻撃していたゲッターヘッドも崩れ落ちた。それは一見ゲッター炉心が破壊された事により身体を維持できなくなり消滅し始めているように見えたが、全員が違和感を感じた。

 

『なんだこの感じ……』

 

『き、気持ち悪い……凄い敵意が……ッ』

 

ゲッターノワール・変異体は今も崩壊を続けているのだが、その崩れ落ちているゲッターノワール・変異体から放たれる強烈な殺意と敵意を感じ取ったクスハとブリットが声を上げ、ゲッターノワール・変異体を睨みつけていたゼンガーとレーツェルが真っ先にその変化に気付いた。

 

『なんだ、胸から何か出てくる……ッ!』

 

『よりにもよってその姿を模倣するかッ! アーチボルドッ!!』

 

『許しません、許しませんよッ!! 僕の、僕の力をよくも奪ってくれましたねええッ!!』

 

崩れ落ちる身体から這い出るように姿を現したゲッターノワール。だがその姿はゲッタードラゴン……いや、ゲッターD2を模したゲッターノワール・Dとでも言うべく姿へと変異しているのだった……。

 

 

 

 

 

ゲッターノワール・変異体がゲッターノワール・Dへと進化……ではなく、退化をしたのを見てイングラムは小さく眉を顰めた。敵の戦力が弱体化したのは喜ばしい事だが放出されたゲッター線それが齎す二次災害を危惧したのだ。

 

(幸いメタルビースト・Rシリーズが進化した予兆は無いが……ちっ、嫌な不確定要素だ)

 

今後の対応を考えながらR-SWORDを操るイングラムには表情ほどの余裕は無かった。ゲッターノワール・変異体から放出されたゲッター線はかなりの濃度だった。それこそ真ドラゴンによって汚染された地区と同等で、その高濃度のゲッター線がどんな悪影響を及ぼすかを考えただけでその顔は当然ながら険しいものとなる。

 

「ロスター出現の可能性がある! 各員最大限に警戒せよッ!!」

 

【シャアッ!!】

 

獣のような勢いで踏み込んできたR-1のチェーンソーブレードをビームソードで受け止め、その腹に蹴りを叩き込んで後へと飛びながらR-SWORDは腰にマウントしていたM-13ショットガンを抜き放ち片手で引き金を引いた。

 

【ギィッ!?】

 

ゲッター合金製の弾頭によって装甲が砕かれ、本体のインベーダーに銃弾がめり込むが怯んだのは一瞬であり、赤黒い念動力を灯した両拳をR-SWORDへ向かって伸ばす。

 

「その程度で俺を捉えられると思うなよッ!」

 

音速を超える速度で繰り出された正拳に自ら飛び込んだR-SWORDは懐に潜り込むと同時に素早く反転し、メタルビースト・R-1を腰に乗せて跳ね上げる。柔道で言う一本背負いが決まり宙を舞ったメタルビースト・R-1を重粒子金属砲の光が飲み込み、断末魔の悲鳴を上げながらメタルビースト・R-1は爆発し、僅かな装甲だけが音を立ててR-SWORDの目の前に落下する、

 

『余計なお世話だったかしら? イングラム』

 

「いや、良いサポートだった。確実に仕留めれる機会を逃す訳には行かないからな」

 

からかうようなヴィレッタの言葉にイングラムはそう返事を返し、R-SWORDとR-GUN・パワードを背中合わせにさせる。

 

「あの出来損ないのゲッターロボを沈める」

 

『分かったわ。でも追詰めすぎては駄目よ』

 

「それこそ分かっているさ」

 

ガーベルゲルミル、ゲーゲルミルの2機のアースクレイドル勢のゲッターロボの内部にはインベーダーが巣食っている事をR-SWORDのゲッター炉心は感じ取っていた。

 

「余力を残せば変異させる、SRXとゲッターロボなしで戦うには少しばかり厳しいな」

 

『切り札は切ってくれないのかしら?』

 

「無論切るさ、だが行き成り切りはしない。トドメを刺す一瞬だけだ」

 

R-SWORD・シーツリヒターの力は強大だが、その分機体に負担を掛ける。まだ戦いを控えている中で容易に切れる鬼札ではないのだ。

 

「とは言え悠長に話をしている時間などくれはしないわけだがなッ!!」

 

ゲッタートマホークブレードで斬りこんで来たガーベルゲルミルの一撃を回避したが、僅かにR-SWORDの装甲にガーベルゲルミルの装甲が触れた。

 

『障害を排除、排除、排除……し、しししししし』

 

ノイズ交じりの量産型マシンナリーチルドレンの声が接触通信によってR-SWORDのコックピットに響いた。

 

(いかん、インベーダーに浸食されかけている……時間がない)

 

このままダメージを蓄積させればガーベルゲルミルはメタルビーストへと変異するだろう。となればゲーゲルミルもまたメタルビーストに変異するのも時間の問題だ。

 

「ヴィレッタ作戦変更だ。速攻で決める」

 

『それが良さそうね……でも問題はもう1機のほうだけど……』

 

「心配ない、ラトゥーニ達が上手くやる。リュウセイ! ライ! アヤッ! お前達はメタルビースト・Rシリーズの動きを封じろッ! タスク、レオナ、ユウキはあの悪趣味な触手のゲッターロボを叩けッ! ラトゥーニ達はあのゲッターロボモドキだッ! 4分以内に決めろッ! でなければ大変な事になるぞッ!!」

 

イングラムの指示にリュウセイ達が了解を返事を返し、指示を出されなかったビアンとシュウは示し合わせたように笑う。

 

『ではビアン総帥。我々は縁の下に回るとしましょうか?』

 

『それが良かろう。過度なゲッター線はインベーダーを活性化させかねないからな』

 

軽い口調で話をするビアンとシュウだが、その指は高速で動き続け重力による影響をリュウセイ達に一切与えず、メタルビースト・Rシリーズ達の動きを拘束し、僅かながらにリュウセイ達が戦いやすいように周囲の重力を常に細かく操作していた。この場の中で上位の戦力を持つビアンとシュウが戦わないことを選んだ理由……それはゲッターロボVのゲッター炉心、そしてグランゾンの対消滅エンジンとブラックホールエンジンがゲッターノワール・変異体が放出したゲッター線と混ざり合いどのような影響を及ぼすか未知数の事を危惧しての事であると同時に……脅威に抗うだけの力を持たなければ何時までも足手纏いにしかならないぞというビアンからの無言のメッセージなのであった……。

 

 

 

凄まじい才能の持ち主である……それがオウカから見たシャインの評価であった。

 

『ラトゥーニ! 左から回り込んでくださいッ! アラドは下から、ゼオラは上から! オウカさんはあの出来損ないを上に逃がさないでくださいッ!』

 

特別自治区であるリクセント公国の女王であるシャインが機動兵器に乗り込むと聞いてオウカは卒倒しかけた。オウカから見たシャインは子供であり、何度も戦場でフェアリオンは見ているがかならずその近くにはゲッターD2がいた。武蔵がいない今出撃するべきではないとシャインに言ったのだが、シャインから帰ってきたのは馬鹿にするなと言う強い敵意だった。

 

『フェアリオンは武蔵様を助ける為に望み、そして武蔵様を追いかけていく為の私の翼です。私の覚悟を甘く見ないで欲しいですわ』

 

圧倒的な支配者の風格がシャインにはあった。そして武蔵の力になりたいという強い願いもオウカにはとても眩しいものだった。

 

「シャイン王女。私の不躾な言葉、心より謝罪いたします」

 

『オウカさん、構いませんわ。それに……貴女の性格ならばそう言ってくると思っていましたしね』

 

オウカにとって幼いシャインもまた庇護の対象である。スクールという異常な環境の中でも弟と妹としたアラドとゼオラ、そしてラトゥーニを守り続けていた。それはオウカが守る者だからだ、自分が苦しくても他者への労わりを忘れない……それは武蔵と良く似た気質であった。

 

『とにかく今はあの紛い物のゲッターロボを破壊します。私、あのような贋作で武蔵様が貶められるのを我慢出来る女ではないのでね』

 

軽い口調だが、その言葉の中に隠されている覇気と恋慕の情にオウカは思わず息を呑んだ。同性でありながら美しいと感じたのだ、恋の熱に浮かされているのではない、その熱を全て己の力に変えているシャインの強い愛情はオウカから見ても美しいものであった。

 

『シャイン王女! まだ大丈夫なのか!? 大分動きがやばい気がするけどッ!』

 

『大丈夫ですわッ! まだ少し、まだ余裕がありますッ!』

 

『し、信じるわよ、シャイン王女ッ!』

 

『ゼオラ、アラド。シャイン王女を信じてッ!』

 

ゲーゲルミルは受けたダメージの蓄積によって装甲の下はまるで無数の蟲が這いずり回っているかのように異様な動きをしている。後ほんの少しの刺激で装甲をぶち破りインベーダーに変異する寸前だと一目で分かる。それでもシャインは大丈夫だと、攻撃を続けてくれと指示を出す。

 

 

(まだ足りない、後少し、後ほんの少し……ッ)

 

一秒ごとに変わる未来予知……その殆どが最悪の物でメタルビーストに変異したゲーゲルミルにビルトファルケンが、あるいはビルトビルガーが、もしくは自分が喰われるという恐ろしいものばかりだが、その最悪の予知に耐えながらシャインはほんの僅かな勝ち筋を待った。

 

(この横槍だけは防がなければッ)

 

ゲーゲルミル、そしてガーベルゲルミルを撃破しなけば側面から恐ろしい2体のインベーダーと超機人が現れ、壊滅的な打撃を受ける。それを避ける為にはなんとしても後数分の間にガーベルゲルミル、そしてゲーゲルミルの撃墜が必要不可欠だった。

 

 

『くらえええええッ!!』

 

そして何度目かのスタッグビートルクラッシャー改の一撃がゲーゲルミルの胸部装甲が切り開いたのを見たシャインの予知が大きく変化をした。

 

『オウカさん! これをあの胸部の傷へッ!!』

 

シャインの乗るフェアリオンが投げ渡してきたのは弾数が1発、あるいは2発しか込められていない小型のカートリッジだった。普通ならばそれがなんの役に立つのかとシャインへと問いかけるだろう……だが。

 

「私に任せてッ!」

 

シャインの強い意志を見ていたオウカは躊躇う事無くカートリッジをオーバーオクスタンランチャーにセットし引き金を引いた。

 

【グ、グギャアアアアアッ!?】

 

装甲を内部から破壊しメタルビーストへ変異しようとしていたゲーゲルミルが凄まじい雄叫びを上げる。だがそれは歓喜の物ではなく、激痛を伴う死を間近にした獣の叫びだった。シャインがオウカに託したのは高純度のゲッター合金を弾頭にした対インベーダーおよびメタルビーストの試作品で、それは本来フェアリオンに使う武装ではない。予知でこれが必要となる未来を見たシャインが出撃前にちょろまかしてきたものだった。

 

『やってくれたな、あのお姫様』

 

『ククク、良いではないですがビアン博士。あれくらい強かなほうが指導者として優れていますよ』

 

試作品を勝手に持ち出したことに眉を顰めるビアンとそんなビアンに怒る事はないでしょうと窘めるシュウだが、そんなシュウの視線もまた鋭く細められていた。

 

『あの出来損ないのゲッターロボはかなり厄介ですね』

 

『……あのレベルの機体が量産されてるとなるとかなり厳しいな』

 

メタルビーストと化したガーベルゲルミルをR-SWORD・シーツリヒターを軸にRチームが奮闘しているが後1歩攻め切れないでいる。

 

『リュウセイ、続けッ! コアを砕くぞッ!』

 

『だ、だけどよ! 教官ッ! しくじったら……ッ! それにメタルビースト・Rシリーズだって残ってるのによ、俺が抜けて大丈夫なのか!?』

 

宙を飛び交う勾玉型のビットとゲッターヘッドを見て二の足を踏むリュウセイにR-2・パワードのライから怒号が響いた。

 

『リュウセイ! 心配するなッ! あんな出来損ないに俺が遅れを取る分けないだろうッ! 少佐と突っ込めッ!!』

 

『大丈夫よリュウ。私達に任せて頂戴ッ!』

 

『大丈夫だリュウ。私達を信じてくれ』

 

『分かった! 行くぜ教官ッ!!』

 

『ワンアプローチだッ! 確実に決めるぞッ!!』

 

『了解ッ!!』

 

時間はこれ以上掛けられないと特攻に等しい攻撃に出るリュウセイとイングラムだが、これに関してはイングラムの判断が正解だった。

 

『アラドとゼオラは私とラトゥーニに続いてくださいッ! ラトゥーニッ!』

 

『はいッ! シャイン王女ッ!!』

 

装甲を一部パージしゲーゲルミルをかく乱しながらフェアリオンが一気にゲーゲルミルの懐に潜り込んだ。

 

【排除、はははは、排除、ハイジョ、ぎ、ギギイイイイイイッ!!】

 

壊れたラジオのように繰り返し響く量産型マシンナリーチルドレンの声とそれから少し遅れて肉の裂ける音が周囲に響き、シャインは顔を僅かに歪めたがすぐに強い意志が込められた瞳でメタルビーストへと変異しようとしているゲーゲルミルを睨みつけた。

 

『『はぁあああああッ!!!』』

 

【ギ、ギィイイッ!?】

 

ソニックスレイヤーによる連続打撃がゲーゲルミルに叩き込まれ、メタルビーストになろうとしているゲーゲルミルが苦悶の声を上げる。何故ならばその打撃は変異を封じる為に関節部等を狙ったものだからだ。メタルビーストとの戦いでアクセルが披露した物……関節部等を狙い装甲を拉げさせる事で再生能力と変異を封じるというアクセルの戦いは理に叶っており、シャインとラトゥーニはそれを忠実に行なっていた。

 

『『はぁッ!!!』』

 

強烈な左右の回し蹴りが腹部に叩き込まれ、身体をくの曲げながら吹き飛んだゲーゲルミルは再び攻撃を受ける前に変異を終えてしまおうと再生ではなく変異を選択し……。

 

『『ツインバード……ストラァァイイイクッ!!!』』

 

【ギ、ギイイイイイイイイッ!?】

 

『T-LINKナッコオッ!!』

 

『俺の趣味では無いが打ち抜かさせてもらうッ!!』

 

【ギ、ギガアアアアアッ!?】

 

比翼の翼によって×の字に切り裂かれゲーゲルミルは断末魔の雄叫びを響かせ、それから少し遅れR-1とR-SWORD・シーツリヒターの拳でコアを砕かれたガーゲルゲルミルも断末魔の雄叫びを上げゲーゲルミル、ガーベルゲルミルは炉心から溢れたゲッター線の光の柱の中に飲み込まれ残骸も残さず消滅するのだった……。

 

ガーベルゲルミルとゲーゲルミルの撃墜はリュウセイ達の知らない所である幸運を呼んでいた。

 

「おいおいおい……不細工な化物の分際で可愛いきゅーちゃんの邪魔すんなよ。殺すぞ」

 

「そ、それはこっちのせ、台詞だよ! ね、コーウェン君」

 

「その通りだよね。スティンガーくぅん? 君こそ道を開けたまえよ。化け猫」

 

「……オーケー……ぶっ殺すッ!!」

 

幼い少女の身体が一瞬で異形の虎へと変化する姿を見て、コーウェンとスティンガーは肩を竦めた。

 

「これだから乱暴者は駄目だ。ね? スティンガー君?」

 

「うんうん、だから、乱暴者は嫌いなんだよ」

 

そして大男と小男もその身体をインベーダーへと変える。

 

「謝っても遅いからな! 食い殺してやるッ!!」

 

「やってみたまえッ! 我ら進化した種に勝てると思うなよッ!!」

 

ゲッター線に魅かれてやって来ていたコーウェンとスティンガーと窮奇鬼皇が邂逅し、互いに邪魔者と認識し戦いを始めた事で横からの奇襲を防ぐ事が出来たという幸運……いや、シャイン王女が必死に手繰り寄せた全員が生き残る僅かな可能性によって作られた結果だった。

 

 

ゲッターD2を模した姿へと変異したゲッターノワールは確かに攻撃力は大幅に低下した。そういう面では確かに弱体化していたが、建造物を思わせる巨体から特機サイズへと変化した事によりその速度を大きく上昇させ、5対1と言う数の面では圧倒的にブリット達が有利だったのだが、完全にアーチボルドとゲッターノワール・Dに翻弄されていた。

 

『どうしたんですかァッ! 超機人さんッ!! 全然届いていませんよおおッ!!』

 

「まだまだッ!!」

 

虎龍王の拳が空を切り、挑発するように手招きするゲッターノワール・Dに向かって音速の虎龍王の左右の拳が放たれるがゲッターノワール・Dはそれら全てを紙一重で回避し続ける。だが攻撃を避けられ続けてもブリットは冷静さを保っていた……何故ならば避けられるのは想定内だったからだ。

 

「これならどうだッ!!」

 

左右の拳の連打からの上段回し蹴り。腰の回転だけで放たれる最短距離の回し蹴りにブリットは必中を確信していたが……。

 

『んん~当りませんねえッ!』

 

「なッ!?」

 

ゲッターノワール・Dの胸部から生えてきたゲッターポセイドンの腕にガッチリと掴まれ、膝から生えてきたドリルに胸部を穿たれ虎龍王の巨体が宙を舞った。

 

「ぐうっ! くそッ! あんな事まで出来るのかッ!!」

 

暴走したゲッターロボと同じく変形せずに各形態の武装を使ってきたゲッターノワール・Dにブリットの顔が大きく歪んだ。

 

『ブリット君、変わろうか?』

 

「いや、多分虎龍王のままが良い。龍虎王じゃ相手の動きを追いきれな……ぐっううッ!!」

 

コックピットの中で頭を振り倒れていた虎龍王を立ち上がらせたブリットは強烈な頭痛に顔を歪め、虎龍王もその場に膝をついた。

 

『ぶ、ブリット君!? それに虎龍王もどうしたのッ!』

 

「く、クスハ……お前は何も感じないのか」

 

強烈な思念による同調現象を感じているブリットはクスハに何も感じないのか? と問いかけるがクスハはなにも感じないとブリットが何故苦しんでいるのか分からず逆に困惑している。

 

『バリソン! ブリットのフォローに回れッ! ゼンガーは私と来いッ! レーツェルはバックアップだッ!!』

 

『了解ですッ!!』

 

『承知っ!!』

 

様子のおかしい虎龍王に気付いたカーウァイがバリソンにフォローに回るように指示を出し、ビームブレードガンを両手に装備させアウセンザイターのバックアップを受けながらダイゼンガーと共にゲッターノワール・Dへと突撃する。

 

『あははははははッ!! そんな攻撃なんて避けるまでも無いですよおおッ!!』

 

『ば、馬鹿な……ッ』

 

ランツェカノーネの銃弾の雨を受けながらもゲッターノワール・Dは全く怯まず、それ所かダメージを受ける事を楽しんでいるような素振りさえ見せる。

 

『斬艦刀疾風怒涛ッ!!!』

 

最大加速のダイゼンガーの横一文字切りにゲッターノワール・Dの上半身と下半身が両断されるが……。

 

『いひゃはははははははッ!! 斬れてないですよおおッ!! 悪を断つ剣ではなくただのなまくらですねえええッ!!』

 

『ば、馬鹿なッ!? ぐあッ!?』

 

『どういうカラクリだ、こいつの再生能力はッ』

 

『これが僕の強さですよぉッ! カーウァイ・ラウうううううッ!!』

 

斬られた箇所から伸びた触手が一瞬で上半身と下半身を合体させ、一瞬の内に傷を修復したゲッターノワール・Dの腹部ゲッタービームに飲み込まれダイゼンガーが弾き飛ばされ、ゲッターノワール・Dの回し蹴りを喰らいゲシュペンスト・タイプSも吹き飛ばされる。

 

『いひゃははッ!! ひひ、ひゃははははははははッ!!!』

 

ゲッターノワール・変異体よりも攻撃は確かに避けれる、そして攻撃を当てることも出来る。だが圧倒的な再生能力を持つゲッターノワール・Dを倒すには根本的な攻撃力が足りていなかった。

 

『おい、大丈夫か!』

 

動けない虎龍王に何かあったのだとグルンガストを操るバリソンが虎龍王に駆け寄り、虎龍王を立ち上がらせる。

 

「す、すみません……なにか、何か変な……「にゃはははは、変とはひどいにゃぁ?」……なっ!? だ、誰だッ!?」

 

『にゃはははは、怖がってかわいーねー。虎ちゃんもおひさー♪』

 

【グルルル、グオオオオッ!!!】

 

『ぶ、ブリット君!? それに虎龍王もどうしたのッ!?』

 

『おいおいおい、暴走してるとかいわねえよな?』

 

ブリットの脳内に響く声は誰にも聞こえておらず、そして怒りに満ちた咆哮を響かせる虎龍王の姿は誰の目から見ても異常事態だった。

 

「お、お前は誰だ!?」

 

『きゅーちゃんはきゅーちゃんだよー? にひひひ♪ ほんとはねー、きゅーちゃんも殺し合いしたかったんだけど……ちょっとねえ無粋な乱入者が来そうなんだよねぇ』

 

「殺し合いッ!? きゅーちゃんとかなんなんだッ!? お前は誰だッ!!」

 

『怖がっちゃってかーわいー♪ ま、とにかく死にたくなければすぐに逃げたほうが良いよ? じゃーあーねえー虎ちゃん、アイラブユー♪』

 

ブリットの脳内に響いていた声が消えると同時におぞましい咆哮が上空から響き渡った。

 

【グルルルルゥ、グガアアアアアッ!!】

 

空中を高速で駆けてきた翼を持つ虎は一際大きな咆哮を上げるとダイゼンガー達に目もくれず、ゲッターノワール・Dへその牙を突きたてた。

 

『ぎ、ギギャアアアアアアッ!? な、何を、何をする窮奇鬼皇ッ!!!』

 

アーチボルドの口から発せられた窮奇鬼皇の名はこの場にいた全員に衝撃を与えた。

 

『窮奇……超機人かッ!』

 

『う、嘘だろ。この状況で超機人まで乗り込んでくるのかよ!?』

 

【うるさいなあ、ほらほら、人間共も逃げた逃げた。戦神が狙ってるよ、死にたくなければ早く逃げなよ。じゃないと死ぬよ~?】

 

その異形の姿からは想像出来ない幼い少女の声が響き、ゲッターノワール・Dを口に咥えたまま窮奇鬼皇は再び地面を蹴り、空へと駆け上り、その姿が消えると同時にクロガネから警報が鳴り響いた。

 

『高エネルギー反応が接近中! 各員は至急クロガネへ帰艦してください! 繰り返します! 高エネルギー反応が接近中! 各員は至急クロガネへ帰艦してください!』

 

『損傷の酷い機体をクロガネへ乗せろッ! 自ら飛行が可能な者は早急にこの戦域を離脱しろッ!!』

 

『急げッ!! この場に残れば全員全滅するぞッ!!』

 

悲鳴染みた……いや、正しく悲鳴その物の帰艦命令が下される。だが退避が完全に完了する前に東の空から強烈な閃光が迫ってくるのを目視で確認された。

 

『シュウッ!!』

 

『致し方ありませんね……』

 

離脱は間に合わないと判断したビアンとシュウがゲッターVとグランゾンを自ら閃光の前へと移動させ湾曲フィールドを全開にするが、僅かに展開が遅れ……東の空から飛来した閃光が地表に着弾し周囲を白く染め上げた。その閃光によって齎された被害は着弾地点から半径5キロを更地へと変え、その破壊力とどこからの攻撃かと連邦だけではなく、百鬼帝国までが厳戒態勢を敷く中その攻撃を放ったメタルビースト・アルタードは不機嫌そうに唸り声を上げていた。

 

 

「……グルゥ」

 

アルタードへと進化したことで大幅に上昇した索敵能力はメタルジェノサイダーが命中していない事を遠く離れた場所からでも感じ取っていた。

 

「グルルル、グオオオオッ!!!」

 

自身が生み出したメタルビースト・Rシリーズの中心でメタルビースト・アルタードは雄叫びを上げる。それは己の存在を誇示するようにも、己の存在を、己の命を認められない事に対する悲しみと苦しみ、そして自らを終わらせてくれと懇願するような様々の複雑な感情が入り混じった慟哭の叫び声なのだった……。

 

 

第216話 堕ちた戦神 その1へ続く

 

 




と言う訳で今回もイベント戦闘でした。新しい超機人がいるよって言う話とノワールが更に変異したっていう所でした。内容は薄めですが、行き成りアルタードを出すというのもっと思ったので今回の攻撃からアルタードの場所を割り出すという風に話を繋げてみる予定です、今回の不完全燃焼の分はアルタード戦で解消したいと思っておりますので次回の更新もどうかよろしくお願いします。

尚今回は規定ターン数までにガーベルゲルミルとゲーゲルミルを撃墜出来なければインベーダーズと窮奇鬼皇に挟まれてとt派がほぼ不可能になるというクソエリアとなっております。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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