第227話 闇の胎動
アースクレイドルの格納庫に着艦した百鬼獣空皇鬼から運ばれてくるパーツを見て、龍王鬼は不機嫌そうに眉を顰める。それもその筈、運ばれているのは朱王鬼、玄王鬼の予備パーツやゲッターノワールを修理する為のゲッター合金、饕餮鬼皇達の餌である木っ端鬼やホームレスといった、社会的にいなくなっても困らない弱者達……それが運ばれている事が、龍王鬼にとっては腹立たしい物であったからだ。
「龍、顔に出てるわよ」
「……わぁってるよ」
虎王鬼に注意されても、龍王鬼は不貞腐れた顔を一切変える事無く、舌打ちをした。
「面白くねえんだよ、何もかもよ」
龍王鬼の言葉に虎王鬼はそうでしょうねと呟き、不貞腐れている龍王鬼の右手を取るとぽつぽつと龍王鬼は喋り出した。
「ヴィンデルは嫌いだが、アクセルはそう嫌いじゃない」
「でしょうね」
「インスペクターの連中は嫌いだが、化物になれとは思ってねぇ」
「そうね」
「武蔵とは決着を付けてえが、俺様だけの力で倒してえ。大帝様の指示だったとしても納得いかねぇ」
「分かるわ、あたしも同じだもの」
「イーグレットのあのクソガキ共とアギラの婆がでけえ顔をするのも気にくわねぇ」
「そうね、自分達が優秀だからアースクレイドルを任されたと思ってるみたいだしね」
「……なんで宇宙に行かなきゃいけねえんだ」
「そうね、武蔵がこれから来るのにね」
ぼやいている龍王鬼に虎王鬼が一言ずつ返事を返すと、龍王鬼は深い溜息を吐いて頭を振った。
「わり、落ち着いた」
「良いわよ、別に。龍の性格はあたしが1番良く知ってるしね」
ブライからの直々の命令だとしても、龍王鬼には不満しかなかった。
「大帝様の考えは俺になんかわからねえさ、でも少なくとも俺の性分は分かってくれてる……俺はそう思ってたんだけどな」
メキボスにゲッターロボGを渡し、シャドウミラーをホワイトスターへと運んだ。そこがインベーダーとアインストの巣窟になることを知ってだ。
朱王鬼と玄王鬼の予備パーツを龍虎鬼皇へ組み込むと命令が出た。それは龍王鬼と虎王鬼だけでは勝てないと言われてるような物だった……。
暴走し、既に制御が出来ない化物になりつつあるゲッターノワールに更に餌を与えると言う指示にも不満があった。
マシンナリーチルドレンとアギラ、そしてウォーダンだけをアースクレイドルへ残す。それはアースクレイドルに武蔵達を誘き寄せ、アースクレイドルごと潰すと言うのを意味していた。人類の揺り篭として守ってきたそれを破棄すると命令されたのは筋が通らないと、龍王鬼は憤りを覚えた。
そしてこれから武蔵達がアースクレイドルに来るのに宇宙へ上がれと命令された。心を震わせる強敵との戦いを禁じられた事に龍王鬼は落胆した。
「そう怒るな、龍王鬼よ」
背後から聞こえて来た声に龍王鬼は振り返り、不機嫌を隠す様子も無く舌打ちした。
「ほかの連中はもう離れたのにお前は残ってんのか? 共行王」
「うむ。ウォーダンとゼンガーの戦いはこの目で見ておきたいからの」
からからと笑う共行王は手にしていた扇子を開き、自らを扇ぎながら龍王鬼に歩み始める。
「ブライの奴はしばらく身を隠すぞ」
「は? どういうこった」
「知れた事よ。あやつにとっても想定外の出来事が起きすぎておる。豪胆ではあるが、ここまで予測不能な事が重なれば1度引くであろうよ」
道理ではある、だが龍王鬼が納得出来るかどうかは別問題ではあるが……共行王の言葉は正しかった。
「そう案ずるな、武蔵達は勝つぞ。ならば1度引いて力を蓄えるのも悪くあるまい? それとも……私が進言してやろうか?」
にやりと悪戯めいた表情を浮かべる共行王に龍王鬼はその真意を理解した。
「良い酒を用意するぜ、とっておきのもんだ」
「ほっほほ、酒にはうるさいからの、本当に良い物を用意せよ? わんぱく小僧め」
そう笑って歩き去る共行王の背中を見つめながら虎王鬼は溜息を吐いた。
「良いの? あいつに貸しを作ると怖いわよ?」
「かまやしねえ、もう1回武蔵と派手に喧嘩しときてえんだよ」
握り拳を作り牙をむき出しにする龍王鬼に虎王鬼は仕方ないわねぇと言わんばかりに肩を竦めるが、虎王鬼もその口元には隠しきれない獰猛な笑みが浮かんでいた。
『ゲッターロボがワシの想定よりも強くなっている。1度その力を確かめるのだ、龍王鬼よ。だがここが終わりではない、その事を肝に銘ずるのだぞ』
「はっ!」
共行王を後ろに控えさせたブライからのゲッターD2と戦えという命令が下されたのは、闘刃鬼達が宇宙へと向かい、次の便で龍王鬼達が宇宙へ向かうその1時間前の出来事なのだった……。
ガーベルゲルミルとゲーゲルミルの2体の足元で、イーグレットは忙しそうに動き回っていた。
「パパ。何か手伝おうか?」
「ウルズか、悪いな。それならばそのデータをガーベルゲルミルにコピーしてくれ」
「分かったよ。パパ」
ウルズが素直に返事を返し、動き出すのを見ながらイーグレットも急いで作業を再開する。
(冗談じゃない、ここまで俺がどれだけ苦労したと思ってるッ!)
ブライはアースクレイドルを、しいてはマシンセルを廃棄することを決めたのだ。そうでなければアースクレイドルに武蔵達を呼び寄せて戦わせるような指示を出すわけが無い。だがイーグレットを見捨てたわけではない。
「イーグレット、早く宇宙へ向かわないと後悔しますよ」
「それが出来るならとっくにそうしているコウメイッ!」
ブライの側近であるコウメイがイーグレットについているからだ。アースクレイドルとマシンセルにブライは興味を失ったが、イーグレットの頭脳をまだブライは必要としていた。だからこそ、コウメイを迎えに寄越していた。
「必要なデータだけで十分でしょうに」
「俺にとっては全て有意義なデータだっ! それにオリジナルのガーベルゲルミルとゲーゲルミルを失う訳にもいかんッ!」
アースクレイドルに配備しているガーベルゲルミルとゲーゲルミルは全て量産型のゲッターロボとゲッターロボGにマシンセルを投与して作り出したが、この格納庫のガーベルゲルミルとゲーゲルミルは正真正銘のゲッター炉心搭載機にマシンセルを投与したもので、途方もない価値のある機体だった。だからこそイーグレットはガーベルゲルミルとゲーゲルミルにデータを全て読み込ませていた。
「やれやれ、欲張りすぎると痛い目に合いますよ?」
「分かってるッ! だが俺はスクールの生き残りに狙われているッ! ここで死を偽装する必要がある」
「ほう?」
呆れていたコウメイは興味深そうな声を上げ、コンソールを凄まじい勢いで叩いているイーグレットに視線を向けた。
「クエルボも、アウルムも連邦に付いた。ならば俺とアギラは間違いなく捕らえられる……いや、ビアン達に殺される可能性もある。ならば俺も1度死を偽装する必要がある。その為には遠隔操作する為のガーベルゲルミルとゲーゲルミルは必要不可欠だ、それに地下のオーガも使いたい」
オーガ……アースクレイドルの近くに封印されている旧西暦からやってきた百鬼獣を使う事を考えていることにコウメイは驚いた。
「あれを使えばアースクレイドルは吹っ飛ぶぞ?」
「だからだ、ネート博士は俺にとっては最早邪魔者、それに百鬼帝国のデータは膨大で消すとしても間に合わない。お前の主の情報を持ち出されるわけには行かないだろう! 手伝えコウメイッ!」
自分のためではなく、コウメイの主君であるブライの為に手伝えと叫ぶイーグレットにコウメイは笑みを浮かべた。
「良いだろう、お前自身の為では無くブライ様の為に手伝えというのならば手伝ってやろう」
「ああ、そうだ。ブライのお蔭で俺の研究は進んだ。恩義は感じている、だがアースクレイドルを決戦の地に選んだ事は怨んでいる。ブライに渡すつもりだった新型の百鬼獣も全部、何もかもお釈迦だッ!! ちくしょうがッ!!」
そう叫んでイーグレットがレバーを降ろし、隠されていた格納庫がせり上がってくる。
「……おおお……なんと素晴らしい、だがこれは」
「そうだ、不完全だ、まだ動かせる段階じゃない。百鬼獣、ゲッターロボ、シャドウミラー、コーウェンとスティンガーから聞いた話、それら全てを元にし、俺は作り出したんだ。このゲッターロボ、いや……百鬼獣をッ!!」
マシンセル細胞が心臓の様に脈打つ度にゲッター線の輝きがフレームの中を駆け巡る……それは確かにゲッターロボであったが、それであると同時に百鬼獣でもあった。イーグレットが作り出し、ブライに自分を登用させるためだけに作り出した新型百鬼獣を見てコウメイは恍惚の表情を浮かべた。
「素晴らしい、これならば大帝も満足していただけるだろう。少し待て、回収要員を連れてくる」
「待て、これは俺にしか仕上げられん。俺とウルズも保護しろ。それを約束するんだコウメイ……もし断ると言うのならばゲッター線を逆流させてこいつを破壊する。鬼に人間である俺が勝てるとは思えんし、逃げ切れるとは思えん。だが生き絶える前にこのボタンを押す位わけないぞ」
覇気というには余りにも歪んでいる生への執着その物……だがその生への執着は、己の研究を完済させるための知識欲に突き動かされている。
「良いだろう。ブライ大帝の名に誓おう、お前達を保護し、百鬼帝国へと連れてゆくと」
「……契約成立だ。回収要員を呼ぶくらいなら技術者を寄越してくれ、これを動かせる段階になるまで組み上げる」
「分かった、すぐにつれてこよう」
コウメイはイーグレットとウルズから背を向けて歩き出し、すぐに通信機のスイッチを入れる。
「ブライ大帝。イーグレットはやはりまだ使えます。隠していた物も出しました」
『あの手の男は窮地に追い込まれないと動かんからな、可能な限りの支援を行いイーグレットを無事に百鬼帝国へと連れ帰れ』
「必ず」
イーグレットの決意も覚悟も全てブライの手の内であるという事をイーグレットは知らない、イーグレットは確かに性格に難がある。だが優れた技術者であるという事はブライも承知している。しかしイーグレットは追い込まれなければ全てを明かす事はない、ブライはイーグレットとのやり取りでそれを理解しており、だからこそイーグレットの拠点であるアースクレイドルを窮地に追い込む事でイーグレットが隠している物を表に出すことを画策し、その計画通りにイーグレットは隠していた物をコウメイの前にさらけ出すのだった……。
ツェントルプロジェクトのトーチカの元へ訪れたアルテウルは格納庫に置かれている機体を見て、興味深そうな表情を浮かべた。
「アルテウル大統領補佐官。どうです? 素晴らしいでしょう」
「流石ミタールだ。しかし大統領補佐官としてはこの研究を良しとする訳にはいかんな」
「表向きはでしょう? そうでなければ私にこれだけの出資はしないはずだ」
大統領補佐官としては認められないが、アルテウル個人としてはミタールの研究成果は素晴らしいものと認めざるを得なかった。
「インベーダーを科学で再現する……か。良くやり遂げたものだ」
「まだまだです。インベーダー細胞、アインストコア、それを解析し、科学的に再現したのがこの「ラズムナニウム」です」
フレームに金属が纏わり付き、装甲を作り出す。その速度は微々たる物だが……紛れも無くミタールはインベーダー細胞を科学で再現して見せたのだ。
「まだインベーダーの進化は可能としておりませんがね」
「そ、そう! まだ進化を可能としていないのですッ!!」
「コーウェン博士、スティンガー博士。手厳しいですな、これでも私は全力を尽くしたのですよ?」
苦言を呈しているように見えるがコーウェン達も笑みを浮かべていた。ミタールもまた人格は決して褒められた物では無いが、技術者としては新西暦の人間の中でも上位に入る研究者だった。
「自己進化のう……本当にそれが必要なもんかの?」
「ワン博士。まだ反対するのですか? 我々にはスポンサーが必要なのですよ?」
エリック・ワンは自身で装甲を作り上げているラズムナニウム搭載機に一瞬視線をやり、深い溜息を吐いた。
「駄目じゃ、これではグランゾンを倒せん……ワシは興味もないわ」
「ワン博士。貴方が協力してくれればグランゾンを倒す事は可能ですよ!」
「そ、そうですよ! ワン博士ッ! 今こそ僕達の研究に協力をッ!」
コーウェンとスティンガーに呼び止められたエリックは足を止めて、白衣の中の何かを見せながら歯を見せて笑った。
「ワシの研究は人間の為のもんじゃ、化けもんの研究には付き合えんわいッ」
カカカと笑って歩き去るエリックにコーウェンとスティンガーは足を止めた。
「申し訳ない、彼は研究者としては優秀なのですが少々偏屈で」
「いえいえ構いませんとも、研究者と言うのは総じて偏屈ですからね」
ミタールの謝罪の言葉に気を良くした訳ではない、エリックが白衣の中に隠していたのは高密度のゲッター合金であり、コーウェンとスティンガーに見せた入れ歯の中には超小型のゲッター炉心が埋め込まれていた。インベーダーであるコーウェンとスティンガーはその2つに当てられ、人間に擬態するのに全力を傾けなければならない状況に陥っていた。
(強かだな……やはり厄介だ、エリック・ワン)
ビアンの友であり、ビアンに匹敵する研究者はアルテウルが把握している中で2人しかいない。1人はキサブロー・アズマ。DCの前組織であるEOTI機関、そしてテスラ研にも所属していた経歴があり、現在は民間の家庭向けの発明品をしている。
(だがそれもフェイクの可能性があるわけだ)
特機の専門家であり、モガミ工業とも深い繋がりがあるキサブローが家庭向けの発明をしているという事にアルテウルは違和感を覚えていた。孫を育てる為にEOTI機関を抜ける選択をし、ビアンもそれを認めたという情報を得ており、浅草に住居を構えてアズマ研究所で冷蔵庫や扇風機を販売しており完全に兵器関連から手を引いたという調査結果が出ているが、当然アルテウルはそれに納得などしていない。してはいないが、尻尾をつかませないので強硬手段に出るわけにも行かない。そしてもう1人がエリック・ワン、シュウと共にグランゾンを開発し、グランゾンを破壊することを目的としている科学者で、シュウの他にグランゾンの内部構造を理解している只1人の人間だ。だがその強かさ、不気味さはアルテウルを持ってしても理解出来ず、こうしてツェントルプロジェクトで囲い込み、ビアン達に協力させないのがアルテウルが今出来る全てだった。
「大統領補佐官、こちらへ。ラズムナニウムに続く新しい発明をお見せしましょう」
「それは楽しみだ。物によっては更に出資も考えてやろう」
アインストとインベーダーを解析し作り出した新発明を見せるというミタールに案内されながら、アルテウルはツェントルプロジェクトのトーチカ内部を歩き出す。ミタールが自分の発明の説明をし、それに相槌を打ちながらアルテウルは次の事を考えていた。
(ブライは1度地球から手を引く、コーウェンとスティンガーは何を考えているか分からんが、いずれ反逆してくるだろう。ホワイトスターは今頃アインストとインベーダーの巣窟になっているだろうが……駄目だ、手駒が足りん)
地球政府の中枢をブライに押さえられている。表面上は協力者であっても、互いが互いを蹴落とす事しか考えていないいつ寝首を掻かれるか分からない協力関係は、無能な味方よりも厄介なものであった。
(いまはまだ雌伏の時か……)
動くには配下も力も足りない、今はまだ大統領補佐官の役職を利用し力を蓄えるしかないかと自嘲気味に笑ったアルテウルだったが、ミタールの自信作というエンジンを前に、その笑みは消えた。
「TEエンジン……それを実用化したのかッ!?」
「TEエンジン? 大統領補佐官それは間違っていますね、これはTEGエンジン。ゲッター炉心を組み込んだ全く新しい私の自信作ですよ」
元より研究していたターミナスエナジー。その根底は宇宙に存在する4つのエネルギーとそのエネルギーの相互作用によるエネルギーの増幅理論がベースにある。ならば同じ宇宙に存在するゲッター線を組み込むことも不可能ではない、だがそれを成し遂げるのは並大抵の苦労ではない。だがミタールはやり遂げた。コーウェンとスティンガーによって齎されたインベーダー、アインスト、そしてゲッター線……自身の理解を超える超常の存在を必死に理解し、そして己の元へと落とし込んだ。
「しかしこれは並の機体では機体そのものを壊してしまうでしょうし、課題もあります」
「課題とは?」
「制御が極めて難しいのです。パイロットとオペレーターが1人必ず必要になります……それで大統領補佐官、貴方に頼みがあります。優秀なオペレーターを複数人用意して欲しいのです」
「ふっ、良いだろう。お前は私の望む以上の成果を出した。優秀なオペレーターだな? 連邦に問いあってみよう」
ゲッター線を利用する事に成功した数少ない新西暦の人間にミタールの名前が加わり、それと同時にアルテウルの中でミタールの重要性が更に上がった瞬間だった……本来ミタールが手にするのはアインストの情報のみ、そこにインベーダー、ゲッター線が加わり、ツェントルプロジェクトは更なる暴走を始める事になる。
「ふふ……もう少し、もう少しで出来るわ。私の可愛い子供が……」
その切っ掛けとなる人物は今はまだ光の中にいるが、後に自ら進んで闇の中へ足を踏み入れる事になる……。
星間連合の惑星同士を繋ぐ輸送船の中で1人の男が調子外れの鼻歌を歌いながらハンディPCを弄っていた。どこか老けた印象と気だるそうな雰囲気から中年に見える男――ゼブリーズ・フルシュワは20代の男盛りの青年だった。
「んん~緊急連絡~? はいはい、こちらゼブですよ~」
『ゼブリーズ・フルシュワか、俺だ』
「ん~お~メキちゃんじゃないの~どしたの? 今地球にいってるんじゃなかったっけ~?」
旧友のメキボスからの連絡にゼブリーズの目が輝くが、すぐにメキボスに異変が起きている事に気付いた。
『はぁ……はぁ……』
「ちょっ? 大丈夫なのかい~? まさか地球人に負けたなんて『キッシャアアアアッ!! くそったれ、もう追いついて来やがったッ! シカログッ! 撃てッ! グレイターキンまで死んでも戻るぞッ!!』……メキちゃんッ!? メキちゃんッ!?」
通信機から聞こえて来る激しい銃声と化物の鳴声にゼブリーズは座っていた椅子から飛び起き、通信機を耳に当てたまま輸送船の中を走り出す。
「メキちゃん、メキちゃんッ! ええいッ! メキボス応答しろッ!!」
『……その喋り方久しぶりに聞いたぜ、ゼブ。時間がねぇ、用件だけを伝えるぞ。地球にゲッター線もゲッターロボも無かった。良いな? ゲッター線も、ゲッターロボも無かったんだ』
「おいおい……その声インベーダーだろ? そいつは無理があるだろうよ」
ゾヴォークの領地にも偶に出現するインベーダーの事をゼブリーズが知らないわけが無い、インベーダーはゲッター線がなければ生きていけない……ゾヴォークにも少量ならばゲッター線の反応はある。だからこそインベーダーが出現する訳だが、地球にインベーダーがいるという事は地球にゲッター線があると言うことを示している証拠であった。
『良いから聞け、今はそうしろ。良いな? それと……先遣隊は全滅だ。インベーダーに食われちまった』
その言葉にゼブリーズは目を見開いた。先遣隊の全滅、そして食われたとの言葉にメキボスも危ないと判断したゼブリースの動きは早かった。
「待ってろ、すぐに応援に」
『来るな、俺とシカログ、それとアギーハはなんとか無事だ。これから地球人と合流する。星間連合の人間として動く、派閥関係無しにだ』
「……そこまで不味いのか?」
派閥関係無しに、そして星間連合として動く……つまり政治闘争や、枢機院すら挟まず宇宙の平和を守る為に動くと言うメキボスに、ゼブリーズは格納庫に向かっていた足を止めた。
『ああ、とびっきりの厄ダネだ。ゼブ、悪いがグロフィス・ラクレインに頼んでくれ』
「何をだ? 正規の救難要請か? 悪いが俺達は傭兵扱いだぞ?」
『違う、どうも地球にゼゼーナンの一派が手を出してるみたいだ。そこを調べてくれ』
「おいおい、ゼゼーナン卿は俺達の雇い主だぞ? それを疑えっていうのか?」
『押し問答をしてる時間はねえんだよ。よっし! シカログ、良いぞ乗れッ! ぶち抜いて逃げるぞッ!!』
『!!』
派手な戦闘音にゼブリーズは更に眉を顰めた。
『とにかく伝えることは伝えたぞ、俺達が死ぬとしたら地球人の仕業じゃねぇ、ダヴィーンの生き残りか、インベーダーにやられたと思ってくれ、良いな』
「OK~今はそうしろって事だね~?」
『そういうこった。頼むぜ、ゼブちゃん』
その言葉と共に通信機は黙り込み、ゼブリーズは手にしている通信機を凄まじい力で握りこみ、ふうっと溜息を吐いた。
「どうも~今回の件~相当面倒そうだねぇ~やれやれ、どうしたもんだかあ~」
ゼブリーズは今本星へと向かっていた。その理由は前の将軍が倒れ、ゼブリーズ、そしてもう1人のリーダーであるグロフィス・ラクレインに将軍へ昇格の声掛けがあったからであり、その式典に出る為に動いていた訳だがどうもきな臭くなってきたとゼブリーズは溜息を吐いた。
(とにかく裏付けを取らないとな、やーれやれ、困ったもんだよ、これはさぁ)
名家とは言え、それを嫌って家を飛び出したグロフィス・ラクレインが将軍の地位になるのも考えてみればおかしな話だ。次期将軍と言われていた人間を何人も知ってるだけに、余計におかしいと考えていたゼブリーズはメキボスからの通信で納得した。
(用は俺達は捨て駒ってか、ふざけんなよ)
将軍へなった後は恐らく自分達は何か理由をつけて地球へと送られるだろう。ゲッター線とゲッターロボが待つ地球へ、つまりそこで死ねと言われている事に気付いたゼブリーズはロフ達に気付かれない様に動くのを決め、その胸の内に燃える激情を普段の気だるい仮面で覆い隠し、座席へと戻る。武蔵達の知らない所で闇の中で暗躍する者達はより活発に動き始めていた……そしてそれはアルフィミィも同じだった。
「大分馴染んできましたの、エクセレン。そろそろキョウスケを迎えに行きましょうですの♪」
「……」
ヴァイスリッターの構造の約7割がアインストの細胞へと変わり、そしてエクセレンが何の反応も見せなくなったのを見てアルフィミィは楽しそうに笑う。やっとエクセレンも自分と同じになったと、エクセレンから人間らしさが消えたことを喜んだ。それがエクセレンとは思えない人形になった女を見て、アルフィミィはやっとキョウスケを迎えに行くことが出来ると破顔するのだった……。
第228話 白騎士と紅き巨人と その1へ続く
と言う訳でゼブちゃんを早だしして見ました。ゼブちゃん割りと好きなので出しましたが、時系列おかしいだろ?っていう突っ込みは無しで、後第二次OGの厚化粧おばさんの進化フラグと百鬼帝国の新型、そして龍虎王よりも先に四神合体しそうな龍虎鬼皇を用意しつつ、後半の盛り上がりのエクセレン救出に入って行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い