進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第216話 堕ちた戦神 その1

第216話 堕ちた戦神 その1

 

メタルビースト・アルタードの放ったメタルジェノサイダーの着弾点は凄まじい惨状だった。着弾点はガラス状に結晶化し、生物の気配を何一つ感じさせない無の空間へと成り果て、メタルジェノサイダーを避けきれなかった百鬼獣達とメタルビースト・Rシリーズの残骸が散乱する地獄のような空間の上空に突如紫電が走り、空間に亀裂が走り瞬く間にその亀裂な巨大な漆黒の穴へと変わる。

 

『ククク……流石のグランゾンと言えど今回はかなり危なかったです。そちらは大丈夫ですか? ビアン博士』

 

漆黒の穴の縁を掴んで黒煙を上げながらグランゾンがその姿を見せ、それに続くようにゲッターロボVとクロガネがゆっくりとワームホールの中からその姿を現した。

 

『辛うじて無事だ。助かったぞ、シュウ。追撃が来る前にこの場を離脱する、お前もクロガネに着艦してくれ』

 

グランゾンの装甲はあちこちがへこみ黒煙を上げ、全身には紫電が走っていた。そしてそれはゲッターロボVも同じであり、受けたダメージによってカメラアイは点滅し、全身から紫電を走らせるゲッターロボVは辛うじて浮遊していると言う酷い有様であった。

 

『ええ、そうさせていただきます。ある程度の自己修復が可能なグランゾンですが……このダメージは余りにも深刻ですからね』

 

ワームホールから抜け出したクロガネは百鬼帝国、あるいはインベーダーの追撃を避ける為に機体の回収後にステルスシェードを展開しメタルジェノサイダーの着弾点から離れ、攻撃の余波を頼りにメタルビースト・アルタードの捜索へと動いていた。

 

「テツヤ大尉。味方の消耗具合はどうなっているかね?」

 

「かなり不味い状況です。グランゾンとゲッターロボVよりかは軽傷ですが……恐らく出撃出来る機体はかなり少数になると思われます」

 

テツヤの言葉に、ビアンは沈鬱そうに溜息を吐いた。ワームホールの中に隠れる事でメタルジェノサイダーの掃射を回避する事には成功したが、数秒間とは言えメタルジェノサイダーに晒されたゲッターロボVとグランゾンのダメージは深刻だった。

 

「業腹だが、あの超機人には感謝するべきか」

 

ゲッターノワール・Dを咥えて逃げろと告げた窮奇鬼皇の言葉のお蔭でワームホールに隠れる事が出来たかと呟いたビアンの顔には、強い疲労の色が浮かんでいた。

 

「ビアン博士も少し休まれては?」

 

「いや、そんな事を言っている場合ではないよ、テツヤ大尉。少しでも動かせる機体を増やさなければならないからな」

 

ふらつきながら出て行くビアンを呼び止める言葉を持たないテツヤは伸ばしかけた腕を下ろし、悔しそうに顔を歪めた。

 

「カイル。整備班からの報告は?」

 

負傷したエイタに変わりオペレーターの統括をしている元コロニー統合軍のカイルにテツヤがそう問いかける。

 

「……かなり厳しいですね、ジガンスクード・ドゥロはシーズアンカーが完全に大破してますし、ヴァルガリオンやビルトビルガー、ファルケンは駆動系に大きなダメージを受けています。ダイゼンガーやSRXチームは小破ですが、フルパワーでの稼働には不安が残ります」

 

カイルの報告を聞いたテツヤは額に手を当てて深い溜息を吐いた。メタルビースト・アルタードと遭遇するまでは戦力を温存したかったのだが、想像以上に消耗している状況にテツヤは頭を悩ませていた。

 

「レイカー司令と連絡はついたか?」

 

「いえ、メタルジェノサイダーの余波で電波状況は最悪で近くの友軍にすら連絡が付きません……大尉、1度伊豆基地に帰還する為の作戦中止要請でもしますか?」

 

機体の多くが大破、補給と修理の目処も立たず、友軍との連絡も付かない。カイルが1度帰還を提案するのは当然の事だったが、テツヤは首を左右に振った。

 

「メタルビースト・アルタードのメタルジェノサイダーの破壊力を見ただろう? あれを都市部に放たれたら終わりだ。ダイゼンガーやSRXチームが健在ならば作戦は続行できる」

 

「し、しかし大尉。それは無謀です」

 

「カイル。お前の言う事も分かる。しかしここでメタルビースト・アルタードを見逃せば、恐らく次はない。メタルジェノサイダーの着弾点からメタルビースト・アルタードの位置予測を急げ、相手が動き出す前にこちらから強襲する」

 

周囲を結晶化させるほどの破壊力を持つメタルジェノサイダーが都市部に放たれるのはなんとしても防がなければならない。今回は平野部だったからこそこの程度の被害で住んでいるが仮に都市部にメタルジェノサイダーを放たれればシェルターごと民間人は全て消し飛ぶ事になる。それだけはなんとしても阻止しなければならないと言うテツヤの言葉にカイルは頷き、メタルジェノサイダーの飛んで来た方角、そしてそのエネルギーの余波からメタルビースト・アルタードの位置予測を行い、その予測を元にクロガネは現状出せる最大戦速で移動を始めた。ブリッジからの作戦続行の報告が響いたクロガネのブリーフィングルームには重苦しい沈黙が広がっていた。メタルジェノサイダーの威力から予測されるメタルビースト・アルタードの絶望的な戦力予測が出たからだった。

 

「SRXよりも5倍も総エネルギーが多いってマジかよ……」

 

「……本当にこの戦力で勝てるのですか……」

 

絶望的な戦いには何度も挑んできたリュウセイ達だが、自分達の切り札であるSRXの5倍近いエネルギーを内包するメタルビースト・アルタードの圧倒的な力に、言葉を完全に失っていた。

 

「その圧倒的なエネルギーによる再生能力とエネルギーの回復能力はメタルビースト・SRXの比ではない。通常の攻撃では恐らくダメージは殆ど通らない上に、仮にダメージを与える事が出来たとしても即座に回復されるだろう。だが突破口がない訳ではない、メタルビースト・アルタードの念動フィールドをSRXによって中和し、ダイゼンガー、アウセンザイター、龍虎王の3機で動力炉にダメージを与える。理想はアルタードの動力全ての破壊だが、最低でも1つ破壊できればその再生能力は大幅に低下すると思われる」

 

イングラムによる作戦の説明が行なわれるが、リュウセイ達の表情は暗いままだ。だがそれも当然と言えた。メタルビースト・アルタードとの戦いで切り札となるはずだったゲッターVとグランゾンは少なくないダメージを受けている上に、メタルジェノサイダーを防ぐ為に動力をフル稼働したことによる動力系へのダメージで、とてもでは無いが出撃出来る状況ではないからだ。

 

「教官。援軍とかはないんだよな?」

 

駄目元で援軍は来ないのか? と尋ねたリュウセイにイングラムは首を左右に振った。

 

「援軍はない。それにジガンスクード・ドゥロやゲイルレイブン、ビルガー、ファルケンの出撃はかなり厳しいと言える。R-SWORD、ゲシュペンスト・タイプS、ダイゼンガー、アウセンザイター、SRXを主軸にした短期決戦になる」

 

絶望的な戦力差と援軍もなく、友軍も殆どいないと言う言葉が重くリュウセイ達の肩にのしかかる。

 

「少佐、1度伊豆基地に戻る。あるいは月面奪還に向かったヒリュウ改との合流は」

 

「メタルジェノサイダーによる余波で通信は不可能だ。確かに状況は厳しいが、テツヤ大尉と同じく俺も現在の戦力でメタルビースト・アルタードの撃破は可能だと考えている」

 

「本当ですか?」

 

「ああ。とは言え、現在の状況だから可能というだけだ。メタルジェノサイダー発射から1時間が経つが2発目の発射の予兆はない。恐らくメタルビースト・アルタードと言えど、メタルジェノサイダーを連発するのは不可能と言う可能性が高い。エネルギーの回復、あるいは砲身の冷却が済むまでの間はメタルビースト・アルタードは動けない筈だ。そこを叩く以外に我々の勝機はない、確かに絶望的な状況ではあるが我々ならば成し遂げられるはずだ」

 

メタルジェノサイダーによるエネルギーの消耗から回復するまでの短期決戦にしか勝機がなく、その僅かな勝機を掴む為に全力を尽くすのだというイングラムの言葉のリュウセイ達は敬礼しながら了解と返事を返し、その返事に満足そうに頷いたイングラムは対メタルビースト・アルタードに対する作戦の詳しい概要の解説を再開するのだった。

 

「フォリア、ヒューゴ。本隊と連絡が付かん、これから我々は独自の判断で行動を開始する」

 

「隊長。しかし……よろしいのですか?」

 

「何がだ。ヒューゴ」

 

「我々への命令は百鬼帝国、及びインベーダー、アインストの情報収集で直接的な戦闘ではありません」

 

「ヒューゴ、フォリアも覚えておけ、確かに軍人たるもの上層部の命令には絶対服従だ。だが軍人の責務とは上層部に命令に従うだけではない、我々は牙なき民を守る事も軍人としての責務だ」

 

「流石親父だ。俺は賛成だッ! あれを都市部に撃たれるわけにはいかねぇッ! ヒューゴ、お前は怖いならここで連絡を待っても良いんだぜ?」

 

「いや、俺も行く。隊長、失言でした。俺も同行させてください」

 

本来の命令に背こうとしているアルベロを止めようとしたヒューゴに、アルベロは気にするなと言って笑った。妄信的に従う部下と自分の立場を悪くしたとしても諌言を口にする部下………どちらが得がたい存在であるかという事をアルベロは知ってるからだ。

 

「我々のこれからの行動は命令違反となる。俺の決断に反対の者はこの場に残れ、俺についてくるものは30分以内に出撃準備を整えろ」

 

「「「了解ッ!!」」」

 

メタルビースト・アルタードの放ったメタルジェノサイダーを遠目で確認したアルベロが率いるクライウルブズもまた、軍人としての責務を果たす為に動き出そうとしているのだった……。

 

 

 

メタルビースト・アルタードのメタルジェノサイダーから窮奇鬼皇の手によって救われたゲッターノワール・Dとアーチボルドだが、窮奇鬼皇に噛まれたゲッターノワール・Dはボロボロで、自己修復能力を持ってしても回復できないダメージを負っていた。

 

「何故撤退させたのですか、窮奇鬼皇。貴方様ならば逃がさない事が出来たのではないですか?」

 

窮奇鬼皇によって助けられたアーチボルドはその事に関しては感謝していたが、自身の機体が使えなくなったことに加えてクロガネまでも逃がした事に不満を抱き、窮奇鬼皇に何故逃げるようなことを促したのかと問いかけた。

 

「んーだってさあ? 横入りってきゅーちゃん嫌いなんだよねえ、虎ちゃんと殺し合いはしたいけど……詰まらない横槍って凄く嫌だからだよ~」

 

「殺せたのに横槍が嫌だからと言う理由で見逃したのですか!?」

 

確実に仕留めれる機会をそんな理由で手放したのかと責める様な口調になったアーチボルドに、窮奇鬼皇は不機嫌そうに顔を歪めた。

 

「そだよ~? なに、文句あるの?」

 

「い、いえ! そう言う訳ではありませんがッ! た、助けていただき感謝しますッ!!」

 

スッと目が細まり白目と黒目が反転した窮奇鬼皇を見たアーチボルドはヒッと上擦った悲鳴を上げ、形だけの感謝言葉を口にして逃げて行った。アーチボルドには何の興味もないと言う表情をした窮奇鬼皇は再び寝転がり漫画を開いて足を楽しそうにパタパタと動かす。

 

「虎ちゃんの強念者面白かったなあ~馬鹿みたいに熱くてきょーちゃんああいう人間好きだなあ」

 

鼻歌交じりの窮奇鬼皇だがその目はまだ白目と黒目が反転しており、残酷な光が宿っていた。それは幼い子供が昆虫や人形をバラバラにするかのような、残虐な行いが楽しくてしょうがないと言わんばかりの耳まで裂けた残忍な笑みを窮奇鬼皇を浮かべる。

 

「龍虎ちゃんとも決着はつけたいけど~バラルのクソ仙人は嫌いだしなぁ~んーどっしようかなあ」

 

窮奇王は元々気まぐれで自分本位の性格をしているが窮奇鬼皇となり、少女の姿を得たことでその気まぐれの気質はかつての物よりもより酷い物となっていた。我が侭で享楽的で、残忍で、しかしそれでいて子供のように無邪気で純真爛漫で、自由気ままと本当に猫のような性格となっていた窮奇鬼皇は何よりも自分の楽しみを優先する性格をしていた。

 

「ん~よっし、決めた。アーチボルドがむかつくし、見にいこっと」

 

アーチボルドよりもブリットの方が面白いと笑った窮奇鬼皇は手にしていた漫画をその爪でバラバラに引き裂き、鼻歌交じりに踏み躙るとその影の中に溶けるようにその姿を消した。

 

「なんじゃ、いないのか。どうするかの?」

 

「構わん、あの猫を御せる等と思っておらんからな」

 

「はははは。確かにな、あやつは破綻しておるからの」

 

窮奇鬼皇の姿が消えてから共行王と鯀王の2人が影から浮き出るように姿を現し、酷い有様の窮奇鬼皇の部屋を見て溜息を吐いた。

 

「我は状況に応じては人間に協力してもいいと思っているが、お前はどうする?」

 

「くふふふふ、助けてやっても良いがまずは人間がどう抗うかを見極めてからじゃな、あの破壊神は私から見ても許せるものではないからの、協力するのは吝かではないぞ?」

 

「それだけ聞ければ十分。我は先に行く、お前は好きにするが良い」

 

「あの我が侭娘が何もかもぶち壊すというのならばそれも良いがな」

 

現れた時のように消えていく鯀王を見送った共行王は口元に浮かべた楽しそうな笑みを崩さず、窮奇鬼皇が寝転がっていたベッドに座ってベッドサイドに山積みにされていた漫画を手に取った。

 

「こんなものが面白いのか? あやつも本当に何時まで経っても子供じゃなあ」

 

パラパラと流し読みをし、漫画が琴線に触れなかった共行王は手にしていた漫画をベッドサイドの机の上に戻して立ち上がった。

 

「あの様な歪んだ命を神としては認めるわけにはいかんからな、私も行くとするか」

 

歪んだ神である共行王達だが、それでも神としてメタルビースト・アルタードの存在を認めるわけには行かないと超機人達は動き出していた。確かに共行王達は善神とは言えぬ存在ではある、残酷で残虐で人を喰らう恐ろしい存在である事は間違いない。だがブライはある一点において致命的な間違いを犯していた。悪の超機人として復活させるのならば人型を与えるべきでは無かったのだ。魂は肉体に引かれる。元々が魂の存在である超機人はそれが如実に現れていた。自身の忠実な配下とするのならば人型を与えるべきではなかったのだ。だが時既に遅し、人の姿を獲て明確な知性を手にした共行王達はブライの意に反して動き始め、そしてブライと表向きは協力体制にあるコーウェンとスティンガーの2人もまた、メタルビースト・アルタードを手にする為に動き出そうとしていた。

 

「あの紛い物のゲッターロボのお蔭で随分とゲッター線を蓄える事が出来たね」

 

『うん、うん! これならばあの忌々しいメタルビーストを僕達の配下に加えることが出来るね!』

 

「僕達よりも下位の存在だと言うのに逆らうなんて生意気だと思わないか? スティンガー君」

 

『うんうん、生意気にも程があるよコ、コーウェン君! ここで力の差という奴をしっかりと教えてあげようじゃないか!』

 

「その通りだよ。スティンガー君、さぁ行こう! 生意気な同胞を躾ける為にね」

 

始りの3体のインベーダーの2体であるコーウェンとスティンガーは自分達に逆らうメタルビースト・アルタードの存在を疎ましく思うのと同時に、自分達の配下に加える為にメタルビースト・アルタードの元へと向かう。

 

デュミナスによって産み出されたメタルビースト・アルタードは様々な陣営を動かしていた。

 

連邦軍はメタルビースト・アルタードによって齎される破壊を阻止する為に……。

 

超機人達は神として歪められた命であり、滅ぼす事しかできないメタルビースト・アルタードの存在を滅する為に……。

 

インベーダー達は己の戦力としてメタルビースト・アルタードを支配下に置く為に……。

 

「メタルビースト・アルタード捕捉! 各員は出撃してください!」

 

【グルルル、グガアアアアアアアッ!!!】

 

様々な陣営の思惑が複雑に絡み合う中、メタルビースト・アルタードとクロガネ隊の戦いの幕が切って落とされるのだった……。

 

 

第217話 堕ちた戦神 その2へ続く

 

 




今回は少し短く、インターミッションとも言えない話となりましたが、次回からの戦いに力を入れる為にこういう話構成となりました。
前半にインターミッションを入れると話のバランスが崩れるので、完全に先頭オンリーの為にこういう形になったという事でご理解いただけると幸いです。それと今回の話で分かると思いますが、メタルビースト・アルタード戦は黄色ユニットが多数参戦する感じになり、超機人にいたってはちょっとしたフラグ、分岐の1つみたいな感じにしたいと思っておりますので、次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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