第221話 堕ちた戦神 その6
クロガネのブリッジに映し出される光景にテツヤは驚きに目を見開いた……目の前で繰り広げられている光景は、絶対に、ありえない物だったからだ。
「こんな事がありえるのか……百鬼帝国の超機人は、悪ではないのか……ッ」
共行王、饕餮鬼皇、鯀鬼皇、そして窮奇王……悪の超機人として、何度も対峙した共行王、圧倒的なカリスマを見せ付けた鯀鬼皇、アーチボルドを救い出した窮奇王……百鬼帝国の協力者だと思っていた超機人が3体も共にDis・メタルビースト・アルタードと戦っている。
『くふふふ、小童共。あまりに無茶をするものではないぞ?』
人型になった共行王が扇子を振ると、フェアリオン達を水のヴェールが包み込んだ。
『なんで助けるのですか……?』
『助ける? くふふふふ、そんなつもりはないが……お前らはアンサズ達よりも賢く、愛い。可愛い者が無闇に死ぬのを良しとせんだけよ、くふふふふ』
怪しい笑みを浮かべている共行王だが、その言葉の中には確かに慈しみの色が感じられた。
『どうなってんだ……? オウカ姉さん、どうすれば良いんだよ?』
『助けてくれると言うのならば無闇に警戒する物ではありません、それにこの中からでも攻撃が出来るのならば、助けてもらうとしましょう。私達を潰したりはしないのでしょう?』
『くふふふ、無論じゃ。じゃが手助けは此処まで、抗って見せよ人間よ。容易に助けを請わず、己の力を見せてみよ』
そう言うと、共行王は岩に腰掛けて扇子で己を扇ぎ、機械の顔でありながら楽しそうな表情を浮かべてみせる。
『やれやれ、気紛れな奴は困る。あのような害悪、存在を許すわけには行くまい』
鯀鬼皇はゲッターD2と戦った獣人の姿になり、地面から伸びてくる触手をその鋭い爪で引き裂き、札を貼り付けて燃やし尽くす。
『お前ら何がしたいんだ。俺達と戦ったと思ったら、こうやって助けてくれて……何がしたいんだよッ!』
『タスク止めなさいッ!』
『ほう、強念者か……』
レオナの制止は遅く、鯀鬼皇の視線がジガンスクード・ドゥロとヴァルガリオンズィーガーを射抜いた。心まで見通すようなその視線に、タスクとレオナは揃って引き攣った悲鳴を上げた。
『そう怖がるでない。我は神、そして真なる皇である。地球は美しい星ぞ、それを食いつぶすような害獣を自ら駆除するのも、また皇の役目である』
『きゃはははッ!! 相変わらず堅物だねぇッ!! もっと楽しんだら良いじゃんッ!!』
『楽しみを優先で何もかもぶち壊すお前に言われたくはないな』
『にゃははははッ! そうかもねーッ!! にっしし、でもきゅーちゃんはきゅーちゃんなりに頑張るよー』
残像を残しながら暴れまわる窮奇王にやれやれと言う素振りで肩を竦める饕餮鬼皇は、どこか人間らしさを感じさせる。
「大尉! 各機からどうすれば良いのか指示を求めています! 超機人も敵と考えてよろしいのでしょうか!?」
エイタからリュウセイ達が指示を仰いでいると報告され、テツヤは一瞬の迷いの後指示を出した。
「超機人はこの場では味方と考える! 良いか、攻撃を当てるなよッ!」
Dis・メタルビースト・アルタードと超機人を同時に相手取るのは不可能だ。突然の乱入者ではあるが……味方と考えればこれほど頼もしい相手なのもまた事実。下手に攻撃し敵に回すよりも、敵の敵は味方と、互いに腹に一物を抱えながらでも共に戦うのが最善策だとテツヤは判断した。
(ダイテツ艦長もきっとそうする)
艦長として、友軍を生存をさせる事が第一である。確かに超機人の存在は脅威だ。だがそれ以上に、Dis・メタルビースト・アルタードは危険な存在だ。敵と手を組んででも倒す必要がある。
「良いか!Dis・メタルビースト・アルタードを開花させるなッ!!なんとしてもこの場で撃破するんだッ!」
Dis・メタルビースト・アルタードが親となれば、今までの比ではない数のインベーダーが発生する。それだけはなんとしても阻止しなければならないと、テツヤの指示がクロガネから発せられるのだった……。
あまりに強大な己の力を、Dis・メタルビースト・アルタードは完全に持て余していた。己の望む望まないは別にして、インベーダーの細胞は進化を求める。だがこれ以上進化すれば己が耐え切れずに崩壊する事を悟ったDis・メタルビースト・アルタードは、己の死を受け入れた。
【ゴガアアアッ!!!】
4つ這いになったDis・メタルビースト・アルタードのフェイスパーツが紅く輝き、ガウンジェノサイダーを乱射する。凄まじい速度で乱射されているガウンジェノサイダーだが、その破壊力は戦艦の主砲を大きく上回る代物だ。
『ちいっ! シュウッ!!』
『やれやれ、一々言われなくとも分かっていますとも』
R-SWORD・シーツリヒターのビットが三角形の形を作り、自身との間にバリアを作る。そしてその上にグランゾンが重力波でコーティングし、強固なバリアを作り出すが……。
『30秒も耐えられんかッ!!』
『ククク……流石のグランゾンでもこの破壊力は持て余しますね』
R-SWORD・シーツリヒターとグランゾンの合わせ技でも20秒耐えるのがやっとであり、激しい破砕音と共にビットが砕け散る。
『フォリア、ヒューゴッ!!』
2人の名前を叫び盾を構えるガーリオンの背中をヒュッケバイン・MK-Ⅲとゲシュペンスト・MK-Ⅲが支える。
『ぬううああああッ!!!』
『くそったれッ!! 威力を殺してこれかよッ!』
『文句を言ってる暇があったら踏ん張れッ!!』
通常のPTとAMでは3機がかりでやっと防げるレベルの凄まじい威力のガウンジェノサイダーの連射には、流石のカーウァイも顔を歪めるが……。
『……ふんッ!!! 防げないのならば切り払えば良い、簡単な理屈だ。眩しいだけの攻撃など鬱陶しいだけだ』
防ぎ切れないのならば切り払えば良いと、参式斬艦刀でガウンジェノサイダーを切り払ったカーウァイは………ガウンジェノサイダーが眩しくて顔を歪めていただけで、攻撃を恐れていたわけでは無かった。
『流石ゼンガー少佐が隊長というだけはあるわね』
『……普通にありえない光景だと思うんだけど……』
規格外と称される教導隊だが、1番の規格外は隊長であるカーウァイ本人だったりする。
『おい、ゼオラ見たか!?』
『見たッ!! オウカ姉様はッ!?』
『私も見ましたよッ!!』
『やっぱりリュウセイの言う通りだったッ!!』
進化の袋小路に入りかけているDis・メタルビースト・アルタードは、攻撃の度に身体の崩壊が見えていた。ガウンジェノサイダーの乱射と言うのはDis・メタルビースト・アルタードにも大きな負担を掛けていたのだろう……上空から攻撃を仕掛けていたアラド達は、一瞬左腕が胴体から離れる瞬間を目にしていた。リュウセイが告げた通り、Dis・メタルビースト・アルタードの自己崩壊は、より攻撃に特化した今の姿に変化した事でごまかしていたのが顕著になったのだ。
『今なら『駄目ですわッ!』……シャイン王女』
今なら攻勢に出れると言おうとしたアラドの言葉を、シャインの怒声が飲み込んだ。
『駄目ですわ、いまあいつはとても餓えている。下手に近づいたら喰われますわ』
より進化する為に、あるいは生存する為にDis・メタルビースト・アルタードはエネルギーを求めているのだとシャインは警告する。
『そこまで警戒しないと駄目なの?』
『もうすぐ分かりますわ。それを見れば突っ込める等と言えないと思います』
ゼオラの言葉にシャインがそう返事を返した次の瞬間、凄まじい咆哮にゼオラ達は身を竦め、目の前の光景に目を見開いた。
『く、食われてる……』
『嘘だろ……』
Dis・メタルビースト・アルタードの胸部に巨大な口が現れ、窮奇王の腹に喰らいついていた。
『がぁッ!? てめえふざけんなよッ!!!』
【ギシャアッ!!】
もがいて脱出しようとする窮奇王を逃がすものかと両腕で押さえつけ、更に口を大きく広げ胴体を噛み千切ろうとするDis・メタルビースト・アルタードの顔面を、白い光が上に弾き飛ばした。
『何してるッ! 早く逃げろッ!』
『わお! 虎ちゃんかっこいい♪ ありがとねーッ!!』
高速で踏み込んだ虎龍王の右拳がアッパーの要領でDis・メタルビースト・アルタードの顔面を跳ね上げ、その隙に窮奇王が離脱する。噛み付かれていた部位は完全に抉り取られ、血液のような物が大地を真紅に染め上げるのを見て、シャインの制止を振り切って突撃していれば自分もああなっていたとアラドの顔から血の気が引いた。
『共行王……へるぷー』
『馬鹿やってるからよ、もう少し頭を使うんじゃな』
『あーい』
共行王が扇子を振るい、窮奇王に集まった水がその傷を癒す。傷が治ると窮奇王は、再び大地と空を縦横無尽に駆け巡る。
『本当聞いてないの、あの馬鹿娘は……。そこの人の子、悪い事は言わん、離れて援護をしておるが良かろう。お主らでは食われた瞬間に終わりぞ?』
共行王の言葉はからかうような口調だが、その声色にはゼオラ達の身を案ずる響きがあった。窮奇王が食われかけている光景を目の当たりにし自分達ではこの戦いには割り込めないと理解し、支援に徹する事にしたオウカ達だが、どうしても共行王に尋ねたい事があった。
『貴女は何故、百鬼帝国に居るのですか?』
龍王鬼と虎王鬼は鬼ではあるが人間に近い、そんな龍王鬼達を近くで見てきたオウカには……どうしても、共行王が悪には見えなかった。
『恩義と報復の為じゃ、そうじゃのお……』
開いていた扇子を閉じ掌に叩きつけ大きな音を響かせた共行王は楽しそうな笑みを浮かべ、指を3本上げた。
『1つ進化の使徒との決着、2つ人間の可能性を見たい、3つバラルへの報復。くふふふ、それさえ成し遂げれれば愛い子らに協力するも吝かではないぞ? のう? 鯀鬼皇?』
『足りぬ、我を崇拝する民と国を求めるぞ』
『はっははははッ!! そうかそうか、それを忘れておったな!! くふふふ、分かったであろう? 我らは決して善き神ではない、だが神としての誇りも、矜持もある。そして決して話が分からぬわけではない……くふふ、後は己で考えよ。愛い子らよ』
神としての誇りも、矜持もある。そして決して話が分からぬわけではない……くふふ、後は己で考えよ。愛い子らよ』
水神である共行王はかつては獣の姿しか持たないが故に歪み、捻じ曲がった。だがこうして人の姿を得た事で正しい神性を手にした。水は全ての命に必要不可欠なものであり、生命は海から始まったと言われるように命の源である。つまり共行王の本質は女神、生命を育み、命を守る女神であるのだ。
『さぁさ、私に見せておくれ、人間の可能性をな』
人の姿を得た共行王が得たのは知性や理性だけではない、ブライにとっては想定外の母性と慈しみを得ていた。他の超機人とは異なる気性を得た共行王は、アラド達の戦いを穏やかな光を宿した瞳で見つめているのだった……。
竜馬の凄まじい咆哮と共に振り下ろされたゲッタートマホークがDis・メタルビースト・アルタードの右肩を斬り落とし、瞬間竜馬は舌打ちと共にゲッター1を後退させる。その直後、再生した右腕から放たれたハイパームデトネイターがゲッター1が立っていた場所を吹き飛ばし、巨大なクレーターを作り出した。
『くそがッ! 全然効いてねえぞッ!! おい、おっさんッ!! なんとかならねえのかッ!』
「私に言われても困るのだが……何故だ、何故ダメージが通らない」
破格の攻撃力を有しているゲッター1を主軸にすればDis・メタルビースト・アルタードを倒す事は不可能ではないとビアンは考えていたが、そのゲッター1と竜馬の攻撃ではDis・メタルビースト・アルタードにダメージを与えられない……いや、一時的に損傷を与えれるがほぼ即座に修復されてしまう。
『はぁッ!!』
【ギイイッ!! シャアアッ!!!】
ダイゼンガーの振るった斬艦刀はDis・メタルビースト・アルタードの伸ばした爪を斬り飛ばした。即座に回復されるようなダメージだが、確かにDis・メタルビースト・アルタードにダメージを与えている。
「何故だ、何故攻撃が通らない」
ゲシュペンスト・タイプSも、龍虎王も、アウセンザイターもそしてビアンの乗るゲッターVもダメージを与える事が出来る。そして竜馬とゲッター1の一撃がDis・メタルビースト・アルタードに大打撃を与え、そこから攻勢に出たのに何故今ダメージを与えられないとビアンが必死に考えている中………クスハの何気ない言葉が、ビアンの耳を打った。
『あれ? おかしいな、今ゲッター1の腕が見えなかった』
『ちゃんとゲッター1の手足はあるぞ? クスハ、1度虎龍王に変ろう。精神力を使いすぎたのかもしれない』
ブリットがクスハの疲労を疑い龍虎王から虎龍王に変わろうと話す中、ビアンの目はゲッタートマホークの存在感が急速に薄れているのを見た。
「まさか……」
竜馬とゲッター1はゲッター線の光から飛び出して来た異邦人だ。条件自体は武蔵と同じだが、何かが決定的に違うのかもしれないと考えた所で、ビアンはその決定的な違いに気付いたのだ。
(試してみる価値はある。正攻法では勝てないのだから)
万全な準備を整えたつもりだが、それでもまだDis・メタルビースト・アルタードには届いていなかった。出来れば正攻法で勝利し、ゲッターと武蔵がいなくても戦えるのだと自信をつけさせたいとビアンは考えていたが、それが無理だと悟ると即座に別の作戦へと戦法を切り替える決断をした。
「竜馬ッ! ゲッターの状態を常に確認するんだ!」
『あん? んだよ、急に』
「良く見ろと言っているんだッ! 君もゲッターパイロットなら分かる筈だッ! カーウァイ大佐ッ! バリソン! 陣形を変えるッ! カーウァイ大佐と私、それとゼンガーがセンターだッ! バリソンとレーツェル、それにシュウはセンターのフォローだッ! クスハ君悪いが君は龍虎王のままだ! 札を使って周囲の気配を探ってくれッ! リュウセイ達とイングラムとヴィレッタにトドメを任せるッ! 状況をしっかり把握してくれッ! ゲッター線の反応が強くなったらすぐに指示を出すんだッ! 後3分、後3分でこのデカブツを消滅させるぞッ!」
竜馬にゲッターロボの状態を確認しろと叫び、続け様に指示を出したビアンは後3分でDis・メタルビースト・アルタードを倒して見せると叫んだ。
『そ、そんな事出来るのか!?』
「出来なければ言わんッ! 竜馬ッ! 状態は分かったか!」
『はっ、おっさんッ! あんた早乙女の爺に似てやがるぜッ! 大丈夫だ、もう足は引っ張らねえッ!』
「良しッ! カーウァイ大佐ッ! 当らなくても良いッ! ゲッター線で攻撃を続けてくれッ! ゼンガーもだッ!!』
そう指示を出すと同時にミサイルマシンガンをDis・メタルビースト・アルタードの周囲に向かって撃ち込みはじめるゲッターV。ミサイルが大地に着弾しゲッター線の光が溢れる。
【キシャアアアッ!!】
それを吸収したDis・メタルビースト・アルタードが歓喜の叫びを上げ、崩壊し掛けていた身体が急速に再生を始める。
『ビアン博士ッ! ゲッター線を吸収されています、これで倒す事など……』
『いや! ゼンガー、これで良いッ! レーツェルお前もゲッター線カートリッジを使えッ! 間違えても当てるなよ』
カーウァイからも指示が飛ぶが、絶対に当てるなと付け加えられる。何故Dis・メタルビースト・アルタードがゲッター線を吸収しているのに攻撃を続けろと、しかも当てるなと言われて困惑するゼンガーにレーツェルは2人の意図を読み取った。
『ゼンガー! ビアン総帥とカーウァイ大佐の言う通りにしろッ!』
『しかし!』
『大丈夫だッ! すぐに何をしようとしているのか分かるッ!!』
アウセンザイターも地面を狙ってゲッタービームを放ち、その姿に困惑しながらもゼンガーも斬艦刀・電光石火を地面に向かって放つ。
【キシャアアアアアッ!!!】
『おいおい……本当に大丈夫なのか』
『ククク、大丈夫ですよ。それよりも貴方は言われた事をやるべきだとは思いませんか? バリソン』
『わあってるよっ!! くそ、こんなのが効果があるのかよ!』
シュウの嫌味に顔を歪めながらバリソンはグルンガストを操り、ゲッター線爆雷を大地に向かって投げる。次々とゲッター線の攻撃が台地に向かって放たれ、周囲のゲッター線濃度を引き上げる。
『だ、大丈夫なのかな……』
『……お、俺は駄目だと思う』
『ビアン博士だから大丈夫よ……うん多分大丈夫』
どんどん活性化し、装甲の隙間からインベーダー細胞が溢れ出し、更なる変異を始めるDis・メタルビースト・アルタードは最早アルタードの原型を完全に失い、巨大なインベーダーへと変貌を遂げようとしていた。
「来た、これだ。これを私は待っていたッ!」
周囲のゲッター線を吸収して細胞が活性化するDis・メタルビースト・アルタードを見て誰もが不安を覚え始めた頃……ビアンの待っていたと言う言葉と共に、その変化は突然現れた。
【ギ、ギギャアアッ!?】
苦しそうな呻き声と共に、Dis・メタルビースト・アルタードを覆っていたインベーダー細胞が白い煙を上げ始める。
『うげえ……なんだこれ』
『腐っている……? 一体何が起きているのですか……』
白い煙と共に触手とインベーダー細胞は急激に腐敗し、地面に落ちて肉片と共に周囲に飛び散る。
『再生する、早く』
『案ずるな。あれは最早再生する力など持たぬよ』
『あっは! 人間って面白いこと考えるなあ♪』
飛び散った細胞にそこから再生すると慌てるクスハに鯀鬼皇は心配無用だと告げ、獣神形態から胡坐をかいた超機人としての姿に戻る。
『オーバードーズだ。過度なゲッター線を与える事で無理矢理進化を促したのだ、急速な進化に細胞が耐え切れなくなったんだ』
レーツェルがDis・メタルビースト・アルタードに起きている現象――オーバードーズ現象だと説明する。これは簡単に言えば酒や薬物などの過剰摂取によって起きる一種の中毒症状で、厳密に言えばオーバードーズとは別の症状であるが、オーバードーズで例えるのが1番分かりやすいとレーツェルは判断したのだ。
「インベーダーは存在する為にゲッター線を必要とする。だが過度なゲッター線には耐え切れない、そして崩壊を始めているDis・メタルビースト・アルタードが高密度のゲッター線を吸収し続ければ、言うまでも無く限界は容易に訪れる。竜馬ッ!!」
『はっ! 言われなくても分かってるぜええッ!! うおりゃあああッ!!!』
【ギ、ギギャアアアアアアッ!?】
竜馬の咆哮と共に振るわれたゲッター線で作られた巨大なゲッタートマホークを受け止めるDis・メタルビースト・アルタードだが、すぐに苦悶の雄叫びを上げた。高密度のゲッター線にもう耐えるだけの余裕がDis・メタルビースト・アルタードには無かったのだ。そして、ビアンが気付いた竜馬と武蔵達の決定的な違い。
(恐らく彼は死んでいない、元の世界に、元の時間軸に戻されようとしているのだ)
武蔵、コウキ、ラドラの3人は旧西暦で1度死を迎えている。だが恐らく竜馬は生きたまま世界を放浪しているのだとビアンは考えた。そうなるとゲッター1と竜馬は幻に近い何かなのではないか?ゲッター線が一時的にその姿を模倣しているだけなのではないかと考えたのだ。ゲッター線を失えば存在感が薄くなり、元の時間に戻される。恐らく竜馬は武蔵と違いこの世界には長く滞在出来ないのだろう……だがこのタイミングで竜馬を失えば戦線は一気に崩れる。それを阻止する為に、そしてDis・メタルビースト・アルタードに強引に進化を促すためにゲッター線を周囲に撒き散らすと言う賭けにビアンは出た……そして勝利したのだ。
「後1分30秒ッ!! 攻勢に出るぞッ!! この好機を逃せば次はないッ!!」
Dis・メタルビースト・アルタードの適応力はインベーダーの中でも群を抜いている。今は対応出来ていないが、このオーバードーズに耐えられてしまえば手が付けられなくなる。これがDis・メタルビースト・アルタードを倒す最初で最後のチャンスだった。この好機を逃せば、確実にDis・メタルビースト・アルタードは親へと変化する。耐えればDis・メタルビースト・アルタードの勝ち、押し切ればビアン達人類の勝ち。地球の明暗を分ける、宇宙一長い1分30秒間の戦いの幕が切って落とされるのだった……。
R-1のコックピットの中に表示されているタイマーを見てリュウセイは驚いていた。ビアンの号令から15秒……まだ15秒しか経過していないのだ。
(なんて長い1分30秒なんだ……)
これほど1分30秒という時間を長くリュウセイは感じたことが無い……それほどまでに濃密な時間が流れていた。
『必殺! マグマヴァサールッ!!』
『ギガワイド……ブラスタアアアアアアッ!!!』
『ついでだッ!! こいつも持って行きやがれッ!!!』
龍虎王、ジガンスクード・ドゥロ、グルンガストの波状攻撃がDis・メタルビースト・アルタードへと迫る。
【シャアアッ!!】
腐り崩れ落ちているインベーダー細胞を無理に動かしマグマヴァサール、ギガワイドブラスター、ファイナルビームへの盾にするDis・メタルビースト・アルタード。今までは念動フィールドで防いでいたが、それすら出来ぬほどにDis・メタルビースト・アルタードは弱体化していた……己の肉片を盾にしてまで生き延びようと必死に足掻いていた。
『逃がさんッ!!!』
『地球をインベーダーで埋めつくさせんぞッ!!』
【ギャアアアアッ!!】
斬艦刀・電光石火、そしてランツェカノーネから放たれたゲッター線の輝きを伴った一撃にDis・メタルビースト・アルタードが凄まじい絶叫を上げる。だが……まだDis・メタルビースト・アルタードが倒れる気配は無かった。
【ガアアアアアアアッ!!!】
手負いの獣その物の咆哮を上げ、腐り落ちた肉片、そしてガウンジェノサイダーを乱射し、己に近づけさせまいとDis・メタルビースト・アルタードは抵抗を続けるが、その動きを見たリュウセイはヴィレッタに通信を繋げる。
「隊長」
『何リュウセイ?』
「準備をしてくれ、R-GUNの力が必要になると思う」
『ふっ、分かったわ。でも2発目はないわよ? R-GUNもSRXも、そして本来の威力も出せるかどうか』
ここまでの戦いでSRXもR-GUNも消耗している。理論上の攻撃力を得れないかもしれないと言うヴィレッタにリュウセイは笑った。
「大丈夫だ。勝算はある……でも、それを説明してる時間はねぇッ! 隊長行くぜッ!」
SRXのモニターに映る光景を見てリュウセイはペダルを強く踏み込んだ。
『良い加減にくたばりやがれえええええッ!!!』
『これで終わりだッ!!』
ゲッタートマホークを両手で握ったゲッター1のフルスイングするとゲッタートマホークの切っ先から翡翠のエネルギー刃が飛び出し、その後を追うようにゲシュペンスト・タイプSのブラスターキャノンが放たれる。
【ゴガアアアッ!!!!】
『何ッ!? くそがッ!』
『ぐうっ!? どこまでもしぶといなッ!』
避ける事も出来なければ防ぐ事も出来ないと判断したのか、Dis・メタルビースト・アルタードは信じられない行動に出た。脚部を自ら切り離しゲッタートマホークとブラスターキャノンの盾にしたのだ。そして切り離された脚部が爆発する事で、追撃に出ようとしたゲッター1とゲシュペンスト・タイプSの出足を潰した。
『ククク、足を失ってどうやってこれを避けるのですかね?』
足を失い機動力を大幅に失ったDis・メタルビースト・アルタードの周囲に漆黒の穴が開き、360度全方位のワームスマッシャーの一斉射撃が叩き込まれる。
【ギ、ギガアアアアアッ!!!】
咆哮と共に作られた球状の念動フィールドがワームスマッシャーを防いだ。
『それも何時までも……クッ! この私がまさか獣風情に出し抜かれるとはッ!!』
Dis・メタルビースト・アルタードの脚部……R-3に当る部位が何時の間にか切り離され、グランゾンの背後に組み付いて自爆し、グランゾンが膝をついた。
【キッシャアアアアアアッ!!!】
勝利を確信したDis・メタルビースト・アルタードの咆哮と共に、左腕からメタルジェノサイダーモードのR-GUNが姿を見せる。
「そう来ると思ったぜッ!! 隊長ッ! ライッ! アヤ、マイッ!!」
『T-LINKフルコンタクトッ! メタルジェノサイダーモード起動ッ!』
『念動フィールドで銃身固定、及び保護完了! ライッ!!』
念動力を持たないヴィレッタの変わりにアヤが遠隔操作でメタルジェノサイダーモードを起動し、マイが念動フィールドによってメタルジェノサイダーモードの銃身を保護し、トロニウムエンジンの出力を最大にしようとしたライの目の前が赤一色に染め上げられる。
『トロニウムエンジン……くっ! 駄目だッ! 出力は80%だぞ、リュウセイッ!!』
今までの戦いのダメージ、そしてエネルギー残量では十分な破壊力は期待出来ないとライが警告するがリュウセイは既にトリガーに指を掛けていた。
「そいつで十分だッ! 行くぜッ!! 天上天下……一撃必殺砲ッ!!!」
【ゴガアアアアアアッ!!】
リュウセイとDis・メタルビースト・アルタードの叫びが重なり、鏡合せのように放たれた一撃必殺砲がぶつかり合いSRXとDis・メタルビースト・アルタードの中間地点で凄まじい大爆発を引き起こし、凄まじい爆風がSRXの姿を覆い隠した。
【ウォオオオオオッ!!!】
そしてDis・メタルビースト・アルタードの勝利を確信した咆哮が響く中……爆煙の中でイングラムとリュウセイの声が重なった。
『「テトラクテュスグラマトンッ!!」』
【ウルラアアアアアアアッ!!】
右腕からR-SWORDを作り出し、R-GUN、そしてR-SWORDと融合し親へと変貌しようとしたDis・メタルビースト・アルタードの前に爆煙を突き抜けてきたSRX……ではなく、R-SWORD・シーツリヒターとSRXが融合した姿であるDiSRXがメタルザンバーモードのR-SWORDを携えて、背中の黒翼を羽ばたかせ一気にDis・メタルビースト・アルタードとの距離を詰めようとする。が、それよりも早くメタルビースト・アルタードの両手から赤黒いドミニオンボールが放たれる。
『リュウセイ! 無茶よ! 1度体勢を立て直しなさいッ!』
『隊長の言う通りよ! 無理に突っ込んでは駄目ッ!!』
ヴィレッタとアヤの警告が飛ぶがリュウセイはそれを無視してペダルを強く踏み込み、DiSRXが翼を羽ばたかせ更に加速する。
『リュウ!?』
『アヤ、大丈夫だ。リュウは大丈夫、あいつは大嫌いだけど……リュウを助けてくれる。全くむかつく奴だ、1番良いタイミングで割り込んできた』
『マイ……何を……うっ!?』
マイの口調が僅かに変わり、意味の分からない事を言うマイにアヤがどういうことだと尋ねようとすると凄まじい頭痛がアヤを……いや、アヤだけではなくブリットやクスハ達を襲った。
『なんだこれ……ッ!?』
『くうっ!?』
『うおっ……ッ!?』
『こ、これは……きついですわね』
念動力者が口々に呻き声を上げ、リュウセイもその強烈な感応に顔を歪めながらも、その口元は微笑んでいた。
「頼むぜ、レトゥーラ」
『……分かった』
返事はないと思っていたリュウセイに耳に小さな鈴を転がすような少女の声が届き、赤い念動力の光がDis・メタルビースト・アルタードを遙か上空から貫いた。
【ギ、ギヤアアアアアアッ!?】
想定外の強烈な一撃にDis・メタルビースト・アルタードは絶叫を響かせ、放たれたドミニオンボールはダメージによってコントロール不能となり、DiSRXからはなれた場所で炸裂する。
『ズィーリアスッ!?』
『なんであいつがッ』
上空で長大のライフルを構えているズィーリアスの姿にラトゥーニ達が気付くとズィーリアスは巡航形態に変形し、赤黒い光の筋を残していずこかへと飛び去った。
ズィーリアスの攻撃を受けたDis・メタルビースト・アルタードはよろめきながらもその闘争心に従い迎撃に出ようとしたが……それよりもDiSRXが距離を詰めるほうが早かった。
「天上天下念動次元斬ッ!!!!」
【ギ、ギギャアアアアアアッ!?!?】
眩いまでに輝く翡翠の刃がDis・メタルビースト・アルタードを両断する。旧西暦から幾度と無く立ち塞がった脅威であるメタルビースト・SRX、そしてDis・メタルビースト・アルタードは断末魔の咆哮と共に爆発の中へと消え去るのだった……。
第222話 堕ちた戦神 その7へ続く
世界最後の日編、OG2序と幾重にも渡り武蔵達の前に立ち塞がったメタルビーストSRXは今回で撃破と相成りました。R-GUN、R-SWORDとの連続合体攻撃はやってみたかったので、トドメの一撃として採用してみました。次回で堕ちた戦神の話は終わりで、アースクレイドル攻略戦に向けて少しインターバルをやって見たいと思います、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
-
サイドまたは視点は必要
-
今のままで良い