第220話 堕ちた戦神 その5
ゲッター1と共行王、鯀鬼皇、窮奇王の4機は戦いの中でその動きを止めた。示し合わせたように、全員が全く同じタイミングだった。超感覚、いや本能とでも言うべき物で、存在を許してはいけない脅威を感じ取ったのだ。
【待たれよ、竜馬】
鯀鬼皇がゲッター1に向かってその手を伸ばし、竜馬に向かってそう声を掛けた。
「あん、命乞いか?」
【違う、お前も感じ取ったであろう? 我々は元々あの脅威を退ける為にこの場に訪れたのだ。お前も矛を納めておるのだ、我々よりも人間共が戦っている化物の方が危険であると感じ取った筈だ】
共行王の言葉の通り、闘争本能の塊と言える竜馬が敵を前にして武器を引いた。それは目の前の超機人よりも、リュウセイ達が戦っていたメタルビースト・SRXの方が遥かに危険だと、本能で感じ取った証拠であった。
【ニヒヒヒ、きゅーちゃんもお前と決着を付けたいけどさあ? あれ、あのままおいて置いたらとんでもない事になるんじゃない? だからさ】
「停戦しろってか?」
【ニシシ、せーかい。どーう? きゅーちゃんはもっと遊びたいんだけどさあ、あの化物はそのままにしておけないし、これ以上遊ぶと本気の潰しあいにしかならないじゃん? 遊び相手にはあんまり早く死んで欲しくないんだよねぇ】
敵意も殺意もあるが本気ではない事を感じ取り、竜馬は溜息と共に完全にゲッタートマホークを降ろした。
「あれがやばい化物つうのは俺でも分かる、だがてめえらも敵だ」
【然り、敵であると言うのは我も認めよう。だがそれを上回る脅威があれば、過去の因縁は一度忘れる事も出来る】
歪み、捻じ曲がっているが鯀鬼皇達は紛れも無く神なのだ。百鬼帝国によって人型を得た事で決して善神ではなく、悪神と呼ばれる部類ではあるが………神としての矜持がある。決して人間に滅びて欲しいわけではない、支配する者、崇拝するものが居てこその神なのだ。自らが神であると認識しているからこそ、支配する民としての人間を鯀鬼皇達は求めているのだ。故にDis・メタルビースト・アルタードがこれ以上進化し新種となる事で、インベーダーが地球で繁殖するのは面白い話ではないのだ。
【お前はまだ我らに出会う前の竜馬だ。我らが怨敵ではない、なればここで命を賭して戦う意味はないのだ】
バラルに支配され、思考が制限されているなかでも竜馬に敗れた屈辱は忘れられない。だが今の竜馬が自分達を知らないのならば、それを理由に戦い続けるつもりも無かった。そもそもが、共行王達はDis・メタルビースト・アルタードにリュウセイ達が敗れるようならば、その進化を阻止する為にこの場に現れたのであり、竜馬と戦う為ではないのである。
「俺に取っちゃあてめえらの言いがかりだ。ここでぶっ潰しておいても良いんだぜ?」
【それならば私らも全力で抵抗する。そう簡単に決着はつかないぞ?】
【取り返しの付かない事になってから戻るか? それとも自分の世界ではないからと、目の前の脅威によって世界が滅びるのをよしとするか?】
共行王達も竜馬が戦いを続行すると言うのならば仮初の姿ではなく、魔神形態になるだろう。そうなれば竜馬とゲッター1でも容易に決着をつけるのは難しい、そして竜馬は一見乱暴に見えるが、決して無法者ではなければ、話の分からない男でもない。
「……ちっ、停戦だ。さっさとあの化物をぶっ潰しに行くぞ」
【くふふふ、我らの決着はその後に余力が残っておればやるとしようかの?】
共行王の挑発するような言葉に、竜馬は不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「てめえらみたいな化物の遊びに巻き込まれたら堪っちゃもんじゃねぇ。もうてめえらと戦うつもりはねえ」
そして竜馬も本気で戦うつもりがないと言うのを感じ取り、これ以上戦うつもりはないと返事を返した。
【なれば停戦だ。我らの要請を聞き入れてくれたのだ、それなりの対価は払おうぞ】
「はん、別にんなもんは」
【お前の怨敵である邪龍の場所を教えてやろうぞ】
「なに? 分かるって言うのかよ?」
【然り、神を名乗るのだ。それくらいの事は出来るぞ、だがまずはあの化物を倒してからだ、これ以上進化させるわけにはいかんからな】
「ああ、それで良い。あれがやばいっつうのは俺も分かるからな」
竜馬達の居る所まで響いて来るDis・メタルビースト・アルタードの咆哮に、これ以上話していれば取り返しの付かない事態になると即座に反転し、凄まじい轟音が響いて来る方角……リュウセイ達とDis・メタルビースト・アルタードが戦っている方角へと向かうのだった……。
フェアリオン・タイプGのコックピットでシャインは引き攣った悲鳴を上げた。Dis・メタルビースト・アルタードの異様な姿に恐怖したのではない、Dis・メタルビースト・アルタードをその視界に納めた時、シャインの意思と関係なく予知が発動したのだ。
『シャイン王女……大丈夫ですか?』
「ラトゥーニ……違いますわ。あのメタルビーストは……存在を許してはいけないのですッ!!」
シャインはラトゥーニの通信にそう返事を返すと同時に通信機の周波数を広域通信に切り替え、声を上げた。
「Dis・メタルビースト・アルタードが今より進化すればインベーダーの親になりますッ! そうなれば大量のインベーダーがこの地域を埋め尽くしますッ! 早く、早くあのメタルビーストを倒さなければなりませんわッ!!」
シャインが見た予知……それはDis・メタルビースト・アルタードから大量のインベーダーが産み落とされる光景だった。今までのインベーダーは子であり、増殖、寄生を繰り返し数を増やしていた。だがDis・メタルビースト・アルタードが親となれば、増殖・寄生とは比べ物にならないペースでインベーダーが増えることになる。
『シャイン王女! 時間的な余地はどれ程ある!』
「10分……10分ですわビアン博士ッ! そこから先の予知は変わりませんッ! それが……くうっ! 恐らくタイムリミットですわッ! アラド、タスク下がってッ!! 地面を破って触手が出てきますわッ!!!」
複数の予知を行なっているからか苦悶の声を上げながらシャインは予知を告げ、タスクとアラドに危機が迫っている事を叫ぶ。
『うおッ!?』
『アラドッ!!』
『ゼオラッ! スプリットミサイルで触手を飛ばしなさいッ! アラド今行くわッ!!』
ビルトファルケンの放ったスプリットミサイルHが地面に着弾し、発生した爆発と爆煙で触手の軌道が僅かに逸れ、その煙に紛れラピエサージュが急加速しビルトビルガーの手を掴むと同時に急上昇しビルトビルガーを救出する。
『オウカ姉さん、すまねえッ!』
『まだ助かってないわッ! アラド! マシンキャノンをッ!!』
『マジかッ!! くそッ!!!』
煙からラピエサージュとビルトビルガーを追って触手が煙から飛び出してくるのを見て、アラドは動揺しながらもオウカの指示通りにマシンキャノンを放つ。が……目の前の光景に驚きの声を上げた。マシンキャノンの弾雨が着弾する寸前に触手は念動フィールドが展開され、その銃弾が全て弾かれたのだ。
『触手にも念動フィールドがあるのかよッ!! 駄目だッ! ビルガーの武装じゃ触手が纏ってる念動フィールドすら破れねえッ!!』
『くっ!! 何とか逃げるしかないということですかッ!』
PTと準特機程度の火力では、本体から遠く離れた端末である触手の念動フィールドすら突破出来ない。
『オウカ! アラドッ!! なんとかして逃げろッ!!! カーラッ! 間違えて誤射するなよッ!!』
『分かってるッ! そんなヘマしないよッ!!』
ラーズアングリフ・ゲイルレイブンから放たれた弾雨が触手に殺到するが……。
『くそッ!! これでも念動フィールドを突破できないのかッ!!』
『オウカッ! アラドごめんッ!! 足止めしか出来ないッ!! 頑張って逃げてッ!!』
実弾とビームの雨が全て命中し、やっと念動フィールドを破る事に成功するが、ほんの僅かな傷をつけるのに留まり、その傷もインベーダーの再生能力によって一瞬のうちに消失する。
『シーズアンカアアアアアアッ!!!』
ビルトビルガーとラピエサージュが触手に捕らわれる寸前にジガンスクード・ドゥロの左腕のシーズアンカーが触手を捕らえ、そこから放たれた電撃によって触手が萎縮しアラドとオウカは窮地を間逃れたが、Dis・メタルビースト・アルタードの恐ろしさにその顔からは完全に血の気が引いていた。
『た、助かりました。タスク少尉』
『俺もギリギリだったんだ。生きてるから電撃が辛うじて有効だっただけで……俺もかなりやばかった』
強固な装甲を持つジガンスクード・ドゥロも装甲の前面が傷だらけで、Dis・メタルビースト・アルタードの触手の攻撃力の高さが文字通り身に刻まれていた。
『……こんな化物に勝てるの……?』
ゼオラが恐怖に耐えかねたのか、震える声でそう呟いた。2機のメタルビースト・SRXを撃退し、もしかしたら勝てるかもしれないと言う希望を一瞬で塗りつぶす絶望的な光景が、ゼオラ達の前で繰り広げられていた。
『うおおおおおッ!!!』
『至高拳ザインナッコオッ!!!』
『ランダムスパイクッ!!!』
斬艦刀の横薙ぎの一閃、そこにSRXの両拳が叩き込まれ念動フィールドが結晶化し、虎龍王の手にしたヌンチャクが何度も叩きつけられやっとDis・メタルビースト・アルタードの念動フィールドが音を立てて砕け散った。
『ワームスマッシャー発射ッ!!!』
『トマホーク……ブーメランッ!!』
『その傷を狙い撃つッ!!!』
グランゾン、ゲッターロボV、アウセンザイターの波状攻撃が、念動フィールドを失ったDis・メタルビースト・アルタードの、進化しても消えぬメタルビースト・アルタードだった時に負った傷を確実に捉える。進化しても修復出来ていない傷を狙えば大きなダメージを与える事が出来ると考えるのは当然の事だが……。
【キシャアアアアアッ!!】
クロガネが用いる事が出来る最強戦力の波状攻撃でも、Dis・メタルビースト・アルタードの怒りの炎に油を注ぐだけであった。
『……化け物めッ!!』
『これを後8分で倒せって言うの……?』
圧倒的な攻撃力と防御力、そして再生能力……確かに最強戦力であるゲッターD2は月に送った。だがそれでも勝算はあったのだ……グランゾン、ゲッターV、SRX……それらの力を結集すれば、十分にメタルビースト・アルタードならば勝利する事が出来たのだ。最大の誤算……それはメタルビースト・アルタードが限定的とは言え、アストラナガンの力をインベーダーの力を用いて再現した事。それがイングラム達にとっての最大の誤算であり、この窮地に至った原因だった。
「逃げてッ!! 周囲が更地になりますわッ!!」
『散れッ!! 散れッ!!!』
シャインの予知、そしてカーウァイの散れと言う怒声が広域通信でこの戦場に居る全ての機体のコックピットに響き渡った次の瞬間、Dis・メタルビースト・アルタードの怒号と共に放たれた重力場を纏ったドミニオンボールの雨が一斉に降り注ぎ、念動力、そして重力場による圧倒的な破壊の嵐がリュウセイ達に襲い掛かるのだった……。
漆黒のドミニオンボールによって作られたクレーターをR-2のコックピットから見たライは、完全に言葉を失った……機体のレーダーを用いてもなお測る事が出来ない破壊の痕にDC戦争、L5戦役、そして現在……様々な理解を超える光景を見て来たライであっても、その心を強く保つ事は出来なかった。
「……こんな化物に勝てと言うのか……ッ」
軍人としての責務、ブランシュタイン家としての誇り……それらによって辛うじてライの心を折らずに居られた。だがそんなライでも目の前のDis・メタルビースト・アルタードが、形となった絶望にしか見えなかった。どう足掻いても勝てるビジョンを思い描く事が出来ず、その手が小刻みに震えるのを抑えるのに必死だった。一度震え出してしまえば……恐怖に己の心が折れてしまえば、そうなれば自分が役立たずになると分かっていたからライは歯を食いしばって必死に恐怖に耐えていた。
『勝てる。ライ、俺達は勝てる』
「リュウセイ……ああ、そうだな。気持ちで負けていては『違う、そうじゃねえ。俺見たんだ』……リュウセイ、何を見た」
その真剣な声色にリュウセイの言葉が精神論ではなく、Dis・メタルビースト・アルタードを倒すための手掛かりを共有しようとしているのだと分かり、広域通信をONにしてリュウセイに何を見たのかと問いかけた。
『あいつらの身体、ドミニオンボールを作った時に内側から崩れてた……もしかしてあいつ、自分の力をコントロールできてねえんじゃねえか? 自分の力に耐え切れなくて、身体が崩壊してるんじゃないか?』
Dis・メタルビースト・アルタードが自分の力に耐えられず崩壊しているんじゃないかとリュウセイは言うが、ライの目から見たDis・メタルビースト・アルタードは現れた時のまま微動だにしていない。その周囲を触手が威嚇するように蠢いている姿と、リュウセイの言葉がライの脳裏で1つに繋がった……。
「……ありえる。テツヤ大尉! 通信は聞こえていますか!」
『聞こえているッ! ライ、何を思いついたッ!!』
「インベーダーは積極的に攻撃をしてくるはず、それをしなかったのはDis・メタルビースト・アルタードと、メタルビースト・SRXだけですッ! インベーダーを持ってしても力を制御しきれない可能性は十分にあります。闘争本能の塊のメタルビーストがいつまでもジッとしていられる訳が無い、そこを利用すれば突破口を見出せるかもしれません。その為に回避力に長けた機体によるかく乱を求めます!」
誰かにおとりをさせてくれと言うライの言葉にテツヤは返事に迷った。Dis・メタルビースト・アルタードの攻撃力を目の当たりにすれば囮すらできずに撃墜される可能性が極めて高い、それに攻撃を誘発しDis・メタルビースト・アルタードのエネルギーを使わせることで内部崩壊をさせるとしてもその攻撃を受けれる機体が無い……。
『ライディース。その役目、私が引き受けようッ!!』
『シャイン王女ッ!! 私達の命を預けますッ!!!』
『預かりましたッ!!』
広域通信でライの言葉を聞いたからではない、レーツェルも、そしてラトゥーニも見ていたのだ、リュウセイが見たようにDis・メタルビースト・アルタードが内部崩壊する様を……そしてシャインの予知によって与えられた猶予8分、世界を救う為の8分間を無駄には出来ないとテツヤが判断に迷っている間に動き出したのだ。
『……ッ!! チャフだッ!! チャフを装備している物は片っ端からチャフを撃てッ!!! それと格納庫にゲッター合金製のシールドもあったなッ!! それも射出しろッ!! 装備可能な物はそれを装備するんだッ!!』
賽は投げられたのだ。与えられた時間は残り8分……1分、1秒が貴重なのだ。迷っている時間も、躊躇っている時間も無いのだ。
「……リュウセイ。分かっているな?」
『……ああ』
「俺達は動けない、いや動いてはならない。Dis・メタルビースト・アルタードを倒せる火力があるのはSRXだけだ……」
『待て、待ってくれッ!! それはラトゥーニ達を見殺しにすると言うことかッ!?』
動いてはならないと言うライの言葉にマイが我慢しきれず声を上げる。
「違う、俺達は皆が作ってくれるチャンスを待つんだ」
『動かないんじゃ見捨てると同じだろうッ!? リュウ、駄目だッ! 見捨てたら駄目だッ!!』
マイの言葉にリュウセイは返事を返さなかった。だがそのかわりにR-3のコックピットの響いたのはリュウセイの強く歯を噛み締める音だった……。
『マイ』
『アヤ! アヤからも』
『……待機よ。あの化物を倒せる可能性があるのはSRXとR-GUNだけ、ゲッター炉心やエネルギー回復装置を積んでいないSRXをこれ以上動かせばトドメをさせなくなる。そうですね、隊長』
これ以上動かせばトドメをさせなくなる。そうですね、隊長』
『……ええ、そうよ。マイ、あたし達は待機するしかないわ』
『そんなッ!?』
Dis・メタルビースト・アルタードの脅威を目の当たりにしたマイはアヤ達の非情とも言える判断に声を荒げた。
『大丈夫だッ! マイッ!! 俺達は……うおわあッ!?』
『何かっこつけてるの馬鹿ッ!! でも大丈夫よッ! 時間くらい幾らでも稼いで上げるッ!!』
『どの道有効打は与えられないんですわッ! なら私達に出来る事をするだけですわッ!!』
誰一人犠牲になるつもりなどはない、Dis・メタルビースト・アルタードの念動フィールドを破れず、見ている事しか出来ないくらいならば、Dis・メタルビースト・アルタードを挑発し、攻撃させてDis・メタルビースト・アルタードの自己崩壊を進める……それが今アラド達に出来る事だった。
「マイ。俺は皆を見捨ててるんじゃない、皆なら出来ると信じているんだ。そして皆も俺達ならあの化物を倒してくれると信じてくれているんだ」
Dis・メタルビースト・アルタードと戦うにはPTや準特機では力不足と言うのは紛れもない事実だ。1度はダイゼンガーや龍虎王、SRXの波状攻撃によってDis・メタルビースト・アルタードの念動フィールドを破る事に成功した。だがダメージを与える事が出来なかった……念動フィールドを破るのにエネルギーを使いすぎて最大火力を叩き込む事が出来なかったからだ。
『ブリット、クスハ、リュウセイ……2度はない、次で確実に決めるぞ』
『はいッ!!』
『必ず……決めますッ!!』
ゼンガー達とて平気ではない。Dis・メタルビースト・アルタードを倒すには全てをつぎ込まなければならない、仲間が命を賭けて作ってくれるチャンスで確実に決める。仲間が戦っているのを見ている事しかできない自分に歯を噛み締めながら、攻撃に移れる瞬間をリュウセイ達は待ち続けるのだった……。
大地を削りながら踵のローラーで疾走するアウセンザイターの背後から轟音が絶え間なく響き続ける。だがレーツェルは前だけを見つめ、決して後を振り返ろうとはしなかった。振り返れば、足を止めれば、少しでも速度を緩めれば………その瞬間に自分が死ぬと分かっているからだ。
「これほどまでに死を実感した事は今まで無かったなッ!」
その叫びと共に急速反転するアウセンザイターだが、コックピットのモニターに機械や電子機器による補助は無く、ただただ外の光景を写しているだけだった。モニターに回すエネルギーすら惜しんだレーツェルはモニターやレーダーへのエネルギーバイパスをカットし、その全てを動力に回していた。
「くっ!! まだだッ!!」
操縦は全て自らの勘……いや動物的な本能だけに任せていた。Dis・メタルビースト・アルタードの圧倒的な攻撃力と、その面攻撃を見れば動きが硬直する。叩きつけられる殺気を感じ取るレーツェルによってアウセンザイターは、Dis・メタルビースト・アルタードの嵐のような攻撃を全て紙一重で回避し続けていた。
「ふっ、少しは武蔵君は近づいたという事かッ!!」
回避と共に放たれたランツェ・カノーネの銃弾がDis・メタルビースト・アルタードに直撃する。だがダメージは軽微でその傷も一瞬の内に消え去る……その絶望的な光景にも、レーツェルは口元に浮かべた笑みを消す事は無かった。
「トロンベよッ!! 今が駆け抜ける時ッ!!」
武蔵が出来て、自分が出来ない訳がない。一種の思い込みではあるが、Dis・メタルビースト・アルタードと言う化物と対峙する事で研ぎ澄まされた生存本能が、新西暦でもトップクラスの腕前を持つレーツェルの力を更に引き出した。
【シャアアッ!!!】
「シュルタープラッテッ!!!」
放たれたガウンジェノサイダーに向かって、アウセンザイターは肩のシュルタープラッテを投げると同時に最大速度で疾走する。
「ぐっ……ふ、ふふふ……この程度気にするまでもないッ!!」
パイロットの安全を守る重力装備もOFFにした事で襲ってくる加速のGで口から血が溢れるが、レーツェルの目は爛々と輝いていた。
『レーツェルッ!! 避けろよッ!!』
『悪いがお前が安全圏まで逃げるのを待つ余裕はない! 上手く避けるんだぞッ!!』
カーウァイとビアンの言葉と共に、弾雨と翡翠の雨がアウセンザイターとDis・メタルビースト・アルタードに向かって降り注いだ。
「……はは……はははははははッ!!!!」
レーツェルの笑い声がアウセンザイターから響き、誰もがギョッとするが続く光景に言葉すら失った。
「見える、ああ、そうだ。見えるぞッ!!! 私にも見えるッ!」
スパイラルゲッタービームが雨のように降り注ぐ合間を漆黒の影が駆け抜け、銃声が響き渡る。レーツェルは安全圏に逃げるのではなく、危険区域で降り注ぐ攻撃の雨をまるで子供が雨の中合羽を着て跳ね回るように……悲壮感も、危機感も感じさせず、むしろ楽しんでいるような素振りでアウセンザイターは一発の被弾は愚か、機体に掠める事無く弾雨を潜り抜けた。
「感謝する。お前のお蔭で私は更に1歩前に進めた」
【キシャアアアアアッ!!!】
Dis・メタルビースト・アルタードの前でランツェ・カノーネを構えるアウセンザイターに赤黒く光るDis・メタルビースト・アルタードの拳が振り下ろされようとした瞬間……Dis・メタルビースト・アルタードの左肩が消し飛んだ。
「これは礼だ。とっておいてくれ」
【ギ、ギギャアアアアアアッ!?!?】
Dis・メタルビースト・アルタードの苦悶の絶叫が響き渡り、アウセンザイターの漆黒が所々鮮やかな翡翠の色へと変わり、カメラアイも翡翠色に輝いている。
『ゲッター炉心の力を引き出す事に成功したのか!?』
その現象は武蔵の乗るゲッターロボやゲッターD2の本気の姿と同じであり、ビアンの目にはレーツェルがゲッター線の力を引き出す事に成功したように見えていた。
『ビアン博士、そう思うのは危険かと、今のレーツェルはどうも様子がおかしい』
レーツェルは好戦的では在るが無謀な男ではない、だが今のレーツェルは命の危機を楽しんでいるようにも見える。
『……まさか、取り込まれかけているのか……ッ』
ゲッター線は意志を持つエネルギー……その意志にレーツェルが取り込まれかけているかもしれないと言う可能性がビアンの脳裏を過ぎった。
『ビアン所長、あの馬鹿は私が正気に戻す。イングラム、陣形を崩す事になるがフォローを頼む』
『了解した。お前の言葉が1番レーツェルに届くだろう、シュウ。お前も何時までもサボってないで少しは協力しろ』
『ククク。サボっているとは心外ですね、私は私なりに動いていましたよ。このようにね』
Dis・メタルビースト・アルタードの周囲に漆黒の穴が無数に現れ、そこから放たれた光線が一斉にDis・メタルビースト・アルタードに襲い掛かる。
【ギギィッ!?】
エネルギーを蓄えていたグランゾンの放ったワームスマッシャーはDis・メタルビースト・アルタードの念動フィールドを破り、Dis・メタルビースト・アルタードにダメージを蓄積させる。
『やりすぎですわよッ!? そんなにしたら』
『ククク、心配ご無用ですよ、シャイン王女』
大きなダメージを受けたDis・メタルビースト・アルタードの反撃を予知したのかシャインがシュウに警告する。だがシュウは問題ないと余裕を持った声で返事を返す。
『カーウァイ大佐、心配ありませんよ。陣形を崩す必要はありません……なんせ、この一撃でレーツェルは正気に戻るのですからね』
『待て、何をするつもりだ』
『ククク、こういうことですよ』
咆哮と共にDis・メタルビースト・アルタードが全ての武器を解放し、周囲への無差別攻撃を放った。
『避けられない』
『死ぬッ!! これは死ぬ……え?』
『え? きゃああッ!?』
Dis・メタルビースト・アルタードフルバーストの圧倒的な破壊の嵐に飲まれる前にグランゾンが展開したワームホールに次々と機体が飲み込まれるが、アウセンザイターだけは地力でフルバーストを避ける事になった。
『ククク、どうですか? レーツェル、目は覚めましたか?』
自身もワームホールに隠れフルバーストをやり過ごしたシュウの声がアウセンザイターのコックピットに響いた。
「む……何があったんだ?」
『ゲッター線に取り込まれかけていたのですよ。強い意志を持たなければゲッター線に取り込まれる、この状況で貴方まで敵に回すのはさすがに厳しいのでね。少々手荒いですが正気に戻ってもらいました』
少々手荒いとシュウは言ったが、フルバーストの破壊の痕を見てレーツェルは苦笑いを浮かべた。途中で正気に戻らなかったら確実に死んでいたと確信するだけの破壊の痕にそれだけ暴走していたのかと反省した。
「もう大丈夫だ。すまなかった」
『いえ大丈夫ですよ、それに貴方のお蔭で大分弱らせる事が出来ましたしね』
逃げ回るアウセンザイターに向かって全ての武装を解き放った事でDis・メタルビースト・アルタードは自らも傷つける事になった。
【ゴハア……グルルルゥ】
リュウセイ達が見た自己崩壊がフルバーストを使ったことで表面化したDis・メタルビースト・アルタードはその動きを変える。攻撃から防御へ、インベーダー達の親へと至る為に身体を更に変質させ始める。
『攻撃だッ! Dis・メタルビースト・アルタードをインベーダーの親にしてはならないッ! 弱体化しているこの好機を逃すなッ!!』
身体の崩壊、そして念動フィールドの弱体化。この好機を逃せばDis・メタルビースト・アルタードを倒せない……だがDis・メタルビースト・アルタードもまた己の命が潰えるのを理解しているが、自分を此処まで追詰めた憎い相手を前に只で死ぬつもりはなく、血走った目でSRX達を睨みつけ、血の気も凍るような凄まじい咆哮をあげる。
『気をつけろ、弱ってはいるがまだあいつは戦える状態に在る。今のDis・メタルビースト・アルタードは手負いの獣だ、手痛い反撃を貰いかねない、警戒を怠るな』
イングラムの言う通り崩壊が始り、念動フィールドも弱体化した。万全の状態よりかは弱っている、だが弱っているからこそDis・メタルビースト・アルタードの危険度は爆発的に高まる。そう、正しく今のDis・メタルビースト・アルタードは手負いの獣その物であり、口から涎をたらし、血走った目で睨みつけてくるその姿にリュウセイ達は思わず身震いしながらも、Dis・メタルビースト・アルタードをインベーダーの親に進化させるわけにはいかないと恐怖を押し殺し、Dis・メタルビースト・アルタードとの最後の戦いに挑もうとした時だった。
『よお、俺も混ぜろよ』
『くふふふ、敵も敵は味方と言う……くふふ、しばし共闘といこうぞ?』
『それとも我らとも戦うと言うのならば……』
『きゅーちゃんは構わないけどねー♪ どうするう?』
ゲッター1を筆頭に地響きを立てて現れる共行王、鯀鬼皇、窮奇王からの共闘を持ちかけてくる言葉に、テツヤ達は驚きの余り眼を見開き、言葉を失うのだった……。
第221話 堕ちた戦神 その6へ続く
今回のシナリオはゲーム的には回避の高いユニットやひらめきを駆使し、Dis・メタルビースト・アルタードのエネルギーと弾数装備を減らすと言う感じで考えております。とにかく攻撃して反撃を回避してエネルギーを消耗させ、弱った所をたたくスパロボ在るあるですね。
次回は決着まで書いて行こうと思いますので、どんな展開が待っているのか楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
真ゲアタックを狙って1周してきました。
ハイパービームサーベル(ZZ)
ハイメガキャノン(ZZ)
真ゲアタック(2)
アタック3じゃなくてなんで2が出るかなあ……?
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い