進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第223話 新たなる力 その1

第223話 新たなる力 その1

 

武蔵、コウキ、ラドラの3人の奮闘によってムーンクレイドルの奪還はセレヴィス奪還から6時間後に成されていた。メキボスが残したバイオロイドの制御装置はムーンクレイドルを制圧していたバイオロイドの3割にしか効果が無く、残りの7割は鬼に変異して武蔵達に襲いかかったのだが……。

 

「……映像越しでも見るんじゃなかった」

 

「ですね……」

 

カチーナを始めとする女性陣に暫く消えないトラウマを残す惨劇が繰り広げられたりしたが……ムーンクレイドル、セレヴィスと月面の重要拠点の奪還にレフィーナ達は成功し、マオ社とムーンクレイドルの設備を使い急ピッチで新型機、あるいは改修機の製造に取り掛かっていた……。

 

「ふう……」

 

ムーンクレイドルの格納庫に着陸する漆黒の準特機のコックピットからギリアムが姿を見せ、エアロックが作動したのを確認してからヘルメットを外して大きく息を吐いた。

 

「XXの調子はどうでしょうか? ギリアム少佐」

 

ハンディPCを手にマリオンがギリアムにXXの開発コードを与えられた強化外骨格の感想を求める。ゲシュペンストシグ、アルトアイゼン・ギーガなどのゲシュペンストに装着するタイプのアーマーのデータを元にテスラ研で開発されたXXユニットは紛れも無く新西暦では最高の装備であり、マリオンを始めとした開発チームは自信満々と言う様子だったが……ギリアムは首を左右に振った。

 

「駄目だな、俺の求める基準には全く届いていない。もう1度調整を加えて欲しい」

 

「まだですと? ギリアム少佐、これで何回目か分かって言っているのですか?」

 

整備班達が崩れ落ちる中マリオンが鋭い視線をギリアムに向け詰め寄る。だがギリアムはそんなマリオンを全く気に留めずXXユニットを見上げた。

 

「機動力と防御力をもう少し上げて欲しい、それと追加ユニットはどうなっている?」

 

ギリアムの言葉にマリオンは深い深い溜息を吐いて、ハンディPCのデータを消去した。

 

「完全に貴方の設計に合わせろと……そういうことですわね」

 

「ああ。その通りだ、俺の事を考えてくれているのはありがたいが……XXユニットは必要としていない、俺が必要としているXNユニットだ」

 

XXユニットはギリアムがテスラ研に託したXNユニットのデータを基に作成された言うなればXNガイストの廉価版だ。シグユニットやギーガユニットのような機体の一部を覆う装甲ではなく、ほぼ全身装甲で言うならばPTに着させる全身甲冑のような物である。装甲にも小型化されたジェネレーターを搭載し総出力を上昇させ、上昇した出力を前提にした高機動、高火力をPTに与えると言う開発コンセプトで、安定した立ち回りとPTでありながら特機のような戦闘が可能となる強化装備だが、ギリアムが求めたのは一点突破の突撃力とそれを支える防御力、突撃後の殲滅を可能とする攻撃力を兼ね備えた物であり、安定を求めたXXユニットはギリアムには不要の物だった。

 

「アーマーによる機体の手足の巨大化、手足と比べるとやや小型の胴体部……PTというよりかは戦闘機にPTの上半身をくっつけたようなものが良いとは変わっていますわね?」

 

「変形機構を組み込む為の機体各所の巨大化だ。それに百鬼獣やインベーダーと戦うならば汎用性よりも一芸特化の方が良い」

 

汎用性を高めた所でインベーダーを倒す火力が無ければ反撃で落とされる。落とされるで済めば良いが寄生される可能性もある。超常の存在と戦うのに必要なのは高火力・そして高い防御力と機動力だ。

 

「時代に逆行してるネッ! でもマリーシショーとラルちゃんにはやりやすいヨー」

 

「そうですわね。後で文句を言われても聞きませんわよ?」

 

「自分で頼んだ事に文句は言わないさ、よろしく頼む」

 

言葉で確認こそ取っているという体を取っているがマリオンとラルトスからすればXXユニットは面白い物ではなかったのだろう。ギリアムの言質を取ったと目を輝かせているのがギリアムにはすぐに分かった。

 

「これでシャチョーの指示は全部クリアしたヨ! やーやー途中でこれで良いって言われたら焦ったネッ!」

 

「そうですわね、とにかくギリアム少佐からの許可は得ました。後は」

 

「ヒャッハーッ!! 好き勝手やる時間だぜッ!!」

 

「ふううッ!! 盛り上がってきたぜッ!!!」

 

「資材を急げッ!! 間にあわなくなっても知らんぞー!!」

 

「「「ヤーッ!!!!」」」

 

だから格納庫を後にした後から聞こえて来た奇声に足を止めたくとも、男に二言はないとギリアムは格納庫を後にしコウキとラドラの元へ向かうのだった……。

 

 

 

 

 

ギリアムが着艦した格納庫とは違う区画の格納庫では息も絶え絶えという様子でジャレッドとオーガストの2人が倒れこんでいた。

 

「軍人さんなのに体力無いことないですか?」

 

「ジャレッドは補欠、オーガストは病み上がりだからな……武蔵、お前から見てどうだ? これからもゲットマシンに乗れるか?」

 

バンと武蔵との訓練で完全にダウンしているジャレッド達を見て武蔵はうーんっと唸り、暫く考えた後に口を開いた。

 

「乗ってるだけなら、多分大丈夫なんじゃないですかね? ネオゲッターは大分優しい仕上がりみたいですし」

 

ネオゲッターロボはバン・ギリアム・武蔵、バン・カイ・武蔵、そしてラドラ・コウキ・武蔵の3人でそれぞれ操縦しているので武蔵はネオゲッターの乗り心地を優しいと評した。

 

「あ、あれで……?」

 

「他のゲッターロボはもっと荒々しいのか……」

 

とは言え新西暦の人間にはネオゲッターでもかなり厳しいのは事実であり、信じられないと言う様子でジャレッド達は呻いていた。

 

「もっと体力をつけなければ話にならないぞ、ゲッターロボの最大の攻撃である戦闘中のオープンゲットとゲッターチェンジが出来ないのではネオゲッターはただの特機と変わらん」

 

ただ武蔵と違ってコウキは2人に向かって厳しい言葉を投げかける。ルーキーと言う事で長い目で見ようとする武蔵とそんな時間はないと少しでも早くゲッターパイロットとして仕上げようとするコウキでは大きな隔たりがあった。

 

「乗れるだけでも大したもんじゃないか?」

 

「マサキ、リューネ、エキドナ、アイビス、スレイも乗れるのだぞ? それ所か正規の軍人なんだ。マサキ達よりも上で無ければ何をしてきたと言わざるを得んぞ」

 

コウキの言葉にジャレッド達は反論も出来ず黙り込み、武蔵はそんなジャレッド達をフォローしようにも本音を言えばコウキと同じであり、口を開いては閉じを繰り返し、1つ大きな溜息を吐いた。

 

「もっと体力と握力つけましょうか?」

 

そうして武蔵の口から出たのはジャレッド、オーガスト共に能力不足という言葉なのだった……。

 

「俺乗れるっても飛ばすのがやっとだぞ、武蔵」

 

「あたしもだよ」

 

走りこみにいくと言う2人を見送った後、顔に冷やしタオルを乗せて横になっていたマサキとリューネが身体を起こし、バン達に少し鋭い視線を向けながらジャレッド達に対して厳しすぎるのではないか? と問いかける。

 

「リューネ嬢。あの2人にはゲットマシンとゲッターロボしかないのです。ならばもっと死に物狂いでやってもらわなければなりません」

 

バンの言葉を2人は一瞬理解出来なかったのか呆然とした表情を浮かべる。するとコウキがバンの言葉に補足を加えた。

 

「ジャレッドはPT・AM適性が絶望的だ。下手をすればTDに入ったばかりのアイビス以下の腕前しかなく、オーガストはPTとAMは並だが幾ら鍛えても中々腕前が上がらない、悪運が強いのでまだ生きているが何時死んでいてもおかしくないほどに撃墜されているんだぞ?」

 

マサキにはサイバスターが、リューネにはヴァルシオーネがある。だがジャレッド達にはゲットマシンとゲッターロボしかないのだ。それなのに操縦もままならないのでは話にならないと言われ、マサキとリューネはコウキがジャレッド達に厳しく当る理由に納得した。

 

「俺達が口を挟む問題じゃないって事か」

 

「ごめんバン大佐、武蔵。余計な事言った」

 

「気にしてないぜ、まぁオイラも最初は全然ゲッターロボ操縦できなかったし、その内なんとかなるさ」

 

「その内じゃ遅いんだがな」

 

「もうちょっと歯に衣を着せて欲しいもんだな、ほら。マサキとリューネはそろそろ偵察の時間だろ? 準備した方が良いぜ」

 

コウキの厳しい言葉に武蔵はこまったように笑いながら、マサキとリューネに偵察の時間だぞと伝え、2人を格納庫から追い出した。

 

「実際問題かなりやばいよなあ」

 

「ああ。せめてゲッター2が使えればな」

 

「ネオゲッター1はエネルギーの消費が激しいからな」

 

ゲッターロボとネオゲッターでは1と2の役割が大きく違っている。ゲッター1、ゲッタードラゴン、ゲッターD2は実体武器と飛行能力、そしてゲッタービームによる高火力、そしてゲッター2、ライガーは機動力特化となっているがネオゲッター1は実体武装とミサイルで堅実なダメージを与えられ、プラズマサンダーと言う高火力の武装を有しているがゲッターロボと違いゲッター炉心による回復が望めないので連続で試用する事が出来ないという欠点がある。ネオゲッター2は飛行能力によるかく乱、ドリルだけではなくプラズマボムスを利用したプラズマソードとヒット&アウェイという個性がある、そしてゲッター3形態に関しては重装甲と凄まじいパワーと言う点で共通点があるがやはり出力不足は否めない。

 

「んー隼人は何でこんな風に設計したんだろうな」

 

「何か思惑があるのは間違いないが……分からんな」

 

ネオゲッター1と2で能力を変えた理由が必ずある。ネオゲッターはかなり拡張枠が開いているのだ……それはまるで。

 

「XXユニットやギーガユニットのようにネオゲッターには追加装備があるのかもしれねえな」

 

「ああ、俺もそう思うが……他に無かったのか?」

 

「いや、まだ分析中の資料がいくつもある。もしかするとその中にあるのかもしれん」

 

あえて未完成のままメガフロートの中にネオゲッターが安置されていたと武蔵達は感じているのだった……。

 

 

 

 

 

ラドラ達がいるムーンクレイドルの区画のハンガーには一切の機体の姿は無く、様々な資材が所狭しと転がっていた。

 

「ほう、これがマグマ原子炉……凄い構造だ。この熱はどうやって作り出しているのですか?」

 

新型を開発するとしてもその機体を十分に動かせる動力が無ければ宝の持ち腐れ、マオ社のスタッフ総出でマグマ原子炉、そしてプラズマボムスの製造を行なっており、その場にはラージの姿もあった。

 

「マグマ原子炉にはメカザウルスの臓器の一部が組み込まれていると言えば分かるか?」

 

マグマ原子炉の修理をしているラドラが振り返る事無く返事を返す。一瞬呆然とした様子のラージは次の瞬間にはマグマ原子炉から大きく後ずさった。

 

「い、生きてる?」

 

「ああ。そうだ、生きている。マグマ原子炉は生きているエンジンと言えるな、まぁお前の想像している物とは違うだろうが……このエンジンには意思がある。だから並みのパイロットでは操れないのさ」

 

そう笑うラドラは大粒の汗を流しながらマグマ原子炉のボルトを絞め終えると汗を拭いながら立ち上がった。

 

「何を固まっている。再稼働した際の熱に焼かれるつもりか?」

 

「あ。はい! 今行きます」

 

ラドラの言葉に我に帰ったラージはラドラの後を追って走り出し、ラウルとミズホが待っている防護室に駆け込む。

 

「ラージ、あんまりうろちょろしてると怒られるぞ」

 

「すいません、ラドラさん」

 

「構わん。気になるというのなら見せてやればいい、こいつはそういう人種だ。勝手にうろうろされるくらいなら目に見える所にいてくれた方がいい」

 

ラドラはそう笑うとマイクを手にし、格納庫全体に通信を入れる。

 

「これよりマグマ原子炉を3基稼働させる。作業員はただちに防護室へ向かえ、繰り返し、これよりマグマ原子炉を稼働させる」

 

その放送に作業をしていた作業員は区画を閉じる為のシャッターを下ろし、防護室へと走り出す。

 

「良し、3・2・1・0ッ!」

 

作業員が誰もいないのを確認した後にラドラがレバーを押し込むと凄まじい咆哮が格納庫に響き渡った。

 

「な、なんだ!? 今のは!?」

 

「メカザウルスの咆哮だ。マグマ原子炉は生きてるからな、寝ているのを叩き起こしたんだ、怒りもするだろうさ」

 

「い、生きて!? どんなエンジンなんですか!?」

 

マグマ原子炉をただのエンジンだと思っていたラウルとミズホが驚き、ラドラに説明を求める。

 

「旧西暦の遺産だ。説明しても理解出来ないだろうから凄まじい高熱を発し、それをエネルギーに転化するエンジンだと思え」

 

ラドラはぶっきらぼうにそう言うと防護室を出る、その後を追ってラージも出ようとしたが凄まじい熱に後ずさった。

 

「だ、大丈夫なんですか、まだ熱が」

 

「この程度で根を上げるほど柔じゃない。ただの人間じゃこの熱には耐えれん、大人しく待っていろ」

 

まるで自分が人間じゃないと言うラドラにラウル達は驚き目を見開いた。

 

「言っただろう? 旧西暦の遺産だと、お前達が別の世界からこの世界に来たように過去からこの時代に来た人間もいるということだ。呼ぶまで大人しくしていろ、焼け死にたくはないだろうからな」

 

そう言って出て行くラドラの背中を見ながらラウル達は椅子の上に腰を降ろした。

 

「俺達の世界よりもこの世界はやばい状況なんだな」

 

「そうみたいですね……」

 

ヒリュウ改にゲストとして滞在しているラウル達は手に入る範囲で情報を集めていたが、インベーダー、アインストだけではなく、因縁あるインスペクター、鬼、シャドウミラー、そして謎の第三勢力と自分達の滅びを待つだけの世界よりも酷いと言う感想を抱いた。

 

「エクサランスでは何の役にも立たないでしょうし、僕とミズホはメカニック。ラウルはそのお手伝いと言う事でヒリュウ改に居させてもらうのが最善でしょうね」

 

「ラージはただ見てろって言うのか?」

 

戦いを避けるような事を言うラージにラウルがそう問いかけるとラージは手にしていたバインダーに挟まれている紙をラウルへと差し出した。

 

「これは?」

 

「見てみれば分かりますよ、ミズホも目を通してください」

 

「私もですか? 分かりました」

 

ラージに促され、ラウルとミズホは2人で資料に目を通し始める。

 

「嘘だろ……ッ」

 

「こんなに差があるんですか……」

 

2人が目を通していたのはゲシュペンスト・MK-Ⅲ、そしてヒュッケバイン・MK-Ⅲのカタログスペックに始り、アルトアイゼン・リーゼやゲッターロボのデータを見て2人の顔は驚きから徐々に青褪める。

 

「わかったでしょう? 僕達は足手纏いなんですよ。エクサランスで戦闘に参加するなら完全戦闘用のフレームを作らない限りは役に立つのは難しいんです。これが現実なんですよ」

 

ラウルの性格を良く知るラージだからこそ駄目だと言っても戦いに出るであろうラウルの為にこの世界の標準的なPTとAMの性能をまず調べた。そして驚愕した、ノーマルのPTですらほぼほぼエクサランスと同程度の性能であり、エース級のカスタマイズ機にいたっては完全にエクサランスを越えていた。もっと言えばネオゲッターやダイゼンガー、ゲッターD2と新西暦の機体の中で最高峰の機体となればエクサランスの3倍以上のスペックを記録している。

 

「どうしても戦うというのならばエクサランスの全てを公開と言っても時流エンジンの事はもう知られてますし、細かいデータとかを提出したその上でこの世界の技術者に協力を要請する事になるでしょうが……どうしますか?」

 

アインスト、インベーダーが闊歩する地獄で生き抜いたラウルは間違いなくエース級の実力を持ったパイロットであると言う事実に疑いはない、だがパイロットの腕だけではどうにもならない領域を目の当たりにしたラウルはラージの問いかけに返事を返す事が出来なかった。

 

「どうか無謀な事だけはしないでください。ミズホ、ラウルを見てあげていてください」

 

他の作業員が格納庫に出るのを見てラージもマグマ原子炉の微調整を行なっているラドラのもとへ向かった。

 

「もう良いのか?」

 

「はい、これで折れるなら折れていてくれたほうがいい。この世界での戦いは僕達には荷が重すぎる」

 

「不器用な奴だ、まぁそんな奴は嫌いではないがな、しっかり勉強しろ。これからマグマ原子炉をPTやAMに組み込める反マグマプラズマジェネレーターに改修する。良く見ておけ」

 

「はいッ!」

 

自ら憎まれ役を買って出たラージ。だがラウルが覚悟を決め戦うと決めたときにその背を押せるように……ラドラの元で時流エンジンの改良に着手し始めているのだった……。

 

 

 

 

 

 

マオ社の試作機専用のエレベーターから1機のPTがリフトアップしてくる。全体的なシルエットはゲシュペンスト系列だが、ゲシュペンスト・MK-Ⅲの砲撃仕様のタイプS、格闘戦仕様のタイプKよりも重厚なその姿はゲシュペンストを準特機、特機サイズで作り出したといわれても納得してしまう姿をしていた。

 

「こちらカイ、XXユニットの稼動を確認した。これより試運転に入る」

 

『了解しました。カイ少佐、XXユニットはまだ調整段階なのでまずは歩行と飛行だけにしてくださいね。火器管制プログラムはまだ調整段階ですので』

 

マオ社のオペレーターの言葉にカイは了解と返事を返し、操縦桿を握り締めてペダルに足を乗せる。

 

「むっ……」

 

『どうかしましたか?』

 

「いや、かなり重いと感じてな。この装備だから機体重量があるのは分かるが……」

 

『リバイブに慣れていた上に、今のXXユニットの素体はノーマルのゲシュペンスト・MK-Ⅲを使用していますから、それにXXのベースは急ピッチで作成しているプラズマボムス搭載PT1号機ゲシュペンスト・MK-Ⅳのパワーが前提になっていますので……』

 

「ノーマルのゲシュペンスト・MK-Ⅲではパワー不足という事か」

 

想像以上の重量を感じ思わず声を出してしまったカイにユアンがそう説明するとカイは納得し、再び機体を歩かせる。

 

「トルクはかなり良いな、クッション性も良い、それに反応速度もかなり良い」

 

『ほかに何か気になる点はありますか?』

 

「少し溜めがあるが……誤差の範囲に収まっている」

 

『了解です。次は飛行をお願いします』

 

「了解だ。ウィングを展開する」

 

オペレーターの指示に従って順路を飛行するXXユニットを装備したゲシュペンスト――マオ社とムーンクレイドルを奪還した事で新たな力を得るものもいれば、その役目を終える者もいる……マオ社のハンガーに固定されている初代ヒュッケバインをイルムとリンの2人は揃って見上げていた。

 

「リン、本当にいいのかよ?」

 

「ああ。もう決めたことだ、ヒュッケバインは解体する」

 

アインストとインベーダーと戦い力不足を実感したリンは長年の相棒である初代ヒュッケバイン……ヒュッケバイン008Lを解体し、ブラックホールエンジンを取り出すことを決めたのだ。

 

「勿体ねぇ気もするな」

 

「動力が良くとも機体がついていけないのならばこれも仕方のないことだ。それにビアン博士経由でシラカワ博士からブラックホールエンジンの改良案を出されている」

 

「おいおい、あいつを信用して大丈夫か?」

 

シュウの改良案を受け入れると言うリンにイルムが大丈夫か? と問いかけるとリンはにやりと笑った。

 

「誰がそのまま使う物か、ラドラやコウキに頼んで新型機の設計と共にブラックホールエンジンも改良する予定だ」

 

リンの言葉にイルムはさいですかと肩を竦めて笑い、もう1度ヒュッケバインを見上げた。

 

「解体の時は俺も呼んでくれや、見届けてやりてぇし」

 

「ああ、呼んでやる。こいつも本当に良く頑張ってくれた」

 

まだ正式な解体の日時は決まっていないが、近い内にヒュッケバインはその役目を終える。だがそれは終わりではなく、新たな始りの為の一時的な眠りだ。

 

「なぁ、リン。夜、ちょっと飲みに行こうぜ」

 

「……ああ。そうだな、たまには私も飲みたい気分だが……勿論驕ってくれるんだろうな?」

 

「割り勘なんてけちな事はいわねえよ」

 

イルムの言葉にリンは柔らかい笑みを浮かべ、その肩に頭を預けた。

 

「リン。多分こんな事を言ったら怒ると思うんだけどよ、俺は解体するって聞いて寂しいと思ったがそれと同時に安心もした」

 

「ほう? 私がやられるとでも思ってるのか?」

 

「そう思ってる。あいつらは化けもんだ、お前の腕が良いのは知ってる。だけどな……ブランクがありすぎる。セレヴィス奪還の時だって俺は正直気が気じゃなかった。インベーダーとの戦いにお前には出て来て欲しくなかったよ」

 

喧嘩をすることも多いがイルムとリンは恋人同士なのだ。そんな恋人がインベーダーに食われて化け物になる……イルムだけではない、ヒリュウ改、ハガネのクルー全てがその恐怖と戦っている。仲間がインベーダーに、アインストに食われ、そうなった時に自分に殺せるのかという恐怖と常に皆が戦っているのだ。

 

「仮にも中尉の立場が言う言葉ではないな」

 

部下を纏める立場のイルムが言っていい言葉ではないとリンが嗜めると、イルムはリンの肩に手を乗せて自身に抱き寄せる。

 

「中尉でも人間だ。軍人になったからって感情まで捨てたつもりはねえよ」

 

「やれやれ、しょうのない奴だ」

 

言葉でこそイルムを窘めているリンだが、その頬は僅かに朱を帯びていた。互いに無言で見つめあうイルムとリン、2人の影が重なったかどうかは物言わぬヒュッケバインだけが知っている……。

 

 

 

第224話 新たなる力 その2へ続く

 

 

 




今回はフラグメインでやってみました、次回も引き続き宇宙編の新機体の話でその次は地上の強化の話をやって見たいと思います。
強化イベントが終わったら今度はエクセレン奪還とアースクレイドル攻略戦(インベーダー、アインスト、百鬼獣もいるよ)という地獄をやって見たいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします


ブラックサレナガチャは敗北

ランページゴーストとか無敵剣とかきましたが、肝心にピックはローテートアサルトで敗北でございます。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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