進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第219話 堕ちた戦神 その4

第219話 堕ちた戦神 その4

 

メタルビースト・アルタードとの戦いの中に突如発生したゲッター線の光の渦から現れたのはかつて武蔵が乗っていたゲッターロボと似た姿をしたゲッターロボだった。その姿はボロボロであちこちから火花を散らしているが、その存在感と威圧感は武蔵の乗っていたゲッターロボよりも遥かに強大な物で、メタルビースト・アルタード、メタルビースト・SRXとの戦いの中のリュウセイ達は勿論、メタルビースト・アルタード、SRXでさえも思わず動きを止めてしまうほどの凄まじい殺気と怒気を放つたった1人の男――竜馬によって戦場は完全に支配されていた。

 

「ちっ! ドラゴンはどこに行きやがった!! くそがッ! ゲッター線はまだ俺の邪魔をしやがるのかよッ!!」

 

ゲッター1から響く凄まじい怒号は自分に向けられたものではないと分かっていても思わず身震いしてしまうほどの凄まじい怒りと憎悪、そして殺意が込められていた。

 

【キシャアアアッ!!!】

 

その怒りと憎悪に脅えたのかタスク達と戦っていたメタルビースト・SRXが腕を伸ばしゲッター1を殴りつけようとしたが、ゲッター1は片手でメタルビースト・SRXの腕を掴んで止め、その拳を林檎でも潰すように握り潰した。

 

【ギ、ギャアアアアアアアッ!!!】

 

「やかましいッ! 化物の癖にいっちょ前に痛がってるんじゃねえッ!! てめえが何かはしらねえが……俺の邪魔をする奴はぶっ殺すッ!!!」

 

武蔵の殺気も凄まじいが、竜馬の殺気は武蔵の比では無かった。武蔵の殺気が敵にだけ向けられているのに対し、竜馬の殺気は無差別で自分の前に立ち塞がるなら全て敵だと言わんばかりの広範囲に及ぶものであり、そんな竜馬に攻撃を加えた瞬間にメタルビースト・SRXの末路は決まってしまった。

 

「うらぁああああッ!!!」

 

凄まじい怒りの咆哮と共にゲッター1の姿がゲッター線の光に包まれ、掴んだままのメタルビースト・SRXを引き寄せようと腕を動かした。機体のサイズが余りにも違うので誰もが無謀だと思った……だが次の瞬間リュウセイ達の顔は驚愕に歪む事になる。

 

「なっ!? 嘘だろ……」

 

「馬鹿な……ッ」

 

ゲッター1の全長が38m、そして重量は220t。それに対してメタルビースト・SRXはメタルビースト化を含めてその全長は55m、そして重量は400tとほぼ倍近い質量の差があった。だがゲッター1は片腕一本でメタルビースト・SRXを引き寄せ、メタルビースト・SRXの巨体が宙を舞った。

 

「うおりゃあッ!!!」

 

【ギガアッ!?】

 

自身へと飛んで来たメタルビースト・SRXに上方向への回し蹴りを叩き込むゲッター1。質量が圧倒的に劣っているはずのゲッター1の蹴りでメタルビースト・SRXの巨体はくの字に折れ凄まじい勢いで上空へ向かって蹴り飛ばされる。

 

「はっ! 図体がでかいだけのデカブツかッ!! これなら鬼の方がもっと強かったぜッ!!」

 

【ギ、ギギャァッ!?】

 

翡翠の軌跡を上空に刻みながらメタルビースト・SRXを追いかけるゲッター1の拳や蹴りは豆腐を潰すかのようにメタルビースト・SRXの装甲を抉る。

 

「念動フィールドを完全に無効化しているのかッ!?」

 

メタルビースト・SRXの念動フィールドは今も機能している。だがゲッター1の攻撃力が余りにも高すぎるのか、それともゲッター線の純度が影響しているのかは定かでは無いが、メタルビースト・SRXは白い煙と共に苦悶の悲鳴を上げる。

 

「はっ!! とっととくたばりやがれええええええッ!!!」

 

竜馬の咆哮と共に振るわれたゲッタートマホークの切っ先から伸びたゲッター線の刃がメタルビースト・SRXの念動フィールドごとメタルビースト・SRXを両断する。

 

【ギ、ギギャアアアアアアッ!!!】

 

「うおらあああああああッ!!!」

 

メタルビースト・SRXの断末魔の雄叫びと竜馬の咆哮が戦場へ響き渡る。竜馬が転移してから1分にも満たない時間でカーウァイ達が苦戦していたメタルビースト・SRXは断末魔の雄叫びと共に爆発する。

 

「へっ、雑魚がッ! 次はどいつだッ!!」

 

ゲッタートマホークを振るい、刃についていたメタルビースト・SRXの肉片を振り払ったゲッター1から竜馬の次の相手を求める怒号が再び響き渡る。獰猛なメタルビースト・アルタードもメタルビースト・SRXも、そしてリュウセイ達もその竜馬の気配に完全に飲まれていた。武蔵とは違う、何もかも燃やし尽くす怒りの業火にリュウセイ達は勿論、インベーダーでさえもその動きを止める中、ビアンだけが動き出した。

再び響き渡る。獰猛なメタルビースト・アルタードもメタルビースト・SRXも、そしてリュウセイ達もその竜馬の気配に完全に飲まれていた。武蔵とは違う、何もかも燃やし尽くす怒りの業火にリュウセイ達は勿論、インベーダーでさえもその動きを止める中、ビアンだけが動き出した。

 

「ゲッター1のパイロット……いや流竜馬君だね。悪いのだが、今とても立て込んでいてね。君さえ良ければ協力してくれるとありがたいのだが……協力する気がないというのなら邪魔になるからこの場を去ってくれると此方として戦いやすくなるのだがね……」

 

武蔵から竜馬の話を聞いていたビアンは竜馬の性格をある程度理解していた。乱暴な面もあり、特に命令される事を嫌う。だが決して話を聞かないタイプの人間ではなく、悪態をついたり怒鳴る事はあるがそれが竜馬のデフォと聞いていたビアンは竜馬に脅えるでもなく、敵意を見せるわけでもなく、あくまで提案と言う形で、しかしそれでいて協力をしないのならば邪魔になるので去れと竜馬に声を掛けた。

 

「しゃあねえなあ、むしゃくしゃしてるから憂さ晴らしに手伝ってやんよ。おい、おっさん。俺はどいつをぶっ潰せばいいんだ?」

 

そしてビアンのコンタクトの取り方は正解であり、竜馬から手伝ってやると言わせて見せたのだった……。

 

 

 

 

竜馬はイーグル号のコックピットで不機嫌を隠そうともせず、大きく舌打ちをした。怒りを隠そうともせず、怒鳴り散らしていたが実際にはとっくの昔に冷静さを取り戻していた。確かに竜馬は攻撃的な性格で、乱暴者ではあるが決して馬鹿ではないのだ。

 

(あの化けもんをやっと見つけたと思ったらこれかよ、ちっ、ゲッター線はどれだけ俺の邪魔をすれば気が済むんだ)

 

この竜馬にとっての怨敵ゲッター線の誤った進化の終着点と言えるゲッター聖ドラゴンを見つけ、今度こそ破壊すると強い決意と共に攻撃を加えようとした瞬間にゲッター1と竜馬はゲッター線の渦に飲み込まれ別の世界へ飛ばされた。つまり最初にゲッター1がメタルビースト・アルタードを攻撃したのは全くの偶然で、ゲッター聖ドラゴンに向かって攻撃を繰り出した瞬間に転移させられたので目の前にいたメタルビースト・アルタードに攻撃が当っただけなのだ。言い方は悪いが、ビアン達は運が良かったのだ。それもとんでもなく幸運だったのだ。もしも竜馬とゲッター1の転移した方角が悪ければクロガネやジガンスクード・ドゥロは轟沈していただろうし、武蔵から竜馬と隼人の性格をビアンが聞いていなければ1度臍を曲げた竜馬は決して話を聞こうとしなかっただろう……それに竜馬がビアンの話を聞こうとしたのにも理由があった。

 

(武蔵……武蔵君だと? 弁慶のやろうじゃねえな、ちっ、ここはどこの世界だ)

 

己の世界の隼人と武蔵坊弁慶を地球へ残し、1人で旅立った竜馬はあれから幾重の世界をめぐった。その中には自分と同じ名前を持つ男もいたし、隼人や自分の知る武蔵とも弁慶とも違う男にも出会った。そしてゲッターロボもその目にしてきたのだ。自分の知るゲッターと全く違う姿をしているゲッターV、そして武蔵の名前に竜馬はビアンの話を聞く気になったのだ。

 

『ゲッター1のパイロット……いや流竜馬君だね。悪いのだが、今とても立て込んでいてね。君さえ良ければ協力してくれるとありがたいのだが……もし協力してくれないと言うのなら邪魔になるからこの場を去ってくれるとありがたいのだが……』

 

敵意でもない、命令でもない、そして脅える訳でもない、対等な口利きを竜馬は気に入ったのだ。その性格上竜馬は回りくどい話や面倒な話を嫌い、そしてくだらないおべっかなども大嫌いだ。

 

「しゃあねえなあ、むしゃくしゃしてるから憂さ晴らしに手伝ってやんよ。おい、おっさん。俺はどいつをぶっ潰せばいいんだ?」

 

やっとの思いで見つけたゲッター聖ドラゴンを目の前で取り逃がし、その憂さ晴らしとして協力してやるよとビアンに返事をする。

 

『出来ればあの化物を倒すのに協力して欲しいのだが……どうも君にお客さんが居るようだ。我々の邪魔をしないように遠ざけてもらえるとありがたい』

 

「あん? 俺に客……はっ! そうかいそうかい、そういう事かい。また神様を名乗る化けもんかッ!! 隠れてねぇで出てきやがれッ!!」

 

ゲッター1が振り返りながら振るったゲッタートマホークから凄まじい激突音が響き渡る。

 

【相も変わらず喧嘩っ早い者だ】

 

【くふふふふ、なーに敵同士、ぐだぐだと喋るよりも手っ取り早くてよいではないか。のう? 進化の使徒よ】

 

【あはぁッ!! きゅーちゃんと遊ぼうよッ!!】

 

空間から浮き出る3機の異形の巨人、共行王、窮奇王、鯀王の姿を見ても竜馬は全く動じなかった。

 

「進化の使徒だぁ? んなもん名乗った覚えはねえなあッ!!!」

 

ゲッタートマホークを手で受け止めていた鯀鬼皇に向かってゲッター1を踏み込ませ、無理矢理距離を作って強引にゲッタートマホークを振り切り鯀王を弾き飛ばす。

 

【ぐおッ! この痛み、あの時を思い出すなッ!!!】

 

「勝手に納得してるんじゃねぇッ!! てめえらなんぞ俺は知らねえぜッ!!」

 

鯀王に向かって手にしていたゲッタートマホークを投げ付けると同時にゲッター1を反転させ、握りこんだ右拳を突き出す。

 

【くうッ!! 女の腹をボコボコと殴りおってッ!!】

 

「化物の分際で女なんて言ってるんじゃねぇッ!」

 

共行王の首に手を回し、地面を蹴って飛び上がったゲッター1の膝蹴りが凄まじい追突音と共に共行王の顔を叩き潰す。

 

【ぎっ! 腹だけではなく、顔までもッ!! 許さんぞッ!!】

 

「許してくれなんていわねえよッ!! うおらあッ!!!」

 

怒りを露にし、槍を突き出してくる共行王の一撃を回避したゲッター1はその腕を掴んで、1本背負いの要領で鯀王に向かって投げ飛ばす。

 

【何をする、共行王。我の邪魔をするか!】

 

【馬鹿を言え馬鹿をっ! 投げ飛ばされたのを見てないのかッ!】

 

「化物同士で揉めてるんじゃねぇッ!! ゲッタァァアアアア……ビィイイイムッ!!!!!」

 

咆哮と共に放たれた紅いスパークを伴ったゲッタービームの光が共行王と鯀王に迫る。

 

【結・界ッ!!】

 

【そうそうやられはせぬぞッ!!】

 

鯀王と共行王の展開した結界にゲッタービームの威力は大幅にそがれるが、それでも共行王達をこの戦場から弾き飛ばすには十分な威力だった。

 

【きゅーちゃんは化物じゃなくて神様だよッ!!】

 

「わりいなッ! 生憎俺は神様なんてもんは信じてねぇんだよっ!!」

 

【ギッ!? もうッ! 不敬だよッ!!】

 

「知るかッ!! てめえもとっとと吹っ飛びやがれッ!!!」

 

強烈な右ストレートに窮奇王の顔面に叩き込まれ、悲鳴を上げる事も出来ず窮奇王の巨体が遥か上空に向かって弾き飛ばされる。

 

「おい、おっさんッ! あの化けもん共は面倒見てやるぜッ! ゲッタァァ……ウィングッ!!!」

 

ゲッター1の背中からボロボロの赤いマントが飛び出し、ビアン達が止める間もなく上空へと舞い上がる。

 

「おらあッ!!」

 

【ガッ!? 己ッ! また顔をッ!!】

 

「化物の癖に顔が顔がってやかましいッ!! その顔をもっと美人にしてやるぜッ!!」

 

【やめよ、女の顔をそこまで狙うのは我とて黙っておれんぞ?】

 

「はッ!! 化物同士で馴れ合いかッ!! ぶっ潰してやんよッ!!」

 

【我は神ぞ。侮辱も大概にしてもらおうかッ!!】

 

「言っただろうが! 俺は神様なんて信じてねえんだよッ!!」

 

【あはッ! あはははははッ! 前と変わらないなあッ!! だからこそきゅーちゃんはお前を殺したいんだよッ!!】

 

「やって見やがれッ!! この猫の化けもんがッ!!!」

 

3対1の数の不利など一切感じさせない動きで3体の超機人を手玉に取るその姿は強さの究極の形の体現そのものなのであった……。

 

 

 

 

クライウルブズの隊長として長い間連邦の特殊部隊として戦い続けてきたアルベロでさえも、目の前の光景には言葉を失った。

 

(俺達の見ている世界はこんなにも小さかったのか……)

 

インベーダー、メタルビースト、そして次元を切裂いて現れたゲッターロボ、3機の悪の超機人……それらの圧倒的な強さにアルベロは自身の足元が崩れていくのを感じた。

 

『アルベロ少佐。何を呆けている、協力してくれるのだろう? 今があの化物を倒す最大の好機だぞ、それをみすみす見逃すのか?』

 

ミサイルマシンガンをメタルビースト・SRXに乱射しながら通信を繋げてきたビアンの言葉にアルベロは我を取り戻した。

 

「ヒューゴッ! フォリア! 俺が突っ込むのを支援しろッ! 良いか、決してあの化け物の間合いに入ろう等と思うな! これは命令だッ!!」

 

2人の返事も聞かずアルベロはゲシュペンスト・MK-Ⅲを操り、メタルビースト・SRXへと突撃する。

 

『うおりゃああッ!!!』

 

『おおおおッ!!』

 

ジガンスクード・ドゥロとグルンガストの拳がメタルビースト・SRXに向かって振るわれるが、重量級の特機であるジガンスクード・ドゥロとグルンガストの拳で合ってもメタルビースト・SRXの念動フィールドを破るには至らなかった。

 

【シャアアッ!!】

 

『ぐううッ!! くっそ、耐えろガンドロォッ!!!』

 

『今度こそぶち抜かせてもらうぜえッ!!』

 

反撃のガウンジェノサイダーを至近距離から打ち込まれ、装甲が融解を始めるがジガンスクード・ドゥロとグルンガストは前に踏み込み続け、2機の装甲よりも先に念動フィールドが根を上げた。

 

『ユウ!! 照準合わせたよッ!!』

 

『衝撃に備えろ、カーラッ!!』

 

ラーズアングリフGRの構えた陽電子粒子砲が唸りを上げ放たれた熱線が念動フィールドに直撃する。

 

「こ、ここだぁぁあああああッ!!!」

 

漁夫の利を取ろう等と言う考えはアルベロには無かった。メタルビースト・SRXから齎されるであろう被害、その脅威度……そしてラーズアングリフ・GRでも念動フィールドを破壊できないと悟ったからこその特攻だった。

 

『隊長!?』

 

『親父! 無謀だッ!!』

 

「うおおおおおおおッ!!!」

 

ヒューゴとフォリアが制止の声を上げるのも当然だ。カスタムされているとは言えゲシュペンスト・MK-ⅢはPTであり、メタルビースト・SRXにダメージを与えるには余りにも出力が足りていない、このままでは特攻にもならない無駄死になる。

 

「悪いが、踏み台になってもらうぞ」

 

『っとおッ!?』

 

ジガンスクード・ドゥロを踏み台にして飛び上がったゲシュペンスト・MK-Ⅲからバックパックが分離される。それを掴んだゲシュペンスト・MK-Ⅲは念動フィールドの上に飛び乗り、バックパックを念動フィールドに押し当てた。

 

「今だッ! 撃てぇッ!!」

 

その叫びに真っ先に反応したのはオウカであり、予知でこの結果を知っていたラトゥーニとシャインだった。

 

『オーバーオクスタンランチャー……シュートッ!!』

 

『ラトゥーニッ!!』

 

『シャイン王女ッ!!』

 

『『ボストークレーザーッ!!』』

 

オーバーオクスタンランチャーとボストークレーザーを受けたバックパックはゲシュペンスト・MK-Ⅲを巻き込んで大爆発を起こす。

 

「ぐうっ!?」

 

『はっは! 流石、クライウルブズの隊長だ。とんでもねえ馬鹿をやってくれるぜッ! タスク、ずらかるぞッ!』

 

『お、おうッ!!』

 

バリソンの駆るグルンガストが手足を失い、胴体部も拉げさせたゲシュペンスト・MK-Ⅲを受け止め、タスクに逃げるぞと声を掛け、今出せる最大速度でメタルビースト・SRXから離脱する。

 

『さて、皆さんに頑張って貰った事ですし……全力を出させて貰うとしましょうか』

 

グランゾンの胸部装甲が展開され、グランゾンの掲げた両手から作り出されたエネルギーが胸部装甲の前で一気に増大し、漆黒の球体がグランゾンの左手に現る。

 

『事象の地平に消え去りなさいブラックホールクラスター……発射ッ!!』

 

その言葉と共に放たれた漆黒の球体を本能で危険だと悟ったメタルビースト・SRXは復元しようとしていた念動フィールドの修復を断念し、ブラックホールクラスターを迎撃する為にR-GUNを作り出そうとするが……。

 

『もう遅いですよ。ククク、発射する前に防ぐべきでしたね』

 

【グ、グギャアアアアアッ!?】

 

R-GUNを作り出す前にブラックホールクラスターが直撃し、猛威を振るったメタルビースト・SRXは断末魔の雄叫びを上げながらブラックホールの中へと消え去った。

 

「今の内に補給を済ませるんだッ! まだ戦いは終わっていないぞッ!」

 

だがまだ戦いは終わっていない、ビアンの補給を行なえと言う指示に出撃していた機体は次々にクロガネへと着艦する。メタルビースト・SRXの撃破には成功した。だがメタルビースト・SRXは所詮前座、メタルビースト・SRXを作り出したメタルビースト・アルタードは今だ健在なのだった……。

 

 

 

 

 

竜馬の乱入はイングラムにとって、いやメタルビースト・アルタードを討伐しようとしているビアン達にとっても想定外だったが竜馬の乱入でメタルビースト・アルタードは少なくないダメージを受け、2機のメタルビースト・SRXの1機は破壊され、皆が全力を尽くしもう1機のメタルビースト・SRXも撃破された。だがダメージを受けても尚、メタルビースト・アルタードはリュウセイ達の前に立ち塞がっていた。

 

『レーツェルッ!!』

 

『ああッ!! 今が駆け抜ける時ッ!!』

 

『『刃馬一体ッ!!』』

 

プフェールト・モードに変形したアウセンザイターの上にダイゼンガーが飛び乗り、メタルビースト・アルタードへと突撃する。だがSRXと龍虎王に動き出す素振りは無く、イングラムは舌打ちと共にSRXと龍虎王に通信を繋げながらR-GUNと共にメタルビースト・アルタードへとR-SWORD・シーツリヒターを走らせる。

 

「何を呆けているリュウセイ! クスハッ! この好機を逃すなッ!!」

 

『何をしているのッ! 早く動きなさいッ!!』

 

イングラムとヴィレッタの叱責にリュウセイとクスハは我に帰った。いや、リュウセイだけではなく、ライ、アヤ、マイ、そしてブリットも一瞬正気を失っていたのをイングラムは理解していた。

 

(強すぎるゲッター線に引かれたか……ッ)

 

竜馬のゲッター線の適合率は武蔵を遥かに上回っている事が念動力者であるリュウセイ達に、そしてそんなリュウセイ達に影響を受ける形でライの意識も奪っていた。

 

「ヴィレッタ。リュウセイ達のフォローを頼む、俺はゼンガー達とメタルビースト・アルタードを叩く」

 

『分かったわ、何か様子がおかしいみたいだしね』

 

精彩を欠いている状態でメタルビースト・アルタードと戦わせるのは危険だとイングラムは判断し、ヴィレッタにリュウセイ達のバックアップを頼み、R-SWORD・シーツリヒターを飛翔させる。

 

「行けッ! ガンスレイブッ!!!」

 

翼から射出された無数の蝙蝠型のビットが残像を残しながらメタルビースト・アルタードへ突撃する。

 

【シャアアッ!! グギィッ!?】

 

メタルビースト・アルタードの反撃で何機かのスレイブは迎撃されたが、撃墜された以上の数のガンスレイブが健在でゲッター合金の弾丸をメタルビースト・アルタードへ撃ちこみ続ける。

 

『はぁッ!!』

 

【ギャアッ!?】

 

ガンスレイブに足止めされ、アウセンザイターに騎乗した事で速度を大幅に上昇させたダイゼンガーに翻弄され、斬艦刀に切裂かれたメタルビースト・アルタードが苦悶の声を上げ、怒りでその瞳を赤くしながらダイゼンガーとアウセンザイターに両腕を伸ばす。

 

『リュウセイ! クスハ! 合せなさいッ!』

 

『了解ッ!』

 

『はいッ!』

 

ヴィレッタの指示でR-GUN・パワードの背後にSRXと龍虎王が並び立つ。

 

『ハイツンランチャー……マキシマムシュートッ!!!』

 

『ガウンジェノサイダァァ――ッ!!』

 

『必殺マグマヴァサールッ!!』

 

ハインツインランチャーの直撃で念動フィールドが砕かれ、集束した念動力の光と業火がメタルビースト・アルタードへ迫る。

 

【ガアッ!!!】

 

避けられないと判断したメタルビースト・アルタードはダイゼンガーとアウセンザイターへの攻撃を中断し、跳躍する事でガウンジェノサイダーとマグマヴァサールの回避を試みるが……。

 

【ギャッ!?】

 

「その程度で逃げられると思うなよ」

 

複数のガンスレイブがメタルビースト・アルタードの上空に集まり、互いを増幅装置として発生させたフィールドで天井に壁を作りだし、それにぶつかったメタルビースト・アルタードは地面に叩き落されガウンジェノサイダーとマグマヴァサールの直撃を受ける。

 

【ギ、ギャアアアアアッ!?】

 

火柱からメタルビースト・アルタードの絶叫が迸る。ガウンジェノサイダーもマグマヴァサールも破壊力で言えば決して高い部類の武器では無いが火柱となり全身を飲み込まれれば装甲にはダメージは入らないが、中に寄生しているインベーダーには大きなダメージを与える事が出来る。

 

『はぁあああああッ!! 受けよ、我が魂の一太刀をッ!!!』

 

【ゴ、ゴガアアアッ!?】

 

火達磨になったメタルビースト・アルタードに斬艦刀の横薙ぎの一閃が叩き込まれ、それと同時に反転したアウセンザイターによって強烈な遠心力が発生し、メタルビースト・アルタードの巨体が宙へ浮かびかける。

 

【シャアアッ!?!?】

 

これを喰らってはいけないと本能で理解したのか、触手を地面に向かって伸ばしそれを縮める事で強引に竜巻斬艦刀・逸騎刀閃の範囲からメタルビースト・アルタードは抜け出した。

 

『あそこまで極めても外されるかッ!』

 

『外されはしたが、ダメージは深刻な筈。次で極めるぞ、レーツェルッ!!』

 

ダイゼンガーを乗せたアウセンザイターが反転するのを見たメタルビースト・アルタードは近づけさせまいと触手を装甲の各所から出し、その先から光弾を放ち、アウセンザイターの動きを止めようとするがイングラム達はそれを見逃さない。

 

『ハイフィンガーランチャーッ!!』

 

『行きなさいッ!!』

 

ハイフィンガーランチャーとステルスブーメランがインベーダーの放った光弾がぶつかり爆発を起こし、ダイゼンガーとアウセンザイターの姿を覆い隠すが、爆煙を突っ切ってダイゼンガーとアウセンザイターが再び姿を現す。

 

【ゴガアアアッ!!】

 

「させんッ! 行けッ! 虚空の射手達よッ!!」

 

再びダイゼンガーに攻撃を仕掛けようとするメタルビースト・アルタードに向かってガンスレイブが一斉に急降下し、銃弾を一斉に叩き込んだ。

 

【ギギャアアッ!?】

 

『このまま一気に決めるぜッ!! ガウンジェノサイダァァアアアアッ!!』

 

竜巻斬艦刀・逸騎刀閃から逃れる為に負った傷の上に銃弾を叩き込まれ苦悶の声を上げるメタルビースト・アルタードにSRXのガウンジェノサイダーが追撃で放たれる。

 

【シャアアッ!!】

 

『なっ!? きゅ、吸収した……ッ!?』

 

『嘘だろッ!? さっきまで効いてたじゃねえかッ!?』

 

ガウンジェノサイダーが命中する瞬間だった。メタルビースト・アルタードはSRXの放ったガウンジェノサイダーを顔面で、いや大口を開けて飲み込み、念動力とエネルギーを吸収し一気にその傷を回復させた。

 

【シャアッ!】

 

【……】

 

【……ッ!!】

 

そして小回りの利かない自分ではガンスレイブに対応出来ないと判断したのかメタルビースト・アルタードが声を上げる。するとメタルビースト・R-GUNとR-SWORDがガンスレイブの迎撃に動き出す。

 

「……学習速度が早い、これ以上学習させる訳にいかんな」

 

メタルビースト……いやインベーダーの学習速度にしても異常な速度でメタルビースト・アルタードは戦術を理解し学習し、その上でダメージを受けていた攻撃で自らの傷を修復すると言う荒業をして見せた。それは今まで戦ってきたメタルビースト、インベーダーとは違う、メタルビースト・アルタードの進化が他のインベーダーを超える領域に踏み込もうとしている証拠だった。

 

『はぁああああッ!!!』

 

【シャアアッ!!!】

 

そしてあまつさえ今はアウセンザイターに騎乗しているダイゼンガーと触手を束ねた剣で鍔迫り合いを行なうメタルビースト・アルタードを見てイングラムはオープンチャンネルで叫んだ。

 

「補給が終わり次第タスク達もこちらに合流しろッ! これ以上メタルビースト・アルタードを進化させてはならないッ!!」

 

ゲッター1と竜馬の登場から目まぐるしく戦況は変わり続けている。だが竜馬が現れてから5分も経ってない……だがその5分の間にメタルビースト・アルタードは爆発的な進化を遂げていた……。

 

【ウルルルル、ウルアアアアアアアアアアッ!!!】

 

動力を破壊され、再生能力と念動フィールドの力を大幅に奪われた。そしてゲッター1と竜馬によって致命的なダメージを受け、今も死に追いやられている。死にたくないと言う本能は全ての生き物が持つ当たり前の欲求である、そしてそれはインベーダー、メタルビーストも同じだ。いや単純な生物であるインベーダーだからこそ、自らの生を強く望み……自身の進化を爆発的に加速させた。

 

「ぐうっ!? レーツェル無事かッ!?」

 

「……ぐっ、大丈夫だ。プフェールトモードは解除されたが……まだ私もアウセンザイターも戦える」

 

咆哮と共に放たれた衝撃破の直撃を受けたダイゼンガーとアウセンザイターは大きく弾き飛ばされこそしたが、パイロットであるゼンガーもレーツェルも無事だった。

 

「皆大丈夫か!?」

 

『……大丈夫だ、衝撃こそあったがさほど攻撃力があった訳ではなさそうだ、各部にも影響はない』

 

『こっちも大丈夫よ、リュウ』

 

『私もアヤも大丈夫だ』

 

「よし、それなら……」

 

咆哮と衝撃破自体に攻撃力は無く、仲間の無事の声を聞いてリュウセイが良かったと言おうとし、その動きを金縛りにあったように止めた。

 

『う、うう……何これ』

 

『うっぐう……なんだ……この強烈な敵意は』

 

【グルルルウッ!】

 

クスハとブリットも強烈な敵意に動きを止め、龍虎王も警戒するような唸り声を上げながらメタルビースト・アルタードを睨みつける。

 

【……】

 

今までの唸り声を上げ、強烈な敵意と殺気を叩きつけて来るだけのメタルビースト・アルタードとは雰囲気も何もかもが変わっていた。

 

「教官、どうすれば良い? メタルビースト・R-GUNもSWORDも見えねぇけど、攻撃を仕掛けても良いのか?」

 

一見隙だらけで攻撃するチャンスに見えるのだが、何時の間にかメタルビースト・R-GUNとSWORDもその姿を消している。異様な気配を纏うメタルビースト・アルタードにこのまま攻撃を加えて良いのかとリュウセイはイングラムに問いかけ、イングラムは一瞬迷った。

 

(下手に近づけば取り込まれるかもしれん……あいつの知性はもう並のインベーダーを越えている。罠の可能性も捨てきれん)

 

ゼンガーやレーツェルもその異様な気配を感じ取り無言ではあるが、イングラムの指示を待つような素振りを見せる。歴戦の戦士であるゼンガー達でさえも攻撃を躊躇う異様な雰囲気を放つメタルビースト・アルタードの姿に様々な可能性がイングラムの脳裏を過ぎる。

 

(取り込まれることだけは避けなければならない……ここは1度安全策をとるべきか……?)

 

余りにも異様な雰囲気に、自分の知りえるメタルビースト、インベーダーと余りにも違いすぎる今のメタルビースト・アルタードに強い警戒心を抱き、このまま攻撃して良い物なのか、近づいた瞬間にサイコドライバーであるリュウセイを有するSRXを取り込もうとする可能性、ゲッター炉心で稼働しているダイゼンガーとアウセンザイターを取り込む可能性がイングラムの脳裏を過ぎった。

 

『どうするの、イングラム』

 

「1度距離を……」

 

ヴィレッタからの言葉にイングラムは1度距離を取る事を選んだ。SRXやダイゼンガー、龍虎王を吸収されるリスクを考え、メタルビースト・SRXを倒すためにエネルギーを溜めていたグランゾンとシュウに遠距離からの攻撃で様子を見るべきだと判断したのだ。

 

【オオオオオオオッ!!!!】

 

だがその迷いと躊躇い、そして味方を守る為に、もっとも最悪の可能性を避ける為の決断がもっとも最悪の結果をイングラム達に齎した。咆哮と共にメタルビースト・アルタードの背中から蝙蝠を思わせる一対の翼が現れ、インベーダーの身体が露になっていた両手も一瞬の内に漆黒の装甲に覆われる。

 

「攻撃だッ! 攻撃を加えろッ!!」

 

イングラムがそう指示を出すが、その指示は余りにも遅くメタルビースト・アルタードは更なる進化を遂げ、周囲に凄まじいエネルギーの嵐を発生させる。

 

「こ、攻撃中止ッ! 防御を固めろッ!! くっガンスレイブッ!!」

 

攻撃中止命令を出し、防御を固めろと指示を出すイングラムだが間に合わないと判断しガンスレイブを操り広範囲のバリアを発生させる。

だが動きを止めてエネルギーを溜めていたメタルビースト・アルタードの攻撃を即席で作り出したバリアで防ぎきれる訳も無く、数秒耐えただけでバリアは音を立てて砕け、メタルビースト・アルタードの放った攻撃……いや、進化の余剰エネルギーがリュウセイ達に襲い掛かった。

 

「ぐ、ぐぐ……うおおおおッ!?」

 

「駄目だ、避け切れん……うあああッ!?」

 

「き、きゃああああッ!?」

 

「う、うああああああッ!?」

 

ダイゼンガー達はそのエネルギーの嵐に飲まれクロガネの元へと弾き飛ばされた。

 

「……くっ……しくじった」

 

『いや、お前の迷いは当然だ。私だって躊躇う』

 

「だがそれであの化物を進化させてしまっては何の意味もないだろうッ!」

 

カーウァイのフォローにもイングラムは苛立った声で怒鳴り返した。メタルビースト・アルタードに近づく事でSRXや龍虎王、ダイゼンガーやアウセンザイターが取り込まれることで想像もつかない姿に進化することを、リュウセイ達を失う可能性にイングラムは躊躇った。だがその躊躇いが堕ちた戦神に悪魔王の力をも与えてしまった。

 

【コハアア……ゴガアアアアアアアアッ!!!!】

 

漆黒の装甲と蝙蝠を思わせる一対の翼……Dis・メタルビースト・アルタードとでも呼ぶべき姿へと変貌を遂げ、自らの誕生を、進化を喜ぶように凄まじい咆哮を上げるのだった……。

 

 

第220話 堕ちた戦神 その5へ続く

 

 




まだ進化するのかよって思うかもしれませんが進化してもらいました。竜馬とゲッター1、窮地に追い込まれたことによる死にたくないという本能、そしてメタルビースト・SRX【オリジン】の時の記憶から更なる力を引き出して最後の進化を遂げました。これで本当にアルタードの進化は最後なので、イベントはこれで本当に最後です。次回からは勝利する為の戦いに入って行こうと思いますので、長くなりましたが最後まで楽しんでいただければ幸いです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

スパロボガチャ 閃光

3ステップ引いて

ディド・メグの合体攻撃×3
ガズラ・スーファー×2
ツーウェイアラブルキャノン×2

グリッドマンは出ませんでしたねぇ……。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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